説明

ゴムの分析方法

【課題】従来手法では分析できなかった超高分子量成分を含む範囲で天然ゴム及び/またはジエン系合成ゴムを分析することが可能なゴムの分析方法を提供する。
【解決手段】天然ゴム及び/またはジエン系合成ゴムを有機溶媒に溶解する溶解工程と、溶解された天然ゴム及び/またはジエン系合成ゴムの溶液を遠心加速度1万G〜100万Gにて遠心分離して、溶液中の可溶成分と不溶成分とを分離する分離工程と、を含むゴムの分析方法である。分離された溶液中の可溶成分は、多角度光散乱検出器を接続したフィールドフローフラクショネーション装置により分析することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴムの分析方法(以下、単に「分析方法」とも称する)に関し、詳しくは、超高分子量成分や分岐の多い天然ゴム及び/またはジエン系合成ゴムの分子量、分岐およびゲル分率などの高次構造を評価するためのゴムの分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題およびその優れた物性の観点から、天然ゴムの位置づけはますます高くなってきている。新たな機能を付与した天然ゴムの開発や、生産された天然ゴムの管理に際しては、その基本構造パラメータとしての分子量などの把握が重要である。また、天然ゴムのみならずジエン系合成ゴムにおいても、生産された合成ゴムの管理に際しては、その基本構造パラメータとしての分子量などの把握が重要である。
【0003】
従来、天然ゴム及びジエン系合成ゴムの高次構造の分析は、ゴムをテトラヒドロフラン(THF)等の有機溶媒に溶解後、THFに不溶なゴム分などの夾雑物をフィルターでろ過し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により分子量分布を測定するという手順で行われていた。また、例えば、非特許文献1〜3には、天然ゴムやジエン系合成ゴムの構造分析に、フィールドフローフラクショネーション(以下、「FFF」とも称する)装置、ないし、FFFおよび多角度光散乱(以下、「MALS」とも称する)検出器を用いることが開示されているが、これら文献においては試料の前処理法や分析データの解析法が適切ではなく、天然ゴムやジエン系合成ゴムの高次構造の分析法としては不十分であった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】“Journal of Natural Rubber Research”,1997年,Vol.12(3),p.154−165
【非特許文献2】“Macromolecules”,1995年,28,p.6354−6356
【非特許文献3】“Bull.Korean Chem.Soc.”,2000年,Vol.21,No.1,p.69−74
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来一般的なGPCを用いた分析手法で得られる天然ゴムやジエン系合成ゴムの平均分子量や分子量分布の情報は、ムーニー粘度などの加工物性との対応が悪く、この手法では、本来の分子量分布が得られていないのではないかとの懸念があった。これは、天然ゴムやジエン系合成ゴムを構成する溶剤可溶成分のうち、超高分子量成分が、GPCの前処理であるフィルターろ過の際にフィルター(ポアサイズ:0.45μm)で除外されて、GPCにより得られる分子量分布に含まれないためであると考えられる。さらに、実験的事実として、天然ゴムのTHF溶液を加圧ろ過などの手段でポアサイズ0.45μmのフィルターに通過させた場合、すぐにフィルターが詰まってしまい、圧力が上がって、ろ過に非常に時間を要するなどの問題点があった。この原因は、天然ゴム中に、THFに不溶な架橋したゲル成分と、0.45μmのフィルターを通過しないTHFに溶解した超高分子量成分とが含まれていることにある。一方で、GPCでは、0.45μmのフィルターを通過しない成分は、入口および出口にメッシュやフリットなどの多孔性の穴あきフィルターを有するとともに微細な充填剤の詰まったカラムを通過しない可能性があるので、フィルターろ過の前処理は必須であり、そのため、超高分子量成分は、このようなフィルターろ過が必須な従来手法では除外されていると考えられる。このことから、有機溶剤には可溶であるが0.45μmのフィルターを通過しない超高分子量成分についても分析可能な、天然ゴム及びジエン系合成ゴムの分析方法が求められていた。
【0006】
そこで本発明の目的は、上記問題を解決して、従来手法では分析できなかった超高分子量成分を含む範囲で天然ゴム及びジエン系合成ゴムを分析することが可能なゴムの分析方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は鋭意検討した結果、天然ゴム及び/またはジエン系合成ゴムを有機溶媒に溶解した溶液について、遠心加速度1万G〜100万Gの範囲での超遠心分離を行って、溶液中の可溶成分と不溶成分とを分離する手法を用いることで、超高分子量成分を含む可溶成分のみを取り出して分析することが可能となることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明のゴムの分析方法は、天然ゴム及び/またはジエン系合成ゴムを有機溶媒に溶解する溶解工程と、溶解された該天然ゴム及び/またはジエン系合成ゴムの溶液を遠心加速度1万G〜100万Gにて遠心分離して、該溶液中の可溶成分と不溶成分とを分離する分離工程と、を含むことを特徴とするものである。
【0009】
本発明においては、分離された前記溶液中の可溶成分を、FFF装置により分析することができ、より詳しくは、分子量と回転半径とを測定するためにMALS検出器を接続したFFF装置(以下、「FFF−MALS」とも称する)により分析することができる。ここで、FFF装置とは、100μm〜500μmの空隙(チャンネル)に試料溶液を通過させて、チャンネルを通過させる際に場(フィールド)を引加することにより分子量分別ができる装置である。フィールドの引加法としては、遠心力、温度差、電場などがあるが、空隙の一方の壁を半透膜とし、その壁から溶媒をシリンジポンプで吸引する非対称流FFF装置が好適である。
【0010】
また、本発明においては、前記FFF装置として、MALS検出器または単角度光散乱装置のうちのいずれか一方または両方と粘度検出器とが接続されているものを用いて、分離された前記溶液中の可溶成分の分子量および分岐インデックスを分析することができる。さらに、本発明においては、前記遠心分離を、遠心部位を真空状態とすることが可能な超遠心分離器によって行うことが好ましく、金属製の遠沈管によって行うことも好ましい。
【0011】
また、前記分離工程において、遠心分離の遠心加速度は、好適には3万〜50万Gであり、より好適には10万〜20万Gである。さらに、前記有機溶媒としては、テトラヒドロフラン、クロロホルム、トルエンおよびシクロヘキサンのうちから選択される少なくとも1種を好適に用いることができ、より好適には、テトラヒドロフランを用いる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、上記構成としたことで、従来手法では分析できなかった超高分子量成分を含む範囲で天然ゴム及びジエン系合成ゴムを分析することが可能なゴムの分析方法を実現することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】FFF−MALSにより得られた天然ゴムの溶出曲線(A)、および、溶出曲線の各点における分子量(B)を示すグラフである。
【図2】FFF−MALSにより得られた天然ゴムの微分分子量分布曲線(A)、および、GPC−MALSにより得られた天然ゴムの微分分子量分布曲線(B)を示すグラフである。
【図3】FFF−MALSにより得られた天然ゴムの回転半径と分子量とのLog−Logプロットを示すグラフであり、(A)は天然ゴムのもの、(B)はリニアな標準参照物質から得た直線である。
【図4】FFF−MALSにより測定された天然ゴムの分岐点数/分子の分布を示すグラフである。
【図5】GPC−MALSにより得られた天然ゴムの溶出曲線(A)、および、溶出曲線の各点における分子量(B)を示すグラフである。
【図6】GPC−MALSにより得られた天然ゴムの回転半径と分子量とのLog−Logプロットを示すグラフであり、(A)は天然ゴムのもの、(B)はリニアな標準参照物質から得た直線である。
【図7】デバイ(Debye)プロットを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
本発明のゴムの分析方法においては、まず、分析対象となる天然ゴム及び/またはジエン系合成ゴムを有機溶媒に溶解して(溶解工程)、溶解された天然ゴム及び/またはジエン系合成ゴムの溶液を遠心加速度1万G〜100万Gにて遠心分離することにより、溶液中の可溶成分と不溶成分とを分離する(分離工程)。遠心分離は一般的な分離技術であるが、本発明においては、遠心加速度1万G〜100万Gでの、いわゆる超遠心分離の手法を用いることで、天然ゴム及び/またはジエン系合成ゴムの溶液中の超高分子量成分を含む可溶成分のみを取り出すことができ、従来は分析できなかった、超高分子量成分を含む状態での天然ゴム及び/またはジエン系合成ゴムの分析を行うことが可能となったものである。
【0015】
本発明において、天然ゴムとはパラゴムノキなどの植物種から産出される樹液から得られるポリイソプレンを主骨格とするゴムである。また、ジエン系合成ゴムとは、ブタジエン、イソプレンなどのジエン系炭化水素から成るモノマーを重合したポリマーの主骨格に含む合成ゴムであり、合成のイソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)などが例示される。天然ゴム及び/またはジエン系合成ゴムの溶解に用いる有機溶媒としては、特に制限はなく、天然ゴム及び/またはジエン系合成ゴムを溶解可能なものであれば、いかなるものを用いてもよい。具体的には、テトラヒドロフラン(THF)、クロロホルム、トルエンおよびシクロヘキサンのうちから選択される少なくとも1種を、単独で、または混合して使用することができる。中でも好適には、溶解性が良好なTHFを用いる。かかる有機溶媒中への天然ゴム及び/またはジエン系合成ゴムの添加量(溶解量)は、溶液中の天然ゴム及び/またはジエン系合成ゴムの濃度として、例えば、0.001〜1質量%とすることができる。この添加量が多すぎると天然ゴム及び/またはジエン系合成ゴムが十分溶解せず、一方、少なすぎると、濃度検出器として用いるRI(示差屈折率)検出器で検出できなくなる。
【0016】
上記溶解工程においては、例えば、有機溶媒中に天然ゴム及び/またはジエン系合成ゴムを投入した後、12時間以上放置して、天然ゴム及び/またはジエン系合成ゴムを完全に溶解させる。この際、天然ゴム及び/またはジエン系合成ゴムの劣化を抑制するために、BHT(ジブチルヒドロキシトルエン)などの酸化防止剤等を添加してもよい。
【0017】
また、上記分離工程においては、溶解された天然ゴム及び/またはジエン系合成ゴムの溶液を、遠心加速度1万G〜100万G、好適には3万〜50万G、より好適には10万〜20万Gにて、例えば、10分〜300分で、遠心分離する。これにより、溶液中の可溶成分と不溶成分とを分離することができる。遠心加速度が1万G未満であると、分離が不十分となる。一方、100万Gを超える遠心加速度に対しては、容器の耐久性が不十分であると考えられるため、100万Gを超える遠心加速度を用いることは、現実的ではない。本発明において、上記遠心分離の容器としては、THFに耐溶剤性のある金属容器が好ましく、さらに、ステンレス製の容器を用いることが、耐久性という意味で好ましい。ここで、本発明において、上記遠心分離は、遠心部位を真空状態とし、超高速で試料容器の回転が可能な超遠心分離器によって行うことが好ましい。
【0018】
上記溶解工程および分離工程により分離された天然ゴム及び/またはジエン系合成ゴムの溶液のうち、上澄み液を採取することで、超高分子量成分を含む可溶成分が得られる。本発明において、この可溶成分の分析は、分子量別分離機であるFFF装置と、分子量及び分岐検出器であるMALS検出器またはLALLS(Low angle laser light scattering)、RALLS(Right angle laser light scattering)などの単角度の光散乱検出器と、粘度検出器とを接続した装置により行うことができる。FFFは、溶液中の成分を拡散速度の差により分子量分別することが可能な技術であり、従来のGPCにおけるような、分析対象の溶液に対する前処理としてのフィルターろ過を必要としない。FFFにおいて、溶液中の成分は、拡散速度の大きい低分子量の分子から順次溶出する。したがって、従来のGPCに代えてFFF装置を用いることで、フィルターろ過を行わずに、従来は除外されていた超高分子量成分を含む範囲で、可溶成分を分析することが可能となった。FFF装置としては、特には、非対称流FFF装置を用いることが好ましい。
【0019】
ここで、可溶成分の分子量分布は、FFFにより分離された各分子量成分をMALS検出器を用いて測定することで、デバイ(Debye)プロットにより得られる(図7参照)。図中、Mは分子量、Kは光学パラメータ、cは濃度、R(θ)は過剰散乱のレイリー比、rは回転半径を示す。この際、通常は、示差屈折率(RI)検出器を用いて、可溶成分の濃度を測定する。また、このプロセスにより、重量平均分子量と分子量分布が算出可能である。さらに、デバイプロットの傾きより回転半径(r)が得られ、各分子量成分の分岐インデックスgを算出することができる。分岐インデックスとは、下記式(a)、
g=<Rgbranch/<RgLinear・・・・・・・・・・(a)
で示される分岐の程度を示すパラメータであり、試料の分子構造がリニアな高分子であれば分岐インデックスは1であり、分岐の程度が大きくなるに従って1より小さくなる。ここで、<Rgbranchは試料の回転半径の2乗平均であり、<RgLinearはリニアな標準参照物質の回転半径の2乗平均である。さらに、分岐点数/分子=Bとすると、分岐点が3官能の場合の分岐インデックスgは、以下のようになり、
g=[(1+B/7)1/2+4B/9π]−1/2 ・・・・・・・・・・(b)
分岐点が4官能の場合の分岐インデックスgは、以下のようになる。
g=[(1+B/6)1/2+4B/3π]−1/2
また、FFFにより分離された各分子量成分について、RALLS装置やLALLS装置など単角度の光散乱装置と粘度検出器との両方を用いて測定することによっても、分子量分布および重量平均分子量を得ることが可能である。この場合、粘度検出器により固有粘度が得られるので、下記の式によって固有粘度から分岐インデックスgが得られる。
=[η]branch/[η]Linear
ここで、[η]branchは試料の固有粘度であり、[η]Linearはリニアな標準参照物質の固有粘度であり、bは星型(b=0.5)、ランダム(b=1.5)などの分岐構造によって決定されるパラメータである。この分岐インデックスの具体的な計算方法としては、(I)実際のリニアな標準参照物質のデータを用いる方法、(II)試料のコンフォーメーションプロット(回転半径と分子量とのLog−Logプロット)を描き、試料そのものの低分子側はリニアと仮定し、外挿してリニアな高分子の直線に相当する傾きとY切片を求める方法、または(III)低分子側だけリニアな標準参照物質のデータを用い高分子側に外挿する(I)と(II)とを組み合わせた方法などがある。
一方、GPCとMALSを組み合わせたGPC−MALSという手法を用いれば原理的には求められるはずであるが、天然ゴムの場合、長鎖分岐を多く含むので、GPCでは分子量分別する機能がうまく働かず、異常溶出現象のために低分子量のリニア高分子と高分子量の分岐高分子が同時の保持時間で溶出し、広い分子量範囲にわたって分岐インデックスを測定できない。そのため天然ゴム及び分岐を多く含むジエン系合成ゴムでは、分岐インデックスは、GPC‐MALSによる分析では得られない構造因子である。
【0020】
一方で、上記溶解工程および分離工程により分離された天然ゴム及び/またはジエン系合成ゴムの溶液のうち、架橋したゲルに対応する沈殿した不溶成分を乾燥、秤量することで、天然ゴム及び/またはジエン系合成ゴムのゲル分率を評価することができる。
【0021】
本発明のゴムの分析方法によれば、従来は分析できなかった超高分子量成分を含む範囲で天然ゴム及び/またはジエン系合成ゴムの分子量分布や分岐、ゲル分率等の構造因子を評価できるので、天然ゴム及び/またはジエン系合成ゴムの加工物性と構造との関係を明確にして、天然ゴム及び/またはジエン系合成ゴムの開発および品質管理に寄与することができる。
【実施例】
【0022】
以下、本発明を、実施例および比較例を用いてより詳細に説明する。
(実施例)
天然ゴムのサンプル(PT Bridgestone Sumatra Rubber Estateで作製した天然ゴムを使用)を準備して、このサンプルをTHF中に、溶液中の天然ゴムの濃度が0.4質量%となるよう添加した。24時間放置した後、この溶液を、ステンレス製の遠沈管を用い遠心加速度約15万Gにて1時間超遠心分離して、溶液中の可溶成分と不溶成分とを分離した。不溶成分の重量は、沈殿物を乾燥後、秤量したところ、元の天然ゴムに対し8.9質量%であった。分離された溶液中の可溶成分に対応する上澄み液を採取して、THFにより2倍に希釈し、FFF−MALSにより分析した。FFF装置としてはPostnova社製のAF2000、MALS検出器としてはWyatt社のDawn Heleos II、RI検出器としては、Postnova社製のPN3140型をそれぞれ用いた。この際、装置の配管の連結方法はFFF装置−MALS検出器−RI検出器の順番で連結した。
【0023】
図1は、FFF−MALS測定で得られた天然ゴムの溶出曲線(A)および溶出曲線の各点における分子量(B)を示しており、これらから、図2における(A)に示すような天然ゴムの微分分子量分布曲線が得られる。また、FFF−MALS測定では、溶出曲線の各点における回転半径が得られるため、図3における(A)に示すような回転半径と分子量とのLog−Logプロット(コンフォーメーションプロット)が得られる。ここで、天然ゴムの低分子部分がリニアな分子であると仮定し、天然ゴムの低分子部分のコンフォーメーションプロットの傾きを高分子側まで外挿したリニア高分子に相当する直線(B)と比較することにより、分岐の程度を比較することができる。図3のように高分子になるほど、直線(B)より(A)の値が下に下がっているので、高分子になるほど分岐の程度が大きいことがわかる。
【0024】
さらに、各分子量における分岐インデックスg(式(a))に基づき、分岐点を3官能であると仮定すると、式(b)によって図4に示すような分岐点数/分子の分布が得られる。
【0025】
(比較例)
実施例における24時間放置した天然ゴムの0.4質量%溶液を、THFで4倍に希釈した後、0.45μmのフィルターを通過させ、そのろ液につき、GPC−MALSで測定を行った。FFFの分離に必要なチャンネルの代わりにTSK−GEL GMH(20)のGPCカラムを2本連結して使用した以外は、実施例で用いたと同様の装置を用いた。
【0026】
図5は、GPC−MALSで得られた天然ゴムの溶出曲線(A)と溶出曲線の各点における分子量(B)を示している。図5の(B)のデータで示すように、GPC−MALSの場合、分子量は溶出溶量に対し、直線ではなく、下に凸の曲線となっている。この理由は、天然ゴムの場合、リニアな低分子と分岐した高分子とが同時に溶出する異常溶出現象が起こることによる。また、GPC−MALSでは、前処理として、0.45μmのフィルターろ過を行っているので、THFに溶解している超高分子量成分が測定されておらず、図2(B)に示すように、GPC−MALSの結果(図2(A))と比較して、高分子量側がなくなった微分分子量分布曲線となっており、本来の分子量分布と異なっている。
【0027】
また、GPC−MALSでは、図6に示すように、天然ゴムの回転半径と分子量のLog−Logプロット(A)が、リニアな標準参照物質から得た直線(B)の上にある部分が多く、これからは、分岐点数は計算できない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然ゴム及び/またはジエン系合成ゴムを有機溶媒に溶解する溶解工程と、溶解された該天然ゴム及び/またはジエン系合成ゴムの溶液を遠心加速度1万G〜100万Gにて遠心分離して、該溶液中の可溶成分と不溶成分とを分離する分離工程と、を含むことを特徴とするゴムの分析方法。
【請求項2】
分離された前記溶液中の可溶成分を、フィールドフローフラクショネーション装置により分析する請求項1記載のゴムの分析方法。
【請求項3】
前記フィールドフローフラクショネーション装置として、多角度光散乱検出器が接続されているものを用いる請求項2記載のゴムの分析方法。
【請求項4】
前記フィールドフローフラクショネーション装置として、非対称流フィールドフローフラクショネーション装置を用いる請求項2または3記載のゴムの分析方法。
【請求項5】
前記分離工程において、遠心分離の遠心加速度を3万〜50万Gとする請求項1〜4のうちいずれか一項記載のゴムの分析方法。
【請求項6】
前記分離工程において、遠心分離の遠心加速度を10万〜20万Gとする請求項5記載のゴムの分析方法。
【請求項7】
前記有機溶媒が、テトラヒドロフラン、クロロホルム、トルエンおよびシクロヘキサンのうちから選択される少なくとも1種である請求項1〜6のうちいずれか一項記載のゴムの分析方法。
【請求項8】
前記有機溶媒がテトラヒドロフランである請求項7記載のゴムの分析方法。
【請求項9】
前記フィールドフローフラクショネーション装置として、多角度光散乱検出器が接続されているものを用いて、分離された前記溶液中の可溶成分の分子量および回転半径を分析する請求項2〜8のうちいずれか一項記載のゴムの分析方法。
【請求項10】
前記フィールドフローフラクショネーション装置として、多角度光散乱検出器または単角度光散乱装置のいずれか一方または両方と粘度検出器とが接続されているものを用いて、分離された前記溶液中の可溶成分の分子量および分岐インデックスを分析する請求項2〜8のうちいずれか一項記載のゴムの分析方法。
【請求項11】
前記遠心分離を、遠心部位を真空状態とすることが可能な超遠心分離器によって行う請求項1〜10のうちいずれか一項記載のゴムの分析方法。
【請求項12】
前記遠心分離を、金属製の遠沈管によって行う請求項1〜11のうちいずれか一項記載のゴムの分析方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−122796(P2012−122796A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−272495(P2010−272495)
【出願日】平成22年12月7日(2010.12.7)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】