説明

ゴムローラの製造方法

【課題】長期間、使用してもローラや搬送治具のゴムかす付着や汚れが生じることなく、安定して生産することができるゴムローラの製造方法を提供することにある。
【解決手段】(1)未加硫ゴムローラを準備する工程と、(2)把持治具により未加硫のゴム材料の部分を把持しながら未加硫ゴムローラを、加熱炉内を移動させることにより、未加硫のゴム材料を加硫して弾性層を形成する工程と、(3)把持治具により把持した弾性層の部分を除去する工程と、を有することを特徴とするゴムローラの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンター、ファクシミリ等に代表される電子写真装置や静電記録装置などの画像形成装置に使用可能なゴムローラの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のゴムローラの製造方法としては、以下の方法が挙げられる。
第1の製造方法;
中空チューブ状に押出成形した未加硫のゴム材料を、熱風炉、高周波加硫炉、蒸気缶加硫炉等により加硫する。この後、中空チューブ状の加硫したゴム層の中空部内に、軸体を挿入・接着させることによりゴム層を有するゴムローラを製造する。
【0003】
第2の製造方法;
クロスヘッドダイを有する押出成形機等を用いて、軸体の外周面上に未加硫のゴム材料を被覆して共押出する。次に、熱風炉等の加熱手段によって、未加硫のゴム材料を加硫して、軸体の外周上に加硫したゴム層を有するゴムローラを形成する。
【0004】
これらの製造方法の中でも第2の製造方法は、加硫した中空チューブゴム層内に軸体を挿入する工程が不要となる。このため、第2の製造方法は低コスト化、製造工程の連続化、生産設備の小型化及び省スペース化等の面から好ましく採用されている。
【0005】
また、特許文献1には、未加硫のゴム材料を加硫する具体的な製造方法が開示されている。すなわち、この製造方法では、軸体の外周面上に未加硫のゴム材料を被覆したローラを把持治具で把持しつつ、ローラの長手方向に対して垂直方向に加熱炉内を上下及び水平方向に連続的に搬送して加硫を行う。
【特許文献1】特開2002−326235号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1の方法では、設備導入から初期の頃は品質上問題なく、効率的に加硫を行うことができる。しかしながら、ローラの把持方法として吊り下げ式の受け台を使用しているため、ゴム材料組成や加熱条件によっては長期間使用を続けることでローラ把持部にゴムかすが蓄積し、安定して把持することができなくなる場合があった。また、この結果、加熱炉内を搬送中にローラが落下して設備の重大な損傷を招く場合があった。更に、吊り下げ式の把持治具では常にローラの向きを一定に保つため、把持治具どうしの間を大きくとる必要があり大量生産するには加熱炉の大型化を余儀なくされた。
【0007】
一方、ローラの外周面に接触して把持する機構の把持治具を用いた場合、加熱終了後にローラを把持治具から取りはずす際、把持治具に蓄積したゴムかすがローラの外周面に付着する場合があった。この場合、ローラの品質不良の原因となり、更には後工程での加工性に問題が生じる場合があった。このため、この把持治具を用いる場合には把持治具の定期清掃が必要となるが、把持治具が何度も加熱炉内を通過するため、付着したゴムかすが軟化又は硬化して清掃作業が非常に困難であった。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、長期間、把持治具を使用してもゴムかす付着や汚れが生じることなく、安定して高品質のゴムローラを生産可能なゴムローラの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は、以下の構成を有することを特徴とする。
1.(1)少なくとも軸体と、前記軸体の外周面上に未加硫のゴム材料を配置した未加硫ゴムローラを準備する工程と、
(2)把持治具により前記未加硫のゴム材料の部分を把持しながら、前記未加硫ゴムローラを加熱炉内を移動させることにより、前記未加硫のゴム材料を加硫して弾性層を形成する工程と、
(3)前記把持治具により把持した弾性層の部分を除去する工程と、
を有することを特徴とするゴムローラの製造方法。
【0010】
2.前記工程(1)と(2)の間に更に、把持治具で把持する未加硫のゴム材料の部分に離型処理を施す工程を有することを特徴とする上記1に記載のゴムローラの製造方法。
【0011】
3.前記把持治具は、その表面が表面処理を施されたものであることを特徴とする上記1又は2に記載のゴムローラの製造方法。
【0012】
4.前記表面処理は、離型剤を塗布する方法、及び、フッ素系樹脂を含有するポリエーテルエーテルケトン樹脂を前記把持治具の表面へコーティングする方法のうち、少なくとも一方の方法であることを特徴とする上記3に記載のゴムローラの製造方法。
【0013】
5.前記工程(1)は、
複数の前記軸体を、1本ずつ互いの端面が接するように押出成形機のクロスヘッドダイ内を連続的に通過させ、前記軸体のクロスヘッドダイ内の通過時に前記軸体の外周面上に未加硫のゴム材料を供給することにより、前記クロスヘッドダイから、未加硫のゴム材料で被覆した軸体を共押出する工程と、
前記軸体の外周面上を被覆した前記未加硫のゴム材料を、前記軸体の端面上で切断する工程と、
を有することを特徴とする上記1から4の何れか1項に記載のゴムローラの製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、加熱炉内での未加硫ゴムローラの移動に使用する把持治具の定期清掃やメンテナンスの作業性及び頻度を大きく軽減することができる。また、長期にわたって高品質のゴムローラを安定して生産することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明のゴムローラの製造方法は、以下の工程を有する。
(1)少なくとも軸体と、軸体の外周面上に未加硫のゴム材料を配置した未加硫ゴムローラを準備する工程。
(2)把持治具により未加硫のゴム材料の部分を把持しながら未加硫ゴムローラを、加熱炉内を移動させることにより、未加硫のゴム材料を加硫して弾性層を形成する工程。
(3)把持治具により把持した弾性層の部分を除去する工程。
以下、本発明の好ましい実施形態を挙げて、本発明の各工程を詳しく説明する。
【0016】
(工程(1))
工程(1)ではまず、少なくとも軸体と、軸体の外周面上に未加硫のゴム材料を配置した未加硫ゴムローラを準備する。ここで、未加硫のゴム材料は軸体の外周面の全面に配置しても、一部に配置しても良い。未加硫のゴム材料を、軸体の一部に配置する場合、少なくとも製造後に弾性層を形成したい部分には未加硫のゴム材料を配置する必要がある。そして、製造後に軸体の端部(最終的に製造したゴムローラにおいて、弾性層を設けずに軸体を露出させる部分)となる部分には、少なくとも一部に未加硫のゴム材料を配置する必要がある。この理由は、後の工程(2)では、この軸体の端部上に設けた未加硫のゴム材料の部分を、把持治具により把持するためである。
【0017】
この軸体の材料は特に限定されるわけではないが、所望の強度やゴム材料の接着性の優れたものが好ましい。具体的には、金属製のものが好ましく、例えば、ステンレス鋼、ニッケルクロム鋼、ニッケルクロムモリブテン鋼、クロム鋼、クロムモリブテン鋼、Al、Cr、Mo及びVを添加した窒化用鋼が挙げられる。
【0018】
さらに防錆対策として、軸体の表面上にめっき、酸化処理を施すことができる。めっきの種類としては電気めっき、無電解めっきを使用できるが、寸法安定性の観点から無電解めっきが好ましい。ここで使用される無電解めっきの種類としては、ニッケルめっき、銅めっき、金めっき、その他、各種合金めっきがある。ニッケルめっきの種類としては、Ni―P、Ni−B、Ni−W−P、Ni−P−PTFE複合めっきがある。
【0019】
ゴム材料としては、下記材料を単独、又は複数種を組み合わせたものを用いることができる。
・エピクロルヒドリンホモポリマー、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル3元共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体の水添物、クロロプレンゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム。
【0020】
また、押出時の成形性を良好とする為に、ゴム材料中に無機充填剤を配合しても良い。この無機充填剤としては、シリカ(ホワイトカーボン)、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、クレー、タルク、ゼオライト、アルミナ、硫酸バリウム、硫酸アルミニウム等が挙げられる。
【0021】
また、このゴム材料中には硫黄、有機過酸化物、トリアジン、ポリアミン等の加硫剤が添加されている。更に、ゴム材料中には必要に応じて、チウラム系、チアゾール系、グアニジン系、スルフェンアミド系、ジチオカルバミン酸塩系、チオウレア系の加硫促進剤を添加しても良い。
【0022】
ゴム材料中には、必要に応じて導電剤を配合することができる。導電剤としては、以下のものを挙げることができる。
・アルミニウム、パラジウム、鉄、銅、銀等の金属系の粉体や繊維。
・酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛等の金属酸化物。
・硫化銅、硫化亜鉛等の金属化合物粉。
・表面に、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化モリブテンを付着させた粒子。電解処理、スプレー塗工又は混合振とうなどにより、表面に、亜鉛、アルミニウム、金、銀、銅、クロム、コバルト、鉄、鉛、白金又はロジウムを付着させた粉体。
・アセチレンブラック、ケッチェンブラック、PAN系カーボンブラック、ピッチ系カーボンブラック等のカーボン粉。
・KSCN、LiClO4、NaClO4、4級アンモニウム塩等のイオン伝導物質。
【0023】
軸体の外周面上に配置するゴム材料の厚みは、所望とするゴムローラの形状に合わせて任意に調整可能である。厚みのばらつきについては製品の形状精度や品質に影響する場合があるため、軸体の外周面を基準として0.1mm以下とするのが好ましい。
【0024】
軸体の外周面上に未加硫のゴム材料を配置する手段は特に制限されないが、以下の方法を用いることが好ましい。
・複数の軸体を、1本ずつ互いの端面が接するように押出成形機のクロスヘッドダイ内を連続的に通過させ、軸体のクロスヘッドダイ内の通過時に軸体の外周面上に未加硫のゴム材料を供給する。これにより、クロスヘッドダイから、未加硫のゴム材料を被覆した軸体を共押出する工程。
・軸体の外周面を被覆した未加硫のゴム材料を、軸体の端面上で切断する。これにより複数の、外周面上を、未加硫のゴム材料で被覆させた軸体を得る工程。
【0025】
このクロスヘッドダイに連結させた押出成形機は、典型的には、その押出方向が軸体ガイドの方向(共押出の方向)と垂直な方向となるように配置されており、クロスヘッドダイの途中で連結されている。そして、軸体がクロスヘッドダイ内を通過中に、押出成形機から、軸体の外周面上にゴム材料が供給、被覆されるようになっている。そして、クロスヘッドダイの出口からは、外周面上に連続的にゴム材料が被覆された複数の軸体が共押出される。
【0026】
すなわち、上記方法では、複数の軸体を、1本ずつ互いの端面が接するように押出成形機のクロスヘッドダイ内に連続して供給し、クロスヘッドダイ内を搬送する。この際、軸体の搬送速度とゴム材料の押出速度を調整することで、共押出後の未加硫ゴムローラの外径を所定範囲の一定値に維持することができる。ここで、「端面」とは、軸体の端部の最も端に存在する面であり、軸体の軸方向と垂直な面のことを表す。
【0027】
共押出後にゴム材料が被覆された軸体には、各軸体の端面上にもゴム材料が被覆されている。従って、次の工程では、軸体の外周面上に被覆させた未加硫のゴム材料を、軸体の端面上で切断する。すなわち、軸体は複数の製品用の軸体がそれぞれ端面を接するようにクロスヘッドダイ内に連続的に供給される。そして、クロスヘッドダイから共押出後に各軸体の端面上のゴム材料を切断することにより、製品用の長さの軸体及びゴム材料層に分離されると共に、両側の端面のみが露出する。
【0028】
なお、ゴム材料を被覆した軸体の切断方法は特に限定されず、例えば、所定の回転数で回転する回転刃物や、切断時に軸体の共押出の方向と垂直な方向に上下する切り込み刃物等を用いることができる。このとき、刃物としては、軸体を傷つけないように軸体を庇う形状で、かつ軸体よりも硬度の低いものが好ましく、例えば真鍮製やアルミ製のものが好ましく選ばれる。また、クロスヘッドダイ内に供給される軸体の本数及び長さは特に限定されず、押出成形機の装置スペースやゴムローラーの生産量を勘案して、適宜、選択することができる。
【0029】
(工程(2))
次に、工程(2)では、把持治具により未加硫ゴムローラを把持しながら、加熱炉内を移動させる。そして、加熱炉で未加硫のゴム材料に対して熱を加えることによって、未加硫のゴム材料を加硫して弾性層を形成する。この把持治具により把持するゴム材料の部分は、製造後のゴムローラにおいて弾性層となる部分や軸体の端面となる部分ではなく、製造後のゴムローラにおいて露出する軸体の端部上に存在する未加硫ゴム材料の部分とする必要がある。
【0030】
ここで、従来の製造方法では、把持治具を未加硫ゴムローラの両端面に接触させて把持していた。このため、軸体の軸方向長さのばらつき等や、未加硫のゴム材料が軸体の端面に付着・はみ出しが起こった場合に、安定してローラを把持できない場合がある。また、把持治具により、製造後のゴムローラにおいて弾性層となる部分を把持すると、安定して把持できたとしても把持治具や軸体の端面を汚してしまい、ゴムローラの品質や加工性に問題が生じる要因となる。更に、このように把持治具にゴム材料等の汚れが付着すると、把持治具は加熱炉内を循環して何度も使用されるため、把持治具上にゴムかす汚れが蓄積して肥大化することとなる。また、このゴムかす汚れは加熱炉内で長期にわたって熱履歴を受けるため、ゴムの種類によっては硬化又は軟化する。このように硬化又は軟化すると把持治具の清掃作業が著しく困難になる。更に、肥大化したゴムかすがゴムローラに付着して後工程に持ち込まれると、ゴムローラの精度や加工性に影響を及ぼすばかりか、装置の重大な損傷を招く場合がある。
【0031】
また、未加硫のゴム材料は可塑性であり、変形しやすくなっている。このため、把持治具により製造後のゴムローラにおいて弾性層となる部分を把持すると、把持力によって把持されたゴム材料の部分が変形して把持跡が大きく残り、後の加熱加硫工程によってこの弾性層の変形が固定化される。この結果、ゴムローラの形状精度を維持できなくなり、製品特性や安定性に問題があるゴムローラとなる。
【0032】
これに対して、本発明では、把持治具は軸体の端部上に存在するゴム材料の部分を把持する。このため、たとえ工程(2)の加熱加硫によってこの部分のゴム材料が変形して把持跡が大きく残った場合であっても、後工程(3)でこの部分は除去されるため、ゴムローラの品質や性能に何ら影響を及ぼさない。従って、ゴムかすが製造後のゴムローラの特性や精度に影響を及ぼすことを防止できる。更に、軸体の端面に付着したゴムかす等は、把持治具で押さえつけられないため、後工程で容易に清掃除去することができる。
【0033】
この加熱炉としては、熱風炉、遠赤外線加熱炉、誘導加熱炉等が挙げられ、ゴムローラの品質及び加工性やライン設計に合わせて適宜、選択することができる。これらの加熱炉の中でも、熱風炉は装置の設計や管理が容易であることから特に好ましく選ばれる。また、加熱炉内に断熱性の仕切りを設け、仕切りごとに温度設定を替えたり、又は加熱加硫後のゴムローラを冷却する工程を設けても差し支えない。
【0034】
また、加熱炉内において未加硫ゴムローラを移動させる搬送手段は特に限定されない。例えば、加熱炉内において未加硫ゴムローラを上下方向、又は水平方向に移動させることが可能な、把持治具を備えたチェーン式コンベア等を挙げることができる。
【0035】
(工程(3))
次に、工程(3)では、把持治具により把持した弾性層の部分を除去する。この弾性層の部分は、工程(2)において把持治具により把持した、軸体の端部上の未加硫のゴム材料の部分に相当し、加熱炉内を移動中に加硫して硬化したものである。この表面層の除去方法としては特に限定されず、該当部分をカッターで切断した後、人間の手によって引張ったり、粘着ローラを回転させながら軸体の端部上の弾性層の外周面上に当接させる方法を挙げることができる。
【0036】
工程(1)と(2)の間に更に、把持治具で把持する予定の未加硫のゴム材料の部分に、離型処理を施す工程を有することが好ましい。この離型処理としては特に限定されないが、各種離型剤を塗布する方法を挙げることができる。このように離型処理を施すことにより、把持治具やローラ端面への汚れの付着を大幅に少なくし、仮に把持治具やローラ端面へ汚れが付着した場合であっても容易に清掃することができる。
【0037】
離型剤を塗布する方法では、離型剤の種類によってはゴム材料中に浸透したり、加熱炉内で揮発してゴムローラの性能に弊害をもたらす場合がある。このため、離型剤としてはこのような問題を生じないものを使用するのが良い。
【0038】
また、把持治具として、その表面に表面処理を施したものを用いることが好ましい。この表面処理としては、離型剤を塗布する方法、及び、フッ素系樹脂を含有するポリエーテルエーテルケトン樹脂を把持治具の表面へコーティングする方法のうち、少なくとも一方の方法であることが好ましい。
【0039】
この離型剤を塗布する表面処理方法は、上記離型処理において、離型剤を塗布する工程と同様に実施することができる。
また、コーティングする方法で用いるポリエーテルエーテルケトン樹脂は、オキシ−1,4−フェニレン−カルボニル−1,4−フェニレンユニットで構成されている。この樹脂は、耐熱性及び耐摩耗性に優れていることから、本発明の把持治具に施される表面処理材として好適である。さらにフッ素系樹脂を混合することにより、把持治具への表面処理加工性の向上と離型性の向上を得ることができる。
【0040】
このフッ素系樹脂としてはとくに制限されず、従来公知のものを使用できる。例えば、PFA(4フッ化エチレン・パーフロルオロプロピルビニルエーテル)、FEP(4フッ化エチレン・6フッ化プロピレン共重合体)、PTFE(4フッ化エチレン樹脂)、ETFE(エチレン・4フッ化エチレン共重合体)等が挙げられる。それぞれ要求される耐熱性、離型性、表面処理加工性に合わせて、種類や量を適宜、選択することができる。
【実施例】
【0041】
次に、本発明について実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
【0042】
(実施例1)
(1)軸体の準備
直径6mm、長さ250mmの円柱状の鋼鉄製軸体に対し、両端から10mmの部分(端部)を除く外周面上に接着剤(商品名:メタロックU−20、東洋化学研究所(株)製)を塗布した。
【0043】
(2)未加硫ゴムローラの作成
下記組成の材料を、密閉型混練機及びオープンロール機を用いて混練を行なうことにより未加硫のゴム材料を得た。
エピクロロヒドリンゴム(主材)[商品名:エピクロマーCG102 ダイソー株式会社製] 100質量部
酸化亜鉛[商品名:酸化亜鉛2種 ハクスイテック株式会社製] 5質量部
ステアリン酸[商品名:ステアリン酸S 花王株式会社製] 1質量部
カーボンブラック[商品名:旭#15 旭カーボン株式会社製] 5質量部
炭酸カルシウム[商品名:シルバーW 白石工業株式会社製] 40質量部
可塑剤[セバシン酸系ポリエステル 商品名:ポリサイザーP−202 大日本インキ(株)社製] 5質量部
ジベンゾチアジルジサルファイド[商品名:ノクセラーDM 大内新興化学株式会社製] 1質量部
テトラメチルチウラムモノスルフィド[商品名:ノクセラーTS 大内新興化学株式会社製] 1質量部
硫黄[商品名:サルファックス200S 鶴見化学株式会社製] 1質量部。
【0044】
未加硫ゴムローラ及びゴムローラの作成は、図1に示す押出成形機を用いて行った。すなわち、上記軸体を複数本、互いの端面が接するように、図1のクロスヘッドダイ押出成形機の芯金ガイドに沿って連続的に通過させた。そして、これと共に、上記未加硫のゴム材料を70mmの押出成形機内に投入した。そして、連続的に軸体をクロスヘッドダイ内に供給しながら、軸体の外周面上にゴム材料を被覆した後、共押出をした。この共押出後の軸体−ゴム材料の一体物を、切断装置により、軸体長さに合わせて軸体の端面上で切断することにより、未加硫ゴムローラを得た(工程(1))。
【0045】
上記のようにして得た未加硫ゴムローラを、図4に示すローラの直径に合わせて半円状にくりぬいた一対の5mm厚の板からなる鋼鉄製のローラ把持治具により、未加硫ゴムローラの両端面から中央部に向かってそれぞれ1〜6mmに相当する位置を把持した。その概略図を図5に示す。
【0046】
次に、このようにローラ把持治具により把持した未加硫ゴムローラを、図2のような搬送手段を備えた、図3の熱風炉に連続的に供給し、加熱加硫工程及び冷却工程を経て、ゴム材料を弾性層とした後、順次、排出した(工程(2))。この時、加熱工程の設定温度は170℃、冷却工程の設定温度は30℃とした。このローラの弾性層の両側の端面から10mmの位置に、軸体に接触しないようにカッター刃を入れた後、両側の端面から10mmまでの弾性層を引張って除去することにより、最終的に加硫ゴムローラを得た(工程(3))。
【0047】
(3)評価方法
(a)ゴムローラ端面の汚れ
図1の押出成形機を用いて連続して複数本、作成したゴムローラにおいて、作成順で901〜1000本目及び11901〜12000本目のゴムローラの両側の端面に対して、目視でゴムかすの付着の有無を観察した。そして、以下の基準に基づいて評価した。
◎…ゴムかすの付着があるゴムローラがなかった。
○…1本以上5本以下のゴムローラに、ゴムかすの付着が認められた。
×…6本以上50本以下のゴムローラに、ゴムかすの付着が認められた。
××…51本以上のゴムローラに、ゴムかすの付着が認められた。
【0048】
(b)把持治具の汚れ
ローラ1本を把持するのに必要な把持治具数を1組としたとき、ゴムローラを1000本及び12000本、作成した後、加熱炉に取り付けた把持治具の任意の100組に対してゴムかす付着の有無を観察した。そして、以下の基準に基づいて評価した。
◎…ゴムかすの付着がある把持治具がなかった。
○…1組以上5組以下の把持治具に、ゴムかすの付着が認められた。
×…6組以上50組以下の把持治具に、ゴムかすの付着が認められた。
××…51組以上の把持治具に、ゴムかすの付着が認められた。
上記の評価結果を表1に示す。
【0049】
(実施例2)
把持治具として図6のようなU字型で内部にマグネットを内蔵したものを用いて、図7のように未加硫ローラを把持したこと以外は、実施例1と同様にしてゴムローラを製造し、評価を行った。この結果、実施例1と同様、把持治具へのゴムかす付着がわずかに認められたものの、軸体の端部へのゴムかす付着は非常に少なかった。この結果から、簡単な清掃機構を設けることで、このゴムかす汚れは容易に除去でき、把持治具を長期間、差し支えなく使用できることを確認できた。
【0050】
(実施例3)
上記工程(1)と(2)の間に、この把持治具が接触するゴム材料の部分(ローラ両端面から長手方向の中央部に向かって6mmまでの範囲)に、水で2倍希釈したフッ素系離型剤(ダイフリーME313、ダイキン工業(株)製)を塗布した。また、把持治具として、図4の把持治具を用いた。これ以外は実施例1と同様にしてゴムローラを製造し、評価を行った。
【0051】
この結果、ゴムローラ端面へのゴムかす付着は12000本成型後でも認められなかった。また、把持治具へのゴムかす付着の程度は、離型剤を使用しなかった実施例1よりも良好であった。
【0052】
把持治具に関しては、12000成型後でも離型性に優れ、未加硫ゴムローラの表面に離型剤を塗布することで、長期間、安定してゴムローラを製造できることを確認できた。
【0053】
(実施例4)
図6の把持治具に、水で2倍希釈したフッ素系離型剤(ダイフリーME313、ダイキン工業(株)製)を塗布した。この後、170℃に設定した加熱炉内を、30分かけて1周させることで、離型剤の乾燥および離型層の焼付けを行った。そして、実施例1と同様にしてゴムローラを製造し、評価を行った。
【0054】
この結果、軸体の端面のゴムかす付着は、12000本成型後でも認められなかった。また、把持治具へのゴムかす付着においては、1000本成型後では離型剤を使用しなかった実施例1よりも良好であった。しかし、使用を続けるに従って未加硫ゴムローラの表面から離型剤が剥離して、12000本成型後では、わずかながらゴムかすの付着が認められた。この結果から、把持治具への表面処理として、離型剤を塗布することで、本発明のゴムローラの製造方法は長期間、安定してゴムローラを製造できることを確認できた。
【0055】
(実施例5)
図6の把持治具に、8質量%の4−フッ化エチレン樹脂を混合させたポリエーテルエーテルケトン樹脂を厚み約0.3mmとなるようにコーティングした。これ以外は、実施例1と同様にしてゴムローラを製造し、評価を行った。この結果、軸体の端面及び把持治具の汚れは12000本成型後でも共に認められず、本発明のゴムローラの製造方法は長期間、安定してゴムローラを製造できることを確認できた。
【0056】
(実施例6)
下記組成の材料を、密閉型混練機及びオープンロール機を用いて混練を行なうことにより未加硫のゴム材料を得た。また、把持治具の表面に、離型剤を塗布せずに、8質量%の4−フッ化エチレン樹脂を混合させたポリエーテルエーテルケトン樹脂を厚み約0.3mmとなるようにコーティングした。これ以外は、実施例4と同様にしてゴムローラを製造し、評価を行った。
【0057】
NBR(アクリロニトリルブタジエンゴム;主材)[商品名:Nipol DN219、日本ゼオン株式会社製] 100質量部
酸化亜鉛[商品名:酸化亜鉛2種 ハクスイテック株式会社製] 5質量部
ステアリン酸[商品名:ステアリン酸S 花王株式会社製] 1質量部
カーボンブラック[商品名:旭#70 旭カーボン株式会社製] 40質量部
炭酸カルシウム[商品名:シルバーW 白石工業株式会社製] 15質量部
ジベンゾチアジルジサルファイド[商品名:ノクセラーDM 大内新興化学株式会社製] 1質量部
テトラメチルチウラムモノスルフィド[商品名:ノクセラーTS 大内新興化学株式会社製] 1質量部
硫黄[商品名:サルファックス200S 鶴見化学株式会社製] 1質量部。
【0058】
この結果、軸体の端面及び把持治具の汚れは、12000本成型後でも共に認められず、本発明のゴムローラの製造方法は実施例1と異なるゴム材料を用いた場合であっても効果が得られることを確認できた。
【0059】
(比較例1)
ローラ把持治具として図8のような中央部にマグネットを備えたものを用い、図9のように軸体の端面を把持した以外は、実施例1と同様にしてゴムローラを製造し、評価を行った。この結果、軸体の端面及び把持治具へのゴムかす付着は1000本成型した時点で悪く、12000本成型後では、ほぼすべての把持治具にゴムかす付着が認められた。
【0060】
この理由は、軸体の端面から未加硫ゴム材料がわずかでもはみ出した場合には、把持時に軸体の端面や把持治具に対してゴムかすが押し付けられることとなるためである。更に、把持治具に付着したゴムかすは、何周も加熱炉内を循環して熱履歴を受けるため、付着したヒドリンゴムかすが軟化してこびりつき、清掃が非常に困難となった。これらの結果から、把持治具を軸体の端面に接触させる把持方法では、長期間、安定して高品質のゴムローラを製造できないことが確認できた。
【0061】
(比較例2)
比較例1で使用した図8の把持治具の表面に、8質量%の4―フッ化エチレン樹脂を混合させたポリエーテルエーテルケトン樹脂を、厚み約0.3mmとなるようにコーティング(表面処理)をした。また、図9のように軸体の端面を把持した。これ以外は実施例1と同様にしてゴムローラを製造し、評価を行った。
【0062】
この結果、把持治具のゴムかす付着は、12000本成型しても認められなかったが、その分、軸体の端面側に付着しやすく、ローラ端面の汚れは1000本成型した時点で非常に悪かった。したがって、把持治具に表面処理を施すだけでは、安定して高品質のゴムローラを製造できないことを確認できた。
【0063】
(比較例3)
比較例1で使用した図8の把持治具を用い、ゴム材料として実施例6で使用したゴム材料を使用した。また、図9のように軸体の端面を把持した。これ以外は実施例1と同様にしてゴムローラを製造し、評価を行った。この結果、軸体の端面及び把持治具へのゴムかす付着が非常に悪く、また、把持治具に付着したNBRゴムかすは長時間、熱を受けることで硬化して強固にこびりついた。このため、把持治具の清掃作業が非常に困難であり、長期間、安定して高品質のゴムローラを製造できないことを確認できた。
【0064】
【表1】

【0065】
1)離型剤…ダイフリーME313(ダイキン工業(株)製)
2)PEEK…4−フッ化エチレン含有ポリエーテルエーテルケトン樹脂コーティング。
【0066】
表1の実施例1〜6の結果から、本発明の製造方法を使用することにより、ゴムローラの端面には、製造初期から終了時までゴムかす等の付着はなく、12000本製造後でも非常に良好な結果が得られたことが分かる。すなわち、未加硫ゴムローラを把持する際、軸体の端面に把持治具が接触しないため、ゴム材料が軸体の端面からはみ出して把持治具により擦り付けられることがないことが確認できた。また、ゴムかすの付着がなく、安定した品質のゴムローラを製造できることを確認できた。
【0067】
把持治具については、実施例1、2では1000本成型後からわずかにゴムかす残りが観察されたが、12000本成型してもゴムかす汚れは大きくならなかった。このため、簡単な清掃機構を設けることでこのゴムかす汚れは容易に除去でき、把持治具を長期間、差し支えなく使用できることを確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明のゴムローラの製造方法の工程(1)の一例を示す図である。
【図2】本発明のゴムローラの製造方法の工程(2)の一例を示す図である。
【図3】本発明で使用する加熱炉の一例の断面図である。
【図4】実施例1のゴムローラ把持治具の概念図である。
【図5】実施例1のゴムローラ把持形態の概念図である。
【図6】実施例2のゴムローラ把持治具の概念図である。
【図7】実施例2のゴムローラ把持形態の概念図である。
【図8】比較例1のゴムローラ把持治具の概念図である。
【図9】比較例1のゴムローラ把持形態の概念図である。
【符号の説明】
【0069】
1 接着剤塗布済み軸体
2 軸体供給機構
3 ゴム押出し機
4 クロスヘッドダイ
5 ゴムローラ引き取り・切断機構
6 未加硫ゴムローラ
7 未加硫ゴムローラの把持・搬送機構
8 連続加硫・冷却炉
9 ゴムローラ両端部のゴム切断機構
10 加硫ゴムローラ
11 ゴムローラ把持治具
12 チェーン式コンベア
13 スプロケット
14 加熱炉
15 冷却炉
16 磁石

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)少なくとも軸体と、前記軸体の外周面上に未加硫のゴム材料を配置した未加硫ゴムローラを準備する工程と、
(2)把持治具により前記未加硫のゴム材料の部分を把持しながら、前記未加硫ゴムローラを加熱炉内を移動させることにより、前記未加硫のゴム材料を加硫して弾性層を形成する工程と、
(3)前記把持治具により把持した弾性層の部分を除去する工程と、
を有することを特徴とするゴムローラの製造方法。
【請求項2】
前記工程(1)と(2)の間に更に、把持治具で把持する未加硫のゴム材料の部分に離型処理を施す工程を有することを特徴とする請求項1に記載のゴムローラの製造方法。
【請求項3】
前記把持治具は、その表面が表面処理を施されたものであることを特徴とする請求項1又は2に記載のゴムローラの製造方法。
【請求項4】
前記表面処理は、離型剤を塗布する方法、及び、フッ素系樹脂を含有するポリエーテルエーテルケトン樹脂を前記把持治具の表面へコーティングする方法のうち、少なくとも一方の方法であることを特徴とする請求項3に記載のゴムローラの製造方法。
【請求項5】
前記工程(1)は、
複数の前記軸体を、1本ずつ互いの端面が接するように押出成形機のクロスヘッドダイ内を連続的に通過させ、前記軸体のクロスヘッドダイ内の通過時に前記軸体の外周面上に未加硫のゴム材料を供給することにより、前記クロスヘッドダイから、未加硫のゴム材料で被覆した軸体を共押出する工程と、
前記軸体の外周面上を被覆した前記未加硫のゴム材料を、前記軸体の端面上で切断する工程と、
を有することを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載のゴムローラの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−96085(P2009−96085A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−270149(P2007−270149)
【出願日】平成19年10月17日(2007.10.17)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】