説明

ゴムおよび糖アルコールを含む徐放性組成物

少なくとも1種の多糖ゴムの噴霧乾燥された粒子および少なくとも1種の多価糖アルコールを含む徐放性組成物、ならびに該徐放性組成物の製造方法が提供される。徐放性医薬固形剤形、および圧縮による該固形剤形の製造方法も提供される。一局面において、この少なくとも1種の多糖ゴムは、グアーガム、キサンタンゴム、ローカストビーンゴム、カラヤゴム、タラゴム、コンニャクゴム、およびこれらの混合物からなる群から選択され、そして前記少なくとも1種の多価糖アルコールは、マンニトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、ソルビトール、エリスリトール、イソマルト、およびこれらの混合物からなる群から選択される。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
徐放性組成物は、有効投与量の薬物を長時間にわたって投与することを可能にする。徐放は、患者における即放性治療薬を投与することから生じる副作用を低減することができるので、好都合である。各種薬物の徐放性または持続放出性剤形は、当技術分野で公知である。通常の徐放性剤形は、ポリマーマトリックスの使用、および薬物をイオン交換樹脂と複合して薬物−イオン交換樹脂の複合粒子を形成することを含む。投与後に、薬物は、複合体またはマトリックスから時間とともに徐々に放出され、それによって、患者への薬物の継続的送達を提供する。通常の徐放性医薬組成物は、薬物送達を持続するために、ヒドロキシプロピル(hydroxylproplyl)メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピル(hydroxylpropyl)セルロース、メチルセルロース、キトサン、および天然ゴムなどのポリマーを含むことが多い。
【0002】
多糖ゴム、例えば、グアーガム、ローカストビーンゴム、キサンタンゴム、カラヤゴム、タラゴム、およびコンニャクゴムは、様々な溶解性を有する薬物の徐送達のための潜在的な親水性マトリックス担体であることが公知である。医薬製剤において、グアーガムは、結合剤、崩壊剤、懸濁化剤、増粘剤および安定化剤、ならびに結腸標的化送達システム中の担体として使用されている。それは、有機溶媒に実質的に不溶であり、熱水または冷水中では、ほとんど直ちに分散および膨潤して、高粘性チキソトロピー溶液を形成する。粘度は、温度、時間、濃度、pH、撹拌速度、および粒径によって決まる。長い加熱は、粘度を低下させる。グアーガムは、貧弱な流動特性、貧弱な圧縮性、および一様でない粒径を有することが見出されており、マトリックス錠剤中に大きな比率(30〜90%)で組み込まれる必要があり、グアーガムを含む錠剤は、典型的には、湿式造粒技術によって調製される。グアーガムは、通常の剤形中で結合剤、崩壊剤、または担体として低比率で使用される十分に容認された医薬用添加剤であるが、それは、直接的に圧縮されることのある材料のための好ましい添加剤ではない。
【0003】
先行技術は、咀嚼型経口剤形の直接圧縮を可能にするための、リン酸三カルシウムおよび結合剤(グアーガムでもよい)からなる水性スラリーを噴霧乾燥することによって形成されるリン酸三カルシウム凝集体におけるグアーガムの使用を開示している。グアーガムは、また、タンパク質を安定化する方法において使用されており、そこでは、タンパク質およびグアーガムなどの水性多糖ゴムからなる水溶液を、噴霧乾燥または凍結乾燥し、次いで被覆し、被包する。グアーガムを利用する別の方法は、第1ポリマー、および該第1ポリマーと複合してポリマー間複合体を形成する能力を有する1種または複数の第2の相補的ポリマーから、経口投与用の制御放出性マトリックスとして使用するための固形のポリマー間複合体を調製する方法であり、ここで、一方のポリマーはグアーガムであり、該方法は、溶媒を除去するために噴霧乾燥のステップをはじめとするいくつかのステップを含む。
【0004】
先行技術は、また、湿式造粒法によって不活性賦形剤と架橋されたキサンタンゴムおよびローカストビーンゴムなどのヘテロ多糖(heteropolyschaarides)を含む組成物を開示している。この方法は、したがって、2種の多糖ゴムの使用および湿式造粒法を必要とする。
【0005】
本発明の組成物は、噴霧乾燥によって調製される。噴霧乾燥は、熱い気体によって液体供給物を乾燥する、一般に使用される迅速で連続的な方法であり、乾燥材料を得るためのさらなる処理を必要としない。それは、(1)液体供給物を霧化して微細小滴の噴霧物にすること、(2)加熱気体流によって小滴を懸濁させ、液体を蒸発させること、および(3)乾燥した粉末を気体流から分離して該粉末を捕集することからなる、本質的には3ステップの乾燥方法である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
噴霧乾燥法、および凍結乾燥などのその他の乾燥法は、乾燥された製品を得るのに広く応用されるが、このような方法を多糖ゴムの特性を改善するのに応用するための先行技術は存在しない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の例示的態様では、少なくとも1種の多価糖アルコールと組み合わせた少なくとも1種の多糖ゴムの実質的に球状の粒子を含む徐放性組成物が提供される。
【0008】
本発明の別の例示的態様では、少なくとも1種の多価糖アルコールと組み合わせた少なくとも1種の多糖ゴムの噴霧乾燥された混合物を含む徐放性組成物が提供される。
【0009】
本発明のさらに別の例示的態様では、徐放性組成物の製造方法であって、少なくとも1種の多糖ゴムおよび少なくとも1種の多価糖アルコールを溶媒に溶解して溶液/懸濁液を形成すること、ならびに該溶液/懸濁液を噴霧乾燥して徐放性組成物の粒子を形成することを含む方法が提供される。
【0010】
本発明のさらに別の例示的態様では、徐放性医薬固形剤形の製造方法であって、少なくとも1種の多糖ゴムおよび少なくとも1種の多価糖アルコールを溶媒に溶解して溶液/懸濁液を形成すること、該溶液/懸濁液を噴霧乾燥して徐放性組成物の粒子を形成すること、該徐放性組成物を少なくとも1種の充填剤(filler)および少なくとも1種の活性医薬成分と混合して錠剤化用混合物を形成すること、ならびに該錠剤化用混合物を圧縮して徐放性医薬剤形を形成することを含む方法が提供される。
【0011】
本発明のさらなる例示的態様では、少なくとも1種の多価糖アルコール、少なくとも1種の充填剤、および少なくとも1種の活性医薬成分と組み合わせた少なくとも1種の多糖ゴムからなる噴霧乾燥された混合物を含む徐放性医薬固形剤形が提供される。
【0012】
本発明の別の例示的態様では、少なくとも1種のオリゴ糖と組み合わせた少なくとも1種の多糖ゴムからなる噴霧乾燥された混合物を含む徐放性組成物が提供される。
【0013】
本発明のさらに別の例示的態様では、徐放性組成物の製造方法であって、少なくとも1種の多糖ゴムおよび少なくとも1種のオリゴ糖を溶媒中で混合して溶液/懸濁液を形成すること、ならびに該溶液/懸濁液を噴霧乾燥して徐放性組成物の粒子を形成することを含む方法が提供される。固形剤形は、これらの粒子から、該徐放性組成物を少なくとも1種の充填剤および少なくとも1種の活性医薬成分と混合して錠剤化用混合物を形成すること、ならびに該錠剤化用混合物を圧縮して徐放性医薬剤形を形成することによって製造できる。
【0014】
本発明のさらに別の例示的態様では、少なくとも1種のオリゴ糖、少なくとも1種の充填剤、および少なくとも1種の活性医薬成分と組み合わせた少なくとも1種の多糖ゴムからなる噴霧乾燥された混合物を含む徐放性医薬固形剤形が提供される。
【0015】
本発明のさらなる例示的態様では、少なくとも1種の多価糖アルコールおよび少なくとも1種のオリゴ糖と組み合わせた少なくとも1種の多糖ゴムからなる噴霧乾燥された混合物を含む徐放性組成物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、グアーガムのSEM顕微鏡写真の実例である。
【図2】図2は、マンニトール(Pearlitol 160C、Roquette社)のSEM顕微鏡写真の実例である。
【図3】図3は、実施例1による、噴霧乾燥されたグアーガム/マンニトール(1:1)のSEM顕微鏡写真の実例である。
【図4】図4は、実施例14による、噴霧乾燥されたグアーガム/マンニトール(1:4)のSEM顕微鏡写真の実例である。
【図5】図5は、ローカストビーンゴム(冷水に可溶)のSEM顕微鏡写真の実例である。
【図6】図6は、実施例15による、ローカストビーンゴム(冷水に可溶):マンニトール(1:1)のSEM顕微鏡写真の実例である。
【図7】図7は、イヌリン(Orafti STゲル)のSEM顕微鏡写真の実例である。
【図8】図8は、実施例16による、噴霧乾燥されたグアーガム/イヌリンのSEM顕微鏡写真の実例である。
【図9】図9は、実施例6による、ジクロフェナクナトリウム製剤F1〜F4の溶解プロフィールである。
【図10】図10は、実施例6による、ジクロフェナクナトリウム製剤F5〜F7、および市販薬であるVoveran SRの溶解プロフィールである。
【図11】図11は、実施例7による、ベンラファキシンHCLの溶解プロフィールである。
【図12】図12は、実施例8による、グアイフェネシン錠剤の溶解プロフィールである。
【図13】図13は、実施例9による、塩酸トラマドールの溶解プロフィールである。
【図14】図14は、実施例10による、ジクロフェナクナトリウム製剤の24時間までの溶解プロフィールである。
【図15】図15は、実施例10による、ジクロフェナクナトリウム製剤の8時間までの溶解プロフィールである。
【図16】図16は、実施例11による、アセトアミノフェン製剤の溶解プロフィールである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、多糖ゴムおよび多価糖アルコールを含む、改善された徐放性医薬組成物を提供する。より詳細には、本発明は、グアーガム、ローカストビーンゴム、キサンタンゴム、カラヤゴム、タラゴム、またはコンニャクゴムなどの多糖ゴムを多価糖アルコールと組み合わせて含む、新規な噴霧乾燥された徐放性組成物を提供する。該組成物は、新規な薬物送達システムを製剤するための、高められた流動特性、均一球状粒子、および放出抑制特性を提供する。
【0018】
少なくとも1種の多糖ゴムおよび少なくとも1種の多価糖アルコールを含む溶液/懸濁液を噴霧乾燥することによって製造される組成物は、APIと共に製剤されると徐放性プロフィールを提供する製品をもたらすことが、意外にも発見された。多糖ゴムと多価糖アルコール成分との物理的混合または湿式造粒は、限られた放出抑制が観察される可能性はあるが、徐放への応用に適した組成物を提供しない。
【0019】
多糖ゴムは、低濃度のゴムが存在するとゲルまたは高粘度溶液をもたらす疎水性または親水性のどちらかの高分子量分子である。本発明に適した多糖ゴムには、グアーガム、キサンタンゴム、ローカストビーンゴム、カラヤゴム、タラゴム、コンニャクゴム、およびこれらの混合物が含まれる。グアーガムは、マメ科植物Cyamopsis tetragonolobusの種子から得られる。グアーガムは、1%で5600CPSの高い粘度を有する溶液/懸濁液を形成する。該溶液/懸濁液は、非ニュートン性であり、粘度は温度で変化し、85℃で、1%溶液/懸濁液は、約2500CPSの粘度を有する。グアーガムは、ローカストビーンゴムに比べてより可溶性であり、自己ゲル化しない。
【0020】
ローカストビーンゴムは、イナゴマメノキ(carob tree)の種子から得られる。ローカストビーンゴムは、1%で3000CPSの粘度を有する溶液/懸濁液を形成する。ローカストビーンゴムは、水にほんのわずかだけ溶解し、十分な粘度を達成するには85℃まで加熱しなければならない。ローカストビーンゴムは、自己ゲル化しない。カラヤゴムは、カラヤゴムノキ(Sterculia urens)の大きな潅木から滲出される。カラヤゴムは、1%で1000CPSの粘度を有する溶液/懸濁液を形成する。カラヤは、最も溶解性の小さいゴムの1つであり、通常、均質な分散液を形成する。
【0021】
本発明により、固形物含有量が0.25%〜1.0%の範囲の多糖ゴムの溶液/懸濁液の噴霧乾燥を試みた。溶液/懸濁液の粘度は、乾燥チャンバー壁に多糖ゴムが固着したため多糖ゴム溶液/懸濁液の単独での噴霧乾燥を実行不能にする350〜4800cpの範囲にあった。
【0022】
驚くべきことに、多糖ゴムと糖との組合せは多糖ゴムの噴霧特性を改善すると判定された。多糖ゴムを、マンニトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、ソルビトール、エリスリトール、イソマルト(isomalt)、およびこれらの混合物から選択される少なくとも1種の多価糖アルコールと種々の比率で組み合わせた。該組合せは、多糖ゴムの粘度を十分に低下させ、優れた噴霧特性および噴霧乾燥の容易さをもたらし、噴霧乾燥された多糖をもたらした。本明細書中に示す例示的実施例では、多糖ゴムおよび多価糖系ゴムを、物理的に混合した後に、液体を添加して溶液/懸濁液を形成した。しかし、このステップは義務付けられないこと、さらに、成分をいずれか特定の順序で一緒に混合することを義務付けられないことに留意されたい。
【0023】
例示的で非限定的な実施形態において、多糖ゴム:多価糖アルコールの比率は、典型的には、約1:0.5〜1:10であり、目下の好ましい比率は約1:1〜1:3である。多価糖アルコールは非吸湿性であり、それらは、その上、水分に敏感な成分と効果的に組み合わせられた。さらに、多価糖アルコールは、水性分散液の増粘を防止し、さらに多糖ゴム/多価糖アルコール材料の疎水性を増大させた。
【0024】
最も驚くべきことに、本発明の多糖ゴム/多価糖アルコールの共処理で噴霧乾燥された形態は、直接圧縮に適しており、徐放性固形剤形をもたらす。代わりの実施形態において、噴霧乾燥された粒子は、湿式造粒のための好ましい添加剤でもあり得る。
【0025】
使用される噴霧乾燥法は、当技術分野で公知の通常の方法である。1つの例示的実施形態では、多糖ゴムおよび多価糖アルコールからなる溶液/懸濁液を、45〜150mL/時間の供給速度で噴霧乾燥機中に噴霧した。入り口および出口温度は、それぞれ100〜220℃および60〜125℃で変動した。霧化用空気圧は、1〜4バールで変動し、圧縮空気流は、45〜85%であり、真空度は、70〜300mmであった。工程収率は、20〜60%で変動した。実施例1および10は、本発明のグアーガム/マンニトールの噴霧乾燥された粒子の製造に関する非限定的実例である。
【0026】
実施例10で明確に示されるように、本発明の噴霧乾燥された多糖ゴム/多価糖アルコールの粒子は、単に物理的に混合された多糖ゴムと多価糖アルコールとから製造された錠剤の溶解プロフィールに比較して、ひときわ優れた徐放性溶解プロフィールをもたらす。
【0027】
そのままのグアーガム、マンニトール、および噴霧乾燥された多糖ゴム/多価糖アルコールの粒子に関する粉末組織形態、形状、および表面構造を、走査電子顕微鏡法(SEM)によって観察した。図1に示すグアーガムのSEM顕微鏡写真は、多孔性表面を有するその多角形形状を示したが、図2に示すマンニトールのSEMは、いかなる多孔性構造も有さない滑らかな表面を示した。用語「そのままの」は、噴霧乾燥する前の市販の組成物と定義する。
【0028】
グアーガムをマンニトールと一緒に噴霧乾燥した粒子を、粉末組織形態、粉体特性、およびゴムと糖との間で起こり得る相互作用について評価し、本明細書中に例示した。噴霧乾燥された多糖ゴム/多価糖アルコールの粒子は、球状であり、それ自体ゴムより小さな粒径を有し、好都合な安息角およびCarr指数を有することが見出された。噴霧乾燥された多糖ゴム/多価糖アルコールの粒子は、それぞれ実施例1および14による図3および4に示すように、粗い表面を有し、いかなる多孔性構造も有さない、実質的に球状の形状であり、自由流動性であった。
【0029】
出発原料であるグアーガムおよびマンニトール、ならびにグアーガムとマンニトールとの物理的混合物の粒子、および実施例1による噴霧乾燥された多糖ゴム/多価糖アルコールの粒子に関するDSCおよびFTIR分析は、出発原料間での反応は存在しないことを示し、さらにグアーガム中に存在していた結合された形態の水の減少を示した。(実施例4および5参照。)
本発明の噴霧乾燥された粒子を使用して薬物剤形を製剤した。噴霧乾燥された粒子を、さらに、本明細書中で例示するような新規な薬物送達システムにおける放出抑制剤として製剤した。
【0030】
多糖ゴム/多価糖アルコールの噴霧乾燥された粒子を利用する徐放性剤形を、塩酸トラマドール(実施例9)および塩酸ベンラファキシン(実施例7)などの易溶性活性医薬成分(API)、ならびにグアイフェネシン(実施例8)およびジクロフェナクナトリウム(実施例6および10)などの微溶性APIの双方を用いて調製した。したがって、本発明の噴霧乾燥された粒子は広範な種類のAPIに適していることが、明確に例示された。典型的には、本発明の徐放性製剤を、充填剤およびAPIと混合した後、圧縮して固形剤形を製造する。特定のAPIと適合する充填剤の選択は、当技術分野で周知であり、本発明で利用できるAPIの数および種類に関する制約はあっても少ない。本発明で使用するのに適した充填剤は、当技術分野で周知であり、限定はされないが、微結晶セルロース(MCC)、乳糖、リン酸二カルシウム、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0031】
代わりの実施形態では、本発明の噴霧乾燥された粒子を、湿式造粒のために、通常の充填剤、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ポリビニルピロリドン(PVP)、デンプン、およびこれらの混合物、ならびに少なくとも1種のAPIと混合することができる。
【0032】
剤形は、該製剤の5%〜60%の範囲の噴霧乾燥粒子を用いて製剤した。より大きな溶解度を有する薬物にはより大きな比率の噴霧乾燥された粒子を存在させ、一方、貧弱な溶解性を有する薬物では、噴霧乾燥され圧縮された材料を、より少ない量で使用した。しかし、薬物の放出プロフィールは、薬物の溶解度と無関係に、多糖および糖からなる本発明の共処理された材料を用いて維持された。当技術分野で周知であるように、製剤中では、充填剤および滑沢剤をはじめとする薬学的に許容される添加剤などの付加的成分を、本発明と共に利用することができる。錠剤を、物理的パラメーターおよび溶解プロフィールについて評価し、市販製剤、および一般に許容される放出抑制剤を用いて調製した製剤と比較した。
【0033】
多糖ゴムの本発明による処理は、本明細書中で例示するように、該ゴムを、より大きな流動性、球状、かつ均一な粒径にし、かつ最も重要なことには、放出抑制特性を付与する。このことは、自然に調達される添加剤で見受けられるバッチごとの非均一性という不都合なしに、製剤開発における広範に及ぶ応用で、即用性の簡単な徐放性添加剤を提供する。さらに、新規に合成されるポリマーは、使用のために利用できる前に、規制当局によって承認されることを必要とする。よく許容されている添加剤である本発明の多糖は、噴霧乾燥の処理を受けているだけであり、この処理は、薬学的に許容される添加剤としてのそれらの規制上の状態を変化させず、実際に有害報告がなく、一般に安全と見なされる。
【0034】
本発明の噴霧乾燥された粒子は、錠剤、カプセル剤、および顆粒剤などの通常の剤形における応用を提供する。これらの粒子は、徐放性、長期放出性または遅延放出性、結腸標的化および胃内滞留性剤形として使用するのにとりわけ十分に適している。
【0035】
代わりの実施形態において、徐放性組成物は、また、多糖ゴムおよびβ(1−2)結合で一緒に連結されたフルクトース単位から構成されるオリゴ糖と多糖との混合物を噴霧乾燥することによって調製することができる。β(1−2)結合で一緒に連結されたフルクトース単位から構成されるオリゴ糖と多糖との混合物のほとんどすべての分子は、グルコース単位で終わる。β(1−2)結合で一緒に連結されたフルクトース単位から構成されるオリゴ糖および多糖中のフルクトースおよびグルコース単位の総数(重合度)は、主として3〜60の範囲に及ぶ。前記のようなオリゴフルクトースとポリフルクトースとの混合物から構成される材料の部類に関連する例が、チコリー(chicory)イヌリンである。
【0036】
本発明者らは、驚くべきことに、多糖ゴムおよびチコリーイヌリンを溶液/分散液中で組み合わせると、多糖ゴムを容易に噴霧乾燥することが可能になること、および生じる噴霧乾燥された多糖ゴム/イヌリンの材料が、薬物放出を抑制する特性を有することを発見した。
【0037】
イヌリン(オリゴフルクトース、ポリフルクトースとしても公知である)は、連結されたD−フルクトース分子の直鎖からなり、1つの末端グルコース分子を有し、5000までの分子量を有する、一般式C11(C11OHの天然に存在する多糖である。2〜8の重合度を有するオリゴフルクトースからなる、「チコリーイヌリン」の酵素的部分加水分解によって得られる等級のイヌリンも、本発明に適している。そのままのイヌリンおよび実施例16による噴霧乾燥されたイヌリン/グアーガムのSEM顕微鏡写真を、それぞれ図7および8に示す。
【0038】
本発明の別の代わりの実施形態では、少なくとも1種の多糖ゴムを、少なくとも1種の多価糖アルコールと少なくとも1種のオリゴ糖との組合せと溶媒中で混合して、噴霧乾燥が可能な溶液/懸濁液を形成することができる。生じる噴霧乾燥された粒子は、改善された徐放性材料を提供する。多糖ゴム/多価糖アルコール/オリゴ糖の噴霧乾燥された粒子は、多糖ゴム/多価糖アルコールの噴霧乾燥された粒子に関連して本明細書中で考察された方法および剤形で使用するのに適している。
【0039】
以下の実施例は、単に例示の目的で提供され、本明細書中で開示され特許請求される本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0040】
(実施例1)
噴霧乾燥された粒子の調製
グアーガムを含むマンニトールの溶液/懸濁液の噴霧乾燥は、噴霧乾燥機を使用して実施した。噴霧乾燥された材料1は、グアーガム:マンニトールの比率が1:1であり、噴霧乾燥された材料2は、グアーガム:マンニトールの比率が1:2であった。溶液/懸濁液は、ペリスタポンプを使用して噴霧乾燥機の乾燥チャンバー頂部のノズル(直径0.7mm)を通して供給された。噴霧乾燥機は、並流空気流で運転した。供給速度は50〜200mL/時間、入り口乾燥温度は100〜150℃、および出口乾燥温度は60〜100℃の間で変動した。霧化用空気圧力は1〜3バールとし、圧縮空気流は、60〜300mm水柱(Wc)の間で変動した。噴霧乾燥された粒子を、サイクロンに取り付けた貯槽中に集め、室温まで冷却し、篩い分け、密閉バイアル瓶中に保存した。
【0041】
(実施例2)
そのままのグアーガム、そのままのマンニトール、および実施例1により噴霧乾燥された材料の粉末組織形態、形状および表面構造を、それぞれ図1、2および3に示される走査電子顕微鏡法(SEM)によって観察した。グアーガムのSEM顕微鏡写真は、多孔性表面を有する多角形の形状を示したが、マンニトールでは、多孔性構造を少しも有さない滑らかな表面を示した。噴霧乾燥された材料は、多孔性構造を少しも有さない粗い表面を有するほとんど球状の形状であり、自由流動性であった。
【0042】
(実施例3)
安息角などの粉体特性を、固定漏斗−静置円錐法によって決定した。嵩密度および真密度、ならびにCarr指数も決定した。
【0043】
【表1】

(実施例4)
噴霧乾燥中でのグアーガムとマンニトールとの間の、および噴霧乾燥された材料と薬物との間の任意の相互作用の可能性を、そのままのグアーガム、そのままのマンニトール、グアーガムの物理的混合物、噴霧乾燥された材料、および錠剤マトリックス混合物についてDSCを使用して熱分析を実施することによって評価した。DSC分析は、噴霧乾燥中にグアーガムとマンニトールとの間の反応は存在しないことを明らかにし、かつまた、グアーガム中に存在していた結合された形態の水が減少することを示す。
【0044】
(実施例5)
そのままのグアーガム、そのままのマンニトール、グアーガムとマンニトールとの物理的混合物、および噴霧乾燥された材料のフーリエ変換赤外(FTIR)分光法を、400〜4000cm−1の波長範囲で走査することによって実施した。ゴムおよび糖の本質的変化は観察されなかった。
【0045】
(実施例6)
ジクロフェナクNaの錠剤を、グアーガムおよびマンニトールからなる共処理で噴霧乾燥された材料を種々の濃度で使用して製造した。錠剤の硬度は6〜7kg/cmの範囲にあった。
【0046】
また、共処理した材料の錠剤からの薬物放出に対する効果を明らかにするために、グアーガム自体とマンニトールとの物理的混合物を使用して錠剤を製造した。また、噴霧乾燥された材料の放出特性をHPMCと比較するため、HPMCを使用して錠剤を調製した。錠剤は、表2に示すような、計量された量のジクロフェナクNaおよび該当する添加剤を混合することによって調製した。
【0047】
【表2】

錠剤を、典型的な物理的錠剤化パラメーターについて、および溶出について評価した。溶出結果を、本明細書中の図9および図10にグラフで表す。ゴムを糖と共処理した材料と、市販の徐放性錠剤であるVoveran SRとの相対的溶解プロフィールは、放出遅延材料としての請求の範囲の噴霧乾燥された多糖を実証している。グアーガムとマンニトールとの物理的混合物を含む製剤、およびHPMCを含む製剤は、1時間以内にほぼ100%の薬物放出を示すが(図10、F5およびF6)、本発明の共処理された材料を含む錠剤は、薬物の徐放を示す(8時間で最大100%の薬物放出)(図9)。F7の溶解プロフィールは、Voveran SRの放出プロフィール(8時間で最大75%の薬物放出)と合致している(図10)。
【0048】
(実施例7)
ベンラファキシンHCLの錠剤を、グアーガムとマンニトールとの物理的混合物、HPMC、および共処理で噴霧乾燥された材料を錠剤重量の約50%の範囲でそれぞれ用いて調製し(表3)、錠剤化パラメーターおよび本明細書中の図11に示すような溶出について試験した。共処理された材料を用いて調製された錠剤(F1)は、10時間にわたって薬物の送達を維持した。
【0049】
【表3】

(実施例8)
グアイフェネシンの錠剤を、グアーガムとマンニトールとの物理的混合物、HPMC、および共処理で噴霧乾燥された材料を錠剤重量の約6〜14%の範囲でそれぞれ用いて調製し(表4)、錠剤化パラメーターおよび本明細書中の図12に示すような溶出について試験した。共処理で噴霧乾燥された材料を用いて調製された錠剤(F1、F2およびF4)は、8時間にわたって薬物の送達を維持した。薬物の顆粒に噴霧乾燥された材料を添加すると、共処理された材料を、顆粒と一緒に製剤することができることが明らかになる。
【0050】
【表4】

(実施例9)
トラマドール(tramodol)の錠剤を、グアーガムとマンニトールとの物理的混合物、HPMC、および共処理で噴霧乾燥された材料を錠剤重量の約52%の範囲でそれぞれ用いて調製し(表5)、錠剤化パラメーターおよび本明細書中の図13に示すような溶出について試験した。共処理された材料を用いて調製された錠剤(F2)は、市販製品に匹敵する8時間にわたる薬物の送達を維持した。物理的混合物を含む錠剤(F4)は1時間以内に薬物を放出した(図13参照)。
【0051】
【表5】

(実施例10)
徐放性ジクロフェナクナトリウム錠剤の調製
グアーガム/マンニトールの噴霧乾燥
1.5gのマンニトールを1.5gのグアーガムと混合し、次いでTurraxホモジナイザーを用いて混合することによって溶液/懸濁液を調製した。これによって、噴霧乾燥機中で使用できる0.5%の溶液/懸濁液が得られた。より高い1%の濃度では、その高粘度によるノズルの閉塞のため噴霧乾燥機系中で使用できない溶液/懸濁液をもたらした。噴霧乾燥機には空気ノズルを使用した。乾燥機は、195℃の入り口温度、3mL/分のポンプ送液速度、および65N/mの空気流で運転した。これにより、淡黄色粉末が得られた。次いで、この粉末を、ジクロフェナクを16%の装薬レベルで使用する徐放研究に使用した。グアーガム/マンニトールの噴霧乾燥された材料0.5gを、1.0gのRan Q MCC、および1.0gのジクロフェナクナトリウムと混合した。それぞれ500mg、3000lbで錠剤を圧縮した。さらに、類似の機械的混合物を、0.25gのグアーガム、0.25gのマンニトール、1.0gのRan Q MCC、および1.0gのジクロフェナクナトリウムを用いて製造した。後記の表8に示す詳細な研究は、図14および15に示す噴霧乾燥された徐放性材料を含むジクロフェナクナトリウム錠剤を用いて実施した。
【0052】
方法I
溶出媒質:pH6.8のリン酸Na緩衝液、900mL、37±0.5℃
装置II(パドル):50rpm
8時間目までは時間毎に、次いで24時間目にサンプルを抜き取った。
【0053】
ジクロフェナクNaの放出量を、緩衝液段階でのジクロフェナクナトリウムの遅延放出性錠剤に対してUSP法中で推奨されているように調製された標準溶液/懸濁液と比較した試験の下に、溶液/懸濁液の濾液部分について276nmである極大吸光度の波長でのUV吸光度から決定した。
【0054】
方法II:(ジクロフェナクナトリウムの遅延放出性錠剤のためのUSP法の改変)
酸段階
溶出媒質:0.1N HCl、900mL、37±0.5℃
装置II(パドル):50rpm
1時間後、0.1N HClを溶出容器からデカントし、錠剤の残りを緩衝液段階にかけた(下記参照)。
【0055】
溶出から得られた0.1N HClに、20mLの5N NaOHを添加した。ジクロフェナクNaの放出量を、酸段階でのジクロフェナクナトリウムの遅延放出性錠剤に対してUSP法中で推奨されているように調製された標準溶液/懸濁液と比較した試験の下に、溶液/懸濁液の濾液部分について276nmである極大吸光度の波長でのUV吸光度から決定した。
【0056】
緩衝液段階
溶出媒質:pH6.8のリン酸Na緩衝液、900mL、37±0.5℃
装置II(パドル):50rpm
7時間目までは時間毎に、次いで24時間目にサンプルを抜き取った。
【0057】
ジクロフェナクNaの放出量を、緩衝液段階でのジクロフェナクナトリウムの遅延放出性錠剤に対してUSP法中で推奨されているように調製された標準溶液/懸濁液と比較した試験の下に、溶液/懸濁液の濾液部分について276nmの極大吸光度の波長でのUV吸光度から決定した。
【0058】
【表6】

【0059】
【表7】

グアーガム/マンニトールの湿式造粒
グアーガム60g、マンニトール60g、および水25gを、以下の条件:下部インペラー870rpm、下部チョッパー1000rpm、乾式混合時間2分、上部インペラー700rpm、上部チョッパー1500rpm、水添加16rpm、湿式塊化時間1分、3%LODまで乾燥を使用して湿式造粒した。湿式造粒されたこの材料を使用して、500mgのグアーガム/マンニトール、1.2gのRan Q MCC、および0.320gアセトアミノフェンCompact PVCを詰め込み、16%のアセトアミノフェン装薬量で圧縮された試験錠剤を製造した。500mgの錠剤を3000lbで圧縮した。これらの錠剤は、媒質中、30秒未満で崩壊したので、徐放の研究に適していないことが見出された。噴霧乾燥された材料から製造された錠剤は、24時間以上にわたってそのままであった。実施例10および11の錠剤の比較を表8に示す。
【0060】
【表8】

(実施例11)
徐放性アセトアミノフェン錠剤
実施例10により、500mgのグアーガム/マンニトール、1.2gのRan Q MCC、および0.320gアセトアミノフェンCompact PVCを詰め込み、アセトアミノフェン装薬量が16%である徐放性アセトアミノフェン錠剤を調製し、試験した。500mgの錠剤は、3000lbで圧縮した。結果を図16に示す。アセトアミノフェンの溶出は、すべて、下記の方法を使用して実施した。
【0061】
溶出媒質:0.1N HCl、900mL、37±0.5℃
装置II(パドル):50rpm
(実施例12)
ローカスト(loctus)ビーン/マンニトールの噴霧乾燥
6gのマンニトールを6gのローカストビーンと混合し、次いでTurraxホモジナイザーで混合することによって溶液/懸濁液を調製した。これによって、噴霧乾燥機中で使用できる2%の溶液/懸濁液が得られた。乾燥機は、195℃の入り口温度、3mL/分のポンプ送液速度、および65N/mの空気流で運転した。これにより、白色粉末が得られた。該粉末を、アセトアミノフェンの徐放について試験した。実験は、500mgのローカストビーン/マンニトール、1.2gのRan Q MCC、および0.320gアセトアミノフェンCompact PVCを詰め込み、16%のアセトアミノフェン装薬量で実施した。そのままのローカストビーンゴム、およびこの実施例による噴霧乾燥生成物のSEM顕微鏡写真を、それぞれ図5および6に示す。
【0062】
(実施例13)
カラヤゴム/マンニトールの噴霧乾燥
6gのマンニトールを6gのカラヤゴムと混合し、次いでTurraxホモジナイザーで混合することによって溶液/懸濁液を調製した。これによって、噴霧乾燥機中で使用できる2%の溶液/懸濁液が得られた。乾燥機は、195℃の入り口温度、3mL/分のポンプ送液速度、および65N/mの空気流で運転した。これにより、白色粉末が得られた。該粉末を、アセトアミノフェンの徐放について試験した。実験は、500mgのカラヤゴム/マンニトール、1.2gのRan Q MCC、および0.320gアセトアミノフェンCompact PVCを詰め込み、16%のアセトアミノフェン装薬量で実施した。
【0063】
実施例14〜16に記載の製品は、空気噴霧ノズルを備えたSono−Tek laboratoryの噴霧乾燥機で製造した。噴霧乾燥は、190℃の空気入り口温度、70N/mの空気流、および3mL/分のポンプ送液流速を使用して行った。サンプルは、高速回転ホモジナイザーを使用して多価糖アルコールまたはオリゴ糖を水に溶解することによって調製した。続いて、多糖ゴムを、上記で調製された溶液に徐々に導入して、完全な湿潤化を確実にした。次いで、混合物全体を5分間ホモジナイズした。次いで、該混合物を、噴霧乾燥機の上部へ移送し、噴霧乾燥工程の間中、磁気撹拌機で一定の撹拌下に保持した。
【0064】
(実施例14)
噴霧乾燥されたグアーガム/マンニトール(1:4)材料の調製
24gのマンニトール(Roquette社、Pearlitol 160C)を1200mLの脱イオン水中でホモジナイズした。ホモジナイズ中の混合物に、6gのグアーガム(Coyote Brand、HV)を徐々に添加した。次いで、該混合物を噴霧乾燥して、グアーガム/マンニトール材料を得た。得られた材料の放出制御能力を、300mgのグアーガム/マンニトール生成物を取り、該材料を1.0gの微結晶セルロースおよび1.0gのジクロフェナクナトリウムと混合することによって試験した。13mmの直径を有する500mg錠剤は、Carver手動式プレスを使用し、3000lbの圧縮力で圧縮した。次いで、該錠剤を、50rpmのUSP装置II(パドル)、37±0.5℃の溶出媒質900mLを使用して、溶出について試験した。溶出実験は、2つの段階、すなわち、最初の2時間にわたる酸段階(溶出媒質は0.1N HCl)および2時間目から24時間目までの緩衝液段階(pH6.8の0.05Mリン酸ナトリウム緩衝液)で実施した。7時間後にAPIの43%が放出され、24時間後にAPIの94%が放出された。1:1の比率のグアーガム:マンニトールでの同様の研究は、7時間で42%のAPI放出を示す。
【0065】
(実施例15)
噴霧乾燥された冷水可溶性ローカストビーンゴム/マンニトール(1:1)材料の調製
18gのマンニトール(Roquette社、Pearlitol 160C)を1200mLの脱イオン水中でホモジナイズする。ホモジナイズ中の混合物に、18gの冷水可溶性ローカストビーンゴム(Pangaea社、冷水可溶性ローカストビーンゴム)を徐々に添加した。次いで、該混合物を噴霧乾燥して、ローカストビーンゴム/マンニトール材料を得た。得られた材料の徐放能力を、300mgのローカストビーンゴム/マンニトール生成物を取り、該材料を1.0gの微結晶セルロースおよび1.0gのジクロフェナクナトリウムと混合することによって試験した。13mmの直径を有する500mg錠剤は、Carver手動式プレスを使用し、3000lbの圧縮力で圧縮した。次いで、該錠剤を、50rpmのUSP装置II(パドル)、37±0.5℃の溶出媒質900mLを使用して、溶出について試験した。溶出実験は、2つの段階、すなわち、最初の2時間の酸段階(溶出媒質は0.1N HCl)および2時間目から24時間目までの緩衝液段階(pH6.8の0.05Mリン酸ナトリウム緩衝液)で実施した。3時間後にAPIの5.4%が放出され、7時間後にAPIの17%が放出され、24時間後にAPIの57%が放出された。ローカスト(locus)ビーンゴムおよびMCCのみを使用する類似の錠剤は、3時間で72%を超えるAPI放出を示す。冷水可溶性ローカストビーンゴムは、高度にゲル化する材料ではない。API放出の効果的な抑制は、驚くべきことであり、本発明により製造される組成物の独自性を示している。
【0066】
(実施例16)
噴霧乾燥されたグアーガム/イヌリン(1:1)材料の調製
6gのイヌリン(Orafti ST−Gel)を1200mLの脱イオン水中でホモジナイズする。ホモジナイズ中の混合物に、6gのグアーガム(Coyote Brand、HV)を徐々に添加した。次いで、該混合物を噴霧乾燥して、グアーガム/イヌリン材料を得た。得られた材料の徐放能力を、300mgのグアーガム/イヌリン生成物を取り、該材料を1.0gの微結晶セルロースおよび1.0gのジクロフェナクナトリウムと混合することによって試験した。13mmの直径を有する500mg錠剤は、Carver手動式プレスを使用し、3000lbの圧縮力で圧縮した。次いで、該錠剤を、50rpmのUSP装置II(パドル)、37±0.5℃の溶出媒質900mLを使用して、溶出について試験した。溶出実験は、2つの段階、すなわち、最初の2時間の酸段階(溶出媒質は0.1N HCl)および2時間目から24時間目までの緩衝液段階(pH6.8の0.05Mリン酸ナトリウム緩衝液)で実施した。7時間後にAPIの16%が放出され、24時間後にAPIの47%が放出される。マンニトールをベースにした類似の組成物(グアーガム:マンニトール=1:1)は、7時間後に約19%のAPI放出を、24時間後に61%のAPI放出を示す。この実施例は、イヌリン型分子を使用することによるAPI放出のさらなる抑制を示す。1:4の比率のグアーガム:マンニトールおよびグアーガム:イヌリンを用いて調製された類似の材料は、それぞれ94%および47%の放出を示す。このことは、イヌリンによるさらなる抑制を示している。
【0067】
本明細書中で使用される百分率は、特記しない限り、すべてwt/wt%である。
【0068】
本発明を詳細に説明してきたが、当業者は、本発明の精神および範囲から逸脱しないで、本発明の修正をなし得ることを認識するであろう。したがって、本発明の範囲は、記載された特定の実施形態に限定されるとは解釈されない。むしろ、添付の特許請求の範囲およびそれらの等価形態が本発明の範囲を決定すると解釈される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の多価糖アルコールと組み合わせた、少なくとも1種の多糖ゴムの実質的に球状の粒子を含む、徐放性組成物。
【請求項2】
少なくとも1種の多価糖アルコールと組み合わせた少なくとも1種の多糖ゴムの噴霧乾燥された混合物を含む、徐放性組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1種の多糖ゴムが、グアーガム、キサンタンゴム、ローカストビーンゴム、カラヤゴム、タラゴム、コンニャクゴム、およびこれらの混合物からなる群から選択され、そして前記少なくとも1種の多価糖アルコールが、マンニトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、ソルビトール、エリスリトール、イソマルト、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記少なくとも1種の多糖ゴムがグアーガムであり、かつ前記少なくとも1種の糖アルコールがマンニトールである、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1種の多糖ゴム 対 前記少なくとも1種の多価糖アルコールの比率が、約1:05〜約1:10である、請求項2に記載の組成物。
【請求項6】
前記少なくとも1種の多糖ゴム 対 前記少なくとも1種の多価糖アルコールの比率が、約1:1〜約1:3である、請求項2に記載の組成物。
【請求項7】
徐放性組成物を製造するための方法であって、
少なくとも1種の多糖ゴムおよび少なくとも1種の多価糖アルコールを溶媒中で混合して溶液/懸濁液を形成する工程、ならびに
該溶液/懸濁液を噴霧乾燥して該徐放性組成物の粒子を形成する工程
を含む、方法。
【請求項8】
前記少なくとも1種の多糖ゴムが、グアーガム、キサンタンゴム、ローカストビーンゴム、カラヤゴム、タラゴム、コンニャクゴム、およびこれらの混合物からなる群から選択され、そして前記少なくとも1種の多価糖アルコールが、マンニトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、ソルビトール、エリスリトール、イソマルト、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1種の多糖ゴムがグアーガムであり、かつ前記少なくとも1種の糖アルコールがマンニトールである、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
徐放性医薬固形剤形を製造する方法であって、
少なくとも1種の多糖ゴムおよび少なくとも1種の多価糖アルコールを溶媒中で混合して溶液/懸濁液を形成する工程、
該溶液/懸濁液を噴霧乾燥して徐放性組成物の粒子を形成する工程、
該徐放性組成物を少なくとも1種の充填剤および少なくとも1種の活性医薬成分と混合して錠剤化用混合物を形成する工程、ならびに
該錠剤化用混合物を圧縮して徐放性医薬剤形を形成する工程
を含む、方法。
【請求項11】
前記少なくとも1種の多糖ゴムが、グアーガム、キサンタンゴム、ローカストビーンゴム、カラヤゴム、タラゴム、コンニャクゴム、およびこれらの混合物からなる群から選択され、そして前記少なくとも1種の多価糖アルコールが、マンニトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、ソルビトール、エリスリトール、イソマルト、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも1種の活性医薬成分が、前記徐放性組成物と湿式造粒によって混合される、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも1種の多糖ゴムがグアーガムであり、かつ前記少なくとも1種の糖アルコールがマンニトールである、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
少なくとも1種の多価糖アルコールと組み合わせた少なくとも1種の多糖ゴムの噴霧乾燥された混合物、
少なくとも1種の充填剤、および
少なくとも1種の活性医薬成分
を含む、徐放性医薬固形剤形。
【請求項15】
前記少なくとも1種の多糖ゴムが、グアーガム、キサンタンゴム、ローカストビーンゴム、カラヤゴム、タラゴム、コンニャクゴム、およびこれらの混合物からなる群から選択され、そして前記少なくとも1種の多価糖アルコールが、マンニトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、ソルビトール、エリスリトール、イソマルト、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項14に記載の固形剤形。
【請求項16】
前記少なくとも1種の多糖ゴムがグアーガムであり、かつ前記少なくとも1種の糖アルコールがマンニトールである、請求項14に記載の固形剤形。
【請求項17】
前記充填剤が、MCC、乳糖、リン酸二カルシウム、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項14に記載の固形剤形。
【請求項18】
少なくとも1種のオリゴ糖と組み合わせた少なくとも1種の多糖ゴムの噴霧乾燥された混合物を含む、徐放性組成物。
【請求項19】
前記少なくとも1種のオリゴ糖がイヌリンである、請求項18に記載の徐放性組成物。
【請求項20】
少なくとも1種の多価糖アルコールをさらに含む、請求項18に記載の徐放性組成物。
【請求項21】
請求項18に記載の徐放性組成物を製造するための方法であって、
少なくとも1種の多糖ゴムおよび少なくとも1種のオリゴ糖を溶媒中で混合して溶液/懸濁液を形成する工程、ならびに
該溶液/懸濁液を噴霧乾燥して該徐放性組成物の粒子を形成する工程
を含む、方法。
【請求項22】
前記徐放性組成物を少なくとも1種の充填剤および少なくとも1種の活性医薬成分と混合して錠剤化用混合物を形成する工程、ならびに
該錠剤化用混合物を圧縮して徐放性医薬剤形を形成する工程
をさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
少なくとも1種のオリゴ糖と組み合わせた少なくとも1種の多糖ゴムの噴霧乾燥された混合物、
少なくとも1種の充填剤、および
少なくとも1種の活性医薬成分
を含む徐放性医薬固形剤形。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公表番号】特表2011−530529(P2011−530529A)
【公表日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−522237(P2011−522237)
【出願日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際出願番号】PCT/US2009/052956
【国際公開番号】WO2010/017358
【国際公開日】平成22年2月11日(2010.2.11)
【出願人】(592162807)アバントール パフォーマンス マテリアルズ, インコーポレイテッド (15)
【氏名又は名称原語表記】J T BAKER INCORPORATED
【Fターム(参考)】