説明

ゴムロール製造装置およびゴムロール製造方法

【課題】ゴムロールの端部における未加硫のゴム材の変形を抑制するようにしたゴムロール製造装置を提供する。
【解決手段】円筒状に押し出される未加硫のゴム材の中心部に間隔をおいて順次芯金22を送り込み、ゴム材で芯金22の外周面が被覆されたゴムロール部56と、ゴム材で芯金22の間が中空とされた中空部58とを交互に排出する排出機12と、排出機12から排出された中空部58のゴム材により芯金22の端面68の少なくとも周縁部が覆われるように、中空部58のゴム材を内方に押圧する押圧機14とを備えるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴムロール製造装置およびゴムロール製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、芯金の外周面にクロスヘッドダイ方式のゴム押出し機によってゴム材料が被覆されたゴムロームにおいて、芯金のゴム接着部位の外径がφDa、芯金の両端部の軸受け部位の外径がφDbであるとき、該φDa及び該φDbの関係が、1.0<φDa/φDb≦1.5、とすることで、粘度が高いゴム材料においても、ロール1本ずつに引き離された際のゴム材の収縮による浮き剥れが抑制されることが記載されている。
【0003】
特許文献2には、芯金の外周面にクロスヘッドダイ方式のゴム押出し機によりゴム材料を供給してゴムロールを成形した後、該押出し機から排出する該ゴムロールの該芯金両端部相当部位を加熱された把持冶具で挟み込むことで、クロスヘッドダイ方式のゴム押出し機から排出した芯金に被覆されたゴム材料が芯金から浮き離れることが抑制されることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−320126号公報
【特許文献2】特開2006−123256号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ゴムロールの端部における未加硫のゴム材の変形を抑制するようにしたゴムロール製造装置およびゴムロール製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に記載のゴムロール製造装置は、円筒状に押し出される未加硫のゴム材の中心部に間隔をおいて順次芯金を送り込み、前記ゴム材で前記芯金の外周面が被覆されたゴムロール部と、前記ゴム材で前記芯金の間が中空とされた中空部とを交互に排出する排出機と、前記排出機から排出された前記中空部の前記ゴム材により前記芯金の端面の少なくとも周縁部が覆われるように、前記中空部の前記ゴム材を内方に押圧する押圧機と、を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明の請求項2に記載のゴムロール製造装置は、さらに、前記中空部の前記ゴム材の厚みが予め定められた範囲内となるように、前記排出機から排出される前記ゴムロール部を前記排出機から引き出す引出機、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明の請求項3に記載のゴムロール製造装置は、前記引出機による前記ゴムロール部の引き出し速度は、前記ゴム材の押し出し速度に対し、0.6倍以上1.4倍以下の範囲に設定されることを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項4に記載のゴムロール製造方法は、請求項1〜3のいずれか1項に記載のゴムロール製造装置を用い、円筒状に押し出される未加硫のゴム材の中心部に間隔をおいて順次芯金を送り込み、前記ゴム材で前記芯金の外周面が被覆されたゴムロール部と、前記ゴム材で前記芯金の間が中空とされた中空部とを交互に排出し、前記中空部の前記ゴム材により前記芯金の端面の少なくとも周縁部が覆われるように、前記中空部の前記ゴム材を内方に押圧する第1工程と、前記ゴムロール部および前記中空部の前記ゴム材に対して加硫処理を施す第2工程と、前記中空部の加硫後の前記ゴム材を切除する第3工程と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の請求項1に記載のゴムロール製造装置によれば、中空部のゴム材を内方に押圧しない場合に比べて、ゴムロールの端部における未加硫のゴム材の変形を抑制することができる。
【0011】
本発明の請求項2に記載のゴムロール製造装置によれば、中空部のゴム材の厚みが予め定められた範囲内となるようにゴムロール部を排出機から引き出さない場合に比べて、ゴムロールの端部のゴム材の厚みが増加するのを抑制することができる。
【0012】
本発明の請求項3に記載のゴムロール製造装置によれば、引出機によるゴムロール部の引き出し速度をゴム材の押し出し速度に対して0.6倍以上1.4倍以下の範囲に設定しない場合に比べて、中空部のゴム材の厚みを予め定められた範囲内に的確に収めることができる。
【0013】
本発明の請求項4に記載のゴムロール製造方法によれば、請求項1〜3のいずれか1項に記載のゴムロール製造装置を用いないでゴムロールを製造する場合に比べて、ゴム材の肉厚ムラが抑制されたゴムロールを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係るゴムロール製造装置の構成を示す図である。
【図2】図1の押圧機および引出機の動作態様を示す図である。
【図3】図1の押圧機および引出機の動作態様を示す図である。
【図4】図1の押圧出機および引出機の動作態様を示す図である。
【図5】図1の押圧機および引出機の動作態様を示す図である。
【図6】図1の押圧機および引出機の動作態様を示す図である。
【図7】図3の把持部材の移動速度V3をゴム材の押し出し速度V2に対して0.6倍未満とした場合の中空部のゴム材の厚みの態様を示す図である。
【図8】図3の把持部材の移動速度V3をゴム材の押し出し速度V2に対して1.4倍越えとした場合の中空部のゴム材の厚みの態様を示す図である。
【図9】本発明に係るゴムロール製造装置を用いて成形された袋とじ状のゴムロールの構成を示す図である。
【図10】本発明に係るゴムロール製造装置を用いて成形されたゴムロールに対する比較例としての袋とじ状ではないゴムロールの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係るゴムロール製造装置およびゴムロール製造方法の実施形態の一例について、添付の図面を用いて説明する。
【0016】
本発明に係るゴムロール製造装置およびゴムロール製造方法によって製造されるゴム被覆軸体(以下、「ゴムロール」という)は、例えば画像形成装置の感光体ドラムに接触して回転し感光体ドラムの外周面を帯電する帯電ロールとして用いられる。感光体ドラムの外周面に密着して感光体ドラムの外周面全体をムラ無く帯電するためには、肉厚ムラの小さいゴムロールが必要とされる。研磨や表面処理などの二次加工を施すことで肉厚ムラを抑えられるが、工程数が増える分、製造コストが増加する。そのため、研磨や表面処理などの二次加工を施すことなく、肉厚ムラの小さいゴムロールを成形可能なゴムロール製造装置およびゴムロール製造方法が望まれている。
【0017】
図1は、本発明に係るゴムロール製造装置10の構成を示している。
【0018】
本発明に係るゴムロール製造装置10は、いわゆるクロスヘッドダイから構成される排出機12と、排出機12の下方に配置される押圧機14と、押圧機14の下方に配置される引出機16とを備えている。
【0019】
排出機12は、未加硫のゴム材を供給するゴム材供給部18と、ゴム材供給部18から供給されたゴム材を円筒状に押し出す押出部20と、押出部20から円筒状に押し出されるゴム材の中心部に芯金22を供給する芯金供給部24とを備えている。
【0020】
ゴム材供給部18は、円筒状の本体部26の内部にスクリュー28を有している。スクリュー28は駆動モータ30によって回転駆動される。本体部26の駆動モータ30側にはゴム材を投入する投入口32が設けられている。投入口32から投入されたゴム材は、本体部26の内部においてスクリュー28によって練られながら押出部20に向けて送り出される。スクリュー28の回転速度を調整することで、ゴム材を送り出す速度が調整される。
【0021】
なお、ゴム材として、全ポリマーのうち80質量部以上のエピクロルヒドリンゴムを有し、カーボンや炭酸カルシウムなどの無機フィラーを30〜60質量部配合したものを用いている。
【0022】
押出部20は、ゴム材供給部18に接続される円筒状のケース34と、ケース34の内部中心に配置される円柱状のマンドレル36と、マンドレル36の下方に配置される排出ヘッド38とを備えている。マンドレル36は保持部材40によってケース34に保持されている。排出ヘッド38は保持部材42によってケース34に保持されている。マンドレル36の外周面(一部において保持部材40の外周面)と保持部材42の内周面(一部において排出ヘッド38の内周面)との間には、ゴム材が環状に流れる環状流路44が形成されている。
【0023】
マンドレル36の中心部には芯金22が挿通される挿通孔46が形成されている。マンドレル36の下部は端に向けて先細った形状を呈している。そして、マンドレル36の先端の下方の領域は、挿通孔46から供給される芯金22と環状流路44から供給されるゴム材とが合流する合流域48とされている。即ち、この合流域48に向けてゴム材が円筒状に押し出され、円筒状に押し出されるゴム材の中心部に芯金22が送り込まれるようになっている。
【0024】
芯金供給部24は、マンドレル36の上方に配置されるローラ対50を備えている。ローラ対50は複数対(例えば、3対)設けられ、各ローラ対50の片側のローラはベルト52を介して駆動ローラ54に接続されている。駆動ローラ54が駆動されると、各ローラ対50によって挟持される芯金22はマンドレル36の挿通孔46に向けて送られる。芯金22は予め定められた長さとされており、ローラ対50によって送られる後方の芯金22がマンドレル36の挿通孔46に存在する先方の芯金22を押すことにより、複数の芯金22が順次に挿通孔46を通過するようになっている。また、駆動ローラ54の駆動は、先方の芯金22の前方端がマンドレル36の先端に位置したときに一旦停止されようになっており、マンドレル36の下方の合流域48において、芯金22が間隔をおいて送り込まれるようになっている。
【0025】
このように、排出機12においては、合流域48においてゴム材を円筒状に押し出し、ゴム材の中心部に間隔をおいて芯金22が順次送り込まれるようになっている。それにより、ゴム材で芯金22の外周面が被覆されたゴムロール部56と、ゴム材で芯金22の間が中空とされた中空部58とが交互に排出ヘッド38から排出されるようになっている。なお、芯金22の外周面にはゴム材との接着性を高めるためにプライマーが予め塗布されている。
【0026】
押圧機14は、1対の半円筒状の押圧部材60を有している。1対の押圧部材60は、排出機12から排出されるゴムロール部56を挟むようにして対向配置されている。各押圧部材60には、中心部に向けて突出する押圧部62が形成されている。各押圧部材60は駆動機構(図示省略)によって左右方向及び上下方向に可動されるようになっている。
【0027】
引出機16は、1対の半円筒状の把持部材64を有している。1対の把持部材64は、排出機12から排出されるゴムロール部56を挟むようにして対向配置されている。各把持部材64には、ゴムロール部56の外周面形状に対応した形状の把持部66が形成されている。各把持部材64は駆動機構(図示省略)によって左右方向および上下方向に可動されるようになっている。
【0028】
図2〜図6は、押圧機14および引出機16の動作態様を示している。図中において、「V1」は芯金22の送り出し速度を示し、「V2」はゴム材の押し出し速度を示し、「V3」は把持部材64の下方への移動速度(引出機16による排出機12からのゴムロール部56の引き出し速度)を示している。
【0029】
図2に示すように、後方の芯金22がマンドレル36の先端の位置において停止されると、即ち芯金22の送り出し速度がゼロとされると(図中で「V1=0」と示す)、各把持部材64は互いに近づく方向に可動され、各把持部材64の把持部66によってゴムロール部56が把持される。
【0030】
そして、図3に示すように、ゴムロール部56を把持した状態で各把持部材64を下方に移動する。即ち、各把持部材64によってゴムロール部56を排出機12から引き出す。そうすると、合流域48のゴム材に張力が作用し、ゴム材で芯金22の間が中空とされる中空部58が形成される。
【0031】
図4に示すように、芯金22の送り出しが再開され、中空部58が1対の押圧部材60の対向位置まで移動する。なお、芯金22の送り出し速度V1とゴム材の押し出し速度V2とは略同一である。そして、中空部58が1対の押圧部材60の対向位置まで移動したとき、図5に示すように、各押圧部材60は互いに近づく方向に可動され、中空部58のゴム材は各押圧部材60の押圧部62によって内方に押圧される。それにより、先方の芯金22の端面68および後方の芯金22の端面68が中空部58のゴム材によって覆われることとなる。
【0032】
そして、図6に示すように、各押圧部材60が互いに離れる方向に可動されると、中空部58において分離され、芯金22を袋とじ状とするゴムロール70が成形される。なお、各把持部材64は分離されたゴムロール70を把持しつつ下方に適宜な距離だけ移動させた後、次のゴムロール部56を把持するための待機位置として図2の仮想線(二点鎖線)で示す位置に移動する。
【0033】
図3において、把持部材64の移動速度、即ち引出機16による排出機12からのゴムロール部56の引き出し速度V3は、ゴム材の押し出し速度V2に対して0.6倍以上1.4倍以下の範囲内の一定速度に設定されている。それにより、中空部58のゴム材の厚みがゴムロール部56のゴム材の厚みと同程度となる(中空部58のゴム材の厚みがゴムロール部56のゴム材の厚みに対して90%以上110%以下となる)。なお、ゴムロール部56の引き出し速度V3をゴム材の押し出し速度V2に対して0.6倍未満とすると、図7に示すように、中空部58のゴム材の厚みがゴムロール部56のゴム材の厚みよりも厚くなり過ぎる。また、ゴムロール部56の引き出し速度V3がゴム材の押し出し速度V2に対して1.4倍を超えると、図8に示すように、中空部58のゴム材の厚みがゴムロール部56のゴム材の厚みよりも薄くなり過ぎる。
【0034】
図9は、本発明に係るゴムロール製造装置10を用いて成形された袋とじ状のゴムロール70の構成を示している。
【0035】
袋とじ状のゴムロール70は、次工程において加硫処理炉に入れられる。それにより、ゴムロール部56のゴム材および芯金22の端面を覆う部分のゴム材(中空部58のゴム材)に対して加硫処理が施される。
【0036】
加硫処理されたゴムロール70は、次工程において加工処理される。具体的に、ゴムロール70の両端側において芯金22が一定の長さ露出するように両端部のゴム材が切除される。それにより、芯金22の端面68を覆う部分のゴム材(中空部58のゴム材)は切除されることとなる。尚、ゴムロール部56は加硫処理が施される前に把持部材64の把持部66によって把持されるため、加硫処理後のゴムロール部56には把持部66の跡が残る。しかし、ゴムロール部56における当該跡が付いた部分は、前記した切除される両端部のゴム材に含まれる(両端部のゴム材と共に切除される)ため、当該跡が最終製品のゴムロールに残ることはない。
【0037】
図10は、本発明に係るゴムロール製造装置を用いて成形されたゴムロール70に対する比較例としての袋とじ状ではない(芯金の端面にゴム材が無い)ゴムロール100の構成を示している。比較例としてのゴムロール100は、ゴムロール製造装置10において押圧機14および引出機16を動作させずに得たものであり、別途の刃具(図示省略)により芯金22の端面68に沿って切り離して得たものである。従って、ゴムロール100は中空部58に相当する部位を有していない。
【0038】
図10に示すように、比較例としてのゴムロール100では、その端部のゴム材の厚みが中央部のゴム材の厚みに比べて増大している。これは、次の理由による。
【0039】
即ち、排出機12から排出されるゴム材には残留応力が内在しているが、ゴム材を排出機12から排出した後に切り離すと、残留応力の解放により芯金22の端面68付近のゴム材が軸方向に収縮変形すると共に径方向に拡張変形する。この端部におけるゴム材の変形により、ゴムロール100の端部のゴム材の厚みが中央部に比べて増大する。従って、後の加工処理においてゴムロール100の端部のゴム材が切除される領域が少ないと、端部と中央部において肉厚ムラの大きなゴムロール100が製造されることとなる。
【0040】
これに対し、本発明に係るゴムロール製造装置10を用いて成形したゴムロール70では、押圧機14によって中空部58のゴム材を押圧し、中空部58のゴム材によって芯金22を袋とじ状としつつ切り離される、即ち中空部58のゴム材によって芯金22の端面68の少なくとも周縁部が覆われた状態で切り離されるので、残留応力の解放によるゴム材の軸方向の収縮変形および径方向の拡張変形が抑制される(図9参照)。中空部58のゴム材は加硫処理によって加硫硬化した後に切除されるので、残留応力の解放によるゴム材の軸方向の収縮変形および径方向の拡張変形は実質的に問題のない程度にまで減少する。従って、両端部と中央部において肉厚ムラの小さいゴムロール70が製造されることとなる。
【0041】
また、ゴムロール製造装置10において引出機16による排出機12からのゴムロール部56の引き出し速度V3がゴム材の押し出し速度V2に対して0.6倍以上1.4倍以下の範囲内の一定速度に設定されていない場合も、端部のゴム材の厚みが中央部のゴム材の厚みに比べて増大する。それは、次の理由による。
【0042】
即ち、ゴムロール製造装置10において引出機16による排出機12からのゴムロール部56の引き出し速度V3がゴム材の押し出し速度V2に対して0.6倍未満であると、図7に示すように、合流域48において芯金22同士の間隙に流入するゴム材の量が増大する。そして、合流域48において芯金22同士の間隙に流入するゴム材が増大した状態で後方の芯金22が合流域48に送り出されると合流域48のゴム材に作用する圧力が増大する。一旦増大した合流域48のゴム材の圧力は直ちに減少しないため、後方の芯金22の端部に被覆されるゴム材は大きな残留応力を有する結果となる。排出機12から排出されるとこの残留応力が解放されるため、端部のゴム材の厚みが中央部のゴム材の厚みに比べて増大することとなる。
【0043】
逆に、ゴムロール製造装置10において引出機16による排出機12からのゴムロール部56の引き出し速度V3がゴム材の押し出し速度V2に対して1.4倍越えであると、図8に示すように、合流域48における中空部58のゴム材の厚みが薄くなり、押圧機14で中空部58のゴム材を内方に押圧した場合、芯金22の端面68を覆うゴム材の量が減少することとなる。芯金22の端面68を覆うゴム材の量が減少すると、残留応力の解放によるゴム材の軸方向の収縮変形および径方向の拡張変形を抑制する効力も減少する。そのため、端部のゴム材の厚みが中央部のゴム材の厚みに比べて増大することとなる。また、軸方向に働く力が瞬間的に過大となり、引き出す途中でゴム材が破断してしまい、伸張させる力が全く作用しない事態を生じる場合がある。
【0044】
ゴムロール製造装置10において引出機16による排出機12からのゴムロール部56の引き出し速度V3をゴム材の押し出し速度V2に対して0.6倍以上1.4倍以下の範囲内の一定速度に設定した場合と、0.6倍以上1.4倍以下の範囲外の一定速度に設定した場合とについて、端部における外径膨張の評価を行ったところ、0.6倍以上1.4倍以下の範囲内の一定速度に設定した場合のゴムロール70の端部外径膨張は20μmで良好であったが、0.6倍以上1.4倍以下の範囲外の一定速度に設定した場合の端部外径膨張は100μmで不良であった。
【0045】
なお、ゴムロール70の端部における外径膨張の評価は、長さ355mm、直径8mmの芯金22に対してゴム層を2mm形成させ、加硫処理を施した後、芯金22の端面68から15mmの位置でゴム層を切除して両端部において芯金22を露出させ、芯金22の両端部を支持し1回転させ、芯金22の端面68から20mm位置の平均外径と50mm位置の平均外径を測定し、その差を求めることで行った。外径測定には、遮光式レーザー外径測定装置(アサカ理研製:ROLL2000)を使用した。
【0046】
このように、ゴムロール製造装置10において引出機16を動作させ、中空部58のゴム材の厚みがゴムロール部56のゴム材の厚みと同程度となる(中空部58のゴム材の厚みがゴムロール部56のゴム材の厚みに対して90%以上110%以下となる)ようにゴムロール部56を排出機12から引き出しつつ成形したゴムロール70にあっては、端部のゴム材の厚みの増大が抑制されることが知見された。
【0047】
以上の如く、本実施形態に係るゴムロール製造装置10にあっては、円筒状に押し出される未加硫のゴム材の中心部に間隔をおいて順次芯金22を送り込み、ゴム材で芯金22の外周面が被覆されたゴムロール部56と、ゴム材で芯金22の間が中空とされた中空部58とを交互に排出する排出機12と、排出機12から排出された中空部58のゴム材により芯金22の端面68の少なくとも周縁部が覆われるように、中空部58のゴム材を内方に押圧する押圧機14とを備えている。従って、ゴムロール70の端部における未加硫のゴム材の変形が抑制される。
【0048】
また、中空部58のゴム材の厚みが予め定められた範囲内となるように、排出機12から排出されるゴムロール部56を排出機12から引き出す引出機16を備えている。従って、ゴムロール70の端部のゴム材の厚みが増加するのが抑制される。
【0049】
また、引出機16によるゴムロール部56の引き出し速度は、ゴム材の押し出し速度に対して0.6倍以上1.4倍以下の範囲に設定されている。従って、中空部58のゴム材の厚みを予め定められた範囲内に的確に収められる。
【0050】
また、本実施形態に係るゴムロール製造方法にあっては、ゴムロール製造装置10を用い、円筒状に押し出される未加硫のゴム材の中心部に間隔をおいて順次芯金22を送り込み、ゴム材で芯金22の外周面が被覆されたゴムロール部56と、ゴム材で芯金22の間が中空とされた中空部58とを交互に排出し、中空部58のゴム材により芯金22の端面68の少なくとも周縁部が覆われるように、中空部58のゴム材を内方に押圧することでゴムロール70を成形するゴムロール成形工程と、ゴムロール部56および中空部58のゴム材に対して加硫処理を施す加硫処理工程と、少なくとも中空部58の加硫後のゴム材を切除する加工処理工程とを備えている。従って、ゴム材の肉厚ムラが抑制されたゴムロール70が製造される。
【0051】
なお、上記のゴムロール製造装置10では、押圧機14により中空部58でゴムロール70を分離するように構成したが、押圧機14により中空部58のゴム材を内方に押圧した後、別途のカッターによってゴムロール70を分離するように構成してもよい。
また、前記した実施形態においては、ゴム材としてエピクロルヒドリンゴムを用いたものを例示したが、これに限るものではなく、他のゴム材料を用いても良い。
また、前記した実施形態においては、芯金22の端面68の全面が中空部58のゴム材によって袋とじ状に覆われたものを示したが、芯金22の端面68の少なくとも周縁部が中空部58のゴム材によって覆われていれば良い。
【符号の説明】
【0052】
10 ゴムロール製造装置
12 排出機
14 押圧機
16 引出機
18 ゴム材供給部
20 押出部
22 芯金
24 芯金供給部
36 マンドレル
38 排出ヘッド
56 ゴムロール部
58 中空部
60 押圧部材
62 押圧部
64 把持部材
66 把持部
68 端面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状に押し出される未加硫のゴム材の中心部に間隔をおいて順次芯金を送り込み、前記ゴム材で前記芯金の外周面が被覆されたゴムロール部と、前記ゴム材で前記芯金の間が中空とされた中空部とを交互に排出する排出機と、
前記排出機から排出された前記中空部の前記ゴム材により前記芯金の端面の少なくとも周縁部が覆われるように、前記中空部の前記ゴム材を内方に押圧する押圧機と、
を備えるゴムロール製造装置。
【請求項2】
さらに、前記中空部の前記ゴム材の厚みが予め定められた範囲内となるように、前記排出機から排出される前記ゴムロール部を前記排出機から引き出す引出機、を備える請求項1に記載のゴムロール製造装置。
【請求項3】
前記引出機による前記ゴムロール部の引き出し速度は、前記ゴム材の押し出し速度に対し、0.6倍以上1.4倍以下の範囲に設定される請求項2に記載のゴムロール製造装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のゴムロール製造装置を用い、円筒状に押し出される未加硫のゴム材の中心部に間隔をおいて順次芯金を送り込み、前記ゴム材で前記芯金の外周面が被覆されたゴムロール部と、前記ゴム材で前記芯金の間が中空とされた中空部とを交互に排出し、前記中空部の前記ゴム材により前記芯金の端面の少なくとも周縁部が覆われるように、前記中空部の前記ゴム材を内方に押圧する第1工程と、
前記ゴムロール部および前記中空部の前記ゴム材に対して加硫処理を施す第2工程と、
前記中空部の加硫後の前記ゴム材を切除する第3工程と、
を備えるゴムロール製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−103473(P2013−103473A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250810(P2011−250810)
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【特許番号】特許第4941610号(P4941610)
【特許公報発行日】平成24年5月30日(2012.5.30)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】