説明

ゴム支承被覆用ゴム組成物及びそれを用いたゴム支承被覆用ゴム

【課題】ゴム支承被覆用ゴムの亀裂成長性、耐候性、及び耐破壊性を向上させ、且つ十分な減衰性を得ることができるゴム支承被覆用ゴム組成物及びそれを用いたゴム支承被覆用ゴムを提供する。
【解決手段】本発明のゴム支承被覆用ゴム組成物は、共役ジエン系重合体(A)、共役ジエン化合物−非共役オレフィン共重合体(B)、及び、エチレン−プロピレン−ジエンゴムを含有する非共役ジエン化合物−非共役オレフィン共重合体(C)を含むゴム成分と、樹脂(D)とを含むゴム支承被覆用ゴム組成物であって、前記ゴム成分100質量部に対し、前記樹脂(D)を5質量部〜60質量部含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム支承被覆用ゴム組成物及びそれを用いたゴム支承被覆用ゴムに関し、特に、ゴム支承被覆用ゴムの亀裂成長性、耐候性、及び耐破壊性を向上させ、且つ十分な減衰性を得ることができるゴム支承被覆用ゴム組成物及びそれを用いたゴム支承被覆用ゴムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ビルや橋梁等の建造物を建設する際、地震等により引き起こされる震動による破損を防ぐために、ゴム支承等を用いて免震構造を構成することが行われている。
ゴム支承とは、ビルや橋梁等の建造物の上部構造の荷重を支え、かつ前記建造物の上部構造体と下部構造体との接点に設置される部材であり、地震等により引き起こされる震動によって生じる上部構造及び下部構造の変位をこのゴム支承で吸収するためのものである。これは一般に複数個の鋼板等の硬質板と粘弾性的性質を有するゴム材料からなる軟質板とを交互に積層し、両者を強固に接着させることで耐荷重性の向上を図ると共に、水平力に対してゴムの弾力性で対応できるようにしたものである。
【0003】
しかしながら、近年の地震に対する防災意識の高まりや耐震性基準の厳格化に伴い、せん断弾性率Gが0.3N/mm2〜0.5N/mm2程度の低弾性率で高性能なゴム支承が求められるようになった。
この要求に対し、ゴム支承体の軟質板として用いられる内部ゴムに特定の樹脂を添加することで、優れた弾性・減衰特性を得る検討が行われたが(例えば、特許文献1参照)、外観・耐久性・耐候性等の向上のためにゴム支承体外周に形成される被覆層のゴムについては、耐久性や成形加工時の作業性を考慮し、未だにせん断弾性率Gが0.6N/mm2相当以上のゴムを使用していることが多い。その結果、ゴム支承には、高性能化に伴う厳しいバネ精度の要求を満たすために低弾性率のゴムが軟質板として用いられるようになったが、被覆材の高い弾性率がゴム支承全体としてのゴム弾性率を引き上げて、ゴム支承全体の性能を低下させるおそれがある。この問題は、ゴム支承体の軟質板と同レベルのせん断弾性率を有するゴムを被覆材に適用することで解消できるが、現状では成形時の加工性や、加硫硬化後の破壊強度等において課題が残され、実用化が遅れているのが実情である。即ち、被覆層には、外観・耐久性・耐候性等の向上に加えて、ゴム支承体に使用されるゴム組成物(内部ゴム)との接着性やゴム支承体に使用されるゴム組成物(内部ゴム)との接着性やゴム支承体の特性(剛性、減衰)を損なわないような物性が求められる。
【0004】
一般的にゴムの低弾性率化を図るには、カーボン配合部数の低減、低級カーボンの使用、可塑剤及び石油樹脂の増量等の方法が有効であるが、いずれの方法も未加硫ゴムが軟らかくなるばかりでなく、粘着性も大幅に増大してしまうため、加工性が著しく低下してしまう結果となった。また、上記の方法により低弾性率の被覆材を作製した場合、十分な破壊強度が得られない場合があるため、被覆材としての耐久性が不十分となるおそれがあり、ゴム支承の製造における大きな課題となっている。
従って、加硫前の加工性に優れると共に、加硫後には、優れた破壊強度と、低い弾性率とを兼ね備えたゴム支承用被覆材を得ることができるゴム支承被覆用ゴムシートの開発が望まれていた。
【0005】
そこで、耐久性及び温度依存性の観点から、被覆層に用いられるゴム成分として、天然ゴム及び非共役ジエン化合物−非共役オレフィン共重合体(EPDM)を用いることが検討されている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、天然ゴムと非共役ジエン化合物−非共役オレフィン共重合体(EPDM)との相溶性が十分でないために、耐破壊性及び耐亀裂成長性には未だ改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第2570340号公報
【特許文献2】特開2009−1603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の目的は、ゴム支承被覆用ゴムの亀裂成長性、耐候性、及び耐破壊性を向上させ、且つ十分な減衰性を得ることができるゴム支承被覆用ゴム組成物及びそれを用いたゴム支承被覆用ゴムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、共役ジエン系重合体(A)、共役ジエン化合物−非共役オレフィン共重合体(B)、及び、エチレン−プロピレン−ジエンゴムを含有する非共役ジエン化合物−非共役オレフィン共重合体(C)を含むゴム成分と、樹脂(D)とを含むゴム支承被覆用ゴム組成物であって、前記ゴム成分100質量部に対し、前記樹脂を5質量部〜60質量部含むことにより、ゴム支承被覆用ゴムの亀裂成長性、耐候性、及び耐破壊性を向上させ、且つ十分な減衰性を得ることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
即ち、本発明のゴム支承被覆用ゴム組成物は、共役ジエン系重合体(A)、共役ジエン化合物−非共役オレフィン共重合体(B)、及び、エチレン−プロピレン−ジエンゴムを含有する非共役ジエン化合物−非共役オレフィン共重合体(C)を含むゴム成分と、樹脂(D)とを含むゴム支承被覆用ゴム組成物であって、前記ゴム成分100質量部に対し、前記樹脂を5質量部〜60質量部含むことを特徴とする。
【0010】
本発明のゴム支承被覆用ゴム組成物は、前記共重合体(B)において、前記非共役オレフィン由来部分の割合が60mol%以下であることが好ましい。
【0011】
本発明のゴム支承被覆用ゴム組成物は、前記非共役ジエン化合物−非共役オレフィン共重合体(C)におけるエチレン−プロピレン−ジエンゴムの含有量が、10質量%以上であることが好ましい。
【0012】
本発明のゴム支承被覆用ゴム組成物は、前記共重合体(B)のポリスチレン換算重量平均分子量が10,000〜10,000,000であることが好ましい。
【0013】
本発明のゴム支承被覆用ゴム組成物は、前記共重合体(B)の分子量分布(Mw/Mn)が10以下であることが好ましい。
【0014】
本発明のゴム支承被覆用ゴム組成物は、前記共重合体(B)における非共役オレフィンが非環状オレフィンであることが好ましい。
【0015】
本発明のゴム支承被覆用ゴム組成物は、前記共重合体(B)における非共役オレフィンの炭素数が2〜10であることが好ましい。
【0016】
本発明のゴム支承被覆用ゴム組成物は、前記共重合体(B)における非共役オレフィンが、エチレン、プロピレン、及び1−ブテンからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0017】
本発明のゴム支承被覆用ゴム組成物は、前記共重合体(B)における非共役オレフィンがエチレンであることが好ましい。
【0018】
本発明のゴム支承被覆用ゴム組成物は、前記樹脂(D)が、ポリエステルポリオール樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、ロジン樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂、脂肪・脂環族C5系石油樹脂、C5/C9系石油樹脂、C9系石油樹脂、テルペン樹脂、並びにこれらの共重合体及び変性品からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0019】
本発明のゴム支承被覆用ゴムは、本発明のゴム支承被覆用ゴム組成物を用いたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ゴム支承被覆用ゴムの亀裂成長性、耐候性、及び耐破壊性を向上させ、且つ十分な減衰性を得ることができるゴム支承被覆用ゴム組成物及びそれを用いたゴム支承被覆用ゴムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、本発明のゴム支承被覆用ゴムを被覆層に用いたゴム支承体の一例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(ゴム支承被覆用ゴム組成物)
本発明のゴム支承被覆用ゴム組成物は、少なくとも、共役ジエン系重合体(A)、共役ジエン化合物−非共役オレフィン共重合体(B)、及び非共役ジエン化合物−非共役オレフィン共重合体(C)を含むゴム成分と、樹脂(D)とを含んでなり、さらに必要に応じて、カーボンブラック、シリカ、ワックス、アマイド化合物、その他の成分を含んでなる。
【0023】
<ゴム成分>
前記ゴム成分は、少なくとも、共役ジエン系重合体(A)と、共役ジエン化合物−非共役オレフィン共重合体(B)、及び非共役ジエン化合物−非共役オレフィン共重合体(C)を含んでなり、さらに必要に応じて、その他のゴム成分を含んでなる。
【0024】
−共役ジエン系重合体(A)−
前記共役ジエン系重合体は、モノマー単位成分(共重合体の一部)として非共役オレフィンを含まない重合体(ポリマー)を意味する。なお、スチレンは、非共役オレフィンに含まれないものとする。
前記共役ジエン系重合体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、天然ゴム(NR)、各種ポリブタジエンゴム(BR)、合成ポリイソプレンゴム(IR)、各種スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、エチレン−プロピレンゴム(EPR)、スチレン−イソプレン共重合体ゴム、スチレン−イソプレン−ブタジエン共重合体ゴム、イソプレン−ブタジエン共重合体ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム(NBR)、クロロプレンゴムなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、天然ゴム(NR)、合成ポリイソプレンゴム(IR)、各種ポリブタジエンゴム(BR)、及びスチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)が、後述するエチレン−プロピレン−ジエンゴムを含有する非共役ジエン化合物−非共役オレフィン共重合体(C)との相溶性がよく、耐破壊性及び耐亀裂成長性を向上できる点で好適である。
【0025】
前記ゴム成分100質量部中における前記共役ジエン系重合体(A)の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、90質量部〜10質量部が好ましく、75質量部〜25質量部であることがより好ましい。
前記ゴム成分100質量部中における前記共役ジエン系重合体(A)の含有量が、10質量部未満であると、耐破壊性や加工性が悪化することがあり、90質量部を超えると、耐候性が悪化することがある。一方、前記ゴム成分100質量部中における前記共役ジエン系重合体(A)の含有量が、前記より好ましい範囲内であると、各性能のバランスの点で有利である。
【0026】
−共役ジエン化合物−非共役オレフィン共重合体(B)−
本発明のゴム組成物が、該共役ジエン化合物−非共役オレフィン共重合体(B)を含むことで、共役ジエン化合物−非共役オレフィン共重合体(B)成分の共役ジエン部分が共役ジエン系重合体(A)成分との相溶性を向上させ、(B)成分の非共役オレフィン部分が非共役ジエン化合物−非共役オレフィン共重合体(C)との相溶性を向上させることによって、耐破壊性及び耐亀裂成長性に優れた共役ジエン系重合体(A)と、耐候性に優れたエチレン−プロピレン−ジエンゴムを含有する非共役ジエン化合物−非共役オレフィン共重合体(C)との相溶性を向上させることができる結果、ゴム組成物の耐候性、耐破壊性及び耐亀裂成長性を高いレベルで両立できる。なお、前記共役ジエン化合物−非共役オレフィン共重合体(B)とは、共役ジエン化合物と非共役オレフィンとの共重合体であり、共重合体におけるモノマー単位成分として非共役オレフィンを含むものである。
【0027】
前記共役ジエン化合物−非共役オレフィン共重合体における前記共役ジエン化合物由来部分の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、40mol%以上が好ましい。
前記共役ジエン化合物由来部分の含有量が40mol%未満であると、プラスチックに近いためエラストマーとしての特性が低く、十分な耐破壊性及び耐亀裂性が得られないことがあり、また、共役ジエン系重合体(A)と、エチレン−プロピレン−ジエンゴムを含有する非共役ジエン化合物−非共役オレフィン共重合体(C)との相溶性が低下して、所望の耐候性、耐破壊性及び耐亀裂成長性を得ることができないことがあるからである。より良好な耐候性、耐破壊性及び耐亀裂成長性を得る点からは、共役ジエン化合物由来部分の含有量が60mol%以上であることが加工性及び屈曲疲労性の点から好ましい。なお、前記共役ジエン化合物由来部分とは、前記共役ジエン化合物−非共役オレフィン共重合体(A)の中で、モノマーとして用いられた共役ジエン化合物に該当する部分のことをいう。
また、前記非共役オレフィン由来部分の含有量としては、加工性の点から、60mol%以下であることがより好ましく、40mol%以下であることがさらに好ましい。
【0028】
前記共役ジエン化合物−非共役オレフィン共重合体(B)において、重量平均分子量(Mw)は、低分子量化の問題が起こることも無く、その重量平均分子量(Mw)は特に限定されるものでもないが、高分子構造材料への適用の観点から、該共重合体のポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)は10,000〜10,000,000が好ましく、10,000〜1,000,000がより好ましく、50,000〜600,000が更に好ましい。また、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比で表される分子量分布(Mw/Mn)は、10以下が好ましく、6以下が更に好ましい。分子量分布が10を超えると物性が均質でなくなるためである。ここで、平均分子量及び分子量分布は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレンを標準物質として求めることができる。
【0029】
なお、前記共役ジエン化合物−非共役オレフィン共重合体(B)において、モノマーとして用いる共役ジエン化合物は、炭素数が4〜12であることが好ましい。該共役ジエン化合物として、具体的には、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチルブタジエン等が挙げられ、これらの中でも、1,3−ブタジエン及びイソプレンが好ましい。また、これら共役ジエン化合物は、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
上述した共役ジエン化合物の具体例のいずれを用いても、同様のメカニズムで前記ブロック共重合体と前記ランダム共重合体とを調製することができる。
【0030】
一方、前記共役ジエン化合物−非共役オレフィン共重合体(B)において、モノマーとして用いる非共役オレフィンは、共役ジエン化合物以外の非共役オレフィンであり、優れた耐熱性や、共重合体の主鎖中に占める二重結合の割合を減らし、結晶性を低下させることでエラストマーとしての設計自由度を高めることが可能となる。非共役オレフィンの種類としては、非環状オレフィンであることが好ましく、また、該非共役オレフィンの炭素数は2〜10であることが好ましい。従って、上記非共役オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン等のα−オレフィンが好適に挙げられ、これらの中でも、エチレン、プロピレン及び1−ブテンが好ましく、エチレンが特に好ましい。α−オレフィンはオレフィンのα位に二重結合を有するため、共役ジエンとの共重合を効率よく行うことができる。これら非共役オレフィンは、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、オレフィンは、脂肪族不飽和炭化水素で、炭素−炭素二重結合を1個以上有する化合物を指す。
【0031】
また、非共役オレフィンのモノマー単位からなるブロック部分を備える場合には、静的結晶性を示すため、破断強度等の機械的性質に優れることができる。
【0032】
前記共役ジエン化合物−非共役オレフィン共重合体(B)における共役ジエン化合物由来部分のシス−1,4結合量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、25%以上が好ましく、50%以上がより好ましく、92%超が特に好ましく、95%以上が最も好ましい。
前記共役ジエン化合物由来部分のシス1,4−結合量が、25%以上であれば、低いガラス転移点(Tg)を保持することができ、これにより、耐亀裂成長性や耐摩耗性等の物性が改良される。
一方、前記共役ジエン化合物由来部分のシス1,4−結合量を92%超とすることにより、耐亀裂成長性、耐候性、耐熱性を向上させることが可能となる。また、前記共役ジエン化合物由来部分のシス1,4−結合量を95%以上とすることにより、耐亀裂成長性、耐候性、耐熱性を一層向上させることが可能となる。
なお、前記シス−1,4結合量は、前記共役ジエン化合物由来部分中の量であって、共重合体全体に対する割合ではない。
【0033】
前記共役ジエン化合物−非共役オレフィン共重合体(B)の共役ジエン化合物由来部分における共役ジエン化合物の1,2付加体部分(3,4付加体部分を含む)含量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5%以下が好ましく、3%以下がより好ましく、2.5%以下が特に好ましい。
前記共役ジエン化合物−非共役オレフィン共重合体(B)の共役ジエン化合物由来部分における共役ジエン化合物の1,2付加体部分(3,4付加体部分を含む)含量が、5%以下であると、共重合体の耐候性や耐オゾン性をさらに向上させることができる。
一方、前記共役ジエン化合物−非共役オレフィン共重合体の共役ジエン化合物由来部分における共役ジエン化合物の1,2付加体部分(3,4付加体部分を含む)含量が、2.5%以下であると、共重合体の耐候性や耐オゾン性をさらに向上させることができる。
前記1,2付加体部分(3,4付加体部分を含む)含量は、前記共役ジエン化合物由来部分中の量であって、共重合体全体に対する割合ではない。
なお、前記共役ジエン化合物由来部分における共役ジエン化合物の1,2付加体部分(3,4付加体部分を含む)含量は、共役ジエン化合物がブタジエンの場合、1,2−ビニル結合量と同じ意味である。
【0034】
前記共役ジエン化合物−非共役オレフィン共重合体(B)の連鎖構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ブロック共重合体、ランダム共重合体、テーパー共重合体、交互共重合体などが挙げられる。
【0035】
−−ブロック共重合体−−
前記ブロック共重合体の構造は、(A−B)、A−(B−A)及びB−(A−B)(ここで、Aは、非共役オレフィンの単量体単位からなるブロック部分であり、Bは、共役ジエン化合物の単量体単位からなるブロック部分であり、xは1以上の整数である)のいずれかである。なお、(A−B)又は(B−A)の構造を複数備えるブロック共重合体をマルチブロック共重合体と称する。
共役ジエン化合物−非共役オレフィン共重合体(B)がブロック共重合体である場合は、非共役オレフィンの単量体からなるブロック部分が静的結晶性を示すため、破断強度等の機械的性質に優れる。結晶性を示すブロック部分によって、貯蔵弾性率(G´)の低下を抑制することができる。
【0036】
−−ランダム共重合体−−
共役ジエン化合物−非共役オレフィン共重合体(B)がランダム共重合体である場合は、非共役オレフィンの単量体単位の配列が不規則であるため、共重合体が相分離を起こすことなく、ブロック部分に由来する結晶化温度が観測されない。すなわち、耐熱性などの性質を有する非共役オレフィンを共重合体の主鎖中に導入することが可能になるため、耐熱性が向上する。
【0037】
−−テーパー共重合体−−
前記テーパー共重合体とは、ランダム共重合体とブロック共重合体とが混在してなる共重合体であり、共役ジエン化合物の単量体単位からなるブロック部分及び非共役オレフィンの単量体単位からなるブロック部分のうち少なくとも一方のブロック部分(ブロック構造ともいう)と、共役ジエン化合物及び非共役オレフィンの単量体単位が不規則に配列してなるランダム部分(ランダム構造という)とから構成される共重合体である。
前記テーパー共重合体の構造は、共役ジエン化合物成分と非共役オレフィン成分との組成が連続的又は不連続的に分布があることを示す。ここで、非共役オレフィン成分の連鎖構造としては、長鎖(高分子量)の非共役オレフィンブロック成分を多く含まず、短鎖(低分子量)の非共役オレフィンブロック成分を多く含むことが好ましい。
【0038】
−−交互共重合体−−
前記交互共重合体は、共役ジエン化合物と非共役オレフィンとが交互に配列する構造(非共役オレフィンをAと、共役ジエン化合物をBとした場合の、−ABABABAB−の分子鎖構造)を有する重合体である。前記交互共重合体である場合は、柔軟性と接着性の両立が可能となる。
【0039】
本発明においては、共役ジエン化合物−非共役オレフィン共重合体(B)がブロック共重合体である場合は、非共役オレフィンの単量体からなるブロック部分が静的結晶性を示すため、破断強度等の機械的性質に優れるので、共重合体は、ブロック共重合体及びテーパー共重合体から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0040】
また、前記ゴム成分100質量部中における前記共役ジエン化合物−非共役オレフィン共重合体(B)の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10質量部〜90質量部であることが好ましく、25質量部〜75質量部であることがより好ましい。
前記ゴム成分100質量部中における前記共役ジエン化合物−非共役オレフィン共重合体(B)の含有量が、10質量部未満であると、耐候性が悪化することがあり、90質量部を超えると、耐破壊性や加工性が悪化することがある。
一方、前記ゴム成分100質量部中における前記共役ジエン化合物−非共役オレフィン共重合体(B)の含有量が、前記より好ましい範囲内であると、各性能のバランスの点で有利である。
【0041】
−−共役ジエン化合物−非共役オレフィン共重合体の製造方法−−
次に、前記共役ジエン化合物−非共役オレフィン共重合体を製造することができる製造方法を詳細に説明する。但し、以下に詳述する製造方法は、あくまで例示に過ぎない。
前記共役ジエン化合物−非共役オレフィン共重合体は、下記に示す重合触媒または重合触媒組成物の存在下、共役ジエン化合物と非共役オレフィンとを重合させる工程を含む。
なお、重合方法としては、溶液重合法、懸濁重合法、液相塊状重合法、乳化重合法、気相重合法、固相重合法等の任意の方法を用いることができる。また、重合反応に溶媒を用いる場合、用いられる溶媒は重合反応において不活性であればよく、例えば、トルエン、シクロヘキサン、ノルマルヘキサン、またそれらの混合物等が挙げられる。
【0042】
上記製造方法によれば、上記重合触媒または重合触媒組成物を用いること以外は、通常の配位イオン重合触媒による重合体の製造方法と同様にして、モノマーである共役ジエン化合物と非共役オレフィンを共重合させることができる。
【0043】
<第一の重合触媒組成物>
上記重合触媒組成物としては、下記一般式(I):
【化1】

(式中、Mは、ランタノイド元素、スカンジウム又はイットリウムを示し、CpRは、それぞれ独立して無置換もしくは置換インデニルを示し、Ra〜Rfは、それぞれ独立して炭素数1〜3のアルキル基又は水素原子を示し、Lは、中性ルイス塩基を示し、wは、0〜3の整数を示す)で表されるメタロセン錯体、及び下記一般式(II):
【化2】

(式中、Mは、ランタノイド元素、スカンジウム又はイットリウムを示し、CpRは、それぞれ独立して無置換もしくは置換インデニルを示し、X’は、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシド基、チオラート基、アミド基、シリル基又は炭素数1〜20の炭化水素基を示し、Lは、中性ルイス塩基を示し、wは、0〜3の整数を示す)で表されるメタロセン錯体、並びに下記一般式(III):
【化3】

(式中、Mは、ランタノイド元素、スカンジウム又はイットリウムを示し、CpR’は、無置換もしくは置換シクロペンタジエニル、インデニル又はフルオレニルを示し、Xは、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシド基、チオラート基、アミド基、シリル基又は炭素数1〜20の炭化水素基を示し、Lは、中性ルイス塩基を示し、wは、0〜3の整数を示し、[B]-は、非配位性アニオンを示す)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体からなる群より選択される少なくとも1種類の錯体を含む重合触媒組成物(以下、第一重合触媒組成物ともいう)が挙げられ、該重合触媒組成物は、更に、通常のメタロセン錯体を含む重合触媒組成物に含有される他の成分、例えば助触媒等を含んでいてもよい。ここで、メタロセン錯体は、一つ又は二つ以上のシクロペンタジエニル又はその誘導体が中心金属に結合した錯体化合物であり、特に、中心金属に結合したシクロペンタジエニル又はその誘導体が一つであるメタロセン錯体を、ハーフメタロセン錯体と称することがある。なお、重合反応系において、第一重合触媒組成物に含まれる錯体の濃度は0.1〜0.0001mol/Lの範囲であることが好ましい。
【0044】
上記一般式(I)及び式(II)で表されるメタロセン錯体において、式中のCpRは、無置換インデニル又は置換インデニルである。インデニル環を基本骨格とするCpRは、C97-XX又はC911-XXで示され得る。ここで、Xは0〜7又は0〜11の整数である。また、Rはそれぞれ独立してヒドロカルビル基又はメタロイド基であることが好ましい。ヒドロカルビル基の炭素数は1〜20であることが好ましく、1〜10であることが更に好ましく、1〜8であることが一層好ましい。該ヒドロカルビル基として、具体的には、メチル基、エチル基、フェニル基、ベンジル基等が好適に挙げられる。一方、メタロイド基のメタロイドの例としては、ゲルミルGe、スタニルSn、シリルSiが挙げられ、また、メタロイド基はヒドロカルビル基を有することが好ましく、メタロイド基が有するヒドロカルビル基は上記のヒドロカルビル基と同様である。該メタロイド基として、具体的には、トリメチルシリル基等が挙げられる。置換インデニルとして、具体的には、2−フェニルインデニル、2−メチルインデニル等が挙げられる。なお、一般式(I)及び式(II)における二つのCpRは、それぞれ互いに同一でも異なっていてもよい。
【0045】
上記一般式(III)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体において、式中のCpR’は、無置換もしくは置換のシクロペンタジエニル、インデニル又はフルオレニルであり、これらの中でも、無置換もしくは置換のインデニルであることが好ましい。シクロペンタジエニル環を基本骨格とするCpR’は、C55-XXで示される。ここで、Xは0〜5の整数である。また、Rはそれぞれ独立してヒドロカルビル基又はメタロイド基であることが好ましい。ヒドロカルビル基の炭素数は1〜20であることが好ましく、1〜10であることが更に好ましく、1〜8であることが一層好ましい。該ヒドロカルビル基として、具体的には、メチル基、エチル基、フェニル基、ベンジル基等が好適に挙げられる。一方、メタロイド基のメタロイドの例としては、ゲルミルGe、スタニルSn、シリルSiが挙げられ、また、メタロイド基はヒドロカルビル基を有することが好ましく、メタロイド基が有するヒドロカルビル基は上記のヒドロカルビル基と同様である。該メタロイド基として、具体的には、トリメチルシリル基等が挙げられる。シクロペンタジエニル環を基本骨格とするCpR’として、具体的には、以下のものが例示される。
【化4】

(式中、Rは水素原子、メチル基又はエチル基を示す。)
【0046】
一般式(III)において、上記インデニル環を基本骨格とするCpR’は、一般式(I)のCpRと同様に定義され、好ましい例も同様である。
【0047】
一般式(III)において、上記フルオレニル環を基本骨格とするCpR’は、C139-XX又はC1317-XXで示され得る。ここで、Xは0〜9又は0〜17の整数である。また、Rはそれぞれ独立してヒドロカルビル基又はメタロイド基であることが好ましい。ヒドロカルビル基の炭素数は1〜20であることが好ましく、1〜10であることが更に好ましく、1〜8であることが一層好ましい。該ヒドロカルビル基として、具体的には、メチル基、エチル基、フェニル基、ベンジル基等が好適に挙げられる。一方、メタロイド基のメタロイドの例としては、ゲルミルGe、スタニルSn、シリルSiが挙げられ、また、メタロイド基はヒドロカルビル基を有することが好ましく、メタロイド基が有するヒドロカルビル基は上記のヒドロカルビル基と同様である。該メタロイド基として、具体的には、トリメチルシリル基等が挙げられる。
【0048】
一般式(I)、式(II)及び式(III)における中心金属Mは、ランタノイド元素、スカンジウム又はイットリウムである。ランタノイド元素には、原子番号57〜71の15元素が含まれ、これらのいずれでもよい。中心金属Mとしては、サマリウムSm、ネオジムNd、プラセオジムPr、ガドリニウムGd、セリウムCe、ホルミウムHo、スカンジウムSc及びイットリウムYが好適に挙げられる。
【0049】
一般式(I)で表されるメタロセン錯体は、シリルアミド配位子[−N(SiR32]を含む。シリルアミド配位子に含まれるR基(一般式(I)におけるRa〜Rf)は、それぞれ独立して炭素数1〜3のアルキル基又は水素原子である。また、Ra〜Rfのうち少なくとも一つが水素原子であることが好ましい。Ra〜Rfのうち少なくとも一つを水素原子にすることで、触媒の合成が容易になり、また、ケイ素まわりのかさ高さが低くなるため、非共役オレフィンが導入され易くなる。同様の観点から、Ra〜Rcのうち少なくとも一つが水素原子であり、Rd〜Rfのうち少なくとも一つが水素原子であることが更に好ましい。更に、アルキル基としては、メチル基が好ましい。
【0050】
一般式(II)で表されるメタロセン錯体は、シリル配位子[−SiX’3]を含む。シリル配位子[−SiX’3]に含まれるX’は、下記で説明される一般式(III)のXと同様に定義される基であり、好ましい基も同様である。
【0051】
一般式(III)において、Xは水素原子、ハロゲン原子、アルコキシド基、チオラート基、アミド基、シリル基及び炭素数1〜20の炭化水素基からなる群より選択される基である。ここで、上記アルコキシド基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基等の脂肪族アルコキシ基;フェノキシ基、2,6−ジ−tert−ブチルフェノキシ基、2,6−ジイソプロピルフェノキシ基、2,6−ジネオペンチルフェノキシ基、2−tert−ブチル−6−イソプロピルフェノキシ基、2−tert−ブチル−6−ネオペンチルフェノキシ基、2−イソプロピル−6−ネオペンチルフェノキシ基等のアリールオキシド基が挙げられ、これらの中でも、2,6−ジ−tert−ブチルフェノキシ基が好ましい。
【0052】
一般式(III)において、Xが表すチオラート基としては、チオメトキシ基、チオエトキシ基、チオプロポキシ基、チオn−ブトキシ基、チオイソブトキシ基、チオsec−ブトキシ基、チオtert−ブトキシ基等の脂肪族チオラート基;チオフェノキシ基、2,6−ジ−tert−ブチルチオフェノキシ基、2,6−ジイソプロピルチオフェノキシ基、2,6−ジネオペンチルチオフェノキシ基、2−tert−ブチル−6−イソプロピルチオフェノキシ基、2−tert−ブチル−6−チオネオペンチルフェノキシ基、2−イソプロピル−6−チオネオペンチルフェノキシ基、2,4,6−トリイソプロピルチオフェノキシ基等のアリールチオラート基が挙げられ、これらの中でも、2,4,6−トリイソプロピルチオフェノキシ基が好ましい。
【0053】
一般式(III)において、Xが表すアミド基としては、ジメチルアミド基、ジエチルアミド基、ジイソプロピルアミド基等の脂肪族アミド基;フェニルアミド基、2,6−ジ−tert−ブチルフェニルアミド基、2,6−ジイソプロピルフェニルアミド基、2,6−ジネオペンチルフェニルアミド基、2−tert−ブチル−6−イソプロピルフェニルアミド基、2−tert−ブチル−6−ネオペンチルフェニルアミド基、2−イソプロピル−6−ネオペンチルフェニルアミド基、2,4,6−トリ−tert−ブチルフェニルアミド基等のアリールアミド基;ビストリメチルシリルアミド基等のビストリアルキルシリルアミド基が挙げられ、これらの中でも、ビストリメチルシリルアミド基が好ましい。
【0054】
一般式(III)において、Xが表すシリル基としては、トリメチルシリル基、トリス(トリメチルシリル)シリル基、ビス(トリメチルシリル)メチルシリル基、トリメチルシリル(ジメチル)シリル基、トリイソプロピルシリル(ビストリメチルシリル)シリル基等が挙げられ、これらの中でも、トリス(トリメチルシリル)シリル基が好ましい。
【0055】
一般式(III)において、Xが表すハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子のいずれでもよいが、塩素原子又は臭素原子が好ましい。また、Xが表す炭素数1〜20の炭化水素基として、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、オクチル基等の直鎖又は分枝鎖の脂肪族炭化水素基;フェニル基、トリル基、ナフチル基等の芳香族炭化水素基;ベンジル基等のアラルキル基等の他;トリメチルシリルメチル基、ビストリメチルシリルメチル基等のケイ素原子を含有する炭化水素基等が挙げられ、これらの中でも、メチル基、エチル基、イソブチル基、トリメチルシリルメチル基等が好ましい。
【0056】
一般式(III)において、Xとしては、ビストリメチルシリルアミド基又は炭素数1〜20の炭化水素基が好ましい。
【0057】
一般式(III)において、[B]-で示される非配位性アニオンとしては、例えば、4価のホウ素アニオンが挙げられる。該4価のホウ素アニオンとして、具体的には、テトラフェニルボレート、テトラキス(モノフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(ジフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(トリフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(テトラフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(テトラフルオロメチルフェニル)ボレート、テトラ(トリル)ボレート、テトラ(キシリル)ボレート、(トリフェニル、ペンタフルオロフェニル)ボレート、[トリス(ペンタフルオロフェニル)、フェニル]ボレート、トリデカハイドライド−7,8−ジカルバウンデカボレート等が挙げられ、これらの中でも、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートが好ましい。
【0058】
上記一般式(I)及び式(II)で表されるメタロセン錯体、並びに上記一般式(III)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体は、更に0〜3個、好ましくは0〜1個の中性ルイス塩基Lを含む。ここで、中性ルイス塩基Lとしては、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジメチルアニリン、トリメチルホスフィン、塩化リチウム、中性のオレフィン類、中性のジオレフィン類等が挙げられる。ここで、上記錯体が複数の中性ルイス塩基Lを含む場合、中性ルイス塩基Lは、同一であっても異なっていてもよい。
【0059】
また、上記一般式(I)及び式(II)で表されるメタロセン錯体、並びに上記一般式(III)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体は、モノマーとして存在していてもよく、二量体又はそれ以上の多量体として存在していてもよい。
【0060】
上記一般式(I)で表されるメタロセン錯体は、例えば、溶媒中でランタノイドトリスハライド、スカンジウムトリスハライド又はイットリウムトリスハライドを、インデニルの塩(例えばカリウム塩やリチウム塩)及びビス(トリアルキルシリル)アミドの塩(例えばカリウム塩やリチウム塩)と反応させることで得ることができる。なお、反応温度は室温程度にすればよいので、温和な条件で製造することができる。また、反応時間は任意であるが、数時間〜数十時間程度である。反応溶媒は特に限定されないが、原料及び生成物を溶解する溶媒であることが好ましく、例えばトルエンを用いればよい。以下に、一般式(I)で表されるメタロセン錯体を得るための反応例を示す。
【化5】

(式中、X’’はハライドを示す。)
【0061】
上記一般式(II)で表されるメタロセン錯体は、例えば、溶媒中でランタノイドトリスハライド、スカンジウムトリスハライド又はイットリウムトリスハライドを、インデニルの塩(例えばカリウム塩やリチウム塩)及びシリルの塩(例えばカリウム塩やリチウム塩)と反応させることで得ることができる。なお、反応温度は室温程度にすればよいので、温和な条件で製造することができる。また、反応時間は任意であるが、数時間〜数十時間程度である。反応溶媒は特に限定されないが、原料及び生成物を溶解する溶媒であることが好ましく、例えばトルエンを用いればよい。以下に、一般式(II)で表されるメタロセン錯体を得るための反応例を示す。
【化6】

(式中、X’’はハライドを示す。)
【0062】
上記一般式(III)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体は、例えば、次の反応により得ることができる。
【化7】

【0063】
ここで、一般式(IV)で表される化合物において、Mは、ランタノイド元素、スカンジウム又はイットリウムを示し、CpR’は、それぞれ独立して無置換もしくは置換シクロペンタジエニル、インデニル又はフルオレニルを示し、Xは、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシド基、チオラート基、アミド基、シリル基又は炭素数1〜20の炭化水素基を示し、Lは、中性ルイス塩基を示し、wは、0〜3の整数を示す。また、一般式[A]+[B]-で表されるイオン性化合物において、[A]+は、カチオンを示し、[B]-は、非配位性アニオンを示す。
【0064】
[A]+で表されるカチオンとしては、例えば、カルボニウムカチオン、オキソニウムカチオン、アミンカチオン、ホスホニウムカチオン、シクロヘプタトリエニルカチオン、遷移金属を有するフェロセニウムカチオン等が挙げられる。カルボニウムカチオンとしては、トリフェニルカルボニウムカチオン、トリ(置換フェニル)カルボニウムカチオン等の三置換カルボニウムカチオン等が挙げられ、トリ(置換フェニル)カルボニルカチオンとして、具体的には、トリ(メチルフェニル)カルボニウムカチオン等が挙げられる。アミンカチオンとしては、トリメチルアンモニウムカチオン、トリエチルアンモニウムカチオン、トリプロピルアンモニウムカチオン、トリブチルアンモニウムカチオン等のトリアルキルアンモニウムカチオン;N,N−ジメチルアニリニウムカチオン、N,N−ジエチルアニリニウムカチオン、N,N−2,4,6−ペンタメチルアニリニウムカチオン等のN,N−ジアルキルアニリニウムカチオン;ジイソプロピルアンモニウムカチオン、ジシクロヘキシルアンモニウムカチオン等のジアルキルアンモニウムカチオン等が挙げられる。ホスホニウムカチオンとしては、トリフェニルホスホニウムカチオン、トリ(メチルフェニル)ホスホニウムカチオン、トリ(ジメチルフェニル)ホスホニウムカチオン等のトリアリールホスホニウムカチオン等が挙げられる。これらカチオンの中でも、N,N−ジアルキルアニリニウムカチオン又はカルボニウムカチオンが好ましく、N,N−ジアルキルアニリニウムカチオンが特に好ましい。
【0065】
上記反応に用いる一般式[A]+[B]-で表されるイオン性化合物としては、上記の非配位性アニオン及びカチオンからそれぞれ選択し組み合わせた化合物であって、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルボニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が好ましい。また、一般式[A]+[B]-で表されるイオン性化合物は、メタロセン錯体に対して0.1〜10倍モル加えることが好ましく、約1倍モル加えることが更に好ましい。なお、一般式(III)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体を重合反応に用いる場合、一般式(III)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体をそのまま重合反応系中に提供してもよいし、上記反応に用いる一般式(IV)で表される化合物と一般式[A]+[B]-で表されるイオン性化合物を別個に重合反応系中に提供し、反応系中で一般式(III)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体を形成させてもよい。また、一般式(I)又は式(II)で表されるメタロセン錯体と一般式[A]+[B]-で表されるイオン性化合物とを組み合わせて使用することにより、反応系中で一般式(III)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体を形成させることもできる。
【0066】
一般式(I)及び式(II)で表されるメタロセン錯体、並びに上記一般式(III)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体の構造は、X線構造解析により決定することが好ましい。
【0067】
上記第一重合触媒組成物に用いることができる助触媒は、通常のメタロセン錯体を含む重合触媒組成物の助触媒として用いられる成分から任意に選択され得る。該助触媒としては、例えば、アルミノキサン、有機アルミニウム化合物、上記のイオン性化合物等が好適に挙げられる。これら助触媒は、1種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0068】
上記アルミノキサンとしては、アルキルアミノキサンが好ましく、例えば、メチルアルミノキサン(MAO)、修飾メチルアルミノキサン等が挙げられる。また、修飾メチルアルミノキサンとしては、MMAO−3A(東ソーファインケム社製)等が好ましい。なお、上記第一重合触媒組成物におけるアルミノキサンの含有量は、メタロセン錯体の中心金属Mと、アルミノキサンのアルミニウム元素Alとの元素比率Al/Mが、10〜1000程度、好ましくは100程度となるようにすることが好ましい。
【0069】
一方、上記有機アルミニウム化合物としては、一般式AlRR’R’’(式中、R及びR’はそれぞれ独立してC1〜C10の炭化水素基又は水素原子であり、R’’はC1〜C10の炭化水素基である)で表される有機アルミニウム化合物が好ましい。上記有機アルミニウム化合物としては、例えば、トリアルキルアルミニウム、ジアルキルアルミニウムクロライド、アルキルアルミニウムジクロライド、ジアルキルアルミニウムハイドライド等が挙げられ、これらの中でも、トリアルキルアルミニウムが好ましい。また、トリアルキルアルミニウムとしては、例えば、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム等が挙げられる。なお、上記重合触媒組成物における有機アルミニウム化合物の含有量は、メタロセン錯体に対して1〜50倍モルであることが好ましく、約10倍モルであることが更に好ましい。
【0070】
更に、上記重合触媒組成物においては、一般式(I)及び式(II)で表されるメタロセン錯体、並びに上記一般式(III)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体をそれぞれ、適切な助触媒と組み合わせることで、シス−1,4結合量や得られる共重合体の分子量を増大できる。
【0071】
<第二の重合触媒組成物>
また、上記重合触媒組成物としては、
(a)成分:希土類元素化合物又は該希土類元素化合物とルイス塩基との反応物であって、希土類元素と炭素との結合を有さない該希土類元素化合物又は反応物と、
(b)成分:非配位性アニオンとカチオンとからなるイオン性化合物(b−1)、アルミノキサン(b−2)、並びにルイス酸、金属ハロゲン化物とルイス塩基との錯化合物及び活性ハロゲンを含む有機化合物のうち少なくとも1種のハロゲン化合物(b−3)よりなる群から選択される少なくとも1種とを含む重合触媒組成物(以下、第二重合触媒組成物ともいう)を好適に挙げることができ、
該第二重合触媒組成物が、イオン性化合物(b−1)及びハロゲン化合物(b−3)の少なくとも1種を含む場合、該重合触媒組成物は、更に、
(c)成分:下記一般式(X):
YR1a2b3c ・・・ (X)
[式中、Yは、周期律表第1族、第2族、第12族及び第13族から選択される金属であり、R1及びR2は、同一又は異なり、炭素数1〜10の炭化水素基又は水素原子で、R3は炭素数1〜10の炭化水素基であり、但し、R3は上記R1又はR2と同一又は異なっていてもよく、また、Yが周期律表第1族から選択される金属である場合には、aは1で且つb及びcは0であり、Yが周期律表第2族及び第12族から選択される金属である場合には、a及びbは1で且つcは0であり、Yが周期律表第13族から選択される金属である場合には、a,b及びcは1である]で表される有機金属化合物を含むことを特徴とする。
【0072】
前記共重合体の製造方法に用いる第二重合触媒組成物は、上記(a)成分及び(b)成分を含むことを要し、ここで、該重合触媒組成物が、上記イオン性化合物(b−1)及び上記ハロゲン化合物(b−3)の少なくとも1種を含む場合には、更に、
(c)成分:下記一般式(X):
YR1a2b3c ・・・ (X)
[式中、Yは、周期律表第1族、第2族、第12族及び第13族から選択される金属であり、R1及びR2は、同一又は異なり、炭素数1〜10の炭化水素基又は水素原子で、R3は炭素数1〜10の炭化水素基であり、但し、R3は上記R1又はR2と同一又は異なっていてもよく、また、Yが周期律表第1族から選択される金属である場合には、aは1で且つb及びcは0であり、Yが周期律表第2族及び第12族から選択される金属である場合には、a及びbは1で且つcは0であり、Yが周期律表第13族から選択される金属である場合には、a,b及びcは1である]で表される有機金属化合物を含むことを要する。
上記イオン性化合物(b−1)及び上記ハロゲン化合物(b−3)は、(a)成分へ供給するための炭素原子が存在しないため、該(a)成分への炭素供給源として、上記(C)成分が必要となる。なお、上記重合触媒組成物が上記アルミノキサン(b−2)を含む場合であっても、該重合触媒組成物は、上記(c)成分を含むことができる。また、上記第二重合触媒組成物は、通常の希土類元素化合物系の重合触媒組成物に含有される他の成分、例えば助触媒等を含んでいてもよい。なお、重合反応系において、第二重合触媒組成物に含まれる(a)成分の濃度は0.1〜0.0001mol/lの範囲であることが好ましい。
【0073】
上記第二重合触媒組成物に用いる(a)成分は、希土類元素化合物又は該希土類元素化合物とルイス塩基との反応物であり、ここで、希土類元素化合物及び該希土類元素化合物とルイス塩基との反応物は、希土類元素と炭素との結合を有さない。該希土類元素化合物及び反応物が希土類元素−炭素結合を有さない場合、化合物が安定であり、取り扱いやすい。ここで、希土類元素化合物とは、周期律表中の原子番号57〜71の元素から構成されるランタノイド元素又はスカンジウムもしくはイットリウムを含有する化合物である。
なお、ランタノイド元素の具体例としては、ランタニウム、セリウム、プラセオジム、ネオジウム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミニウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウムを挙げることができる。なお、上記(a)成分は、1種単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0074】
また、上記希土類元素化合物は、希土類金属が2価もしくは3価の塩又は錯体化合物であることが好ましく、水素原子、ハロゲン原子及び有機化合物残基から選択される1種又は2種以上の配位子を含有する希土類元素化合物であることが更に好ましい。更に、上記希土類元素化合物又は該希土類元素化合物とルイス塩基との反応物は、下記一般式(XI)又は(XII):
11112・L11w ・・・ (XI)
11113・L11w ・・・ (XII)
[式中、M11は、ランタノイド元素、スカンジウム又はイットリウムを示し、X11は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシド基、チオラート基、アミド基、シリル基、アルデヒド残基、ケトン残基、カルボン酸残基、チオカルボン酸残基又はリン化合物残基を示し、L11は、ルイス塩基を示し、wは、0〜3を示す]で表されることができる。
【0075】
上記希土類元素化合物の希土類元素に結合する基(配位子)として、具体的には、水素原子;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基等の脂肪族アルコキシ基;フェノキシ基、2,6−ジ−tert−ブチルフェノキシ基、2,6−ジイソプロピルフェノキシ基、2,6−ジネオペンチルフェノキシ基、2−tert−ブチル−6−イソプロピルフェノキシ基、2−tert−ブチル−6−ネオペンチルフェノキシ基、2−イソプロピル−6−ネオペンチルフェノキシ基;チオメトキシ基、チオエトキシ基、チオプロポキシ基、チオn−ブトキシ基、チオイソブトキシ基、チオsec−ブトキシ基、チオtert−ブトキシ基等の脂肪族チオラート基;チオフェノキシ基、2,6−ジ−tert−ブチルチオフェノキシ基、2,6−ジイソプロピルチオフェノキシ基、2,6−ジネオペンチルチオフェノキシ基、2−tert−ブチル−6−イソプロピルチオフェノキシ基、2−tert−ブチル−6−チオネオペンチルフェノキシ基、2−イソプロピル−6−チオネオペンチルフェノキシ基、2,4,6−トリイソプロピルチオフェノキシ基等のアリールチオラート基;ジメチルアミド基、ジエチルアミド基、ジイソプロピルアミド基等の脂肪族アミド基;フェニルアミド基、2,6−ジ−tert−ブチルフェニルアミド基、2,6−ジイソプロピルフェニルアミド基、2,6−ジネオペンチルフェニルアミド基、2−tert−ブチル−6−イソプロピルフェニルアミド基、2−tert−ブチル−6−ネオペンチルフェニルアミド基、2−イソプロピル−6−ネオペンチルフェニルアミド基、2,4,6−tert−ブチルフェニルアミド基等のアリールアミド基;ビストリメチルシリルアミド基等のビストリアルキルシリルアミド基;トリメチルシリル基、トリス(トリメチルシリル)シリル基、ビス(トリメチルシリル)メチルシリル基、トリメチルシリル(ジメチル)シリル基、トリイソプロピルシリル(ビストリメチルシリル)シリル基等のシリル基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子等が挙げられる。更には、サリチルアルデヒド、2−ヒドロキシ−1−ナフトアルデヒド、2−ヒドロキシ−3−ナフトアルデヒド等のアルデヒドの残基;2’−ヒドロキシアセトフェノン、2’−ヒドロキシブチロフェノン、2’−ヒドロキシプロピオフェノン等のヒドロキシフェノンの残基;アセチルアセトン、ベンゾイルアセトン、プロピオニルアセトン、イソブチルアセトン、バレリルアセトン、エチルアセチルアセトン等のジケトンの残基;イソ吉草酸、カプリル酸、オクタン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、シクロペンタンカルボン酸、ナフテン酸、エチルヘキサン酸、ビバール酸、バーサチック酸[シェル化学(株)製の商品名、C10モノカルボン酸の異性体の混合物から構成される合成酸]、フェニル酢酸、安息香酸、2−ナフトエ酸、マレイン酸、コハク酸等のカルボン酸の残基;ヘキサンチオ酸、2,2−ジメチルブタンチオ酸、デカンチオ酸、チオ安息香酸等のチオカルボン酸の残基、リン酸ジブチル、リン酸ジペンチル、リン酸ジヘキシル、リン酸ジヘプチル、リン酸ジオクチル、リン酸ビス(2−エチルヘキシル)、リン酸ビス(1−メチルヘプチル)、リン酸ジラウリル、リン酸ジオレイル、リン酸ジフェニル、リン酸ビス(p−ノニルフェニル)、リン酸ビス(ポリエチレングリコール−p−ノニルフェニル)、リン酸(ブチル)(2−エチルヘキシル)、リン酸(1−メチルヘプチル)(2−エチルヘキシル)、リン酸(2−エチルヘキシル)(p−ノニルフェニル)等のリン酸エステルの残基;2−エチルヘキシルホスホン酸モノブチル、2−エチルヘキシルホスホン酸モノ−2−エチルヘキシル、フェニルホスホン酸モノ−2−エチルヘキシル、2−エチルヘキシルホスホン酸モノ−p−ノニルフェニル、ホスホン酸モノ−2−エチルヘキシル、ホスホン酸モノ−1−メチルヘプチル、ホスホン酸モノ−p−ノニルフェニル等のホスホン酸エステルの残基、ジブチルホスフィン酸、ビス(2−エチルヘキシル)ホスフィン酸、ビス(1−メチルヘプチル)ホスフィン酸、ジラウリルホスフィン酸、ジオレイルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸、ビス(p−ノニルフェニル)ホスフィン酸、ブチル(2−エチルヘキシル)ホスフィン酸、(2−エチルヘキシル)(1−メチルヘプチル)ホスフィン酸、(2−エチルヘキシル)(p−ノニルフェニル)ホスフィン酸、ブチルホスフィン酸、2−エチルヘキシルホスフィン酸、1−メチルヘプチルホスフィン酸、オレイルホスフィン酸、ラウリルホスフィン酸、フェニルホスフィン酸、p−ノニルフェニルホスフィン酸等のホスフィン酸の残基を挙げることもできる。なお、これらの配位子は、1種単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0076】
上記第二重合触媒組成物に用いる(a)成分において、上記希土類元素化合物と反応するルイス塩基としては、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジメチルアニリン、トリメチルホスフィン、塩化リチウム、中性のオレフィン類、中性のジオレフィン類等が挙げられる。ここで、上記希土類元素化合物が複数のルイス塩基と反応する場合(式(XI)及び(XII)においては、wが2又は3である場合)、ルイス塩基L11は、同一であっても異なっていてもよい。
【0077】
上記第二重合触媒組成物に用いる(b)成分は、イオン性化合物(b−1)、アルミノキサン(b−2)及びハロゲン化合物(b−3)よりなる群から選択される少なくとも一種の化合物である。なお、上記第二重合触媒組成物における(b)成分の合計の含有量は、(a)成分に対して0.1〜50倍モルであることが好ましい。
【0078】
上記(b−1)で表されるイオン性化合物は、非配位性アニオンとカチオンとからなり、上記(a)成分である希土類元素化合物又はそのルイス塩基との反応物と反応してカチオン性遷移金属化合物を生成できるイオン性化合物等を挙げることができる。ここで、非配位性アニオンとしては、例えば、テトラフェニルボレート、テトラキス(モノフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(ジフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(トリフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(テトラフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(テトラフルオロメチルフェニル)ボレート、テトラ(トリル)ボレート、テトラ(キシリル)ボレート、(トリフェニル、ペンタフルオロフェニル)ボレート、[トリス(ペンタフルオロフェニル)、フェニル]ボレート、トリデカハイドライド−7,8−ジカルバウンデカボレート等が挙げられる。一方、カチオンとしては、カルボニウムカチオン、オキソニウムカチオン、アンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、シクロヘプタトリエニルカチオン、遷移金属を有するフェロセニウムカチオン等を挙げることができる。カルボニウムカチオンの具体例としては、トリフェニルカルボニウムカチオン、トリ(置換フェニル)カルボニウムカチオン等の三置換カルボニウムカチオン等が挙げられ、トリ(置換フェニル)カルボニルカチオンとして、より具体的には、トリ(メチルフェニル)カルボニウムカチオン、トリ(ジメチルフェニル)カルボニウムカチオン等が挙げられる。アンモニウムカチオンの具体例としては、トリメチルアンモニウムカチオン、トリエチルアンモニウムカチオン、トリプロピルアンモニウムカチオン、トリブチルアンモニウムカチオン(例えば、トリ(n−ブチル)アンモニウムカチオン)等のトリアルキルアンモニウムカチオン;N,N−ジメチルアニリニウムカチオン、N,N−ジエチルアニリニウムカチオン、N,N−2,4,6−ペンタメチルアニリニウムカチオン等のN,N−ジアルキルアニリニウムカチオン;ジイソプロピルアンモニウムカチオン、ジシクロヘキシルアンモニウムカチオン等のジアルキルアンモニウムカチオン等が挙げられる。ホスホニウムカチオンの具体例としては、トリフェニルホスホニウムカチオン、トリ(メチルフェニル)ホスホニウムカチオン、トリ(ジメチルフェニル)ホスホニウムカチオン等のトリアリールホスホニウムカチオン等が挙げられる。従って、イオン性化合物としては、上述の非配位性アニオン及びカチオンからそれぞれ選択し組み合わせた化合物が好ましく、具体的には、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルボニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が好ましい。また、これらのイオン性化合物は、1種単独で使用することも、2種以上を混合して用いることもできる。なお、上記第二重合触媒組成物におけるイオン性化合物の含有量は、(a)成分に対して0.1〜10倍モルであることが好ましく、約1倍モルであることが更に好ましい。
【0079】
上記(b−2)で表されるアルミノキサンは、有機アルミニウム化合物と縮合剤とを接触させることによって得られる化合物であり、例えば、一般式:(−Al(R’)O−)で示される繰り返し単位を有する鎖状アルミノキサン又は環状アルミノキサン(式中、R’は炭素数1〜10の炭化水素基であり、一部の炭化水素基はハロゲン原子及び/又はアルコキシ基で置換されてもよく、繰り返し単位の重合度は、5以上が好ましく、10以上が更に好ましい)を挙げることができる。ここで、R’として、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソブチル基等が挙げられ、これらの中でも、メチル基が好ましい。また、アルミノキサンの原料として用いられる有機アルミニウム化合物としては、例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム及びその混合物等が挙げられ、トリメチルアルミニウムが特に好ましい。例えば、トリメチルアルミニウムとトリブチルアルミニウムとの混合物を原料として用いたアルミノキサンを好適に用いることができる。なお、上記第二重合触媒組成物におけるアルミノキサンの含有量は、(a)成分を構成する希土類元素Mと、アルミノキサンのアルミニウム元素Alとの元素比率Al/Mが、10〜1000程度となるようにすることが好ましい。
【0080】
上記(b−3)で表されるハロゲン化合物は、ルイス酸、金属ハロゲン化物とルイス塩基との錯化合物及び活性ハロゲンを含む有機化合物のうち少なくとも1種からなり、例えば、上記(a)成分である希土類元素化合物又はそのルイス塩基との反応物と反応して、カチオン性遷移金属化合物やハロゲン化遷移金属化合物や遷移金属中心が電荷不足の化合物を生成することができる。なお、上記第二重合触媒組成物におけるハロゲン化合物の合計の含有量は、(a)成分に対して1〜5倍モルであることが好ましい。
【0081】
上記ルイス酸としては、B(C653等のホウ素含有ハロゲン化合物、Al(C653等のアルミニウム含有ハロゲン化合物を使用できる他、周期律表中の第III,IV,V,VI又はVIII族に属する元素を含有するハロゲン化合物を用いることもできる。好ましくはアルミニウムハロゲン化物又は有機金属ハロゲン化物が挙げられる。また、ハロゲン元素としては、塩素又は臭素が好ましい。上記ルイス酸として、具体的には、メチルアルミニウムジブロマイド、メチルアルミニウムジクロライド、エチルアルミニウムジブロマイド、エチルアルミニウムジクロライド、ブチルアルミニウムジブロマイド、ブチルアルミニウムジクロライド、ジメチルアルミニウムブロマイド、ジメチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムブロマイド、ジエチルアルミニウムクロライド、ジブチルアルミニウムブロマイド、ジブチルアルミニウムクロライド、メチルアルミニウムセスキブロマイド、メチルアルミニウムセスキクロライド、エチルアルミニウムセスキブロマイド、エチルアルミニウムセスキクロライド、ジブチル錫ジクロライド、アルミニウムトリブロマイド、三塩化アンチモン、五塩化アンチモン、三塩化リン、五塩化リン、四塩化錫、四塩化チタン、六塩化タングステン等が挙げられ、これらの中でも、ジエチルアルミニウムクロライド、エチルアルミニウムセスキクロライド、エチルアルミニウムジクロライド、ジエチルアルミニウムブロマイド、エチルアルミニウムセスキブロマイド、エチルアルミニウムジブロマイドが特に好ましい。
【0082】
上記金属ハロゲン化物とルイス塩基との錯化合物を構成する金属ハロゲン化物としては、塩化ベリリウム、臭化ベリリウム、ヨウ化ベリリウム、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、塩化カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム、塩化バリウム、臭化バリウム、ヨウ化バリウム、塩化亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛、塩化カドミウム、臭化カドミウム、ヨウ化カドミウム、塩化水銀、臭化水銀、ヨウ化水銀、塩化マンガン、臭化マンガン、ヨウ化マンガン、塩化レニウム、臭化レニウム、ヨウ化レニウム、塩化銅、ヨウ化銅、塩化銀、臭化銀、ヨウ化銀、塩化金、ヨウ化金、臭化金等が挙げられ、これらの中でも、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化バリウム、塩化マンガン、塩化亜鉛、塩化銅が好ましく、塩化マグネシウム、塩化マンガン、塩化亜鉛、塩化銅が特に好ましい。
【0083】
また、上記金属ハロゲン化物とルイス塩基との錯化合物を構成するルイス塩基としては、リン化合物、カルボニル化合物、窒素化合物、エーテル化合物、アルコール等が好ましい。具体的には、リン酸トリブチル、リン酸トリ−2−エチルヘキシル、リン酸トリフェニル、リン酸トリクレジル、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジエチルホスフィノエタン、ジフェニルホスフィノエタン、アセチルアセトン、ベンゾイルアセトン、プロピオニトリルアセトン、バレリルアセトン、エチルアセチルアセトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸フェニル、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジフェニル、酢酸、オクタン酸、2−エチル−ヘキサン酸、オレイン酸、ステアリン酸、安息香酸、ナフテン酸、バーサチック酸、トリエチルアミン、N,N−ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン、ジフェニルエーテル、2−エチル−ヘキシルアルコール、オレイルアルコール、ステアリルアルコール、フェノール、ベンジルアルコール、1−デカノール、ラウリルアルコール等が挙げられ、これらの中でも、リン酸トリ−2−エチルヘキシル、リン酸トリクレジル、アセチルアセトン、2−エチルヘキサン酸、バーサチック酸、2−エチルヘキシルアルコール、1−デカノール、ラウリルアルコールが好ましい。
【0084】
上記ルイス塩基は、上記金属ハロゲン化物1モル当り、0.01〜30モル、好ましくは0.5〜10モルの割合で反応させる。このルイス塩基との反応物を使用すると、ポリマー中に残存する金属を低減することができる。
上記活性ハロゲンを含む有機化合物としては、ベンジルクロライド等が挙げられる。
【0085】
上記第二重合触媒組成物に用いる(c)成分は、下記一般式(X):
YR1a2b3c ・・・ (X)
[式中、Yは、周期律表第1族、第2族、第12族及び第13族から選択される金属であり、R1及びR2は、同一又は異なり、炭素数1〜10の炭化水素基又は水素原子で、R3は炭素数1〜10の炭化水素基であり、但し、R3は上記R1又はR2と同一又は異なっていてもよく、また、Yが周期律表第1族から選択される金属である場合には、aは1で且つb及びcは0であり、Yが周期律表第2族及び第12族から選択される金属である場合には、a及びbは1で且つcは0であり、Yが周期律表第13族から選択される金属である場合には、a,b及びcは1である]で表される有機金属化合物であり、下記一般式(Xa):
AlR123 ・・・ (Xa)
[式中、R1及びR2は、同一又は異なり、炭素数1〜10の炭化水素基又は水素原子で、R3は炭素数1〜10の炭化水素基であり、但し、R3は上記R1又はR2と同一又は異なっていてもよい]で表される有機アルミニウム化合物であることが好ましい。式(X)の有機アルミニウム化合物としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリ−n−プロピルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリ−n−ブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−t−ブチルアルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリシクロヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム;水素化ジエチルアルミニウム、水素化ジ−n−プロピルアルミニウム、水素化ジ−n−ブチルアルミニウム、水素化ジイソブチルアルミニウム、水素化ジヘキシルアルミニウム、水素化ジイソヘキシルアルミニウム、水素化ジオクチルアルミニウム、水素化ジイソオクチルアルミニウム;エチルアルミニウムジハイドライド、n−プロピルアルミニウムジハイドライド、イソブチルアルミニウムジハイドライド等が挙げられ、これらの中でも、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、水素化ジエチルアルミニウム、水素化ジイソブチルアルミニウムが好ましい。以上に述べた(c)成分としての有機アルミニウム化合物は、1種単独で使用することも、2種以上を混合して用いることもできる。なお、上記第二重合触媒組成物における有機アルミニウム化合物の含有量は、(a)成分に対して1〜50倍モルであることが好ましく、約10倍モルであることが更に好ましい。
【0086】
<重合触媒および第三の重合触媒組成物>
上記重合触媒としては、共役ジエン化合物と非共役オレフィンとの重合用であり、下記式(A):
aMXbQYb ・・・ (A)
[式中、Rはそれぞれ独立して無置換もしくは置換インデニルを示し、該RはMに配位しており、Mはランタノイド元素、スカンジウム又はイットリウムを示し、Xはそれぞれ独立して炭素数1〜20の炭化水素基を示し、該XはM及びQにμ配位しており、Qは周期律表第13族元素を示し、Yはそれぞれ独立して炭素数1〜20の炭化水素基又は水素原子を示し、該YはQに配位しており、a及びbは2である]で表されるメタロセン系複合触媒が挙げられる。
【0087】
上記メタロセン系複合触媒の好適例においては、下記式(XV):
【化8】

[式中、M1は、ランタノイド元素、スカンジウム又はイットリウムを示し、CpRは、それぞれ独立して無置換もしくは置換インデニルを示し、Ra及びRbは、それぞれ独立して炭素数1〜20の炭化水素基を示し、該Ra及びRbは、M1及びAlにμ配位しており、Rc及びRdは、それぞれ独立して炭素数1〜20の炭化水素基又は水素原子を示す]で表されるメタロセン系複合触媒が挙げられる。
【0088】
また、上記第三の重合触媒組成物は、上記のメタロセン系複合触媒と、ホウ素アニオンとを含むことを特徴とする。
【0089】
<メタロセン系複合触媒>
以下に、上記メタロセン系複合触媒を詳細に説明する。上記メタロセン系複合触媒は、ランタノイド元素、スカンジウム又はイットリウムの希土類元素と周期律表第13族元素とを有し、下記式(A):
aMXbQYb ・・・ (A)
[式中、Rはそれぞれ独立して無置換もしくは置換インデニルを示し、該RはMに配位しており、Mはランタノイド元素、スカンジウム又はイットリウムを示し、Xはそれぞれ独立して炭素数1〜20の炭化水素基を示し、該XはM及びQにμ配位しており、Qは周期律表第13族元素を示し、Yはそれぞれ独立して炭素数1〜20の炭化水素基又は水素原子を示し、該YはQに配位しており、a及びbは2である]で表されることを特徴とする。上記メタロセン系重合触媒を用いることで、共役ジエン化合物と非共役オレフィンとの共重合体を製造することができる。また、上記メタロセン系複合触媒、例えば予めアルミニウム触媒と複合させてなる触媒を用いることで、共重合体合成時に使用されるアルキルアルミニウムの量を低減したり、無くしたりすることが可能となる。なお、従来の触媒系を用いると、共重合体合成時に大量のアルキルアルミニウムを用いる必要がある。例えば、従来の触媒系では、金属触媒に対して10当量以上のアルキルアルミニウムを用いる必要があるところ、上記メタロセン系複合触媒であれば、5当量程度のアルキルアルミニウムを加えることで、優れた触媒作用が発揮される。
【0090】
上記メタロセン系複合触媒において、上記式(A)中の金属Mは、ランタノイド元素、スカンジウム又はイットリウムである。ランタノイド元素には、原子番号57〜71の15元素が含まれ、これらのいずれでもよい。金属Mとしては、サマリウムSm、ネオジムNd、プラセオジムPr、ガドリニウムGd、セリウムCe、ホルミウムHo、スカンジウムSc及びイットリウムYが好適に挙げられる。
【0091】
上記式(A)において、Rは、それぞれ独立して無置換インデニル又は置換インデニルであり、該Rは上記金属Mに配位している。なお、置換インデニル基の具体例としては、例えば、1,2,3−トリメチルインデニル基、ヘプタメチルインデニル基、1,2,4,5,6,7−ヘキサメチルインデニル基等が挙げられる。
【0092】
上記式(A)において、Qは、周期律表第13族元素を示し、具体的には、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム等が挙げられる。
【0093】
上記式(A)において、Xはそれぞれ独立して炭素数1〜20の炭化水素基を示し、該XはM及びQにμ配位している。ここで、炭素数1〜20の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、ステアリル基等が挙げられる。なお、μ配位とは、架橋構造をとる配位様式のことである。
【0094】
上記式(A)において、Yはそれぞれ独立して炭素数1〜20の炭化水素基又は水素原子を示し、該YはQに配位している。ここで、炭素数1〜20の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、ステアリル基等が挙げられる。
【0095】
上記式(XV)において、金属M1は、ランタノイド元素、スカンジウム又はイットリウムである。ランタノイド元素には、原子番号57〜71の15元素が含まれ、これらのいずれでもよい。金属M1としては、サマリウムSm、ネオジムNd、プラセオジムPr、ガドリニウムGd、セリウムCe、ホルミウムHo、スカンジウムSc及びイットリウムYが好適に挙げられる。
【0096】
上記式(XV)において、CpRは、無置換インデニル又は置換インデニルである。インデニル環を基本骨格とするCpRは、C97-XX又はC911-XXで示され得る。ここで、Xは0〜7又は0〜11の整数である。また、Rはそれぞれ独立してヒドロカルビル基又はメタロイド基であることが好ましい。ヒドロカルビル基の炭素数は1〜20であることが好ましく、1〜10であることが更に好ましく、1〜8であることが一層好ましい。該ヒドロカルビル基として、具体的には、メチル基、エチル基、フェニル基、ベンジル基等が好適に挙げられる。一方、メタロイド基のメタロイドの例としては、ゲルミルGe、スタニルSn、シリルSiが挙げられ、また、メタロイド基はヒドロカルビル基を有することが好ましく、メタロイド基が有するヒドロカルビル基は上記のヒドロカルビル基と同様である。該メタロイド基として、具体的には、トリメチルシリル基等が挙げられる。置換インデニルとして、具体的には、2−フェニルインデニル、2−メチルインデニル等が挙げられる。なお、式(XV)における二つのCpRは、それぞれ互いに同一でも異なっていてもよい。
【0097】
上記式(XV)において、RA及びRBは、それぞれ独立して炭素数1〜20の炭化水素基を示し、該RA及びRは、M1及Alにμ配位している。ここで、炭素数1〜20の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、ステアリル基等が挙げられる。なお、μ配位とは、架橋構造をとる配位様式のことである。
【0098】
上記式(XV)において、RC及びRDは、それぞれ独立して炭素数1〜20の炭化水素基又は水素原子である。ここで、炭素数1〜20の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、ステアリル基等が挙げられる。
【0099】
なお、上記メタロセン系複合触媒は、例えば、溶媒中で、下記式(XVI):
【化9】

(式中、M2は、ランタノイド元素、スカンジウム又はイットリウムを示し、CpRは、それぞれ独立して無置換もしくは置換インデニルを示し、RE〜RJは、それぞれ独立して炭素数1〜3のアルキル基又は水素原子を示し、Lは、中性ルイス塩基を示し、wは、0〜3の整数を示す)で表されるメタロセン錯体を、AlRKLMで表される有機アルミニウム化合物と反応させることで得られる。なお、反応温度は室温程度にすればよいので、温和な条件で製造することができる。また、反応時間は任意であるが、数時間〜数十時間程度である。反応溶媒は特に限定されないが、原料及び生成物を溶解する溶媒であることが好ましく、例えばトルエンやヘキサンを用いればよい。なお、上記メタロセン系複合触媒の構造は、1H−NMRやX線構造解析により決定することが好ましい。
【0100】
上記式(XVI)で表されるメタロセン錯体において、CpRは、無置換インデニル又は置換インデニルであり、上記式(XV)中のCpRと同義である。また、上記式(XVI)において、金属M2は、ランタノイド元素、スカンジウム又はイットリウムであり、上記式(XV)中の金属M1と同義である。
【0101】
上記式(XVI)で表されるメタロセン錯体は、シリルアミド配位子[−N(SiR32]を含む。シリルアミド配位子に含まれるR基(RE〜RJ基)は、それぞれ独立して炭素数1〜3のアルキル基又は水素原子である。また、RE〜RJのうち少なくとも一つが水素原子であることが好ましい。RE〜RJのうち少なくとも一つを水素原子にすることで、触媒の合成が容易になる。更に、アルキル基としては、メチル基が好ましい。
【0102】
上記式(XVI)で表されるメタロセン錯体は、更に0〜3個、好ましくは0〜1個の中性ルイス塩基Lを含む。ここで、中性ルイス塩基Lとしては、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジメチルアニリン、トリメチルホスフィン、塩化リチウム、中性のオレフィン類、中性のジオレフィン類等が挙げられる。ここで、上記錯体が複数の中性ルイス塩基Lを含む場合、中性ルイス塩基Lは、同一であっても異なっていてもよい。
【0103】
また、上記式(XVI)で表されるメタロセン錯体は、モノマーとして存在していてもよく、二量体又はそれ以上の多量体として存在していてもよい。
【0104】
一方、上記メタロセン系複合触媒の生成に用いる有機アルミニウム化合物は、AlRKLMで表され、ここで、RK及びRLは、それぞれ独立して炭素数1〜20の1価の炭化水素基又は水素原子で、RMは炭素数1〜20の1価の炭化水素基であり、但し、RMは上記RK又はRLと同一でも異なっていてもよい。炭素数1〜20の1価の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、ステアリル基等が挙げられる。
【0105】
上記有機アルミニウム化合物の具体例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリ−n−プロピルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリ−n−ブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−t−ブチルアルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリシクロヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム;水素化ジエチルアルミニウム、水素化ジ−n−プロピルアルミニウム、水素化ジ−n−ブチルアルミニウム、水素化ジイソブチルアルミニウム、水素化ジヘキシルアルミニウム、水素化ジイソヘキシルアルミニウム、水素化ジオクチルアルミニウム、水素化ジイソオクチルアルミニウム;エチルアルミニウムジハイドライド、n−プロピルアルミニウムジハイドライド、イソブチルアルミニウムジハイドライド等が挙げられ、これらの中でも、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、水素化ジエチルアルミニウム、水素化ジイソブチルアルミニウムが好ましい。また、これら有機アルミニウム化合物は、1種単独で使用することも、2種以上を混合して用いることもできる。なお、上記メタロセン系複合触媒の生成に用いる有機アルミニウム化合物の量は、メタロセン錯体に対して1〜50倍モルであることが好ましく、約10倍モルであることが更に好ましい。
【0106】
<第三の重合触媒組成物>
また、上記重合触媒組成物は、上記メタロセン系複合触媒と、ホウ素アニオンとを含むことを特徴とし、更に、通常のメタロセン系触媒を含む重合触媒組成物に含有される他の成分、例えば助触媒等を含むことが好ましい。なお、上記メタロセン系複合触媒とホウ素アニオンとを合わせて2成分触媒ともいう。上記第三重合触媒組成物によれば、上記メタロセン系複合触媒と同様に、更にホウ素アニオンを含有するため、各モノマー成分の共重合体中での含有量を任意に制御することが可能となる。
【0107】
上記第三重合触媒組成物において、2成分触媒を構成するホウ素アニオンとして、具体的には、4価のホウ素アニオンが挙げられる。例えば、テトラフェニルボレート、テトラキス(モノフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(ジフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(トリフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(テトラフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(テトラフルオロメチルフェニル)ボレート、テトラ(トリル)ボレート、テトラ(キシリル)ボレート、(トリフェニル、ペンタフルオロフェニル)ボレート、[トリス(ペンタフルオロフェニル)、フェニル]ボレート、トリデカハイドライド−7,8−ジカルバウンデカボレート等が挙げられ、これらの中でも、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートが好ましい。
【0108】
なお、上記ホウ素アニオンは、カチオンと組み合わされたイオン性化合物として使用することができる。上記カチオンとしては、例えば、カルボニウムカチオン、オキソニウムカチオン、アミンカチオン、ホスホニウムカチオン、シクロヘプタトリエニルカチオン、遷移金属を有するフェロセニウムカチオン等が挙げられる。カルボニウムカチオンとしては、トリフェニルカルボニウムカチオン、トリ(置換フェニル)カルボニウムカチオン等の三置換カルボニウムカチオン等が挙げられ、トリ(置換フェニル)カルボニルカチオンとして、具体的には、トリ(メチルフェニル)カルボニウムカチオン等が挙げられる。アミンカチオンとしては、トリメチルアンモニウムカチオン、トリエチルアンモニウムカチオン、トリプロピルアンモニウムカチオン、トリブチルアンモニウムカチオン等のトリアルキルアンモニウムカチオン;N,N−ジメチルアニリニウムカチオン、N,N−ジエチルアニリニウムカチオン、N,N−2,4,6−ペンタメチルアニリニウムカチオン等のN,N−ジアルキルアニリニウムカチオン;ジイソプロピルアンモニウムカチオン、ジシクロヘキシルアンモニウムカチオン等のジアルキルアンモニウムカチオン等が挙げられる。ホスホニウムカチオンとしては、トリフェニルホスホニウムカチオン、トリ(メチルフェニル)ホスホニウムカチオン、トリ(ジメチルフェニル)ホスホニウムカチオン等のトリアリールホスホニウムカチオン等が挙げられる。これらカチオンの中でも、N,N−ジアルキルアニリニウムカチオン又はカルボニウムカチオンが好ましく、N,N−ジアルキルアニリニウムカチオンが特に好ましい。従って、上記イオン性化合物としては、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルボニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が好ましい。なお、ホウ素アニオンとカチオンとからなるイオン性化合物は、上記メタロセン系複合触媒に対して0.1〜10倍モル加えることが好ましく、約1倍モル加えることが更に好ましい。
【0109】
なお、上記第三重合触媒組成物においては、上記メタロセン系複合触媒と上記ホウ素アニオンとを用いる必要があるが、上記式(XVI)で表されるメタロセン触媒と有機アルミニウム化合物を反応させる反応系に、ホウ素アニオンが存在していると、上記式(XV)のメタロセン系複合触媒を合成することができない。従って、上記第三重合触媒組成物の調製には、該メタロセン系複合触媒を予め合成し、該メタロセン系複合触媒を単離精製してからホウ素アニオンと組み合わせる必要がある。
【0110】
上記第三重合触媒組成物に用いることができる助触媒としては、例えば、上述のAlRKLMで表される有機アルミニウム化合物の他、アルミノキサン等が好適に挙げられる。上記アルミノキサンとしては、アルキルアミノキサンが好ましく、例えば、メチルアルミノキサン(MAO)、修飾メチルアルミノキサン等が挙げられる。また、修飾メチルアルミノキサンとしては、MMAO−3A(東ソーファインケム社製)等が好ましい。なお、これらアルミノキサンは、1種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0111】
なお、共重合体の製造方法においては、上述の通り、上記重合触媒または重合触媒組成物を用いること以外は、通常の配位イオン重合触媒による重合体の製造方法と同様にして、重合を行うことができる。ここで、共重合体の製造方法は、例えば、(1)モノマーとして共役ジエン化合物及び該共役ジエン化合物以外の非共役オレフィンを含む重合反応系中に、重合触媒組成物の構成成分を別個に提供し、該反応系中において重合触媒組成物としてもよいし、(2)予め調製された重合触媒組成物を重合反応系中に提供してもよい。また、(2)においては、助触媒によって活性化されたメタロセン錯体(活性種)を提供することも含まれる。なお、重合触媒組成物に含まれるメタロセン錯体の使用量は、共役ジエン化合物及び該共役ジエン化合物以外の非共役オレフィンの合計に対して、0.0001〜0.01倍モルの範囲が好ましい。
【0112】
また、共重合体の製造方法においては、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の重合停止剤を用いて、重合を停止させてもよい。
【0113】
共重合体の製造方法において、共役ジエン化合物及び非共役オレフィンの重合反応は、不活性ガス、好ましくは窒素ガスやアルゴンガスの雰囲気下において行われることが好ましい。上記重合反応の重合温度は、特に制限されないが、例えば−100℃〜200℃の範囲が好ましく、室温程度とすることもできる。なお、重合温度を上げると、重合反応のシス−1,4選択性が低下することがある。また、上記重合反応の圧力は、共役ジエン化合物及び非共役オレフィンを十分に重合反応系中に取り込むため、0.1〜10.0MPaの範囲が好ましい。また、上記重合反応の反応時間も特に制限されず、例えば1秒〜10日の範囲が好ましいが、重合されるモノマーの種類、触媒の種類、重合温度等の条件によって適宜選択することができる。
【0114】
前記共重合体の製造方法において、上記共役ジエン化合物と該共役ジエン化合物以外の非共役オレフィンとの重合の際、該非共役オレフィンの圧力は、0.1MPa〜10MPaであることが好ましい。該非共役オレフィンの圧力が0.1MPa以上であれば、反応混合物中に非共役オレフィンを効率的に導入することができる。また、非共役オレフィンの圧力を高くし過ぎても、非共役オレフィンを効率的に導入する効果が頭打ちとなるため、非共役オレフィンの圧力を10MPa以下とするのが好ましい。
【0115】
前記共重合体の製造方法において、上記共役ジエン化合物と該共役ジエン化合物以外の非共役オレフィンとの重合の際、重合開始時における該共役ジエン化合物の濃度(mol/l)と該非共役オレフィンの濃度(mol/l)とは、下記式:
非共役オレフィンの濃度/共役ジエン化合物の濃度≧1.0
の関係を満たすことが好ましく、更に好ましくは下記式:
非共役オレフィンの濃度/共役ジエン化合物の濃度≧1.3
の関係を満たし、一層好ましくは下記式:
非共役オレフィンの濃度/共役ジエン化合物の濃度≧1.7
の関係を満たす。非共役オレフィンの濃度/共役ジエン化合物の濃度の値を1以上とすることで、反応混合物中に非共役オレフィンを効率的に導入することができる。
【0116】
また、上記第一重合触媒組成物又は第二重合触媒組成物を使用しなくても、即ち、通常の配位イオン重合触媒を使用する場合であっても、重合反応系中への単量体の仕込み方を調整することで、前記共重合体を製造することができる。即ち、前記共重合体の第二の製造方法は、非共役オレフィンの存在下において、共役ジエン化合物の投入を制御することで、共重合体の連鎖構造を制御することを特徴とし、これによって、共重合体中の単量体単位の配列を制御することができる。なお、本発明において、重合反応系とは、共役ジエン化合物と非共役オレフィンとの重合が行われる場所を意味し、具体例としては、反応容器等が挙げられる。
【0117】
ここで、共役ジエン化合物の投入方法は、連続投入、分割投入のいずれであってもよく、更には、連続投入及び分割投入を組み合わせてもよい。また、連続投入とは、例えば、一定の添加速度で一定の時間添加することをいう。
【0118】
具体的には、共役ジエン化合物と非共役オレフィンとを重合させる重合反応系に共役ジエン化合物を分割又は連続投入することで、該重合反応系内の単量体の濃度比を制御することが可能となり、その結果、得られる共重合体中の連鎖構造(即ち、単量体単位の配列)を特徴づけることが可能となる。また、共役ジエン化合物の投入の際に、非共役オレフィンが重合反応系中に存在することで、共役ジエン化合物単独重合体の生成を抑制することができる。なお、共役ジエン化合物の投入は、非共役オレフィンの重合を開始した後に行ってもよい。
【0119】
例えば、上記第二製造方法によって前記共重合体を製造する場合には、あらかじめ非共役オレフィンの重合を開始した重合反応系に、非共役オレフィンの存在下で共役ジエン化合物を連続投入することが有効となる。特に、上記第二製造方法によってマルチブロック共重合体を製造する場合には、「非共役オレフィンを重合反応系中で重合させ、次に、非共役オレフィンの存在下で共役ジエン化合物を該重合反応系中に連続投入する」という操作を2回以上繰り返すことが有効となる。
【0120】
上記第二製造方法は、上述のように重合反応系中への単量体の仕込み方を特定する以外は特に限定されず、例えば、溶液重合法、懸濁重合法、液相塊状重合法、乳化重合法、気相重合法、固相重合法等の任意の重合方法を用いることができる。また、上記第二製造方法は、上述のように重合反応系中への単量体の仕込み方を特定する以外は、上記第一製造方法と同様にして、単量体である共役ジエン化合物と非共役オレフィンを共重合させることができる。
【0121】
なお、上記第二製造方法においては、共役ジエン化合物の投入を制御する必要があるが、具体的には、共役ジエン化合物の投入量や共役ジエン化合物の投入回数を制御することが好ましい。また、共役ジエン化合物の投入の制御方法は、例えば、コンピュータ等のプログラムで制御する方法や、タイマー等を用いてアナログで制御する方法が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、上述のように、共役ジエン化合物の投入方法は、特に限定されず、連続投入、分割投入等が挙げられる。ここで、共役ジエン化合物を分割投入する場合、該共役ジエン化合物の投入回数は、特に限定されないが、1〜5回の範囲が好ましい。共役ジエン化合物の投入回数が大きくなり過ぎると、ブロック共重合体とランダム共重合体との区別が困難になる場合がある。
【0122】
また、上記第二製造方法においては、共役ジエン化合物の投入時に、非共役オレフィンが重合反応系に存在していることが必要であるため、非共役オレフィンを重合反応系へ連続的に供給することが好ましい。また、非共役オレフィンの供給方法は、特に限定されるものではない。
【0123】
<非共役ジエン化合物−非共役オレフィン共重合体(C)>
本発明のゴム組成物は、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)を含有する非共役ジエン化合物−非共役オレフィン共重合体(C)を含む。該非共役ジエン化合物−非共役オレフィン共重合体(C)に含有されるEPDMによって、優れた耐候性を実現できる。
【0124】
前記非共役ジエン化合物−非共役オレフィン共重合体(C)とは、非共役ジエン化合物と非共役オレフィンとの共重合体であり、共重合体におけるモノマー単位成分として非共役オレフィンを含むものである。さらに、非共役ジエン化合物−非共役オレフィン共重合体(C)のジエン含有量は10%以下である。
【0125】
ここで、前記非共役ジエン化合物−非共役オレフィン共重合体(C)に含有されるEPDMについては、エチレンとプロピレンとの共重合体であるエチレンプロピレンゴム(EPM)に、少量の第3成分を導入し、主鎖中に二重結合をもたせたものである。第3成分の種類や量の違いにより様々な合成ゴムがあり、代表的な第3成分としては、エチリデンノルボルネン(ENB)、1,4−ヘキサジエン(1,4−HD)、ジシクロペンタジエン(DCP)等が挙げられる。前記EPDMの特性については、上記耐候性の他、耐老化性、耐寒性、耐溶剤性等に優れている。
【0126】
また、前記非共役ジエン化合物−非共役オレフィン共重合体(C)におけるEPDMの含有量は、10質量%以上であることが好ましい。10質量%未満の場合、EPDMの含有量が少なすぎるため、十分な耐候性を確保できないおそれがあるからである。
【0127】
なお、前記非共役ジエン化合物−非共役オレフィン共重合体(C)のその他の条件(共
役ジエン化合物、EPDM以外の非共役オレフィン共重合体、製造方法など)については
、前記共役ジエン化合物−非共役オレフィン共重合体(A)と同様である。
【0128】
前記ゴム成分100質量部中における前記非共役ジエン化合物−非共役オレフィン共重合体(C)の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10質量部〜30質量部であることが好ましい。
前記ゴム成分100質量部中における記非共役ジエン化合物−非共役オレフィン共重合体(C)の含有量が、10質量部未満であると、十分な耐候性が得られないことがあり、30質量部を超えると、十分な耐亀裂成長性が得られないことがある。一方、前記ゴム成分100質量部中における前記非共役ジエン化合物−非共役オレフィン共重合体(C)の含有量が、より好ましい範囲内の場合、耐候性の点で有利である。
【0129】
<(A)、(B)及び(C)の質量比>
前記共役ジエン系重合体(A)と、前記共役ジエン化合物−非共役オレフィン共重合体(B)と、前記非共役ジエン化合物−非共役オレフィン共重合体(C)との質量比は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、耐候性、耐破壊性及び加工性をバランスよく発揮できる点からは、80:10:10〜10:60:30であることが好ましい。
前記共役ジエン化合物−非共役オレフィン共重合体(B)の質量比が10%未満の場合、相溶化の効果を十分に得られないおそれがあり、前記非共役ジエン化合物−非共役オレフィン共重合体(C)の質量比が10%未満だと耐候性の効果を十分に得られないおそれがあり、前記非共役ジエン化合物−非共役オレフィン共重合体(C)の質量比が30%を超えると耐亀裂成長性の効果を十分に得られないおそれがある。
【0130】
−その他のゴム成分−
前記その他のゴムとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、多硫化ゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、などが挙げられる。その他のゴム成分については、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0131】
<樹脂(D)>
本発明で使用するゴム組成物には、前述のゴム成分と共に、減衰特性付与のため、種々の樹脂(D)を含有することができる。
この樹脂(D)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエステルポリオール樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、ロジン樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂、脂肪・脂環族C5系石油樹脂、C5/C9系石油樹脂、C9系石油樹脂、テルペン樹脂、並びにこれらの共重合体及び変性品、などが挙げられる。前記樹脂(D)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0132】
−ポリエステルポリオール樹脂−
前記ポリエステルポリオール樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、多価カルボン酸と多価アルコールとの重縮合物であって、1分子内に水酸基を2個以上有する樹脂、などが挙げられる。
前記多価カルボン酸と多価アルコールとの重縮合物であって、1分子内に水酸基を2個以上有する樹脂の具体例としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、セバシン酸、アジピン酸、アゼライン酸、フタル酸等の二塩基酸と、モノ、ジ、トリエチレングリコールやモノ、ジプロピレングリコール等の二価アルコールとを縮合させて得られた両末端に水酸基を有するポリエステルジオール、などが挙げられる。
【0133】
−ジシクロペンタジエン樹脂−
前記ジシクロペンタジエン樹脂は、ジシクロペンタジエンをAlCl3やBF3等のフリーデルクラフト触媒等を用いて重合させた樹脂である。
前記ジシクロペンタジエン樹脂の市販品の具体例としては、クイントン1920(日本ゼオン製、分子量大)、マルカレッツM−890A(丸善石油化学製、分子量小)、などが挙げられる。
【0134】
−ロジン樹脂−
前記ロジン樹脂は、生松やに、トール油等に含有されている樹脂であって、ガムロジン、トール油ロジン、ウッドロジンの3種が知られている。
前記ロジン樹脂の変性品としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、重合ロジン;グリセリンエステルロジン、その部分水添ロジン、完全水添ロジン、重合ロジン;ペンタエリスリトールエステルロジン、その部分水添ロジン、重合ロジン;などが挙げられる。
【0135】
−フェノール樹脂−
前記フェノール樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、p−tert−ブチルフェノール・アセチレン樹脂、フェノール・ホルムアルデヒド樹脂、などが挙げられる。
【0136】
−キシレン樹脂−
前記キシレン樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、m−キシレンとホルムアルデヒドを酸性触媒の存在下に反応させて得られた樹脂、などが挙げられる。
【0137】
−脂肪・脂環族C5系石油樹脂−
前記脂肪・脂環族C5系石油樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン(シクロペンタジエンの二量体でC10であるが、C5系留分に包含される。)、イソプレン、1,3−ペンタジエン、1−ペンテン、2−ペンテン等のC5系留分を原料とする共重合樹脂が挙げられる。
【0138】
−C5/C9系石油樹脂−
前記C5/C9系石油樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、上記C5系留分と、インデン、スチレン、メチルインデン、α−メチルスチレン等のC9系留分との混合物を原料とする共重合樹脂、などが挙げられる。
【0139】
−C9系石油樹脂−
前記C9系石油樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、上記C9系留分を原料とする共重合樹脂、などが挙げられる。
【0140】
−テルペン樹脂−
前記テルペン樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、β−ピネン樹脂、α−ピネン樹脂、テルペンフェノール樹脂、などを挙げることができる。
【0141】
また、前記の脂肪・脂環族C5系石油樹脂、C5/C9系石油樹脂、C9系石油樹脂、及びこれらの水素添加樹脂を変性してなる極性基が導入された石油樹脂も用いることができる。
前記導入される極性基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、フェノール性水酸基、アルコール性水酸基、カルボキシ基等が挙げられる。
前記導入される極性基の量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、水酸基価(mgKOH/g)として、2〜400が好ましく、10〜300がより好ましい。前記石油樹脂中に存在する極性基の量は、JIS K0070に記載の方法により測定することができる。
【0142】
本発明で使用するゴム組成物において、ゴム成分と併用される樹脂(D)の重量平均分子量(Mw)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、300〜4000が好ましく、500〜3000がより好ましい。前記重量平均分子量がこの範囲において、十分な減衰性を得ることができる。
【0143】
前記樹脂(D)の含有量としては、ゴム成分100質量部に対して、5質量部〜60質量部である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5質量部〜40質量部が好ましい。
前記ゴム成分100質量部中における前記樹脂(D)の含有量が、5質量部〜60質量であると、十分な減衰が得られ、力学物性及び作業性の低下を防止することができる。
【0144】
<カーボンブラック>
前記カーボンブラックとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、FEF、GPF、SRF、HAF、N339、IISAF、ISAF、SAF、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA、JIS K 6217−2:2
001に準拠する)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる
が、20m2/g〜100m2/gが好ましく、35m2/g〜80m2/gがより好ましい
。前記カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)が20m2/g未満であると、得
られたゴムの耐久性が低く、十分な耐亀裂成長性が得られないことがあり、100m2
gを超えると、低ロス性が低下し、また、作業性が悪いことがある。
なお、前記窒素吸着比表面積(N2SA)は、例えば、JIS K 6217−2:2
001に準拠して、測定することができる。
前記ゴム成分100質量部に対するカーボンブラックの含有量としては、特に制限はな
く、目的に応じて適宜選択することができるが、10質量部〜70質量部が好ましく、2
0質量部〜60質量部がより好ましい。前記カーボンブラックの含有量が、10質量部未
満であると、補強性が不十分で耐破壊性が悪化することがあり、70質量部を超えると、
加工性および低ロス性が悪化することがある。一方、前記カーボンブラックの含有量が、
前記より好ましい範囲内であると、各性能のバランスの点で有利である。
【0145】
<シリカ>
前記シリカを上記カーボンブラックと併用することで、ゴムの破壊特性を維持しながら、弾性率の上昇を抑えることができる。
前記シリカとしては、特に制限はなく、この分野において通常使用されているものを使用することができるが、疎水化処理シリカが好ましい。
前記疎水化処理シリカとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、窒素吸着比表面積(BET法)が150m2/g〜500m2/g(好ましくは150〜350m2/g)の範囲の湿式シリカ100質量部に対して、動粘度が10-62/s〜1m2/sの範囲のシリコーンオイル0.1質量部〜50質量部を配合して表面処理して得られるものが好ましい。
前記湿式シリカの比表面積が150m2/g未満では、所望の破壊特性が得られないことがあり、500m2/gを超えると、ゴム成分への分散性が低下することがある。なお、前記シリカのDBP吸収量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、150ml/100g〜350ml/100gが好ましい。
【0146】
前記シリカの添加量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ゴム成分100質量部に対して、1質量部〜10質量部が好ましく、5質量部〜10質量部がより好ましい。
前記シリカの添加量が10質量部を超えると、所期のせん断弾性率Gを得難くなることがあり、1質量部未満では、破壊特性に対する効果が得られないことがある。
なお、本発明においては、上記シランをゴム成分と混練する際、公知のシランカップリング剤を適宜添加することもでき、これによりゴム成分への分散性を向上させることが可能である。
【0147】
<ワックス、アマイド化合物>
前記ワックス、アマイド化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、パラフィンワックス、ミクロクリスタリンワックス等のワックス;ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド等のアマイド化合物;などが挙げられる。前記樹脂ワックス、アマイド化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、ミクロクリスタリンワックス、エルカ酸アミドが、ゴムシートの粘着性を低減させることができ、ゴム支承体を被覆する際の成形作業性を向上させることができる点で、好ましい。
前記ワックス、アマイド化合物の添加量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記ゴム成分100質量部に対して、0.5質量部〜2質量部が好ましく、0.5質量部〜1質量部がより好ましい。
前記ワックス、アマイド化合物の添加量が、0.5質量部未満であると、所望する加工性の改善効果が得られないことがあり、2質量部を超えると、外観の悪化を招くおそれがある。
【0148】
<その他の成分>
前記その他の成分として、本発明の目的を損なわない範囲で、公知の加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、亜鉛華(ZnO)、ワックス類、酸化防止剤、充填剤、発泡剤、可塑剤、滑剤、粘着付与剤、紫外線吸収剤、脂肪酸、老化防止剤、軟化剤、リターダー等の添加剤を、適宜配合することができる。
【0149】
−可塑剤−
前記可塑剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アロマティック油、ナフテニック油、パラフィン油等のプロセスオイル;やし油等の植物油;アルキルベンゼンオイル等の合成油;などが挙げられる。
これらの中でも、プロセスオイルが好ましく、特に、パラフィン系オイルが好ましい。
前記可塑剤の添加量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ゴム成分100質量部に対し、20質量部〜50質量部が好ましい。
【0150】
−加硫剤−
前記加硫剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、硫黄、などが挙げられる。
前記加硫剤の添加量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記ゴム成分100質量部に対し、0.5質量部〜3質量部が好ましい。
前記加硫剤の添加量が、0.5質量部未満であると、ゴム組成物の破壊特性が低下することがあり、3質量部を超えると、所望の弾性率が得られないことがある。
【0151】
−加硫促進剤−
前記加硫促進剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、CBS(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド)、TBBS(N−t−ブチル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド)、TBSI(N−t−ブチル−2−ベンゾチアジルスルフェンイミド)等のスルフェンアミド系の加硫促進剤;DPG(ジフェニルグアニジン)等のグアニジン系の加硫促進剤;テトラオクチルチウラムジスルフィド、テトラベンジルチウラムジスルフィド等のチウラム系加硫促進剤;ジアルキルジチオリン酸亜鉛等の加硫促進剤;などが挙げられる。
前記加硫促進剤の添加量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ゴム成分100質量部に対し、1.5質量部〜3.5質量部が好ましい。
【0152】
−充填剤−
前記充填剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ホワイトカーボン、微粒子ケイ酸マグネシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、クレー、タルク等の無機充填剤、ハイスチレン樹脂、クマロンインデン樹脂、フェノール樹脂、リグニン、変性メラミン樹脂、ロジン誘導体等の有機充填剤、が挙げられる。前記充填剤の添加量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ゴム成分100質量部に対し、10質量部〜50質量部が好ましい。
【0153】
−老化防止剤−
前記老化防止剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン(6C)、N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン(3C)、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合物(RD)、などの公知のアミン系又はフェノール系の老化防止剤が挙げられる。
前記老化防止剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ゴム成分100質量部に対して、0.5質量部〜10質量部が好ましく、1質量部〜10質量部がより好ましい。
【0154】
−軟化剤−
前記軟化剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、芳香族変性テルペン炭化水素樹脂等の炭化水素樹脂、などが挙げられる。
前記脂肪酸の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ゴム成分100質量部に対して、1質量部〜15質量部が好ましい。
【0155】
−脂肪酸−
前記脂肪酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ステアリン酸、などが挙げられる。
前記脂肪酸の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ゴム成分100質量部に対して、0.5質量部〜10質量部が好ましく、1質量部〜5質量部がより好ましい。
【0156】
−リターダー−
前記リターダーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、N−(シクロヘキシルチオ)−フタルイミド(PVI)、などが挙げられる。
前記リターダーの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ゴム成分100質量部に対して、0.1質量部〜0.5質量部が好ましい。
【0157】
−酸化亜鉛−
前記酸化亜鉛の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ゴム成分100質量部に対して、0.5質量部〜10質量部が好ましく、1質量部〜5質量部がより好ましい。
【0158】
<ゴム支承被覆用ゴム組成物の製造方法>
本発明のゴム支承被覆用ゴム組成物の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、全ての成分原料を一度に配合して混練しても良いし、2段階あるいは3段階に分けて各成分を配合して混練を行ってもよい。
前記混練に際しては、ロール、インターナルミキサー、バンバリーローター等の混練機を用いることができる。
【0159】
(ゴム支承被覆用ゴム)
本発明のゴム支承被覆用ゴムは、本発明のゴム支承被覆用ゴム組成物を用いたことを特徴とする。
前記ゴム支承被覆用ゴムの加硫後におけるせん断弾性率Gとしては、特に制限はなくs、目的に応じて適宜選択することができるが、0.3N/mm2〜1.0N/mm2が好ましく、0.35N/mm2〜0.75N/mm2がより好ましい。
前記ゴム支承被覆用ゴムの加硫後における破壊強度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、12MPa以上が好ましく、14MPa以上がより好ましい。
【0160】
<ゴム支承被覆用ゴムの製造方法>
前記ゴム支承被覆用ゴム組成物からシート状のゴム支承被覆用ゴム(ゴムシート)を成形する際には、押出成形機、プレス機等の公知の成形機を用いればよい。
前記ゴムシートをゴム支承体の外周に巻き付け、被覆した後、加硫硬化することによって、外観だけでなく耐久性、耐候性等に優れたゴム支承を得ることができる。この時の加硫条件としては、特に限定されるものではないが、通常120〜160℃の加硫条件を採用することができる。
例えば、図1に示されるように、本発明のゴム支承被覆用ゴムが用いられるゴム支承体20は、粘弾性的性質を有するゴム等の軟質板11と、鋼板等の剛性を有する硬質板12とを交互に積層して構成されたゴム積層体13の上下面に取付面板4、5が設けられている。しかして、ゴム積層体13は被覆層14で被覆されている。
本発明のゴム支承被覆用ゴムは、例えば、被覆層14に用いられる。
【実施例】
【0161】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0162】
(評価)
後述する各実施例及び比較例で得られたゴム組成物及び加硫ゴムのサンプルについて、下記の方法に従って、耐候性(耐オゾン性)、耐破壊性、耐亀裂成長性(指数)、等価減衰係数、Tb(引張破断応力)及びEb(引張破断伸び)を測定した。また、共役ジエン化合物−非共役オレフィン共重合体の分析方法を以下に示す。
【0163】
(1)耐候性(耐オゾン性)
各実施例及び比較例で得られた加硫ゴムのサンプルについて、JIS K6259に従
って、耐オゾン性を測定した。短冊状試験片を30%の動的伸張を与えながら、40℃、
オゾン濃度50pphm条件で暴露し、24時間後の試料の状況(亀裂の有無)を目視で
判断した。結果を表1及び2に示す。
なお、表1及び2において、○が「亀裂なし」を示し、△が「亀裂あり」を示す。
【0164】
(2)耐破壊性(Tb(引張破断応力)及びEb(引張破断伸び))
各実施例及び比較例で得られた加硫ゴムのサンプルについて、JIS K 6251に従って、引っ張り試験による室温での破断点強度(Tb(引張破断応力))および破断点伸び(Eb(引張破断伸び))を測定し、比較例1を100として指数表示した。結果を表1及び2に示す。
表1及び2では、比較例1を100としたときの指数で表示し、数値が大きいほど耐破壊性が良好であることを示す。
【0165】
(3)耐亀裂成長性(定歪)
各実施例及び比較例で得られた加硫ゴムのサンプルについて、JIS3号試験片中心部
に0.5mmの亀裂を入れ、室温で0〜100%の一定歪みで繰り返し疲労を与え、サン
プルが切断するまでの回数を測定し、評価を行った。
表1及び2では、比較例1を100としたときの指数で表示し、指数値が大きい程、耐亀裂成長性(定歪)が良好であることを示す。
【0166】
(4)等価減衰係数(Heq100%)
各実施例及び比較例で得られた加硫ゴムのサンプルから、25mm×25mmの方形状に打ち抜いた1枚の方形状ゴムシート(厚み2mm)を作製した。該方形状ゴムシートを接着剤を塗布した2枚の鉄板(25mm×60mm×厚み2.3mm)の間に断面クランク状となるように挟んだ。このように、鉄板とこれに接するゴムシートの面とを接着した状態で加硫を行い、鉄板とゴムシート面との接着をして測定サンプルを得た。得られた測定サンプルを、バネ剛性、損失エネルギー測定装置[鷺宮製作所製、型式「EFH−26−8−10」]に配置した。2校の鉄板を方形状ゴムシートに対して外側および内側に、周波数0.2Hzで下記の一回目、二回目の順で剪断率を変えて剪断力を付与した。同剪断率では各3回剪断力を付与した。
1回目:50%→100%→200%→300%
2回目:50%一100%→200%→300%
そして、各剪断率において、1回目の剪断力を加えた時の測定値(3回目)と2回目の剪断力を加えた時の測定値(3回目)を平均し、Heq100%を算出した。
表1および表2では、比較例1を100としたときの指数で表示し、指数値が大きいほど、減衰性が高いことを示す。
【0167】
<共重合体の分析方法>
−共重合体の重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)−
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー[GPC:東ソー製HLC−8121GPC/HT、カラム:東ソー製GMHHR−H(S)HT×2本、検出器:示差屈折率計(RI)]で単分散ポリスチレンを基準として、重合体のポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)を求めた。なお、測定温度は140℃である。
【0168】
(調製例1)
−ブタジエン−エチレン共重合体(EBR1)の調製−
十分に乾燥した4Lステンレス反応器に、1,3−ブタジエン120g(2.22mol)を含むトルエン溶液2,000gを添加した後、エチレンを1.72MPaで導入した。一方、窒素雰囲気下のグローブボックス中で、ガラス製容器にビス(2−フェニルインデニル)ガドリニウムビス(ジメチルシリルアミド)[(2−PhCGdN(SiHMe]28.5μmol、ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート[MeNHPhB(C]28.5μmol、及びジイソブチルアルミニウムハイドライド2.00mmolを仕込み、トルエン40mlに溶解させて触媒溶液とした。その後、グローブボックスから触媒溶液を取り出し、ガドリニウム換算で25.0μmolとなる量をモノマー溶液へ添加し、50℃で90分間重合を行った。
重合後、2,2’メチレン−ビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)(NS−5)5質量%のイソプロパノール溶液5mlを加えて反応を停止させ、さらに大量のメタノールで共重合体を分離し、70℃で真空乾燥し重合体を得た。得られた共重合体EBR1の収量は98gであった。
【0169】
(調製例2)
−ブタジエン−エチレン共重合体(EBR2)の調製−
十分に乾燥した4Lステンレス反応器に、1,3−ブタジエン230g(4.26mol)を含むトルエン溶液2,000gを添加した後、エチレンを1.72MPaで導入した。一方、窒素雰囲気下のグローブボックス中で、ガラス製容器にビス(2−フェニルインデニル)ガドリニウムビス(ジメチルシリルアミド)[(2−PhCGdN(SiHMe]145μmol、ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート[MeNHPhB(C]145μmol、及びジイソブチルアルミニウムハイドライド2.9mmolを仕込み、トルエン100mlに溶解させて触媒溶液とした。その後、グローブボックスから触媒溶液を取り出し、ガドリニウム換算で142μmolとなる量をモノマー溶液へ添加し、60℃で60分間重合を行った。重合後、2,2’−メチレン−ビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)(NS−5)5質量%のイソプロパノール溶液5mlを加えて反応を停止させ、さらに大量のメタノールで共重合体を分離し、70℃で真空乾燥し重合体を得た。得られた共重合体EBR2の収量は248gであった。
【0170】
(調製例3)
−ブタジエン−エチレン共重合体(EBR3)の調製−
十分に乾燥した400ml耐圧ガラス反応器に、1,3−ブタジエン9.36g(0.173mol)を含むトルエン溶液200mlを添加した後、エチレンを0.6MPaで導入した。一方、窒素雰囲気下のグローブボックス中で、ガラス製容器に(2−MeCSc(MeAlMe)21.0μmol、トリフェニルカルボニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(PhCB(C)21.0μmol、及びトリイソブチルアルミニウム0.25mmolを仕込み、トルエン5mlに溶解させて触媒溶液とした。その後、グローブボックスから触媒溶液を取り出し、モノマー溶液へ添加し、25℃で50分間重合を行った。重合後、2,2’−メチレン−ビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)(NS−5)5質量%のイソプロパノール溶液1mlを加えて反応を停止させ、さらに大量のメタノールで共重合体を分離し、70℃で真空乾燥し重合体を得た。得られた共重合体EBR3の収量は9.30gであった。
【0171】
(調製例4)
−エチレン−ブタジエン共重合体(EBR4)の調製−
十分に乾燥した4Lステンレス反応器に、1,3−ブタジエン80g(1.48mol)を含むトルエン溶液2,000gを添加した後、エチレンを1.72MPaで導入した。一方、窒素雰囲気下のグローブボックス中で、ガラス製容器にビス(2−フェニルインデニル)ガドリニウムビス(ジメチルシリルアミド)[(2−PhC)2GdN(SiHMe]28.5μmol、ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート[MeNHPhB(C]28.5μmol、及びジイソブチルアルミニウムハイドライド2.00mmolを仕込み、トルエン40mlに溶解させて触媒溶液とした。その後、グローブボックスから触媒溶液を取り出し、ガドリニウム換算で25.0μmolとなる量をモノマー溶液へ添加し、80℃で90分間重合を行った。重合後、2,2’−メチレン−ビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)(NS−5)5質量%のイソプロパノール溶液5mlを加えて反応を停止させ、さらに大量のメタノールで共重合体を分離し、70℃で真空乾燥し重合体を得た。得られた共重合体EBR4の収量は78gであった。
【0172】
(調製例5)
−プロピレン−ブタジエン共重合体(PBR)の調製−
容積が200mlのゴム栓付きガラスびんを乾燥・窒素置換し、0.05molのVOCl3(オキソバナジウムトリクロライド)とネオペンチルアルコール0.10molとトルエンを加えた。その後、窒素でバブリングさせながら発生した塩酸について、注射針を刺して抜くことでジネオペントキシオキソバナジウムクロライドのトルエン溶液を得た。
約1リットル容積のゴム栓付きガラスびんを乾燥・窒素置換し、乾燥精製されたブタジエンのトルエン溶液(17.5wt%)を250g投入した。次に、このガラス瓶を−78℃に冷却し、プロピレンガスを50g送入した。2.81mmolのトリイソブチルアルミニウム(ノルマルヘキサン溶液1mol/L)を加え、攪拌して約10分放置した後、上記で調整したバナジウム溶液0.47mmolを添加して重合を開始させ、−78℃で4時間反応を行なった。その後、50℃にて老化防止剤2,2’−メチレン−ビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)(NS−5)のイソプロパノール5%溶液2ミリリットルを加えて反応の停止を行い、さらに微量のNS−5を含むイソプロパノール中で再沈殿した後、ドラムにて乾燥することで、共役ジエン化合物−非共役オレフィン共重合体(A)に該当するプロピレン−ブタジエン共重合体(PBR)を得た。得られた共重合体PBRの収率は約70質量%であり、ジエン含有量は50mol%、重量平均分子量(Mw)は250,000であった。
【0173】
(調製例6)
−ブテン−ブタジエン共重合体(BBR)の調製−
容積が200mlのゴム栓付きガラスびんを乾燥・窒素置換し、0.05molのVOCl3(オキソバナジウムトリクロライド)とネオペンチルアルコール0.10molとトルエンを加えた。その後、窒素でバブリングさせながら発生した塩酸について、注射針を刺して抜くことでジネオペントキシオキソバナジウムクロライドのトルエン溶液を得た。
約1リットル容積のゴム栓付きガラスびんを乾燥・窒素置換し、乾燥精製されたブタジエンのトルエン溶液(17.5wt%)を250g投入した。次に、このガラス瓶を−78℃に冷却し、ブテンガスを66g送入した。2.81mmolのトリイソブチルアルミニウム(ノルマルヘキサン溶液1mol/L)を加え、攪拌して約10分放置した後、上記で調整したバナジウム溶液0.47mmolを添加して重合を開始させ、−78℃で12時間反応を行なった。その後、50℃にて老化防止剤2,2’−メチレン−ビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)(NS−5)のイソプロパノール5%溶液2ミリリットルを加えて反応の停止を行い、さらに微量のNS−5を含むイソプロパノール中で再沈殿した後、ドラムにて乾燥することで、共役ジエン化合物−非共役オレフィン共重合体(A)に該当するプロピレン−ブタジエン共重合体(BBR)を得た。得られた共重合体BBRの収率は約65質量%であり、ジエン含有量は55mol%、ジエン含有量は39mol%、重量平均分子量(Mw)は300,000であった。
【0174】
(実施例1〜8及び比較例1〜6)
実施例1〜8及び比較例1〜6のゴム組成物のサンプルとして、表1及び2に示す配合処方でゴム組成物を調製した。
その後、各サンプルのゴム組成物を用い、表3に示すマスターバッチの欄に従って化合
物を添加することでマスターバッチを調製した後、表3に示すファイナルバッチの欄に従
って化合物を添加することでファイナルバッチを調整し、その後、調整したファイナルバ
ッチを、160℃で20分間加硫することで、加硫ゴムのサンプルを作製した。なお、表
1及び表2中に記載の「phr」とは、ゴム成分100質量部に対する割合のことである

【0175】
【表1】

【0176】
【表2】

なお、比較例4では、ジシクロペンタジエン樹脂の含有量が少ないことで、作業性が低下する。比較例5では、ジシクロペンタジエン樹脂の含有量が多いことで、作業性及び力学特性が低下する。また、作業性とは、加工性が良いことを示す。
【0177】
【表3】

【0178】
表1〜表3の各組成物において用いられたポリマー等の銘柄等を下記する。
EPDM*1:非共役ジエン化合物−非共役オレフィンとしてのEPDM:JSR製、EP96(ジエン含有量:5.8wt%)
NR*2:共役ジエン系重合体としての天然ゴム グレードRSS♯4
カーボンブラック:ISAF級、東海カーボン製 シースト6
脂肪酸:ステアリン酸
老化防止剤1:「ノクラック(登録商標)224」(商品名)、大内新興化学工業株式会社製(2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体)
老化防止剤2:「KUMANOX13」(商品名)、KUMHO.INC製、N−(1,3−ジメチルブチル)N’−フェニル−p−フェニレンジアミン
ジシクロペンタジエン樹脂1:日本ゼオン製 クイントン1920
ジシクロペンタジエン樹脂2:丸善石油化学製 マルカレッツM−890A
軟化剤:芳香族変性テルペン炭化水素樹脂:YSレジンTO105(商品名)、ヤスハラケミカル製
老化防止剤3:大内新興化学工業製 ノクセラーCZ−G、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド
リターダー:東レファインケミカル製 リターダーCTP、PVI(N−(シクロヘキシルチオ)−フタルイミド)
【0179】
表1〜3より明らかなごとく、実施例1〜8のゴム組成物は、共役ジエン系重合体(A)、共役ジエン化合物−非共役オレフィン共重合体(B)、及び、エチレン−プロピレン−ジエンゴムを含有する非共役ジエン化合物−非共役オレフィン共重合体(C)を含むゴム成分と、樹脂(D)とを含むゴム支承被覆用ゴム組成物であって、前記ゴム成分100質量部に対し、前記樹脂を5質量部〜60質量部含むことにより、比較例1〜6と比較して、ゴム支承被覆用ゴムの亀裂成長性、耐候性(耐オゾン性)、及び耐破壊性を向上させ、且つ十分な減衰性を得ることができることを達成し得た。
【産業上の利用可能性】
【0180】
本発明のゴム支承被覆用ゴム組成物は、ゴム支承被覆用ゴムを製造するのに好適に用いられる。前記ゴム支承被覆用ゴムは、ゴム支承体の被覆層などに利用可能である。
【符号の説明】
【0181】
4 取付面板
5 取付面板
11 軟質板
12 硬質板
13 ゴム積層体
14 被覆層
20 ゴム支承体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
共役ジエン系重合体(A)、共役ジエン化合物−非共役オレフィン共重合体(B)、及び、エチレン−プロピレン−ジエンゴムを含有する非共役ジエン化合物−非共役オレフィン共重合体(C)を含むゴム成分と、樹脂(D)とを含むゴム支承被覆用ゴム組成物であって、
前記ゴム成分100質量部に対し、前記樹脂(D)を5質量部〜60質量部含むことを特徴とするゴム支承被覆用ゴム組成物。
【請求項2】
前記共重合体(B)において、前記非共役オレフィン由来部分の割合が60mol%以下であることを特徴とする請求項1に記載のゴム支承被覆用ゴム組成物。
【請求項3】
前記非共役ジエン化合物−非共役オレフィン共重合体(C)におけるエチレン−プロピレン−ジエンゴムの含有量が、10質量%以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載のゴム支承被覆用ゴム組成物。
【請求項4】
前記共重合体(B)のポリスチレン換算重量平均分子量が10,000〜10,000,000であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のゴム支承被覆用ゴム組成物。
【請求項5】
前記共重合体(B)の分子量分布(Mw/Mn)が10以下であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のゴム支承被覆用ゴム組成物。
【請求項6】
前記共重合体(B)における非共役オレフィンが非環状オレフィンであることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のゴム支承被覆用ゴム組成物。
【請求項7】
前記共重合体(B)における非共役オレフィンの炭素数が2〜10であることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のゴム支承被覆用ゴム組成物。
【請求項8】
前記共重合体(B)における非共役オレフィンが、エチレン、プロピレン、及び1−ブテンからなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のゴム支承被覆用ゴム組成物。
【請求項9】
前記共重合体(B)における非共役オレフィンがエチレンであることを特徴とする請求項8に記載のゴム支承被覆用ゴム組成物。
【請求項10】
前記樹脂(D)が、ポリエステルポリオール樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、ロジン樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂、脂肪・脂環族C5系石油樹脂、C5/C9系石油樹脂、C9系石油樹脂、テルペン樹脂、並びにこれらの共重合体及び変性品からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載のゴム支承被覆用ゴム組成物。
【請求項11】
請求項1から10のいずれかに記載のゴム支承被覆用ゴム組成物を用いたことを特徴とするゴム支承被覆用ゴム。

【図1】
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【公開番号】特開2013−35943(P2013−35943A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−173267(P2011−173267)
【出願日】平成23年8月8日(2011.8.8)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】