ゴマペースト入りチョコレート組成物
【課題】 (1)ざらつきがなく、好ましい食感を与える、ゴマペースト入りチョコレート組成物を提供すること。(2)ゴマの風味が豊かであるが、油っぽい食感を与えないゴマペースト入りチョコレート組成物を提供すること。(3)市販品ミルクチョコレートとほぼ同等の融点を示す、固体のゴマペースト入りチョコレート組成物を提供すること。
【解決手段】 チョコレート(A)と種皮付きゴマ粉砕ペースト(B)とを含むゴマペースト入りチョコレート組成物であって、その固形分の粒度分布における90%積算径は、チョコレート(A)のみの固形分の90%積算径×(0.95乃至1.25)の範囲内であることを特徴とする、ゴマペースト入りチョコレート組成物を調製する。
【解決手段】 チョコレート(A)と種皮付きゴマ粉砕ペースト(B)とを含むゴマペースト入りチョコレート組成物であって、その固形分の粒度分布における90%積算径は、チョコレート(A)のみの固形分の90%積算径×(0.95乃至1.25)の範囲内であることを特徴とする、ゴマペースト入りチョコレート組成物を調製する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴマの風味が香ばしい、ゴマペーストを配合したチョコレート組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
チョコレートは、代表的な洋菓子の一種である。チョコレートには、ナッツ類、果物類、酒類等の様々な添加物の配合が試みられており、また、そのような添加物入りの様々なチョコレートが販売されている。
【0003】
前記したように、チョコレートは洋菓子であるが、わが国においては、和風テイストな洋菓子も受け入れられている。したがって、そのような和風テイストなチョコレートについても、それを受け入れる市場があると考えられる。また、和風テイストなチョコレートとするための添加物の候補として、ゴマが挙げられる。
【0004】
例えば特許文献1には、二層のチョコレートでゼリー層を挟んでなり、ゼリー層とチョコレート層との間には、ゴマを含む種実の粗粉砕品やペーストが配されているチョコレート菓子が開示されている(図1b、図2b、段落番号[0012])。
【0005】
また、特許文献2には、練りゴマと粉末ココアとハチミツとを混合してなるチョコレート風味のペースト状健康食品が開示されている(請求項1)。さらに、特許文献3には、直径50μm以下に破潰したゴマと、乳製品と、甘味料と、酸味料と粘性物とを含み、カカオのチョコレートを含まない、チョコレート様食品が開示されている(請求項45、46及び51)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−50936
【特許文献2】特開平10−150951
【特許文献3】特開2008−22845
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、練りゴマ(以下においては「ゴマペースト」という)等をチョコレート生地自体に添加する場合、ゴマペースト中のゴマ破潰物の粒子の大きさやその分布によっては、ざらつきのある好ましくない食感となってしまう。また、ゴマペーストに由来するゴマ油の量によっては、油っぽい食感となってしまう。さらに、常温で固体のゴマペースト入りチョコレートの場合には、ゴマ油の存在のために、ゴマペーストの添加量によってはチョコレートの融点が低下し、我が国においては、冬季のみの季節限定商品となってしまう。
【0008】
本発明の目的は、ざらつきがなく、好ましい食感を与える、ゴマペースト入りチョコレート組成物を提供することにある。本発明の第二の目的は、ゴマの風味が豊かであるが、油っぽい食感を与えないゴマペースト入りチョコレート組成物を提供することにある。本発明のさらなる目的は、市販品ミルクチョコレートとほぼ同等の融点を示す、固体のゴマペースト入りチョコレート組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、チョコレートへの添加に適するゴマペーストについて研究し、本発明を完成させた。
【0010】
即ち、本発明は、チョコレート(A)と種皮付きゴマ粉砕ペースト(B)とを含むゴマペースト入りチョコレート組成物であって、その固形分の粒度分布における90%積算径は、チョコレート(A)のみの固形分の90%積算径×(0.95乃至1.25)の範囲内であることを特徴とする、ゴマペースト入りチョコレート組成物に関する。このようなチョコレート組成物における種皮付きゴマ粉砕ペースト(B)の含有量は、例えば、チョコレート(A)と種皮付きゴマ粉砕ペースト(B)との合計量の0.5乃至15重量%である。
【0011】
前記種皮付きゴマ粉砕ペースト(B)として、その固形分の粒度分布における50%積算径が4乃至15μmのもの、及び/又は、その固形分の粒度分布における90%積算径が15乃至120μmのものを使用することが好ましい。ここで、「50%積算径」及び「90%積算径」とは、粒度分布測定器で粒子径を測定した場合に、粒子径の頻度の累積が、それぞれ、50%となるとき(「d(50)」と記載する)及び90%(「d(90)」と記載する)となるときの粒子径をいう。
【0012】
前記種皮付きゴマ粉砕ペースト(B)として、焙煎した種皮付きゴマを微粉砕した後、浸出したゴマ油の少なくとも一部を除去したものを使用することも好ましい。ここで、ゴマ油の除去量は、例えば、除去前の全重量の10乃至30%である。
【0013】
本発明のチョコレート組成物には、その性状が固体であるものが包含される。ここで、「その性状が固体である」とは、常温(5−35℃)において、ほぼ固体であるものをいう。但し、30℃以上の環境下においては、軟化したり、若干溶融してもよい。固形チョコレートとして販売が可能な融点を示すものは、「その性状が固体」のチョコレート組成物である。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、ざらつきがなく、好ましい食感を与える、ゴマペースト入りチョコレート組成物が提供される。また、本発明により、ゴマの風味が豊かであるが、油っぽい食感を与えないゴマペースト入りチョコレート組成物が提供される。
【0015】
本発明により、市販品ミルクチョコレートとほぼ同等の融点を示す、固体のゴマペースト入りチョコレート組成物も提供される。したがって、我が国におけるゴマペースト入りチョコレートの販売時期が、冬季に限定されなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】明治ミルクチョコレートの固形分の粒度分布を示すグラフである。
【図2】黒ゴマペースト(一般品)の固形分の粒度分布を示すグラフである。
【図3】黒ゴマペースト(ミクロ)の固形分の粒度分布を示すグラフである。
【図4】黒ゴマペースト(ミクロ脱脂)の固形分の粒度分布を示すグラフである。
【図5】黒ゴマペースト(一般品)を5重量%含有するチョコレート組成物の固形分の粒度分布を示すグラフである。
【図6】黒ゴマペースト(一般品)を10重量%含有するチョコレート組成物の固形分の粒度分布を示すグラフである。
【図7】黒ゴマペースト(一般品)を15重量%含有するチョコレート組成物の固形分の粒度分布を示すグラフである。
【図8】黒ゴマペースト(一般品)を20重量%含有するチョコレート組成物の固形分の粒度分布を示すグラフである。
【図9】黒ゴマペースト(ミクロ)を5重量%含有するチョコレート組成物の固形分の粒度分布を示すグラフである。
【図10】黒ゴマペースト(ミクロ)を10重量%含有するチョコレート組成物の固形分の粒度分布を示すグラフである。
【図11】黒ゴマペースト(ミクロ)を15重量%含有するチョコレート組成物の固形分の粒度分布を示すグラフである。
【図12】黒ゴマペースト(ミクロ)を20重量%含有するチョコレート組成物の固形分の粒度分布を示すグラフである。
【図13】黒ゴマペースト(ミクロ脱脂)を5重量%含有するチョコレート組成物の固形分の粒度分布を示すグラフである。
【図14】黒ゴマペースト(ミクロ脱脂)を10重量%含有するチョコレート組成物の固形分の粒度分布を示すグラフである。
【図15】黒ゴマペースト(ミクロ脱脂)を15重量%含有するチョコレート組成物の固形分の粒度分布を示すグラフである。
【図16】黒ゴマペースト(ミクロ脱脂)を20重量%含有するチョコレート組成物の固形分の粒度分布を示すグラフである。
【図17】チョコレート組成物の融点を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係るチョコレート組成物は、必須成分として、チョコレート(A)、より具体的には、各種チョコレート生地の原料混合物、ペースト状チョコレートの原料混合物、又はココア(ホット又はアイスチョコレート)と、種皮付きゴマ粉砕ペースト(B)とを含有する。本発明に係るチョコレート組成物には、必須成分として、市販の固形チョコレートの各種原料と、種皮付きゴマ粉砕ペースト(B)とを含有するものが包含される。
【0018】
チョコレート(A)は、例えば、純チョコレート生地、純ミルクチョコレート生地、チョコレート生地、ミルクチョコレート生地、準チョコレート生地、準ミルクチョコレート生地と称されている組成物からなる。これらの生地の組成及び定義は、以下の通りである。
【0019】
(純チョコレート生地)
カカオ分35%以上、ココアバター18%以上、糖分(蔗糖に限る)55%以下、レシチン0.5%以下であり、レシチンとバニラ系香料以外の食品添加物は無添加であり、ココアバター及び乳脂肪分以外の脂肪分は使用されていない。水分は3%以下である。
【0020】
(純ミルクチョコレート生地)
カカオ分21%以上、ココアバター18%以上、乳固形分14%以上、乳脂肪分3.5%以上、糖分(蔗糖に限る)55%以下、レシチン0.5%以下であり、レシチンとバニラ系香料以外の食品添加物は無添加であり、ココアバター及び乳脂肪分以外の脂肪分は使用されていない。水分は3%以下である。
【0021】
(チョコレート生地)
カカオ分35%以上、ココアバター18%以上、水分3%以下である。ただし、カカオ分21%以上、ココアバター18%以上、かつ乳固形分とカカオ分の合計が35%以上、乳脂肪分3%以上、水分3%以下とする、すなわち、カカオ分の一部を乳固形分に代えることが可能である。
【0022】
(ミルクチョコレート生地)
カカオ分21%以上、ココアバター18%以上、乳固形分14%以上、乳脂肪分3%以上、水分3%以下である。
【0023】
(準チョコレート生地)
カカオ分15%以上、ココアバター3%以上、脂肪分18%以上、水分3%以下である。
【0024】
(準ミルクチョコレート生地)
カカオ分7%以上、ココアバター3%以上、脂肪分18%以上、乳固形分12.5%以上、乳脂肪分2%以上、水分3%以下である。
【0025】
種皮付きゴマ粉砕ペースト(B)とは、練りゴマ等の、ゴマをその種皮ともども粉砕して得られるペーストである。種皮とは、種実(本発明ではゴマ)の外側を覆っている皮を指す。本発明で使用するゴマ粉砕ペーストは、ゴマを種皮ごと粉砕してなるペーストである。なお、このペーストは、原料である種皮付きゴマに由来する成分のみからなるものであってもよいし、粉砕時に浸出した油分(ゴマ油)の一部を除去したものでもよいし、粉砕後に食用油を添加したものであってもよい。
【0026】
原料である種皮付きゴマに由来する成分のみからなるペーストの場合、ゴマ種子は油分を45乃至63%含有しているので、種皮付きゴマ粉砕ペーストは油分をこのような割合で含む。粉砕時に浸出した油分(ゴマ油)の一部を除去する場合、ゴマ油の除去量は、例えば、除去前のペースト全容量の10乃至30%であることが好ましい。ゴマ油を除去しすぎると、種皮付きゴマ粉砕ペーストの粘度が高くなるため、他の原料との混合が困難となる場合があるからである。なお、ゴマ油の除去方法としては、ペーストからの油分の絞り出しや、ペースト中の固形分を沈澱させて、上澄み(油分)を除去する方法等がある。
【0027】
ペーストの調製のために添加される食用油とは、食用に供することができるグレードの液状油をいう。食用油の具体例としては、ゴマ油、ゴマサラダ油、精製大豆油、大豆サラダ油、精製カノーラ(又は菜種)油、カノーラ(又は菜種)サラダ油、サフラワー油、精製ひまわり油、ひまわりサラダ油、精製綿実油、綿実サラダ油、精製パーム核油、グレープシード油、精製落花生油、落花生サラダ油、精製とうもろこし(又はコーン)油、とうもろこし(又はコーン)サラダ油、精製こめ油、こめサラダ油、オリブ油、精製オリブ油、精製パーム油、精製やし油等が挙げられる。食用油の添加は、種皮付きゴマ粉砕ペーストの粘度の低下に寄与する。
【0028】
チョコレートの製造時には、その原料が磨砕され、粒状となる。このチョコレート粒子の粒子径や粒度分布は、チョコレートの口溶けや食感に大きな影響を与える。一般には、粒子径が大きいほど口溶けが早いが、大きすぎるとざらつきが感じられるようになる。一方、粒子径が小さいと滑らかな食感となるが、小さすぎると口溶けが悪くなる。食感のよいチョコレートは、粒子径(x軸)を対数目盛で表し、粒子径の頻度をy軸としたときに、その頂点が一つのみとなる。このとき、粒度分布の曲線が正規分布に近いものが、特に好ましい。
【0029】
種皮付きゴマ粉砕ペーストは、その磨砕条件により、固形分の粒子径や粒度分布が変化する。本発明のチョコレート組成物では、チョコレート(A)が主成分であるが、チョコレート(A)の粒子径や粒度分布と大きくかけはなれた粒子径や粒度分布を有する種皮付きゴマ粉砕ペースト(B)を多量に配合すると、粒子径(x軸)を対数目盛で表し、粒子径の頻度をy軸としたときに、例えば、(1)チョコレート組成物の粒度分布が広がる、(2)粒度分布が二つ以上の頂点(山)を有するものとなる、(3)粒度分布が一つの頂点と粒子径の大きい側に一つの肩とを有するものとなるという状態となる。このような状態の場合には、ざらついた好ましくない食感となる可能性がある。したがって、使用する種皮付きゴマ粉砕ペースト(B)の粒子径や粒度分布及び配合量は、「ゴマペースト入りチョコレート組成物の固形分の粒度分布における90%積算径が、チョコレート(A)のみの固形分の90%積算径×(0.95乃至1.25)の範囲内となる」という条件によって規定されている。好ましい範囲は、チョコレート(A)のみの固形分の90%積算径×(1.00乃至1.20)の範囲内であり、さらに好ましい範囲は、チョコレート(A)のみの固形分の90%積算径×(1.00乃至1.15)の範囲内であり、さらにより好ましい範囲は、チョコレート(A)のみの固形分の90%積算径×(1.00乃至1.10)の範囲内である。また、ゴマペースト入りチョコレート組成物の固形分の粒度分布も、粒子径(x軸)を対数目盛で表し、粒子径の頻度をy軸としたときに、正規分布に近いものであることが好ましい。
【0030】
本発明において、「90%積算径」とは、「d(90)」と表され、例えばレーザー式粒度分布測定装置で、チョコレート(A)、種皮付きゴマ粉砕ペースト(B)、又はチョコレート組成物中の固形分の粒度分布を測定したときに、粒子径の頻度(%)を粒子径が小さい方から累積して、その累積が90%であるときの粒子径をいう。
【0031】
上記の条件を充足するために、種皮付きゴマ粉砕ペースト(B)として、その固形分の粒度分布における50%積算径が4乃至15μmのものを使用することが好ましく、5乃至13μmのものがさらに好ましく、6乃至12μmのものがさらにより好ましく、7乃至10μmのものが最も好ましい。なお、「50%積算径」は、上記と同様の測定法で、粒子径の頻度(%)を粒子径が小さい方から累積して、その累積が50%となったときの粒子径であり、「d(50)」と表され、「メジアン径」や「平均粒子径」とも呼称される。
【0032】
また、上記の条件を充足するために、種皮付きゴマ粉砕ペースト(B)として、その固形分の粒度分布における90%積算径が15乃至120μmのものを使用することも好ましい。90%積算径は、さらに好ましくは18乃至100μmであり、さらにより好ましくは21乃至90μmであり、最も好ましくは24乃至70μmである。
【0033】
種皮付きゴマ粉砕ペースト(B)の配合量は、チョコレート組成物の固形分の粒度分布における90%積算径が、チョコレート(A)のみの固形分の90%積算径×(0.95乃至1.25)の範囲内となる限り、特に限定されないが、通常は、チョコレート(A)と種皮付きゴマ粉砕ペースト(B)との合計を100重量%として、種皮付きゴマ粉砕ペースト(B)が0.5乃至15重量%であり、好ましくは1乃至12重量%であり、さらに好ましくは2乃至10重量%であり、さらにより好ましくは2.5乃至7.0重量%である。このような配合量は、ゴマの風味の観点からも好ましい。
【0034】
種皮付きゴマ粉砕ペースト(B)の製造方法の一例は、次の通りである。まず、ゴマ種子を、公知の方法及び条件で焙煎する。これを、コイドミル等の磨砕式粉砕機にて粉砕する。このとき、ゴマ種子からゴマ油が浸出し、ゴマ油以外の部分は粉砕されてゴマ油に分散するので、ゴマ粉砕ペーストが得られる。次いで、得られたゴマ粉砕ペーストを、媒体撹拌ミルにて、固形分の50%積算径(メジアン径)が4乃至15μmとなるか、及び/又は、固形分の90%積算径が15乃至120μmとなるまで撹拌する。磨砕式粉砕機での粉砕工程において、又は、ゴマ粉砕ペーストに、ゴマ油等の食用油を適宜添加してもよい。
【0035】
本発明のチョコレート組成物は、公知の方法によって適当なチョコレート生地(チョコレート(A))を調製し、次いでその生地に種皮付きゴマ粉砕ペースト(B)を添加、混合し、得られた混合物を成型することによって調製することが出来る。
【0036】
なお、チョコレート(A)のみの固形分の90%積算径や、種皮付きゴマ粉砕ペースト(B)の固形分の50%積算径や90%積算径は、予め測定しておく。そして、チョコレート(A)と種皮付きゴマ粉砕ペースト(B)との配合割合を変更した数種類のサンプルについても固形分の90%積算径を測定し、チョコレート(A)のみの固形分の90%積算径×(0.95乃至1.25)の範囲内となる処方を選択する。
【実施例】
【0037】
以下に、実施例により、本発明を具体的に説明する。
【0038】
(実施例1)種皮付きゴマ粉砕ペーストの調製
黒ゴマ(種皮付き)を、公知の方法で焙煎し且つコイドミルで粉砕することにより、黒ゴマペースト(一般品)を調製した。次いで、黒ゴマペースト(一般品)を、媒体撹拌ミルであるアトライタにて撹拌した。タンク総容量61リットル中の媒体の容量は約25リットル、原料(黒ゴマペースト(一般品))の処理容量は33リットルであった。初めに35rpm程度の低速で5分間混合を行い、その後145rpm程度の高速で1時間、撹拌・微粉砕を行った。このようにして、黒ゴマペースト(ミクロ)を調製した。黒ゴマペースト(ミクロ)の一部をとり、布袋に入れ、ゴマ油の一部を絞り出した。袋内に残留したものを取り出して重量を測定したところ、使用した黒ゴマペースト(ミクロ)全体の約90重量%であった。すなわち、ゴマ油除去前の重量の約10重量%のゴマ油が除去された。これを、黒ゴマペースト(ミクロ脱脂)と名付けた。
【0039】
(実施例2)チョコレート及び種皮付きゴマ粉砕ペーストの粒度分布の測定
株式会社セイシン企業製のレーザー回折散乱式粒度分布測定器SKレーザーマイクロンサイザーLMS2000eを使用し、明治ミルクチョコレート、黒ゴマペースト(一般品)、黒ゴマペースト(ミクロ)及び黒ゴマペースト(ミクロ脱脂)の固形分の粒度分布を測定した。分散媒としては、屈折率が1.390のプロパン−2−オールを使用した。結果を、表1乃至表4及び図1乃至図4に示す。すなわち、明治ミルクチョコレートの固形分の粒度分布は表1及び図1、黒ゴマペースト(一般品)の固形分の粒度分布は表2及び図2、黒ゴマペースト(ミクロ)の固形分の粒度分布は表3及び図3、黒ゴマペースト(ミクロ脱脂)の固形分の粒度分布は表3及び図4に示す。なお、図1乃至図4においては、粒子径(x軸)は対数目盛で表されている。図1乃至図4において、破線が頻度であり、実線が累積(積算)である。
【0040】
【表1】
【0041】
【表2】
【0042】
【表3】
【0043】
【表4】
【0044】
(実施例3)ゴマペースト入りチョコレート組成物の調製
明治ミルクチョコレートと黒ゴマペーストとを用い、ゴマペースト入りチョコレート組成物を調製した。黒ゴマペーストは、組成物全量中の5重量%、10重量%、15重量%又は20重量%の量で使用した。約30℃にて明治ミルクチョコレートと黒ゴマペーストとを混合し、横断面形状が円形であり、直径2.1cm、円の中心の深さ3mmの容器に流し込み、その後冷蔵庫(約10℃)内に約3時間放置して固化させた。
【0045】
(実施例4)ゴマペースト入りチョコレート組成物の粒子径分布の測定
実施例3で調製した、黒ゴマペースト(一般品)、黒ゴマペースト(ミクロ)又は黒ゴマペースト(ミクロ脱脂)を含有するゴマペースト入りチョコレート組成物の各々について、実施例2と同様に、固形分の粒度分布を測定した。結果を、表5乃至表16及び図5乃至図16に示す。すなわち、黒ゴマペースト(一般品)を含有してなるチョコレート組成物の固形分の粒度分布を、その含有量の順(5重量%、10重量%、15重量%、20重量%)に、表5乃至表8と、図5乃至図8に示し、黒ゴマペースト(ミクロ)を含有してなるチョコレート組成物の固形分の粒度分布を、その含有量の順(5重量%、10重量%、15重量%、20重量%)に、表9乃至表12と、図9乃至図12に示し、黒ゴマペースト(脱脂ミクロ)を含有してなるチョコレート組成物の固形分の粒度分布を、その含有量の順(5重量%、10重量%、15重量%、20重量%)に、表13乃至表16と、図13乃至図16に示す。なお、図5乃至図16においては、粒子径(x軸)は対数目盛で表されている。図5乃至図16において、破線が頻度であり、実線が累積(積算)である。また、明治ミルクチョコレートの固形分の90%積算径に対する、各ゴマペースト入りチョコレート組成物の固形分の90%積算径の割合を、表17乃至表19に示す。
【0046】
【表5】
【0047】
【表6】
【0048】
【表7】
【0049】
【表8】
【0050】
【表9】
【0051】
【表10】
【0052】
【表11】
【0053】
【表12】
【0054】
【表13】
【0055】
【表14】
【0056】
【表15】
【0057】
【表16】
【0058】
【表17】
【0059】
【表18】
【0060】
【表19】
【0061】
(実施例5)ゴマペースト入りチョコレート組成物の融点の測定
明治ミルクチョコレートと、実施例3で調製した各ゴマペースト入りチョコレート組成物を、透明なプラスチック製容器に入れ、その容器を鍋内の水に浮かべた。水の温度をゆっくりと上昇させ、チョコレート組成物の形状がくずれ始めた温度を融点として測定した。結果を図17に示す。黒ゴマペースト(一般品)を配合した場合に比べ、黒ゴマペースト(ミクロ)又は黒ゴマペースト(ミクロ脱脂)を配合した場合の方が、融点が低下しにくい。融点のみの観点からは、黒ゴマペースト(ミクロ脱脂)は20重量%の配合も可能であるが、黒ゴマペースト(ミクロ)又は黒ゴマペースト(一般品)は、10重量%以下の配合が好ましいことが明らかとなった。
【0062】
(実施例6)チョコレート組成物の食感の官能試験(その1)
実施例3で調製したゴマペースト入りチョコレート組成物の中、ゴマペーストの配合割合が15重量%のものを、パネルに試食してもらい、もっともざらつきの強いものを選ばせた。なお、パネルには、試食に供したチョコレート組成物のいずれにどのゴマペーストが配合されているかは知らせていない。パネルは、年齢は10代乃至50代であり、男性5名、女性11名であった。結果を表20に示す。
【0063】
【表20】
【0064】
一般とミクロとの差は、粒子径の大きさの差によるものと思われた。また、ミクロ脱脂がミクロよりもざらつくとされたのは、脱脂を行った関係で、ミクロ脱脂の方がゴマ固形分の量が多いためであると思われた。
【0065】
(実施例7)チョコレート組成物の食感の官能試験(その2)
実施例3で調製したゴマペースト入りチョコレート組成物の中、黒ゴマペースト(一般品)、黒ゴマペースト(ミクロ)、黒ゴマペースト(ミクロ脱脂)の各々について、油っぽさが許容できる限度について、パネルに評価させた。少量の摂取では、油っぽさを感じにくいので、パネルには、実施例3で調製したゴマペースト入りチョコレート組成物を3個ずつ試食させた。また、試験と試験の間には、2時間の休憩時間を設けた。パネルは、年齢は20代乃至50代であり、女性14名であった。結果を表21乃至表23に示す。
【0066】
【表21】
【0067】
【表22】
【0068】
【表23】
【0069】
(実施例8)チョコレート組成物の食感の官能試験(その3)
実施例3で調製したゴマペースト入りチョコレート組成物の中、黒ゴマペースト(一般品)、黒ゴマペースト(ミクロ)、黒ゴマペースト(ミクロ脱脂)の各々について、ざらつきを感じ始める添加量について、パネルに評価させた。パネルには、実施例3で調製したゴマペースト入りチョコレート組成物を1個ずつ試食させた。また、試験と試験の間には、2時間の休憩時間を設けた。パネルは、年齢は20代乃至50代であり、女性14名であった。結果を表24乃至表26に示す。
【0070】
【表24】
【0071】
【表25】
【0072】
【表26】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴマの風味が香ばしい、ゴマペーストを配合したチョコレート組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
チョコレートは、代表的な洋菓子の一種である。チョコレートには、ナッツ類、果物類、酒類等の様々な添加物の配合が試みられており、また、そのような添加物入りの様々なチョコレートが販売されている。
【0003】
前記したように、チョコレートは洋菓子であるが、わが国においては、和風テイストな洋菓子も受け入れられている。したがって、そのような和風テイストなチョコレートについても、それを受け入れる市場があると考えられる。また、和風テイストなチョコレートとするための添加物の候補として、ゴマが挙げられる。
【0004】
例えば特許文献1には、二層のチョコレートでゼリー層を挟んでなり、ゼリー層とチョコレート層との間には、ゴマを含む種実の粗粉砕品やペーストが配されているチョコレート菓子が開示されている(図1b、図2b、段落番号[0012])。
【0005】
また、特許文献2には、練りゴマと粉末ココアとハチミツとを混合してなるチョコレート風味のペースト状健康食品が開示されている(請求項1)。さらに、特許文献3には、直径50μm以下に破潰したゴマと、乳製品と、甘味料と、酸味料と粘性物とを含み、カカオのチョコレートを含まない、チョコレート様食品が開示されている(請求項45、46及び51)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−50936
【特許文献2】特開平10−150951
【特許文献3】特開2008−22845
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、練りゴマ(以下においては「ゴマペースト」という)等をチョコレート生地自体に添加する場合、ゴマペースト中のゴマ破潰物の粒子の大きさやその分布によっては、ざらつきのある好ましくない食感となってしまう。また、ゴマペーストに由来するゴマ油の量によっては、油っぽい食感となってしまう。さらに、常温で固体のゴマペースト入りチョコレートの場合には、ゴマ油の存在のために、ゴマペーストの添加量によってはチョコレートの融点が低下し、我が国においては、冬季のみの季節限定商品となってしまう。
【0008】
本発明の目的は、ざらつきがなく、好ましい食感を与える、ゴマペースト入りチョコレート組成物を提供することにある。本発明の第二の目的は、ゴマの風味が豊かであるが、油っぽい食感を与えないゴマペースト入りチョコレート組成物を提供することにある。本発明のさらなる目的は、市販品ミルクチョコレートとほぼ同等の融点を示す、固体のゴマペースト入りチョコレート組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、チョコレートへの添加に適するゴマペーストについて研究し、本発明を完成させた。
【0010】
即ち、本発明は、チョコレート(A)と種皮付きゴマ粉砕ペースト(B)とを含むゴマペースト入りチョコレート組成物であって、その固形分の粒度分布における90%積算径は、チョコレート(A)のみの固形分の90%積算径×(0.95乃至1.25)の範囲内であることを特徴とする、ゴマペースト入りチョコレート組成物に関する。このようなチョコレート組成物における種皮付きゴマ粉砕ペースト(B)の含有量は、例えば、チョコレート(A)と種皮付きゴマ粉砕ペースト(B)との合計量の0.5乃至15重量%である。
【0011】
前記種皮付きゴマ粉砕ペースト(B)として、その固形分の粒度分布における50%積算径が4乃至15μmのもの、及び/又は、その固形分の粒度分布における90%積算径が15乃至120μmのものを使用することが好ましい。ここで、「50%積算径」及び「90%積算径」とは、粒度分布測定器で粒子径を測定した場合に、粒子径の頻度の累積が、それぞれ、50%となるとき(「d(50)」と記載する)及び90%(「d(90)」と記載する)となるときの粒子径をいう。
【0012】
前記種皮付きゴマ粉砕ペースト(B)として、焙煎した種皮付きゴマを微粉砕した後、浸出したゴマ油の少なくとも一部を除去したものを使用することも好ましい。ここで、ゴマ油の除去量は、例えば、除去前の全重量の10乃至30%である。
【0013】
本発明のチョコレート組成物には、その性状が固体であるものが包含される。ここで、「その性状が固体である」とは、常温(5−35℃)において、ほぼ固体であるものをいう。但し、30℃以上の環境下においては、軟化したり、若干溶融してもよい。固形チョコレートとして販売が可能な融点を示すものは、「その性状が固体」のチョコレート組成物である。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、ざらつきがなく、好ましい食感を与える、ゴマペースト入りチョコレート組成物が提供される。また、本発明により、ゴマの風味が豊かであるが、油っぽい食感を与えないゴマペースト入りチョコレート組成物が提供される。
【0015】
本発明により、市販品ミルクチョコレートとほぼ同等の融点を示す、固体のゴマペースト入りチョコレート組成物も提供される。したがって、我が国におけるゴマペースト入りチョコレートの販売時期が、冬季に限定されなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】明治ミルクチョコレートの固形分の粒度分布を示すグラフである。
【図2】黒ゴマペースト(一般品)の固形分の粒度分布を示すグラフである。
【図3】黒ゴマペースト(ミクロ)の固形分の粒度分布を示すグラフである。
【図4】黒ゴマペースト(ミクロ脱脂)の固形分の粒度分布を示すグラフである。
【図5】黒ゴマペースト(一般品)を5重量%含有するチョコレート組成物の固形分の粒度分布を示すグラフである。
【図6】黒ゴマペースト(一般品)を10重量%含有するチョコレート組成物の固形分の粒度分布を示すグラフである。
【図7】黒ゴマペースト(一般品)を15重量%含有するチョコレート組成物の固形分の粒度分布を示すグラフである。
【図8】黒ゴマペースト(一般品)を20重量%含有するチョコレート組成物の固形分の粒度分布を示すグラフである。
【図9】黒ゴマペースト(ミクロ)を5重量%含有するチョコレート組成物の固形分の粒度分布を示すグラフである。
【図10】黒ゴマペースト(ミクロ)を10重量%含有するチョコレート組成物の固形分の粒度分布を示すグラフである。
【図11】黒ゴマペースト(ミクロ)を15重量%含有するチョコレート組成物の固形分の粒度分布を示すグラフである。
【図12】黒ゴマペースト(ミクロ)を20重量%含有するチョコレート組成物の固形分の粒度分布を示すグラフである。
【図13】黒ゴマペースト(ミクロ脱脂)を5重量%含有するチョコレート組成物の固形分の粒度分布を示すグラフである。
【図14】黒ゴマペースト(ミクロ脱脂)を10重量%含有するチョコレート組成物の固形分の粒度分布を示すグラフである。
【図15】黒ゴマペースト(ミクロ脱脂)を15重量%含有するチョコレート組成物の固形分の粒度分布を示すグラフである。
【図16】黒ゴマペースト(ミクロ脱脂)を20重量%含有するチョコレート組成物の固形分の粒度分布を示すグラフである。
【図17】チョコレート組成物の融点を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係るチョコレート組成物は、必須成分として、チョコレート(A)、より具体的には、各種チョコレート生地の原料混合物、ペースト状チョコレートの原料混合物、又はココア(ホット又はアイスチョコレート)と、種皮付きゴマ粉砕ペースト(B)とを含有する。本発明に係るチョコレート組成物には、必須成分として、市販の固形チョコレートの各種原料と、種皮付きゴマ粉砕ペースト(B)とを含有するものが包含される。
【0018】
チョコレート(A)は、例えば、純チョコレート生地、純ミルクチョコレート生地、チョコレート生地、ミルクチョコレート生地、準チョコレート生地、準ミルクチョコレート生地と称されている組成物からなる。これらの生地の組成及び定義は、以下の通りである。
【0019】
(純チョコレート生地)
カカオ分35%以上、ココアバター18%以上、糖分(蔗糖に限る)55%以下、レシチン0.5%以下であり、レシチンとバニラ系香料以外の食品添加物は無添加であり、ココアバター及び乳脂肪分以外の脂肪分は使用されていない。水分は3%以下である。
【0020】
(純ミルクチョコレート生地)
カカオ分21%以上、ココアバター18%以上、乳固形分14%以上、乳脂肪分3.5%以上、糖分(蔗糖に限る)55%以下、レシチン0.5%以下であり、レシチンとバニラ系香料以外の食品添加物は無添加であり、ココアバター及び乳脂肪分以外の脂肪分は使用されていない。水分は3%以下である。
【0021】
(チョコレート生地)
カカオ分35%以上、ココアバター18%以上、水分3%以下である。ただし、カカオ分21%以上、ココアバター18%以上、かつ乳固形分とカカオ分の合計が35%以上、乳脂肪分3%以上、水分3%以下とする、すなわち、カカオ分の一部を乳固形分に代えることが可能である。
【0022】
(ミルクチョコレート生地)
カカオ分21%以上、ココアバター18%以上、乳固形分14%以上、乳脂肪分3%以上、水分3%以下である。
【0023】
(準チョコレート生地)
カカオ分15%以上、ココアバター3%以上、脂肪分18%以上、水分3%以下である。
【0024】
(準ミルクチョコレート生地)
カカオ分7%以上、ココアバター3%以上、脂肪分18%以上、乳固形分12.5%以上、乳脂肪分2%以上、水分3%以下である。
【0025】
種皮付きゴマ粉砕ペースト(B)とは、練りゴマ等の、ゴマをその種皮ともども粉砕して得られるペーストである。種皮とは、種実(本発明ではゴマ)の外側を覆っている皮を指す。本発明で使用するゴマ粉砕ペーストは、ゴマを種皮ごと粉砕してなるペーストである。なお、このペーストは、原料である種皮付きゴマに由来する成分のみからなるものであってもよいし、粉砕時に浸出した油分(ゴマ油)の一部を除去したものでもよいし、粉砕後に食用油を添加したものであってもよい。
【0026】
原料である種皮付きゴマに由来する成分のみからなるペーストの場合、ゴマ種子は油分を45乃至63%含有しているので、種皮付きゴマ粉砕ペーストは油分をこのような割合で含む。粉砕時に浸出した油分(ゴマ油)の一部を除去する場合、ゴマ油の除去量は、例えば、除去前のペースト全容量の10乃至30%であることが好ましい。ゴマ油を除去しすぎると、種皮付きゴマ粉砕ペーストの粘度が高くなるため、他の原料との混合が困難となる場合があるからである。なお、ゴマ油の除去方法としては、ペーストからの油分の絞り出しや、ペースト中の固形分を沈澱させて、上澄み(油分)を除去する方法等がある。
【0027】
ペーストの調製のために添加される食用油とは、食用に供することができるグレードの液状油をいう。食用油の具体例としては、ゴマ油、ゴマサラダ油、精製大豆油、大豆サラダ油、精製カノーラ(又は菜種)油、カノーラ(又は菜種)サラダ油、サフラワー油、精製ひまわり油、ひまわりサラダ油、精製綿実油、綿実サラダ油、精製パーム核油、グレープシード油、精製落花生油、落花生サラダ油、精製とうもろこし(又はコーン)油、とうもろこし(又はコーン)サラダ油、精製こめ油、こめサラダ油、オリブ油、精製オリブ油、精製パーム油、精製やし油等が挙げられる。食用油の添加は、種皮付きゴマ粉砕ペーストの粘度の低下に寄与する。
【0028】
チョコレートの製造時には、その原料が磨砕され、粒状となる。このチョコレート粒子の粒子径や粒度分布は、チョコレートの口溶けや食感に大きな影響を与える。一般には、粒子径が大きいほど口溶けが早いが、大きすぎるとざらつきが感じられるようになる。一方、粒子径が小さいと滑らかな食感となるが、小さすぎると口溶けが悪くなる。食感のよいチョコレートは、粒子径(x軸)を対数目盛で表し、粒子径の頻度をy軸としたときに、その頂点が一つのみとなる。このとき、粒度分布の曲線が正規分布に近いものが、特に好ましい。
【0029】
種皮付きゴマ粉砕ペーストは、その磨砕条件により、固形分の粒子径や粒度分布が変化する。本発明のチョコレート組成物では、チョコレート(A)が主成分であるが、チョコレート(A)の粒子径や粒度分布と大きくかけはなれた粒子径や粒度分布を有する種皮付きゴマ粉砕ペースト(B)を多量に配合すると、粒子径(x軸)を対数目盛で表し、粒子径の頻度をy軸としたときに、例えば、(1)チョコレート組成物の粒度分布が広がる、(2)粒度分布が二つ以上の頂点(山)を有するものとなる、(3)粒度分布が一つの頂点と粒子径の大きい側に一つの肩とを有するものとなるという状態となる。このような状態の場合には、ざらついた好ましくない食感となる可能性がある。したがって、使用する種皮付きゴマ粉砕ペースト(B)の粒子径や粒度分布及び配合量は、「ゴマペースト入りチョコレート組成物の固形分の粒度分布における90%積算径が、チョコレート(A)のみの固形分の90%積算径×(0.95乃至1.25)の範囲内となる」という条件によって規定されている。好ましい範囲は、チョコレート(A)のみの固形分の90%積算径×(1.00乃至1.20)の範囲内であり、さらに好ましい範囲は、チョコレート(A)のみの固形分の90%積算径×(1.00乃至1.15)の範囲内であり、さらにより好ましい範囲は、チョコレート(A)のみの固形分の90%積算径×(1.00乃至1.10)の範囲内である。また、ゴマペースト入りチョコレート組成物の固形分の粒度分布も、粒子径(x軸)を対数目盛で表し、粒子径の頻度をy軸としたときに、正規分布に近いものであることが好ましい。
【0030】
本発明において、「90%積算径」とは、「d(90)」と表され、例えばレーザー式粒度分布測定装置で、チョコレート(A)、種皮付きゴマ粉砕ペースト(B)、又はチョコレート組成物中の固形分の粒度分布を測定したときに、粒子径の頻度(%)を粒子径が小さい方から累積して、その累積が90%であるときの粒子径をいう。
【0031】
上記の条件を充足するために、種皮付きゴマ粉砕ペースト(B)として、その固形分の粒度分布における50%積算径が4乃至15μmのものを使用することが好ましく、5乃至13μmのものがさらに好ましく、6乃至12μmのものがさらにより好ましく、7乃至10μmのものが最も好ましい。なお、「50%積算径」は、上記と同様の測定法で、粒子径の頻度(%)を粒子径が小さい方から累積して、その累積が50%となったときの粒子径であり、「d(50)」と表され、「メジアン径」や「平均粒子径」とも呼称される。
【0032】
また、上記の条件を充足するために、種皮付きゴマ粉砕ペースト(B)として、その固形分の粒度分布における90%積算径が15乃至120μmのものを使用することも好ましい。90%積算径は、さらに好ましくは18乃至100μmであり、さらにより好ましくは21乃至90μmであり、最も好ましくは24乃至70μmである。
【0033】
種皮付きゴマ粉砕ペースト(B)の配合量は、チョコレート組成物の固形分の粒度分布における90%積算径が、チョコレート(A)のみの固形分の90%積算径×(0.95乃至1.25)の範囲内となる限り、特に限定されないが、通常は、チョコレート(A)と種皮付きゴマ粉砕ペースト(B)との合計を100重量%として、種皮付きゴマ粉砕ペースト(B)が0.5乃至15重量%であり、好ましくは1乃至12重量%であり、さらに好ましくは2乃至10重量%であり、さらにより好ましくは2.5乃至7.0重量%である。このような配合量は、ゴマの風味の観点からも好ましい。
【0034】
種皮付きゴマ粉砕ペースト(B)の製造方法の一例は、次の通りである。まず、ゴマ種子を、公知の方法及び条件で焙煎する。これを、コイドミル等の磨砕式粉砕機にて粉砕する。このとき、ゴマ種子からゴマ油が浸出し、ゴマ油以外の部分は粉砕されてゴマ油に分散するので、ゴマ粉砕ペーストが得られる。次いで、得られたゴマ粉砕ペーストを、媒体撹拌ミルにて、固形分の50%積算径(メジアン径)が4乃至15μmとなるか、及び/又は、固形分の90%積算径が15乃至120μmとなるまで撹拌する。磨砕式粉砕機での粉砕工程において、又は、ゴマ粉砕ペーストに、ゴマ油等の食用油を適宜添加してもよい。
【0035】
本発明のチョコレート組成物は、公知の方法によって適当なチョコレート生地(チョコレート(A))を調製し、次いでその生地に種皮付きゴマ粉砕ペースト(B)を添加、混合し、得られた混合物を成型することによって調製することが出来る。
【0036】
なお、チョコレート(A)のみの固形分の90%積算径や、種皮付きゴマ粉砕ペースト(B)の固形分の50%積算径や90%積算径は、予め測定しておく。そして、チョコレート(A)と種皮付きゴマ粉砕ペースト(B)との配合割合を変更した数種類のサンプルについても固形分の90%積算径を測定し、チョコレート(A)のみの固形分の90%積算径×(0.95乃至1.25)の範囲内となる処方を選択する。
【実施例】
【0037】
以下に、実施例により、本発明を具体的に説明する。
【0038】
(実施例1)種皮付きゴマ粉砕ペーストの調製
黒ゴマ(種皮付き)を、公知の方法で焙煎し且つコイドミルで粉砕することにより、黒ゴマペースト(一般品)を調製した。次いで、黒ゴマペースト(一般品)を、媒体撹拌ミルであるアトライタにて撹拌した。タンク総容量61リットル中の媒体の容量は約25リットル、原料(黒ゴマペースト(一般品))の処理容量は33リットルであった。初めに35rpm程度の低速で5分間混合を行い、その後145rpm程度の高速で1時間、撹拌・微粉砕を行った。このようにして、黒ゴマペースト(ミクロ)を調製した。黒ゴマペースト(ミクロ)の一部をとり、布袋に入れ、ゴマ油の一部を絞り出した。袋内に残留したものを取り出して重量を測定したところ、使用した黒ゴマペースト(ミクロ)全体の約90重量%であった。すなわち、ゴマ油除去前の重量の約10重量%のゴマ油が除去された。これを、黒ゴマペースト(ミクロ脱脂)と名付けた。
【0039】
(実施例2)チョコレート及び種皮付きゴマ粉砕ペーストの粒度分布の測定
株式会社セイシン企業製のレーザー回折散乱式粒度分布測定器SKレーザーマイクロンサイザーLMS2000eを使用し、明治ミルクチョコレート、黒ゴマペースト(一般品)、黒ゴマペースト(ミクロ)及び黒ゴマペースト(ミクロ脱脂)の固形分の粒度分布を測定した。分散媒としては、屈折率が1.390のプロパン−2−オールを使用した。結果を、表1乃至表4及び図1乃至図4に示す。すなわち、明治ミルクチョコレートの固形分の粒度分布は表1及び図1、黒ゴマペースト(一般品)の固形分の粒度分布は表2及び図2、黒ゴマペースト(ミクロ)の固形分の粒度分布は表3及び図3、黒ゴマペースト(ミクロ脱脂)の固形分の粒度分布は表3及び図4に示す。なお、図1乃至図4においては、粒子径(x軸)は対数目盛で表されている。図1乃至図4において、破線が頻度であり、実線が累積(積算)である。
【0040】
【表1】
【0041】
【表2】
【0042】
【表3】
【0043】
【表4】
【0044】
(実施例3)ゴマペースト入りチョコレート組成物の調製
明治ミルクチョコレートと黒ゴマペーストとを用い、ゴマペースト入りチョコレート組成物を調製した。黒ゴマペーストは、組成物全量中の5重量%、10重量%、15重量%又は20重量%の量で使用した。約30℃にて明治ミルクチョコレートと黒ゴマペーストとを混合し、横断面形状が円形であり、直径2.1cm、円の中心の深さ3mmの容器に流し込み、その後冷蔵庫(約10℃)内に約3時間放置して固化させた。
【0045】
(実施例4)ゴマペースト入りチョコレート組成物の粒子径分布の測定
実施例3で調製した、黒ゴマペースト(一般品)、黒ゴマペースト(ミクロ)又は黒ゴマペースト(ミクロ脱脂)を含有するゴマペースト入りチョコレート組成物の各々について、実施例2と同様に、固形分の粒度分布を測定した。結果を、表5乃至表16及び図5乃至図16に示す。すなわち、黒ゴマペースト(一般品)を含有してなるチョコレート組成物の固形分の粒度分布を、その含有量の順(5重量%、10重量%、15重量%、20重量%)に、表5乃至表8と、図5乃至図8に示し、黒ゴマペースト(ミクロ)を含有してなるチョコレート組成物の固形分の粒度分布を、その含有量の順(5重量%、10重量%、15重量%、20重量%)に、表9乃至表12と、図9乃至図12に示し、黒ゴマペースト(脱脂ミクロ)を含有してなるチョコレート組成物の固形分の粒度分布を、その含有量の順(5重量%、10重量%、15重量%、20重量%)に、表13乃至表16と、図13乃至図16に示す。なお、図5乃至図16においては、粒子径(x軸)は対数目盛で表されている。図5乃至図16において、破線が頻度であり、実線が累積(積算)である。また、明治ミルクチョコレートの固形分の90%積算径に対する、各ゴマペースト入りチョコレート組成物の固形分の90%積算径の割合を、表17乃至表19に示す。
【0046】
【表5】
【0047】
【表6】
【0048】
【表7】
【0049】
【表8】
【0050】
【表9】
【0051】
【表10】
【0052】
【表11】
【0053】
【表12】
【0054】
【表13】
【0055】
【表14】
【0056】
【表15】
【0057】
【表16】
【0058】
【表17】
【0059】
【表18】
【0060】
【表19】
【0061】
(実施例5)ゴマペースト入りチョコレート組成物の融点の測定
明治ミルクチョコレートと、実施例3で調製した各ゴマペースト入りチョコレート組成物を、透明なプラスチック製容器に入れ、その容器を鍋内の水に浮かべた。水の温度をゆっくりと上昇させ、チョコレート組成物の形状がくずれ始めた温度を融点として測定した。結果を図17に示す。黒ゴマペースト(一般品)を配合した場合に比べ、黒ゴマペースト(ミクロ)又は黒ゴマペースト(ミクロ脱脂)を配合した場合の方が、融点が低下しにくい。融点のみの観点からは、黒ゴマペースト(ミクロ脱脂)は20重量%の配合も可能であるが、黒ゴマペースト(ミクロ)又は黒ゴマペースト(一般品)は、10重量%以下の配合が好ましいことが明らかとなった。
【0062】
(実施例6)チョコレート組成物の食感の官能試験(その1)
実施例3で調製したゴマペースト入りチョコレート組成物の中、ゴマペーストの配合割合が15重量%のものを、パネルに試食してもらい、もっともざらつきの強いものを選ばせた。なお、パネルには、試食に供したチョコレート組成物のいずれにどのゴマペーストが配合されているかは知らせていない。パネルは、年齢は10代乃至50代であり、男性5名、女性11名であった。結果を表20に示す。
【0063】
【表20】
【0064】
一般とミクロとの差は、粒子径の大きさの差によるものと思われた。また、ミクロ脱脂がミクロよりもざらつくとされたのは、脱脂を行った関係で、ミクロ脱脂の方がゴマ固形分の量が多いためであると思われた。
【0065】
(実施例7)チョコレート組成物の食感の官能試験(その2)
実施例3で調製したゴマペースト入りチョコレート組成物の中、黒ゴマペースト(一般品)、黒ゴマペースト(ミクロ)、黒ゴマペースト(ミクロ脱脂)の各々について、油っぽさが許容できる限度について、パネルに評価させた。少量の摂取では、油っぽさを感じにくいので、パネルには、実施例3で調製したゴマペースト入りチョコレート組成物を3個ずつ試食させた。また、試験と試験の間には、2時間の休憩時間を設けた。パネルは、年齢は20代乃至50代であり、女性14名であった。結果を表21乃至表23に示す。
【0066】
【表21】
【0067】
【表22】
【0068】
【表23】
【0069】
(実施例8)チョコレート組成物の食感の官能試験(その3)
実施例3で調製したゴマペースト入りチョコレート組成物の中、黒ゴマペースト(一般品)、黒ゴマペースト(ミクロ)、黒ゴマペースト(ミクロ脱脂)の各々について、ざらつきを感じ始める添加量について、パネルに評価させた。パネルには、実施例3で調製したゴマペースト入りチョコレート組成物を1個ずつ試食させた。また、試験と試験の間には、2時間の休憩時間を設けた。パネルは、年齢は20代乃至50代であり、女性14名であった。結果を表24乃至表26に示す。
【0070】
【表24】
【0071】
【表25】
【0072】
【表26】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チョコレート(A)と種皮付きゴマ粉砕ペースト(B)とを含むゴマペースト入りチョコレート組成物であって、その固形分の粒度分布における90%積算径は、チョコレート(A)のみの固形分の90%積算径×(0.95乃至1.25)の範囲内であることを特徴とする、ゴマペースト入りチョコレート組成物。
【請求項2】
種皮付きゴマ粉砕ペースト(B)が、その固形分の粒度分布における50%積算径が4乃至15μmのものである、請求項1に記載のゴマペースト入りチョコレート組成物。
【請求項3】
種皮付きゴマ粉砕ペースト(B)が、その固形分の粒度分布における90%積算径が15乃至120μmのものである、請求項1又は2に記載のゴマペースト入りチョコレート組成物。
【請求項4】
種皮付きゴマ粉砕ペースト(B)が、焙煎した種皮付きゴマを微粉砕した後、浸出したゴマ油の少なくとも一部を除去したものである、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のゴマペースト入りチョコレート組成物。
【請求項5】
ゴマ油の除去量が、除去前の全重量の10乃至30%である、請求項4に記載のゴマペースト入りチョコレート組成物。
【請求項6】
種皮付きゴマ粉砕ペースト(B)の含有量が、チョコレート(A)と種皮付きゴマ粉砕ペースト(B)との合計量の0.5乃至15重量%である、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のゴマペースト入りチョコレート組成物。
【請求項7】
その性状が固体である、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のゴマペースト入りチョコレート組成物。
【請求項1】
チョコレート(A)と種皮付きゴマ粉砕ペースト(B)とを含むゴマペースト入りチョコレート組成物であって、その固形分の粒度分布における90%積算径は、チョコレート(A)のみの固形分の90%積算径×(0.95乃至1.25)の範囲内であることを特徴とする、ゴマペースト入りチョコレート組成物。
【請求項2】
種皮付きゴマ粉砕ペースト(B)が、その固形分の粒度分布における50%積算径が4乃至15μmのものである、請求項1に記載のゴマペースト入りチョコレート組成物。
【請求項3】
種皮付きゴマ粉砕ペースト(B)が、その固形分の粒度分布における90%積算径が15乃至120μmのものである、請求項1又は2に記載のゴマペースト入りチョコレート組成物。
【請求項4】
種皮付きゴマ粉砕ペースト(B)が、焙煎した種皮付きゴマを微粉砕した後、浸出したゴマ油の少なくとも一部を除去したものである、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のゴマペースト入りチョコレート組成物。
【請求項5】
ゴマ油の除去量が、除去前の全重量の10乃至30%である、請求項4に記載のゴマペースト入りチョコレート組成物。
【請求項6】
種皮付きゴマ粉砕ペースト(B)の含有量が、チョコレート(A)と種皮付きゴマ粉砕ペースト(B)との合計量の0.5乃至15重量%である、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のゴマペースト入りチョコレート組成物。
【請求項7】
その性状が固体である、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のゴマペースト入りチョコレート組成物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−50423(P2012−50423A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−239465(P2010−239465)
【出願日】平成22年10月26日(2010.10.26)
【特許番号】特許第4804587号(P4804587)
【特許公報発行日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(502414541)株式会社波里 (3)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月26日(2010.10.26)
【特許番号】特許第4804587号(P4804587)
【特許公報発行日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(502414541)株式会社波里 (3)
【Fターム(参考)】
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