説明

コーンカップの処理方法

【課題】長期間密封包装中に保管したコーンカップに付着した不快な臭いを除去し、コーンカップの食感をも改善する。
【解決手段】不快な臭いが付着したコーンカップを加熱および(または)乾燥することにより、上記の課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ソフトクリームやアイスクリームなどの可食容器として用いられるコーンカップに関するものであり、より詳しくは、コーンカップを長期間保管したときに生じる不快な臭いを除去し、かつコーンカップの食感を改善するための処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コーンカップは、通常、小麦粉、澱粉などの材料に植物油脂、食塩、乳化剤、香料、着色剤などを添加してなる生地を焼成して製造される。
このようにして製造されるコーンカップは、使用されるまでの間に湿りやすいため、通常、15〜20個を重ねて、ポリプロピレンまたはポリエチレン製の細長い袋に収容され、使用時期がくるまでソフトクリームやアイスクリーム(以下、「アイスクリーム」という)の販売店で保管されたのち、アイスクリーム販売店の店頭などで顧客の注文に応じて、袋から取り出したコーンカップにアイスクリームを盛り付けて顧客に提供される。
【0003】
コーンカップの使用時期がきて、アイスクリームの販売店で包装用の袋を開封したとき、保管環境や保管期間にもよるが、コーンカップ製造時に添加された植物油脂に由来すると思われる油の酸化臭を含む不快な臭いがコーンカップに付着していることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
個々のコーンカップに付着している臭いは微々たるものであっても、15〜20個のコーンカップをまとめて取り扱うアイスクリーム販売店の人たちにとっては、包装袋を開封するたびにこの臭いを我慢しなければならないという問題があった。
【0005】
また、そのようなコーンカップにアイスクリームを盛ると、アイスクリーム自体に問題がなくても、アイスクリームを食べるときにこの臭いが鼻先に漂う恐れがあり、商品としての品質が疑われかねない。
【0006】
このような問題は、まだ顕在化してはいないが、将来、表立った問題となる可能性もあるため、予防的に解決しておくことが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、このような事情に鑑み、関係者にまだ認識されていない問題を解決することを課題として、鋭意検討を重ねた結果、コーンカップを送風下に加熱および(または)乾燥することにより、上記のような不快臭が抜けて、問題を解決できることを見出し、本発明を完成するに到った。
【発明の効果】
【0008】
本発明の方法によれば、包装用の袋内に長期間保管されたコーンカップに付着した不快な臭いが、店頭などで手軽に短時間で除去され、コーンカップ本来の風味が回復するばかりでなく、湿気が除かれることによりコーンカップ自体の食感(クリスピー性)、いわゆるパリパリ感も改善される。
したがって、アイスクリームそのものに加えて、コーンカップを焼菓子としても味わうことができ、アイスクリームの販売促進にも寄与できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の方法は、保管用の包装袋を開封して取り出したコーンカップを加熱および(または)乾燥することにより行われる。
本発明の方法が適用されるコーンカップは、特に限定されず、いわゆるケーキコーンおよびワッフルコーンなど、いずれのコーンにも本発明の方法を適用することができる。
【0010】
本発明の方法において、コーンカップを加熱および(または)乾燥するための装置は、特に限定されず、加熱および(または)乾燥を行えるものであればよく、具体的には、例えば、コーヒーカップを温めるのに用いられるカップウォーマーや電子レンジなどを好適に用いることができる。そのほか、おしぼり温蔵器や食器乾燥器なども、処理時間は長くなるが、本発明の方法において使用することができる。
【0011】
コーンカップを加熱するときの加熱温度および処理時間は、適宜設定することができる。
例えば、カップウォーマーを使用するときには、通常、加熱温度は60〜80℃程度、処理時間は加熱温度にもよるが、通常30〜90分程度で十分である。このときのコーンカップの表面温度は、サーモラベルで測定したとき、約65〜90℃となっている。
加熱温度が約140℃を超えて1時間以上も加熱すると、コーンカップが焦げるおそれがあるため、加熱温度は高くても約140℃以下であるのが好ましい。
また、電子レンジを使用するときには、1.5kwの電子レンジで20秒間加熱したときに相当する程度の熱量が適当である。このときのコーンカップの表面温度は、サーモラベルで測定したとき、約140℃〜180℃となっている。
【0012】
また、コーンカップの乾燥は、通常、コーンカップを常温の空気または加温した空気の送風下に約30〜90分程度置くことにより行われ、加温した空気を送風するときには、それだけ処理時間を短縮することができる。
したがって、本発明によるコーンカップの処理は、送風下に加熱する方法により行うのが好ましい。
上記の処理は、袋から取り出したコーンカップを重ね合わせたまま行ってもよいが、コーンカップを一つ一つばらしてから行えば、処理効率がよくて好ましい。
【0013】
上記のようにして処理されたコーンカップにアイスクリームを直ちに盛り付けても差し支えないが、処理済みのコーンカップを5〜10分間ほど冷ましてからアイスクリームを盛り付けるのが好ましい。
【実施例】
【0014】
以下、本発明の方法を実施例により説明し、その効果を試験例により説明するが、本発明の方法はこれらの実施例により制限されるものではない。
以下の実施例および比較例では、ケーキコーン(日世株式会社製、商品名:ローレルトップコーン)およびワッフルコーン(日世株式会社製、商品名:ワッフルコーンS)を試験すべきコーンカップとして用いた。
出荷前(賞味期限内)のコーンカップを「良品」とし、良品を虐待処理したものを「劣化品」とした。上記の虐待処理は、温度60℃、・湿度80%の恒温・恒湿庫内で良品を25〜30日間保管することにより行った。
【0015】
実施例1
コーンカップの劣化品10個を、カップウォーマー(タイジ(株)製、カップウォーマーDA501、100V、350W)に入れ、加熱(温度:76℃)送風モードで1時間処理した。
【0016】
実施例2
実施例1における加熱送風モードの代わりに、加熱(温度:76℃)モードで1時間処理した。
【0017】
実施例3
実施例1における加熱送風モードの代わりに、送風(温度:25〜28℃)モードで1時間処理した。
【0018】
実施例4
ケーキコーンの劣化品1個を、電子レンジ(三洋電機(株)製、EM−1501型、1.5kw)の中央部に置き、20秒間加熱処理した。
【0019】
比較例1
コーンカップの劣化品20個を、除湿機を備えた定温庫(温度:16.5〜18.5℃、湿度:28.9〜32.3%)に入れ、33時間放置した。
【0020】
比較例2
コーンカップの劣化品20個を、除湿機を備えない定温庫(平均温度:25.3℃、平均湿度:67.0%)に入れ、33時間放置した。
【0021】
比較例3
コーンカップの劣化品20個を、温度および湿度を調節しない実験室(平均温度:26.7℃、平均湿度:50.2%)内で、33時間放置した。
【0022】
試験例1
劣化品1個と良品2個とを組み合わせ、3個のコーンカップのうち臭いがあるものを一つ選択するトライアングルテストを、10名のパネラーについて実施し、選択されたものが劣化品であった場合に正解とした。
結果を表1に示す。
【0023】
【表1】

上記の結果から、劣化品の酸化臭は明確に判別できることが確認された。
【0024】
試験例2
比較例1〜3で33時間放置した後のコーンカップについて、酸化臭の有無をパネラー10名により試験したところ、すべてのパネラーがいずれのコーンカップも酸化臭ありと判定した。
したがって、劣化品の酸化臭は、包装袋から取り出した後、33時間放置しただけでは消失しないことが確認された。
【0025】
試験例3
ケーキコーンおよびワッフルコーンのそれぞれについて、良品、処理品(実施例1〜3)および劣化品各1個からなる1組のコーンカップを、10名のパネラーに手渡し、処理品および劣化品について、良品の臭いを基準として、臭いの程度を、臭いなし:○、若干臭いあり:△、臭いあり:×として評価した。
結果を以下の表2−1〜表2−6および表3−1〜表3−2に示す。
【0026】
【表2−1】

【0027】
【表2−2】

【0028】
【表2−3】

【0029】
【表2−4】

【0030】
【表2−5】

【0031】
【表2−6】

上記の表2−1〜表2−6の結果を、○:3点、△:2点、×:1点として数量化して、次の表3−1および表3−2に示す。
【0032】
【表3−1】

【0033】
【表3−2】

以上の結果から、加熱処理したものと送風下に加熱処理したものとは殆ど同等であり、送風処理したものには臭いが若干残っていると判定された。
【0034】
試験例4
ケーキコーンについて、良品、処理品(実施例4)および劣化品各1個からなる1組のコーンカップを、10名のパネラーに手渡し、処理品および劣化品について、良品の臭いを基準として、臭いの程度を、臭いなし:○、若干臭いあり:△、臭いあり:×として評価した。
結果を以下の表4に示す。
【0035】
【表4】

上記の表4の結果を、○:3点、△:2点、×:1点として数量化して、次の表5に示す。
【0036】
【表5】

以上の結果から、マイクロ波による加熱処理(1.5kw、20秒)も有効であると判定した。
【0037】
試験例5
実施例1〜4で得られた処理品および未処理の劣化品について、次の方法により水分値を測定した。
コーンカップ1個をミキサーで粉砕して得られる粉末を5g秤量して試料とし、赤外線水分計(株式会社ケット科学研究所製、FD−720)を用い、110℃で5分間乾燥させた後、水分を測定した。結果を次の表6に示す。
【0038】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーンカップを加熱および(または)乾燥することにより、コーンカップに付着した不快な臭いを除去することを特徴とする、コーンカップの処理方法。
【請求項2】
加熱温度が60〜90℃である、請求項1に記載の処理方法。
【請求項3】
加熱が送風下に行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
処理がカップウォーマーを用いて行われる、請求項1〜3のいずれかに記載の処理方法。
【請求項5】
処理されるコーンカップの表面温度が65〜90℃となる請求項4に記載の処理方法。
【請求項6】
処理が電子レンジを用いて行われる、請求項1に記載の処理方法。
【請求項7】
マイクロ波の出力が1.5kwで20秒間の加熱、またはそれに相当する熱量で行われる、請求項6に記載の処理方法。
【請求項8】
処理されるコーンカップの表面温度が140〜180℃となる、請求項6または7に記載の処理方法。

【公開番号】特開2011−97901(P2011−97901A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−256306(P2009−256306)
【出願日】平成21年11月9日(2009.11.9)
【出願人】(000226895)日世株式会社 (24)
【Fターム(参考)】