説明

ゴム成分(A)と基布(B)とを強固に加硫接着した筒状成形品及びその製造方法。

【課題】基布上にゴムを強固に接着した筒状成形品及びその製造方法の提供。具体的には回転式ゴム印用の無端印字ベルトの製造時に、補強布とゴムとの煩雑な接着工程を必要としない製造方法の提供。
【解決手段】ゴム成分と基布を、接着剤を塗布することなしに強固に加硫接着した筒状成形品。射出成形用金型のキャビティ内に、表面を基布で被覆した中芯を貫通させて、この基布上にゴムを射出成形し、加硫することで加硫接着をさせる筒状成形品の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤を塗布することなしに、基布上にゴムを強固に加硫接着した筒状成形品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
回転式ゴム印用の無端印字ベルトは、低伸長時の高応力、低伸び、低永久伸びといった性能が要求される。この要求性能の狙いは、ベルトが低応力で容易に変形すると、印字がずれたり、永久伸びが大きいとベルトが外れやすくなってしまうのを防止するためである。
上記理由から、これまで、その対策として、ゴムと補強布とを接着させた積層構造が採られている。
従来、回転式ゴム印用の無端印字ベルトは、所要の凹文字を形成した平板状金型内に加硫剤、充填剤、添加剤等を混練した未加硫ゴムよりなるシートを収容したうえ、その上面に補強布を重ね加圧加熱して加硫した後脱型して、金型の凹文字に相当する凸文字が表面に形成された板状の加硫ゴムシートを製造する。次に、このゴムシートについて、一方の端のゴムを剥離した接着部にゴム溶剤に溶かした未加硫ゴムを塗布した後、他方の端の接着部と加硫接着して無端の環状体とし、これを所要幅に切断し、環状帯体として得られている。(特許文献1、特許文献2)
これらは、いずれも帯状に成形した後に、両端を接着剤によって接着して環状体とする工程が必要であった。また接着剤と補強布、接着剤と加硫ゴムとの親和性、濡れ性が不十分であると、剥がれを生じたり、部分的に補強性が不足したりするという問題があった。さらに接着剤に用いられる溶剤の揮散による環境に及ぼす影響も好ましいものではなかった。これらの諸問題を解決しながら、低伸長時の高応力、低伸び、低永久伸びといった性能を満足するような技術開発が急務の課題となってきた。
【特許文献1】特開平07-089205
【特許文献2】特開平09-327963
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、回転式ゴム印用の無端印字ベルトの製造に関し、従来のベルト製造工程の補強布とゴムとの煩雑な接着工程を必要としない方法で製造することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
ゴム成分(A)の表面に凸文字を形成し、裏面を基布(B)で補強した回転式ゴム印用の無端印字ベルト において、割型の金型を型締めして形成されるキャビティの中央部に、表面を基布(B)で被覆した中芯を貫通させ、この中芯の外周とキャビティで形成される筒状空間に同筒状空間の片端からゴム成分(A)を射出成形することによって上記課題を解決することを見出した。
より具体的には、本発明は次のような筒状成形品及びその製造方法を提供する。
(1)ゴム成分(A)と基布(B)を、接着剤を塗布することなしに強固に加硫接着した筒状成形品。
(2)前記ゴム成分(A)が、ゴム及びまたは熱可塑性エラストマー、充填剤、軟化剤及びまたは可塑剤、加硫剤を含む(1)に記載の筒状成形品。
(3)前記基布(B)が、綿、絹、羊毛、アセテート、ビニロン、ビニリデン、ポリ塩化ビニル、アクリル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリウレタン、フッ素系フィラメント、ポリクラール、レーヨン、ナイロン、ポリアミド、ポリエステルから選択される繊維のいずれかを平織りまたは綾織した織物あるいは編物である(1)〜(2)のいずれかに記載の筒状成形品。
(4)前記基布(B)が、レゾルシン−ホルムアルデヒド初期縮合物とラテックスとを含有するRFL処理剤に浸漬後、高温で加熱処理してなる(1)〜(3)のいずれかに記載の筒状成形品。

(5)前記基布(B)に、アリル基またはエポキシ基またはアルコキシ基を含む有機基を有するラジカル重合可能なモノマーを含浸させて、電子線を照射することによってラジカル重合し、表面にグラフト化してなる(1)〜(3)のいずれかに記載の筒状成形品。
(6)前記基布(B)の布目の大きさが、0.05mm〜2mmである(1)〜(5)のいずれかに記載の筒状成形品。
(7)割型の金型を型締めして形成されるキャビティの中央部に、表面を基布(B)で被覆した中芯を貫通させ、この中芯の外周とキャビティで形成される筒状空間に同筒状空間の片端からゴム成分(A)を射出成形して加硫した(1)〜(6)のいずれかに記載の筒状成形品の製造方法。
(8)(7)に記載の製造方法によって成形したベルト。
(9)回転式ゴム印用の無端印字ベルトである前記ベルト。
【発明の効果】
【0005】
本発明により、接着剤を用いた接着工程を経ることなしに、ゴム成分(A)と基布(B)とが強固に加硫接着した筒状成形品を得ることが可能となった。工程省略による生産性の向上による低コスト化に寄与できることならびに通常接着剤に含まれる溶剤の揮散に伴う環境に及ぼす悪影響も回避できることとなった。すなわち、回転式ゴム印用の無端印字ベルトの生産性の向上と環境改善とを一挙に解決でき当該産業界の発展に寄与すること大である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下本発明を詳細に説明する。
本発明を構成するゴム成分(A)は、ゴム及びまたは熱可塑性エラストマー、充填剤、軟化剤及びまたは可塑剤、加硫剤を含有してなる。
ゴムとしては、ジエン系ゴム、非ジエン系ゴムであり、ジエン系ゴムとしては、天然ゴム、IR、BR、SBR、XSBR、CR、XCR、NBR、XNBR、HNBRなどである。非ジエン系ゴムとしては、IIR、XIIR、EPM、EPDM、U、Q、CSM、CM、ACM、AEM、CO、ECO、FKM、FMQ、FVMQ、MQ、VMQ、AU、EU、NORなどを挙げることができる。これらは単独あるいは二種以上を組み合わせて使用してもよい。これらのゴムは、要求される性能に応じて適宜選択することができる。耐油・耐溶剤性では、NBR、XNBR、HNBR、ACM、CR、CO、ECOなどであり、主溶剤としてエチレングリコールモノエチルエーテル、エレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル、ベンジルアルコール等の芳香族アルコールに対しては、天然ゴム、IR、BR、SBR、IIR、XIIR、EPM、EPDMが選択される。
【0007】
一方、熱可塑性エラストマーとしては、たとえばポリ塩化ビニル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、環状オレフィン共重合樹脂、ポリメチルメタクリレート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリアミドイミド樹脂およびイミド化ポリメチルメタクリレート樹脂などがあげられる。
これらは単独あるいは二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0008】
軟化剤としては、鉱物油系軟化剤と植物油系軟化剤が挙げられ、例えば、鉱物油系軟化剤として、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイルなどの各種オイルである。植物油系軟化剤としては、ひまし油、錦実油、あまに油、なたね油、大豆油、パーム油、やし油、落花生油、パイン油、トール油などである。これらは単独あるいは二種以上を併用してもよい。軟化剤の添加量はゴム又は熱可塑性エラストマー100重量部に対し、1重量部〜100重量部である。好ましくは5重量部〜80重量部である。更に好ましくは10重量部〜50重量部である。この範囲外では、硬度が高くなったり、成形物の加工性が困難となる。
【0009】
可塑剤としては、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−(2−エチルヘキシル)フタレート、ジ−n−オクチルフタレート、高級アルコールフタレート、ジイソオクチルフタレート、ジイソブチルフタレート、ジヘプチルフタレート、ジフェニルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジトリデシルフタレート、ジウンデシルフタレート、ジ(ヘプチル,ノニル,ウンデシル)フタレート、ベンジルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジノニルフタレート、ジノルマルアルキルフタレート、ジ−n/イソアルキルフタレート、アルキルベンジルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルシクロヘキシルフタレート、メチルフタリルエチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレートのごときフタル酸誘導体;ジメチルイソフタレート、ジ−(2−エチルヘキシル)イソフタレート、ジイソオクチルイソフタレートのごときイソフタル酸誘導体;ジ−(2−エチルヘキシル)テトラヒドロフタレート、ジ−n−オクチルテトラヒドロフタレート、ジイソデシルテトラヒドロフタレート、C7〜10アルキルテトラヒドロフタレートのごときテトラヒドロフタル酸誘導体;
【0010】
ジ−n−ブチルアジペート、ジ−(2−エチルヘキシル)アジペート、ジイソデシルアジペート、ジ(n−オクチル,n−デシル)アジペート、ジイソノニルアジペート、ベンジル−n−ブチルアジペート、ベンジルオクチルアジペート、ジ−(ブトキシエトキシエチル)アジペートのごときアジピン酸誘導体;ジ−(2−エチルヘキシル)アゼレート、ジイソオクチルアゼレート、ジ−2−エチルヘキシル−4−チオアゼレート、ジ−n−ヘキシルアゼレートのごときアゼライン酸誘導体;ジ−n−ブチルセバケート、ジ−(2−エチルヘキシル)セバケート、ジ−C7〜9アルコールセバケートのごときセバシン酸誘導体;ジ−n−ブチルマレート、ジメチルマレート、ジエチルマレート、ジ−(2−エチルヘキシル)マレート、ジアリルマレート、モノブチルマレート、モノ−2−エチルヘキシルマレートのごときマレイン酸誘導体;ジ−n−ブチルフマレート、ジ−(2−エチルヘキシル)フマレート、ジメチルフマレート、ジエチルフマレートのごときフマル酸誘導体;
【0011】
トリ−(2−エチルヘキシル)トリメリテート、トリ−n−オクチルトリメリテート、トリイソデシルトリメリテート、トリイソオクチルトリメリテート、ジイソオクチルモノイソデシルトリメリテート、トリ−n−ヘキシルトリメリテート、トリカプリルトリメリテート、トリイソノニルトリメリテート、トリアルキルトリメリテートのごときトリメリット酸誘導体;トリエチルシトレート、トリ−n−ブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート、アセチルトリ−n−ブチルシトレート、アセチルトリ−(2−エチルヘキシル)シトレート、アセチルトリ−n−オクチル,n−デシルシトレートのごときクエン酸誘導体;モノメチルイタコネート、モノブチルイタコネート、ジメチルイタコネート、ジエチルイタコネート、ジブチルイタコネート、ジ−(2−エチルヘキシル)イタコネートのごときイタコン酸誘導体;ブチルオレート、テトラヒドロフルフリルオレート、グリセリルモノオレート、ジエチレングリコールモノオレートのごときオレイン酸誘導体;
【0012】
メチルアセチルリシノレート、ブチルアセチルリシノレート、グリセリンモノリシノレート、ジエチレングリコールモノリシノレート、グリセリルトリ−(アセチルリシノレート)のごときリシノール酸誘導体;n−ブチルステアレート、グリセリルモノステアレート、ジエチレングリコールジステアレート、安定化ペンタクロロメチルステアレート、塩素化ステアレートのごときステアリン酸誘導体;ジエチレングリコールモノラウレート、ジエチレングリコールジベラルゴネート、トリエチレングリコールジペラルゴネート、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、オクチル脂肪酸エステル、脂肪族二塩基酸エステル、多価アルコール脂肪酸エステルのごときその他の脂肪酸エステル;
【0013】
ベンゼンスルホンブチルアミド、o−,p−トルエンスルホンアミド、N−エチル−o−,p−トルエンスルホンアミド、N−シクロヘキシル−p−トルエンスルホンアミド、フェノール及びクレゾールのアルキルスルホン酸エステルのごときスルホン酸誘導体;トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリ−(2−エチルヘキシル)ホスフェート、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、イソデシルジフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリトリルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、混合アリルホスフェート、フェニル/イソプロピルフェニルホスフェート、混合トリアリルホスフェート、アルキルアリルホスフェート、トリス(クロロエチル)ホスフェート、ジフェニルモノ−o−キセニルホスフェートのごときリン酸誘導体;テトラ−2−エチルヘキシルピロメリテート、テトラ−n−オクチルピロメリテート、ジイソデシルサクシネート、ジペンタエリスリトールエステル、トリメチルペンタンジオールモノイソブチレートのエステル、脂肪族モノカルボン酸エステル、高分子量のモノメリックエステル;
【0014】
ジエチレングリコールジベンゾエート、ジプロピレングリコールジベンゾエート、ポリエチレングリコールベンゾエート、ポリエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジ−(2−エチルブチレート)、トリエチレングリコールジ−(2−エチルヘキソエート)、ポリエチレングリコールジ−(2−エチルヘキソエート)ポリエチレングリコール、ジブチルメチレンビス−チオグリコレート、モノカルボン酸混合物のポリグリコールエステルのごときグリコール誘導体;グリセロールモノアセテート、グリセロールジアセテート、グリセロールトリアセテート、グリセロールトリブチレート、グリセロールエーテルアセテートのごときグリセリン誘導体;塩素化パラフィンのごときパラフィン誘導体;エポキシ化不飽和油脂類、エポキシ化不飽和脂肪酸エステル類、エポキシシクロヘキサン誘導体、エピクロルヒドリン誘導体のごときエポキシ誘導体;部分水添ターフェニル、オレイルニトリル、エーテルチオエーテル、ジベンジルエーテル、フェノール誘導体、エチレンオキシド縮合物、フロロシリコーンオイル、モノクロルナフタリンなどを挙げることができる。
これらの可塑剤は、単独あるいは二種以上を併用してもよい。可塑剤の添加量はゴム又は熱可塑性エラストマー100重量部に対し、1重量部〜100重量部である。好ましくは5重量部〜80重量部、更に好ましくは10重量部〜50重量部である。この範囲外では、硬度が高くなったり、成形物の加工性が困難となる。
【0015】
充填剤としては、例えばカーボンブラック、重質炭酸カルシウム、胡粉、軽微性炭酸カルシウム、極微細活性化炭酸カルシウム、特殊炭酸カルシウム、塩基性炭酸マグネシウム、カオリンクレー、焼成クレー、パイロフライトクレー、シラン処理クレー、天然ケイ酸、合成無水ケイ酸、合成含水ケイ酸、合成ケイ酸カルシウム、合成ケイ酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、フェライト、カオリン、セリサイト、タルク、微粉タルク、ウォラスナイト、ゼオライト、ゾーノトナイト、マイカ、アスベスト、PMF(Processed Mineral Fiber : 加工鉱物繊維)、セピオライト、チタン酸カリウム、エレスタダイト、石膏繊維、ガラスバルン、シリカバルン、ハイドロタルサイト、フライアシュバルン、シラスバルン、カーボン系バルン、フェノール樹脂、尿素樹脂、スチレン系樹脂、サラン樹脂等の有機系バルン、アルミナ、硫酸バリウム、硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、二硫化モリブデン、グラファイト、ガラス繊維(チョップドストランド、ロービング、ミルドガラス繊維、ガラスフレーク)、カットファイバー、ロックファイバー、ミクロファイバー、炭酸繊維、芳香族ポリアミド繊維、チタン酸カリウム繊維、再生ゴム、ゴム粉末、エボナイト粉末、セラック、木粉等が挙げられる。これらの充填剤は、表面を各種カップリング剤等で処理したものであってもよい。これらの充填剤は、単独でまたは二種以上を混合して使用することができる。好ましい充填剤としては、カーボンブラック、合成無水ケイ酸、合成含水ケイ酸である。充填剤の添加量は、ゴム又は熱可塑性エラストマー100重量部に対し、1重量部〜300重量部、好ましくは5重量部〜200重量部、更に好ましくは10重量部〜100重量部である。この範囲外では硬度が高くなったり、成形物の加工性が困難となる。
【0016】
架橋剤としては、用いられるゴムの種類により、硫黄系加硫剤、有機過酸化物、キノイド加硫剤、樹脂加硫剤、金属酸化物加硫剤、含硫黄有機化合物、アミン加硫剤、トリアジン系加硫剤、ポリオール加硫剤、金属石けん加硫剤、マレイミド系加硫剤、ヒドロシリル化反応用架橋剤等を適宜選択して使用される。
【0017】
硫黄系加硫剤としては、例えば粉末硫黄、硫黄華、高分散性硫黄、不溶性硫黄、沈降硫黄、表面処理硫黄、コロイド硫黄、塩化硫黄、一塩化硫黄、二塩化硫黄等が挙げられる。これらの硫黄系加硫剤は、単独でまたは二種以上を混合して使用することができる。また、加硫・架橋剤として硫黄系加硫剤を使用する場合には、加硫促進剤を併用することもできる。
【0018】
加硫促進剤としては、例えばヘキサメチレンテトラミン、アセトアルデヒド・アンモニア等のアルデヒドアンモニア類;n−ブチルアルデヒドーアニリン縮合品、ブチルアルデヒドーモノブチルアミン縮合品、ヘプトアルデヒドーアニリン反応品、トリクロトニリデン・テトラミン等のアルデヒドアミン類;ジフェニルグアニジン、ジーoートリルグアニジン、オルト・トリル・ビグアニド、ジカテコール・ホウ酸のジオルト・トリル・グアニジン塩等のグアニジン塩類;2−メルカプトイミダゾリン等のイミダゾリン類;2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトチアゾリン、ジベンゾチアジル・ジスルフィド、2−メルカプトベンゾチアゾールの亜鉛塩、2−メルカプトベンゾチアゾールのナトリウム塩、2−メルカプトベンゾチアゾールのシクロヘキシルアミン塩、2−(2,4−ジニトロフェニルチオ)ベンゾチアゾール、2−(N,N−ジエチルチオ・カルバモイルチオ)ベンゾチアゾール、2−(4’−モルホリノ・ジチオ)ベンゾチアゾール、4−モルホニル−2−ベンゾチアジル・ジスルフィド等のチアゾール類;N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジル・スルフェンアミド、N,N−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアジル・スルフェンアミド、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアジル・スルフェンアミド、N,N−ジイソプロピル−2−ベンゾチアジル・スルフェンアミド、N−tert−ブチル−2−ベンゾチアジル・スルフェンアミド等のスフェンアミド類;チオカルバニド、エチレン・チオ尿素(2−メルカプトイミダゾリン)、ジエチル・チオ尿素、ジブチル・チオ尿素、混合アルキルチオ尿素、トリメチルチオ尿素、ジラウリルチオ尿素等のチオ尿素類;ジメチル・ジチオカルバミン酸ナトリウム、ジエチル・ジチオカルバミン酸ナトリウム、ジ−n−ブチル・カルバミン酸ナトリウム、ジメチル・ジチオカルバミン酸鉛、ジアミル・ジチオカルバミン酸鉛、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジアミル・ジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチル・ジチオカルバミン酸亜鉛、ジーn−ブチル・ジチオカルバミン酸亜鉛、ジベンジル・ジチオカルバミン酸亜鉛、N−ペンタメチレン・ジチオカルバミン酸亜鉛、エチルフェニル・ジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチル・ジチオカルバミン酸セレン、ジエチル・ジチオカルバミン酸セレン、ジエチル・ジチオカルバミン酸テルル、ジエチル・ジチオカルバミン酸カドミウム、ジメチル・ジチオカルバミン酸銅、ジメチル・ジチオカルバミン酸鉄、ジメチル・ジチオカルバミン酸ビスマス、ジメチル・ジチオカルバミン酸ピペリジン、メチルペンタメチレン・ジチオカルバミン酸ピペコリン、活性化ジチオカルバメート等のジチオカルバミン酸塩類;テトラメチルチウラム・モノスルフィド、テトラメチルチウラム・ジスルフィド、活性テトラメチルチウラム・ジスルフィド、テトラエチルチウラム・ジスルフィド、テトラブチルチウラム・ジスルフィド、N,N’−ジメチル−N,N’−ジフェニルチウラム・ジスルフィド、ジペンタメチレンチウラム・ジスルフィド、ジペンタメチレンチウラム・テトラスルフィド、混合アルキル・チウラム・ジスルフィド等のチウラム類;イソプロピル・キサントゲン酸ナトリウム、イソプロピル・キサントゲン酸亜鉛、ブチル・キサントゲン酸亜鉛等のザンテート類;4,4’−ジチオジモルホリン、アミノジアルキルジチオホスフェート、亜鉛−o,o−n−ブチル・ホスホロジチオエート、3−メルカプトイミダゾリン−チオン−2、チオグリコール酸エステル等が挙げられる。これらの加硫促進剤は、単独でまたは二種以上を混合して使用することができる。
【0019】
有機過酸化物としては、例えば1,1−ジ第三ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、ジ第三ブチルパーオキサイド、第三ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(第三ブチルパーオキシ)ヘキサン)、2,5−ジメチル−2,5−ジ(第三ブチルパーオキシ)ヘキシン、1,3−ビス(第三ブチルパーオキシ−イソプロピル)ベンゼン、第三ブチルパーオキシ−イソプロピルカーボネート、アセチルシクロヘキシルスルフォニルパーオキサイド、イソブチルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジアリルパーオキシジカーボネート、ジプロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2−エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、ジ(メトキシイソプロピル)パーオキシジカーボネート、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、第三ヘキシルパーオキシネオヘキサネート、ジ(3−メチル−3−メチロキシブチル)パーオキシジカーボネート、第三ブチルパーオキシネオデカネート、第三ヘキシルパーオキシネオデカネート、第三ブチルパーオキシネオヘキサネート、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキシド、第三ヘキシルパーキシピバレート、第三ブチルパーヘキシピバレート、3,3,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、クミルパーオキシオクテート、アセチルパーオキサイド、第三ブチルパーオキシ(2−エチルヘキサネート)、ベンゾイルパーオキサイド、第三ブチルパーオキシイソイソブチレート、1,1−ビス(第三ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、第三ブチルパーオキシマレイックアシッド、第三ブチルパーオキシラウレート、第三ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルヘキサネート、シクロヘキサノンパーオキサイド、第三ブチルパーオキシアリルカーボネート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,2−ビス(第三ブチルパーオキシ)オクタン、第三ブチルパーオキシアセテート、2,2−ビス(第三ブチルパーオキシ)ブタン、第三ブチルパーオキシベンゾエート、ブチル−4,4−ビス(第三ブチルパーオキシ)バレレート、ジ第三ブチルジパーオキシイソフタレート、メチルエチルケトンパーオキサイド、α,α’−ビス(第三ブチルパーオキシーmーイソプロピル)シクロヘキサン、ジイソプロピルベンゼン−ヒドロパーオキサイド、pーメンタンヒドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルヒドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、第三ブチルヒドロパーオキサイド等が挙げられる。これらの有機過酸化物は、単独でまたは二種以上を混合して使用することができる。
【0020】
また、加硫・架橋剤として有機過酸化物を使用する場合には、共架橋剤を併用することもできる。共架橋剤としては、例えば硫黄、pーキノンジオキシム、p−ベンゾキノンジオキシム、p,p’ージベンゾイルキノンジオキシム、NーメチルーN’ー4ージニトロソアニリン、N,N−m−フェニレンビスマレイミド、ジペンタメチレンチウラムペンタスルフィド、ジニトロソベンゼン、ジビニルベンゼン、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアジンチオール、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメトロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジアリルメラミン、ジビニルアジペート、ビニルブチラート、ビニルステアレート、液状ポリブタジエンゴム、液状ポリイソプレンゴム、液状スチレンーブタジエンゴム、液状アクリロニトリルーブタジエンゴム、(メタ)アクリル酸マグネシウム、(メタ)アクリル酸カルシウム、(メタ)アクリル酸アルミニウム、(メタ)アクリル酸亜鉛、(メタ)アクリル酸第一錫、(メタ)アクリル酸マグネシウム等が挙げられる。これらの共架橋剤は、単独でまたは二種以上を混合して使用することができる。
【0021】
キノイド加硫剤としては、例えばp−キノンジオキシム、p,p’−ジベンゾイルキノンジオキシム、テトラクロロ−p−ベンゾキノン、ポリ−p−ジニトロベンゼン等が挙げられる。これらのキノイド加硫剤は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。樹脂加硫剤としては、例えばアルキルフェノール・ホルムアルデヒド樹脂、メラミンーホルムアルデヒド縮合物、トリアジン−ホルムアルデヒド縮合物、オクチルフェノール・ホルムアルデヒド樹脂、アルキルフェノール・スルフィド樹脂、ヘキサメトキシメチル・メラミン樹脂等が挙げられる。これらの樹脂加硫剤は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。金属酸化物加硫剤としては、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、一酸化鉛等が挙げられる。これらの金属酸化物加硫剤は、単独でまたは二種以上を混合して使用することができる。
【0022】
含硫黄有機加硫剤としては、例えばモルホリンジスルフィド、アルキルフェノールジスルフィド、N、N’−ジチオ−ビス(ヘキサヒドロ−2H−アゼピノン−2)、チウラムポリスルフィド、2ー(4’ーモルホリノ・ジチオ)ベンゾチアゾール等が挙げられる。これらの含硫黄有機加硫剤は、単独でまたは二種以上を混合して使用することができる。
【0023】
ポリアミン系加硫剤としては、例えばヘキサメチレンジアミンカルバメ−ト、ヘキサメチレンジアミン、トリエチレン・テトラミン、テトラエチレン・ペンタミン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)カルバメ−ト、N,N’−ジシンナミリデン−1,6−ヘキサンジアミン、アンモニウムベンゾエ−ト等が挙げられる。これらのポリアミン系加硫剤は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。トリアジン系加硫剤としては、例えば2,4,6−トリメルカプト−s−トリアジン、2−ジ−n−ブチルアミノ−4,6−ジメルカプト−s−トリアジン等が挙げられる。これらのトリアジン系加硫剤は、単独でまたは二種以上を混合して使用することができる。
【0024】
ポリオ−ル加硫剤としては、例えばビスフェノ−ルA、ビスフェノ−ルAF、ハイドロキノン、ペンタエリトリト−ル等が挙げられる。これらのポリオール系加硫剤は、単独でまたは二種以上を混合して使用することができる。金属石けん加硫剤としては、例えばステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム等が挙げられる。これらの金属石けん加硫剤は、単独でまたは二種以上を混合して使用することができる。マレイミド系加硫剤としては、例えばN,N’−m−フェニレンジマレイミド等が挙げられる。
【0025】
ヒドロシリル化反応用架橋剤としては、一分子中に平均2個以上のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサンである。該オルガノポリシロキサンの分子構造は特に限定されないが、例えば、直鎖状、分岐状、環状、または三次元網状構造の樹脂状物のいずれでもよい。ケイ素原子に結合している有機基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフロロプロピル基等のハロゲン化アルキル基が例示され、好ましくは、メチル基である。
【0026】
このようなオルガノポリシロキサンとしては、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、およびこれらのオルガノポリシロキサンの二種以上の混合物が例示される。
【0027】
ヒドロシリル化反応を促進させるためのヒドロシリル化反応用触媒としては、白金 系触媒、ロジウム系触媒、イリジウム系触媒、パラジウム系触媒、ルテニウム系触媒が例示され、好ましくは、白金系触媒である。具体的には、白金微粉末、白金黒、塩化白金酸、四塩化白金 、アルコール変性塩化白金酸、白金のオレフィン錯体、白金のアルケニルシロキサン錯体、白金のカルボニル錯体、これらの白金系触媒を含むメチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、シリコーン樹脂等の熱可塑性有機樹脂粉末等の白金系触媒である
【0028】
さらに、本発明のゴム成分(A)には通常のゴムで使用されている各種の添加剤を配合することができる。このような添加剤としては、老化防止剤、酸化防止剤、加工助剤、活性剤、紫外線吸収剤、粘着付与剤、滑剤、奪水剤、ワックス、活性剤、光安定剤、カップリング剤、内部離型剤、スコーチ防止剤、発泡剤、発泡助剤、抗菌剤、難燃剤、素練り促進剤、蓄熱剤、電子導電付与剤、イオン導電付与剤、熱伝導付与剤、放熱剤、蓄光剤、着色剤等を挙げることができる。
【0029】
本発明の基布(B)としては、綿、麻、絹、羊毛などの天然繊維、アセテート、ビニロン、ビニリデン、ポリ塩化ビニル、アクリル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリウレタン、フッ素系フィラメント、ポリクラール、レーヨン、ナイロン、ポリエステルなどの合成繊維を平織りや綾織りした織物や各種編物とした布、不織布とした布を用いることができる。
ゴム成分(A)と基布(B)との接着を向上させる方法としては、基布(B)の布目の大きさが重要な要素となる。基布(B)の布目の大きさは、0.05mm〜2mm、好ましくは、0.1mm〜1.5mmである。さらに好ましくは、0.2mm〜1.2mmである。基布(B)の布目の大きさは、基布の布目と等しい面積を有する円の直径として表した値である。
基布(B)の布目の大きさを0.05mm〜2mmとすることにより、基布(B)の両面をゴム成分(A)が布目を介して結合し、基布(B)とゴム成分(A)との見掛け上の接着性を向上することができる。基布(B)の布目の大きさが0.05mm未満では、基布(B)とゴム成分(A)の接着が不十分となるおそれがある。基布(B)の布目の大きさが2mmを超えると、基布(B)が粗な構造となって筒状成形品の強度が低下するおそれがある。
また、基布(B)は種々の処理をしたものが好ましい。
以下に本発明の繊維の処理方法を示した。
【0030】
(その1) 基布(B)とゴム成分(A)との接着方法において、基布(B)をレゾルシン−ホルマリン−ラテックス系処理剤(以下「RFL処理剤」ともいう)に浸漬した後、乾燥熱処理し、その後、前記ゴム成分(A)と加硫接着させる。上記RFL処理剤は、通常は表面処理剤として汎用されているものである。
上記RFL処理剤は、レゾルシンとホルムアルデヒドとを、レゾルシン/ホルムアルデヒドのモル比が1/3〜3/1の範囲となるように含むのが好ましく、(ラテックス固形分)/(レゾルシンとホルムアルデヒドの固形分)の重量比が10/1〜1/3の範囲となるのが好ましい。
【0031】
上記ラテックスとしては、スチレン−ブタジエン−ビニルピリジンラテックスが好ましい。上記スチレン−ブタジエン−ビニルピリジンラテックスは、スチレン−ブタジエン−ビニルピリジン三元共重合体である。上記スチレン−ブタジエン−ビニルピリジンラテックスの組成としては、例えば、スチレン15重量%、ブタジエン70重量%、ビニルピリジン15重量%のものが好ましい。
【0032】
上記RFL処理剤に、基布(B)及びゴム成分(A)との濡れ性を向上させるために、界面活性剤としてβ−ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩を含有させてもよい。上記β−ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩の添加量は、10%水溶液にして、RFL処理剤100重量部に対して0.5〜10重量部が好ましい。0.5重量部未満では濡れ性が向上せず、10重量部を超えると接着性が悪くなるので、好ましくない。
【0033】
接着方法は、まず基布(B)を上記RFL処理剤に浸漬後、通常、100〜250℃の温度の範囲で数分間加熱し、RFLを基布(B)に定着させる。この際、基布(B)によっては、RFL処理の前に、通常よく用いられるポリイソシアネート化合物又はエポキシ化合物による処理を行ってもよい。
【0034】
上記ポリイソシアネート化合物としては分子内に少なくとも1つのイソシアネート基を有する化合物であれば特に限定されず、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ヘキサントリイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルジイソシアネート等を挙げることができる。
【0035】
上記エポキシ化合物としては分子内に少なくとも1つのエポキシ基を有する化合物であれば特に限定されず、例えば、エチレングリコール、グリセリン、ソルビトール、ペンタエリスリトール等の多価アルコール;ポリエチレングリコール等のポリアルキレングリコールと、エピクロロヒドリン等のハロゲン含有エポキシ化合物との反応生成物;レゾルシン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジメチルエタン、フェノール−ホルムアミド樹脂、レゾルシン−ホルムアミド樹脂等の多価フェノール類又はフェノール樹脂と、エピクロロヒドリン等のハロゲン含有エポキシ化合物との反応生成物;脂肪族又は脂環族不飽和化合物の有する二重結合を過酢酸等にて酸化して得られるエポキシ化合物等を挙げることができる。また、エポキシ基を有する種々のシランカップリング剤を用いてもよい。
(その2)基布(B)に、予めゴム成分(A)と反応し易い有機基(アリル基、エポキシ基、アルコキシ基など)を有するラジカル重合可能なモノマーを含浸させ、電子線を照射することにより、ラジカル重合し、表面にグラフト化する方法。
ここで、アリル基を含むモノマーとしては、例えば、メタクリル酸アリルなどがある。エポキシ基を含むモノマーとしては、例えば、グリシジルメタクリレートなどがある。アルコキシ基を含むモノマーとしては、例えば、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどがある。
【0036】
電子線照射によるモノマーのグラフト重合方法に特に制限が無く、例えば、基布(B)に電子線を照射した後に、モノマー溶液に接触させる前照射法、あるいは、基布(B)とモノマーを共存させて電子線を照射させる同時照射法であってもよい。
【0037】
モノマーのグラフト重合においては、モノマー溶液として用いることが好ましい。使用する溶媒は特に制限がなく、例えば、水、アルコール類や二塩化エチレンなどの有機溶媒を挙げることができる。モノマー溶液は調整後そのまま使用することもできるが、電子線照射により発生するラジカルの消滅を防ぐため、不活性ガスのバブリングなどにより脱酸素することが好ましい。モノマー溶液の濃度は特に制限はない。
【0038】
基布(B)に電子線の照射する線量は特に制限は無いが、5〜1000kGyであることが好ましく、100〜700kGyがより好ましい。電子線の線量は5kGy未満では十分なグラフト重合が発生しない恐れがあり、1000kGyを超えると 基布(B)が硬化あるいは劣化する恐れがある。加速電圧に特に制限はなく、処理する基布(B)の厚さなどによって適宜選択することができるが、通常は150〜300kVであることが好ましい。また、電子線照射雰囲気は酸素濃度が低いことが好ましく、500ppm以下であることが好ましい。電子線照射は、窒素雰囲気下で行うことが好ましい。
【0039】
次に本発明のゴム組成物及び筒状成形品の製造方法について示す。
本発明の筒状成形品の製造方法は、ゴム成分(A)の混練り工程、基布(B)を中芯表面に密着させる被覆工程、射出成形加硫工程、中芯の引抜き工程、加硫成形品の取出し工程からなる。次に示す方法を一例として説明する。
(1)ゴム成分(A)の混練工程
ゴム成分(A)は、通常、押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダー
ミキシングロール等のゴム混練機により調製することができる。
(2)基布(B)を中芯へ密着させる被覆工程
基布(B)と金型の中芯との界面の摩擦抵抗を下げるために、予め中芯表面に離型剤をスプレー塗布する。次に、基布(B)を筒状にしたものを中芯に密着するように被覆する。(密着が不十分では、ゴム組成物を射出成形したときに基布(B)がずれてしまい好ましくない)。
(3)射出成形加硫工程
割型の金型を型締めして形成されるキャビティの中央部に、基布(B)で被覆した中芯を貫通させ、この中芯の外周とキャビティで形成される筒状空間に同筒状空間の片端からゴム成分(A)を射出し所定時間加圧加熱する。
(4)中芯の引抜き工程
加硫後、型締圧力をゼロに戻して中芯を引抜く。
(5)加硫成形品の取り出し工程
金型を開放して、筒状成形品を取り出す。
【実施例】
【0040】
次に、本発明を実施例によって説明するが、本発明はそれら実施例によって何ら限定されるものではない。
(実施例1)
【0041】
ゴム成分(A)として表1のゴム成分1配合を用いた。
表1に示した配合内容で、3Lニーダーを用いて、設定温度70℃、40rpmの条件で
10分間混練り後排出した。排出温度は120℃であった。次に6インチロールを用いて、ロール回転数30rpm、ロール設定温度50℃、ロール間隙2mm、ロールガイド幅200mmで、ニーダー排出物を巻き付け、加硫系を投入し混練りした。加硫系を十分に分散させた後、シート状(幅200mm、厚さ2.5mm)に予備成形したゴム成分(A)を得た。
また、基布(B)の繊維として、ポリエステル繊維用いた。基布の布目の大きさは0.5mmとした。
所要の凹文字を形成した割型の金型を型締めして形成されるキャビティの中央部に、表面を基布(B)で被覆した中芯を貫通させ、この中芯の外周とキャビティで形成される筒状空間に同筒状空間の片端から、所定量のゴム成分(A)を射出成形して加圧加熱加硫した。(100kg/cm2、170℃、3分射出成形加硫)
加硫後型締め圧力を0にして、中芯を引抜き、次に脱型して、金型の凹文字に相当する凸文字が表面に形成された円筒状成形品を得た。次にこの円筒状の加硫成形品の特性を評価した。評価方法は、以下の方法で行った。結果を表1に示した。
[1]中芯引抜き性;加硫後型締め圧力を0にした後、中芯を引抜く時の作業の容易性で評価した。
・ 引張試験;円筒状成形品を切断してこれを試験片とする。この試験片の両端を引張試験機にセットし、5%伸長時の応力、引張強度及び伸びを測定した。(島津製作所製の引張試験機、引張速度;50mm/min)
・ 永久伸び試験;円筒状成形品を切断してこれを試験片とする。この試験片の両端を引張試験機セットし、[1]の引張試験で得た伸びの50%伸長を与えた後10分間その状態を保持する。10分経過後試験片を取り外し室温で10分間放置した後、回復後の試験片の長さを元の長さで除し、100を乗じて永久伸び率を算出した。
[4]接着性;目視観察で評価した。
その結果、中芯の引抜き性は良好であった。また、5%伸長時の応力;10MPa、引張強度;15MPa、破断伸び;30%及び永久伸び率は0.5%となった。低伸長時の応力が大きくまた永久伸び率も極めて小さいことが確認され、印材として好適であることが証明された。ゴム成分(A)と基布(B)との接着性も良好であった。
(実施例2)
【0042】
ゴム成分(A)として表1のゴム成分2配合を用いた他は実施例1と同様にして円筒状成形品を得た。 結果を表1に示した。いずれも良好な結果であった。
(実施例3)
【0043】
ゴム成分(A)として表1のゴム成分3配合を用い、基布(B)の繊維として、アラミド繊維をエポキシ処理して、RFL処理剤に浸漬後230℃以上の高温で加熱処理したものを用いた他は実施例1と同様にして筒状成形品を得た。基布(B)の布目の大きさは0.3mmとした。
結果を表1に示した。いずれも良好な結果であった。
(実施例4)
【0044】
ゴム成分(A)として表1のゴム成分2配合を用い、基布(B)の繊維として、ポリエステル繊維をエポキシ処理して、RFL処理剤に浸漬後230℃以上の高温で加熱処理したものを用いた他は実施例1と同様にして筒状成形品を得た。基布(B)の布目の大きさは0.5mmとした。
結果を表1に示した。いずれも良好な結果であった。
(比較例1)
【0045】
基布の布目の大きさは0.01mmとした他は実施例1と同様にして筒状成形品を得た。 結果を表1に示した。接着性が不良で容易に剥離し、印材として不適であった。
(比較例2)
【0046】
基布の布目の大きさは3mmとした他は実施例1と同様にして筒状成形品を得た。
結果を表1に示した。5%伸長時の応力が1MPaと小さい値であり、変形しやすく印材として不適であった。
【表1】

【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム成分(A)と基布(B)を、接着剤を塗布することなしに強固に加硫接着した筒状成形品。
【請求項2】
前記ゴム成分(A)が、ゴム及びまたは熱可塑性エラストマー、充填剤、軟化剤及びまたは可塑剤、加硫剤を含む請求項1に記載の筒状成形品。
【請求項3】
前記基布(B)が、綿、絹、羊毛、アセテート、ビニロン、ビニリデン、ポリ塩化ビニル、アクリル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリウレタン、フッ素系フィラメント、ポリクラール、レーヨン、ナイロン、ポリアミド、ポリエステルから選択される繊維のいずれかを、平織り、綾織した織物あるいは編物である請求項1〜請求項2のいずれかに記載の筒状成形品。
【請求項4】
前記基布(B)が、レゾルシン−ホルムアルデヒド初期縮合物とラテックスとを含有するRFL処理剤に浸漬後、高温で加熱処理してなる請求項1〜請求項3のいずれかに記載の筒状成形品。
【請求項5】
前記基布(B)に、アリル基またはエポキシ基またはアルコキシ基を含む有機基を有するラジカル重合可能なモノマーを含浸させて、電子線を照射することによってラジカル重合し、表面にグラフト化してなる請求項1〜請求項3のいずれかに記載の筒状成形品。
【請求項6】
前記基布(B)の布目の大きさが、0.05mm〜2mmである請求項1〜請求項5のいずれかに記載の筒状成形品。
【請求項7】
割型の金型を型締めして形成されるキャビティの中央部に、表面を前記基布(B)で被覆した中芯を貫通させ、この中芯の外周とキャビティで形成される筒状空間に同筒状空間の片端からゴム成分(A)を射出成形して加硫した請求項1〜請求項6のいずれかに記載の筒状成形品の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の製造方法によって成形したベルト。
【請求項9】
回転式ゴム印用の無端印字ベルトである前記ベルト。

【公開番号】特開2010−99953(P2010−99953A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−274098(P2008−274098)
【出願日】平成20年10月24日(2008.10.24)
【出願人】(302067844)株式会社ツーワン (12)
【Fターム(参考)】