説明

ゴムマーク転写用シート

【課題】ゴムへの接着性が良好で、印字保護性に優れたゴムマーク転写用シートを提供する。
【解決手段】基材上に剥離可能に設けられた樹脂層を有するゴムマーク転写用シートであって、樹脂層は、ガラス転移温度が、105℃以上160℃未満であるセルロース系樹脂含むゴムマーク転写用シートとする。または、一分子あたりのエポキシ基数が、1.5以上のエポキシ樹脂を含むゴムマーク転写用シートとする。好ましくは、前記樹脂の数平均分子量が、30,000以上とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム製品へのマークなどの印字に用いられる転写用シートに関し、特に、ゴムへの接着性や印字保護性、金型付着適性に優れたゴムマーク転写用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
伝動ベルトなどのゴム製ベルトの背面には、識別マークなどが施されている。このような識別マークは、識別マークが記された転写材を用いて、ゴムつき背面帆布に識別マークを転写したのち、識別マークが転写された背面帆布を背ゴム層に加硫接着させることにより設けたり、背ゴム層を構成する未加硫ゴムシートに識別マークをインクジェット印刷などにより印字することにより設けることが行なわれている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−2812828号公報(請求項1、従来の技術)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前者の背面帆布を使用する方法では、背面帆布を加硫成型前に、あらかじめ転写材の識別マークを背面帆布に熱転写することから、背面帆布のゴムが加硫してしまい、背面帆布と背ゴムとの接着性が低下するといった問題がある。
【0005】
一方、後者のインクジェット印刷などにより直接、未加硫ゴムへ印字することは、印字された部分が剥き出しになり、印字部分が擦られて消えやすくなることや、印字不良が発生した場合に、すべて使用できなくなり、製造コストが上昇するといった問題がある。
【0006】
そこで、ゴムへの接着性が良好で、印字保護性に優れたゴムマーク転写用シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、転写用シートへの印字性、未加硫ゴムとの接着性、ゴム成型時の金型との付着防止性などを検証し、保護層として用いる樹脂層を特定のものとすることにより、問題を解決することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、上記課題を解決する本発明のゴムマーク転写用シートは、基材上に剥離可能に設けられた樹脂層を有するゴムマーク転写用シートであって、樹脂層は、ガラス転移温度が、105℃以上160℃未満であるセルロース系樹脂を含むことを特徴とするものである。
【0009】
また、前記セルロース系樹脂は、数平均分子量が10,000以上であることを特徴とするものである。
【0010】
また、前記セルロース系樹脂は、数平均分子量が30,000以上であることを特徴とするものである。
【0011】
本発明のゴムマーク転写用シートは、基材上に剥離可能に設けられた樹脂層を有するゴムマーク転写用シートであって、樹脂層は、一分子あたりのエポキシ基数が1.5以上であるエポキシ系樹脂を含むことを特徴とするものである。
【0012】
また、前記エポキシ系樹脂の一分子あたりのエポキシ基数が、5.0以上であることを特徴とするものである。
【0013】
また、前記エポキシ系樹脂の数平均分子量が、30,000以上であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ゴムへの接着性や印字保護性、金型付着適性に優れたゴムマーク転写用シートとすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のゴムマーク転写用シートは、基材上に剥離可能に設けられた樹脂層を有するゴムマーク転写用シートであって、樹脂層は、ガラス転移温度が105℃以上160℃未満であるセルロース系樹脂を含むことを特徴とするものである。または、樹脂層は、一分子あたりのエポキシ基数が1.5以上であるエポキシ系樹脂を含むことを特徴とするものである。以下、本発明のゴムマーク転写用シートの実施の形態について説明する。
【0016】
本発明のゴムマーク転写用シートに用いられる基材としては、ポリエステル、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)、ポリスチレン、ポリカーボネート、アクリル、ポリオレフィン、セルロース樹脂、ポリスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミドなどからなる各種のプラスチックフィルムを使用することができる。プラスチックフィルムの厚みは、12〜300μmであることが好ましく、25〜200μmであることがより好ましい。
【0017】
このような基材には、後述する樹脂層との接着性調整するため、接着調整層が設けられていても良い。
【0018】
基材上に設けられる樹脂層は、熱転写インクを印字するためのインク受容層としての役割と、熱転写インクを覆い、熱転写インクがゴムから剥離することを防止するための保護層としての役割を担うものである。
【0019】
このような樹脂層の第一の態様としては、ガラス転移温度が、105℃以上160℃未満であるセルロース系樹脂を含むものである。さらに好ましくは、ガラス転移温度は、120℃以上、150℃未満である。ガラス転移温度が105℃以上のセルロース系樹脂を用いることにより、熱転写インクによる印字性を得ることができ、ガラス転移温度が160℃未満のセルロース系樹脂を用いることにより、ゴム成型処理後に樹脂層と熱転写インクとの間の密着不良によるインク浮きを防止することができる。ガラス転移温度が160℃未満とすることによりインク浮きを防止できる理由は、次のように考えられる。ゴム成型時の熱処理温度より低いガラス転移温度の樹脂を用いた場合には、成型時の熱で、熱転写インクは再溶融し、さらに樹脂層も軟化するため、熱転写インクと樹脂層の間でうまく交じり合い接着性を得ることができる。一方、ゴム成型時の熱処理温度と同程度のガラス転移温度の樹脂を用いた場合では、熱転写インクと樹脂層の間で混じり合わず、逆に層分離が起こるためと考えられる。
【0020】
また、樹脂層に含まれるセルロース系樹脂としては、透明性を有するものであれば用いることができるが、特にアセチル化されたセルロースが好ましく、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネートが特に好ましい。
【0021】
セルロース系樹脂の数平均分子量は、10,000以上が好ましく、さらに好ましくは、30,000以上である。このような分子量のものを用いることにより、耐擦傷性を良好なものとすることができ、さらに、ゴム成型時に金型に樹脂層が付着してしまうことを防止することができる。また、塗膜にする際の加工適性を良好にするためには、数平均分子量は、80,000以下であることが好ましい。
【0022】
また、セルロースアセテートブチレートを用いる場合には、ブチリル含有量が多くなると、未加硫ゴムとの接着性が悪くなる傾向があるため、ブチリル含有量は、5〜50重量%が好ましい。さらに、セルロースアセテートブチレートを用いた場合には、基材との接着が強いため、ゴムへの転写を良好にできるように、基材に易剥離層を設けることが好ましい。
【0023】
樹脂層の第二の態様としては、一分子あたりのエポキシ基数が、1.5以上、好ましくは5.0以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を含むものである。エポキシ基数が、1.5以上であると、基材との剥離性が良好で、未加硫ゴムとの接着性をよいものとすることができる。
【0024】
このようなエポキシ樹脂としては、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、多環芳香族型エポキシ樹脂、水添脂環式エポキシ樹脂、メソゲン骨格エポキシ樹脂などを用いることができるが、一分子あたりのエポキシ基数が多く、分子量が大きいフェノキシタイプのエポキシ樹脂が特に好ましい。
【0025】
エポキシ樹脂の数平均分子量は、30,000以上が好ましく、より好ましくは、50,000以上である。このような分子量のものを用いることにより、耐擦傷性を良好なものとすることができ、さらに、ゴム成型時に金型に樹脂層が付着してしまうことを防止することができる。
【0026】
このような樹脂層の厚みは、2μm以上、15μm以下が好ましく、さらに、3μm以上、10μm以下、特に好ましくは、5μm以下である。厚みを2μm以上とすることにより、熱転写インクを覆って、保護することができる。また、15μm以下とすることにより、転写されたのちにも柔軟性を失わず、ゴムの柔軟性を損なうのを防止することができる。
【0027】
このようなゴムマーク転写用シートは、ある程度の透明性を有するものが好ましく、全光線透過率が、70%以上、さらに好ましくは、80%以上である。このような透明性を有することで、基材側から印字位置を確認することができ、位置あわせを容易にすることができる。ある程度とするのは、透明性が高いと、熱転写インクを転写した際の確認作業に支障をきたすことがあるためである。
【0028】
本発明において樹脂層には、本発明の機能を損なわない場合であれば、難燃剤、抗菌剤、防かび剤、酸化防止剤、可塑剤、レベリング剤、流動調整剤、消泡剤、分散剤、紫外線吸収剤、硬化剤などの種々の添加剤を含有させることができる。
【0029】
また、基材の樹脂層が設けられた面とは反対面には、転写用シート同士のブロッキングを防止するためのマット層や、プリンタの搬送性を向上させるための滑り防止層などを設けることもできる。
【0030】
このようなゴムマーク転写用シートを用いることにより、未加硫ゴムを金型成型工程中で、ゴムに所望の型番やロット番号などの識別マークを印字することができる。本発明のゴムマーク転写用シートを用いたゴムへの印字方法について説明する。
【0031】
ゴムへの印字は、以下の工程を含む工程を行なうことにより行なわれる。
【0032】
本発明のゴムマーク転写用シートの樹脂層面に、熱転写インクにより所望の文字や記号などを印字する第一の工程。この工程では、樹脂層と熱転写インクとの接着性が求められる。本発明のゴムマーク転写用シートは、樹脂層として、ガラス転移温度が、105℃以上160℃未満であるセルロース系樹脂を含むものであるため、樹脂層と熱転写インクとの接着性を良好なものとすることができる。
【0033】
また、本発明の第二のゴムマーク転写用シートは、樹脂層として、一分子あたりのエポキシ基数が1.5以上であるエポキシ系樹脂を含むものであるため、樹脂層と熱転写インクとの接着性を良好なものとすることができる。
【0034】
未加硫ゴム表面と、所望の文字や記号が印字された樹脂層面とが対向するようにして位置を合わせ、金型成型温度より30〜60℃程度低い温度で、熱プレスを行ない、ゴムマーク転写用シートと未加硫ゴムを仮接着する第二の工程。この工程では、未加硫ゴムと樹脂層との接着性が求められる。
【0035】
このような仮接着の工程を設けることにより、転写不良が起こったときに、ゴム全体を不良品としなくてよく、歩留まりの向上やコストの上昇を防止することができる。
【0036】
ゴムマーク転写用シートの基材を樹脂層から剥離する第三の工程。本発明のゴムマーク転写用シートの樹脂層としてセルロースアセテートブチレートを用いた場合には、基材との接着が強いため、ゴムへの転写を良好にできるように、基材に易剥離層を設けることが好ましい。
【0037】
樹脂層を仮接着した未加硫ゴムを、金型成型すると共に加硫処理する第四の工程。本発明のゴムマーク転写用シートは、樹脂層として、ガラス転移温度が、105℃以上160℃未満であるセルロース系樹脂、または、一分子あたりのエポキシ基数が1.5以上であるエポキシ系樹脂を含むものであるため、金型成型時の熱により、熱転写インクと樹脂層との間で剥がれが生じることを防止することができる。また、所望の数平均分子量のセルロース系樹脂、またはエポキシ樹脂を用いるため、耐擦傷性を良好なものとすることができ、さらに、ゴム成型時に金型に樹脂層が貼り付くのを防止することができる。
【0038】
また、ゴムマーク転写用シートの樹脂層としてエポキシ樹脂を用いた場合には、硬化剤を選択することにより、エポキシ樹脂が硬化を始める温度を調整し、第一、第二の工程では硬化させず、第四の工程で硬化させることが好ましい。第一、第二の工程で樹脂層を硬化させないことで、熱転写インクとの接着性や、未加硫ゴムとの接着性を良好なものとすることができ、第四の工程で樹脂層を硬化させることで、樹脂層の耐擦傷性を良好なものとすることができる。
【0039】
このような硬化剤としては、日立化成工業社の商品名として、HN-2200、HN-2000、HN-5500、HHAC-Pなどを用いることができ、三菱化学社の商品名として、jERシリーズがあげられ、例えば、ST11、LV11、DC11、RC11、FL11、QX11、SL11、T、3010、113、DX103、H3、EMI24、YH306、170、DICY7などを用いることができ、四国化成社の商品名として、キュアゾールシリーズがあげられ、例えば、1.2DMZ、2PZ、2PZ-CN、C17Z、C11Z-CN、2PZCNS-PW、2E4MZ-A、2MA-OK、2PHZ-PW、2PZL-Tなどを用いることができ、三井化学社の商品名として、タケネートシリーズがあげられ、例えば、D140、D110N、D120N、D160N、D165Nなどを用いることができ、日本ポリウレタン工業社の商品名として、コロネートシリーズがあげられ、例えば、L、2233、2067、HL、HK、HXを用いることができる。
【0040】
なお、上記第三の工程は、第二の工程の後に行なわれるものに限られず、第一の工程後、すなわち熱転写インクにより所望の文字や記号などを印字した後、ゴムマーク転写用シートの基材を剥離して、第二の工程、第四の工程を行なうことや、第一、第二の工程後、第四の工程を行ない、その後、ゴムマーク転写用シートの基材を剥離することも可能である。
【0041】
以上のようにすることで、ゴムマーク転写用シートを用いてゴムへの印字を行なうことができるが、この方法に限らず、ゴムマーク転写用シートに、熱転写インクにより印字した後、仮接着の工程を行なわず、未加硫ゴムと金型の間に配置して、金型成型時に加硫処理と樹脂層の接着(転写)処理を行なうことも可能である。
【実施例】
【0042】
以下、実施例により本発明を更に説明する。なお、「部」、「%」は特に示さない限り、重量基準とする。
【0043】
[実施例1]
厚み38μmの透明ポリエステルフィルム(T60:東レ社)の一方の面に、下記の組成からなる樹脂層塗布液を、厚みが4μmとなるようにバーコーティング法により塗布、乾燥して、ゴムマーク転写用シートを作製した。
【0044】
<樹脂層塗布液>
・セルロースアセテートブチレート樹脂 20部
(CAB-381-20:EASTMAN
CHEMICAL社、Tg:141℃、分子量:70,000)
・希釈溶媒 80部
【0045】
[実施例2]
樹脂層塗布液を下記樹脂層塗布液に代えた以外は、実施例1と同様にして、実施例2のゴムマーク転写用シートを作製した。
【0046】
<樹脂層塗布液>
・セルロースアセテートプロピオネート樹脂 20部
(CAP-482-20:EASTMAN
CHEMICAL社、Tg:147℃、分子量:75,000)
・希釈溶媒 80部
【0047】
[実施例3]
樹脂層塗布液を下記樹脂層塗布液に代えた以外は、実施例1と同様にして、実施例3のゴムマーク転写用シートを作製した。
【0048】
<樹脂層塗布液>
・セルロースアセテートブチレート樹脂 20部
(CAB-381-2:EASTMAN
CHEMICAL社、Tg:133℃、分子量:40,000)
・希釈溶媒 80部
【0049】
[実施例4]
樹脂層塗布液を下記樹脂層塗布液に代えた以外は、実施例1と同様にして、実施例4のゴムマーク転写用シートを作製した。
【0050】
<樹脂層塗布液>
・セルロースアセテートブチレート樹脂 20部
(CAB-381-0.1:EASTMAN
CHEMICAL社、Tg:123℃、分子量:20,000)
・希釈溶媒 80部
【0051】
[実施例5]
樹脂層塗布液を下記樹脂層塗布液に代えた以外は、実施例1と同様にして、実施例5のゴムマーク転写用シートを作製した。
【0052】
<樹脂層塗布液>
・セルロースアセテートブチレート樹脂 20部
(CAB-321-0.1:EASTMAN
CHEMICAL社、Tg:127℃、分子量:12,000)
・希釈溶媒 80部
【0053】
[実施例6]
樹脂層塗布液を下記樹脂層塗布液に代えた以外は、実施例1と同様にして、実施例6のゴムマーク転写用シートを作製した。
【0054】
<樹脂層塗布液>
・セルロースアセテートプロピオネート樹脂 20部
(CAP-482-0.5:EASTMAN
CHEMICAL社、Tg:142℃、分子量:25,000)
・希釈溶媒 80部
【0055】
[実施例7]
樹脂層塗布液を下記樹脂層塗布液に代えた以外は、実施例1と同様にして、実施例7のゴムマーク転写用シートを作製した。
【0056】
<樹脂層塗布液>
・エポキシ樹脂 20部
(jER1256:三菱化学社、分子量:50,000、エポキシ基数:5.9)
・希釈溶媒 80部
・硬化触媒 1部
【0057】
[比較例1]
樹脂層塗布液を下記樹脂層塗布液に代えた以外は、実施例1と同様にして、比較例1のゴムマーク転写用シートを作製した。
【0058】
<樹脂層塗布液>
・セルロースアセテートブチレート樹脂 20部
(CAB-171-0.5:EASTMAN
CHEMICAL社、Tg:161℃、分子量:65,000)
・希釈溶媒 80部
【0059】
[比較例2]
樹脂層塗布液を下記樹脂層塗布液に代えた以外は、実施例1と同様にして、比較例2のゴムマーク転写用シートを作製した。
【0060】
<樹脂層塗布液>
・セルロースアセテート樹脂 20部
(CA-398-30:EASTMAN
CHEMICAL社、Tg:189℃、分子量:50,000)
・希釈溶媒 80部
【0061】
[比較例3]
樹脂層塗布液を下記樹脂層塗布液に代えた以外は、実施例1と同様にして、比較例3のゴムマーク転写用シートを作製した。
【0062】
<樹脂層塗布液>
・セルロースアセテートブチレート樹脂 20部
(CAB-551-0.2:EASTMAN
CHEMICAL社、Tg:101℃、分子量:30,000)
・希釈溶媒 80部
【0063】
[比較例4]
樹脂層塗布液を下記樹脂層塗布液に代えた以外は、実施例1と同様にして、比較例4のゴムマーク転写用シートを作製した。
【0064】
<樹脂層塗布液>
・ポリビニルアセタール樹脂 20部
(エスレック KS-5:積水化学社、Tg:110℃、分子量:130,000)
・希釈溶媒 80部
【0065】
[比較例5]
樹脂層塗布液を下記樹脂層塗布液に代えた以外は、実施例1と同様にして、比較例5のゴムマーク転写用シートを作製した。
【0066】
<樹脂層塗布液>
・エポキシ樹脂 20部
(jER1010:三菱化学社、分子量:5,500、エポキシ基数:1.1)
・希釈溶媒 80部
・硬化触媒 1部
【0067】
(1)熱転写インクの印字性
実施例1〜7、比較例1〜5のゴムマーク転写用シートの樹脂層上に、印刷温度100℃で熱転写インクをベタ印刷した後、熱転写インクの接着性を目視にて評価した。印字ができているものを「○」、印字できなかったものを「×」とした。結果を表1に示す。
【0068】
(2)未加硫ゴムへの接着性
実施例1〜7、比較例1〜5のゴムマーク転写用シートの熱転写インクをベタ印刷したものを、未加硫ゴム表面と印刷面とが対向するように密着させ、120℃で1分間加熱して、樹脂層を未加硫ゴムと仮接着した後、ポリエステルフィルムを剥離した。ポリエステルフィルムの剥離具合を評価した。ポリエステルフィルムが容易に剥離できたものを「◎」、注意しながらではあるが、剥離できたものを「○」、ポリエステルフィルムが剥離できないものを「×」とした。結果を表1に示す。
【0069】
(3)ゴム成型時の金型への付着性
実施例1〜7、比較例1〜5のゴムマーク転写用シートの熱転写インクにより印字された樹脂層が仮接着された未加硫ゴムを、樹脂層が金型に接するように配置し、180℃、1Mpa、40分間の金型成型及び加硫処理を行ない、金型へ樹脂層が付着するかどうかを目視にて評価した。金型に樹脂層が全く付着していないものを「◎」、金型に樹脂層が2%未満付着していたものを「○」、金型に樹脂層が2%以上5%未満付着していたものを「△」、金型に樹脂層が5%以上付着していたものを「×」とした。樹脂層結果を表1に示す。
【0070】
(4)金型成型後の熱転写インクの浮き
金型成型後に、実施例1〜7、比較例1〜5のゴムマーク転写用シートの樹脂層と熱転写インクとの間に浮きが発生しているかどうかを目視にて評価した。樹脂層と熱転写インクとの間に浮きが発生していないものを「○」、樹脂層と熱転写インクとの間に浮きが発生したものを「×」とした。結果を表1に示す。
【0071】
(4)耐擦傷性
金型成型後の実施例1〜7、比較例1〜5のゴムマーク転写用シートの樹脂層に爪擦り試験にて、樹脂層の状態を目視にて評価した。樹脂層に傷が入らないものを「◎」、樹脂層に白い傷はつくが、樹脂層が剥がれないものを「○」、樹脂層が剥がれたものを「×」とした。結果を表1に示す。
【0072】
[表1]

【0073】
以上の結果から明らかなように、実施例1〜6のゴムマーク転写用シートは、ガラス転移温度が、105℃以上160℃未満のセルロース系樹脂を用いているため、熱転写インクの印字性、未加硫ゴムへの接着性、金型成型後の熱転写インクの浮きや、樹脂層の耐擦傷性、金型への付着性など良好な結果であった。
【0074】
特に、実施例1〜3のゴムマーク転写用シートは、分子量が、30,000以上のものを用いているため、耐擦傷性が良好で、樹脂層が金型へ付着しないものであった。
【0075】
また、実施例2、6のゴムマーク転写用シートは、樹脂層にセルロースアセテートプロピオネートを用いているため、基材の剥離性がよく、未加硫ゴムとの接着性が良好なものとなった。
【0076】
実施例7のゴムマーク転写用シートは、樹脂層にエポキシ基数1.5以上のエポキシ樹脂を用いているため、熱転写インクの印字性、未加硫ゴムへの接着性、金型成型後の熱転写インクの浮きや、樹脂層の耐擦傷性、金型への付着性など良好な結果であった。
【0077】
一方、比較例1、2のゴムマーク転写用シートは、ガラス転移温度が160℃以上のセルロース系樹脂を用いたため、金型成型後に熱転写インクの浮きがみられるものとなった。
【0078】
比較例3のゴムマーク転写用シートは、ガラス転移温度が105℃未満セルロース系樹脂を用いたため、熱転写インクの印字性が悪いものとなった。また、未加硫ゴムとの接着性が劣るため、耐擦傷性が劣るものとなった。また、未加硫ゴムへの接着性が劣り、未加硫ゴムへ仮接着することができないものとなった。
【0079】
比較例4のゴムマーク転写用シートは、セルロース系樹脂を用いていないため、熱転写インクの印字性が悪いものとなった。また、未加硫ゴムへの接着性が劣り、未加硫ゴムへ仮接着することができないものとなった。
【0080】
比較例5のゴムマーク転写用シートは、樹脂層にエポキシ基数1.5未満のエポキシ樹脂を用いているため、未加硫ゴムへの接着性が劣り、未加硫ゴムへ仮接着することができないものとなった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に剥離可能に設けられた樹脂層を有するゴムマーク転写用シートであって、樹脂層は、ガラス転移温度が、105℃以上160℃未満であるセルロース系樹脂を含むことを特徴とするゴムマーク転写用シート。
【請求項2】
前記セルロース系樹脂は、数平均分子量が10,000以上のであることを特徴とする請求項1記載のゴムマーク転写用シート。
【請求項3】
前記セルロース系樹脂は、数平均分子量が30,000以上であることを特徴とする請求項1記載のゴムマーク転写用シート。
【請求項4】
基材上に剥離可能に設けられた樹脂層を有するゴムマーク転写用シートであって、樹脂層は、一分子あたりのエポキシ基数が1.5以上であるエポキシ系樹脂を含むことを特徴とするゴムマーク転写用シート。
【請求項5】
前記エポキシ系樹脂の一分子あたりのエポキシ基数が、5.0以上であることを特徴とする請求項4記載のゴムマーク転写用シート。
【請求項6】
前記エポキシ系樹脂の数平均分子量が、30,000以上であることを特徴とする請求項4、又は5記載のゴムマーク転写用シート。

【公開番号】特開2013−52590(P2013−52590A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−192442(P2011−192442)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(000125978)株式会社きもと (167)
【Fターム(参考)】