説明

ゴム組成物、その加硫ゴム、及びそれを用いたタイヤ

【課題】 タイヤトレッドなどに使用した場合に、氷上性能に優れ、ドライ操縦安定性、及び耐摩耗性を満たすことのできるゴム組成物、加硫ゴム、及びそれを用いたタイヤを提供する。
【解決手段】モース硬度が2以上の微粒子を含む非線状の微粒子含有樹脂体をゴムマトリックスに分散させてなると共に、該微粒子含有樹脂体は該樹脂100質量部に対して、上記微粒子を50質量部を超え、且つ900質量部以下の範囲で含有させてなるゴム組成物であり、また、上記樹脂体とゴムマトリックスとの粘度を最高加硫温度に合わせて適宜選択したゴム組成物からの加硫ゴム、及びその加硫ゴムをタイヤに使用することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物、その加硫ゴム及びそれを用いたタイヤに関するものであり、より詳しくは、氷路面上での制動、駆動、コーナリング性能等のタイヤの氷上性能を向上させると共に、その摩耗性をも向上させることのできるゴム組成物、その加硫ゴム、及びそれを用いたタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、氷雪路面上でのタイヤの制動・駆動性能(氷上性能)を向上させるため、タイヤのトレッドについての研究が盛んに行われている。氷雪路面では、タイヤの摩擦熱等により水膜が発生し易く、その水膜がタイヤと氷雪路面との間の摩擦係数を低下させる原因になっている。このため、タイヤのトレッドの水膜除去能やエッヂ効果を向上させるための提案が種々なされてきている。
例えば、トレッドに使用するゴム組成物において、ゴム成分と発泡剤とからなるゴム組成物をその加硫時にゴム成分の温度加硫最高温度に達するまでの間にゴム成分よりも粘度が低くなる有機繊維を配合することにより、上記性能及び効果を向上させることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、所定の径を有する有機繊維に、ガラス微粒子、水酸化アルミニウム微粒子、アルミナ微粒子、鉄微粒子、(メタ)アクリル系樹脂微粒子、エポキシ樹脂微粒子等の所定径を有する微粒子を含有させて成形した微粒子含有有機繊維をタイヤのゴム成分に添加することを提案している(例えば、特許文献2参照)。そして、微粒子含有有機繊維をゴムマトリックスに含有してなるタイヤのゴム組成物において、加硫時にゴム組成物の温度が加硫最高温度に達するまでの間にその粘度がゴムマトリックスにおける粘度よりも低くなる樹脂を微粒子含有有機繊維に使用することにより、よりタイヤにおける水膜除去能やエッヂ効果を高める提案がなされている。
【特許文献1】特開平11−48264号公報
【特許文献2】特開2001−233993号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の微粒子を含有する微粒子含有有機繊維をゴム成分に分散させて加硫した場合、ゴムマトリックス(ゴム構造)中に筒状の発泡が見られ、このような長尺な空洞ではブロック剛性が悪くなる。このため、それをタイヤのトレッドなどに使用したとき、タイヤのドライ操縦安定性が悪く、また耐摩耗性も悪くする傾向が見られる。このため、ゴム組成物及びそのタイヤの氷上性能、ドライ操縦安定性、及び耐摩耗性が向上するような微粒子含有樹脂体、及びその最適な配合が望まれている。
【0005】
従って、本発明は、斯かる実情に鑑み、タイヤトレッドなどに使用した場合に、氷上性能、ドライ操縦安定性、及び耐摩耗性の全てを満たすことのできるゴム組成物、加硫ゴム、及びそれを用いたタイヤを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、モース硬度が2以上の微粒子を50質量部を超え、且つ900質量部以下の範囲で含有させた樹脂体をゴムマトリクスに分散させると、ドライ操縦安定性及び耐摩耗性の全てを満たすと共に、より氷上性能が向上することを見出し、本発明に至ったものである。
即ち、本発明は、以下の(1)乃至(9)の特徴のある構成を採用することにより、上記目的を達成したものである。
【0007】
(1)モース硬度が2以上の微粒子を含む非線状の微粒子含有樹脂体をゴムマトリックスに分散させてなると共に、該微粒子含有樹脂体は該樹脂100質量部に対して、上記微粒子を50質量部を超え、且つ900質量部以下の範囲で含有させてなるゴム組成物。
【0008】
(2)上記微粒子含有樹脂体の粒径が10〜500μmの範囲にある上記(1)記載のゴム組成物。
(3)上記微粒子はその平均粒径が0.1〜100μmの範囲にあり、且つ上記該微粒子は該樹脂体より小径である上記(2)記載のゴム組成物。
(4)上記の樹脂体の樹脂がポリエチレンからなる上記(1)に記載のゴム組成物。
(5)上記ゴムマトリックスを構成するゴム成分が天然ゴム及びジェン系合成ゴムから選ばれる少なくとも1種以上からなるゴム成分からなり、また上記ゴム成分100質量部に対して上記樹脂体を0.1〜30質量部の範囲で含有する上記(1)に記載のゴム組成物。
(6)上記微粒子含有樹脂体における樹脂は加硫時の加硫最高温度に達するまでの間に、上記ゴムマトリックスにおけるゴム粘度より低い粘度特性を有してなることを特徴とする上記(1)に記載のゴム組成物。
(7)発泡剤を配合してなる上記(1)に記載のゴム組成物。
【0009】
(8)上記(7)記載のゴム組成物を加硫し、該加硫における発泡率が3〜40%の範囲となる加硫ゴム。
【0010】
(9)一対のビード部と、該ビード部にトロイド状をなして連なるカーカスと、該カーカスのクラウン部をたが締めするベルト及びトレッドを有してなり、上記トレッドが上記(8)に記載の加硫ゴムを含んでなるタイヤ。
【発明の効果】
【0011】
上記手段によれば、硬度2以上の微粒子を含む樹脂体をゴム成分に分散せることにより、即ち、かかる硬度を有する微粒子(R)を樹脂100質量部に対して、50質量部<(R)≦900質量部の範囲で含有する樹脂体、特に繊維ではなく、非線状の樹脂体をゴム成分に分散させ、その加硫時に筒状の長尺な空洞の樹脂胞の成形をできる限り抑え、また大量の微粒子を樹脂に含ませてなるので、このようなゴムをタイヤのトレッドなどに使用した場合、氷上性能を向上させ、ドライ操縦安定性、及び耐摩耗性の全てを満たすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
図1は発明を実施する形態の一例であって、タイヤの断面概略説明図である。図2は、本発明に係るゴム組成物の樹脂体の概略図である。
【0013】
本発明に係るタイヤは、例えば、図1に示すように、一対のビード部1と、該一対のビード部1にトロイド状をなして連なるカーカス2と、該カーカス2のクラウン部をたが締めするベルト3と、キャップ部6とベース部7の二層から成るトレッド5とを順次配置したラジアル構造を有する。なお、トレッド5以外の内部構造は、一般のラジアルタイヤの構造と変わりないので説明は省略する。トレッド5の表面部は、本発明に係るゴム組成物を加硫させて形成したものである。
【0014】
タイヤ4は、その製造方法については特に制限はないが、例えば、所定のモールドで所定温度、所定圧力の下で加硫成形する。その結果、未加硫のトレッドが加硫されてなる本発明の発泡ゴム層で形成されたキャップトレッド6を有するタイヤ4が得られる。
先ず、トレッド部に使用される本発明に係るゴム組成物、及びその加硫ゴムの実施の形態について詳述する。本発明に係るゴム組成物は、モース硬度が2以上の微粒子を含む非線状の微粒子含有樹脂体をゴムマトリックスに分散させてなるものである。
【0015】
本発明において、ゴム成分から構成されるゴムマトリックスに分散される樹脂体は非線状である。非線状樹脂体は、有機繊維のような長尺な形状を含まず、樹脂体は、少なくともそのアスペクト比は3.0以下の粉砕物であることが好ましい。
尚、樹脂体は、図2に示すように樹脂体10での最も長尺となる長軸断面直径Rlに対して、それと垂直な軸方向の短軸断面直径Rsとの平均を樹脂体の粒径とすると、微粒子含有樹脂体の粒径は、10〜500μmの範囲が好ましく、特に、50〜300μmの範囲、更に好ましくは100〜150μmの範囲である。樹脂体の粒径が10μm未満では、上述の微粒子を十分に含有保持できず、このようなゴム組成物を使用するタイヤにあっては氷路上での十分なエッヂ効果を発揮しない。また、樹脂体の粒径が500μmを超える場合、タイヤゴムの耐摩耗性及びブロック剛性を低下させる。
【0016】
本発明において、上記樹脂体に含有される微粒子はそのモース硬度が硬度2より高いものであり、特に硬度5より高いものが好ましい。その微粒子のモース硬度が氷の硬度、即ち、2以上であると、一層の引っ掻き効果をタイヤのトレッド面で発揮する。このため、得られるタイヤは氷雪路面との間の摩擦係数が大きく、氷上性能(氷雪路面でのタイヤの面制動・駆動性能)に優れている。また、微粒子はその平均粒径が0.1〜100μmの範囲、特に、10〜50μmの範囲にあることが好ましい。更に、微粒子は上記樹脂体より小径であることが望ましい。微粒子の平均粒径が0.1未満では、樹脂体に含有させた効果が見られず、タイヤのトレッド面で引っ掻き効果を発揮しない。微粒子の平均粒径が100μmを超えると、また、樹脂体より大径であると、その樹脂体が微粒子を十分に含有保持できなくなる。
【0017】
また、微粒子は、そのアスペクト比が1.1以上であることが好ましく、且つ角部が存在していることが好ましい。より好ましくはアスペクト比が1.2以上、更に好ましくは1.3以上である。ここで。角部が存在するとは、表面の全てが球面或いは滑らかなカーブ面でないことを意味する。本発明の微粒子には最初から角部を有する微粒子も使用できるが、微粒子が球形状であっても粉砕することにより、微粒子表面に角部を存在させて使用することができると共に、より多くの角部を存在させることができる。
【0018】
上述の非線状樹脂体と同様に微粒子形状はその微粒子群を電子顕微鏡で観察することにより確認が可能であり、この場合は球状でないことを確認するものである。また粒子の長軸と短軸の比率をあらわすアスペクト比が1.1以上であれば、粒子表面に形成される角部の存在が十分に角張ることができる。このため、このような微粒子を含む微粒子含有樹脂体を使用したタイヤ等にあっては、引っ掻き効果、或いはエッヂ効果、及びスパイク効果を十分に高めることができる。
【0019】
このような微粒子は、樹脂体の樹脂100質量部に対して50質量部超えて、且つ900質量部以下の範囲で含有される。特に、100〜400質量部の範囲、更には100〜250質量部の範囲で含有されることが好ましい。微粒子量が50質量部以下では、ゴム組成物のゴム製品における引っ掻き効果、タイヤのトレッドにあってはエッヂ効果及びスパイク効果が十分でなく、氷上性能の更なる向上がない。一方、上記微粒子量が900質量部を超えると、樹脂体での微粒子含有保持が困難となってくる。
【0020】
このような硬度の高い微粒子としては、例えば、石膏、方解石、蛍石、正長石、石英、金剛石等が挙げられるが、好ましくは、モース硬度5以上のシリカガラス(硬度6.5)、石英(硬度7.0)、溶融アルミナ(硬度9.0)等を挙げることができる。中でもシリカガラス、アルミナ(酸化アルミニウム)等が安価で容易に使用することができる。
【0021】
本発明において、ゴム組成物におけるゴムマトリックスを構成するそのゴム成分は、少なくとも天然ゴム及びジェン系合成ゴムから選ばれる少なくとも1種以上からなるゴム成分であることが好ましい。ゴム成分の100質量部に対して天然ゴムが20〜70質量部の範囲、及びポリブタジエンゴムが30〜80質量部の範囲で含まれることが好ましい。
また、ゴム組成物においては、上記微粒子含有樹脂体は、ゴム成分100質量部に対して0.1〜30質量部の範囲であることが好ましい。樹脂体が0.1質量部未満では、引っ掻き効果が十分に発揮されず、タイヤのトレッド面にエッヂ効果或いはスパイク効果、それに対応する氷上性能に十分な向上が見られない。一方、その配合量が30質量部を超えると、耐摩耗性、ブロック剛性が十分でなくなる。
【0022】
本発明のゴム組成物において、ゴム成分のゴムマトリックスと樹脂体との関係において、樹脂体の樹脂は加硫時の加硫最高温度に達するまでの間に、そのゴム粘度より低い粘度特性を有しても良く、加硫時にゴム粘度より低くならなくても良い。加硫時にゴム粘度より低い粘度特性を有するものは、後述する発泡剤をゴム組成物に添加することと相まって、上述したように発泡剤のガスを抱持して樹脂体が気泡を形成する。
ゴム成分と樹脂体との関係が加硫時にゴム粘度より樹脂体が低い粘度特性を有した関係にあり発泡剤を含むと、加硫中に樹脂体が速やかに溶融し、その粘度がゴムマトリックスの粘度よりも低くなる時期が早くなる。そして、発泡剤から発生したガスは、ゴムマトリックスよりも低粘度である樹脂の内部に集まる。その結果、加硫ゴム中には、ゴムマトリックスとの間に微粒子を含有する樹脂層を有する気泡、即ち、上記樹脂により被覆されたカプセル状の気泡が潰れのない状態で効率良く形成される。
【0023】
尚、加硫最高温度とは、ゴム組成物の加硫時におけるゴム組成物が達する最高温度を意味する。例えば、モールド加硫の場合には、ゴム組成物がモールド内に入ってからモールドを出て冷却されるまでに該ゴム組成物が達する最高温度を意味する。加硫最高温度は、例えば、ゴム組成物中に熱電対を埋め込むこと等により測定することができる。また、ゴムマトリックスの粘度は、流動粘度を意味し、例えば、コーンレオメーター、キャピラリーレオメーター等を用いて測定する。また、上記樹脂の粘度は、溶融粘度を意味し、例えば、コーンレオメーター、キャピラリーレオメーター等を用いて測定する。
【0024】
また、上記樹脂体の樹脂は、加硫時の加硫最高温度よりも低く、10℃以上低いのがより好ましく、20℃以上低いのが特に好ましい。ゴム組成物の工業的な加硫温度は、一般的に最高で約190℃程度であるが、例えば、加硫最高温度がこの190℃を超えて設定されている場合には、上記樹脂の融点としては、190℃以下の範囲で選択され、180℃以下が好ましく、170℃以下がより好ましい。なお、上記樹脂の融点は、それ自体公知の融点測定装置等を用いて測定することができ、例えば、DSC測定装置を用いて測定した融解ピーク温度を上記融点とすることができる。
【0025】
本発明のゴム組成物において、上記樹脂体の樹脂としては、樹脂が融点において急激に粘度低下を起こすものが好ましい関係から結晶性樹脂、結晶性の高い樹脂などが好ましい。このような結晶性樹脂としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレン、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート、シンジオタクティック−1,2−ポリブタジエン(SPB)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ塩化ビニル(PVC)等の単一組成重合物や、共重合、ブレンド等により融点を適当な範囲に制御したものも使用でき、更にこれらの樹脂に添加剤を加えたものも使用できる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの結晶性高分子の中でも、ポリオレフィン、ポリオレフィン共重合体が好ましく、汎用で入手し易い点でポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)がより好ましく、融点が比較的低く、取扱いが容易な点でポリエチレン(PE)が特に好ましい。
【0026】
尚、非結晶性高分子の樹脂としては、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体(ABS)、ポリスチレン(PS)、ポリアクリロニトリル、これらの共重合体、これらのブレンド物等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0027】
本発明のゴム組成物には、加流後に気泡を形成させるために発泡剤を配合することが好ましい。発泡剤を配合することにより得られる本発明の加硫ゴムにあっては、その発泡率が3〜40%の範囲、特に14〜40%の範囲が好ましい。発泡剤はゴムマトリックス中に配合し、また必要により樹脂体中に配合しても良い。発泡剤の含有量としては、目的に応じて適宜決定すればよいが、一般にはゴム成分100質量部に対して1乃至10質量部程度が好ましい。
【0028】
上記発泡剤及び樹脂体を用いることにより、トレッド面となる加硫ゴムは、非線状の気泡を有して水膜除去能を有する。
ここで、加硫ゴムにおける発泡率Vは、V=(ρ0/ρ1−1)×100(%)で表され、ρ1は、加硫ゴム(発泡ゴム)の密度(g/cm)を表し、ρ0は、加硫ゴム(発泡ゴム)における固相部(非発泡部分)の密度(g/cm)を表す。固相部の密度は、エタノール中の重量と空気中の重量を測定し、これから算出する。発泡率Vが3%未満であると、発生する水膜に対し、気泡による凹部の体積の不足により十分な水排除機能が得られず、加硫ゴムにおける氷上性能を十分に向上させることができない可能性がある。一方、発泡率Vが40%を超えると、氷上性能を向上させることはできるものの、加硫ゴム中の気泡の量が多くなり過ぎるために、ゴム破壊限界が大巾に低下し、耐久性の点で好ましくない。
【0029】
上記発泡剤としては、例えば、ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)、アゾジカルボンアミド(ADCA)、ジニトロソペンタスチレンテトラミンやベンゼンスルホニルヒドラジド誘導体、オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド(OBSH)、二酸化炭素を発生する重炭酸アンモニウム、重炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、窒素を発生するニトロソスルホニルアゾ化合物、N,N’−ジメチル−N,N’−ジニトロソフタルアミド、トルエンスルホニルヒドラジド、P−トルエンスルホニルセミカルバジド、P,P’−オキシービス(ベンゼンスルホニルセミカルバジド)等が挙げられる。
【0030】
これらの発泡剤の中でも、製造加工性を考慮すると、ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)、アゾジカルボンアミド(ADCA)が好ましく、特にアゾジカルボンアミド(ADCA)が好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。上記発泡剤の作用により、得られた上記加硫ゴムは発泡率に富む発泡ゴムとなる。
【0031】
本発明においては、効率的な発泡を行う観点から、その他の成分として発泡助剤を用い、上記発泡剤と併用するのが好ましい。上記発泡助剤としては、例えば、尿素、ステアリン酸亜鉛、ベンゼンスルフィン酸亜鉛や亜鉛華等、通常、発泡製品の製造に使用する助剤等が挙げられる。これらの中でも、尿素、ステアリン酸亜鉛、ベンゼンスルフィン酸亜鉛等が好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0032】
また、ゴム組成物をタイヤのトレッド等に使用する場合、ゴム組成物にはカーボンブラックがゴム成分の100質量部に対して5〜55質量部の範囲で含まれ、シリカがゴム成分の100質量部に対して5〜55質量部の範囲で含まれていることが好ましい。カーボンブラックの含まれる量が55質量部を超えると、タイヤ性能を低下させ、氷上性能にも影響を与える。また、カーボンブラックを全く含まないか、または5質量未満である場合も氷上性能に悪影響を与える。カーボンブラックは、そのゴム層の力学的性能を高め、加工性等を改善させるものである限り、I吸着量、CTAB比表面積、N吸着量、DBP吸着量等の範囲を適宜選択した公知のカーボンブラックを使用することができる。カーボンブラックの種類としては、例えば、SAF、ISAF−LS、HAF、HAF−HS等の公知のものを適宜選択して使用することができる。
【0033】
シリカは、狭義の二酸化珪素のみを示すものではなく、ケイ酸系充填剤を意味し、具体的には、無水ケイ酸の他に、含水ケイ酸、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム等のケイ酸塩を含む。シリカはゴム成分の100質量部に対して5〜55質量部の範囲、好ましくは30〜50質量部の範囲で含まれる。シリカの含まれる量が55質量部を超えると、タイヤ性能を低下させ、氷上性能にも悪影響を与える。また、シリカを全く含まないか、または5質量未満である場合も氷上性能に悪影響を与える。
【0034】
本発明に使用するその他の成分としては、本発明の効果を害しない範囲で用いることができ、例えば、硫黄等の加硫剤、ジベンゾチアジルジスルフィド等の加硫促進剤、加硫促進助剤、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジル−スルフェンアミド、N−オキシジエチレン−ベンゾチアジル−スルフェンアミド等の硫化防止剤、オゾン劣化防止剤、着色剤、帯電防止剤、分散剤、滑剤、酸化防止剤、軟化剤、カーボンブラックやシリカ等の無機充填材等の他に、通常ゴム業界で用いる各種配合剤などを目的に応じて適宜選択して使用することができる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよく、市販品を使用してもよい。
また、本発明において、微粒子含有樹脂体をゴム組成物に配合することは必須であるが、必要により微粒子含有有機繊維や非微粒子含有有機繊維等の線状の樹脂体を併用しても良い。
【0035】
本発明に係るタイヤを形成するには、上記で詳述したゴム組成物を、以下の条件、手法にて混練り、熱入れ、押出等する。
混練は、混練装置への投入体積、ローター回転速度、混練温度、混練時間等の混練装置等の諸条件について特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。混練装置としては、市販品を好適に使用する。
熱入れ又は押出は、熱入れ又は押出時間、熱入れ又は押出装置等の諸条件について特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。熱入れ又は押出装置としては、市販品を好適に使用する。尚、熱入れ又は押出温度は、発泡剤が存在する場合はその発泡を起こさないような範囲で適宜選択される。押出温度は、90乃至110℃程度が望ましい。
【0036】
本発明において、限られた温度範囲の中でゴム組成物の流動性を制御し、具体的にはゴム組成物中に、アロマ系オイル、ナフテン系オイル、パラフィン系オイル、エステル系オイル等の可塑剤、液状ポリイソプレンゴム、液状ポリブタジエンゴム等の液状ポリマーなどの加工性改良剤を適宜添加してゴム組成物の粘度を変化させ、その流動性を高める。
【0037】
本発明において、加硫の条件乃至方法等については特に制限はなく、ゴム成分の種類等に応じて適宜選択することができるが、本発明のようにトレッドとしての発泡ゴム層を製造する場合にはモールド加硫が良い。加硫の温度としては、上述したように加硫時にゴム粘度より樹脂体が低い粘度特性を有する関係にある場合、加硫中の上記ゴム組成物の加硫最高温度が上記樹脂体を構成する樹脂の融点以上になるように選択されることが好ましい。加硫最高温度が樹脂の融点未満であると、上述したように樹脂が溶融せず、発泡により生じたガスを樹脂中に取り込むことができない。発泡ゴム層にカプセル状の気泡を効率良く形成できない。加硫装置は、特に制限はなく、市販品を好適に使用することができる。
【0038】
本発明のタイヤにおいては、トレッド表面に生じた気泡の凹部は効率的な排水を行う排水路として機能する。なお、該凹部は上記樹脂層、特に微粒子を存在させた樹脂層を有するため、該凹部は、耐剥離性、水路形状保持性、水路エッヂ部摩耗性、荷重入力時の水路保持性等に優れる。
【0039】
本発明に係るタイヤは、いわゆる乗用車用のみならず、トラック・バス用等の各種の乗物に好適に適用できる。氷雪路面上でのスリップを抑えることが必要な構造物に好適に使用でき、タイヤのトレッドは、上記氷上でのスリップを抑えることが必要な限り、例えば、更生タイヤの貼り替え用のトレッド、中実タイヤ、等に使用できる。また、タイヤが空気入りタイヤである場合、内部に充填する気体としては空気のほかに窒素等の不活性ガスを用いることができる。
尚、上記実施形態においては二層構造を持つトレッドを例にして説明したが、トレッドの構造は特に制限はなく一層構造でも良い。更にタイヤ半径方向に分割された多層構造、タイヤ周方向或いはトレッド幅方向に分割された構造でも良く、トレッドの表面層の少なくとも一部が本発明のゴム組成物により構成されていることが好ましい。
【実施例】
【0040】
以下に、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これの実施例に何ら限定されるものではない。
(実施例1〜7及び比較例1、2)
先ず、下記表1のA〜Hの微粒子含有樹脂耐を製造した。樹脂体は混練型押出機、バンバリーミキサー、ニーダーミキサーを用いて表1の樹脂と微粒子とを適宜混合し、得られた複合体を冷凍粉砕した後、篩い分けして、表1に示す範囲の樹脂体粒径のものを製造した。
【0041】
各実施例及び比較例のゴム組成物から発泡ゴム層を形成するために、天然ゴム、シス−1,4−ポリブタジエンゴム(商品名;UBEPOL 150L:宇部興産社製)、カーボンブラック(N134(NSA:142m/g):旭カーボン社製)、シリカ(Nipsil AQ:日本シリカ株式会社製)、シランカップリング剤(Si69:デグサ社製)、アロマ油、ステアリン酸、老化防止剤(N−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン)、酸化亜鉛、加硫促進剤(MBTS:ジベンゾチアジルジスルフィド)、加硫促進剤(CBS:N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド)、硫黄、発泡剤(DNPT:ジニトロベンタメチレンテトラミン)、尿素、及び表1の各樹脂体を適宜選択して、適宜量配合して、実施例1−7及び比較例1−2を製造した。
【0042】
また、表2に示した配合における各ゴム組成物の加硫時における加硫温度は、ゴム組成物中に熱電対を埋め込んで測定しながら行った。その結果、実施例1〜7及び比較例2にあっては、加硫最高温度に達するまでに、樹脂体の樹脂の融点を超え、上記ゴム組成物の加硫時において、上記樹脂粘度はゴムマトリックス粘度より低くなった。
【0043】
なお、樹脂体の加硫最高温度190℃における粘度(溶融粘度)は、コーンレオメーターを用いて測定(ゴムのトルクがMaxをむかえたら終了とし、トルクをゴム粘度として、トルクの変化と発泡圧力の変化を測定)した。一方、上記ゴム組成物の上記加硫最高温度における粘度(流動粘度)は、モンサント社製コーンレオメーター型式1−C型を使用し、温度を変化させながら100サイクル/分の一定振幅入力を与えて経時的にトルクを測定し、その際の最小トルク値を粘度とした(ドーム圧力0.59MPa、ホールディング圧力0.78MPa、クロージング圧力0.78MPa、振り角±5°)。
【0044】
各実施例及び比較例からタイヤのトレッド(発泡ゴム層)を形成し、通常のタイヤ製造条件に従って各試験用のタイヤを製造した。
【0045】
<氷上性能>
タイヤを国産1600ccクラスの乗用車に装着し、その乗用車を一般アスファルト路上で200km走行させた後、氷上平坦路を走行させ、時速20km/hrの時点でブレーキを踏んでタイヤをロックさせ、停止するまでの距離を測定した。結果は距離の逆数を、比較例1のタイヤをそれぞれ100として指数表示した。尚、数値が大きいほど氷上性能が良い。
【0046】
<操縦安定性>
供試タイヤを3000ccクラスのスポーツタイプの乗用車に装着して、まず80km/hrの速度で3分間予備走行を行った後、60〜200km/hrの速度で実車フィーリングテストを実施し、直進安定性、旋回安定性、剛性感、ハンドリングについて1〜10点の評価を賦し、各項目を平均して操縦安定性の評価とした。尚、操縦安定性の評価は、専門のドライバー2名で行い、2名の評点の平均を求め、比較例1のタイヤの評点を100として指数表示した。指数値が大きいほど、操縦安定性が高い。
【0047】
<耐摩耗性性能>
各試験タイヤ2本を排気量1500ccの乗用車のドライブ軸に取り付け、テストコースのコンクリート路面上を所定の速度で走行させた。溝深さの変化量を測定し、比較例1によるタイヤを100として指数表示した。数値は大きい程耐摩耗性が良好である。
【0048】
【表1】

【0049】
【表2】

【0050】
表1及び2の結果から、実施例1〜7は、比較例1に比べて氷上性能、操縦安定性、及び耐摩耗性が改良されている。また、比較例2を比べても氷上性能の向上がみられる。また、実施例1と2との対比にあっては微粒子が多い樹脂体の氷上性能の方が優れていることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明に係るゴム組成物は、氷路面上での制動、駆動、コーナリング性能等のタイヤの氷上性能を向上させると共に、その摩耗性をも向上させることのできるタイヤに利用できるものであり、そのゴム組成物を適宜加硫してその加硫ゴムをタイヤのトレッド部に利用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】図1は本発明に係るタイヤの断面概略説明図である。
【図2】図2は、本発明に係るゴム組成物の樹脂体の概略図である。
【符号の説明】
【0053】
1 一対のビード部
2 カーカス
3 ベルト
4 タイヤ
5 トレッド
6 キャップ部
10 微粒子含有樹脂
11 微粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モース硬度が2以上の微粒子を含む非線状の微粒子含有樹脂体をゴムマトリックスに分散させてなると共に、該微粒子含有樹脂体は該樹脂100質量部に対して、上記微粒子を50質量部を超え、且つ900質量部以下の範囲で含有させてなるゴム組成物。
【請求項2】
上記微粒子含有樹脂体の粒径が10〜500μmの範囲にある請求項1記載のゴム組成物。
【請求項3】
上記微粒子はその平均粒径が0.1〜100μmの範囲にあり、且つ上記該微粒子は該樹脂体より小径である請求項2記載のゴム組成物。
【請求項4】
上記の樹脂体の樹脂がポリエチレンからなる請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項5】
上記ゴムマトリックスを構成するゴム成分が天然ゴム及びジェン系合成ゴムから選ばれる少なくとも1種以上からなるゴム成分からなり、また上記ゴム成分100質量部に対して上記樹脂体を0.1〜30質量部の範囲で含有する請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項6】
上記微粒子含有樹脂体における樹脂は加硫時の加硫最高温度に達するまでの間に、上記ゴムマトリックスにおけるゴム粘度より低い粘度特性を有してなることを特徴とする請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項7】
発泡剤を配合してなる請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項8】
請求項7記載のゴム組成物を加硫し、該加硫における発泡率が3〜40%の範囲となる加硫ゴム。
【請求項9】
一対のビード部と、該ビード部にトロイド状をなして連なるカーカスと、該カーカスのクラウン部をたが締めするベルト及びトレッドを有してなり、上記トレッドが請求項8に記載の加硫ゴムを含んでなるタイヤ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−206822(P2006−206822A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−23299(P2005−23299)
【出願日】平成17年1月31日(2005.1.31)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】