説明

ゴム組成物、コンベヤベルト用ゴム組成物およびコンベヤベルト

【課題】優れた難燃性を保持しつつ、耐熱老化性に優れる加硫特性を有し、環境負荷も小さいゴム組成物ならびにそのゴム組成物からなるコンベヤベルト用ゴム組成物およびそのコンベヤベルト用ゴム組成物を用いたコンベヤベルトの提供。
【解決手段】塩素系ゴムと、難燃剤とを含有するゴム組成物であって、
前記難燃剤が、少なくとも、塩素化パラフィン、三酸化アンチモンおよびビス(ペンタブロモフェニル)エタンを含有し、
前記塩素化パラフィンの含有量が、前記塩素系ゴム100質量部に対して10〜45質量部であり、
前記三酸化アンチモンの含有量が、前記塩素系ゴム100質量部に対して1〜20質量部であり、
前記ビス(ペンタブロモフェニル)エタンの含有量が、前記塩素系ゴム100質量部に対して5〜35質量部である、ゴム組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物、コンベヤベルト用ゴム組成物およびコンベヤベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
ゴム組成物に難燃性を付与する場合、塩素化パラフィンや三酸化アンチモンなどの難燃剤を添加することが知られているが(例えば、特許文献1および2等参照。)、例えば、地下坑道を走るコンベヤベルト等のより高いレベルの難燃性を要求される用途では、十分な難燃性は得られていなかった。
【0003】
これに対し、難燃剤として、塩素化パラフィンや三酸化アンチモンなどに加えてデカブロモジフェニルエーテルを更に添加することにより難燃性を改善することが知られているが、デカブロモジフェニルエーテルを不完全燃焼させた際に発生する臭素化ジベンゾダイオキシンやフランの環境負荷が高いため、欧米においては、その使用の規制が強化されつつある。
【0004】
【特許文献1】特開昭58−127746号公報
【特許文献2】特開昭61−168639号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
また、本発明者は、難燃剤としてデカブロモジフェニルエーテルを添加したゴム組成物について研究を重ねた結果、長時間使用した後の強度や伸びの保持率が悪く、耐熱老化性に劣る場合があることを明らかとした。
【0006】
そこで、本発明は、優れた難燃性を保持しつつ、耐熱老化性に優れる加硫特性を有し、環境負荷も小さいゴム組成物ならびにそのゴム組成物からなるコンベヤベルト用ゴム組成物およびそのコンベヤベルト用ゴム組成物を用いたコンベヤベルトを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、ゴム成分として塩素系ゴムを用い、難燃剤として、少なくとも、塩素化パラフィン、三酸化アンチモンおよびビス(ペンタブロモフェニル)エタンを用いることにより、優れた難燃性を保持しつつ、耐熱老化性に優れる加硫特性を有し、環境負荷も小さいゴム組成物となることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、下記(1)〜(6)を提供する。
【0008】
(1)塩素系ゴムと、難燃剤とを含有するゴム組成物であって、
上記難燃剤が、少なくとも、塩素化パラフィン、三酸化アンチモンおよびビス(ペンタブロモフェニル)エタンを含有し、
上記塩素化パラフィンの含有量が、上記塩素系ゴム100質量部に対して10〜45質量部であり、
上記三酸化アンチモンの含有量が、上記塩素系ゴム100質量部に対して1〜20質量部であり、
上記ビス(ペンタブロモフェニル)エタンの含有量が、上記塩素系ゴム100質量部に対して5〜35質量部である、ゴム組成物。
【0009】
(2)更に、上記塩素系ゴム100質量部に対して、ポリリン酸アンモニウムを5〜30質量部含有する上記(1)に記載のゴム組成物。
【0010】
(3)更に、上記塩素系ゴム100質量部に対して、水酸化アルミニウムを10〜40質量部含有する上記(1)または(2)に記載のゴム組成物。
【0011】
(4)更に、上記塩素系ゴム100質量部に対して、加工助剤を1〜20質量部含有する上記(1)〜(3)のいずれかに記載のゴム組成物。
【0012】
(5)上記(1)〜(4)のいずれかに記載のゴム組成物からなるコンベヤベルト用ゴム組成物。
【0013】
(6)上面カバーゴム層、補強層および下面カバーゴム層からなるコンベヤベルトであって、
上記上面カバーゴム層および上記下面カバーゴム層の少なくとも表面が、上記(5)に記載のコンベヤベルト用ゴム組成物により形成される、コンベヤベルト。
【発明の効果】
【0014】
以下に説明するように、本発明によれば、優れた難燃性を保持しつつ、耐熱老化性に優れる加硫特性を有し、環境負荷も小さいゴム組成物ならびにそのゴム組成物からなるコンベヤベルト用ゴム組成物およびそのコンベヤベルト用ゴム組成物を用いたコンベヤベルトを提供することができるため有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明のゴム組成物は、塩素系ゴムと、難燃剤とを含有するゴム組成物であって、
上記難燃剤が、少なくとも、塩素化パラフィン、三酸化アンチモンおよびビス(ペンタブロモフェニル)エタンを含有し、
上記塩素化パラフィンの含有量が、上記塩素系ゴム100質量部に対して10〜45質量部であり、上記三酸化アンチモンの含有量が、上記塩素系ゴム100質量部に対して1〜20質量部であり、上記ビス(ペンタブロモフェニル)エタンの含有量が、上記塩素系ゴム100質量部に対して5〜35質量部である、ゴム組成物である。
次に、本発明のゴム組成物の各成分について詳述する。
【0016】
<塩素系ゴム>
上記塩素系ゴムとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン;スチレン−ブタジエンブロック共重合体;スチレン−イソプレンブロック共重合体;等の粉末または粒子を塩素化またはクロロスルホン化して得られる重合物や、クロロプレン重合物、エピクロロヒドリン重合体等を用いることができる。
【0017】
本発明においては、塩素化およびクロロスルホン化する方法は特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。
【0018】
また、本発明においては、塩素系ゴム中の塩素(Cl)含有量は特に限定されないが、 未加硫ゴムの加工性と、加硫特性(特に、引張物性)とのバランスの観点から、20〜50質量%であるのが好ましく、25〜45質量%であるのがより好ましい。
【0019】
このような塩素化ゴムとしては、具体的には、クロロプレンゴム(CR)、ポリエチレンを塩素化した塩素化ポリエチレン(CM)、ポリエチレンを塩素化するとともにクロロスルホン化したクロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、塩素化エチレン−α−オレフィン共重合ゴム、エピクロロヒドリンゴム等が好適に例示される。
これらのうち、CR、CM、CSMであるのが、加硫特性、特に、耐摩耗性、難燃性がより良好となる理由から好ましい。
【0020】
本発明においては、このような塩素化ゴムとして、例えば、クロロプレンゴム(商品名:デンカクロロプレンPM−40、電気化学工業社製)、クロロプレンゴム(商品名:デンカクロロプレンS−41、電気化学工業社製)、塩素化ポリエチレン(商品名:Tyrin CM0136、塩素含有量:36%、Dupont Dow Elastmer社製)、塩素化ポリエチレン(商品名:エラスレン301AE、塩素含有量:32%、昭和電工社製)、塩素化ポリエチレン(商品名:Weipren CM6235、塩素含有量:35%、Yaxing Chemical社製)、クロロスルホン化ポリエチレン(商品名:Hypalon40S、塩素含有量:35%、Dupont社製)、クロロスルホン化ポリエチレン(商品名:TOSO-CSM CN-530、塩素含有量:35%、東ソー社製)等の市販品を用いることができる。
【0021】
<難燃剤>
本発明のゴム組成物で用いる難燃剤は、少なくとも、塩素化パラフィン、三酸化アンチモンおよびビス(ペンタブロモフェニル)エタンを含有するものである。
【0022】
上記塩素化パラフィンとして、例えば、トヨパラックス(東ソー社製)、エンパラ70S(DOVER CHEMICAL COMPANY社製)等の市販品を用いることができる。
また、上記塩素化パラフィンの含有量は、上記塩素系ゴム100質量部に対して10〜45質量部であり、12.5〜30質量部であるのが好ましく、15〜25質量部であるのがより好ましい。
【0023】
上記三酸化アンチモンとして、例えば、PATOX−M(日本精鉱社製)等の市販品を用いることができる。
また、上記三酸化アンチモンの含有量は、上記塩素系ゴム100質量部に対して1〜20質量部であり、2〜15質量部であるのが好ましく、4〜10質量部であるのがより好ましい。
【0024】
上記ビス(ペンタブロモフェニル)エタンとして、例えば、SAYTEX8010(ALBEMARLE CORPORATION社製)、FM−2100(ケムチュラジャパン社製)等の市販品を用いることができる。
また、上記ビス(ペンタブロモフェニル)エタンの含有量は、上記塩素系ゴム100質量部に対して5〜35質量部であり、6〜25質量部であるのが好ましく、8〜15質量部であるのがより好ましい。
【0025】
本発明においては、少なくとも、塩素化パラフィン、三酸化アンチモンおよびビス(ペンタブロモフェニル)エタンをそれぞれ上述した範囲の含有量で含有する難燃剤を用いることにより、得られる本発明のゴム組成物が、優れた難燃性を保持しつつ、耐熱老化性に優れる加硫特性を有し、環境負荷も小さいゴム組成物となる。
このような効果を奏する理由は詳細には明らかではないが、本発明者は以下のように考えている。
すなわち、塩素化パラフィンおよび三酸化アンチモンを所定量含有することにより、高沸点のアンチモン塩化物を生成し、それが可燃性物質の表面を被覆して酸素を遮断するため、優れた難燃性を保持することができると考えられる。
また、ビス(ペンタブロモフェニル)エタンは、デカブロモジフェニルエーテルよりも加熱点5%減量点が低いため、具体的には、デカブロモジフェニルエーテルが370℃であるのに対し、ビス(ペンタブロモフェニル)エタンは343℃であるため、ビス(ペンタブロモフェニル)エタンを所定量含有することにより、臭素化による酸素遮断効果に優れ、耐熱老化性が良好になると考えられる。なお、ビス(ペンタブロモフェニル)エタンを用いる場合は、デカブロモジフェニルエーテルを使用した際の環境負荷の高い副生成物は生じない。
【0026】
本発明のゴム組成物は、上記塩素系ゴム100質量部に対して、更にポリリン酸アンモニウムを5〜30質量部含有するのが好ましく、7〜20質量部含有するのがより好ましく、8〜15質量部含有するのが更に好ましい。
【0027】
上記ポリリン酸アンモニウムとしては、例えば、下記式(1)で表されるものが好適に挙げられる。ここで、下記式(1)中、nは18〜400の整数を表す。
【0028】
【化1】

【0029】
本発明においては、上記ポリリン酸アンモニウムとして、例えば、スミセーフP(住友化学工業社製)等の市販品を用いることができる。
【0030】
このようなポリリン酸アンモニウムを含有することにより、得られる本発明のゴム組成物の加硫特性、特に、難燃性が向上する。これは、ポリリン酸アンモニウムが熱分解によってアンモニアを放出し、脱水反応とともに加硫物表面の難燃効果を発揮する炭素層を生成する促進触媒として働くためであると考えられる。
【0031】
また、本発明のゴム組成物は、上記塩素系ゴム100質量部に対して、更に水酸化アルミニウムを10〜40質量部含有するのが好ましい。
水酸化アルミニウムを含有することにより、得られる本発明のゴム組成物の加硫特性、特に難燃性が向上する。これは、脱水反応時の吸熱や水蒸気による可燃性ガスの希釈によって難燃効果を発揮するためであると考えられる。
本発明においては、上記水酸化アルミニウムとして、例えば、ハイジライトH−42M(SHEPHERD CHMICAL社製)等の市販品を用いることができる。
【0032】
更に、本発明のゴム組成物は、上記塩素系ゴム100質量部に対して、更に加工助剤を1〜20質量部含有するのが好ましく、2〜15質量部含有するのがより好ましく、3〜10質量部含有するのが更に好ましい。
【0033】
上記加工助剤としては、具体的には、例えば、脂肪酸エステル類;脂肪酸カルシウム、脂肪酸アミドおよび脂肪酸エステルの混合物;脂肪酸亜鉛および脂肪酸エステルの混合物;等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0034】
本発明においては、上記加工助剤として、例えば、脂肪酸エステル類(ストラクトール WB−212、Schill + Seilacher社製)、脂肪酸カルシウム、脂肪酸アミドおよび脂肪酸エステルの混合物(ストラクトール WB−16、Schill + Seilacher社製)、脂肪酸亜鉛および脂肪酸エステルの混合物(ストラクトール EF−44、Schill + Seilacher社製)等の市販品を用いることができる。
【0035】
このような加工助剤を含有することにより、得られる本発明のゴム組成物の加工時のロールに対する密着性(以下、単に「ロール密着性」という。)が低減し、耐スコーチ性が向上する。
中でも、脂肪酸エステル類ならびに脂肪酸カルシウム、脂肪酸アミドおよび脂肪酸エステルの混合物を併用することにより、得られる本発明のゴム組成物の加工時のロール密着性がより低減し、耐スコーチ性がより向上する。これは、これらの加工助剤がゴム組成物の表面にブリードアウトし、皮膜を形成することによる効果であると考えられる。
【0036】
本発明のゴム組成物は、上述した各成分以外に、加硫剤、加硫促進剤、加硫助剤等の架橋剤や加硫遅延剤を含有していてもよく、更に、本発明の目的を損わない範囲で、各種配合剤を含有していてもよい。
【0037】
加硫剤としては、例えば、イオウ系、有機過酸化物系、金属酸化物系、フェノール樹脂、キノンジオキシム等の加硫剤が挙げられる。
イオウ系加硫剤としては、具体的には、例えば、粉末イオウ、沈降性イオウ、高分散性イオウ、表面処理イオウ、不溶性イオウ、ジモルフォリンジサルファイド、アルキルフェノールジサルファイド等が挙げられる。
有機過酸化物系の加硫剤としては、具体的には、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジ(パーオキシルベンゾエート)等が挙げられる。
その他として、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、リサージ、p−キノンジオキシム、p−ジベンゾイルキノンジオキシム、ポリ−p−ジニトロソベンゼン、メチレンジアニリン等が挙げられる。
【0038】
加硫促進剤としては、例えば、アルデヒド・アンモニア系、グアニジン系、チオウレア系、チアゾール系、スルフェンアミド系、チウラム系、ジチオカルバミン酸塩系等の加硫促進剤が挙げられる。
アルデヒド・アンモニア系加硫促進剤としては、具体的には、例えば、ヘキサメチレンテトラミン(H)等が挙げられる。
グアニジン系加硫促進剤としては、具体的には、例えば、ジフェニルグアニジン等が挙げられる。
チオウレア系加硫促進剤としては、具体的には、例えば、エチレンチオウレア等が挙げられる。
チアゾール系加硫促進剤としては、具体的には、例えば、ジベンゾチアジルジスルフィド(DM)、2−メルカプトベンゾチアゾールおよびそのZn塩等が挙げられる。
スルフェンアミド系加硫促進剤としては、具体的には、例えば、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CZ)、N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(NS)等が挙げられる。
チウラム系加硫促進剤としては、具体的には、例えば、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等が挙げられる。
ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤としては、具体的には、例えば、Na−ジメチルジチオカーバメート、Zn−ジメチルジチオカーバメート、Te−ジエチルジチオカーバメート、Cu−ジメチルジチオカーバメート、Fe−ジメチルジチオカーバメート、ピペコリンピペコリルジチオカーバメート等が挙げられる。
【0039】
加硫助剤としては、一般的なゴム用助剤を併せて用いることができ、例えば、ステアリン酸やオレイン酸およびこれらのZn塩等が挙げられる。
【0040】
このような加硫剤、加硫促進剤および加硫助剤を含有する場合の合計の含有量は、上記塩素系ゴム100質量部に対して、0.1〜20質量部であるのが好ましく、10〜15質量部であるのがより好ましい。含有量の範囲がこの範囲であると、得られる本発明のゴム組成物の加硫特性、特に、破断強度および耐摩耗性が良好となる。
【0041】
加硫遅延剤としては、具体的には、例えば、無水フタル酸、安息香酸、サリチル酸、アセチルサリチル酸などの有機酸;N−ニトロソージフェニルアミン、N−ニトロソーフェニル−β−ナフチルアミン、N−ニトロソ−トリメチル−ジヒドロキノリンの重合体などのニトロソ化合物;トリクロルメラニンなどのハロゲン化物;2−メルカプトベンツイミダゾール;サントガードPVI:等が挙げられる。
加硫遅延剤を含有する場合の含有量は、上記塩素系ゴム100質量部に対して、0.1〜0.5質量部であるのが好ましく、0.1〜0.2質量部であるのがより好ましい。含有量の範囲がこの範囲であると、得られる本発明のゴム組成物の耐スコーチ性が向上する。
【0042】
一方、配合剤としては、具体的には、例えば、補強剤(充填剤)、老化防止剤、酸化防止剤、顔料(染料)、可塑剤、揺変成付与剤、紫外線吸収剤、溶剤、界面活性剤(レベリング剤を含む)、分散剤、脱水剤、防錆剤、接着付与剤、帯電防止剤等が挙げられる。
これらの配合剤は、ゴム用組成物用の一般的なものを用いることができる。それらの配合量も特に制限されず、任意に選択できる。
【0043】
本発明のゴム組成物の製造は、上述した塩素系ゴム、ならびに、塩素化パラフィン、三酸化アンチモンおよびビス(ペンタブロモフェニル)エタンを少なくとも含有する難燃剤、ならびに、所望により含有する各種配合剤(上述したポリリン酸アンモニウム、水酸化アルミニウム、加工助剤を含む。)をバンバリーミキサー等で混練し、ついで、混練ロール機等で加硫剤、加硫助剤、加硫促進剤を混練して行うことができる。
また、加硫は、通常行われる条件で行うことができる。具体的には、例えば、温度140〜150℃程度、1.0時間の条件下、加熱することにより行われる。
【0044】
本発明のコンベヤベルト用ゴム組成物は、上述した本発明のゴム組成物からなるものである。
これは、本発明のゴム組成物の加硫特性、具体的には、優れた難燃性を保持し、かつ、後述する実施例でも示すように苛酷な条件下における耐熱老化性に優れるという特性を見出してなされたものである。
【0045】
本発明のコンベヤベルトは、上面カバーゴム層、補強層および下面カバーゴム層からなるコンベヤベルトであって、上記上面カバーゴム層および上記下面カバーゴム層の少なくとも表面が、上述した本発明のコンベヤベルト用ゴム組成物により形成されるコンベヤベルトである。
以下に、図1を用いて本発明のコンベヤベルトを説明するが、本発明のコンベヤベルトの構造は、上面カバーゴム層および上記下面カバーゴム層の表面に上述した本発明のコンベヤベルト用ゴム組成物を用いていれば特にこれに限定されない。
【0046】
図1は、本発明のコンベヤベルトの好適な実施態様の一例を模式的に示した断面図である。図1において、1はコンベヤベルト、2は上面カバーゴム層、3は補強層、4は下面カバーゴム層、5は運搬物搬送面である。
図1に示すように、コンベヤベルト1は、補強層3を中心層とし、その両側に上面カバーゴム層2と下面カバーゴム層4が設けられている。
【0047】
図1において、上面カバーゴム層2は、1層から構成されているが、本発明のコンベヤベルトにおいては、上面カバーゴム層2を構成する層の数は、1に限定されず、2以上であってもよい。そして、2以上の場合は、それぞれ互いに異なるゴム組成物を用いて形成されてもよい。また、下面カバーゴム層4も同様である。
【0048】
本発明のコンベヤベルトにおいては、上面カバーゴム層2および下面カバーゴム層4を構成する層は、より効果的に難燃性を発揮できる理由から1層であるのが好ましい。
【0049】
補強層3の芯体は特に限定されず、通常のコンベヤベルトに用いられるものを適宜選択して用いることができ、その具体例としては、綿布と化学繊維または合成繊維とからなるものにゴム糊を塗布、浸潤させたもの、RFL処理したものを折り畳んだもの、特殊織のナイロン帆布、スチールコード等が挙げられ、これらを一種単独で用いてもよく、2種以上のものを積層して用いてもよい。
また、補強層3の形状は特に限定されず、図1に示すようにシート状であってもよく、ワイヤー状の補強線を並列に埋込むものであってもよい。
【0050】
本発明のコンベヤベルトは、上面カバーゴム層および下面カバーゴム層の少なくとも表面が本発明のコンベヤベルト用ゴム組成物により形成されるため、優れた難燃性を保持し、耐熱老化性にも優れる。
【0051】
本発明のコンベヤベルトにおいては、上面カバーゴム層の厚さが、3〜20mmであるのが好ましく、5〜15mmであるのがより好ましい。ここで、上面カバーゴム層の厚さは、上面カバーゴム層が内層および外層で構成されている場合は、これらの層の合計の層厚をいう。
上面カバーゴム層の厚さがこの範囲であると、高温の運搬物を搬送に用いる場合であっても、ゴムの劣化等により生ずるベルトの反り返り(カッピング)を防ぐことができる。
【0052】
本発明のコンベヤベルトの製造方法は特に限定されず、通常用いられる方法等を採用することができる。
具体的には、まず、ロール、ニーダー、バンバリーミキサー等を用いて原料を混練りした後、カレンダー等を用いて各カバーゴム層用にシート状に成形し、次に、得られた各層を補強層を挟み込むように所定の順序で積層し、140〜170℃の温度で10〜60分間加圧する方法が好適に例示される。
【実施例】
【0053】
以下に実施例を挙げ、本発明のゴム組成物について更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
(実施例1〜11、比較例1および2)
下記第1表に示すゴム成分100質量部に対して、下記第1表に示す組成成分(質量部)で、ゴム組成物を調製した。得られた各ゴム組成物について、各種物性を以下に示す方法により測定し評価した。その結果を下記第1表に示す。
【0054】
<加硫後の物性>
(1)引張物性
得られた各ゴム組成物を148℃のプレス成型機を用い、面圧3.0MPaの圧力下で60分間加硫して、2mm厚の加硫シートを作製した。このシートからJIS3号ダンベル状の試験片を打ち抜き、引張速度500mm/分での引張試験をJIS K6251-2004に準拠して行い、初期の引張強さ(TB)[MPa]および切断時伸び(EB)[%]を室温にて測定した。
また、上記試験片をギヤー式老化試験機中に70℃で7日間放置した後に、上記と同様の方法で、耐熱老化後の引張強さ(TB)[MPa]および切断時伸び(EB)[%]を測定した。
その結果、引張強さ(TB)の保持率が90%以上であり、かつ、切断時伸び(EB)の保持率が90%以上であるものを耐熱老化性に優れるものとして評価した。
【0055】
(2)ショアA硬度
上記と同様の各ダンベル状3号形試験片について、JIS K6253-1997の「タイプAデュロメータ硬さ試験」に準じて、ショアA硬度を測定した。
【0056】
(3)難燃性
得られた各ゴム組成物を148℃のプレス成型機を用い、面圧3.0MPaの圧力下で60分間加硫して、2mm厚の加硫シートを作製した。このシートから試験片(150mm×60mm)を切出し、JIS K6269-1998に準拠して、酸素指数(%)を測定した。
その結果、酸素指数が30%以上であるものを難燃性に優れるものとして評価した。
【0057】
【表1】

【0058】
【表2】

【0059】
【表3】

【0060】
上記第1表に示すゴム成分等の各組成成分としては、以下に示すものを用いた。
・NR:RSS#3
・SBR:スチレンブタジエンゴム(Nipol 1502、日本ゼオン社製)
・CR:クロロプレンゴム(デンカクロロプレンPM−40、電気化学工業社製)
・カーボンブラック:ISAF(ニテロン#300、新日化カーボン社製)
・酸化マグネシウム:キョウワマグ150(協和化学工業社製)
・酸化亜鉛:酸化亜鉛3種(正同化学工業社製)
・ステアリン酸:ビーズステアリン酸(日本油脂社製)
・老化防止剤:ノクラック6C(大内新興化学工業社製)
・塩素化パラフィン:エンパラ70S(DOVER CHEMICAL COMPANY社製)
・デカブロモジフェニルエーテル:フレームカット BR−100(東ソー社製)
・ビス(ペンタブロモフェニル)エタン:SAYTEX8010(ALBEMARLE CORPORATION社製)
・三酸化アンチモン:PATOX−M(日本精鉱社製)
・ポリリン酸アンモニウム:スミセーフP(住友化学工業社製)
・水酸化アルミニウム:ハイジライトH−42M(SHEPHERD CHMICAL社製)
・加工助剤1:ストラクトールWB−212(Schill + Seilacher社製)
・加工助剤2:ストラクトールWB−16(Schill + Seilacher社製)
・加硫剤1:硫黄(油処理硫黄、細井化学工業社製)
・加硫剤2:酸化亜鉛3種(正同化学工業社製)
・加硫促進剤1:N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(ノクセラーCZ、大内新興化学工業社製)
・加硫促進剤2:ジベンゾチアジルジスルフィド(サンセラーDM、三新化学工業社製)
【0061】
第1表に示す結果より、難燃剤としてビス(ペンタブロモフェニル)エタンを含有しない比較例1のゴム組成物は、難燃性に劣り、切断時伸びの保持率も低いことから耐熱老化性にも劣ることが分かった。また、ビス(ペンタブロモフェニル)エタンに替えてデカブロモジフェニルエーテルを用いて調製した比較例2のゴム組成物は、難燃性は改善されるものの、切断時伸びの保持率が低いことから耐熱老化性に劣ることが分かった。
これに対し、実施例1〜11で得られたゴム組成物は、いずれも、優れた難燃性を保持しつつ、耐熱老化性に優れる加硫特性を有し、環境負荷も小さいゴム組成物であることが分かった。特に、耐熱老化性については、比較例1および2に比べて切断時伸びの保持率が高いため極めて優れた効果であることが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】図1は、本発明のコンベヤベルトの好適な実施態様の一例を模式的に示した断面図である。
【符号の説明】
【0063】
1:コンベヤベルト
2:上面カバーゴム層
3:補強層
4:下面カバーゴム層
5:運搬物搬送面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩素系ゴムと、難燃剤とを含有するゴム組成物であって、
前記難燃剤が、少なくとも、塩素化パラフィン、三酸化アンチモンおよびビス(ペンタブロモフェニル)エタンを含有し、
前記塩素化パラフィンの含有量が、前記塩素系ゴム100質量部に対して10〜45質量部であり、
前記三酸化アンチモンの含有量が、前記塩素系ゴム100質量部に対して1〜20質量部であり、
前記ビス(ペンタブロモフェニル)エタンの含有量が、前記塩素系ゴム100質量部に対して5〜35質量部である、ゴム組成物。
【請求項2】
更に、前記塩素系ゴム100質量部に対して、ポリリン酸アンモニウムを5〜30質量部含有する請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
更に、前記塩素系ゴム100質量部に対して、水酸化アルミニウムを10〜40質量部含有する請求項1または2のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項4】
更に、前記塩素系ゴム100質量部に対して、加工助剤を1〜20質量部含有する請求項1〜3のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のゴム組成物からなるコンベヤベルト用ゴム組成物。
【請求項6】
上面カバーゴム層、補強層および下面カバーゴム層からなるコンベヤベルトであって、
前記上面カバーゴム層および前記下面カバーゴム層の少なくとも表面が、請求項5に記載のコンベヤベルト用ゴム組成物により形成される、コンベヤベルト。

【図1】
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【公開番号】特開2009−249459(P2009−249459A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−97323(P2008−97323)
【出願日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】