説明

コールドスプレー用金属粉末

【課題】コールドスプレーにより厚膜の皮膜を効率的に形成することが可能なコールドスプレー用金属粉末を提供する。
【解決手段】本発明のコールドスプレー用金属粉末は、第1の平均径を有する第1の金属粒子を20〜70質量%の量で含有し、残部が第1の平均径よりも大きな第2の平均径を有する第2の金属粒子からなることにより、粒子径がバイモーダルに分布している。第2の金属粒子の平均径は、200μm以下でかつ第1の金属粒子の平均径の1.5倍以上である。第2の金属粒子のビッカース硬さは、第1の金属粒子のビッカース硬さと同じかそれ以上でかつ1400以下であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コールドスプレー用途で使用される金属粉末に関する。
【背景技術】
【0002】
燃焼フレームやプラズマジェットなどを熱源として用いて金属やセラミックスなどの粉末を基材に吹き付けることにより基材上に皮膜を形成する溶射は、表面改質方法の一種として広く知られている。溶射では一般に、熱源により融点又は軟化点以上にまで粉末を加熱するため、基材の材質や形状によっては基材の熱変質や熱変形が起こることがある。そのため、一般的な溶射ではあらゆる材質及び形状の基材に対して皮膜を形成することができるわけでなく、基材の材質及び形状が制限されるという欠点がある。
【0003】
このような従来の溶射の欠点を解消する新たな手法としてコールドスプレー法が近年注目されている。コールドスプレー法では、粉末の融点及び軟化点よりも低い温度の作動ガスを超音速にまで加速し、その加速した作動ガスにより粉末を固相のまま基材に衝突及び付着させる。例えば、特許文献1には、クロムを含有した金属粉末をコールドスプレーすることにより、クロムを含有した金属皮膜をピストンリングの摺動面上に形成することが開示されている。また、特許文献2には、金属粉末をコールドスプレーして金属皮膜を形成するに際して、金属粉末よりも粒径が大きくかつ高硬度の鉄基合金又は炭化タングステンからなるピーニング粉末を金属粉末と一緒又は別々にコールドスプレーすることにより、形成される金属皮膜の硬度及び緻密度を高めることが開示されている。
【0004】
しかしながら、コールドスプレー法は、プロセス温度の低いことなどが原因で厚膜の皮膜を効率的に形成することが容易でなく、この点改良の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−29858号公報
【特許文献2】特開2006−52449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明の目的は、コールドスプレーにより厚膜の皮膜を効率的に形成することが可能なコールドスプレー用金属粉末を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明の一態様では、コールドスプレー用途で使用される金属粉末であって、第1の平均径を有する第1の金属粒子を20〜70質量%の量で含有し、残部が第1の平均径よりも大きな第2の平均径を有する第2の金属粒子からなることにより、粒子径がバイモーダルに分布しているコールドスプレー用金属粉末を提供する。第2の金属粒子の平均径は、200μm以下でかつ第1の金属粒子の平均径の1.5倍以上である。
【0008】
第2の金属粒子のビッカース硬さは、第1の金属粒子のビッカース硬さと同じかそれ以上でかつ1400以下であることが好ましい。
第1の金属粒子のビッカース硬さは、30〜800であることが好ましい。
【0009】
第1の金属粒子の平均径は、0.1〜50μmであることが好ましい。
コールドスプレー用途は、例えば、1MPa以下の作動ガス圧で行われる低圧型コールドスプレー用途である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、コールドスプレーにより厚膜の皮膜を効率的に形成することが可能なコールドスプレー用金属粉末を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態を説明する。
本実施形態のコールドスプレー用金属粉末は、第1の平均径を有する第1の金属粒子を20〜70質量%の量で含有し、残部が第1の平均径よりも大きな第2の平均径を有する第2の金属粒子からなることにより、粒子径がバイモーダルに分布している。
【0012】
第1の金属粒子と第2の金属粒子は互いに同じ種類の金属からなってもよいし、異なる種類の金属からなってもよい。
第1の金属粒子は、例えば、ニッケル、銅、アルミニウム、鉄、錫及び鉛の少なくとも一種を含んだ金属単体又は金属合金からなる。中でも、第1の金属粒子がニッケル、銅、アルミニウム及び鉄の少なくとも一種を含んだ金属単体又は金属合金からなる場合には、良好な硬度の皮膜をコールドスプレー用金属粉末から形成することが容易となる。第1の金属粒子は、ニッケル、鉄、クロム、ニオブ、モリブデンなどを含んだニッケル基超合金からなってもよい。
【0013】
第2の金属粒子は、例えば、コバルト、銅、アルミニウム、ニッケル及びクロムの少なくとも一種を含んだ金属単体又は金属合金からなる。第2の金属粒子は、コバルトクロム合金のようなクロム合金からなってもよい。
【0014】
第2の金属粒子の平均径(体積平均径)は、第1の金属粒子の平均径(体積平均径)の1.5倍以上である。この場合、コールドスプレー時、第2の金属粒子によるピーニング効果により塑性変形による第1の金属粒子の基材への付着が促進される結果、コールドスプレー用金属粉末の皮膜形成能が向上する。皮膜形成能のさらなる向上のためには、第2の金属粒子の平均径は、第1の金属粒子の平均径の2倍以上であることが好ましく、より好ましくはその3倍以上、最も好ましくは5倍以上である。
【0015】
第1の金属粒子の平均径は、0.1μm以上であることが好ましく、より好ましくは1μm以上、さらに好ましくは4μm以上、最も好ましくは6.7μm以上である。第2の金属粒子の平均径が第1の金属粒子の平均径の1.5倍以上であることから、換言すれば、第2の金属粒子の平均径は、0.15μm以上であることが好ましく、より好ましくは1.5μm以上、さらに好ましくは6μm以上、最も好ましくは10μm以上である。第1の金属粒子及び第2の金属粒子の平均径が大きくなるにつれて、コールドスプレー用金属粉末の流動性が向上する結果、コールドスプレー装置への金属粉末の供給が容易となる。
【0016】
第1の金属粒子の平均径はまた、50μm以下であることが好ましく、より好ましくは45μm以下、さらに好ましくは30μm以下である。第1の金属粒子の平均径が小さくなるにつれて、コールドスプレー時の基材への第1の金属粒子の衝突速度が増す結果、コールドスプレー用金属粉末の皮膜形成能が向上する。また、このとき形成される皮膜の硬度も向上する。
【0017】
第2の金属粒子の平均径の上限は200μmである。第2の金属粒子の平均径が200μm以下である場合には、コールドスプレー時に第2の金属粒子が基材及び/又は基材上の第1の金属粒子を削ってしまう負のエロージョン効果が減る結果、コールドスプレー用金属粉末の皮膜形成能が向上する。皮膜形成能のさらなる向上のためには、第2の金属粒子の平均径は、100μm以下であることが好ましく、より好ましくは75μm以下、さらに好ましくは50μm以下である。
【0018】
なお、第1の金属粒子及び第2の金属粒子の平均径の測定は、例えば、レーザー回折散乱法やBET法、光散乱法により行うことができる。レーザー回折散乱法による平均径の測定は、例えば、株式会社堀場製作所製のレーザー回折/散乱式粒度測定機“LA−300”を用いて行うことができる。
【0019】
第2の金属粒子のビッカース硬さは、第1の金属粒子のビッカース硬さと同じかそれ以上であることが好ましく、より好ましくはその1.5倍以上、さらに好ましくは2倍以上、特に好ましくは3倍以上である。第2の金属粒子のビッカース硬さが第1の金属粒子のビッカース硬さと比べて大きくなるにつれて、第2の金属粒子によるピーニング効果により、コールドスプレー用金属粉末の皮膜形成能が向上する。
【0020】
第1の金属粒子のビッカース硬さ(Hv0.2)は、30以上であることが好ましく、より好ましくは50以上である。第2の金属粒子のビッカース硬さが好ましくは第1の金属粒子のビッカース硬さと同じかそれ以上であることから、換言すれば、第2の金属粒子のビッカース硬さ(Hv0.2)もまた、30以上であることが好ましく、より好ましくは50以上である。第1の金属粒子及び第2の金属粒子のビッカース硬さが大きくなるにつれて、コールドスプレー用金属粉末から形成される皮膜の硬度及び耐摩耗性が向上する。
【0021】
第1の金属粒子のビッカース硬さはまた、800以下であることが好ましく、より好ましくは700以下、さらに好ましくは600以下である。第1の金属粒子のビッカース硬さが小さくなるにつれて、第1の金属粒子の塑性変形能が向上する結果、コールドスプレー用金属粉末の皮膜形成能が向上する。
【0022】
第2の金属粒子のビッカース硬さはまた、1400以下であることが好ましく、より好ましくは1200以下、さらに好ましくは1000以下である。第2の金属粒子のビッカース硬さが小さくなるにつれて、第2の金属粒子によるエロージョン効果が減る結果、コールドスプレー用金属粉末の皮膜形成能が向上する。
【0023】
なお、第1の金属粒子及び第2の金属粒子のビッカース硬さの測定は、例えば、株式会社島津製作所製の微小硬度測定器“HMV−1”を用いて行うことができる。
コールドスプレー用金属粉末中の第1の金属粒子の含有量の下限は20質量%である。換言すれば、コールドスプレー用金属粉末中の第2の金属粒子の含有量の上限は80質量%である。第1の金属粒子の含有量が20質量%以上である場合、すなわち第2の金属粒子の含有量が80質量%以下である場合には、コールドスプレー用金属粉末の皮膜形成能が向上する。皮膜形成能のさらなる向上のためには、第1の金属粒子の含有量は、30質量%以上であることが好ましく、より好ましくは40質量%以上である。換言すれば、コールドスプレー用金属粉末中の第2の金属粒子の含有量は、70質量%以下であることが好ましく、より好ましくは60質量%以下である。
【0024】
また、コールドスプレー用金属粉末中の第1の金属粒子の含有量の上限は70質量%である。換言すれば、コールドスプレー用金属粉末中の第2の金属粒子の含有量の下限は30質量%である。第1の金属粒子の含有量が70質量%以下である場合、すなわち第2の金属粒子の含有量が30質量%以上である場合には、コールドスプレー用金属粉末から形成される皮膜の硬度及び耐摩耗性が向上する。皮膜形成能のさらなる向上のためには、第1の金属粒子の含有量は、60質量%以下であることが好ましい。換言すれば、コールドスプレー用金属粉末中の第2の金属粒子の含有量は、40質量%以上であることが好ましい。
【0025】
本実施形態のコールドスプレー用金属粉末は、第1の金属粒子と第2の金属粒子を混合することにより調製することができる。第1の金属粒子及び第2の金属粒子を作製する方法は特に限定されない。第1の金属粒子及び第2の金属粒子は、例えば、ガスアトマイズ法、水アトマイズ法、遠心力アトマイズ法、プラズマアトマイズ法などのアトマイズ法により作製してもよいし、メルトスピニング法や回転電極法、あるいは粉砕又はメカニカルアロイングのような機械的プロセスにより作製してもよい。また、第1の金属粒子及び第2の金属粒子は、酸化物還元法、カルボニル反応法又は湿式冶金技術のような化学的プロセスにより作製してもよい。
【0026】
本実施形態のコールドスプレー用金属粉末は、コールドスプレー用途で用いられる。すなわち、コールドスプレー用金属粉末は、コールドスプレーにより基材上に金属皮膜を形成する用途で用いられる。一般にコールドスプレーは、作動ガス圧により高圧型と低圧型に分類される。すなわち、作動ガス圧が1MPa以下である場合を低圧型コールドスプレーといい、作動ガス圧が5MPa以下である場合を高圧型コールドスプレーという。高圧型コールドスプレーでは、主としてヘリウムガスや窒素を主成分としたガスもしくはそれらの混合ガス等の不活性ガスが作動ガスとして使用される。低圧型コールドスプレーでは、高圧型コールドスプレーで使用されるのと同じ種類のガスか、あるいは圧縮空気が作動ガスとして使用される。本実施形態のコールドスプレー用金属粉末は、低圧型コールドスプレー及び高圧型コールドスプレーのいずれで使用してもよいが、好ましくは低圧型コールドスプレーで使用される。
【0027】
コールドスプレー用金属粉末を高圧型コールドスプレー用途で使用する場合、作動ガスは好ましくは0.5〜5MPa、より好ましくは0.7〜5MPa、さらに好ましくは1〜5MPa、特に好ましくは1〜4MPaの圧力でコールドスプレー装置に供給されて、好ましくは100〜1000℃、より好ましくは300〜1000℃、さらに好ましくは500〜1000℃、特に好ましくは500〜800℃にまで加熱される。コールドスプレー用金属粉末は、好ましくは1〜200g/分、さらに好ましくは10〜100g/分の供給速度でもって作動ガスと同軸方向から作動ガスに供給される。コールドスプレー時、コールドスプレー装置のノズル先端から基材までの距離(すなわち溶射距離)は、5〜100mmであることが好ましく、より好ましくは10〜50mmであり、コールドスプレー装置のノズルのトラバース速度は、好ましくは10〜300mm/秒、より好ましくは10〜150mm/秒である。また、形成する皮膜の膜厚は、好ましくは50〜1000μmであり、より好ましくは100〜500μmである。
【0028】
一方、コールドスプレー用金属粉末を低圧型コールドスプレー用途で使用する場合、作動ガスは好ましくは0.3〜1MPa、より好ましくは0.5〜1MPa、さらに好ましくは0.7〜1MPaの圧力でコールドスプレー装置に供給されて、好ましくは100〜600℃、より好ましくは250〜600℃、さらに好ましくは400〜600℃にまで加熱される。コールドスプレー用金属粉末は、好ましくは1〜200g/分、さらに好ましくは10〜100g/分の供給速度でもって作動ガスと同軸方向から作動ガスに供給される。コールドスプレー時、コールドスプレー装置のノズル先端から基材までの距離は、5〜100mmであることが好ましく、より好ましくは10〜40mmであり、コールドスプレー装置のノズルのトラバース速度は、好ましくは5〜300mm/秒、より好ましくは5〜150mm/秒である。また、形成する皮膜の膜厚は、好ましくは50〜1000μmであり、より好ましくは100〜500μm、さらに好ましくは100〜300μmである。
【0029】
本実施形態によれば、以下の利点が得られる。
・ 本実施形態のコールドスプレー用金属粉末は、第1の平均径を有する第1の金属粒子を20〜70質量%の量で含有し、残部が第1の平均径よりも大きな第2の平均径を有する第2の金属粒子からなることにより、粒子径がバイモーダルに分布しており、第2の金属粒子の平均径は、200μm以下でかつ第1の金属粒子の平均径の1.5倍以上である。このことにより、コールドスプレー用金属粉末は高い皮膜形成能を有しており、コールドスプレーにより(特に低圧型コールドスプレーでも)厚膜の皮膜を効率的に形成することができる。
【0030】
・ 第2の金属粒子の平均径が第1の金属粒子の平均径の3倍以上、さらに言えば5倍以上である場合には、コールドスプレー用金属粉末の皮膜形成能を向上させることができる。
【0031】
・ 第1の金属粒子の平均径が0.1μm以上、さらに言えば1μm以上又は5μm以上である場合(換言すれば、第2の金属粒子の平均径が0.15μm以上、さらに言えば1.5μm以上又は7.5μm以上である場合)には、コールドスプレー装置への金属粉末の供給を容易にすることができる。
【0032】
・ 第1の金属粒子の平均径が50μm以下、さらに言えば45μm以下又は30μm以下である場合には、コールドスプレー用金属粉末の皮膜形成能を向上させることができる。また、コールドスプレー用金属粉末から形成される皮膜の硬度を向上させることもできる。
【0033】
・ 第2の金属粒子の平均径が100μm以下、さらに言えば75μm以下又は50μm以下である場合には、コールドスプレー用金属粉末の皮膜形成能を向上させることができる。
【0034】
・ 第2の金属粒子のビッカース硬さが第1の金属粒子のビッカース硬さと同じかそれ以上である場合、さらに言えばその1.5倍以上、2倍以上又は3倍以上である場合には、コールドスプレー用金属粉末の皮膜形成能を向上させることができる。
【0035】
・ 第1の金属粒子のビッカース硬さが30以上、さらに言えば50以上である場合(換言すれば、第2の金属粒子のビッカース硬さが30以上、さらに言えば50以上である場合)には、コールドスプレー用金属粉末から形成される皮膜の硬度及び耐摩耗性を向上させることができる。
【0036】
・ 第1の金属粒子のビッカース硬さが800以下、さらに言えば700以下又は600以下である場合には、コールドスプレー用金属粉末の皮膜形成能を向上させることができる。
【0037】
・ 第2の金属粒子のビッカース硬さが1400以下、さらに言えば1200以下又は1000以下である場合には、コールドスプレー用金属粉末の皮膜形成能を向上させることができる。
【0038】
・ コールドスプレー用金属粉末中の第1の金属粒子の含有量が30質量%以上、さらに言えば40質量%以上である場合(換言すれば、第2の金属粒子の含有量が70質量%以下、さらに言えば60質量%以下である場合)には、コールドスプレー用金属粉末の皮膜形成能を向上させることができる。
【0039】
・ コールドスプレー用金属粉末中の第1の金属粒子の含有量が60質量%以下である場合(換言すれば、第2の金属粒子の含有量が40質量%以上である場合)には、コールドスプレー用金属粉末から形成される皮膜の硬度及び耐摩耗性を向上させることができる。
【0040】
前記実施形態は次のように変更してもよい。
・ コールドスプレー用金属粉末は、第1の金属粒子及び第2の金属粒子以外の成分を含有してもよい。ただし、第1の金属粒子及び第2の金属粒子以外の成分の含有量はできるだけ少ないことが好ましい。
【0041】
・ 第1の金属粒子及び第2の金属粒子はそれぞれ、金属微粒子を造粒して得られる造粒物(顆粒)を焼結することにより得られる造粒−焼結粒子であってもよい。
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。
【0042】
表1の“第1の粒子”欄に示す金属粒子及び“第2の粒子”欄に示す金属又はセラミックス粒子からなる実施例1〜10及び比較例1〜4の粉末を用意し、表2に示す条件でそれぞれ基材に向けてコールドスプレーした。
【0043】
【表1】

【0044】
【表2】

表1の“第1の粒子”欄及び“第2の粒子”欄中の“種類”欄には、実施例1〜10及び比較例1〜4の各粉末中に含まれる第1の粒子及び第2の粒子がそれぞれどのような種類の金属又はセラミックスから形成されているかを示す。同欄中、“Ni”はニッケルを、“Al”はアルミニウムを、“Cu”は銅を、“Ni−50Cr”は50質量%のニッケルと残部のクロムからなるニッケルクロム合金を、“WC”は炭化タングステンを、“Fe−60Cr−5C”は60質量%のクロムと5質量%の炭素と残部の鉄からなる鉄クロム合金を表す。
【0045】
表1の“第1の粒子”欄及び“第2の粒子”欄中の“含有量”欄には、実施例1〜10及び比較例1〜4の各粉末中に第1の粒子及び第2の粒子がそれぞれどれだけ含有されているかを示す。
【0046】
表1の“第1の粒子”欄及び“第2の粒子”欄中の“平均粒径”欄には、実施例1〜10及び比較例1〜4の各粉末中の第1の粒子及び第2の粒子の平均径(体積平均径)を測定した結果を示す。この測定には、株式会社堀場製作所製のレーザー回折/散乱式粒度測定機“LA−300”を使用した。
【0047】
表1の“第1の粒子”欄及び“第2の粒子”欄中の“ビッカース硬さ”欄には、実施例1〜10及び比較例1〜4の各粉末中の第1の粒子及び第2の粒子のビッカース硬さ(Hv0.2)を測定した結果を示す。この測定には、株式会社島津製作所製の微小硬度測定器“HMV−1”を使用した。
【0048】
表1の“皮膜形成能”欄には、実施例1〜10及び比較例1〜4の各粉末を表2に示す条件でコールドスプレーしたときに1パス当たりに形成される皮膜の厚さに基づいて各粉末の皮膜形成能を評価した結果を示す。具体的には、1パス当たりに形成される皮膜の厚さが300μm以上であった場合には良(◎)、200μm以上300μm未満であった場合には可(○)、200μm未満であった場合又は皮膜を形成できなかった場合には不良(×)と評価した。
【0049】
表1の“皮膜ビッカース硬さ”欄には、実施例1〜10及び比較例1〜4の各粉末を表2に示す条件でコールドスプレーして得られた皮膜のビッカース硬さ(Hv0.2)を測定した結果を示す。この測定には、株式会社島津製作所製の微小硬度測定器“HMV−1”を使用した。同欄中の“−(ハイフン)”は、皮膜を形成できなかったことを表す。
【0050】
表1に示されるように、実施例1〜10の粉末の場合には、皮膜形成能の評価がいずれも可以上であった。それに対し、比較例1〜4の粉末の場合には、皮膜形成能の評価が不良であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コールドスプレー用途で使用される金属粉末であって、
金属粉末は、第1の平均径を有する第1の金属粒子を20〜70質量%の量で含有し、残部が第1の平均径よりも大きな第2の平均径を有する第2の金属粒子からなることにより、粒子径がバイモーダルに分布しており、
前記第2の金属粒子の平均径は、200μm以下でかつ前記第1の平均径の1.5倍以上である、コールドスプレー用金属粉末。
【請求項2】
前記第2の金属粒子のビッカース硬さは、前記第1の金属粒子のビッカース硬さと同じかそれ以上でかつ1400以下である、請求項1に記載のコールドスプレー用金属粉末。
【請求項3】
前記第1の金属粒子のビッカース硬さは30〜800である、請求項1又は2に記載のコールドスプレー用金属粉末。
【請求項4】
前記第1の平均径は0.1〜50μmである、請求項1〜3のいずれか一項に記載のコールドスプレー用金属粉末。
【請求項5】
前記コールドスプレー用途は、1MPa以下の作動ガス圧で行われる低圧型コールドスプレー用途である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のコールドスプレー用金属粉末。

【公開番号】特開2012−31443(P2012−31443A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−169548(P2010−169548)
【出願日】平成22年7月28日(2010.7.28)
【出願人】(000236702)株式会社フジミインコーポレーテッド (126)
【Fターム(参考)】