説明

ゴムベルト成形機へのコード繰出装置

【目的】 構造が簡単で設置スペースが小さくて済み、メンテナンスが容易で、コードのテンションが所定値に達するまでの時間が非常に短い、ゴムベルト成形機へのコード繰出装置を提供する。
【構成】 ボビン2を着脱自在に支持し、可変速モーター4により回転させ、金型Kの回転に応じてボビン2からコードCを繰り出す装置1と、ウエイト11により下向きに負荷され、上下動自在に配装されたダンサープーリー10と、この上方に回動自在に配設された定置プーリー8との間にコードCを巻き掛けてコードCにテンションを付与する装置6と、コードCの送り出し速度を測定するタコ・ジェネレータTGと、モーター4の回転速度を制御する制御回路とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、ゴムベルトの製造工程においてベルトの芯体となるコードを金型に巻き付ける際に、ボビンに巻き付けたコードをゴムベルト成形機へ送り出すためのコード繰出装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】ゴムベルト成形機では、一般的に、金型の周囲に帆布を巻き付けた状態で、その帆布上にコードを巻き付け、さらにその上にゴムシートを巻き付けてゴムベルトを成形している。
【0003】ところで、金型(帆布)の周囲にコードを巻き付ける場合、コードに一定のテンションを作用させてコードを巻き付ける必要がある。このコードのテンションを一定にし且つ安定化させるには、コードの送出装置から送り出されるコードの送り出し量と、金型を回転させて引き取るコードの引取量とのバランスを図らねばならないが、そのために、従来は、次のようなコード繰出装置が採用されている。
【0004】すなわち、図3に示すように、コードボビン51をブレーキ機構52付きの自由回転軸53に取り付け、ボビン51から繰り出されるコードCを、揺動プーリー54、ボビン51のブレーキ機構52に連動されたプーリー55およびその上方の定置プーリー56、可変速モーター57により駆動される駆動プーリー58とその下方のプーリー59、定置プーリー60とその上方のダンサープーリー61、一対のプーリー62、63、ガイドプーリー64、ロードセル66にコンバータ69を介して連係されたテンション計測プーリー65を順に経由させた後、ゴムベルト成形機(図示せず)にコードCを導いていた。また上記プーリー62・63のうちプーリー62には、パウダーブレーキ67を接続し、プーリー64と62とに周速差を生じさせてコードCにテンションを作用させ、ロードセル66に接続されたテンションコントローラー68によりパウダーブレーキ67を制御することにより、コードCのテンションを調整するようにしている。
【0005】このような構造以外のコード繰出装置も採用されているが、従来は、いずれの装置も、コードボビン51をモーターで直接駆動する方式ではなく、コードの送り出し経路の途中に、モーター57で回転させる駆動プーリー58を設けてボビン51からコードCを間接的に引き出す方式が用いられ、このため、ボビン51には、過回転防止用のブレーキ機構52が装備されていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記した従来のコード繰出装置には、次のような点で改良の余地がある。
【0007】■ 金型に対しコードの巻き付けを開始してから、コードのテンションが所定の値に達するまでに時間がかかり(通常、7秒前後、図5参照)、その間に巻き付けられたコード部分を破棄しなければならず、材料が無駄になり、不経済である。
【0008】■ プーリーの数が多く、またボビン用のブレーキ機構やパウダーブレーキなどを備えているので、構造が複雑で、装置が大型になり、広い設置場所を必要とする。
【0009】■ コードをプーリー等に沿って導く長さが長いため、その作業に手間がかかるうえに、その間のコードが無駄になり、またパウダーブレーキのメンテナンスが困難なほか、テンションコントローラーなどを備えているので、製造コストが高い。
【0010】この発明は上述の点に鑑みなされたもので、構造が簡単で、設置スペースが小さくて済み、メンテナンスが容易で、コードのテンションが所定値に達するまでの時間が非常に短い、ゴムベルト成形機へのコード繰出装置を提供することを目的としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記した目的を達成するためにこの発明のコード繰出装置は、a)ボビンに巻き取られたコードを繰り出して所定の張力を付与しながらゴムベルト成形機へ送り出し、金型を回転させて前記コードを巻き付けるゴムベルト成形機へのコード繰出装置において、b)前記ボビンを着脱自在に支持し、可変速モーターにより回転させ、前記金型の回転により引き取られるコードに応じてボビンからコードを繰り出す装置と、c)所定重さのウエイトにより下向きに負荷され、移動自在に配装されたダンサープーリーと、このダンサープーリーから所定距離離れた位置に回動自在に配設された定置プーリーとの間に前記コードを巻き掛けてコードにテンションを付与する機構と、d)前記コードの送り出し速度を検出する速度センサーと、e)前記ダンサープーリーの移動量を検出する移動量検出センサーと、f)両センサーにより検出されるコードの送り出し速度とダンサープーリーの移動量とに基づいて、前記可変速モーターの回転速度を制御する制御回路と、を具備している。
【0012】
【作用】上記の構成を有するこの発明のコード繰出装置によれば、ゴムベルト成形機の金型の回転に応じてコードが巻き付けられる際に、そのコードの引取量に相応する繰出量が得られるように、コードの引取に追随してコードボビンをモーターがより回転させる。このボビンの回転に伴って繰り出され、金型に巻き付けられるコードには、ダンサープーリーを介してウエイトの負荷(重力)が作用し、所定のテンションが付与される。
【0013】また、ボビンの回転に伴って繰り出されるコードの繰出量と、金型側に引き取られるコードの引取量とのバランスがくずれると、ダンサープーリーがウエイトの負荷方向又は負荷に抗する方向に移動することによって、両者の差が吸収される。
【0014】一方、ボビンを回転させるモーターの回転速度は、コードの繰り出し速度とダンサープーリーの移動量に基づいて制御回路によって制御される。すなわち、コードの送り出し(引取)速度の増加およびダンサープーリーのウエイト負荷に抗する方向への移動の両方又は一方が生じると、制御回路はモーターの回転速度を速めるように制御し、逆にコードの送り出し(引取)速度の減少およびダンサープーリーのウエイト負荷方向への移動の両方又は一方が生じると、モーターの回転速度を遅くさせるように制御し、コードの繰出量(速度)とコードの引取量(速度)が一致する。
【0015】
【実施例】以下、この発明のコード繰出装置の実施例を図面に基づいて説明する。
【0016】図1はゴムベルト成形機とコード繰出装置の実施例を概要的に示す正面図、図2はモーターの制御回路の一例を示す説明図である。
【0017】図1に示すように、2基のコードC1・C2の繰出装置1・1はそれぞれ、コードボビン2を着脱自在に取り付ける回転駆動軸3と、この回転駆動軸3の駆動用の可変速モーター4とからなり、各可変速モーター4の駆動軸(図示せず)と回転駆動軸3とが、それぞれプーリー3a、4aを介して無端伝動ベルト5で接続されている。またモーター4には、その回転速度を検出するパルスジェネレータPGが接続されている。なお、各繰出装置1には、撚の方向が相互に逆のコードC1・C2を巻き付けたボビン2が取り付けられる。なお、符号1aはガイドプーリーである。
【0018】各コードC1・C2の繰出装置1に隣接して、コードC1・C2に所定のテンションを付与するテンション付与装置6がそれぞれ設置されている。この装置6の上部に回動自在に配設された定置プーリー8と、左右一対のガイド部材9に沿って上下動自在に配装されたダンサープーリー10と、このダンサープーリー10の下方に垂下されたウエイト11とからなり、定置プーリー8とダンサープーリー10とには、コードが数回巻き掛けられる。また定置プーリー8の左側に、ガイドプーリー12が回動自在に配設され、装置6の上端部には、コードCの繰り出し速度を検出するタコ・ジェネレータTGを組み込んだガイドプーリー13が回動自在に配設されている。さらに、一方のガイド部材9には、ダンサープーリー10の移動方向とその移動量(つまり昇降量)を検出して電気的信号に変換する差動トランスSが組み込まれている。
【0019】各ガイドプーリー13から送り出されるコードCは、それぞれロードセル15に連係されたテンション計測プーリー14を経由して、ゴムベルト成形機20のコードピッチ送り装置21へ導かれる。コードピッチ送り装置21は、金型Kの上方で金型Kと平行に配設された一対のガイド杆22に沿って、その中央のネジ杆23の回転によりピッチ送り可能に装備され、定速回転する金型Kの一端から他端にかけて移動する。これにより、2種類(撚の方向が相互に逆)のコードC1・C2が、金型Kの周面に同時に巻き付けられていき、2種類のコードC1・C2(以下、単にコードCともいう)は金型K上に交互に巻装される。
【0020】金型Kの回転に伴ってコードCが引き取られるが、このコードCの引取速度に同期(追随)するように、ボビン2を回転させる可変速モーター4の回転速度が制御回路30(図2)によって制御される。この制御回路30は、図2に示すように、タコ・ジェネレータTGから送られるコードCの繰出速度信号と差動トランスSから送られるダンサープーリー10の昇降量信号とを加算して、モーター4の最適回転速度を演算する演算回路31と、演算された信号を整流化する整流回路32と、パルスジェネレータPGからフィードバックされるモーター4の現状の回転速度信号を、前記の演算された最適回転速度と比較する比較器33と、比較器33により比較された信号値に基づいて最適回転速度になるようにモーター4の回転速度を増減する信号をモーター4に出力する主回路34とからなる。なお、ダンサープーリー10の昇降量信号は、その基準位置からダンサープーリー10が上方へ移動したときが(+)、基準位置から下方へ移動したときが(−)として扱われる。
【0021】次に、上記した構成からなる実施例のコード繰出装置について、その使用態様を説明する。
【0022】図1において、撚の方向が相互に逆のコードC1とコードC2が、それぞれ対応するボビン2、2に巻き取られた状態で、繰出装置1、1の回転駆動軸3に、取り付けられる。各コードC1・C2は、ガイドプーリー1a、12を経て定置プーリー8に導いたのち、定置プーリー8とダンサープーリー10との間にコードCを数回巻き付け、ガイドプーリー13(タコ・ジェネレータTG)を経由してテンション計測プーリー14へ導き、ゴムベルト成形機20(コードピッチ送り装置21)へ導く。そして、各コードC1・C2の一端部を、金型Kの周面の一端に取り付ける。この状態で、金型Kを所定の速度で回転させ、ネジ杆23の回転によりコードピッチ送り装置21をピッチ送りしながら、コードCを金型Kの周面に巻き付けていく。
【0023】一方、ボビン2を回転させるモーター4の回転速度は、前記制御回路30によってタコ・ジェネレータTGで測定されるコードCの繰出速度に同期してコードCが繰り出されるように制御される。このようにして、ボビン2からコードCが繰り出されるに従って、コードC(ボビン2)の外径が次第に小さくなり、コードCの繰出速度が遅れぎみになるため、金型KによるコードCの引取量と、ボビン2からのコードCの繰出量とに差が生じるが、この差はダンサープーリー10がガイド部材9に沿って上昇することにより、吸収される。そして、ダンサープーリー10が上昇すると、その上昇量が差動トランスSで電気的に変換され、モーター1の回転速度を増加する信号として、モーター1の回転速度信号に加算されるため、モーター1の回転速度が増加し、金型KによるコードCの引取量とボビン2からのコードCの繰出量とに差がなくなり、ダンサープーリー10は元の基準位置に戻る。
【0024】また、金型Kに巻き付ける際に、コードCに付与するテンションは、テンション計測プーリー14に接続されたロードセル15によって検出され、ダンサープーリー10に吊り下げられるウエイト11の重量を増減することによって調整される。
【0025】さて、図4は上記実施例にかかるコード繰出装置を用いて金型KにコードCの巻き付けを開始した後の、コードのテンションの変化と時間的経過の関係を示す線図である。この場合、コードCの設定張力(テンション)を例えばtkgとしたときに、同図から認められるように、約1秒でその設定張力tkgに達した。これに対し、図5は先に説明した従来のコード繰出装置(図3)を用いた場合に、コードのテンションの変化と時間的経過の関係を示す線図である。この場合も、コードCの設定張力(テンション)をtkgにして条件を共通にしたが、設定張力tkgに達するまでに、約7秒かかった。
【0026】図4と図5の線図の比較から明らかなように、本発明のコード繰出装置によれば、従来のコード繰出装置よりも、はるかに短い時間で、コードCのテンションが設定値に達するから、コードCの巻き始めのテンション不足による不良箇所が最小限に抑えられる。この点だけを取り出しても、ボビン2をモーター1で直接回転させる本発明のコード繰出装置が優れていることが確認される。
【0027】
【発明の効果】以上説明したことから明らかなように、この発明のコード繰出装置は、次のような効果がある。
【0028】(1) 金型に対しコードの巻き付けを開始してから、コードのテンションが所定の値に達し安定するまでの時間が大幅に短縮され、コードの巻き付け開始後の不良箇所が最小限に抑えられ、材料が無駄にならず、経済的である。
【0029】(2) 従来の装置に比べてプーリーの数が少なく、ボビン用のブレーキ機構やパウダーブレーキなどが不要で、構造が簡単なうえに、装置の小型化が容易で、設置スペースも小さくて済む。またコードのリード作業に手間がかからず、メンテナンスが容易であり、製造コストが安い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかるコード繰出装置の実施例をゴムベルト成形機とともに概要的に示す正面図である。
【図2】図1のコード繰出装置に備えられるモーターの制御回路の一例を示す説明図である。
【図3】従来のコード繰出装置を概要的に示す正面図である。
【図4】本発明にかかるコード繰出装置によるコードのテンションの変化と時間的経過の関係を示す線図である。
【図5】従来のコード繰出装置(図3)によるコードのテンションの変化と時間的経過の関係を示す線図である。
【符号の説明】
1 繰出装置
2 ボビン
4 可変速モーター
6 テンション付与装置
8 定置プーリー
10 ダンサープーリー
11 ウエイト
14 テンション計測プーリー
15 ロードセル
20 ゴムベルト成形機
30 制御回路
TG タコ・ジェネレータ
S 差動トランス
C・C1・C2 コード

【特許請求の範囲】
【請求項1】 ボビンに巻き取られたコードを繰り出して所定の張力を付与しながらゴムベルト成形機へ送り出し、金型を回転させて前記コードを巻き付けるゴムベルト成形機へのコード繰出装置において、前記ボビンを着脱自在に支持し、可変速モーターにより回転させ、前記金型の回転により引き取られるコードに応じてボビンからコードを繰り出す装置と、所定重さのウエイトにより下向きに負荷され、移動自在に配装されたダンサープーリーと、このダンサープーリーから所定距離離れた位置に回動自在に配設された定置プーリーとの間に前記コードを巻き掛けてコードにテンションを付与する機構と、前記コードの送り出し速度を検出する速度センサーと、前記ダンサープーリーの移動量を検出する移動量検出センサーと、両センサーにより検出されるコードの送り出し速度とダンサープーリーの移動量とに基づいて、前記可変速モーターの回転速度を制御する制御回路と、を具備したことを特徴とするゴムベルト成形機へのコード繰出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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