説明

ゴムエキステンダー油組成物の製造方法

多核芳香族含有量が3重量%以下(IP346)の水素化処理パラフィン系基油と多核芳香族含有量が3重量%以下の水素化処理ナフテン系基油とをブレンドする、多核芳香族含有量が3重量%以下であるゴムエキステンダー油組成物の製造法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、ゴムエキステンダー油組成物の製造方法及び該方法で製造したゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
ゴムエキステンダー油組成物は、例えば、処理中に必要な混合温度の低下、粉砕中のゴム重合体の焼けの防止、ゴムの粘度低下によるゴム化合物の一般的作業性の向上、充填剤の分散性促進、ゴム化合物の物性改質、その他、多くの理由から天然ゴム及び合成ゴムに添加される。一般にゴムエキステンダー用に使用される油は、高粘度、低揮発性で、かつゴム化合物に対し溶媒和の大きい鉱物油である。
【0003】
油組成物は、ゴムエキステンダー油組成物として役立つためには、ゴム化合物と或る程度の混和性及び/又は溶媒和性を持たなければならない。必要とする混和性及び/又は溶媒和性は、ゴム化合物の性質及びゴム組成物の使用目的によって変化する。スチレン−ブタジエンゴム(SBR)のように芳香族基を多量に有するゴム化合物には、通常、高芳香族性ゴムエキステンダー油組成物が使用される。
【0004】
このような高芳香族性ゴムエキステンダー油組成物は、蒸留物芳香族抽出物(DAE)としても知られ、芳香族含有量が通常、70重量%以上と非常に大きい。用語“芳香族”とは、ベンゼン部分を有する化合物のように、共役不飽和炭素結合で構成される環を少なくとも1つ有する主として炭素及び水素からなる分子を意味し、多核芳香族化合物又は多芳香族化合物、即ち、アンスラセンベース部分のように、2個以上の互いに融合した芳香環を有する化合物もこの芳香族の定義に含まれる。現在、このような高度芳香族性ゴムエキステンダー油組成物は、潤滑基油製造用原材料として使用される真空蒸留物の溶剤抽出プロセスでの副生物として得られる。これらDAEは、通常、SBR及び他のゴム化合物と良好な相溶性を有するが、通常、10〜15重量%という一般に高濃度の多核芳香族(PCA)を含有する。高級芳香族環とも呼ばれる特定の多核芳香族(PNA)、多環式芳香族(PCA)及びポリ芳香族炭化水素(PAH)は、公知の発癌物質である。
【0005】
多核芳香族を3重量%(IP346)より多量に含有するゴムエキステンダー油組成物は、ヨーロッパの法規(EU Substance Directive 67/548/EEC)によれば、ヨーロッパでは“発癌性”として分類され、危険語句“R45”(発癌の恐れあり)及び標識“T”(毒、頭蓋骨、及び2本の交差した骨)で標識しなければならない。健康、安全性及び環境上の影響という観点から、多核芳香族含有量が3重量%以下(IP346)で、したがって発癌性が低いゴムエキステンダー油組成物として使用される蒸留物芳香族抽出物の代替品を得ることが望ましい。
【0006】
特に自動車タイヤの製造には、多核芳香族含有量が3重量%以下(IP346)のゴムエキステンダー油組成物を使用することが重要である。これは最新型乗用車で生じる排気ガス中のPNAに比べてタイヤの磨耗で生じるPNAの方が遥かに多量に環境に放出されるからである。したがって、取替えゴムエキステンダー油組成物には、自動車タイヤに使用されるゴム化合物に大幅な再配合を必要としないような特性を有することが要求されている。
【0007】
ゴムエキステンダー油組成物用の取替え組成物として処理済み蒸留物芳香族抽出物(TDAE)が提案されている。処理済みゴムエキステンダー油組成物は、幾つかのゴム化合物及び用途のゴムエキステンダー油組成物として好適であることが見い出された。処理済みゴムエキステンダー油組成物は、PNAの濃度を3重量%の閾未満(IP346)に低下させるため、更にDAEを水素化処理又は溶剤抽出するなど、別途に厳格な処理を行って作られる。しかし、潤滑油市場では、自動車及び工業用水素化処理基油(APIカテゴリーII)に対する需要が増大するに従って、基油の精製構造は著しく変化する。この変化は、処理済み蒸留物芳香族抽出物の製造用供給原料として使用される蒸留物芳香族抽出物の将来の利用可能性に影響を与える。これらの変化は、既に米国や極東で起こっている。
【0008】
マイルドに又は中庸に抽出した溶媒和物(MES)は、芳香族含有量はできるだけ多く保持しているが、PNA含有量は3重量%の閾未満(IP346)である処理済みパラフィン系真空蒸留物フラクションである。MESを使用した自動車タイヤは市販されている。タイヤ組成物に有用なMES組成物は、V.Nullの論文“Safe process oils for tires with low environmental impact”(KGK Kautschuk Gunmi Kunststoffe 52,Jahrgang,Nr.12/99)に開示されている。
【非特許文献1】V.Nullの論文“Safe process oils for tires with low environmental impact”(KGK Kautschuk Gunmi Kunststoffe 52,Jahrgang,Nr.12/99)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
多核芳香族含有量が3重量%以下(IP346)のゴムエキステンダー油組成物を製造するには、更に仕上げプロセス及び/又は専用のプロセス装置を使用する必要がある。このため、ゴムエキステンダー油組成物の製造コストが増大し、及び/又はゴムエキステンダー油組成物の製造に多大の資本投資を必要とする。したがって、多核芳香族含有量が3重量%以下(IP346)のゴムエキステンダー油組成物の簡単な製造法を開発することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明の概要
多核芳香族含有量が3重量%以下の水素化処理パラフィン系基油と、多核芳香族含有量が3重量%以下、好ましくは25重量%以上、更に好ましくは30重量%以上の水素化処理ナフテン系基油とをブレンドすることを特徴とする多核芳香族含有量が3重量%以下であるゴムエキステンダー油組成物の製造方法。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
発明の詳細な説明
本発明の一実施態様では、多核芳香族含有量が3重量%以下(IP346)であるゴムエキステンダー油組成物の製造方法が提供される。多核芳香族含有量が3重量%以下(IP346)であるゴムエキステンダー油組成物の製造方法は、多核芳香族含有量が3重量%以下(IP346)の水素化処理パラフィン系基油と、多核芳香族含有量が3重量%以下(IP346)の水素化処理ナフテン系基油とをブレンドすることを特徴とする。
【0012】
本発明の他の一実施態様では、多核芳香族含有量が3重量%以下のゴムエキステンダー油組成物は、多核芳香族含有量が3重量%以下の水素化処理パラフィン系基油と、多核芳香族含有量が3重量%以下の水素化処理ナフテン系基油とを1:20〜20:1の重量比でブレンドすることを特徴とする方法により製造される。
【0013】
本発明の他の一実施態様では、多核芳香族含有量が3重量%以下で、芳香族含有量が25重量%以上で、アニリン点が90〜110℃の範囲で、ガラス転移点が−70〜−20℃の範囲で、100℃での粘度が12〜17cStの範囲であるゴムエキステンダー油組成物の製造方法は、多核芳香族含有量が3重量%以下の水素化処理パラフィン系基油と、多核芳香族含有量が3重量%以下の水素化処理ナフテン系基油とをブレンドすることを特徴とする。
【0014】
本発明のなお他の一実施態様では、多核芳香族含有量が3重量%以下で、芳香族含有量が25重量%以上で、アニリン点が90〜110℃の範囲で、ガラス転移点が−70〜−20℃の範囲で、100℃での粘度が12〜17cStの範囲であるゴムエキステンダー油組成物の製造方法は、多核芳香族含有量が3重量%以下の水素化処理パラフィン系基油と、多核芳香族含有量が3重量%以下の水素化処理ナフテン系基油とを1:20〜20:1の重量比でブレンドすることを特徴とする方法により提供される。
【0015】
本発明のなお他の一実施態様では、多核芳香族含有量が3重量%以下で、引火点が235℃以上の水素化処理パラフィン系基油と、多核芳香族含有量が3重量%以下の水素化処理ナフテン系基油とをブレンドすることを特徴とする多核芳香族含有量が3重量%以下のゴムエキステンダー油組成物の製造方法が提供される。
【0016】
本発明のなお他の一実施態様では、多核芳香族含有量が3重量%以下で、芳香族含有量が5重量%以上で、アニリン点が130℃以下で、100℃での粘度が11.0以上の水素化処理パラフィン系基油と、多核芳香族含有量が3重量%以下の水素化処理ナフテン系基油とをブレンドすることを特徴とする多核芳香族含有量が3重量%以下のゴムエキステンダー油組成物の製造方法が提供される。
【0017】
本発明のなお他の一実施態様では、多核芳香族含有量が3重量%以下の水素化処理パラフィン系基油と、多核芳香族含有量が3重量%以下で、引火点が235℃以上の水素化処理ナフテン系基油とをブレンドすることを特徴とする多核芳香族含有量が3重量%以下のゴムエキステンダー油組成物の製造方法が提供される。
【0018】
本発明の他の一実施態様では、ゴム及び/又はゴム成分と、本発明方法で製造したゴムエキステンダー油組成物0.5〜50重量%(ゴム組成物の重量に対し)とを含有するゴム組成物が提供される。
【0019】
本発明のなお他の一実施態様では、 a)少なくとも1種のゴム、ゴム成分又はそれらの混合物と、b)本発明方法で製造したゴムエキステンダー油組成物0.5〜50重量%(ゴム組成物の重量に対し)と、任意にc)強化剤、d)架橋剤及び/又は架橋助剤、e)無機充填剤、及びf)ワックス及び/又は酸化防止剤から選ばれた少なくとも1種の成分とを含有するゴム組成物が提供される。
【0020】
プロセス油及びゴムエキステンダー油組成物を製造するため、本発明方法を使用してよい。プロセス油には、本発明方法で製造されるゴムエキステンダー油組成物についてここで説明した特徴の全てを適用してよい。本発明方法で製造したプロセス油は、例えばインクの製造、木材保存剤、特に丸太材の処理に使用される保存剤に有用で、またタイヤのような製品用のゴムエキステンダー油組成物として有用である。本発明方法で製造したプロセス油組成物は、特にゴムエキステンダー油組成物として有用である。
【0021】
本発明方法は、多核芳香族含有量が3重量%以下(IP346)の水素化処理パラフィン系基油と、多核芳香族含有量が3重量%以下(IP346)の水素化処理ナフテン系基油とをブレンドして、プロセス油を製造することを特徴とする。特に本発明方法は、多核芳香族含有量が3重量%以下(IP346)の水素化処理パラフィン系基油と、多核芳香族含有量が3重量%以下(IP346)の水素化処理ナフテン系基油とをブレンドして、ゴムエキスパンダー油組成物を製造することを特徴とする。
【0022】
本発明方法で製造したゴムエキステンダー油組成物は、Institute of Petroleum 346 (IP346)試験法で測定して、多核芳香族含有量が3重量%以下である。PNAの濃度が3重量%以下の利点は、ゴムエキスパンダー油組成物の発癌性が低く、したがって、ヨーロッパユニオン又は現在の米国OSHA規定で潜在的に危険なクラス2の発癌物質として標識する必要がないことである。
【0023】
ゴムエキステンダー油組成物の芳香族含有量が多いと、スチレン−ブタジエンゴムのように芳香族基を多量に含むゴム化合物に対する溶媒和が増大するので、ゴムエキステンダー油組成物にとっては、芳香族含有量が多いことが望ましい。したがって、本発明方法で製造されるゴムエキステンダー油組成物の芳香族含有量は多い方が好ましい。本発明方法で製造したゴムエキステンダー油組成物の芳香族含有量は、粘土−ゲル分析(ASTM試験法D2007)で好ましくは25重量%以上、更に好ましくは30重量%以上である。本発明方法で製造したゴムエキステンダー油組成物の芳香族含有量は、好ましくは90重量%以下である。本発明の一実施態様では、本発明方法で製造したゴムエキステンダー油組成物は、芳香族含有量が50重量%以下(ASTM試験法D2007)である。
【0024】
ゴムエキステンダー油組成物のアニリン点は、ゴム化合物との溶媒和レベルを指示するのに使用でき、特に低アニリン点(ASTM試験法D611で110℃未満)は、ゴムエキステンダーを利用する場合、高い溶媒和の指標となる。したがって、本発明方法で製造したゴムエキステンダー油組成物のアニリン点は、当業者に公知のゴムエキステンダー油の利用に有用な範囲内であることが好ましい。このアニリン点は、好ましくは90〜110℃の範囲(ASTM試験法D611)である。
【0025】
本発明方法で製造したゴムエキステンダー油組成物の粘度は、ゴムエキステンダー油として使用するのに好ましい範囲でなければならない。ゴムエキステンダー油組成物の粘度は、ASTM試験法D445で測定して、100℃では好ましくは12〜17cSt(1.2×10−5〜1.7×10−5−1)の範囲である。ゴムエキステンダー油組成物の粘度は、ASTM試験法D445で測定して、40℃は好ましくは140〜190cSt(1.4×10−4〜1.9×10−4−1)の範囲である。
【0026】
ゴムエキステンダー油組成物の引火点は、適度に高く保持しなければならない。本発明方法で製造したゴムエキステンダー油組成物の引火点は、好ましくは235℃以上、更に好ましくは240℃以上(Cleveland Open Cup、ASTM試験法D92)である。ゴムエキステンダー油組成物の引火点は、最も好ましくは240〜300℃の範囲、特に240〜275℃の範囲(ASTM試験法D92)である。
【0027】
本発明方法で製造したゴムエキステンダー油組成物のガラス転移点(Tg)は、当業者に公知のゴムエキステンダー油の利用に有用な範囲内でなければならない。ゴムエキステンダー油のガラス転移点は、ASTM試験法E1356で測定して、好ましくは−70〜−20℃の範囲である。ゴムエキステンダー油のガラス転移点は、更に好ましくは−70〜−40℃の範囲(ASTM試験法E1356)の範囲、なお更に好ましくは−70〜−50℃の範囲である。
【0028】
本発明方法で製造したゴムエキステンダー油組成物の流動点は、当業者に公知のゴムエキステンダー油の利用に有用な範囲内でなければならない。ゴムエキステンダー油の流動点は、ASTM試験法D5950で測定して、好ましくは−8℃以下である。
【0029】
本発明方法で製造したゴムエキステンダー油組成物の比重は、ゴムエキステンダー油の利用に有用な範囲内でなければならない。ゴムエキステンダー油の比重は、ASTM試験法D4052で測定して、15.56℃(60°F)で好ましくは0.89〜0.93の範囲である。
【0030】
好ましい一実施態様では、多核芳香族含有量が3重量%以下(IP346)の水素化処理パラフィン系基油と、多核芳香族含有量が3重量%以下(IP346)の水素化処理ナフテン系基油とをブレンドすることを特徴とする、多核芳香族含有量が3重量%以下(IP346)で、芳香族含有量が30重量%以上(ASTM試験法D2007)で、アニリン点が90〜110℃の範囲(ASTM試験法D611)で、ガラス転移点が−70〜−20℃の範囲(ASTM試験法E1356)で、100℃での粘度が12〜17cSt(1.2×10−5〜1.7×10−5−1)の範囲(ASTM試験法D445)で、引火点が240〜300℃の範囲(ASTM試験法D92)で、また流動点が−8℃以下(ASTM試験法D5950)であるゴムエキステンダー油組成物の製造方法が提供される。
【0031】
前述のような所望の特性を有するゴムエキステンダー油組成物を製造するには、特定の水素化処理パラフィン系基油と、特定の水素化処理ナフテン系基油とのブレンドが必要である。このようなブレンドを起こす方法としては、当該技術分野で公知のいかなる好適な方法も使用できる。この水素化処理パラフィン系基油と水素化処理ナフテン系基油とのブレンドは、機械的撹拌法で行うのが好ましい。
【0032】
本発明の一態様では、水素化処理パラフィン系基油と水素化処理ナフテン系基油とのブレンドは、10〜100℃、更に好ましくは50〜80℃の範囲の温度で機械的撹拌により行われる。本発明の他の一態様ではゴムエキステンダー油組成物は、該ゴム組成物の製造中、現場で水素化処理パラフィン系基油を水素化処理ナフテン系基油とブレンドして製造される。本発明の他の一態様ではゴムエキステンダー油組成物は、水素化処理パラフィン系基油及び水素化処理ナフテン系基油をゴム組成物中に含有させる前にブレンドして製造される。
【0033】
水素化処理パラフィン系基油と水素化処理ナフテン系基油とのブレンドは、水素化処理パラフィン系基油及び水素化処理ナフテン系基油の引火点未満で行うと便利かも知れない。ブレンドは、0〜200℃の範囲の温度で行うのが好ましい。本発明の一態様では、このブレンド法は、10〜100℃、好ましくは50〜80℃の範囲の温度で行われる。ブレンド法を行う圧力は重要ではなく、真空条件下又は極圧下で行ってよい。本発明のブレンド法は、好ましくは0気圧(0バール)〜100気圧(101.325バール)の範囲の圧力で行うことが好ましい。このブレンド法は、大気圧で行うと、非常に便利かも知れない。
【0034】
本発明方法で使用される水素化処理パラフィン系基油と水素化処理ナフテン系基油との比は、ゴムエキステンダー油組成物の特性や水素化処理パラフィン系基油及び水素化処理ナフテン系基油の特性により変化し得る。水素化処理パラフィン系基油及び水素化処理ナフテン系基油は、好ましくは20:1〜1:20の重量比の範囲でブレンドされる。水素化処理パラフィン系基油と水素化処理ナフテン系基油との重量比は、更に好ましくは2:1〜1:20の範囲、最も好ましくは1:1〜1:19の範囲である。
【0035】
本発明方法の供給原料組成物は、潤滑油製油所で製造される水素化処理基油組成物であってよい。本発明方法の一利点は、所望のゴムエキステンダー油組成物を製造するのに、粘土濾過、脱蝋、脱アスファルト、水素化処理又は溶剤抽出のような後ブレンド法を必要としないことである。必要ではないが、所望ならば、粘土濾過、脱蝋、脱アスファルト、水素化処理、溶剤抽出又はそれらの組合わせのような後ブレンド法又は“仕上げ工程”を行ってもよい。
【0036】
本発明方法の一実施態様では、追加の後ブレンド法は行わない。後ブレンド法がなければ、本発明方法はこのような後ブレンド法を行うための追加のコストがかからないので、顕著なコスト効果が保証される。
【0037】
本発明方法の別の利点は、本方法に専用の処理装置を必要としないことである。唯一の装置要件はブレンド装置である。したがって、初期の資本投資が最小限で済むばかりでなく、本発明方法は製油所内で行うことに限定されず、ゴムエキステンダー油組成物の使用場所、離れた処理施設、又は場所間の移動(transit)中のようないずれの好適な場所でも行なえる。
【0038】
本発明方法で使用される水素化処理パラフィン系基油及び水素化処理ナフテン系基油は、多核芳香族含有量が3重量%以下(IP346)の水素化処理パラフィン系基油及び多核芳香族含有量が3重量%以下(IP346)の水素化処理ナフテン系基油である。
水素化処理パラフィン系基油は、潤滑基油を製造する際、生成物フラクションとして製造され、容易に入手できる。
【0039】
ゴムエキステンダー油生成物組成物の芳香族含有量は、所望の芳香族含有量を有するゴムエキステンダー油生成物組成物の製造に適切な芳香族含有量を有する水素化処理ナフテン系基油を選択すること及び/又は水素化処理パラフィン系基油と水素化処理ナフテン系基油とのブレンド比を変えることにより変化できる。本発明方法の一実施態様では、水素化処理パラフィン系基油の芳香族含有量は、5重量%以上(ASTM試験法D2007)である。
【0040】
本発明方法で使用される水素化処理パラフィン系基油のアニリン点は、比較的低く、通常、150℃未満(ASTM試験法D611)である。水素化処理パラフィン系基油のアニリン点は、好ましくは130℃以下、更に好ましくは125℃以下(ASTM試験法D611)である。
【0041】
本発明方法で使用される水素化処理パラフィン系基油の引火点は、好ましくは235℃以上(ASTM試験法D92)でなければならない。水素化処理パラフィン系基油の引火点は、更に好ましくは240℃以上(ASTM試験法D92)である。
【0042】
本発明方法で使用されるパラフィン系基油の粘度は、100℃では好ましくは11.0cSt(1.1×10−5−1)以上、更に好ましくは11.5cSt(1.15×10−5−1)以上(ASTM試験法D445)でなければならない。またパラフィン系基油の粘度は、40℃では好ましくは100cSt(1.0×10−4−1)以上(ASTM試験法D445)でなければならない。
【0043】
水素化処理ナフテン系基油は、潤滑基油を製造する際、生成物フラクションとして製造され、特に米国では容易に入手できる。
水素化処理ナフテン系基油のアニリン点は、本発明方法で製造したゴムエキステンダー油組成物のアニリン点が当業者に公知のゴムエキステンダー油の利用に有用な範囲内になるようなアニリン点でなければならない。水素化処理ナフテン系基油のアニリン点は、好ましくは110℃以下(ASTM試験法D611)である。
【0044】
本発明方法で使用される水素化処理ナフテン系基油の引火点は、好ましくは235℃以上(ASTM試験法D92)でなければならない。水素化処理パラフィン系基油の引火点は、更に好ましくは240℃以上(ASTM試験法D92)である。
【0045】
本発明方法で使用される水素化処理ナフテン系基油の粘度は、ブレンドすべき水素化処理パラフィン系基油よりも高い方が有利である。水素化処理ナフテン系基油の粘度は、100℃で好ましくは15cSt(1.5×10−5−1)以上、更に好ましくは15.5cSt(1.55×10−5−1)以上(ASTM試験法D445)以上である。本発明の一実施態様では、水素化処理ナフテン系基油の粘度は、100℃で15cSt(1.5×10−5−1)以上、好ましくは15.5cSt(1.55×10−5−1)以上(ASTM試験法D445)以上であり、かつ水素化処理パラフィン系基油の粘度よりも高い(100℃で;ASTM試験法D445)。
【0046】
本発明方法は、多核芳香族含有量が3重量%以下(IP346)で、芳香族含有量が30重量%以上(ASTM試験法D2007)で、アニリン点が90〜110℃の範囲(ASTM試験法D611)で、ガラス転移点が−70〜−20℃の範囲(ASTM試験法E1356)で、100℃での粘度が12〜17cSt(1.2×10−5〜1.7×10−5−1)の範囲(ASTM試験法D445)で、引火点が240〜275℃の範囲(ASTM試験法D92)で、また流動点が−8℃以下(ASTM試験法D5950)であるゴムエキステンダー油組成物の製造に好ましく使用される。
【0047】
本発明方法で使用される水素化処理パラフィン系基油は、多核芳香族含有量が3重量%以下(IP346)で、引火点が235℃以上(ASTM試験法D92)で、芳香族含有量が5重量%以上(ASTM試験法D2007)で、アニリン点が130℃以下(ASTM試験法D611)で、100℃での粘度が11.0(1.1×10−5−1)以上(ASTM試験法D445)である水素化処理パラフィン系基油が好ましい。
【0048】
本発明方法で使用される水素化処理ナフテン系基油は、多核芳香族含有量が3重量%以下(IP346)で、引火点が235℃以上(ASTM試験法D92)で、芳香族含有量が5重量%以上(ASTM試験法D2007)で、アニリン点が110℃以下(ASTM試験法D611)で、100℃での粘度が15.0(1.5×10−5−1)以上(ASTM試験法D445)である水素化処理ナフテン系基油が好ましい。
【0049】
本発明方法で製造したゴムエキステンダー油組成物は、ゴム組成物の製造に好適に使用される。本発明方法で製造したゴムエキステンダー油組成物は、ゴム組成物中に、ゴム組成物の重量に対して、好適には0.5〜50重量%の範囲で導入される。用語“ゴム組成物の重量に対して”とは、最終ゴム組成物の重量を基準とすることを意味する。本発明方法で製造したゴムエキステンダー油組成物は、PNAを3重量%以下(IP346)含有するので、このようなゴムエキステンダー油組成物を使用して製造したゴム組成物は、発癌性が低いという利点がある。
【0050】
本発明のゴム組成物は、a)ゴム及び/又はゴム成分、及びb)本発明方法で製造したゴムエキステンダー油組成物0.5〜50重量%(ゴム組成物の重量に対し)を含有する。本発明方法で製造したゴムエキステンダー油組成物は、ゴム組成物の重量に対し、好ましくは5〜40重量%の範囲で取込まれる。本発明のゴムエキステンダー油組成物は、ゴム及び/又はゴム成分に添加する前又は現場でゴム組成物の製造工程中、水素化処理パラフィン系基油と水素化処理ナフテン系基油とをブレンドして製造できるが、水素化処理パラフィン系基油及び水素化処理ナフテン系基油は、ゴム及び/又はゴム成分に添加する前にブレンドして本発明のゴムエキステンダー油組成物を製造することが好ましい。
【0051】
ゴム組成物の製造又は配合方法は、本発明方法で製造したゴムエキステンダー油組成物をゴム又はゴム化合物及び/又はゴム又はゴム化合物の1種以上のモノマー前駆体と順不同で混合することを特徴とする。ゴムエキステンダー油組成物をゴム又はゴム化合物と混合する際、ゴム又はゴム化合物は、断片(crum)状、ペレット状及び/又は粉末状が好ましい。
【0052】
ミキサーのせん断作用によるゴム又はゴム化合物粒子の“焼け”又は“燃焼”を防止するため、本発明方法で製造したゴムエキステンダー油組成物は、ミキサー中でゴム又はゴム化合物の粉砕中にこれに添加してよい。本発明の他の一態様では、ミキサーのせん断作用によるゴム又はゴム化合物粒子の“焼け”又は“燃焼”を防止するため、本発明のゴムエキステンダー油組成物は、ミキサー中でゴム又はゴム化合物の粉砕中に現場で製造してよい。本発明方法で製造したゴムエキステンダー油組成物は、ゴムに重合する前のモノマー混合物に添加してよい。本発明の他の一態様では、本発明のゴムエキステンダー油組成物は、ゴム化合物に重合する前のモノマー混合物中で現場製造してよい。
【0053】
本発明方法で製造したゴムエキステンダー油組成物は、合成ゴム、天然ゴム及びそれらの混合物に使用してよい。本発明方法で製造したゴムエキステンダー油組成物に好適な合成ゴムの例としては、限定されるものではないが、スチレン−ブタジエン共重合体(SBR)、ポリブタジエン(BR)、ポリイソプレン(IR)、ポリクロロプレン(CR)、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体(EPDM)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)等が挙げられる。
【0054】
本発明の一実施態様では、本発明のゴム組成物は、a)ゴム及び/又はゴム成分、b)本発明方法で製造したゴムエキステンダー油組成物0.5〜50重量%(ゴム組成物の重量に対し)、並びに任意にc)強化剤、d)架橋剤及び/又は架橋助剤、e)無機充填剤、及びf)ワックス及び/又は酸化防止剤から選ばれた1種以上の成分を含有する。
【0055】
ゴム組成物には、ゴム工業で使用される他の配合剤、例えば粘着付与剤、加硫制御剤、高損失付与(loss−providing)剤及び低損失付与剤も任意に含有させてよい。
【0056】
強化剤の例は、カーボンブラック及びシリカである。架橋剤及び架橋助剤の例については、架橋剤として、有機過酸化物、硫黄及び有機硫黄化合物が、また架橋助剤として、チアゾール化合物及びグアニジン化合物がある。無機充填剤の例は、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、粘土、アルミナ、水酸化アルミニウム、マイカ等である。劣化を防止又は低減するため、いかなる好適なワックス及び/又は酸化防止剤も取込んでよい。
【0057】
本発明ゴム組成物の製造方法は、ゴム組成物の成分a)〜f)を順不同でブレンドすることを特徴とする。本発明ゴム組成物の製造条件は、当業者に公知である。
本発明の一態様では、ゴム組成物は成分a)及びb)だけを含有する。
【0058】
本発明のゴム組成物は、以下の非限定的例示の方法で製造してよい。圧力反応器に乾燥シクロヘキサン1500g、スチレン100g及びブタジエン150gを装入する。反応器温度を50℃に設定し、テトラヒドロフラン75ミリモルをランダム化剤として添加する。n−ブチルリチウム1.5ミリモルを添加(n−ブチルリチウムの1.6M n−ヘキサン溶液の形態で添加)して重合を開始させる。重合を50℃で約2時間行った。ブチル化ヒドロキシトルエン(2,6−ジ−taert−ブチル−4−メチルフェノール)0.5gのイソプロパノール5ml液を添加して重合反応を停止させた。引続き本発明のゴムエキステンダー油を、生成重合体の重量に対し25重量%の量、添加する。次いで反応器内容物を常法で乾燥してエキステンダー含有(extended)合成ゴム組成物を得る。
【0059】
本発明は各種変形及び代替形態を取りやすいが、その特定の実施態様を以下の実施例で詳細に説明する。この詳細な説明は、本発明を開示した特定の形態に限定することを意図せず、逆に本発明は付属の特許請求の範囲で定義した本発明の範囲内のあらゆる変形、均等物及び代替物をカバーすることを理解すべきである。本発明を以下の例示の実施態様により説明する。この実施態様はいかなる方法によっても特許請求した本発明を限定するものと解釈すべきではない。
【実施例】
【0060】
いずれの例でも水素化処理パラフィン系基油は、機械的撹拌条件下で水素化処理ナフテン系基油と混合した。
以下の例で使用した水素化処理パラフィン系基油供給源量組成物は、パラ1及びパラ2という。パラ1はグループI基油(APIカテゴリーI基油)で、パラ2はグループII基油(APIカテゴリーII基油)である。パラ1及びパラ2の特徴を第1表に示す。
【0061】
【表1】

【0062】
以下の例で使用した水素化処理ナフテン系基油供給源量組成物は、ナフ1、ナフ2及びナフ3という。ナフ1、ナフ2及びナフ3の特徴を下記第2表に示す。
【0063】
【表2】

【0064】
例1では1400gのパラ1を600gのナフ2とブレンドした。混合物を室温(25℃)で30分間、機械撹拌した。
例2では1400gのパラ1を600gのナフ1とブレンドした。混合物を室温(25℃)で30分間、機械撹拌した。
【0065】
例3では1000gのパラ1を1000gのナフ2とブレンドした。混合物を50℃で120分間、機械撹拌した。
例4では1500gのパラ2を500gのナフ3とブレンドした。混合物を室温(25℃)で30分間、機械撹拌した。
【0066】
例5では800gのパラ2を1200gのナフ2とブレンドした。混合物を室温(25℃)で30分間、機械撹拌した。
例6では400gのパラ2を1600gのナフ2とブレンドした。混合物を室温(25℃)で30分間、機械撹拌した。
例1〜6で製造したゴムエキステンダー油組成物の特徴を下記第3表に示す。
【0067】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
多核芳香族含有量が3重量%以下の水素化処理パラフィン系基油と、多核芳香族含有量が3重量%以下、好ましくは25重量%以上、更に好ましくは30重量%以上の水素化処理ナフテン系基油とをブレンドすることを特徴とする多核芳香族含有量が3重量%以下であるゴムエキステンダー油組成物の製造方法。
【請求項2】
前記ゴムエキステンダー油生成物組成物のアニリン点が90〜110℃の範囲であり、ガラス転移点が−70〜−20℃の範囲であり、100℃での粘度が12〜17cStの範囲である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ゴムエキステンダー油生成物組成物の引火点が240℃以上、好ましくは240〜275℃の範囲であり、流動点が−8℃以下である請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記水素化処理パラフィン系基油と水素化処理ナフテン系基油とのブレンドが、該ゴム組成物の製造中の現場で行われる請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記水素化処理パラフィン系基油と水素化処理ナフテン系基油とのブレンドが、0〜200℃の範囲の温度、0〜100気圧の範囲の圧力、及び1:20〜20:1の範囲、好ましくは1:1〜1:19の範囲の重量比で行われる請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記水素化処理パラフィン系基油の引火点が235℃以上、好ましくは240℃以上である請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記水素化処理パラフィン系基油の芳香族含有量が5重量%以上で、アニリン点が130℃以下、好ましくは125℃以下で、100℃での粘度が11.0cSt以上、好ましくは11.5cSt以上で、40℃での粘度が100cSt以上である請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記水素化処理ナフテン系基油の引火点が235℃以上、好ましくは240℃以上で、100℃での粘度が15cSt以上で、アニリン点が110℃以下である請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記水素化処理パラフィン系基油及び水素化処理ナフテン系基油が1:20〜20:1の範囲、好ましくは1:1〜1:19の範囲の比でブレンドされるる請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
a)少なくとも1種のゴム、ゴム成分又はそれらの混合物、及びb)請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法で製造したゴムエキステンダー油組成物0.5〜50重量%、好ましくは5〜40重量%(ゴム組成物の重量に対し)を含有するゴム組成物。
【請求項11】
c)強化剤、d)架橋剤及び/又は架橋助剤、e)無機充填剤、又はf)ワックス及び/又は酸化防止剤から選ばれた少なくとも1種の成分を更に含有する請求項10に記載のゴム組成物。
【請求項12】
前記ゴム、ゴム成分又はそれらの混合物が、合成ゴム、天然ゴム又はそれらの混合物である請求項10又は11に記載のゴム組成物。
【請求項13】
前記ゴム、ゴム成分又はそれらの混合物が、スチレン−ブタジエン共重合体である請求項10〜12のいずれか1項に記載のゴム組成物。
【請求項14】
請求項1に記載の方法に従って製造したゴムエキステンダー油組成物を、1種以上のゴム又はゴム化合物、或いはゴム又はゴム化合物の1種以上のモノマー前駆体と混合することを特徴とするゴム組成物の製造又は配合方法。
【請求項15】
前記ゴムエキステンダー油組成物が、ゴム組成物の製造中の現場で製造される請求項14に記載のゴム組成物の製造又は配合方法。
【請求項16】
前記ゴムエキステンダー油組成物が、粉砕中のゴム又はゴム化合物に添加される請求項14又は15に記載のゴム組成物の製造又は配合方法。
【請求項17】
前記ゴムエキステンダー油組成物が、ゴム組成物として重合する前のモノマー混合物中、現場で製造される請求項14〜16のいずれか1項に記載のゴム組成物の製造又は配合方法。
【請求項18】
前記ゴムエキステンダー油組成物が粉砕中のゴム又はゴム化合物に添加されると共に、かつゴム又はゴム化合物の粉砕中、現場で製造される請求項14〜17のいずれか1項に記載のゴム組成物の製造又は配合方法。


【公表番号】特表2008−501822(P2008−501822A)
【公表日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−515502(P2007−515502)
【出願日】平成17年6月1日(2005.6.1)
【国際出願番号】PCT/US2005/019132
【国際公開番号】WO2005/121235
【国際公開日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【出願人】(390023685)シエル・インターナシヨネイル・リサーチ・マーチヤツピイ・ベー・ウイ (411)
【氏名又は名称原語表記】SHELL INTERNATIONALE RESEARCH MAATSCHAPPIJ BESLOTEN VENNOOTSHAP
【Fターム(参考)】