説明

ゴキブリ捕獲器

【課題】ゴキブリが逃げ出しそうな不安をユーザに抱かせないゴキブリ捕獲器を提供する。
【解決手段】ゴキブリ捕獲器1は、容器2と、容器2内に収容された粘着剤3とを備えている。粘着剤3は、ゴキブリCを捕らえると共に、捕らえたゴキブリCを容器2の底部へ沈み込ませていく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器内に粘着剤を収容したゴキブリ捕獲器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、容器内に粘着剤を収容したゴキブリ捕獲器が知られている。
【0003】
特許文献1,2に係るゴキブリ捕獲器は、粘着剤が底面に薄く設けられた容器を備えている。具体的には、容器の底面に粘着剤が塗布されていたり、粘着剤が塗布されたシートが容器の底面に貼付されていたりする。このように構成されたゴキブリ捕獲器は、容器内に侵入したゴキブリが粘着剤に触れると、粘着剤がゴキブリに粘り着いてゴキブリを捕獲する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭60−57984号公報
【特許文献2】特開2007−159521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このように構成されたゴキブリ捕獲器に関して、インターネットによるアンケート調査を実施した結果、ユーザには様々な不満点があることが明らかになった。詳しくは、20代〜50代の男女545名にインターネット上で協力を依頼して、満足点及び不満点に関して、複数の選択肢の中から該当するものを複数回答で選択してもらった。その結果、ゴキブリ捕獲器の不満点として、捨てるときにゴキブリが見えること(1位:44.0%)、捨てるときに不潔だと感じること(2位:39.1%)、見た目が汚いこと(3位:35.4%)等が挙げられている。その一方で、ゴキブリ捕獲器の満足点として、手軽に使えること(1位:52.8%)、ゴキブリが捕まったという効果が目に見えること(2位:49.1%)、隙間に置くことができること(3位:44.3%)等が挙げられている。このアンケート結果によれば、ユーザはゴキブリが見えていることに不満を抱いている一方で、ゴキブリが見えていることに満足感を覚えるという矛盾した心理を露呈している。
【0006】
そこで、発明者は、このユーザの矛盾した心理状況を解明すべく、さらに詳しい調査を行った。具体的には、ゴキブリ捕獲器に捕獲されているがゴキブリが生きている状態のものと、ゴキブリ捕獲器に捕獲されているがゴキブリが完全に死んでいる状態のものとを調査対象者に見せて、感想を尋ねた。その結果、ほとんどの対象者がゴキブリが動いている方が気持ち悪いと答え、その理由として、ゴキブリが逃げ出しそうに感じる、ゴキブリが生きていること自体が気持ち悪い、ゴキブリがもがいている姿が見苦しい等を自由回答として挙げた。
【0007】
続いて、発明者は、生きているゴキブリが捕獲されたゴキブリ捕獲器を透明のカバーで覆った状態で、調査対象者に見せて、感想を尋ねた。その結果、ほとんどの対象者が、気持ち悪さが軽減すると答え、その理由として、ゴキブリが外へ逃げ出しそうにないから、ゴキブリが剥き出しになっていないから、ゴキブリに触れることがないから等を自由回答として挙げた。
【0008】
これらの聞き取り調査の結果、発明者は、ユーザがゴキブリが見えていることに不満を感じている大きな理由の1つは、ゴキブリが逃げ出しそうな感覚を覚えるためであるという結論に至った。
【0009】
ゴキブリ捕獲器の分野では、従来、如何により多くのゴキブリを効率良く捕獲するかということに主眼をおいて開発が進められてきた。そして、ユーザがゴキブリ捕獲器に対して抱える潜在的な不満点についてはほとんど考慮されてこなかった。
【0010】
つまり、本発明者は、従来のゴキブリ捕獲器では、ユーザは、剥き出しの状態のゴキブリが逃げ出すのではないかという不安を抱えているという課題を初めて見出した。
【0011】
ここに開示された技術は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ゴキブリが逃げ出しそうな不安をユーザに抱かせないゴキブリ捕獲器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
ここに開示されたゴキブリ捕獲器は、容器と、前記容器内に収容された粘着剤とを備えている。そして、前記粘着剤は、ゴキブリを捕らえると共に、捕らえたゴキブリを前記容器の底部へ沈み込ませていくようにしたものとする。
【0013】
前記の構成の場合、まず、粘着剤に触れたゴキブリを粘着剤の粘着力により捕らえる。そして、捕らえたゴキブリを容器の底部へ向かって粘着剤の内部へ沈み込ませていく。こうして、ゴキブリは、容器の底部へ沈み込み、歩脚や胴体(頭部、胸部及び腹部)が粘着剤に漬かった状態となる。こうすることで、捕らえられたゴキブリは粘着剤に漬かって動けない状態になっているため、ゴキブリが逃げ出すのではないかというユーザの不安を解消することができる。
【0014】
また、ここに開示されたゴキブリ捕獲器は、容器と、前記容器内に収容された粘着剤とを備えている。そして、前記粘着剤の、40℃における動粘度は、45000〜320000mm/sとすることが好ましい。
【0015】
前記の構成の場合、粘着剤は、該粘着剤に触れたゴキブリに粘り着いて、該ゴキブリを捕獲できる程度の粘着性を有している。さらに、この粘着剤は、捕らえたゴキブリを沈み込ませることができる程度の軟らかさを有している。そのため、前述の範囲の動粘度を有する粘着剤を用いることによって、ゴキブリを捕らえると共に、捕らえたゴキブリを前記容器の底部へ沈み込ませていくことができる。
【0016】
前記容器内には、捕らえられて底部に沈み込んだゴキブリが前記粘着剤に完全に覆われるだけの量以上の該粘着剤が収容されていることが好ましい。
【0017】
こうすることで、容器の底部へ沈み込んだゴキブリは、その肢体が粘着剤に完全に覆われるようになる。その結果、ゴキブリが逃げ出さないという安心感をより強くユーザに与えることができる。また、ゴキブリが剥き出しにならないため、見た目の気持ち悪さを低減することができる。さらに、ゴキブリ捕獲器を処理する際に、ゴキブリに触れてしまうという不安をなくすことができる。さらにまた、ゴキブリが粘着剤内に完全に漬かり切った状態となるため、容器内の粘着剤の表面にはゴキブリがほとんど露出しておらず、表面の略全面が新たな粘着面となる。その結果、粘着剤の表面がゴキブリで埋め尽くされることがないため、次から次へとゴキブリを捕獲することができ、捕獲効率を高めることができる。
【0018】
前記容器の底部は、内方に向かって深さが深くなっているようにしてもよい。
【0019】
すなわち、ゴキブリは容器の縁から容器内に侵入してくるため、多くのゴキブリは、容器内の周縁部近傍の粘着剤に捕らえられる。そのまま、ゴキブリが粘着剤内へ沈んでいくと、容器の底部のうち周縁部にゴキブリが貯まっていく。それに対して、前記の構成の場合、底部が容器の内方に向かって深くなっているため、容器内の周縁部近傍において捕らえられたゴキブリは、該周縁部近傍において容器の底部まで沈んでいくものの、底部に到達した後、深さが深くなっている容器の内方へ向かって容器の底部を移動していく。その結果、容器の周縁部近傍にばかりゴキブリが貯まっていくことを防止することができる。
【0020】
前記粘着剤は、透明又は半透明であってもよい。
【0021】
こうすることで、ゴキブリが粘着剤に完全に漬かった状態であっても、ゴキブリを視認することができる。その結果、ゴキブリを捕獲できたという効果を顕在化して、ユーザに満足感を与えることができる。
【0022】
また、前記粘着剤は、ポリブテンであることが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
前記ゴキブリ捕獲器によれば、粘着剤の粘着力によってゴキブリを捕らえることができると共に、捕らえたゴキブリを容器の底部へ向かって粘着剤内に沈み込ませて、ゴキブリの歩脚や胴体を粘着剤に漬かった状態にすることができる。その結果、ゴキブリが動けないこと又はゴキブリが死んでいることをユーザに認識させることができるため、ゴキブリが逃げ出さないという安心感をユーザに与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態に係るゴキブリ捕獲器を示す概略的な斜視図である。
【図2】ゴキブリ捕獲器を示す概略的な断面図である。
【図3】ゴキブリ捕獲器によってゴキブリを捕獲するときの様子を示す説明図であって、(A)はゴキブリが粘着剤に触れたときを、(B)はゴキブリが粘着剤に沈んでいくときを、(C)はゴキブリが容器の底部において中央に移動していくときを、(D)は複数のゴキブリが容器の底部に貯まった状態を示す図である。
【図4】実験に用いたゴキブリ捕獲器を示す断面図である。
【図5】その他の実施形態に係るゴキブリ捕獲器を示す概略的な断面図である。
【図6】その他の実施形態に係る別のゴキブリ捕獲器を示す概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0026】
《発明の実施形態》
図1は、本発明の実施形態に係るゴキブリ捕獲器1を示す概略的な斜視図であって、図2は、ゴキブリ捕獲器1の概略的な断面図である。このゴキブリ捕獲器1は、容器2と、容器2内に収容された粘着剤3とを備えていて、容器2内に侵入したゴキブリCを粘着剤3で捕獲するものである。
【0027】
前記容器2は、椀状の容器本体21と、容器本体21の開口縁部に連結されたスロープ部22とを有している。
【0028】
容器本体21は、内方に向かって深さが深くなるように、底部が湾曲している。詳しくは、容器本体21は、中央部が最も深くなっている。
【0029】
スロープ部22は、円錐台の側周面状に形成され、容器本体21の開口縁部の全周に亘って連結されている。詳しくは、スロープ部22は、上端縁が容器本体21の開口縁部に連結されていて、上端縁から下端縁に向かって径方向外方に広がるように傾斜している。このスロープ部22の傾斜角度は、ゴキブリが該スロープ部22を登ることができる程度の角度に設定されている。
【0030】
この容器2の容器本体21内に、粘着剤3が収容されている。また、本実施形態では、より捕獲効率を高めるために、粘着剤3の表面に誘引剤4が散布されている。容器本体21内には、捕らえられて底部に沈み込んだゴキブリが粘着剤3に完全に覆われるだけの量以上の粘着剤3を収容している。この粘着剤3の量は、捕獲するゴキブリの種類、量に応じて設定され得る。ここで、日本の代表的なゴキブリの体格を表1に示す。
【0031】
【表1】

【0032】
具体的には、粘着剤3の厚さ(粘着剤3の表面から、容器本体21の最も深い部分(中央部)までの深さ)は、5〜30mm程度に設定されている。チャバネゴキブリを主な捕獲対象とする場合には、粘着剤3の厚さは5mmでも十分である。一方、クロゴキブリやワモンゴキブリを主な捕獲対象とする場合には、粘着剤3の厚さは10mm以上に設定される。
【0033】
前記粘着剤3は、ゴキブリCを捕らえると共に、捕らえたゴキブリCを前記容器2の底部へ沈み込ませていくものである。つまり、粘着剤3には、ゴキブリCを逃がすことなく捕らえることができる粘着性と、捕らえたゴキブリCがその自重で沈んでいくだけの柔軟性とを備えている。粘着剤3は、一例として、ポリブテンで構成されている。粘着剤3の、40℃における動粘度は、45000〜320000mm/sであることが好ましい。こうすることで、粘着剤3はそれに触れたゴキブリCに粘り着いて、ゴキブリCを捕らえることができると共に、捕らえたゴキブリCを容器2の底部へ向かって粘着剤3の内部へ沈み込ませることができる。つまり、動粘度を45000mm/s以上とすることによって、粘着剤3の粘着力を十分確保することができる。そのため、粘着剤3に触れたゴキブリCに粘着剤3が粘り着いて、ゴキブリCの自由を奪い、ゴキブリCが粘着剤3から逃げ出すことを抑止することができる。また、動粘度を320000mm/s以下とすることによって、ゴキブリCを沈み込ませるだけの、粘着剤3の軟らかさを確保することができる。そのため、粘着剤3で捕らえたゴキブリCを、容器2の底部へ向かって粘着剤3内へ沈み込ませることができる。
【0034】
例えば、粘着剤3としては、日石ポリブテン(製品名)のグレードHV−1900(数平均分子量:2900V.P.O、40℃における動粘度:160000mm/s、流動点:17.5℃)を用いることが好ましい。また、粘着剤3としては、日石ポリブテンのグレードHV−300(数平均分子量:1400V.P.O、40℃における動粘度:26000mm/s、流動点:0℃)やHV−3000(数平均分子量:3700V.P.O、40℃における動粘度:320000mm/s、流動点:22.5℃)を用いてもよい。
【0035】
このように構成されたゴキブリ捕獲器1によりゴキブリを捕獲する様子を図3を参照しながら説明する。まず、図3(A)に示すように、ゴキブリCが誘引剤4に引き寄せられて、容器2のスロープ部22をよじ登ってくる。スロープ部22を登ったゴキブリCは、誘引剤4に向かってさらに進み、容器本体21内へ侵入する。容器本体21には粘着剤3が収容されているため、容器本体21内へ侵入したゴキブリCは、粘着剤3に触れる。粘着剤3は、粘着剤3に触れたゴキブリCの身動きが不自由になる程度の粘着性を有している。そのため、粘着剤3は、ゴキブリCに粘り着いてゴキブリCの身動きを拘束して、ゴキブリCを捕らえる。
【0036】
従来のゴキブリ捕獲器であれば、ここで、ゴキブリCの捕獲が完了する。しかし、本実施形態では、ここから、捕獲したゴキブリCを粘着剤3内に沈み込ませていく。すなわち、粘着剤3は、ゴキブリCの自重によりゴキブリCが容器2の底部に沈み込んでいく程度の動粘度を有している。そのため、粘着剤3が粘り着いて、身動きが取り難くなったゴキブリCは、図3(B)に示すように、容器2の底部に向かって粘着剤3の内部へ、しだいに沈んでいく。ここで、粘着剤3は、粘着剤3に触れたゴキブリCを逃がすことなく捕獲できる程度の動粘度を有しているため、ゴキブリCは粘着剤3中に瞬時に沈み込むのではなく、時間をかけて徐々に沈み込んでいく。
【0037】
ゴキブリCが容器2の底部に到達すると、容器2の底部は中央部が最も深くなるように湾曲しているため、図3(C)に示すように、ゴキブリCは容器2の底部の形状に沿って中央部へ移動していく。こうして、ゴキブリCの捕獲が完了する。
【0038】
このように、捕獲されたゴキブリCが容器2の底部に沈み込んでいくと、粘着剤3の表面には、新たな粘着面が形成される。すなわち、粘着剤3の表面がゴキブリCで専有されることがなく、次々にゴキブリを捕獲しては、容器2の底部へ沈めていくことができる。その結果、容器2の底部には、図3(D)に示すように、捕獲されたゴキブリCが次々に貯まっていく。
【0039】
したがって、本実施形態によれば、粘着剤3によって、ゴキブリCを逃がすことなく捕獲することができ、それに加えて、ゴキブリCを容器2の底部へ向かって粘着剤3内へ沈み込ませることができる。すなわち、従来であれば、ゴキブリCの歩脚が粘着剤3にくっついているだけ(胴体がくっついているとしても、腹面がくっついているだけ)であるのに対し、本実施形態では、ゴキブリCが粘着剤3に漬かった状態となる。こうして、ゴキブリCは、歩脚及び胴体が粘着剤3で覆われるため、動けなくなる。その結果、ゴキブリCは動けない、又は死んでいるという安心感をユーザに与えることができる。こうして、ゴキブリCが逃げ出しそうな不安をユーザに与えないようにして、ゴキブリ捕獲器1に対するユーザの不満を解消することができる。
【0040】
また、容器2内には、容器2の底部に沈み込んだゴキブリCが粘着剤3に完全に覆われるだけの量以上の粘着剤3が収容されているため、捕獲したゴキブリCを粘着剤3で完全に覆うことができる。その結果、ゴキブリCが逃げ出さないという安心感をより強くユーザに与えることができる。また、捕獲したゴキブリCが剥き出しになることを防止することができる。その結果、ゴキブリCの見た目の気持ち悪さを軽減することができる。さらに、ゴキブリ捕獲器1を処理する際に、ゴキブリCに触れてしまうという不安をなくすことができる。
【0041】
それに加えて、粘着剤3を透明に構成することによって、捕獲したゴキブリCを視認可能にすることができ、ゴキブリCが捕獲できたという効果を顕在化させることができる。ここで、ユーザは、剥き出しの状態のゴキブリが逃げ出すのではないかという不安を抱えながら、それでも捕獲されたゴキブリの姿を見て満足したいという複雑な心理にある。つまり、前記粘着剤3を透明に構成することによって、逃げ出す可能性がないゴキブリを視認したいというユーザ心理を満たすことができる。尚、粘着剤3中のゴキブリCの存在が視認できる程度であれば、粘着剤3を半透明にしてもよい。粘着剤3を半透明にすることで、ゴキブリCの気持ち悪さを軽減することもできる。
【0042】
また、ゴキブリCが容器2の底部に沈んで粘着剤3に完全に漬かった状態となると、粘着剤3の表面には新たな粘着面が形成される。その結果、次々にゴキブリCを捕獲することができる。従来のゴキブリ捕獲器では、粘着剤のうち、ゴキブリCを捕獲した部分はゴキブリCに専有されるため、別のゴキブリCを同じ部分で捕獲することができない。つまり、従来のゴキブリ捕獲器は、粘着剤の表面を埋め尽くすだけのゴキブリCまでしか、即ち、粘着剤の面積に応じたゴキブリCしか捕獲することができない。それに対して、本実施形態に係るゴキブリ捕獲器1によれば、粘着剤3の表面を埋め尽くすだけのゴキブリCを捕獲したとしても、それらは、容器2の底部に沈んでいき、新たな粘着剤3の表面(即ち、粘着面)が形成されるため、粘着剤の表面を埋め尽くすだけのゴキブリCよりも多くのゴキブリCを捕獲することができる。具体的には、ゴキブリCが容器2の底部に沈んでいくにつれて、粘着剤3の表面も上昇するため、ゴキブリ捕獲器1は、粘着剤3の表面が容器2の上端縁に達するまでゴキブリCを捕獲し続けることができる。すなわち、ゴキブリ捕獲器1は、粘着剤3又は容器2の体積に応じたゴキブリCを捕獲することができる。こうして、捕獲効率を高めることができる。
【実施例】
【0043】
続いて、本発明の実施例について説明する。
【0044】
様々な粘着剤について、ゴキブリCの逃げ率と沈み込みの可否を調べる実験を行った。具体的には、まず、図4に示すような容器2内に、深さが約10mmとなる程度に粘着剤3を収容したゴキブリ捕獲器1を準備する。次に、ゴキブリCを容器2のスロープ部22の縁に放し、ゴキブリCの尾端をつついて、ゴキブリCを容器本体21へ追い込む。そして、ゴキブリCの前脚が粘着剤3に触れた時点から、ゴキブリCが逃げられるか否かを観測する。ここで、前脚が粘着剤3に触れ、そのまま粘着剤3に捕らえられたゴキブリCについては、「捕らえられた」と判定する。一方、前脚が粘着剤3に触れたにもかかわらず、ゴキブリCが容器本体21外へ脱出した場合には、「逃げた」と判定する。
【0045】
続いて、ゴキブリCが粘着剤3に沈み込んでいくか否かを判定する。捕らえられたゴキブリCについては、そのゴキブリCが粘着剤3へ沈み込むか否かで判定する。一方、逃げ率が高い水やゴマ油の場合には、逃げたゴキブリCを捕まえ一旦麻酔をかけて眠らせた上で粘着剤3上に乗せて、そのゴキブリCが粘着剤3へ沈み込むか否かで判定する。ゴキブリCの胴体全体が容器2の底部へ沈んだ場合は、「沈み込んだ」と判定し、ゴキブリCが浮くか容器2の底部まで沈み込まない場合は、「沈まない」と判定した。
【0046】
このような実験を、粘着剤3の種類を変えて、各粘着剤3につき10匹のゴキブリCで実験を行った。その実験結果を表2に示す。粘着剤3として、主に、動粘度の異なるポリブテンを用いて実験を行った。ポリブテン以外には、水、ゴマ油、エバータック(登録商標)のグレードSA−50Eを用いて実験を行った。エバータックのグレードSA−50Eは、従来のゴキブリ捕獲器の粘着剤として用いられるものである。尚、逃げ率については、ゴキブリCが逃げた割合を表3に示す0〜5の6段階に分けて表している。また、沈み込みについては、沈み込んだ場合を○で、沈まない場合を×で表している。
【0047】
【表2】

【0048】
【表3】

【0049】
表2からわかるように、粘着剤3の40℃の動粘度が3450mm/s以上320000mm/s以下であれば、ゴキブリCの逃げ率を30%以下に抑えることができる。また、粘着剤3の40℃の動粘度が45000mm/s以上320000mm/s以下であれば、ゴキブリCの逃げ率を10%以下に抑えることができ、逃げ率をより低下させることができる。さらに、粘着剤3の40℃の動粘度が80000mm/s以上320000mm/s以下であれば、ゴキブリCの逃げ率を0%に抑えることができ、逃げ率を著しく低下させることができる。尚、エバータックの場合も、逃げ率は0%である。
【0050】
動粘度が3450mm/s以上320000mm/s以下のポリブテンにおいては、ゴキブリCが完全に沈み込んだ。さらに詳しくは、動粘度が26000mm/sのポリブテンでは、約5〜10分でゴキブリCが容器2の底部まで沈み込み、動粘度が160000mm/sのポリブテンでは、約1〜2時間でゴキブリCが容器2の底部まで沈み込んだ。尚、ゴマ油の場合も、ゴキブリCは完全に沈み込んだ。一方、エバータックの場合は、ゴキブリCは沈み込まなかった。エバータックのグレードSA−50Eは流動点が80℃であるため、ゴキブリCをその自重により沈み込ませるだけの軟らかさはない。尚、水の場合、ゴキブリCは浮いた。
【0051】
したがって、ゴキブリCを捕獲し且つ、ゴキブリCを粘着剤3内に沈み込ませるためには、40℃の動粘度が3450mm/s以上320000mm/s以下の粘着剤3を用いることが好ましい。また、40℃の動粘度が45000mm/s以上320000mm/s以下の粘着剤3を用いることがより好ましい。動粘度が45000mm/s未満であれば、ゴキブリCを捕獲できるとはいっても、逃げ率が30%以下であるのに対して、動粘度を45000mm/s以上とすることによって、逃げ率を10%以下にすることができ、ゴキブリCを高い確率で捕獲することができる。さらには、40℃の動粘度が80000mm/s以上320000mm/s以下の粘着剤3を用いることがさらに好ましい。動粘度を80000mm/s以上とすることによって、逃げ率を0%にすることができ、ゴキブリCをより確実に捕獲することができる。
【0052】
《その他の実施形態》
本発明は、前記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0053】
すなわち、前記実施形態では、容器2は、開口縁部が円形となった椀状に形成されているが、これに限られるものではない。つまり、容器2は、底を有する容器であれば、任意の形状を採用することができ、平面視が多角形の容器であってもよい。
【0054】
また、スロープ部22は容器本体21の全周に亘って設けられているがこれに限られるものではない。スロープ部22は、容器本体21の周方向において間隔を開けて複数設けられていてもよい。また、スロープ部22は、断面(図2で示す断面)が直線となるような形状ではなく、断面が曲線や階段状となる形状であってもよい。さらに、スロープ部22は省略することもできる。
【0055】
また、前記実施形態では、容器2の底部は湾曲しているが、これに限られるものではない。すなわち、容器2の底部は平らであってもよいし、図5に示すように、錐面に形成されていてもよい。
【0056】
さらに、前記実施形態では、誘引剤4が粘着剤3の表面に散布されているが、これに限られるものではない。すなわち、図6に示すように、容器本体21の底面の中央に設置台23が立設され、該設置台23上に誘引剤4を載置する構成であってもよい。これにより、誘引剤4が粘着剤3内に沈んでいくことを防止することができ、ゴキブリCの誘引効果を持続させることができる。
【0057】
尚、誘引剤4は必ずしも必要ではない。誘引剤4を設けないゴキブリ捕獲器であっても、ゴキブリを捕獲することができる。例えば、狭いところに入り込むゴキブリの習性を利用して、ゴキブリ捕獲器の設置場所を工夫することによって、誘引剤なしであっても、ゴキブリ捕獲器でゴキブリを捕獲することができる。
【0058】
また、前記実施形態では、容器2内には、容器2の底部に沈み込んだゴキブリCが粘着剤3に完全に覆われるだけの量以上の粘着剤3が収容されているが、粘着剤3の量はこれに限られるものではない。粘着剤3の量は、ゴキブリCが粘着剤3に漬かった状態、少なくとも、ゴキブリCの歩脚及び胴体の大半が粘着剤3に漬かった状態となる量であればよい。従来であれば、ゴキブリCの歩脚が粘着剤3にくっついているだけ(胴体がくっついているとしても、腹面がくっついているだけ)なので、ゴキブリCの歩脚及び胴体の大半が粘着剤3に漬かった状態となるのでば、従来のゴキブリ捕獲器に比べて、ゴキブリCが逃げ出すという不安を低減することができる。
【0059】
尚、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0060】
以上説明したように、本発明は、容器内に粘着剤を収容したゴキブリ捕獲器について有用である。
【符号の説明】
【0061】
1 ゴキブリ捕獲器
2 容器
3 粘着剤
C ゴキブリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器と、前記容器内に収容された粘着剤とを備えたゴキブリ捕獲器であって、
前記粘着剤は、ゴキブリを捕らえると共に、捕らえたゴキブリを前記容器の底部へ沈み込ませていくことを特徴とするゴキブリ捕獲器。
【請求項2】
容器と、前記容器内に収容された粘着剤とを備えたゴキブリ捕獲器であって、
前記粘着剤の、40℃における動粘度は、45000〜320000mm/sであることを特徴とするゴキブリ捕獲器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のゴキブリ捕獲器において、
前記容器内には、捕らえられて底部に沈み込んだゴキブリが前記粘着剤に完全に覆われるだけの量以上の該粘着剤が収容されていることを特徴とするゴキブリ捕獲器。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1つに記載のゴキブリ捕獲器において、
前記容器の底部は、内方に向かって深さが深くなっていることを特徴とするゴキブリ捕獲器。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1つに記載のゴキブリ捕獲器において、
前記粘着剤は、透明又は半透明であることを特徴とするゴキブリ捕獲器。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか1つに記載のゴキブリ捕獲器において、
前記粘着剤は、ポリブテンであることを特徴とするゴキブリ捕獲器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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