説明

ゴム成形体

【課題】明度を高くしつつ、導電性の高いゴム成形体を得ることを目的とする。
【解決手段】本発明に係るゴム成形体は、長さ50〜20000μmのカーボンナノチューブを、ゴム100重量部に対して2.0重量部以下配合したゴム組成物を加硫して得たものであって、体積抵抗率が10Ω・cm未満で明度が28以上であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンナノチューブが配合されることにより導電性を有するゴム成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、OCR、ATMなどで使用される紙送りローラ等のゴムローラ、コンベアの部品として使用されるゴムローラ、工作機械摺動用ワイパー、搬送用又は伝動用ベルト、複写機の静電気除去用ブラシ等の各ゴム製品で使用されるゴムは、静電気の蓄積を防止するために帯電防止処理をすることが多い。帯電防止処理の1つの方法としては、ゴムに導電性を付与することが広く知られている。
【0003】
従来、ゴムに導電性を付与するために、導電性カーボンブラックが配合されることが広く行われている。また、近年、機械的特性に優れたカーボンナノチューブをゴム組成物に配合して、ゴムに導電性を持たせることが試みられつつある(例えば、特許文献1参考)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−124459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ゴムに十分な帯電防止効果を持たせるためには、ゴムの体積抵抗率を10Ω・cm未満にする必要があるといわれている。しかし、体積抵抗率が10Ω・cm未満となるように、ゴム組成物にカーボンブラックを大量に配合すると、ゴムは黒色となりその明度が極めて低くなる。また、カーボンナノチューブは通常、ナノオーダ或いは数μm程度の長さを有することが一般的である。しかし、このようなカーボンナノチューブを用いた場合、体積抵抗率を10Ω・cm未満としようとすると、大量に配合する必要があり、ゴムが黒色となりその明度が極めて低くなる。
【0006】
一方、上記ゴム製品の表面を構成し、かつ使用時に他の部材に接触するゴムは、明度が低く黒色であると、ゴム製品表面から他の部材に色写りが生じるという問題がある。特に、紙送りローラ等の紙に接触するゴム製品は、ゴム製品の明度が低いと紙への色写りが生じやすい。
【0007】
そこで、本発明は以上の問題点に鑑みてなされたものであり、体積抵抗率が十分に低いにもかかわらず、明度が高いゴム成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るゴム成形体は、カーボンナノチューブを、ゴム成分100重量部に対して2.0重量部以下配合したゴム組成物を加硫して得られたものであって、体積抵抗率が10Ω・cm未満で明度が28以上であることを特徴とするものである。
【0009】
上記カーボンナノチューブの長さは、50μm以上であることが好ましく、50〜20000μmであることが特に好ましい。また、カーボンナノチューブの直径は例えば、3〜30nmである。
【発明の効果】
【0010】
本発明においては、明度を高くしつつ体積抵抗率を低くすることによって、ゴム製品から他の部材への色写りを防止しつつ、十分な帯電防止効果を有するゴム成形体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本発明の一実施形態に係るゴム成形体は、ゴム成分にカーボンナノチューブやその他の添加剤を配合し、これらを混練り混合して得られたゴム組成物を加硫して成形したものである。ゴム成形体は、他の部材に接触したときの色写りが問題となり、かつ静電気の蓄積を防止する必要がある用途で使用されるものである。
【0012】
具体的には、ゴム成形体は、複写機、OCR、ATMなどで使用されるゴムローラ、より具体的には紙送りローラ、又は搬送用又は伝動用ベルトに使用されるものである。ゴム成形体は、紙送りローラでは、例えばローラの外周面を構成するものに使用される。またゴム成形体は、搬送用又は伝動用ベルトでは、ベルト表面を構成するものとして使用され、具体的には紙等の搬送物に接触・搬送するための搬送面等を構成する。さらに、ゴム成形体は、コンベアの部品として使用されるゴムローラ、特にベルトとローラの摩擦部分で静電気が発生し、摩耗分の製品への色写りや汚れが問題になる場合に使用され、また工作機械摺動用ワイパー、複写機の静電気除去用ブラシ等にも使用可能である。ゴム成形体はこれらゴム製品でも、例えば他の部材に接触する製品表面を構成する部分に使用される。
【0013】
上記ゴム組成物に使用されるゴム成分としては、ミラブルウレタン、天然ゴム(NR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、ニトリルゴム(NBR)、シリコンゴム(VMQ)、クロロプレンゴム(CR)、塩素化ブチルゴム(Cl−IIR)、クロルスルフォン化ポリエチレンゴム(CSM)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、エチレンプロピレンゴム(EPM)、ブチルゴム(IIR)、フッ素ゴム(FKM)、アクリルゴム(ACM)、またはこれらの混合物等が使用されるが、ゴム成形体が紙送りローラに使用される場合、ゴム成分としては好ましくはミラブルウレタンが使用される。
【0014】
ゴム成分に配合されるカーボンナノチューブは、チューブ状の炭素繊維であって、例えば特許第3854958号公報、特開2006−124459号、特開2002−266170号公報等に記載される公知の方法で製造されたものが使用される。本実施形態では、少量のカーボンナノチューブでゴム成形体に高い導電性を付与するために、カーボンナノチューブとしては繊維長の長いものが使用される。カーボンナノチューブは、繊維長が長すぎると、製造が困難であるので、カーボンナノチューブの長さは、50μm以上、好ましくは50〜20000μmである。また、カーボンナノチューブの直径(繊維外径)は、3〜30nm、好ましくは3〜20nmである。
【0015】
本実施形態において、ゴム成形体の体積抵抗率は、帯電防止のために10Ω・cm未満とされる。また、ゴム成形体の明度が低くなると、紙等の他の部材への色写りが発生するため、ゴム成形体の明度は28以上にされ、好ましくは38以上にされ、その外観は白色又は灰色とされている。このような体積抵抗率及び明度の両方が得られるように、本実施形態では、ゴム組成物にはゴム成分100重量部に対してカーボンナノチューブが2.0重量部以下配合される。
【0016】
本実施形態におけるゴム組成物には、カーボンナノチューブ以外に、脂肪酸、加工助剤、加水分解防止剤、ホワイトカーボン、白色顔料、可塑剤、有機過酸化物等の加硫剤等の公知の添加剤が配合されている。但し、ゴム成形体の明度が低下しないように、カーボンブラックは、ゴム組成物に実質的に配合されていない。
【0017】
ゴム成分に上記添加剤及びカーボンナノチューブを配合したものは、例えば公知の2本ロール機等で混練りし、ゴム中にカーボンナノチューブやその他添加剤を均一に混合・分散させた後、例えば加熱・加圧によって加硫成形し、ゴム成形体として得られる。なお、2本ロール機とは、2本のローラ間で一方のロールにゴムを巻き付けつつ、他方のロールでその巻き付けられたゴムを圧延し、せん断力によりそれら2つのロール間でゴムを混練りするものである。また、カーボンナノチューブは、混練りされる間に、少なくとも一部が切断されても良い。
【実施例】
【0018】
本発明について以下実施例を用いてさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0019】
[実施例1]
ミラブルウレタン100重量部に、カーボンナノチューブを含む各種添加剤を表1に示す重量部配合したものを、2本ロール機(関西ロール社製、8インチロール機)にて混練りして圧延してシート状のゴム組成物を得た。このゴム組成物を温度160℃、圧力150kgf/cmで20分間プレス成型して加硫し、幅120mm、長さ150mm、厚み2mmのシート状のゴム成形体を得た。
【0020】
【表1】


カーボンナノチューブ1について、電界放出型SEM(Hitachi:S−4300)を用いて長さを測定したところ、長さは250〜750μmに分布していた。また、電界放出型TEM(Hitachi:HF−2000)を用いて直径を測定したところ、直径は3〜30nmに分布していた。
カーボンナノチューブ2の長さ及び直径について同様に測定したところ、長さが0.1〜10μm、直径が10〜20nmに分布していた。
導電性カーボンブラックとしては、ケッチェンブラック(製品名.ケッチェン・ブラック・インターナショナル(株)製)を使用した。
【0021】
[実施例2]
ミラブルウレタン100重量部に対して、カーボンナノチューブを1重量部配合した点を除いて実施例1と同様に実施した。
【0022】
[実施例3]
ミラブルウレタン100重量部に対して、カーボンナノチューブを2重量部配合した点を除いて実施例1と同様に実施した。
【0023】
[比較例1]
ゴム組成物にカーボンナノチューブを配合しなかった点を除いて実施例1と同様に実施した。
【0024】
[比較例2]
実施例1に比べて繊維長が短いカーボンナノチューブを使用した点を除いて、実施例1と同様に実施した。
【0025】
[比較例3]
カーボンナノチューブの代わりに導電性カーボンブラックを使用した点を除いて、実施例1と同様に実施した。
【0026】
上記各実施例および比較例で得られたシート状のゴム成形体について、以下の方法によって物性を評価した。評価結果を表1に示す。
【0027】
[体積抵抗率]
三菱化学社製ロレスタ−GP、三菱化学社製ハイレスタ−UPを用いて測定した。
【0028】
[摩耗試験]
JIS K 6264−1993 ピコ摩耗試験にしたがって、ゴム成形体の耐磨耗性を確認した。ピコ磨耗試験では、荷重を44Nとして、ターンテーブルの回転速度を毎分60±2回とした。また、回転数は正転20回、逆転20回を各々2回繰り返し、合計80回とした。
【0029】
[明度]
色彩色差計CR−200(ミノルタ社製)を用いて測定した。
【0030】
表1から明らかなように、実施例1〜3においては、繊維長が長いカーボンナノチューブを使用したことによって、比較的少量のカーボンナノチューブを配合しただけでも、高い導電性を有するゴム成形体を得ることができた。またこれらゴム成形体は、少量のカーボンナノチューブしか含んでいないので、明度は高く、その外観を灰色とすることができた。
【0031】
一方、比較例2、3においては、繊維長の短いカーボンナノチューブや導電性カーボンブラックを使用したため、明度を高くしようとしてこれらの配合量を少なくすると、十分に高い導電性を得ることができなかった。また、比較例1では、カーボンナノチューブが配合されておらず、十分な導電性を有するゴム成形体を得られなかった。
【0032】
また実施例1〜3の磨耗容積は、繊維長の短いカーボンナノチューブや導電性カーボンブラックを使用した比較例に比べて低くなっており、繊維長の長いカーボンナノチューブを使用することによってゴムの耐摩耗性が向上したことが理解できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンナノチューブを、ゴム成分100重量部に対して2.0重量部以下配合したゴム組成物を加硫して得られたものであって、体積抵抗率が10Ω・cm未満で明度が28以上であることを特徴とするゴム成形体。
【請求項2】
前記カーボンナノチューブの長さは、50μm以上であることを特徴とする請求項1に記載のゴム成形体。
【請求項3】
前記カーボンナノチューブの直径は、3〜30nmであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のゴム成形体。





【公開番号】特開2010−185006(P2010−185006A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−30006(P2009−30006)
【出願日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(000111085)ニッタ株式会社 (588)
【出願人】(505044451)ソナック株式会社 (107)
【Fターム(参考)】