説明

ゴムローラ

【課題】ゴム層と軸体との接着性に由来する不良発生や品質の低下を抑制したゴムローラを提供する。
【解決手段】表面に少なくともニッケル原子を含むメッキ皮膜を有する軸体と、前記軸体の外周面上に硫黄又は分子構造に硫黄原子を含む加硫剤を添加した未加硫ゴム組成物を加硫して形成されたゴム層を有するゴムローラにおいて、前記メッキ皮膜が、ニッケル以外の成分を7質量%未満含有するものであることを特徴とするゴムローラ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンターおよびファクシミリ等に代表される電子写真装置や静電記録装置などの画像形成装置に使用される帯電ローラ、現像ローラ、転写ローラ等の導電性ゴムローラおよび一般ゴムローラに関する。
【背景技術】
【0002】
プリンターおよびファクシミリ等の電子写真装置には帯電ローラ、現像ローラ、転写ローラ等、多数のゴムローラが用いられている。これらのゴムローラは、軸体とその外周面上に形成される1層あるいは2層以上の加硫ゴム層で構成されるのが一般的である。
【0003】
上記用途に用いられるローラの軸体は、通常、金属製で、表面にメッキを施される。メッキとしては、黄銅メッキ、亜鉛メッキ等、多数存在するが、中でもニッケルメッキが多く使用されている。ニッケルメッキには、電気化学反応を利用した電解ニッケルメッキと電気を使用せず、メッキ液中に含まれる還元剤によって金属イオンを還元析出させる無電解ニッケルメッキがある。無電解ニッケルメッキの特徴の1つは、メッキ液中の還元剤の種類によって皮膜中に混入する元素が異なることである。例えば、次亜リン酸化合物を還元剤とした場合は、リンが混入し、水素化ホウ素化合物を還元剤とした場合は、ホウ素が混入する。一方、ヒドラジンやホルマリンのような還元剤を用いた場合には、ニッケル以外の元素がほとんど混入しない場合もある。これらのメッキは生産性やコスト、製品に要求される特性に応じて適したものが選ばれる。
【0004】
上記のような軸体の外周面上に加硫ゴム層を固定する方法としては、接着剤を用いる方法が一般的である。例えば、ゴム層を形成する軸体の部位にあらかじめ接着剤を塗布し、加硫ゴム層又は未加硫ゴム層を該部位に被覆した後、加熱等の接着工程を経て固定する。安定かつ強固な接着を得るには、軸体の外周面と使用するゴム材料の両方に相性の良い接着剤を選定する必要があり、種類が限定される。また、接着性に優れた接着剤であっても塗布厚みが不均一な場合や、工程内で接着剤塗膜が剥離した場合には、接着不良につながるといった問題がある。さらに接着剤は、安定した加工性を得るために、通常、有機溶剤で適宜希釈して使用されるので環境面での配慮が必要となる。
【0005】
上記問題の対策として、例えば、無電解ニッケルメッキを施した軸体外周面上に直接未加硫ゴム層を形成して加硫を施すことにより未加硫ゴム層を加硫ゴム層化すると同時に上記無電解ニッケルメッキ皮膜に接着する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。しかしこの方法では、軸体外周面に施すメッキ条件やメッキターン数によって接着性に大きなバラツキが生じ、メッキ皮膜がゴム層側に取られて一部あるいは全体が剥離して良好な接着性が得られない場合があった。一方、同特許文献によれば、無電解ニッケルメッキ皮膜は、リンを7〜11質量%程度含み残部がニッケルからなるものが好ましいとされており、これを満たさない無電解ニッケルメッキについては特に検討されていない。
【0006】
【特許文献1】特開昭63−300041号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、軸体とゴム層との接着性に由来する不良発生や品質の低下を抑制したゴムローラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは軸体に施されるニッケルメッキ皮膜の組成に着目して鋭意検討を行なった結果、ニッケル以外の成分の含有量が少ないほどメッキ皮膜と加硫ゴム層との間で強固な接着を得られることを見出し本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、表面に少なくともニッケル原子を含むメッキ皮膜を有する軸体と、硫黄又は分子構造に硫黄原子を含む加硫剤を添加した未加硫ゴム組成物層を加硫して形成されたゴム層を前記軸体の外周面上に有するゴムローラにおいて、前記メッキ皮膜が、ニッケル以外の成分を7質量%未満含有することを特徴とするゴムローラである。
【発明の効果】
【0009】
軸体の表面にニッケル以外の成分を7質量%未満含有するメッキ皮膜を設けることにより、軸体と該軸体の外周面上に設けるゴム層とを強固に接着することができ、接着性に由来するゴムローラの不良発生や品質の低下を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明においては、まず、表面に少なくともニッケル原子を含むメッキ皮膜を有する軸体を準備する。該メッキ皮膜は、ニッケル以外の成分を7質量%未満含有するものである必要がある。ニッケル以外の成分を7質量%未満含有するメッキ皮膜を表面に有する軸体を使用すると、該軸体の外周面上に硫黄又は分子構造に硫黄原子を含む加硫剤を添加した未加硫ゴム組成物を加硫してゴム層を形成したとき、該軸体と該ゴム層との間で良好な接着性が得られる。該軸体上のメッキ皮膜が、ニッケル以外の成分を7質量%以上含有するものであると、該軸体とその外周面上に形成したゴム層との間で良好な接着性が得られない。このため、例えば、ゴム層を剥離しようとすると部分的にメッキ皮膜の一部とともにはがれる個所が現れる。この現象はメッキ皮膜中にニッケル以外の成分が多いほど顕著であり、ニッケル以外の成分が約9質量%を超えたメッキ皮膜ではゴム層全体がメッキ皮膜の一部とともにきれいに剥離される。これに対し、メッキ皮膜中にニッケル以外の成分が7質量%未満含有される場合においてはこのような接着不良は発生せず、軸体の外周面上全体にわたってゴム層と強固な接着を得ることができる。
【0011】
本発明のような、表面に少なくともニッケル原子を含むメッキ皮膜を有する軸体と、硫黄又は分子構造に硫黄原子を含む加硫剤を添加した未加硫ゴム組成物を加硫して形成されたゴム層と前記軸体の外周面との接着は、以下のようにして発現すると考えられる。すなわち、メッキ皮膜中のニッケル原子と、未加硫ゴム組成物層中に含まれる硫黄原子が加熱加硫中に化学反応を起こすことにより接着が達成されると考えられる。一方、メッキ皮膜の組成はその条件やメッキターン数によって変化し、これによってメッキ皮膜の結晶特性が変化する。例えば、メッキ皮膜が無電解ニッケル−リンメッキにより形成されたものである場合、リン含有量が8質量%未満では、メッキ皮膜中のニッケルは微晶質状態で析出するが、それ以上では、ニッケルは非晶質で析出する。したがって該ニッケル皮膜中にニッケル以外の成分が8質量%以上混入していると、メッキ皮膜が非晶質であるために脆くなると推測され、ゴム層中の硫黄と化学反応してもメッキごと剥離されると考えられる。以上のことから、メッキ皮膜が無電解ニッケル−リンメッキにより形成されたものである場合、メッキ皮膜中のニッケル以外の成分の含有量が8質量%未満であれば本発明の効果が現れる。前記無電解ニッケル−リンメッキ皮膜、その他のメッキ皮膜において本発明の効果をより確実に得るにはニッケル以外の成分を7質量%未満とすることが好ましい。
【0012】
上記軸体表面に形成されるニッケル原子を含むメッキ皮膜は無電解ニッケルーリンメッキ、無電解ニッケルーホウ素メッキ、あるいは電解ニッケルメッキによって形成したものが好ましく、生産性、コストおよび製品に要求される特性に応じて適したものが選ばれる。中でも電解ニッケルメッキではメッキ液に添加する薬品を適宜選択することにより、ニッケル以外の成分がほとんど混入しないメッキ皮膜を得ることが容易である。無電解メッキ法でも還元剤を選択することにより、メッキ皮膜中にニッケル以外の成分の混入を抑えることは可能であるが、使用される還元剤がホルマリンやヒドラジンといった有害性物質のため実用性に乏しい。したがって、少なくとも0.1質量%以上のニッケル以外の成分が混入するが、メッキ皮膜としては、無電解ニッケルメッキ、例えば、無電解ニッケル−リンメッキあるいは無電解ニッケル−ホウ素メッキにより形成されるものが好ましい。
【0013】
本発明に使用される未加硫ゴム組成物に添加される加硫剤としては、硫黄原子が含まれるものであれば特に制限されるものではなく従来公知のものが使用される。すなわち硫黄と加硫促進剤を組み合わせて使用したり、あるいは硫黄を使用せずに分子構造中に硫黄原子を含む加硫剤を用いる方法がある。
【0014】
硫黄としては例えば、粉末硫黄、沈降性硫黄、高分散性硫黄、表面処理硫黄、不溶性硫黄等が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの添加量は、未加硫ゴム組成物に含まれるゴム成分100質量部に対して、0.1質量部〜5.0質量部であるのが好ましい。
【0015】
分子中に硫黄原子を含む加硫剤としては、例えば、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムジスルフィド等のチウラム系加硫促進剤、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジ−n−ブチルジチオカルバミン酸亜鉛等のジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤の他、2−(4’−モルホリノジチオ)ベンゾチアゾール、4,4’−ジチオジモルホリン等が挙げられる。添加量はゴムローラに要求される特性を満たしていれば特に制限されるものではないが、通常、未加硫ゴム組成物に含まれるゴム成分100質量部当たり0.05質量部〜5質量部の間で好ましく使用される。
【0016】
上記未加硫ゴム組成物としては、硫黄又は分子中に硫黄原子を含む加硫剤を添加したものであれば特に制限されるものではない。例えば、エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム(EPDM)、天然ゴム(NR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、エピクロルヒドリン系ゴム(CO、ECO、GECO)およびアクリルゴム(ACM)等、どのようなゴム成分を主成分とする未加硫ゴム組成物であっても差し支えなく使用できる。
【0017】
本発明に用いる軸体は特に制限されるものではなく、中空状あるいは中実状であっても差し支えなく使用できる。また材質についても特に制限されるものではなく、鉄製あるいは鋼製等、ゴムローラ製造用として従来公知のものが使用できる。
【0018】
本発明のゴムローラのゴム層は、前記表面に少なくともニッケル原子を含むメッキ皮膜を有する軸体の外周面上に形成した前記硫黄又は加硫剤を添加した未加硫ゴム組成物層を加硫することにより形成されたものであることが好ましい。前記軸体上に前記硫黄又は加硫剤を添加した未加硫ゴム組成物層を形成する手段としては特に制限されるものではないが、製造ラインの連続化あるいは製造コストを抑えるといった観点から、次の手段を用いることが好ましい。前記未加硫ゴム組成物を押出すと同時に前記軸体を押出機のクロスヘッドダイに連続的に通過させて該軸体の外周面上に該未加硫ゴム組成物層を形成する手段を経て製造されることが好ましい。すなわち、前記硫黄(又は加硫剤)を含む未加硫ゴム組成物を押出機を用いて押出すと同時に、前記軸体を連続的に該押出機に備えられたクロスヘッドダイに通過させて該軸体の外周面上に該未加硫ゴム組成物層を形成させてローラ形状にする。そして、該未加硫ゴム組成物層を加硫してゴム層を形成する方法が特に好ましい。また軸体の外周面上に形成した前記硫黄又は加硫剤を添加した未加硫ゴム組成物層の加硫方法については特に制限されるものではなく、熱風炉加硫、遠赤外線加硫等、従来公知の方法で行なうことができる。また前記硫黄又は加硫剤を添加した未加硫ゴム組成物を被覆した軸体を金型キャビティ内に充填して加硫させる方法でも差し支えない。
【実施例】
【0019】
次に本発明について実施例を挙げてより詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。また、本実施例において、他の内容を示すことが明示されていないかぎり、「部」は「質量部」を、「%」は、「質量%」を表す。
【0020】
(メッキ皮膜を有する軸体の作製)
〔軸体作製例1〕
直径6mm、長さ240mmの鋼鉄製軸体を用意した。別途、硫酸ニッケル(硫酸ニッケル六水和物 特級、関東化学(株)製)0.1mol/l、次亜リン酸ナトリウム(次亜リン酸ナトリウム一水和物、特級、関東化学(株)製)0.1mol/lおよびクエン酸ナトリウム(クエン酸三ナトリウム二水和物 特級、関東化学(株)製)0.4mol/lに調整したメッキ液を、80℃に保ちながら攪拌し、硫酸(硫酸 特級、関東化学(株)製)および水酸化ナトリウム(水酸化ナトリウム 特級、関東化学(株)製)を用いてpHを8.0に調整した。ここに、前記鋼鉄製軸体を20分浸漬することにより 前記軸体の表面に層厚5μmのメッキ皮膜を形成して軸体Aを得た。
【0021】
〔軸体作製例2〕
硫酸ニッケル濃度を0.05mol/l、pHを6.5としたこと以外は軸体作製例1と同様にして軸体Bを得た。
【0022】
〔軸体作製例3〕
硫酸ニッケル(硫酸ニッケル六水和物 特級、関東化学(株)製)0.1mol/l、水素化ホウ素ナトリウム(水素化ホウ素ナトリウム、関東化学(株)製)0.1mol/lおよびクエン酸ナトリウム(クエン酸三ナトリウム二水和物 特級、関東化学(株)製)0.4mol/lに調整したメッキ液を、80℃に保ちながら攪拌し、硫酸(硫酸 特級、関東化学(株)製)および水酸化ナトリウム(水酸化ナトリウム 特級、関東化学(株)製)を用いてpHを7.0に調整した。ここに、前記鋼鉄製軸体を30分浸漬することによりメッキを行ったこと以外は軸体作製例1と同様にして軸体Cを得た。
【0023】
〔軸体作製例4〕
硫酸ニッケル 1.5mol/l、塩化ニッケル(塩化ニッケル六水和物 特級、関東化学(株)製)0.5mol/lおよびホウ酸(ホウ酸 特級、関東化学(株)製)0.5mol/lを40℃に保ちながら攪拌し、硫酸を用いてpH3.0に調整した。そして鋼鉄製軸体を浸漬させて、電流密度 3A/dm2 の条件下でメッキを行ったこと以外は軸体作製例1と同様にして軸体Dを得た。
【0024】
〔軸体作製例5〕
pH8.0としたこと以外は軸体作製例1と同様にして軸体Eを得た。
【0025】
〔軸体作製例6〕
pH9.0としたこと以外は軸体作製例1と同様にして軸体Fを得た。
【0026】
〔軸体作製例7〕
pH10.0としたこと以外は軸体作製例1と同様にして軸体Gを得た。
【0027】
〔軸体作製例8〕
ホウ素含有量が7.0%以上のメッキを作成する為に、水素化ホウ素ナトリウムの添加量を0.5mol/lに増量して軸体作成を試みたが、水素化ホウ素ナトリウム自体が不安定な薬品である為にメッキ反応中に失活したためか、メッキ皮膜中には1.8%程度しか混入せず、所望の軸体を得ることができなかった。
【0028】
〔メッキ皮膜の分析〕
上記軸体作製例にて得られたメッキ皮膜を有する軸体を、メタニトロベンゼンスルホン酸―エチレンジアミン―水酸化ナトリウム水溶液に溶解剥離することでサンプリングし、被験試料とした。高周波プラズマ発光分析装置(ICP)にて、これら被験試料に含有される元素の定量分析を行った。得られた結果を表1に示す。なお、表1には主混入元素として、検出された元素のうち、メッキ皮膜組成として0.1質量%以上のものについて記載した。
【0029】
(硫黄および加硫剤を添加した未加硫ゴム組成物の調製例)
(未加硫ゴム組成物調製例1)
次の原材料を準備した。
・エピクロルヒドリンゴム 100部
[商品名:エピクロマーCG102 ダイソー株式会社製]
・酸化亜鉛 5部
[商品名:酸化亜鉛2種 ハクスイテック株式会社製]
・ステアリン酸 1部
[商品名:ステアリン酸S 花王株式会社製]
・カーボンブラック 5部
[商品名:旭#15 旭カーボン株式会社製]
・炭酸カルシウム 40部
[商品名:シルバーW 白石工業株式会社製]
・ジベンゾチアジルジサルファイド 1部
[商品名:ノクセラーDM 大内新興化学株式会社製]
・テトラメチルチウラムモノスルフィド 1部
[商品名:ノクセラーTS 大内新興化学株式会社製]
・硫黄 1部
[商品名:サルファックス200S 鶴見化学株式会社製]
密閉型混練機(7L加圧式ニーダー、(株)モリヤマ製)を用いて加硫剤および加硫促進剤以外の原材料を混練した。まずローター回転数30rpmで、ポリマーのみを1分間素練りし、次いでフィラー類およびオイルを投入して15分間混練りした。こうして得られたゴム組成物の温度は96℃であった。このゴム組成物を室温(25℃)で12時間冷ましたあと、更に、オープンロール機(12inchテスト用ロール機、関西ロール(株)製)を用い、加硫剤および加硫促進剤を混練した。フロントロール15rpm、バックロール18rpmで、適宜切返しながら15分間混練することにより未加硫ゴム組成物GC1を得た。このときの混練後のゴム組成物の温度は52℃であった。
【0030】
(未加硫ゴム組成物調製例2)
次の原材料を準備した。
・エチレン―プロピレン―非共役ジエン共重合ゴム 100部
[商品名:EPT−4070 三井化学株式会社製]
・酸化亜鉛 5部
[商品名:酸化亜鉛2種 ハクスイテック株式会社製]
・ステアリン酸 1部
[商品名:ステアリン酸S 花王株式会社製]
・カーボンブラック 30部
[商品名:旭#15 旭カーボン株式会社製]
・炭酸カルシウム 20部
[商品名:シルバーW 白石工業株式会社製]
・パラフィンオイル 50部
[商品名:ダイアナプロセスオイルPW−380 出光興産株式会社製]
・ジベンゾチアジルジサルファイド 1部
[商品名:ノクセラーDM 大内新興化学株式会社製]
・テトラメチルチウラムモノスルフィド 1部
[商品名:ノクセラーTS 大内新興化学株式会社製]
・硫黄 1部
[商品名:サルファックス200S 鶴見化学株式会社製]
密閉型混練機(7L加圧式ニーダー、(株)モリヤマ製)を用いて加硫剤および加硫促進剤以外の原材料を混練した。まずローター回転数30rpmで、ポリマーのみを1分間素練りし、次いでフィラー類およびオイルを投入して15分間混練りした。こうして得られたゴム組成物の温度は128℃であった。このゴム組成物を室温(25℃)で12時間冷ましたあと、更に、オープンロール機(12inchテスト用ロール機、関西ロール(株)製)を用い、加硫剤および加硫促進剤を混練した。フロントロール15rpm、バックロール18rpmで、適宜切返しながら15分間混練することにより未加硫ゴム組成物GC2を得た。このときの混練後のゴム組成物の温度は54℃であった。
【0031】
(実施例1)
未加硫ゴム組成物GC1をクロスヘッドダイを備えた押出機(70mm一軸ベント型押出機、三葉製作所製)に供給した。この未加硫ゴム組成物GC1を押出機の温調設定60℃、スクリュー回転数5.0rpmで円柱状に押出すと同時に軸体Aを連続的に該押出機のクロスヘッドダイを通過させることにより軸体Aの外周面上に未加硫ゴム組成物GC1の層を形成した。軸体の両端部に被覆された未加硫ゴム組成物GC1の層にカッター刃を入れて両端部各10mm相当部分を切り取り軸体を露出させてローラ軸受け部分を作製した。得られたローラを、熱風炉にて180℃×1h加熱することにより加硫ゴム層を有するゴムローラを作製した。
【0032】
(実施例2〜4および比較例1〜3)
各実施例および比較例のための軸体B〜Gの各々を用いたこと以外は、上記実施例1と同様にして各々のゴムローラを作製した。
【0033】
(実施例5−8、比較例5−7)
未加硫ゴム組成物GC2をクロスヘッドダイを備えた押出機に供給し、該未加硫ゴム組成物GC2を押出機の温調設定60℃、スクリュー回転数5.0rpmで円柱状に押出すと同時に各実施例および比較例のための軸体A〜Hの各々を連続的に該押出機のクロスヘッドダイを通過させたこと以外は、実施例1と同様にして各々のゴムローラを作製した。
【0034】
(比較例4、8)
上述したように、軸体Hは実用上使用可能な性状のメッキ皮膜を有するものではなかった。このため、未加硫ゴム組成物GC1および2の各々と軸体Hとを用いたゴムローラの作製を行うことができなかった。
【0035】
(ゴムローラの評価方法)
上記実施例および比較例の各々で作製したゴムローラ5本について加硫ゴム層をペンチでゴム層を剥離し、軸体とゴム層との接着性を評価した。得られた結果に基づき下記基準で接着性を評価した。
○ :剥離させたときに軸体側全面にゴム層が残るくらい強固に接着した
× :剥離させたときに部分的にゴム層がメッキ皮膜の一部とともに剥離した
××:軸体全面にわたってゴム層が剥離した
【0036】
表1に示した実施例1〜4および表2に示した実施例5〜8では軸体A〜Dの各々を用い、実施例1〜4では未加硫ゴム組成物GC1を実施例5〜8では未加硫ゴム組成物GC2をそれぞれ用いてゴムローラを作製した。表1および表2に示した結果からメッキ皮膜中のニッケル以外の成分の含有量が7%未満の軸体を用いてローラを作製すると、未加硫ゴム組成物GC1およびGC2を用いた場合ともに加硫して形成したゴム層は軸体上に強固に接着しており、部分的な剥離も一切確認されなかった。
【0037】
一方、表1に示した比較例1〜3および表2に示した比較例5〜7は軸体E〜Gの各々を用いたものでニッケルメッキとして無電解ニッケル−リンメッキを選び、上記メッキ皮膜中のリン含有量が7%以上のものについて評価した結果である。未加硫ゴム組成物GC1、GC2を用いた比較例1および比較例5の場合ともに加硫して形成したゴム層は軸体上の大部分で強固に接着していたものの、一部分でメッキごと剥離する接着不良が確認された。さらに比較例2および6並びに比較例3および7のように、リン含有量が増えると接着性が悪化し、未加硫ゴム組成物GC1およびGC2を用いた場合とも軸体上のほぼ全面でゴム層が剥離した。一方、比較例4および8では無電解ニッケル−ホウ素メッキでホウ素含有量が約7質量%のメッキ皮膜の形成を試みたが、メッキ析出反応がうまく進まず、メッキ皮膜を有する軸体を作製することができず、評価することができなかった。
【0038】
【表1】

【0039】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に少なくともニッケル原子を含むメッキ皮膜を有する軸体と、硫黄又は分子構造に硫黄原子を含む加硫剤を添加した未加硫ゴム組成物層を加硫して形成されたゴム層を前記軸体の外周面上に有するゴムローラにおいて、前記メッキ皮膜が、ニッケル以外の成分を7質量%未満含有することを特徴とするゴムローラ。
【請求項2】
前記ゴム層が、前記軸体の外周面上に形成した前記未加硫ゴム組成物層を加硫することにより形成されたものであることを特徴とする請求項1に記載のゴムローラ。
【請求項3】
前記未加硫ゴム組成物を押出すと同時に前記軸体を押出機のクロスヘッドダイに連続的に通過させて該軸体の外周面上に該未加硫ゴム組成物層を形成する手段を経て製造されることを特徴とする請求項1又は2に記載のゴムローラ。
【請求項4】
前記メッキ皮膜が、無電解ニッケルーリンメッキ皮膜、無電解ニッケルーホウ素メッキ皮膜、又は電解ニッケルメッキ皮膜であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のゴムローラ。

【公開番号】特開2008−58609(P2008−58609A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−235508(P2006−235508)
【出願日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】