説明

ゴム・カーボンブラック用カップリング剤及びそれを含むタイヤ用ゴム組成物

【課題】優れたウエットグリップ性能及び低燃費性能を発揮するタイヤの原料として好適な新規なゴム・カーボンブラック用カップリング剤及びタイヤ用のゴム組成物を提供する。
【解決手段】化学式(I)で示される芳香族縮合複素環化合物を含有することを特徴とするゴム・カーボンブラック用カップリング剤及びそれを含むタイヤ用ゴム組成物。


(式中、Aは、O、S、NH、またはNRを表わす。Rは、炭素数1〜6の直鎖状または分岐状のアルキル基を表わす。nは1〜12の整数を表わす。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム・カーボンブラック用カップリング剤及びそれを含むタイヤ用ゴム組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、環境への関心が高まるにつれ、自動車に対する低燃費化の要請が高まっている。自動車の低燃費化には、タイヤの特性が大きな影響を及ぼすことから、このような目的に適ったタイヤ用ゴム組成物が強く望まれている。一方、走行安全性の面から、湿潤路面でのグリップ力、即ち「ウエットグリップ力」も重視されている。低燃費特性を改善するためには、タイヤの転がり抵抗を小さくすることが必要であるが、転がり抵抗を小さくすると、ウエットグリップ力が低下することになる。
【0003】
ウエットグリップ力を保持しつつ、転がり抵抗の小さいタイヤを開発する手段の一つとして、原料として使用するゴム組成物中のカーボンブラックの分散性を向上させ、且つ、ゴムの補強剤として配合されているカーボンブラックとゴム分子間の化学結合を強固にするゴム・カーボンブラック用カップリング剤の検討が進められている。
【0004】
従来、ゴム・カーボンブラック用カップリング剤として開発されてきたものの多くは、アミノ基含有化合物であり、カーボンブラック表面に存在するカルボニル基及びカルボキシル基とアミノ基の間の酸塩基相互作用による結合の効果が期待されるからである。
例えば、特許文献1には、ジアルキルアミノ基含有硫黄化合物をゴム・カーボンブラック用カップリング剤として利用することが報告されている。
また、特許文献2には、第4級アンモニウム塩の1つであるイミニウムイオン基がカーボンブラック表面へ強固に結合する作用を利用して、第4級アンモニウム塩構造を有する有機スルフィド化合物をゴム・カーボンブラック用カップリング剤として利用することが報告されている。
【0005】
しかしながら、何れの場合においても、加硫・成形して得られるタイヤの転がり抵抗の低減効果は、未だ満足すべきものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−278942号公報
【特許文献2】特開2000−239446公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、優れたウエットグリップ性能及び低燃費性能を発揮するタイヤの原料として好適な新規なゴム・カーボンブラック用カップリング剤及びタイヤ用のゴム組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、化1の化学式(I)で示される芳香族縮合複素環化合物をゴム・カーボンブラック用カップリング剤として使用することにより、所期の目的を達成することを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、第1の発明は、化1の化学式(I)で示される芳香族縮合複素環化合物を含有することを特徴とするゴム・カーボンブラック用カップリング剤である。
第2の発明は、ジエン系ゴム100重量部に対して、カーボンブラックを10〜100重量部配合し、該カーボンブラック100重量部に対して、第1の発明に記載のゴム・カーボンブラック用カップリング剤を1〜30重量部配合したことを特徴とするゴム組成物である。
【0009】
【化1】

(式中、Aは、O、S、NH、またはNRを表わす。Rは、炭素数1〜6の直鎖状または分岐状のアルキル基を表わす。nは1〜12の整数を表わす。)
【発明の効果】
【0010】
本発明のゴム・カーボンブラック用カップリング剤に含有する芳香族縮合複素環化合物は、分子内に芳香族縮合複素環を有しているので、カーボンブラック表面との酸塩基相互作用による結合とは別に、カーボンブラック表面のベンゼン環とのπ電子相互作用による結合が形成される。
この結果、本発明のゴム・カーボンブラック用カップリング剤を配合したゴム組成物をタイヤの原料に用いた場合には、優れたウエットグリップ力を保持したまま、転がり抵抗が低減し低燃費性能が向上したタイヤとすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0012】
本発明のゴム・カーボンブラック用カップリング剤に含有する芳香族縮合複素環化合物は、化学式(I)で示されるものであり、芳香族縮合複素環がアルキレン基を介して結合した左右対称の構造(ビス体構造)を有している。
【0013】
当該化合物としては、例えば、
ビス(ベンズイミダゾリル−2)メタン、
1,2−ビス(ベンズイミダゾリル−2)エタン、
1,2−ビス(4−エチルベンズイミダゾリル−2)エタン、
1,2−ビス(4−イソプロピルベンズイミダゾリル−2)エタン、
1,2−ビス(4−tert−ブチルベンズイミダゾリル−2)エタン、
1,3−ビス(ベンズイミダゾリル−2)プロパン、
1,3−ビス(1−メチルベンズイミダゾリル−2)プロパン、
1,3−ビス(1−エチルベンズイミダゾリル−2)プロパン、
1,3−ビス(4,5−ジメチルベンズイミダゾリル−2)プロパン、
1,4−ビス(ベンズイミダゾリル−2)ブタン、
1,5−ビス(ベンズイミダゾリル−2)ペンタン、
1,6−ビス(ベンズイミダゾリル−2)ヘキサン、
1,7−ビス(ベンズイミダゾリル−2)ヘプタン、
1,8−ビス(ベンズイミダゾリル−2)オクタン、
1,9−ビス(ベンズイミダゾリル−2)ノナン、
1,10−ビス(ベンズイミダゾリル−2)デカン、
1,11−ビス(ベンズイミダゾリル−2)ウンデカン、
1,12−ビス(ベンズイミダゾリル−2)ドデカン、
1,2−ビス(ベンズオキサゾリル−2)エタン、
1,3−ビス(ベンズオキサゾリル−2)プロパン、
1,5−ビス(ベンズオキサゾリル−2)ペンタン、
1,6−ビス(ベンズオキサゾリル−2)ヘキサン、
1,2−ビス(ベンズチアゾリル−2)エタン、
1,6−ビス(ベンズチアゾリル−2)ヘキサン
等が挙げられる。なお、これらの芳香族縮合複素環化合物は、1種または2種以上を組み合わせてゴム・カーボンブラック用カップリング剤の成分として使用してもよい。
【0014】
本発明の実施において使用する芳香族縮合複素環化合物は、1,2−ジアミノベンゼン系化合物、2−アミノチオフェノール系化合物または2−アミノフェノール系化合物のいずれかと、ジカルボン酸系化合物を、4N希塩酸中で反応させることによって、容易に合成することができる。
【0015】
1,2−ジアミノベンゼン系化合物としては、例えば、1,2−ジアミノベンゼン、2,3−トリレンジアミン、1,2−ジアミノ−3,4−ジメチルベンゼン、1,2−ジアミノ−3−エチルベンゼン、1,2−ジアミノ−3−n−プロピルベンゼン、1,2−ジアミノ−3−イソプロピルベンゼン、1,2−ジアミノ−3−n−ブチルベンゼン、1,2−ジアミノ−3−tert−ブチルベンゼン等が挙げられる。
【0016】
2−アミノチオフェノール系化合物としては、例えば、2−アミノチオフェノール、2−アミノ−3−メチルチオフェノール、2−アミノ−3−エチルチオフェノール、2−アミノ−3−n−プロピルチオフェノール、2−アミノ−4−メチルチオフェノール、2−アミノ−4−エチルチオフェノール、2−アミノ−4−n−プロピルチオフェノール、2−アミノ−5−メチルチオフェノール、2−アミノ−5−エチルチオフェノール、2−アミノ−5−n−プロピルチオフェノール、2−アミノ−6−メチルチオフェノール、2−アミノ−6−エチルチオフェノール、2−アミノ−6−n−プロピルチオフェノール等が挙げられる。
【0017】
2−アミノフェノール系化合物としては、例えば、2−アミノフェノール、2−アミノ−3−メチルフェノール、2−アミノ−3−エチルフェノール、2−アミノ−3−n−プロピルフェノール、2−アミノ−4−メチルフェノール、2−アミノ−4−エチルフェノール、2−アミノ−4−n−プロピルフェノール、2−アミノ−5−メチルフェノール、2−アミノ−5−エチルフェノール、2−アミノ−5−n−プロピルフェノール、2−アミノ−6−メチルフェノール、2−アミノ−6−エチルフェノール、2−アミノ−6−n−プロピルフェノール等が挙げられる。
【0018】
ジカルボン酸系化合物としては、例えば、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9−ウンデカンニ酸、1,10−ドデカンニ酸、1,11−トリデカンニ酸、1,12−テトラデカンニ酸等が挙げられる。
【0019】
1,2−ジアミノベンゼン系化合物、2−アミノチオフェノール系化合物または2−アミノフェノール系化合物のいずれかと、ジカルボン酸系化合物との反応において、反応時間や反応温度に特に制限はないが、反応温度は70〜110℃であることが好ましく、90〜105℃であることがより好ましい。反応時間は2〜48時間であることが好ましく、6〜24時間であることがより好ましい。
4N希塩酸の量は、反応で用いる1,2−ジアミノベンゼン系化合物、2−アミノチオフェノール系化合物または2−アミノフェノール系化合物に対して、0.5〜3倍モルとすることが好ましく、1.5〜2.5倍モルとすることがより好ましい。
【0020】
反応により生成した芳香族縮合複素環化合物は、反応液中の塩酸をアンモニア水で中和すると析出する。その後、これをろ取し、水で洗浄することにより単離精製される。この洗浄の際に用いる溶媒としては、生成物が溶解しにくいものであれば特に限定されないが、例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、トルエン、アセトニトリル、ジオキサン等が挙げられる。
【0021】
本発明のゴム組成物においては、ジエン系ゴム100重量部に対して、カーボンブラックを10〜100重量部の割合で配合することが好ましく、30〜80重量部の割合で配合することがより好ましい。カーボンブラックの配合量が10重量部未満では、加硫・成形したゴムの耐摩耗性が低下し、100重量部を超えると、加硫前における混練時のゴム組成物が増粘して加工性が低下する。
【0022】
本発明のゴム組成物においては、カーボンブラック100重量部に対して、本発明のゴム・カーボンブラック用カップリング剤を1〜30重量部の割合で配合することが好ましく、2〜20重量部の割合で配合することがより好ましい。ゴム・カーボンブラック用カップリング剤の配合
量が1重量部未満では、加硫・成形して得られるタイヤの転がり抵抗の低減効果が十分に得られない。また、ゴム・カーボンブラック用カップリング剤の配合量が30重量部を超えても、同低減効果はほぼ頭打ちとなり、ゴム・カーボンブラック用カップリング剤の使用量が増えるばかりで経済的ではない。
【0023】
本発明のゴム組成物に配合するジエン系ゴムとしては、従来からゴム工業の分野において使用されているものを特に制限なく使用することができるが、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、クロロプレンゴム(CR)等を好ましく使用できる。これらのジエン系ゴムは、単独または組み合わせて使用することができる。
【0024】
本発明のゴム組成物に配合するカーボンブラックについては、その窒素吸着比表面積(BET法)が50〜250m/gであることが好ましく、70〜230m/gであることがより好ましい。窒素吸着比表面積が50m/g未満では、加硫・成形したゴムの耐摩耗性が低下し、250m/gを超えると、加硫前における混練時のゴム組成物が増粘して加工性が低下する。
また、ゴム組成物の補強性や加工性を良好に維持するためには、カーボンブラックのDBP給油量が、60〜150ml/100gであることが好ましく、80〜140ml/100gであることがより好ましい。DBP給油量が60ml/100gより少ないとゴムの補強性が低下し、150ml/100gを超えた場合にはゴムの加工性が低下する。
【0025】
本発明のゴム組成物に配合するカーボンブラックとしては、例えば、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック等が使用可能であるが、タイヤ用の原料の観点から、ファーネスブラックを好ましく使用することができる。
ファーネスブラックとしては、旭カーボン社製の旭#70や東海カーボン社のシースト3G等の市販品が使用できる。
【0026】
本発明のゴム組成物には、ジエン系ゴム100重量部に対して、加硫剤として、可溶性硫黄または不溶性硫黄を0.5〜10重量部の割合で配合することが好ましく、2〜5重量部の割合で配合することがより好ましい。
【0027】
本発明のゴム組成物には、本発明のゴム・カーボンブラック用カップリング剤、ジエン系ゴム、カーボンブラックの他に、従来からゴム用に一般的に使用されているシリカやクレー、タルク等の補強剤(充填剤)を配合することができる。これらの配合量は、一般的な量とすることができるが、好ましくは、ジエン系ゴム100重量部に対して、40〜120重量部の割合である。
【0028】
また本発明のゴム組成物には、スルフェンアミド系等の加硫促進剤、酸化亜鉛(亜鉛華)、酸化マグネシウム等の加硫促進助剤、ナフテンオイル、アロマオイル等のプロセスオイル、ステアリン酸等の分散剤(ワックス)、老化防止剤の他、酸化防止剤、オゾン亀裂防止剤、素練り促進剤、粘着樹脂、加硫遅延剤等を本発明の効果を損なわない範囲において使用することができる。
【0029】
本発明のゴム組成物は、前述の原料をバンバリーミキサーや、オープンロール等の混練機を用いて混練することによって得られる。そして、例えば、カーカスやベルト、ビード、トレッド等のタイヤ用ゴム部材として加硫成型される。
【実施例】
【0030】
以下、本発明を対照試験、実施例及び比較例によって具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、これらにおいて使用した主な原材料は、以下のとおりである。
【0031】
[原材料]
・NR:(チョンハットン社製、商品名「SMR―CV60」)
・SBR:(日本ゼオン社製、商品名「ニポール1723」)
・カーボンブラック:(旭カーボン社製、商品名「♯70」)BET比表面積77m/g、DBP給油量101ml/100g)
・プロセスオイル:(出光興産社製、商品名「アロマックス3」)
・ステアリン酸:(ミヨシ油脂社製、商品名「MXST」)
・亜鉛華:(正同化学工業社製、商品名「酸化亜鉛2種」)
・加硫剤:(四国化成工業社製、不溶性硫黄、商品名「ミュークロンOT20」)
・加硫促進剤:(大内新興化学工業社製、商品名「ノクセラーCZ−G」)
・老化防止剤:(大内新興化学工業社製、商品名「ノクラック6C」)
【0032】
実施例において使用したゴム・カーボンブラック用カップリング剤は以下のとおりであり、これらの合成例を参考例1〜4に示す。なお、これらの合成は、ベンズイミダゾールの公知の合成方法に準じて行った。
[実施例のゴム・カーボンブラック用カップリング剤]
・1,2−ビス(ベンズイミダゾリル−2)エタン:(「EBZ」と略記する)
・1,4−ビス(ベンズイミダゾリル−2)ブタン:(「BBZ」と略記する)
・1,2−ビス(ベンズオキサゾリル−2)エタン:(「EBO」と略記する)
・1,6−ビス(ベンズチアゾリル−2)ヘキサン:(「HBT」と略記する)
【0033】
〔参考例1〕
<EBZの合成>
3Lのフラスコに4N塩酸水1250ml(5モル)、1,2−ジアミノベンゼン260g(2.4モル)、コハク酸142g(1.2モル)を投入し、攪拌下、内温95℃で12時間反応を行った。反応液を室温まで冷却した後、25%アンモニア水700mlを加え、水冷下で、さらに2時間攪拌を行った。系内の析出物を分離し、水洗、乾燥することにより、目的とする1,2−ビス(ベンズイミダゾリル−2)エタン249g(1.0モル、収率79%)を得た。
【0034】
〔参考例2〕
<BBZの合成>
3Lのフラスコに4N塩酸水1250ml(5モル)、1,2−ジアミノベンゼン260g(2.4モル)、アジピン酸175g(1.2モル)を投入し、攪拌下、内温95℃で18時間反応を行った。反応液を室温まで冷却した後、25%アンモニア水700mlを加え、水冷下で、さらに2時間攪拌を行った。系内の析出物を分離し、水洗、乾燥することにより、目的とする1,4−ビス(ベンズイミダゾリル−2)ブタン290g(1.0モル、収率83%)を得た。
【0035】
〔参考例3〕
<EBOの合成>
3Lのフラスコに4N塩酸水1250ml(5モル)、2−アミノフェノール262g(2.4モル)、コハク酸142g(1.2モル)を投入し、攪拌下、内温95℃で24時間反応を行った。反応液を室温まで冷却した後、25%アンモニア水700mlを加え、水冷下で、さらに2時間攪拌を行った。系内の析出物を分離し、水洗、乾燥することにより、目的とする1,2−ビス(ベンズオキサゾリル−2)エタン277g(1.1モル、収率88%)を得た。
【0036】
〔参考例4〕
<HBTの合成>
3Lのフラスコに4N塩酸水1250ml(5モル)、2−アミノチオフェノール300g(2.4モル)、スベリン酸209g(1.2モル)を投入し、攪拌下、内温95℃で12時間反応を行った。反応液を室温まで冷却した後、25%アンモニア水700mlを加え、水冷下で、さらに2時間攪拌を行った。系内の析出物を分離し、水洗、乾燥することにより、目的とする1,6−ビス(ベンズチアゾリル−2)ヘキサン317g(0.9モル、収率75%)を得た。
【0037】
比較例において使用したゴム・カーボンブラック用カップリング剤は、以下のとおりである。
[比較例のゴム・カーボンブラック用カップリング剤]
・ビス(ジメチルアミノエチル)テトラスルフィド(「DME」と略記する。特許文献1記載)
・ビス(ジメチルアミノプロピル)テトラスルフィド(「DMP」と略記する。特許文献1記載)
・ビス(ジメチルアミノピリジニウムヘキシルクロリド)テトラスルフィド(「DPH」と略記する。特許文献2記載)
これらのテトラスルフィド化合物は、特許文献1または特許文献2に記載された方法で合成した。
【0038】
対照試験、実施例及び比較例で採用した評価試験方法は、以下のとおりである。
【0039】
[内部損失測定試験]
未加硫ゴムシートを、200×200×2mmの金型中で160℃×15分間加熱して、加硫ゴムシートを作成し、この加硫ゴムシートから5×20×2mmの短冊状の試験片を切り出した。この試験片を、粘弾性スペクトロメーター(ユービーエム社製、型式Rheosol-G5000)に、掴み具間隔15mmでセットし、雰囲気温度0℃及び60℃で、周波数10Hz、動歪5°の捻り変形を与えて試験片の内部損失(Tanδ)を測定した。
0℃での内部損失[Tanδ(0℃)]は、ウエットグリップ力の指数であり、数値が大きい程、タイヤのウエットグリップ力が大きいと判定される。
60℃での内部損失[Tanδ(60℃)]は、転がり抵抗の指数であり、数値が小さい程、タイヤの転がり抵抗が小さく、低燃費特性が良好であると判定される。
【0040】
内部損失測定試験の結果は、表1においては全て対照試験1のウエットグリップ指数、転がり抵抗指数の値を100とした場合の相対値で示し、表2においては全て対照試験2のウエットグリップ指数、転がり抵抗指数の値を100とした場合の相対値で示した。
【0041】
〔対照試験1〕
NR、カーボンブラック、プロセスオイル、ステアリン酸を表1記載の配合割合になるように計量し、これらをバンバリーミキサーを用いて混練し、マスターバッチを調製した。これに、亜鉛華、加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤を表1記載の組成になるように添加し、表面温度70℃の2本ロールミキサーを用いて混練し、シート状に加工した未加硫ゴム組成物を調製した。
得られた未加硫ゴム組成物について内部損失測定試験を行ったところ、得られた試験結果は、表1に示したとおりであった。
【0042】
〔実施例1〜6〕
ゴム・カーボンブラック用カップリング剤を使用した以外は、対照試験1の場合と同様にして、表1記載の組成を有するシート状に加工した未加硫ゴム組成物を調整し、内部損失測定試験を行った。得られた試験結果は、表1に示したとおりであった。
【0043】
〔比較例1〜3〕
実施例1〜6と同様にして、表1記載の組成を有するシート状に加工した未加硫ゴム組成物を調整し、内部損失測定試験を行った。得られた試験結果は、表1に示したとおりであった。
【0044】
〔対照試験2〕
NRの代わりにSBRを使用した以外は、対照試験1と同様にして、表2記載の組成を有するシート状に加工した未加硫ゴム組成物を調整し、内部損失測定試験を行った。得られた試験結果は、表2に示したとおりであった。
【0045】
〔実施例7〜12〕
ゴム・カーボンブラック用カップリング剤を使用した以外は、対照試験2の場合と同様にして、表2記載の組成を有するシート状に加工した未加硫ゴム組成物を調整し、内部損失測定試験を行った。得られた試験結果は、表2に示したとおりであった。
【0046】
〔比較例4〜6〕
実施例7〜12と同様にして、表2記載の組成を有するシート状に加工した未加硫ゴム組成物を調整し、内部損失測定試験を行った。得られた試験結果は、表2に示したとおりであった。
【0047】
【表1】

【0048】
【表2】

【0049】
表1及び表2に示した試験結果によれば、本発明のゴム・カーボンブラック用カップリング剤を配合したゴム組成物は、従来技術のゴム・カーボンブラック用カップリング剤を配合したゴム組成物に比べ、ウエットグリップ性は同等を維持しつつ、転がり抵抗性が飛躍的に改善された。
【産業上の利用可能性】
【0050】
以上の通りであり、本発明によれば、優れたウエットグリップ性能を有し、転がり抵抗を低減させた低燃費型タイヤを提供する事ができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化1の化学式(I)で示される芳香族縮合複素環化合物を含有することを特徴とするゴム・カーボンブラック用カップリング剤。
【化1】

(式中、Aは、O、S、NH、またはNRを表わす。Rは、炭素数1〜6の直鎖状または分岐状のアルキル基を表わす。nは1〜12の整数を表わす。)
【請求項2】
ジエン系ゴム100重量部に対して、カーボンブラックを10〜100重量部配合し、該カーボンブラック100重量部に対して、請求項1記載のゴム・カーボンブラック用カップリング剤を1〜30重量部配合したことを特徴とするゴム組成物。

【公開番号】特開2013−28665(P2013−28665A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−163898(P2011−163898)
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(000180302)四国化成工業株式会社 (167)
【Fターム(参考)】