説明

ゴムブレードの製造方法及び製造装置

【課題】(イ)実際に必要な塗工液に比べ、多くの塗工液が必要となってしまう、(ロ)ゴムブレード長手方向の端面から他端面の領域間において、必要な部分への任意の塗布ができない、(ハ)塗工位置精度が不足している、などの問題点を解決するゴムブレードの製造方法及び製造装置を提供する。
【解決手段】本発明に係るゴムブレードの製造方法は、トナーを除去するためのゴムブレードにおける電子写真感光体に当接するブレード切断面に塗工液を塗布する塗工方法において、前記ブレード切断面長手方向の端面から他端面における任意の領域に前記塗工液をジェットディスペンサーによる間欠吐出することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば複写機等の電子写真画像形成装置において、電子写真感光体上のトナーを除去するためのゴムブレードの製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真装置には、像担持体、転写ベルト又は中間転写体等上に残留するトナーを除去する為に、種々のゴムブレードが配設されている。そして、これらのゴムブレードは、熱可塑性または熱硬化性のポリウレタン樹脂等により製造されるが、塑性変形や耐磨耗性の観点から、主に、熱硬化性ポリウレタン樹脂より製造される。
【0003】
しかしながら、ポリウレタン樹脂よりなる従来のゴムブレードを用いた場合、ポリウレタン樹脂と感光ドラムとの摩擦係数が大きい為、ゴムブレードが捲れたり、感光ドラムの駆動トルクを大きくする必要がある場合があった。また、ゴムブレードの先端が感光ドラム等に巻き込まれ、引延ばされて切断され、ゴムブレードの先端が欠ける場合もあった。そして、これらの問題は、ゴムブレードの硬度が低い場合に特に顕著となり、その結果、耐久性が不足する場合もあった。一方、ゴムブレードの硬度が高い場合には、駆動中に感光ドラムを傷つけてしまう場合があった。
【0004】
ポリウレタン樹脂製のゴムブレードにおけるかかる問題を解決するために、例えば特許文献1では、感光ドラムとの当接部に、厚さ0.12〜1.2mmの硬化層を設けたゴムブレード及びその製造方法が提案されている。該硬化層はゴムブレードの基体であるポリウレタン樹脂にイソシアネート化合物を反応させることにより設けられる。
【0005】
ここで、ゴムブレードのブレード捲れや欠けに対して更に細部に渡り分析したところ、ゴムブレードの長手方向両端部がより捲れ易いことがわかった。感光ドラムの両端部は、記録紙の余白部分に位置するため、像は形成されず、像形成されない部分は感光ドラム表面の残留トナー量が著しく少なくなり、局所的にその部分だけ滑り性が悪化し、ゴムブレード端部からの捲れが発生し易くなるからである。
【0006】
前記特許文献1に記載の方法のように、感光ドラム当接部の全域を高硬度化しても捲れに対して効果があるが、製造過程において切断部の荒いものができる危険性がある。その対策としてイソシアネート除去工程を増加する必要がある。
【0007】
従来のゴムブレードの製造方法では、塗工液にゴムブレードを浸漬させ塗工を行っており、塗工液の揮発、劣化などの消耗サイクルは避けられなかった。また、浸漬塗工では塗工槽が必要であり、ゴムブレードに塗工する塗工液の量以上に塗工液が大量に必要であった。さらに、塗工領域としてゴムブレード、ブレード切断面及び非切断面全体の塗工しかできなかった。
【0008】
従来のゴムブレードの塗工に使用する通常のディスペンサーでは、塗工液とディスペンサー先端の接触やディスペンサー先端への液戻りが避けられず、ディスペンサー先端における塗工液の固まりや、ゴムブレード上への異物の混入などが問題であった。
【0009】
刷け塗りなどの直接塗工液をゴムブレードに塗工する方法でも、塗工液の固まりや、ゴムブレード上への異物の混入などが問題である。他にも非接触のスプレー塗布などがあるが、ゴムブレードの非塗工部のマスキングや、飛散した塗工液の対策、塗工環境などの大掛かりな装置対策が必要になってしまう。また、スプレーの場合でも、吐出部で塗工液の固まりなどが発生してしまう可能性があった。
【0010】
従来の塗工方法、たとえば、浸漬塗工によりゴムブレードを塗布すると、ドラムと接触する部分にも塗工液が塗布され、塗工液によりゴムブレードの表面硬化を目的とするとき、ドラムと接触する部分の硬度アップのために、ドラム削れが発生する可能性がある。このため、所望部位のみ効率的に塗布する事が望まれていた。
【特許文献1】特開2001−343874号公報
【特許文献2】特開2004−280086号公報
【特許文献3】特開2003−122222号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来の塗工方法では、(イ)実際に必要な塗工液に比べ、多くの塗工液が必要となってしまう、(ロ)ゴムブレード長手方向の端面から他端面の領域間において、必要な面への任意箇所の塗布ができない、(ハ)塗工位置精度が不足している、などのような問題点があった。
【0012】
そこで、本発明は、前記(イ)、(ロ)及び(ハ)の問題点を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した目的を達成するため、本発明に係るブレードの製造方法は、
トナーを除去するためのゴムブレードにおける電子写真感光体に当接するブレード切断面に塗工液を塗布する塗工工程を有するゴムブレードの製造方法において、
前記ゴムブレードの切断面を処理する前記塗工液を準備する工程と、
前記ゴムブレードの切断面を塗布可能な方向に配置する工程と、
前記ゴムブレードの切断面の長手方向の端面から他端面における任意の領域にわたり、前記塗工液をジェットディスペンサーにより塗布する塗布工程と、
を有することを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係るブレードの製造方法は、
トナーを除去するためのゴムブレードにおける電子写真感光体に当接するブレード切断面に塗工液を塗布する塗工工程を有するゴムブレードの製造方法において、
前記ゴムブレードの材料がウレタンゴムであり、前記塗工液がイソシアネート化合物であって、
前記塗布がジェットディスペンサーを用いて行われ、
前記ゴムブレードの切断面を塗布可能な方向に配置する工程と、
前記ゴムブレードの切断面の長手方向の端面から他端面における任意の領域にわたり、前記塗工液を前記ジェットディスペンサーにより間欠吐出する塗布工程と、
を有することを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係るゴムブレードの製造方法は、前記塗工手段のジェットディスペンサー又は、ゴムブレードを前記ジェットディスペンサーの間欠吐出動作と同期し、吐出間距離を移動しながら、前記ゴムブレード長手方向の端面から他端面の任意の領域を塗布することが好ましい。
【0016】
また、本発明に係るゴムブレードの製造装置は、
トナーを除去するためのゴムブレードにおける電子写真感光体に当接するブレード切断面に塗工液を塗布するゴムブレードの製造装置において、
前記ゴムブレードの位置を検出する検出手段と、
前記ゴムブレードを移動させるゴムブレード移動手段と、
該ゴムブレード移動手段により配置されたゴムブレードのブレード切断面に前記塗工液をジェットディスペンサーの間欠吐出により塗布する塗工手段と、
を有することを特徴とする。
【0017】
前記ゴムブレード移動手段は、前記ゴムブレード切断面長て方向の端面から他端面の任意の領域に前記塗工液が塗布されるように、前記塗工手段のジェットディスペンサーの間欠吐出動作と同期し、吐出間距離を移動しながら、前記ゴムブレードを移動させる手段であることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明のゴムブレードの製造方法によれば、ブレード切断面の任意箇所の塗工が可能となる。また、塗工液の揮発、劣化を削減し、ゴムブレードに塗布する塗工液の必要量を減少させることができ、塗工液の使用効率の向上が図れる。また、本発明によれば、ブレード切断面の任意の領域に塗工液を塗布することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明に係るゴムブレードの製造方法は、
トナーを除去するためのゴムブレードにおける電子写真感光体に当接するブレード切断面に塗工液を塗布する塗工工程を有するゴムブレードの製造方法において、
前記ゴムブレードの切断面を処理する前記塗工液を準備する工程と、
前記ゴムブレードの切断面を塗布可能な方向に配置する工程と、
前記ゴムブレードの切断面の長手方向の端面から他端面における任意の領域にわたり、前記塗工液をジェットディスペンサーにより塗布する塗布工程と、
を有することを特徴とする。
【0020】
また、本発明に係るブレードの製造方法は、
トナーを除去するためのゴムブレードにおける電子写真感光体に当接するブレード切断面に塗工液を塗布する塗工工程を有するゴムブレードの製造方法において、
前記ゴムブレードの材料がウレタンゴムであり、前記塗工液がイソシアネート化合物であって、
前記塗布がジェットディスペンサーを用いて行われ、
前記ゴムブレードの切断面を塗布可能な方向に配置する工程と、
前記ゴムブレードの切断面の長手方向の端面から他端面における任意の領域にわたり、前記塗工液を前記ジェットディスペンサーにより塗布する塗布工程と、
を有することを特徴とする。
【0021】
また、本発明に係る塗工装置は、
トナーを除去するためのゴムブレードにおける電子写真感光体に当接するブレード切断面に塗工液を塗布するゴムブレードの製造装置において、
前記ゴムブレードの位置を検出する検出手段と、
前記ゴムブレードを移動させるゴムブレード移動手段と、
該ゴムブレード移動手段により配置されたゴムブレードのブレード切断面に前記塗工液をジェットディスペンサーの間欠吐出により塗布する塗工手段と、
を有することを特徴とする。
【0022】
以下、本発明の具体的な実施形態について、図面を参照して説明する。
【0023】
本実施形態のゴムブレードの製造装置は、図2に示すように、ブレードゴム部(2)を一端に指示する断面略L字状の金属板(3)により構成されるゴムブレード(1)の電子写真感光体に当接するブレード切断面(4)に対して、塗工処理を施すために用いられる。
【0024】
図3に示すように、本発明に係るゴムブレードの製造装置はブレードの切断面(4)に塗工液を塗布する間欠吐出可能なジェットディスペンサー(5)を有している。ジェットディスペンサー(5)は、電磁バルブを使用して液滴を対象物にワンショットで飛ばすことが可能なタイプが望ましい。なお、本発明に係る塗工装置は、ブレード切断面以外の面であっても塗工可能である。
【0025】
前記ゴムブレード移動手段としては、前記ゴムブレードの位置を検出し、所定の位置に移動させ配置するものであれば特に制限されない。例えば、位置を検出する手段として、モータのエンコーダ(10)、センサー、リニアスケールなどによる位置検出が可能だが、高精度に且つ、高速に位置検出可能な手段としては、リニアスケール或いは、モータのエンコーダ(10)による位置検出が望ましい。また、ブレード切断面(4)の端面(6)から他端面(7)までを塗工可能となるように、ゴムブレード部を移動機構(8)により、移動方向(9)に移動可能にする(図3)。移動手段(8)は、モータ(10)とガイド(11)などを組み合わせた機械、バネ駆動、シリンダ駆動によるものなどがあるが、高精度な塗工をするには、一定速度の移動が可能なモータとガイドなどの組み合わせた手段によるものが好ましい。また、他の手段として、ジェットディスペンサー(5)を移動可能な構成としてもよい。前記ゴムブレード移動手段は、前記塗工手段のジェットディスペンサーの間欠吐出する動作と同期し、吐出間距離を移動しながら、前記ゴムブレードを移動させる手段であることが好ましい。
【0026】
吐出タイミングは、例えば、タイマー方式、位置検出方式の2種類が考えられる。タイマー方式では、例えば、位置検出手段からの電気信号により、塗工開始位置を検出し、ジェットディスペンサー(5)の間欠吐出時間毎にブレード切断面(4)に塗工する。ただし、タイマーの精度、吐出回数により、位置の誤差が発生しやすいという問題点がある。位置検出方式では、例えば、位置検出手段からの電気信号により、開始位置を検出し、その後、決められた吐出ピッチ毎に位置検出手段からの電気信号により、ジェットディスペンサー(5)にて塗工する。塗工位置を高精度に制御するには、位置検出を行いながらジェットディスペンサー(5)により吐出する方式が望ましい。
【0027】
本発明の前記塗工装置による塗工工程において、ブレード切断面を上面に向けて水平にした状態にし、且つブレード切断面とジェットディスペンサー(5)とを、平行にして塗工することが望ましい。なお、本発明に係る塗工装置は、ブレード切断面が垂直方向からθ方向(12)において、±10°傾けた姿勢までの範囲内において塗工することが可能である(図2参照)。塗工液の粘性にもよるが、10°以上傾けるとブレード切断面上に塗布された塗工液が切断面以外の部分に垂れてしまうなどの問題の可能性がある。粘度により切断面に対しての許容角度は、変化するが、切断面以外に垂れない角度に設定することが好ましい。
【0028】
ジェットディスペンサー(5)とブレード切断面のブレード短手方向の距離(13)は、0.2mm以上5mm以下であることが好ましい。0.2mm未満だとジェットディスペンサーとブレード切断面が接触して製品を傷つける可能性があり、5mm超では、ジェットディスペンサーから間欠吐出した塗工液が飛散し、ブレード切断面以外に飛び散る可能性がある。
【0029】
ジェットディスペンサーとブレード切断面の厚み方向の位置においては、ブレード厚みの中心(14)に対して、±1.5mmの範囲(厚み3.0mm以下のゴムブレード)にジェットディスペンサー(5)の中心(15)が入ることが好ましい。±1.5mmの範囲を外れると、ブレード切断面以外に塗工液が飛散する可能性がある。
【0030】
塗工速度は、吐出間距離、間欠吐出時間の設定により、塗工速度=吐出間距離/間欠吐出時間となるように、塗工速度を決定することが好ましい。間欠吐出時間を長くすることにより、塗工速度は遅くなるが、塗工動作としては問題ない。ここで、吐出間距離とは、吐出から次の吐出までにジェットディスペンサーが移動する距離を意味する。
【0031】
吐出間距離は、ジェットディスペンサー(5)より、吐出した液滴の大きさに対して1/10〜2倍程度の範囲であることが好ましい。1/10未満になると吐出液が前回吐出された液滴の上に落とされ、ブレード切断面以外に飛散してしまう場合がある。2倍超になると、液滴同士が離れてしまい点になってしまうため、性能を満足しない場合がある。例えば、液滴が0.05mgを超えない量に調整することができる。また、液滴の最小量は塗布工程のタクトタイムを考慮して調整することが好ましい。例えば、液滴の最少量は0.4mgとすることが好ましい。
【0032】
なお、ゴムブレードの材料としては、特に制限されるものではないが、例えばポリウレタンエラストマーを挙げることができる。該ポリウレタンエラストマーは、主にポリイソシアネート化合物、高分子量ポリオール又は二官能若しくは三官能などの低分子量ポリオールである鎖延長剤からなっている。
【0033】
前記ポリイソシアネート化合物としては、例えば、4,4’―ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,4−トリレンジイソシアネート(2,4−TDI)、2,6−トリレンジイソシアネート(2,6−TDI)、キシレンジイソシアネート(XDI)、1,5−ナフチレンジイソシアネート(1,5−NDI)、p−フェニレンジイソシアネート(PPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4‘−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)、テトラメチルキシレンジイソシアネート(TMXDI)、カルボジイミド変性MDI、ポリメチレンフェニルポリイソシアネート(PAPI)等があげられる。これらの中でも、MDIを用いることが好ましい。前記高分子量ポリオールとしては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、カプロラクトンエステルポリオール、ポリカーボネートエステルポリオール、シリコーンポリオール等を挙げることができ、数平均分子量が1500〜4000が好ましい。これは、1500以上であれば、得られるウレタンゴ
ムの物性が良好であり、また4000以下であれば、プレポリマーの粘度が適当でハンドリングが容易であり好ましい。前記鎖延長剤としては、例えば、グリコールが使用され、このようなグリコールとしては、エチレングリコール(EG)、ジエチレングリコール(DEG)、プロピレングリコール(PG)、ジプロピレングリコール(DPG)、1,4−ブタンジオール(1,4―BD)、1,6−ヘキサンジオール(1,6−HD)、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、キシリレングリコール(テレフタリルアルコール)、トリエチレングリコール等が挙げられる。また、上記グリコールの他に、多価アルコールが使用され、このような多価アルコールとしては、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等が挙げられる。これらは単独でもしくは、2種以上併せて用いられる触媒としては、イソシアヌレート結合を形成する三量化触媒の他に、一般に用いられるポリウレタン硬化用の触媒を使用することができ、例えば三級アミン触媒が挙げられる。ジメチルエタノールアミンなどの
アミノアルコール、トリエチルアミンなどのトリアルキルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−ブタンジアミンなどのテトラアルキルジアミン、トリエチレンジアミン、ピペラジン系、トリアジン系などが例示できる。また、通常、ウレタンに用いられる金属触媒でもよく、ジブチル錫ジラウレートなどを例示することができる。
【0034】
ゴムブレードには、必要に応じて、触媒、顔料、可塑剤、防水剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤又は光安定剤等の添加剤を配合することができる。
【0035】
イソシアネート化合物としては、分子中に1個のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物、分子中に2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物を用いることができる。分子中に1個のイソシアネート基を有するイシシアネート化合物としては、オクタデシルイソシアネート(ODI)等の脂肪族モノイソシアネート、芳香族モノイソシアネート等を挙げることができる。
【0036】
また、前記ゴムブレードに塗工させる分子中に2個のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物として、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、m−フェニレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート又はヘキサメチレンジイソシアネート等を好ましく用いることができる。
【0037】
また、前記ゴムブレードに塗工するイソシアネート化合物として、4,4′,4″−トリフェニルメタントリイソシアネート、2,4,4’−ビフェニルトリイソシアネート、2,4,4’−ジフェニルメタントリイソシアネート等の3個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物や、2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物の変性誘導体、多量体等も使用することができる。
【0038】
以上に例示したイソシアネート化合物の中で、立体障害の少ない脂肪族イソシアネート化合物や、分子量の小さいイソシアネート化合物は浸透性に優れるため、塗工制御がしやすい。一方、分子量の大きいイソシアネート化合物は浸透性に劣るものの長鎖であるため、揮発性が少なくその結果、比較的毒性が低く製造時の作業安全性に優れる。
【0039】
本発明においては、イソシアネート化合物の反応を促進するために、イソシアネート化合物に加え、触媒もポリウレタン樹脂に塗工することができる。
【0040】
イソシアネート化合物と共に用いる触媒の例としては、第4級アンモニウム塩、カルボン酸塩等を挙げることができる。第4級アンモニウム塩としては、DABCO社製のTMR触媒等を例示することができる。カルボン酸塩としては、酢酸カリウム、オクチル酸カリウム等を例示することができる。これらの触媒は非常に粘調であったり、含浸時に固体であったりするので、予め溶剤に溶解してからイソシアネート化合物に添加し、ポリウレタン樹脂に塗工することが好ましい。
【実施例】
【0041】
本実施例では、ブレードゴム部(2)を一端に指示する断面略L字状の金属板(3)により構成されるゴムブレード(1)を用いた。
【0042】
(実施例1)
実施例で使用した装置における塗工方法について示す。ブレードの切断面(4)を水平にしつつ上向き(重力方向に直交するよう)にし、モータ(10)とガイド(11)より構成される移動機構(8)にセットする。その後、移動機構(8)により、ジェットディスペンサー(5)がブレード切断面(4)の製品端面(6)から他端面(7)まで移動する。その移動の際に、塗工位置検出手段(10)(モータのエンコーダ)にて位置検出行い、開始位置を検出し、その後、吐出ピッチを位置検出しながら、ジェットディスペンサー(5)により、製品端面(6)から他端面(7)の範囲において両端面20mmの範囲にイソシアネート化合物(塗工液)を吐出し、30分間室温放置することにより、切断面表面近傍を反応硬化させた。なお、塗工液を吐出間距離を移動しながら間欠吐出した。その後、酢酸ブチルによりイソシアネート化合物を除去して、ブレード切断面(4)の製品端面(6)から他端面(7)の範囲において両端面20mmを塗工した塗工ブレードを得た。
【0043】
なお、塗工液を吐出しながら吐出間距離を移動して間欠吐出する場合でも、吐出しない時に吐出間距離を移動して間欠吐出する場合でも、通常、ジェットディスペンサーの吐出速度のほうが移動速度よりも速く、また、吐出距離が極めて短い。したがって、移動により吐出塗工液は直下に滴下することとなり、斜めに滴下する状態にはならない。高速度カメラによる実証においても、どちらの場合でもブレード切断面(4)に付着する状態に変化はない。従って、塗工液を吐出しながら吐出間距離を移動して間欠吐出する場合でも、吐出しない時に吐出間距離を移動しながら間欠吐出する場合でも、同様の結果の塗工液が付着したブレードが得られるので、本願の目的は達成される。
【0044】
実施例で使用した装置の各条件について以下に示す。ジェットディスペンサー(5)と切断面のブレード短手方向の距離(13)は1mm、ディスペンサーと切断面の厚み方向の位置は、ブレード厚みの中心(14)に対して±0.5mmの範囲(厚み2.0mmゴムブレード)となるようにジェットディスペンサーの中心(15)を調整した。塗工速度は、吐出時間33mmsec(3mmsec吐出、30mmsec停止)、吐出ピッチ1.2mmに設定し、吐出ピッチと吐出時間により、速度を36.3mm/secにした。
【0045】
比較例としては、実施例に用いたゴムブレード(1)と同じものを用い、浸漬塗工装置により、ゴムブレード(1)切断面側から2mm程度塗工槽(17)に浸漬させ、その後液切りを行い、10分間室温放置し、ブレード切断面(4)全体の塗工を行った。これにより、ゴムブレードの切断面を含む3面が塗工された塗工ブレードを得た(長手両端部を含めると5面となる)。
【0046】
比較例と実施例を比較すると、比較例では、ブレード切断面を含む5面が塗工領域となってしまう。実施例では、切断面1面又は、品質に必要な面に任意に塗工することができる。また、ある1面内であっても、1面の任意の箇所にも塗布可能である。比較例では、塗工液(16)の揮発、水分などによる劣化などがあるが、実施例では、ジェットディスペンサー内において塗工液を密閉可能であり、塗工液の劣化、揮発を防止できる。更に、比較例では、塗工槽(17)が必要であり、ゴムブレードに塗工する塗工液以外に、多くの塗工液(16)を使用しなくてはならないが、実施例では、塗工時に必要な塗工液をゴムブレード上に塗工することが可能であるために、使用塗工液の量を大幅に減少できる。
【0047】
また、浸漬塗工での5面塗布により成形されたゴムブレードでは、塗布された硬い面がドラムと接触するために、硬い面にドラム面が負け、ドラムの削れが発生してしまうが、本発明により成形されたゴムブレードでは、ドラムとの接触面は塗布しないようにできるので、ドラムの削れは発生しない。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】実施形態のゴムブレードの製造装置で用いられるゴムブレード成型体を示す正面図である。
【図2】実施形態のゴムブレードの製造装置で用いられるゴムブレード成型体を示す断面図である。
【図3】実施形態のゴムブレードの製造装置で用いられるゴムブレード成型体とディスペンサーの位置関係を示す図である。
【図4】実施形態のゴムブレードの製造方法で用いられるゴムブレードの製造装置の例を示す概略図である。
【図5】比較例1におけるゴムブレードの塗工方法を示す図である。
【符号の説明】
【0049】
1、ゴムブレード
2、ブレードゴム部
3、金属板
4、ブレード切断面
5、ジェットディスペンサー
6、製品端面
7、製品端面
8、移動機構
9、移動方向
10、モータ
11、ガイド
12、θ方向
13、ブレード短手方向距離
14、ブレード厚み中心
15、ディスペンサー中心
16、塗工液
17、塗工槽
18、塗工部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナーを除去するためのゴムブレードにおける電子写真感光体に当接するブレード切断面に塗工液を塗布する塗工工程を有するゴムブレードの製造方法において、
前記ゴムブレードの切断面を処理する前記塗工液を準備する工程と、
前記ゴムブレードの切断面を塗布可能な方向に配置する工程と、
前記ゴムブレードの切断面の長手方向の端面から他端面における任意の領域にわたり、前記塗工液をジェットディスペンサーにより間欠吐出する塗布工程と、
を有することを特徴とするゴムブレードの製造方法。
【請求項2】
トナーを除去するためのゴムブレードにおける電子写真感光体に当接するブレード切断面に塗工液を塗布する塗工工程を有するゴムブレードの製造方法において、
前記ゴムブレードの材料がウレタンゴムであり、前記塗工液がイソシアネート化合物であって、
前記塗布がジェットディスペンサーを用いて行われ、
前記ゴムブレードの切断面を塗布可能な方向に配置する工程と、
前記ゴムブレードの切断面の長手方向の端面から他端面における任意の領域にわたり、前記塗工液を前記ジェットディスペンサーにより間欠吐出する塗布工程と、
を有することを特徴とするゴムブレードの製造方法。
【請求項3】
前記ジェットディスペンサー又はゴムブレードを前記ジェットディスペンサーの間欠吐出する動作と同期させ、吐出間距離を移動しながら前記ゴムブレード長手方向の端面から他端面の任意の領域を塗布することを特徴とする請求項1又は2に記載のゴムブレードの製造方法。
【請求項4】
トナーを除去するためのゴムブレードにおける電子写真感光体に当接するブレード切断面に塗工液を塗布するゴムブレードの製造装置において、
前記ゴムブレードの位置を検出する検出手段と、
前記ゴムブレードを移動させるゴムブレード移動手段と、
該ゴムブレード移動手段により配置されたゴムブレードのブレード切断面に前記塗工液をジェットディスペンサーの間欠吐出により塗布する塗工手段と、
を有することを特徴とするゴムブレードの製造装置。
【請求項5】
前記ゴムブレード移動手段が、前記ブレード切断面における長手方向の端面から他端面の任意の領域に前記塗工液が塗布されるように、前記塗工手段のジェットディスペンサーの間欠吐出する動作と同期し、吐出間距離を移動しながら、前記ゴムブレードを移動させる手段であることを特徴とする請求項4に記載のゴムブレードの製造装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2009−86647(P2009−86647A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−201865(P2008−201865)
【出願日】平成20年8月5日(2008.8.5)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】