説明

ゴムローラ及びゴムローラの製造方法

【課題】 芯金の外周にゴム組成物からなる弾性体層を設けてなるゴムローラの接触面における接着性に優れ、かつ弾性体層表面において場所によらず均一な電気的特性が得られ、更に耐久性に優れたゴムローラの製造方法であり、より簡便かつ省スペース・低コストなゴムローラの製造方法、及び該ゴムローラの製造方法により得られたゴムローラを提供することにある。
【解決手段】 芯金外周上に接着された少なくとも1層以上のゴム組成物からなる弾性体層を有するゴムローラの製造方法であって、100℃〜200℃で予備加熱された芯金に接着剤を塗布する工程と、該芯金と該ゴム組成物を接着させる工程と、を有することを特徴とするゴムローラの製造方法、及び該ゴムローラの製造方法により得られたことを特徴とするゴムローラ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴムローラ及びその製造方法に関し、特に電子写真等の画像形成装置に用いられる帯電ローラや転写ローラ等のゴムローラの製造方法及び該方法により得られたゴムローラに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、複写機やプリンター等の電子写真方式の画像形成装置では、電子写真感光体の表面を均一に帯電させ、この電子写真感光体に光学系から映像を投射して、光の当たった部分の帯電を消去することによって潜像を形成し、次いで、トナーの付着によるトナー像の形成(現像)、転写紙等の記録媒体へのトナー像の転写により、プリントする方法がとられている。このような帯電部材や転写部材として、各種導電性ローラが使用されている。
【0003】
このような導電性ゴムローラ用の導電性ゴム組成物としては、EPDM等のゴム成分中に導電性カーボンブラック等の導電性フィラーを分散させた導電性ゴム組成物や更には、より均一な電気抵抗をもつ導電性ゴムローラを得るために、ある程度電気抵抗の低いゴム成分を使用した(例えば、エピクロルヒドリン系ゴムやNBR)導電性ゴム組成物が知られている。
【0004】
ところで、これらの導電性ゴムローラを製造する場合、以下のような方法が知られている。未加硫の導電性ゴム組成物を押出し機でチューブ状に成形し、水蒸気加硫缶や熱風炉やマイクロ波加硫装置等で加硫を行い、得られた導電性ゴムチューブに接着剤を塗布した芯金を圧入することによって目的のローラをチューブ圧入方式で得る方法や、低コスト化のために押出し機を用いて未加硫の該ゴム組成物を押出すと同時に、連続的に該導電性軸体を押出し機のクロスヘッドダイを通過させて、接着剤を塗布した芯金の外周上に未加硫の導電性ゴム組成物を配置せしめローラ形状にした後、加硫工程を経て製造する方法が知られている。
【0005】
更に、均一帯電や均一転写を求められるため、導電性ゴムローラは抵抗ムラを減少させる必要があり、導電性弾性層は、ローラ形状精度が求められる。そのため、円筒研削盤で導電性ゴムローラの該ゴム組成物層を研磨することにより目的の精度を出す方法が知られている。
【0006】
しかし、これらのゴムローラは材料によっては、高温多湿の環境下において、弾性体層が膨張し芯金から浮き上がってしまい接着不良になったり、接着力不足のため研磨時のストレスによるビビリが発生してしまい、画像不良の原因となっている。
【0007】
そこで、前記のような問題を解決するために、芯金外周上に接着剤を塗布した後、焼付けてから使用する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。しかし、焼付けてから使用する方法だと、接着剤の耐熱性から焼付け温度の条件が制限され、また室温から昇温させるために焼付け時間が長くなってしまう。また焼付け工程中に芯金同士が触れないようにしなければならない。また、焼付け時間が長過ぎても接着剤が劣化し、接着力が低下するため、一本ごとに時間・温度の管理が必要とされる。そのため製造工程上不利である。
【特許文献1】特開平10−293440号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、このような事情を背景になされたものであって、その解決課題とするところは、芯金の外周にゴム組成物からなる弾性体層を設けてなるゴムローラの接触面における接着性に優れ、かつ弾性体層表面において場所によらず均一な電気的特性が得られ、更に耐久性に優れたゴムローラの製造方法であり、より簡便かつ省スペース・低コストなゴムローラの製造方法、及び該方法により得られたゴムローラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に従って、芯金外周上に接着された少なくとも1層以上のゴム組成物からなる弾性体層を有するゴムローラの製造方法であって、100℃〜200℃で予備加熱された芯金に接着剤を塗布する工程と、該芯金と該ゴム組成物を接着させる工程と、を有することを特徴とするゴムローラの製造方法が提供される。
【0010】
また、本発明に従って、画像形成装置に用いられるゴムローラであって、上記ゴムローラの製造方法により得られたことを特徴とするゴムローラが提供される。
【発明の効果】
【0011】
以上に述べたところから明らかなように、本発明によれば、芯金外周上に接着剤を塗布する時に、芯金温度が100℃〜200℃になるようにすることにより、芯金外周上に接着剤を塗布後、芯金の外周上に未加硫の導電性ゴム組成物を配置せしめローラ形状にする前に、外周上に接着剤を塗布した芯金を加熱する工程を省き、芯金の外周にゴム組成物からなる弾性体層を設けてなるゴムローラの弾性体層と芯金間における接着性に優れ、かつ弾性体層において場所によらず均一な電気的特性が得られ、更に耐久性に優れたゴムローラの製造方法であり、また簡便かつ省スペース・低コストなゴムローラの製造方法を提供することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0013】
本発明にかかるゴムローラの製造方法は、芯金外周上の外周上に接着された少なくとも1層以上のゴム組成物からなる弾性体層を有するゴムローラの製造方法において、100℃〜200℃で予備加熱された芯金に接着剤を塗布する工程と、芯金と該ゴム組成物を接着させる工程と、を有するゴムローラの製造方法である。
【0014】
すなわち本発明の大きな特徴は、芯金に接着剤を塗布する前に芯金を100℃〜200℃で予備加熱することにより、焼付け工程を省いたことである。芯金温度が100℃未満では予備加熱をしない場合と同じように接着剤剥がれや研磨時のビビリが起こってしまい、200℃を超えてしまうと接着剤が劣化してしまうため、接着性が低下する。上記接着剤塗布前の芯金の温度は100℃〜170℃が好ましく、より好ましくは110℃〜130℃である。芯金の温度が上記範囲内であればよく、加熱の時間に関しては任意である。
【0015】
本発明にかかるゴムローラの弾性体層のゴム組成物は、エピクロルヒドリン系ゴムを含有することが好ましい。
【0016】
少なくともエピクロルヒドリン系ゴムを含有させたのは、前述のように各種ゴムの中でも低抵抗のゴムとして知られているエピクロルヒドリン系ゴムを含有させることにより、抵抗調整のためにカーボンブラック等の導電剤の添加が特に少なくてすみ、より抵抗の安定したゴムが得られるからである。しかしながら、エピクロルヒドリン系ゴムは高温多湿の環境下で弾性体層が膨張してしまい、弾性体層が芯金から浮き上がってしまい接着不良になるが、本発明により改善することができる。
【0017】
本発明において用いる接着剤は、希釈溶媒として少なくとも低級アルコール類又はケトン類を含有することが好ましい。低級アルコール類としては、メタノールやエタノール等が挙げられ、ケトン類としてはメチルエチルケトンやメチルイソブチルケトン等が挙げられる。
【0018】
ゴム組成物と芯金とを接着させる接着剤には、合成樹脂や導電性を持たせるためのフィラー等が含有されており、それらの溶解又は分散させるのに適した溶媒として、低級アルコール類やケトン類が広く用いられている。このような溶媒を用いた場合、接着剤層と芯金の間に擬似水素結合が形成されるが、接着剤溶媒中のケトン類や低級アルコール類が水と馴染み易いため、その水分によってこの結合が破壊され、その部分で接着不良が起こると考えられているが、本発明の芯金に100℃〜200℃の予備加熱をすることにより接着不良を防止する効果が顕著に発揮することができる。
【0019】
本発明において、接着剤を塗布させた芯金をクロスヘッドダイを通過させると共に未加硫のゴム組成物を押出し、芯金外周上にゴム組成物を配置した後に100℃〜250℃で加熱することにより、ゴム組成物の加硫とゴム組成物−芯金の接着とを同時に行うことが好ましい。
【0020】
ゴムローラの弾性体層の形成方法としては、様々な種類があるが、画像形成装置用部材として求められる電気的特性や寸法精度を満たすために適したものであれば任意に選択できる。ゴム組成物をチューブ状に押出し、加硫後に芯金に圧入する方法や押出し機を用いて未加硫の該ゴム組成物を押出すと同時に、連続的に該導電性軸体を押出し機のクロスヘッドダイを通過させて、接着剤を塗布した芯金の外周上に未加硫の導電性ゴム組成物を配置せしめローラ形状にした後、加硫工程を経て製造する方法がある。ゴムローラの製造としては後者の方が、製造ラインの省スペース化や連続化に適しているため好ましい。加硫方法についても水蒸気加硫缶や熱風炉等の様々な方法が知られているが、水蒸気加硫缶よりも熱風炉の方が連続化に好ましい。
【0021】
なお本発明に使用するゴム−金属間の接着剤は、特に限定するものではないが、フェノール系、エポキシ系、ポリオレフィン系の加硫接着剤、ホットメルト系の接着剤等が挙げられ、特にフェノール系の加硫接着剤が好ましい。
【実施例】
【0022】
以下に本発明について実施例及び比較例を挙げて、より具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、実施例中の「部」は「質量部」を意味する。
【0023】
「芯金への接着剤塗布」
N15[フェノール系、(株)東洋化学研究所製]はメチルエチルケトンで等量希釈し、Ty−ply BN[ロードファーイースト社製]はメチルエチルケトン/メタノール=1/1で等量希釈し、無電解ニッケルメッキを施した直径6mm、長さ240mmの鋼鉄製芯金に塗布した。実施例1、2、3は芯金温度がそれぞれ180℃、150℃、120℃になるまで予備加熱した後、接着剤N15を塗布し、実施例4、5、6は芯金温度がそれぞれ180℃、150℃、120℃になるまで予備加熱した後、接着剤Ty−ply BNを塗布した。
【0024】
比較例1は予備加熱していない芯金に接着剤N15を塗布し、比較例2は予備加熱していない芯金に接着剤Ty−ply BNを塗布し、比較例3は予備加熱していない芯金に接着剤N15を塗布し、電気炉で120℃にて3分間焼付けし、比較例4は予備加熱していない芯金に接着剤N15を塗布し、電気炉で120℃にて20分間焼付けした。比較例5は芯金温度が210℃になるまで予備加熱した後、接着剤N15を塗布し、比較例6は芯金温度が90℃になるまで予備加熱した後、接着剤N15を塗布した。
【0025】
今回用いた接着剤の詳細を表1に示す。
【0026】
【表1】

【0027】
「ゴム組成物の作製」
エピクロルヒドリンゴム[商品名:エピクロマーCG102 ダイソー株式会社製] 100部
酸化亜鉛[商品名:酸化亜鉛第2種 ハクスイテック株式会社製] 5部
ステアリン酸[商品名:ステアリン酸S 花王株式会社製] 1部
カーボンブラック[商品名:旭♯15 旭カーボン株式会社製] 5部
炭酸カルシウム[商品名:シルバーW 白石工業株式会社製] 40部
ジベンゾチアジルジサルファイド[商品名:ノクセラーDM 大内新興化学株式会社製] 1部
テトラメチルチウラムモノスルフィド[商品名:ノクセラーTS 大内新興化学株式会社製] 1部
硫黄[商品名:サルファックス200S 鶴見化学株式会社製] 1部
を密閉型混練機及びオープンロール機を用いて混練を行うことにより未加硫のゴム組成物を得た。
【0028】
「ゴムローラの作製」
押出し機を用いて、上記のように作製した未加硫ゴム組成物を押出すと同時に、連続的に予備加熱した後、接着剤を塗布した芯金を連続的にクロスヘッドダイを通過させることにより芯金外周上に未加硫のゴム組成物を配置せしめローラ形状にした。それを熱風炉にて180℃にて1時間加熱することにより加硫ゴム層を有する外径12mmのゴムローラを作製した。更に、両端部から15mm位置にカッター刃を入れて両端部のゴム層を剥離した後、研削機にて研磨し、外径9mmのゴムローラを得た。
【0029】
<評価方法>
弾性体層のはがれに関しては、研磨後24時間放置したローラの弾性体層をカッター刃でゴムローラの長手方向に切り込みを入れ、ペンチでゴムローラ1本当たり10ヶ所弾性体層を芯金から引き剥がし、ビデオマイクロ20倍にて最大径が100μm以上の剥離の数をそれぞれ各10本ずつ目視観察し、下記のようにランク評価した:
◎:10本中全て剥離なし
○:10本中1mm未満の剥離が3ヶ所以内
△:10本中1mm以上3mm未満の剥離が10ヶ所以内
×:10本中3mm以上の剥離がある若しくは100μm以上の剥離が無数にあるゴムローラがある
【0030】
研磨時のビビリに関しては、研磨後24時間放置したものを各10本ずつ目視観察し、下記のようにランク評価した。
【0031】
◎:10本中全てがビビリなし
○:10本中1〜2本ビビリがあるがビビリが軽微なもの
△:10本中3〜5本がビビリがあるがビビリが軽微なもの
×:10本中6本以上がビビリがある若しくはビビリがひどいものが1本でもある
【0032】
実施例及び比較例の評価結果を表2に示す。
【0033】
【表2】

【0034】
表2により芯金外周上に接着された少なくとも1層以上のゴム組成物からなる弾性体層を有するゴムローラの製造方法において、100℃〜200℃で予備加熱された芯金に接着剤を塗布する工程と、芯金と該ゴム組成物を接着させる工程と、を有するゴムローラの製造方法で作製されたものは弾性体層の剥がれ・研磨時のビビリに効果が得られている。
【0035】
比較例4は芯金への接着剤を塗布した後に、120℃にて20分間の焼付け工程を設けることにより弾性体層の剥がれ・研磨時のビビリを抑えることができたが、長時間の焼付け工程が必要であるので、製造コスト・製造スペースにおいて不利である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯金外周上に接着された少なくとも1層以上のゴム組成物からなる弾性体層を有するゴムローラの製造方法であって、100℃〜200℃で予備加熱された芯金に接着剤を塗布する工程と、該芯金と該ゴム組成物を接着させる工程と、を有することを特徴とするゴムローラの製造方法。
【請求項2】
前記ゴム組成物がエピクロルヒドリン系ゴムを含有する請求項1に記載のゴムローラの製造方法。
【請求項3】
前記接着剤の希釈溶媒として少なくとも低級アルコール類又はケトン類を含有する請求項1又は2に記載のゴムローラの製造方法。
【請求項4】
前記接着剤を塗布した芯金の外周上で前記ゴム組成物の加硫を行う請求項1〜3のいずれかに記載のゴムローラの製造方法。
【請求項5】
前記接着剤を塗布させた芯金をクロスヘッドダイを通過させると共に未加硫のゴム組成物を押出し、該芯金外周上にゴム組成物を配置した後に100℃〜250℃で加熱することにより、ゴム組成物の加硫とゴム組成物−芯金の接着とを同時に行う請求項1〜4のいずれかに記載のゴムローラの製造方法。
【請求項6】
画像形成装置に用いられるゴムローラであって、請求項1〜5のいずれかに記載のゴムローラの製造方法により得られたことを特徴とするゴムローラ。

【公開番号】特開2006−168125(P2006−168125A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−362679(P2004−362679)
【出願日】平成16年12月15日(2004.12.15)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】