説明

ゴム組成物およびその用途

【課題】本発明は、シール性、耐熱性、耐酸性に優れ、低反力、低硬度であって、圧縮永久歪みが小さく、特に高温での圧縮永久歪みおよび圧縮割れ性が改善された成形体を製造し得るゴム組成物およびその用途、ならびに該ゴム組成物を実装した本体を提供することを課題としている。
【解決手段】本発明のゴム組成物は、特定のエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[A]およびカーボンブラック[B]と、沈殿法シリカを表面改質して得られる、BET比表面積が30〜80m2/gであり、コールターカウンター法による粒子径が
1.0〜4.0μmであり、かつ、M値が50以上の表面改質シリカ[C]とを含有してなることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物およびその用途に関する。詳しくは、本発明は、燃料電池シール材、LIM成形用ガスケット材などの各種ガスケット材、電線コネクターシール材などの用途に好適に用いることのできるゴム組成物、および該ゴム組成物より得られる燃料電池シール材、ハードディスクドライブトップカバーガスケット、LIM成形用ガスケット材、電線コネクター用シール材、並びにそれらを実装した本体に関する。
【背景技術】
【0002】
電器製品等に用いられるシール部品やガスケット部品は、バリア性、シール性等に優れ、所望の硬度を満たすとともに、通電時の発熱にも対応できる高度な耐熱性を有し、低温環境下においても使用可能であることが肝要である。
【0003】
たとえば燃料電池は、水の電気分解の逆反応、すなわち水素と酸素を化学的に反応させることにより直接電気を取り出す効率的でクリーンな発電システムであり、自動車や家庭用の新しいエネルギーシステムとして注目されている。燃料電池のセルシール材などとしては、耐熱性、耐酸性、耐気体透過性および高速成形性に優れた、低コストな材料が求められており、現状では、耐熱性、耐酸性からはフッ素ゴムが、耐気体透過性からはブチルゴムが、耐熱性と成形性からはシリコーンゴムが、それぞれ適用されているが、高速成形性の要求に対しては、通常のミラブル型シリコーンゴム材料では不十分で、この場合、液状のシリコーンゴムを用い、LIM(Liquid Injection Molding)成形を適用した方法などが適用されている。しかしながらシリコーンゴムは、耐熱性、高速成形性には優れているものの、耐酸性、耐気体透過性については充分とはいえない。
【0004】
また、燃料電池においては、発電性能をより向上させる狙いから、発電反応温度を上げることが検討されており、シール材(ガスケット材)についても更なる高温耐久性が求められている。
【0005】
一方電子機器製品は、小型化、高性能化に伴ない、構成部品を小さく薄くすることが求められている。しかし構成部品を小さくすると、製造の組立作業性が悪くなるため、種々の部品の一体化、複合化が求められている。
【0006】
たとえば、電子記憶装置であるハードディスクドライブ用のガスケットは、ゴム単体や発泡ウレタンシートとステンレスやアルミニウム等の金属カバーとを挟み接着剤で接合し、一体化して用いられる場合がある。しかし、一体化と同時に金属カバーの軽量化・薄肉化を行うため、ガスケットの硬度(反力)が高いと、カバーが変形する問題が生じた。
【0007】
そこで、ガスケット材として、スチレン系熱可塑性エラストマーが提案された(特許文献1)。スチレン系熱可塑性エラストマーは、硬度が低く、かつゴム材料に比べ加硫工程が不要なため、工程の簡略化可能なこと、リサイクルが可能であることが示されている。
【0008】
ところが、ハードディスクドライブの高性能化(高回転数)による発熱、および自動車への採用により、たとえば80℃以上などの高温環境下での使用が増加する傾向にある。そのような環境下では、スチレン系熱可塑性エラストマーの機械特性の一つである高温下での永久変形の問題が生じ、性能上の限界があった。このため、より高温耐久性に優れるとともに、低硬度で、圧縮永久歪み率が低く、高圧縮でも低反力のシール性が得られるガスケット材の出現が望まれている。
【0009】
電線コネクターは、電線同士の接続と分岐を行うもので、ワンタッチで接続が可能なオス・メス一対の樹脂製枠、電線、およびシール材で構成されている。シール材は、電線・樹脂製枠間の主にダストシールとして用いられる。この種の用途に用いられる電線コネクター用シール材は、細い電線に対するシール性と挿入性が要求され、従来は、低硬度でオイルブリードタイプのシリコーンゴムやニトリルゴムが用いられていたが、それらのゴムは、主にシリコーンオイルを可塑剤として含有しており、可塑剤が使用中に電気接点に付着し、電気接点の絶縁化による通電の不具合が発生するという問題があった。
【0010】
このような状況において、特許文献2には、高速成形に優れ、耐熱性、耐酸性および耐気体透過性に優れ、燃料電池シール材、ハードディスクドライブなどの電子装置用ガスケット材、電線コネクター用シール材等に好適に用いられるゴム組成物が提案されている。このゴム組成物は、LIM成形が可能な液状ゴム組成物であって、低硬度の成形物が得られることから、高圧縮でも低反力のシールが求められる燃料電池用シール材やハードディスクドライブ用のガスケット材などに好適である。しかしながら、ガスケットやシール部品などの成形体には、さらに高温耐久性の向上が望まれており、高温での圧縮永久歪み性のみならず、高温・高歪み下での圧縮割れ性の改善が望まれていた。しかしながらこのようなゴム組成物はシリコーンゴムなどに比べて、低温環境下での弾性回復率については劣るため、低温環境下での機械特性についてさらなる改良が求められていた。
【0011】
また、家庭向けの定置用燃料電池シール材としては、90℃、40,000時間で80
%以下の圧縮永久歪み率が要求されていたが、5,000時間から10,000時間にかけて急激に圧縮永久歪み率が悪化する問題が生じることから、さらに高温・長期の圧縮永久歪み率が改善されたゴム組成物が強く求められていた。
【特許文献1】特許第2961068号公報
【特許文献2】国際公開WO03/057777公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、シール性、耐熱性、耐酸性、高速成形性に優れ、低硬度・低反力であって、低温環境下でのシール性に寄与する低温回復性および高圧縮下での割れ性が改善され、特に高温での圧縮永久歪み率が長期に渡って改良された成形体を製造し得るゴム組成物およびその用途、ならびにゴム組成物を実装した本体を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のゴム組成物は、
以下の(a)〜(e)を満足するエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[A]と、
(a)エチレンと、α−オレフィンと、非共役ポリエンとの共重合体であり、
(b)α−オレフィンの炭素数が3〜20であり、
(c)エチレン単位/α−オレフィン単位の重量比が35/65〜95/5であり、
(d)よう素価が0.5〜50の範囲であり、
(e)135℃のデカリン溶液中で測定した極限粘度[η]が0.01〜5.0dl/gである;
よう素吸着量が80mg/g以下であり、平均粒子径が250nm以下であり、かつ、DBP吸収量が10〜300cm3/100gであるカーボンブラック[B]と、
沈殿法シリカを表面改質して得られる、BET比表面積が30〜80m2/gであり、
コールターカウンター法による粒子径が1.0〜4.0μmであり、かつ、M値が50以上である表面改質シリカ[C]と
を含有してなることを特徴としている。
【0014】
このような本発明のゴム組成物では、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[A]が、さらに下記(f)を満足することが好ましい;
(f)非共役ポリエンが、下記の一般式[I]で表わされる少なくとも一種のノルボルネン化合物である。
【0015】
【化1】

【0016】
(式[I]中、nは0ないし10の整数であり、R1は水素原子または炭素原子数1〜1
0のアルキル基であり、R2は水素原子または炭素原子数1〜5のアルキル基である。)
本発明のゴム組成物は、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[A]とゴム組成物を構成するその他の樹脂成分との合計量100重量部に対して、カーボンブラック[B]を1〜40重量部、表面改質シリカ[C]を20〜60重量部含有することが好ましい。
【0017】
本発明のゴム組成物は、ゴム組成物中の樹脂成分が、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[A]のみであることが好ましい。
本発明のゴム組成物では、カーボンブラック[B]が、よう素吸着量が15〜40mg/g、平均粒子径が40〜100nm、DBP吸収量が40〜150cm3/100gを
満たすことが好ましい。
【0018】
本発明のゴム組成物は、架橋剤[D]をさらに含むことが好ましい。
本発明のゴム組成物が架橋剤[D]を含む場合、架橋剤[D]が、下記一般式[II]で表される、一分子中にSiH基を2個有するSiH基含有化合物(1)を含むことが好ましい。
【0019】
【化2】

【0020】
(式[II]中、R3は炭素数1〜10の一価の基で、非置換あるいは置換の飽和単価水素
基または芳香族炭化水素基であり、1分子内で同種でも異種でもよく、aは0〜20の整数であり、bは0〜20の整数であり、R4は炭素数1〜30の二価の有機基または酸素
原子である。)
また本発明のゴム組成物が架橋剤[D]を含む場合、架橋剤[D]が、下記一般式[III]で表される、一分子中にSiH基を3個有するSiH基含有化合物(2)を含むこと
も好ましい。
【0021】
【化3】

【0022】
(式[III]中、R5は炭素数1〜10の一価の基で、非置換あるいは置換の飽和炭化水素基または芳香族炭化水素基であり、1分子内で同種でも異種でもよく、a、bおよびcはそれぞれ独立に0〜20の整数であり、R6は炭素数1〜30の三価の有機基である。)
本発明のゴム組成物が、一分子中にSiH基を2個有するSiH基含有化合物(1)を含有する場合には、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[A]とゴム組成物を構成するその他の樹脂成分との合計量100重量部に対して、一分子中にSiH基を2個有するSiH基含有化合物(1)を3.0〜7.0重量部含有することが好ましい。
【0023】
本発明のゴム組成物が、一分子中にSiH基を3個有するSiH基含有化合物(2)を含有する場合には、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[A]とゴム組成物を構成するその他の樹脂成分との合計量100重量部に対して、一分子中にSiH基を3個有するSiH基含有化合物(2)を0.1〜2.0重量部含有することが好ましい。
【0024】
本発明の燃料電池シール材は、前記本発明のゴム組成物からなる。
本発明の燃料電池は、前記本発明のゴム組成物からなる燃料電池シール材を有する。
本発明のハードディスクドライブトップカバーガスケット、ならびに本発明のLIM成形用ガスケット材は、前記本発明のゴム組成物からなる。
【0025】
本発明のハードディスクドライブは、前記本発明のゴム組成物からなるハードディスクドライブトップカバーガスケットを有する。
本発明の電線コネクターシール材は、前記本発明のゴム組成物からなる。
【0026】
本発明の電線コネクターは、前記本発明のゴムからなる電線コネクターシール材を有する。前記本発明の電線コネクターは、自動車用電線コネクターであることが好ましい。
【発明の効果】
【0027】
本発明のゴム組成物は、LIM成形に好適であり、これを用いて成形された成形品は、シール性、耐熱性、耐酸性に優れ、低反力、低硬度であって、低温環境下でのシール性に寄与する低温回復性に優れるとともに、長期にわたって高温下での圧縮永久歪みが小さく、圧縮回復性に優れる。本発明のゴム組成物は、オイルブリードやブルームなどを生じず、機械的特性、耐アウトガス性に優れた成形品を製造することができ、電線コネクター用シールを成形した場合には電線のシール性と挿入性に優れたものとなり、燃料電池シール材、LIM成形用ガスケット材、電線コネクターシール材に好適である。本発明の燃料電
池、ハードディスクドライブトップカバーガスケット、ハードディスクドライブ、電線コネクター等は、本発明のゴム組成物からなる成形体を具備しており、該成形体はシール性、耐熱性、耐酸性に優れ、低反力、低硬度であって、特に高温条件下での圧縮永久歪みが小さく、圧縮回復性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明について具体的に説明する。
<ゴム組成物>
本発明のゴム組成物は、特定のエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[A]、カーボンブラック[B]および表面改質シリカ[C]を必須成分として含有し、さらに必要に応じて架橋剤[D]を含有する。
【0029】
[A]エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体
本発明で用いられる共重合体[A]は、以下の(a)〜(e)を満足し、好ましくは以下の(a)〜(f)を満足する。
(a)エチレンと、α−オレフィンと、非共役ポリエンとの共重合体であり、
(b)α−オレフィンの炭素数が3〜20であり、
(c)エチレン単位/α−オレフィン単位の重量比が35/65〜95/5であり、
(d)よう素価が0.5〜50の範囲であり、
(e)135℃のデカリン溶液中で測定した極限粘度[η]が0.01〜5.0dl/gであり、
(f)非共役ポリエンが、上記一般式[I]で表わされる少なくとも一種のノルボルネン化合物である。
【0030】
本発明に係る共重合体[A]は、エチレンと、炭素原子数3〜20のα−オレフィンと、非共役ポリエンとの共重合体であり、好ましくはこれらのランダム共重合体である。
・α−オレフィン
共重合体[A]を構成するα−オレフィンは、炭素原子数が3〜20のα−オレフィンである。具体的には、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、9−メチル−1−デセン、11−メチル−1−ドデセン、12−エチル−1−テトラデセンなどが挙げられる。中でも、炭素原子数3〜10のα−オレフィンがより好ましく、特にプロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンが最も好ましく用いられる。これらのα−オレフィンは、単独であるいは2種以上組み合わせて用いられる。
【0031】
・非共役ポリエン
共重合体[A]を構成する非共役ポリエンは、特に限定されるものではないが、好ましくは非共役ジエンであり、より好ましくは下記一般式[I]で表わされる少なくとも1種のノルボルネン化合物である。
【0032】
【化4】

【0033】
(式[I]中、nは0ないし10の整数であり、R1は水素原子または炭素原子数1〜1
0のアルキル基であり、R2は水素原子または炭素原子数1〜5のアルキル基である。)
一般式[I]で表わされるノルボルネン化合物の具体例としては、5−ビニル−2−ノルボルネン、5−(2−プロペニル)−2−ノルボルネン、5−(3−ブテニル)−2−ノルボルネン、5−(1−メチル−2−プロペニル)−2−ノルボルネン、5−(4−ペンテニル)−2−ノルボルネン、5−(1−メチル−3−ブテニル)−2−ノルボルネン、5−(5−ヘキセニル)−2−ノルボルネン、5−(1−メチル−4−ペンテニル)−2−ノルボルネン、5−(2,3−ジメチル−3−ブテニル)−2−ノルボルネン、5−
(2−エチル−3−ブテニル)−2−ノルボルネン、5−(6−ヘプテニル)−2−ノルボルネン、5−(3−メチル−5−ヘキセニル)−2−ノルボルネン、5−(3,4−ジ
メチル−4−ペンテニル)−2−ノルボルネン、5−(3−エチル−4−ペンテニル)−2−ノルボルネン、5−(7−オクテニル)−2−ノルボルネン、5−(2−メチル−6−ヘプテニル)−2−ノルボルネン、5−(1,2−ジメチル−5−ヘキセシル)−2−
ノルボルネン、5−(5−エチル−5−ヘキセニル)−2−ノルボルネン、5−(1,2,3−トリメチル−4−ペンテニル)−2−ノルボルネンなどが挙げられる。
【0034】
このなかでも、5−ビニル−2−ノルボルネン、5−(2−プロペニル)−2−ノルボルネン、5−(3−ブテニル)−2−ノルボルネン、5−(4−ペンテニル)−2−ノルボルネン、5−(5−ヘキセニル)−2−ノルボルネン、5−(6−ヘプテニル)−2−ノルボルネン、5−(7−オクテニル)−2−ノルボルネンが好ましい。これらのノルボルネン化合物は、単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0035】
本発明の共重合体[A]を構成する非共役ポリエンは、上記一般式[I]で表されるノルボルネン化合物以外の非共役ポリエンであってもよい。用いることができる非共役ポリエンには特に制限がないが、以下に示す鎖式非共役ジエン、脂環式非共役ジエン、およびトリエン化合物が挙げられ、それらは単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。また上記一般式[I]で表されるノルボルネン化合物以外の非共役ポリエンは、上記一般式[I]で表されるノルボルネン化合物とともに用いられてもよい。
【0036】
鎖式非共役ジエンの具体例としては、1,4−ヘキサジエン、3−メチル−1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、4,5−ジメチル−1,4−ヘキサジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン等が挙げられる。
【0037】
環状非共役ジエンの具体例としては、5−メチレン−2−ノルボルネン、1−メチル−5−メチレン−2−ノルボルネン、1−エチル−5−メチレン−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、5−ビニリデン−2−ノルボルネン、6−クロロメチル−5−イソプロペニル−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、メチルテトラヒドロインデン等が挙げられる。
【0038】
さらに上記以外の具体例としては、2,3−ジイソプロピリデン−5−ノルボルネン、2−エチリデン−3−イソプロピリデン−5−ノルボルネン、2−プロペニル−2,2−ノルボルナジエン等のトリエンなどが挙げられる。
【0039】
・共重合体[A]の組成と特性
本発明に係る共重合体[A]は、エチレン単位/α−オレフィン単位の比が、重量比で35/65〜95/5であり、好ましくは40/60〜90/10、より好ましくは45/55〜85/15、特に好ましくは50/50〜80/20である。
【0040】
この重量比が上記範囲内にあると、耐熱老化性、強度特性およびゴム弾性に優れるとともに、耐寒性および加工性に優れた架橋ゴム成形体を提供できるゴム組成物が得られる。
本発明の共重合体[A]のよう素価は、0.5〜50(g/100g)であり、好ましくは1〜45、より好ましくは1〜43、特に好ましくは3〜40(g/100g)である。
【0041】
このよう素価が、上記範囲内にあると、架橋効率の高いゴム組成物が得られ、耐圧縮永久歪み性に優れるとともに、耐環境劣化性(=耐熱老化性)に優れた架橋ゴム成形体を提供できるゴム組成物が得られる。よう素価が、上記範囲を超えると、架橋密度が高くなり過ぎて引張伸びなどの機械特性が低下する場合がある。
【0042】
本発明に係る共重合体[A]の135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]は、0.01〜5.0dl/gであり、好ましくは0.03〜4.0dl/g、さらに好ましくは0.05〜3.5dl/g、特に好ましくは0.07〜3.0dl/gである。また、共重合体[A]の極限粘度[η]が、0.5dl/g以下、好ましくは0.3dl/g未満である態様は、特にゴム組成物をLIM成形する場合に好適である。極限粘度[η]が、上記範囲内にあると、強度特性および耐圧縮永久歪み性に優れるとともに、加工性に優れた架橋ゴム成形体を提供できるゴム組成物が得られる。
【0043】
また、本発明に係る共重合体[A]は、Anton Paar 社(オーストラリア)製の粘弾性
装置 MCR−301を用いて測定した複素粘度(25℃、歪み1%)が、105Pa・sec以下、好ましくは4000Pa・sec以下、より好ましくは2000Pa・sec以下の低粘度であることが望ましい。
【0044】
・共重合体[A]の製法
本発明に係る共重合体[A]は、エチレンと、α−オレフィンと、上述した式[I]で表されるノルボルネン化合物を含む非共役ポリエンとを、重合用触媒の存在下に共重合させることにより製造することができ、具体的には、例えば「ポリマー製造プロセス」((株)工業調査会発行、365〜378ページ)、特開平9−71617号公報、特開平9−71618号公報、特開平9−208615号公報、特開平10−67823号公報、特開平10−67824号公報、特開平10−110054号公報などに記載されているような従来公知の方法により好ましく調製することができる。
【0045】
重合用触媒としては、バナジウム(V)、ジルコニウム(Zr)、チタニウム(Ti)等の遷移金属化合物と、有機アルミニウム化合物(有機アルミニウムオキシ化合物)とからなるチーグラー触媒、あるいは元素の周期律表第IVB族から選ばれる遷移金属のメタロセン化合物と、有機アルミニウムオキシ化合物またはイオン化イオン性化合物とからなるメタロセン触媒が好ましく用いられる。
【0046】
具体的には、本発明に係る共重合体[A]は、下記バナジウム化合物(a)および有機アルミニウム化合物(b)を主成分として含有する触媒の存在下に、重合温度30〜60℃、特に30〜50℃、重合圧力4〜12kgf/cm2、特に5〜8kgf/cm2、非共役ポリエンとエチレンとの供給量のモル比(非共役ポリエン/エチレン)0.01〜0.2の条件で、エチレンと、α−オレフィンと、上記の非共役ポリエン、特に好ましくはビニル基を含有するノルボルネン化合物、とを共重合することにより好適に製造することができる。共重合は、炭化水素媒体中で行うのが好ましい。
【0047】
バナジウム化合物(a)としては、たとえば、一般式 VO(OR)abまたはV(OR)cd(式中、Rは炭化水素基であり、0≦a≦3、0≦b≦3、2≦a+b≦3、0≦c≦4、0≦d≦4、3≦c+d≦4)で表わされるバナジウム化合物、あるいはこれらの電子供与体付加物を挙げることができる。
【0048】
より具体的には、VOCl3、VO(OC25)Cl2 、VO(OC252Cl、VO(O−iso−C37)Cl2、VO(O−n−C49)Cl2、VO(OC253、V
OBr3、VCl4 、VOCl3、VO(O−n−C493、VCl3・2OC612OH
などを例示することができる。
【0049】
有機アルミニウム化合物(b)としては、具体的には、トリエチルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム;ジエチルアルミニウムエトキシド、ジブチルアルミニウムブトキシド等のジアルキルアルミニウムアルコキシド;エチルアルミニウムセスキエトキシド、ブチルアルミニウムセスキブトキシド等のアルキルアルミニウムセスキアルコキシド;
0.5Al(OR)0.5 などで表わされる平均組成を有する部分的にアルコキシ化され
たアルキルアルミニウム;ジエチルアルミニウムクロリド、ジブチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムブロミド等のジアルキルアルミニウムハライド;エチルアルミニウムセスキクロリド、ブチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキブロミド等のアルキルアルミニウムセスキハライド、エチルアルミニウムジクロリド、プロピルアルミニウムジクロリド、ブチルアルミニウムジブロミド等のアルキルアルミニウムジハライド等の部分的にハロゲン化されたアルキルアルミニウム;ジエチルアルミニウムヒドリド、ジブチルアルミニウムヒドリド等のジアルキルアルミニウムヒドリド、エチルアルミニウムジヒドリド、プロピルアルミニウムジヒドリド等のアルキルアルミニウムジヒドリド等の部分的に水素化されたアルキルアルミニウム;エチルアルミニウムエトキシクロリド、ブチルアルミニウムブトキシクロリド、エチルアルミニウムエトキシブロミド等の部分的にアルコキシ化およびハロゲン化されたアルキルアルミニウムなどを挙げることができる。
【0050】
・その他の樹脂成分
本発明に係るゴム組成物は、樹脂成分として上述したエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[A]のみを含むことが好ましいが、本発明の目的を損なわない範囲で、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[A]以外の樹脂成分を含有してもよい。
【0051】
共重合体[A]以外の樹脂成分としては、たとえば、オルガノポリシロキサンが任意成分として好適に用いられる。オルガノポリシロキサンは、ゴム組成物の耐熱老化性を向上させる作用を有し、燃料電池シール品、ハードディスクドライブトップカバーガスケット、電線コネクター用シール材の耐熱老化性向上に寄与する。
【0052】
本発明のゴム組成物が、オルガノポリシロキサンを含有する場合、その含有量は、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体:オルガノポリシロキサンの重量比で99.9:0.1〜5:95、好ましくは99.9:0.1〜60:40、より好ましくは99.9:0.1〜70:30の範囲であることが好ましい。
【0053】
オルガノポリシロキサンとしては、平均組成式が、下記式(S)で示されるものが挙げられる。
1tSiO(4-t)/2 …(S)
(式(S)中、R1は炭素数1〜10の一価炭化水素基を示し、該基の水素原子の一部又
は全部がシアノ基またはハロゲン基で置換されていてもよく、tは1.9〜2.1の数である。)
上記式(S)中のR1は、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、
ヘキシル基、オクチル基等のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基等のアルケニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等のシクロアルケニル基、フェニル基、トリル基、キシリル基等
のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基であり、それら該基の水素原子の一部又は全部が塩素原子、フッ素原子、シアノ基で置換されていてもよい。
【0054】
オルガノポリシロキサンとしては、主鎖がジメチルシロキサン単位を有するオルガノポリシロキサン、あるいはジメチルポリシロキサンの主鎖の一部にフェニル基、ビニル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等を有するジフェニルシロキサン単位、メチルビニルシロキサン単位、メチル−3,3,3−トリフルオロプロピルシロキサン単位等を導入したオルガノポリシロキサンが特に好適である。
【0055】
オルガノポリシロキサンは、1分子中に2個以上のアルケニル基、シクロアルケニル基等の脂肪族不飽和基を有するものが好ましく、R1中0.01〜20モル%、特に0.0
2〜10モル%がかかる脂肪族不飽和基、特にビニル基であることが好ましい。この脂肪族不飽和基は、分子鎖末端でも、分子鎖の途中でも、その両方にあってもよいが、少なくとも分子鎖末端にあることが好ましい。また、分子鎖末端は、トリメチルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、ジメチルヒドロキシシリル基、ジメチルビニルシリル基、トリビニルシリル基等で封鎖されたものを挙げることができる。
【0056】
本発明に用いることのできるオルガノポリシロキサンとして、特に好ましいものは、メチルビニルポリシロキサン、メチルフェニルビニルポリシロキサン、メチルトリフルオロプロピルビニルポリシロキサン等を挙げることができる。
【0057】
このようなオルガノポリシロキサンは、例えば、オルガノハロゲノシランの1種又は2種以上を(共)加水分解縮合することにより、あるいは環状ポリシロキサン(シロキサンの3量体あるいは4量体など)をアルカリ性又は酸性の触媒を用いて開環重合することによって得ることができる。これらは基本的に直鎖状のジオルガノポリシロキサンであるが、分子構造の異なる2種又は3種以上の混合物であってもよい。
【0058】
オルガノポリシロキサンは、市販品として入手することが可能であり、あるいは開示されている公知の方法によって合成しても得ることができる。
オルガノポリシロキサンの重合度は100以上が好ましく、特に好ましくは3,000〜20,000である。また、その粘度は、25℃で100センチストークス(cSt)以上が好ましく、特に好ましくは100,000〜100,000,000cStである。
【0059】
また、本発明のゴム組成物中には、本発明の目的を損なわない範囲で、その他の樹脂成分として公知の他のゴムを併用することができ、具体例としては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)などのイソプレン系ゴム、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)などの共役ジエン系ゴムを挙げることができる。さらに、エチレン・プロピレンランダム共重合体(EPR)のような従来公知のエチレン・α−オレフィン系共重合体ゴムや、本発明の共重合体[A]以外のエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合を用いることもできる。
【0060】
[B]カーボンブラック
本発明で用いられるカーボンブラック[B]は、よう素吸着量が80mg/g以下、好ましくは15〜40mg/gであり、平均粒子径が250nm以下、好ましくは40〜100nmであり、かつ、DBP吸収量が10〜300cm3/100g、好ましくは40
〜150cm3/100gである。このようなカーボンブラックとしては、FEF級、G
PF級、SRF級などの市販のカーボンブラックを用いることができる。カーボンブラック[B]は、ゴム組成物中において補強材として作用する。
【0061】
ここで、よう素吸着量およびDBP吸着量は、カーボンブラックの特性を示す代表的な指標であって、JISK6217に基づいて測定される。よう素吸着量は、カーボンブラックの細孔を含む全表面積の指標となる。またDBP吸収量はストラクチャーと相関があり、よう素吸着量とDBP吸着量は、それぞれこの特性値の高低がゴム組成物に配合した場合の補強性や押出特性、分散性、着色力、粘度、導電性に大きな影響を与える。
【0062】
粒子径は、カーボンブラック凝集対を構成する小さな球状成分を電子顕微鏡の画像により測定、算出した平均直径を示しており、ゴム組成物に配合した場合の補強性や黒色度と密接に関係している。
【0063】
このため、よう素吸着量、平均粒子径およびDBP吸収量のいずれかが上記条件から外れるカーボンブラックを用いた場合には、充分な補強性が得られないか、または、補強性は得られたとしてもゴム組成物の生地粘度が高くなりすぎ、LIM成形による成形性が悪化する場合がある。
【0064】
カーボンブラック[B]の配合量は、ゴム組成物を構成する樹脂成分100重量部に対して、1〜40重量部、好ましくは5〜30重量部であるのが好ましい。
[C]表面改質シリカ
本発明で用いられる表面改質シリカ[C]は、沈殿法シリカ(含水珪酸)を表面改質して得られるものであって、一次粒子径を示すBET比表面積が30〜80m2/g、好ま
しくは40〜60m2/gであり、二次粒子径の指標となるコールターカウンター法によ
る粒子径が1.0〜4.0μm、好ましくは1.5〜3.0μmであり、かつ、M値が50以上である。
【0065】
本発明で用いられる表面改質シリカ[C]の原料としては、沈殿法シリカ(含水珪酸)が用いられる。一般に、シリカとしては沈殿法シリカの他、ゲル法シリカ、乾式シリカ(非含水珪酸)、コロイダルシリカなどが知られているが、ゲル法シリカは凝集力が強く、二次(凝集)粒子が硬く離れ難いため分散性が悪く、BET比表面積が通常250〜900m2/gと大きいものであるため、ゴム組成物が増粘しやすく加工性が悪いという問題
がある。コロイダルシリカは、一般に一次粒径が大きく、BET比表面積も小さいため加工性は良好であるが、粒子そのものが単分散であるためゴム組成物への補強性付与効果が期待できないという問題がある。また乾式シリカは、二次(凝集)粒子がほぐれやすい反面、ゴムへの分散性に劣り、BET比表面積も通常100〜400m2/g程度と比較的
高いため、加工性が十分でないという問題がある。このため本願発明の表面改質シリカ[C]の原料としては、沈殿法シリカが最も適切である。
【0066】
沈殿法シリカの表面改質処理としては、たとえば、ヘキサメチルジシラザン、クロロシラン、アルコキシシラン、ジメチルジクロロシラン、オクチルシラン、ジメチルシリコーンオイルなどによる表面処理が挙げられる。これらの表面処理によって、表面改質シリカ[C]を添加した場合のゴム組成物の増粘抑制効果が期待できる。
【0067】
また、本発明で用いる表面改質シリカ[C]は、上記表面処理に加え、表面処理したことによるシリカ表面の立体傷害を抑制するために、せん断破壊等の機械的処理を行ったものであってもよい。
【0068】
このようなシリカの表面改質処理度合は、M値で表され、本発明で用いる表面改質シリカ[C]はM値が50以上であることが望ましい。なおM値は、シリカの表面改質処理度合を示す一般的な指標であって、測定対象となるシリカにメタノール水溶液のメタノール濃度を変えて添加とした際、親和し始める(濡れ始める)時のメタノール水溶液濃度(メ
タノールのvol%)で表される値である。
【0069】
表面改質シリカ[C]の配合量は、ゴム組成物を構成する樹脂成分100重量部に対して20〜60重量部であるのが好ましい。
本発明において、表面改質シリカ[C]は、カーボンブラック[B]とともにゴム組成物の補強材として作用するが、これらの配合量が少なすぎる場合には、所望の補強性が得られず、また多すぎる場合には粘度が高くなりすぎてゴム組成物の成形性を損なう場合がある。
【0070】
本発明においては、補強材として、カーボンブラック[B]と、表面改質シリカ[C]とを併用することにより、ゴム組成物の補強性と成形性との両立が図れる。ゴム組成物の補強材としてカーボンブラック[B]のみを用いると、混練時にカーボンブラックの分散性が不十分であったり、架橋物にタック性(粘着性)が生じてゴム生地の取り扱い性が悪くなる場合がある。一方、補強性が得られるまで表面改質シリカ[C]のみを配合したゴム組成物では、低粘度化して加工性が著しく悪くなり、LIM成形が困難となる場合がある。
【0071】
[D]架橋剤
本発明のゴム組成物は、上述した共重合体[A]、カーボンブラック[B]および表面改質シリカ[C]に加えて、架橋剤[D]を含有することが望ましい。架橋剤[D]としては、公知のもの架橋剤を適宜用いてもよいが、共重合体[A]に対して相溶性あるいは良分散性を示す架橋剤を用いることが望ましく、特に共重合体[A]の非共役ポリエン成分が上述した式[I]で表されるノルボルネン系化合物である場合には、架橋点SiH基を有する化合物を用いることがより好ましい。
【0072】
架橋剤[D]として好適に用いられるSiH基を有する化合物としては、下記一般式[II]で表される一分子中にSiH基を2個有するSiH基含有化合物(1)、および、下記一般式[III]で表される一分子中にSiH基を3個有するSiH基含有化合物(2)
が挙げられる。
【0073】
【化5】

【0074】
(式[II]中、R3は炭素数1〜10の一価の基で、非置換あるいは置換の飽和単価水素
基または芳香族炭化水素基であり、1分子内で同種でも異種でもよく、aは0〜20の整数であり、bは0〜20の整数であり、R4は炭素数1〜30の二価の有機基または酸素
原子である。)
【0075】
【化6】

【0076】
(式[III]中、R5は炭素数1〜10の一価の基で、非置換あるいは置換の飽和炭化水素基または芳香族炭化水素基であり、1分子内で同種でも異種でもよく、a、bおよびcはそれぞれ独立に0〜20の整数であり、R6は炭素数1〜30の三価の有機基である。)
上記一般式[II]で表される一分子中にSiH基を2個有するSiH基含有化合物(1)のは、分子両末端にSiH基を有し、一分子あたりSiH基を2個有する。一般式[II]中、R3の具体例は、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、
アミル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、クロロメチル基、2−クロロエチル基、3−クロロプロピル基、フェニル基、フェニルメチル基、2−フェニルエチル基、2−フェニルプロピル基などが挙げられる。好ましくは、メチル基、エチル基、およびフェニル基である。aは0〜20の整数であり、bは0〜20の整数である。好ましくは、aおよびb共に10以下、より好ましくは5以下、特に好ましくは2以下であり、最も好ましくはaとbが等しく2以下である。
【0077】
以下に一般式[II]で表される一分子中にSiH基を2個有するSiH基含有化合物(1)の具体例を示す。一般式[II]におけるR4は、炭素数1〜30の二価の有機基また
は酸素原子であって、二価の有機基の具体的な例は、下記具体的化合物例中の二価の基に相当する。これらのSiH基含有化合物(1)は、単独でも2種以上混合して用いることができる。また、SiH基含有化合物(1)は、開示されている公知の方法によって合成することができる。
【0078】
【化7】

【0079】
【化8】

【0080】
【化9】

【0081】
【化10】

【0082】
【化11】

【0083】
【化12】

【0084】
【化13】

【0085】
【化14】

【0086】
これらのうち、本発明で特に好ましく用いられる、一分子中にSiH基を2個有するSiH基含有化合物(1)は、次式で表される化合物である。
【0087】
【化15】

【0088】
上記一般式[III]で表される一分子中にSiH基を3個有するSiH基含有化合物(
2)は、分子の3つの末端にSiH基を有し、一分子中にSiH基を3個有する。一般式[III]中のR5は、一般式[II]中R3と同様のものが例示され、具体的には、メチル基
、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、アミル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、クロロメチル基、2−クロロエチル基、3−クロロプロピル基、フェニル基、フェニルメチル基、2−フェニルエチル基、2−フェニルプロピル基などが挙げられる。好ましくは、メチル基、エチル基、およびフェニル基である。a、bおよびcは、それぞれ独立に0〜20の整数であり、好ましくは、a、bおよびcが共に10以下、より好ましくは5以下、特に好ましくは2以下であり、最も好ましくはa、bおよびcが等しく2以下である。一般式[III]中のR6は炭素数1〜30の三価の有機基であり、好ましくは、ケイ素を含有する炭素数1〜30の三価の有機基である。
【0089】
特に好ましい一分子中にSiH基を3個有するSiH基含有化合物(2)としては、次式で表される化合物を挙げることができる。
【0090】
【化16】

【0091】
本発明に係る架橋剤[D]は、これらのSiH基含有化合物(1)またはSiH基含有化合物(2)を含むことが好ましく、少なくともSiH基含有化合物(1)を含むことがより好ましく、SiH基含有化合物(1)とSiH基含有化合物(2)とを含むことが特に好ましい。
【0092】
架橋剤[D]がSiH基含有化合物(1)を単独で含有すると、ゴム組成物は、架橋密度をある程度抑制でき、成形体が伸び特性に優れるものとはなるが、低温時(−30℃)における弾性回復率(TR回復率)においては改良の余地がある。
【0093】
架橋剤[D]がSiH基含有化合物(2)を単独で含有すると、ゴム組成物は、三次元架橋し、機械強度などのゴム物性が向上する反面、回復性に劣るとともに、スコーチを起こしやすく成形時の取り扱い性が悪いなど、ゴム組成物を燃料電池シール材、LIM成形用ガスケット材、電線コネクターシール材などとして用いるには適当でない性状を示す場合がある点で改良の余地がある。
【0094】
架橋剤[D]がSiH基含有化合物(1)とSiH基含有化合物(2)とをともに含有すると、ゴム組成物は、成形性が良好で、耐熱性、バリア性、シール性に優れるとともに、高温時(150℃)における圧縮永久歪み率が低く、低温時(−30℃)における弾性回復率(TR回復率)に優れ、燃料電池シール材、LIM成形用ガスケット材、電線コネクターシール材などの用途に好適に用いることができる。
【0095】
架橋剤[D]がSiH基含有化合物(1)を含む場合、本発明のゴム組成物は、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[A]とゴム組成物を構成するその他の樹脂成分との合計量100重量部に対して、一分子中にSiH基を2個有するSiH基含有化合物(1)を好ましくは3.0〜7.0重量部、より好ましくは4.0〜6.5重量部含有することが望ましい。
【0096】
架橋剤[D]が一分子中にSiH基を3個有するSiH基含有化合物(2)を含有する場合、本発明のゴム組成物は、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[A]とゴム組成物を構成するその他の樹脂成分との合計量100重量部に対して、一分子中にSiH基を3個有するSiH基含有化合物(2)を好ましくは0.1〜2.0重量部、より好ましくは0.2〜1.0重量部含有することが望ましい。
【0097】
本発明では、架橋剤[D]が一分子中にSiH基を2個有するSiH基含有化合物(1)と一分子中にSiH基を3個有するSiH基含有化合物(2)とを含み、ゴム組成物が、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[A]とゴム組成物を構成するその他の樹脂成分との合計量100重量部に対して、SiH基含有化合物(1)を好ましくは3.0〜7.0重量部、より好ましくは4.0〜6.5重量部含有し、かつ、SiH基
含有化合物(2)を好ましくは0.1〜2.0重量部、より好ましくは0.2〜1.0重量部含有することが特に好適である。
【0098】
ゴム組成物
本発明のゴム組成物は、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[A]を必須成分とする樹脂成分と、カーボンブラック[B]および表面改質シリカ[C]を含有し、必要に応じて架橋剤[D]、さらに必要に応じて後述する触媒、反応抑制剤、従来公知の無機充填剤、軟化剤、老化防止剤、加工助剤、加硫促進剤、有機過酸化物、架橋助剤、発泡剤、着色剤、分散材、難燃剤などのその他の成分を含有している。
【0099】
・ゴム組成物の調製
本発明のゴム組成物は、たとえば、バンバリーミキサー、ニーダー、プラネタリーミキサー、インターミックスのようなインターナルミキサー(密閉式混合機)類、2本ロール、3本ロールなどの混練装置により、共重合体[A]および必要に応じてその他の樹脂成分を、カーボンブラック[B]および表面改質シリカ[C]を含むゴム補強剤、必要に応じて添加される無機充填剤、軟化剤などのその他の成分と共に、好ましくは50〜180℃の温度で3〜10分間混練した後、オープンロールのようなロール類、あるいはニーダーを使用して、SiH基含有化合物などの架橋剤[D]を、また必要に応じて後述する触媒や反応抑制剤、更には加硫促進剤、架橋助剤を追加混合し、ロール温度100℃以下で1〜30分間混練した後、分出しすることにより調製することができる。
【0100】
また、インターナルミキサー類での混練温度が低い場合は、ゴム組成物を構成する全成分を同時に混合して混練してもよい。
架橋方法
・触媒
本発明のゴム組成物の製造において、SiH基含有化合物などの架橋剤[D]を用いて架橋する場合、架橋で用いられる触媒は付加反応触媒であり、共重合体[A]を含む樹脂成分のアルケニル基などと、SiH基含有化合物のSiH基との付加反応(アルケンのヒドロシリル化反応など)を促進するものである。
【0101】
このような触媒としては、通常、たとえば白金系触媒、パラジウム系触媒、ロジウム系触媒等の白金族元素よりなる付加反応用触媒が用いられるが、本発明においては、白金系触媒が好ましい。白金系触媒を含めて周期律表8族元素金属、特に好ましくは白金と、ビニル基および/またはカルボニル基を含む化合物との錯体を用いることが望ましい。
【0102】
カルボニル基を含む化合物としては、カルボニル、オクタナル等が好ましい。これらと白金との錯体としては、具体的には、白金−カルボニル錯体、白金−オクタナル錯体、白金−カルボニルブチル環状シロキサン錯体、白金−カルボニルフェニル環状シロキサン錯体などが挙げられる。
【0103】
ビニル基を含む化合物としては、ビニル基含有オルガノシロキサンが好ましい。これらと白金との錯体としては、具体的には、白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体、白金−ジビニルテトラエチルジシロキサン錯体、白金−ジビニルテトラプロピルジシロキサン錯体、白金−ジビニルテトラブチルジシロキサン錯体、白金−ジビニルテトラフェニルジシロキサン錯体が挙げられる。
【0104】
ビニル基含有オルガノシロキサンの中でも、ビニル基含有環状オルガノシロキサンが好ましい。これらと白金との錯体としては、白金−ビニルメチル環状シロキサン錯体、白金−ビニルエチル環状シロキサン錯体、白金−ビニルプロピル環状シロキサン錯体が挙げられる。
【0105】
ビニル基含有オルガノシロキサンは、それ自体を金属に対する配位子としてもよいが、他の配位子を配位させる際の溶媒として用いてもよい。ビニル基含有オルガノシロキサンを溶媒として用い、前述のカルボニル基を含む化合物を配位子とする錯体は、触媒として特に好ましい。
【0106】
このような錯体としては、具体的には、白金−カルボニル錯体のビニルメチル環状シロキサン溶液、白金−カルボニル錯体のビニルエチル環状シロキサン溶液、白金−カルボニル錯体のビニルプロピル環状シロキサン溶液、白金−カルボニル錯体のジビニルテトラメチルジシロキサン溶液、白金−カルボニル錯体のジビニルテトラエチルジシロキサン溶液、白金−カルボニル錯体のジビニルテトラプロピルジシロキサン溶液、白金−カルボニル錯体のジビニルテトラブチルジシロキサン溶液、白金−カルボニル錯体のジビニルテトラフェニルジシロキサン溶液が挙げられる。
【0107】
これらの錯体からなる触媒は、ビニル基および/またはカルボニル基を含む化合物以外の成分を更に含んでいてもよい。たとえばビニル基および/またはカルボニル基を含む化合物以外の溶媒を含んでいてもよい。これらの溶媒としては、各種アルコールや、キシレン等を挙げることができるが、これらに制限されるものではない。
【0108】
アルコールとして具体的には、メタノールやエタノールで代表される脂肪族飽和アルコール類;アリルアルコール、クロチルアルコール等の脂肪族不飽和アルコール類;シクロペンタノール、シクロヘキサノール等の脂環式アルコール類;ベンジルアルコール、シンナミルアルコール等の芳香族アルコール類;フルフリルアルコール等の複素環式アルコール類などが挙げられる。
【0109】
アルコールを溶媒として用いた例として、白金−オクタナル/オクタノール錯体が挙げられる。これらの溶媒を含むことにより、触媒の取扱いや、ゴム組成物への混合が容易になる等の利点が生ずる。
【0110】
以上に挙げた各種触媒のうちで、白金−カルボニル錯体のビニルメチル環状シロキサン溶液(中でも下記化学式1で示される錯体が好ましい)、白金−ビニルメチル環状シロキサン錯体(中でも化学式2で示される錯体が好ましい)、白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体(中でも化学式3で示される錯体が好ましい)、白金−オクタナル/オクタノール錯体等が実用上好ましく、その中でも、白金−カルボニルビニルメチル環状シロキサン錯体が特に好ましい。
【0111】
化学式1: Pt0・CO・(CH2=CH(Me)SiO)4
化学式2: Pt0・(CH2=CH(Me)SiO)4
化学式3: Pt0−1.5[(CH2=CH(Me)2Si)2O]
これらの触媒に含まれる周期律表8族元素金属(好ましくは白金)の割合は、通常0.1〜10重量%、好ましくは1〜5重量%、さらに好ましくは2〜4重量%、特に好ましくは2.5〜3.5重量%である。
【0112】
触媒は、特に限定されるものではないが、樹脂成分全体、すなわち共重合体[A]と必要に応じて添加されるその他の樹脂成分との合計に対して、0.1〜100,000重量ppm、好ましくは0.1〜10,000重量ppm、さらに好ましくは0.1〜5,000重量ppm、特に好ましくは5〜1,000重量ppmの割合で用いられる。上記範囲内の割合で触媒を用いると、架橋密度が適度で、強度特性および伸び特性に優れる架橋ゴム成形体を形成できるゴム組成物が得られる。100,000重量ppmを超える割合で触媒を用いると、コスト的に不利になるので好ましくない。触媒を含まないゴム組成物
の未架橋ゴム成形体に、光、γ線、電子線等を照射して架橋ゴム成形体を得ることもできる。
【0113】
本発明のゴム組成物の架橋においては、上記触媒の他に有機過酸化物を使用して、付加架橋とラジカル架橋の両方を行ってもよい。有機過酸化物は、樹脂成分100重量部に対し、0.1〜10重量部程度の割合で用いられる。有機過酸化物としては、ゴムの架橋の際に通常使用されている従来公知の有機過酸化物を使用することができる。
【0114】
・反応抑制剤
架橋においては、上記の触媒とともに反応抑制剤を用いることが好ましい。反応抑制剤は、ベンゾトリアゾール、(たとえばエチニルシクロヘキサノール等のエチニル基含有アルコール類、アクリロニトリル、N,N−ジアリルアセトアミド、N,N−ジアリルベンズアミド、N,N,N',N'−テトラアリル−o−フタル酸ジアミド、N,N,N',N'−テトラアリル−m−フタル酸ジアミド、N,N,N',N'−テトラアリル−p−フタル酸ジアミド
等のアミド化合物、イオウ、リン、窒素、アミン化合物、イオウ化合物、リン化合物、スズ、スズ化合物、テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン、ハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物などが挙げられる。
【0115】
反応抑制剤は、共重合体[A]と必要に応じてその他の樹脂成分との合計100重量部に対して、0〜50重量部、通常0.0001〜50重量部、好ましくは0.0001〜30重量部、より好ましくは0.0001〜20重量部、さらに好ましくは0.0001〜10重量部、特に好ましくは0.0001〜5重量部の割合で用いられる。50重量部を超える割合で反応抑制剤を用いると、コスト的に不利になるので好ましくない。
【0116】
本発明のゴム組成物中には、意図する架橋物の用途等に応じて、カーボンブラック[B]あるいは表面改質シリカ[C]以外の従来公知のゴム補強剤、無機充填剤、軟化剤、老化防止剤、加工助剤、加硫促進剤、有機過酸化物、架橋助剤、発泡剤、発泡助剤、着色剤、分散剤、難燃剤などの添加剤を、本発明の目的を損なわない範囲で配合することができる。充填剤や配合剤として代表例を取上げ、以下により具体的に説明する。
【0117】
(i)ゴム補強剤
ゴム補強剤は、架橋(加硫)ゴムの引張強度、引き裂き強度、耐摩耗性などの機械的性質を高める効果がある。本発明のゴム組成物は、カーボンブラック[B]および表面改質シリカ[C]を含有するため、その他のゴム補強材を含有しなくとも充分な補強効果が得られるが、添加できるその他のゴム補強剤としては、具体的には、前記カーボンブラック[B]以外のカーボンブラック、表面改質シリカ[C]以外のシリカ、微粉ケイ酸などが挙げられる。
【0118】
これらのゴム補強剤の種類および配合量は、その用途により適宜選択できるが、ゴム補強剤の配合量([B]成分および[C]成分量を含む)は、通常、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[A]と必要に応じて添加されるその他の樹脂成分との合計100重量部に対して、最大300重量部、好ましくは最大200重量部である。
【0119】
(ii)無機充填剤
無機充填剤の具体的は、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、タルク、クレー、ケイ藻土などが挙げられる。これらの無機充填剤は、単独であるいは2種以上組み合わせて用いることができる。これらの無機充填剤の種類および配合量は、その用途により適宜選択できるが、無機充填剤の配合量は通常、共重合体[A]と必要に応じて添加されるその他の樹脂成分との合計100重量部に対して、1〜最大300重量部、好ましくは最大200重量部である。
【0120】
(iii)軟化剤
軟化剤は、通常ゴムに使用される公知の軟化剤を用いることができる。具体的には、プロセスオイル、潤滑油、パラフィン、流動パラフィン、石油アスファルト、ワセリン等の石油系軟化剤、コールタール、コールタールピッチ等のコールタール系軟化剤、ヒマシ油、アマニ油、ナタネ油、ヤシ油等の脂肪油系軟化剤、蜜ロウ、カルナウバロウ、ラノリン等のロウ類、リシノール酸、パルミチン酸、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸亜鉛等の脂肪酸および脂肪酸塩、石油樹脂、アタクチックポリプロピレン、クマロンインデン樹脂等の合成高分子類、およびその他としてトール油やサブを挙げることができる。中でも石油系軟化剤が好ましく用いられ、特にプロセスオイルが好ましく用いられる。これらの軟化剤の配合量は、架橋物の用途により適宜選択される。これらの軟化剤は、単独であるいは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0121】
(iv)老化防止剤
本発明では、耐熱性向上の目的で老化防止剤を用いてもよい。老化防止剤としては、従来公知の老化防止剤を特に制限なく用いることができ、たとえば、アミン系、ヒンダードフェノール系、またはイオウ系老化防止剤などが挙げられる。老化防止剤の量は、本発明の目的を損なわない範囲で用いられる。また、下記で例示する老化防止剤は、アミン系、ヒンダードフェノール系、およびイオウ系において、同一系内でも異種系間においても、単独でもあるいは2種以上組み合わせても用いることができる。
【0122】
アミン系老化防止剤は、ジフェニルアミン類、フェニレンジアミン類などが挙げられる。特に4,4'−(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、N,N'− ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミンが好ましい。
【0123】
ヒンダードフェノール系老化防止剤は、特に、テトラキス[メチレン−3−(3',5'−ジ−t− ブチル−4'−ヒドロキシフェニル)プロピオネートメタン、および3,9−ビ
ス[2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンのフェノール化合物が好ましい。
【0124】
イオウ系老化防止剤は、特に、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾールの亜鉛塩、2−メルカプトメチルベンゾイミダゾール、2−メルカプトメチルベンゾイミダゾールの亜鉛塩、ペンタエリスリトール−テトラキス−(β−ラウリル−チオプロピオネート)が好ましい。
【0125】
(v)加工助剤
加工助剤は、通常のゴムの加工に使用される公知化合物を使用することができる。具体的には、リシノール酸、ステアリン酸、パルチミン酸、ラウリン酸等の高級脂肪酸;ステアリン酸バリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の高級脂肪酸の塩;リシノール酸、ステアリン酸、パルチミン酸、ラウリン酸等の高級脂肪酸のエステル類などが挙げられる。加工助剤の量は、共重合体[A]と必要に応じて添加されるその他の樹脂成分との合計100重量部に対して、10重量部以下、好ましくは5重量部以下の割合で用いられるが、要求される物性値に応じて適宜最適量を決定することが望ましい。
【0126】
(vi)架橋助剤
本発明のゴム組成物の架橋において、有機過酸化物を使用する場合は、架橋助剤を併用することが好ましい。架橋助剤の具体例は、イオウ、p−キノンジオキシム等のキノンジオキシム系化合物、ポリエチレングリコールジメタクリレート等のメタクリレート系化合物、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート等のアリル系化合物、マレイミド系化
合物、ジビニルベンゼンなどが挙げられる。このような架橋助剤は、使用する有機過酸化物1モルに対して0.5〜2モル、好ましくは約等モルの量で用いられる。
<燃料電池シール材、ハードディスクドライブトップカバーガスケット、電線コネクター用シール材>
成形・架橋法
上述した本発明のゴム組成物は、機械特性に優れ、耐熱性にも優れるため、燃料電池シール材、ハードディスクドライブトップカバーガスケット、および電線コネクター用シール材等の用途に特に好適に用いることができる。本発明のゴム組成物は、特にLIM成形用に好適であるが、その他の成形方法によって成形体を製造することもできる。
【0127】
本発明の燃料電池シール材、ハードディスクドライブトップカバーガスケット、および電線コネクター用シール材(以下、本発明の各材と略す)は、架橋ゴム成形体として用いた場合に最もその特性を発揮することができる。
【0128】
本発明のゴム組成物から架橋ゴム成形体を製造するには、通常一般のゴムを加硫(架橋)するときと同様に、未架橋のゴム組成物を上記で示した調製法により一度調製し、次いでゴム組成物を意図する形状に成形した後に架橋することが好適である。
【0129】
上記のようにして調製された本発明の組成物は、LIM成形機、インジェクション成形機、トランスファー成形機、プレス成形機、押出成形機、カレンダーロ−ル、インクジェット成形機、スクリーン印刷機などを用いる種々の成形法より、意図する形状に成形される。これらの中でも、LIM成形機は、厚薄精度、高速成形の点から目的とする本発明の各材を製造するに好適である。また、射出成形や圧縮成形も好適である。
【0130】
架橋は、成形と同時にまたは成形物を加硫槽内に導入して実施できる。
たとえば、3本ミルロール、オープンロール、2本オープンロール、バンバリーミキサー、インターナルミキサー、ニーダー、プラネタリーミキサー、高せん断型ミキサー等の各種混練装置を用いて混合された本発明のゴム組成物を、80〜230℃、好ましくは100〜180℃の架橋条件で成形し、架橋成形されたものを、必要に応じて約100〜230℃、好ましくは約120〜150℃で約0.5〜24時間程度、ギアオーブンや恒温槽などのエアオーブンで熱処理(二次加硫)することにより、成形・架橋を行うことができる。また、架橋あるいは二次架橋(二次加硫)は、光、γ線、電子線などを照射して行ってもよく、架橋を常温で行うこともできる。上記した方法により架橋ゴム成形体、すなわち本発明の各材が得られる。
【0131】
この架橋の段階は金型を用いてもよいし、また金型を用いないで架橋を実施してもよい。金型を用いない場合は成形、架橋の工程は通常連続的に実施される。加硫槽における加熱方法としては、熱空気、ガラスビーズ流動床、UHF(極超短波電磁波)、スチームなどの加熱槽を用いることができる。
【0132】
LIM成形
本発明のゴム組成物を特にLIM成形に適用する場合は、共重合体[A]を含む樹脂成分と架橋剤を含有する組成物と、共重合体[A]を含む樹脂成分と触媒とを含有する組成物とを調製し、LIM成形装置で両者を混合して本発明のゴム組成物とするとともに成形することが好ましい。ここで、樹脂成分、架橋剤および触媒以外の成分は、どちらの組成物中に含有されてもよく、両者に含有されてもよい。
【0133】
材料の粘度等にもよるが、具体的には、たとえば、バンバリーミキサー、ニーダー、インターミックスのようなインターナルミキサー(密閉式混合機)類やプラネタリーミキサーのような攪拌機により、共重合体[A]、その他の樹脂成分、[B]、[C]成分を含
むゴム補強剤、架橋剤、無機充填剤および軟化剤などの添加剤を3〜10分間混練し、液状ゴム組成物(1)を調製する。一方、共重合体[A]、その他の樹脂成分、ゴム補強剤、無機充填剤、軟化剤などの添加剤および上記触媒、必要に応じて反応抑制剤を3〜10分混練して液状ゴム組成物(2)を調製する。必要に応じて、脱泡を行う。続いて、これら液状ゴム組成物(1)と液状ゴム組成物(2)とをLIM成形装置に直接接続可能な専用のペール缶または直接接続可能なカートリッジに入れ、計量、混合装置を経てLIM成形を施すことにより、本発明の各材を得ることができる。
【0134】
燃料電池シール材
燃料電池では、セルをシールすることが重要であり、このシールは、特にガスバリヤ性等に優れている必要がある。シールの形状を図面で一例を説明する。
【0135】
シール材は、例えば、図1および図2の符号3で示されるような形状を有している。また、該シール材の平面形状は、図1において符号3で示すよう平面外形形状を有している。図1、図2中の符号1はカーボン、金属製あるいは樹脂製セパレーターを示し、符号3はシール材部を示し、図1中の符号2は空隙を示す。
【0136】
本発明の燃料電池シール材は、発泡などによる空隙を有さない、いわゆるボイドフリーであることが好ましい。
本発明の燃料電池シール材の体積固有抵抗は、1×1010オーム・cm以上であることが望ましい。体積固有抵抗は、電気・電子部品に用いられるシール材に求められる特性の一つで、電気絶縁性の指標である。より好ましくは、1×1012オーム・cm以上であり、シール材として好適な性能を示す。体積固有抵抗は、ゴム組成物を圧力40kgf/cm2で、150℃で10分間プレス架橋して得られた厚さ1mmのシートを用いて、SR
IS2301-1969に従い測定する。
【0137】
本発明の燃料電池は、このような本発明の燃料電池シール材を有する。
ハードディスクドライブトップカバーガスケット
本発明のハードディスクドライブトップカバーガスケットは、上述の方法で得られた圧縮永久歪みが50%以下である架橋ゴムシートをガスケット部に有することが好ましく、製品でのシール性が充分となる。また、引張強度は2MPa以上、引張破断伸びは200%以上であることが好ましく、製造工程で容易にちぎれたりする不具合が少なくなる。更に、この架橋ゴムシートの硬度(JIS K6253)は70度未満であることが好ましく、硬度が70度以上ではカバー一体型ガスケットを本体に取り付けたときの反力が大きくなり、カバーの変形が生じ、完全に密閉できなくなり、ガスケットとしてのシール性が劣る場合がある。硬度は、10度以上であることが好ましく、10度未満では、ガスケットがちぎれ易い、粘着し易いなどの不具合が生じる。最も好ましい硬度は20〜40度である。
【0138】
ハードディスクドライブトップカバーとガスケットとの一体化の際に用いる接着剤としては、エポキシ樹脂系またはフェノール樹脂系接着剤、イソシアネート系またはシラン系のカップリング剤などが挙げられる。接着剤の塗布方法としては、浸漬塗布、スプレー塗布、スクリーン印刷、刷毛塗り、スタンプ方式など必要に応じて最適な方法を選択する。
【0139】
本発明のハードディスクドライブトップカバーガスケットは、発泡などによる空隙を有さない、いわゆるボイドフリーであることが好ましい。
電線コネクター用シール材
本発明の電線コネクターシール材は、上述の本発明のゴム組成物からなるものであって、例えば、固体高分子型(固体高分子電解質型)電線コネクターシール材であることが好ましい。
【0140】
本発明の電線コネクターシールでは、その硬化物層の表面硬度を示すデュロA硬さは、45以下にすることが好ましい。デュロA硬さとは、硬度の指標であり、JIS K6253に従い測定することができる。デュロA硬さを45以下にするためには、組成物中への各種補強剤、充填剤、可塑剤などの添加割合を種種調節することによって可能であり、これらの各種添加剤を添加しないものも所望の低硬度を示している。下限は5以上であり、下限を超えるとやわらかすぎ、電線コネクタ−をシ−ルする性能が劣る。ただし、補強剤、充填剤として、例えば硫黄やハロゲン化合物のように触媒毒となるような物質を含有するものは好ましくない。
【0141】
本発明の電線コネクターは、このような本発明の電線コネクター用シールを有する。本発明に係る電線コネクターは、特に自動車用電線コネクターであることが望ましい。
実施例
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0142】
[実施例1]
エチレン・プロピレン・5−ビニル−2−ノルボルネンランダム共重合体(三井化学(株)製 PX−062、エチレン含量:52.7重量%、VNB含量:4.7重量%、25℃における複素粘度(Anton Paar社(オーストラリア)製の粘弾性装置 MCR301
を用いて測定した複素粘度):1100Pa・S、135℃のデカリン溶液中で測定した極限粘度[η]:0.28dl/g)100重量部と、カーボンブラック(旭カーボン社製 旭#50HG、ヨウ素吸着量:19mg/g、平均粒子径85μm、DBP吸収量:
110cm3/100g)15重量部と、表面処理した沈殿法シリカ1(東ソー・シリカ
社製E75SS、BET表面積:50m2/g、二次粒子径(コールターカウンター法に
より求めた平均粒子径):2.4μm、M値:65)30重量部とを、容量2リットルのプラネタリーミキサー[(株)井上製作所製、商品名:PLM−2型]で50〜80℃の範囲内で混練し、次いでこれに、老化防止剤として3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ・
フェニル)プロピオン酸ステアレート 0.4重量部(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製 Irganox 1076)、触媒として白金−1,3,5,7−テトラビニルメチルシクロシロキサン錯体[白金濃度0.5重量%、末端ビニルシロキサンオイル溶液]0.4重量部、反応抑制剤として1−エチニル−1−シクロヘキサノール0.1重量部、下記式(1)で表される化合物(以下、架橋剤1という)を5重量部、および、下記式(2)で表される化合物(以下、架橋剤2という)を0.3重量部加えて、三本ロールミルにてゴム組成物を調製した。
【0143】
【化17】

【0144】
得られたゴム組成物をテストシート型(140×100×2mm)に流し込み、熱板設定温度150℃、型圧縮80MPaにて5分間圧縮成形して架橋ゴムシートを得て、さら
にエアオーブン中で150℃、1時間の二次加硫を実施して架橋ゴムシートを得た。
【0145】
得られた架橋ゴムシートの各性状を以下の方法で測定あるいは評価した。結果を表1に示す。
(1)硬さ
JIS K6253に準拠して、測定温度23℃でデュロメータ法でA硬さを測定した。
(2)引張試験
JIS K6251に準拠して、測定温度23℃、引張速度500mm/分の条件で引張試験を行ない、架橋シートの破断時の引張強度と伸びを測定した。
(3)複素粘度(ゼロせん断粘度)
ゴム組成物の複素粘度を、Anton Paar社(オーストラリア)製の粘弾性装置 MCR3
01を用いて、25℃にて測定した。なお、良好な成形性を得るためには、5000Pa・sec以下が好ましい。
(4)圧縮永久歪み
JIS K6262(1997)に準拠して、2mmシ−トを3枚積層して、空気中、150℃×70時間の圧縮永久歪みを測定し、圧縮永久歪み率を求めた。測定条件は、高温時が150℃×70〜500時間の高温処理後である。
【0146】
なお、家庭向けの定置用燃料電池シール材としては90℃40,000時間の性能が求められているが、研究の結果、50℃500時間の評価で加速的に充分な評価ができることがわかった。すなわち、150℃500時間で80%未満であれば90℃40,000時間の性能を満足できる。
(5)TR回復率
JIS K6261に準拠して、−30℃での低温弾性回復試験(TR試験)を行い、TR回復率を求めた。なお、回復率55%以下では、低温性を満足できない。
(6)熱間特性(90℃)
JIS K6251に準拠して、測定温度90℃、引張速度500mm/分の条件で引張試験を行い、架橋シートの破断時の引張強度と伸びを測定した。なお、90℃における破断伸びが200%未満では、性能を満足させることはできない。
【0147】
[実施例2]
実施例1において、架橋剤2を使用しなかったことのほかは、実施例1と同様にして架橋ゴムシートを製造し、性状を評価した。結果を表1に示す。
【0148】
[実施例3]
実施例1において、架橋剤1の使用量を6.5重量部、架橋剤2の使用量を0.3重量部としたことのほかは、実施例1と同様にして架橋ゴムシートを製造し、性状を評価した。結果を表1に示す。
【0149】
[実施例4]
実施例1において、架橋剤1の使用量を7重量部とし、架橋剤2の使用量を1重量部としたことのほかは、実施例1と同様にして架橋ゴムシートを製造し、性状を評価した。結果を表1に示す。
【0150】
[実施例5]
実施例1において、架橋剤1の使用量を3.5重量部とし、架橋剤2の使用量を1重量部としたことのほかは、実施例1と同様にして架橋ゴムシートを製造し、性状を評価した。結果を表1に示す。
【0151】
[実施例6]
実施例1において、表面改質シリカとして、表面処理した沈殿法シリカ1に替えて、表面処理した沈殿法シリカ2(東ソー・シリカ社製E743SS、BET表面積:45m2
/g、二次粒子径:1.7μm、M値:65)30重量部を用いたことの他は、実施例1と同様にして架橋ゴムシートを製造し、性状を評価した。結果を表1に示す。
【0152】
[実施例7]
実施例1において、表面改質シリカとして、表面処理した沈殿法シリカ1に替えて、表面処理した沈殿法シリカ2(東ソー・シリカ社製E743SS、BET表面積:45m2
/g、二次粒子径:1.7μm、M値:65)30重量部を用い、架橋剤2を使用しなかったことのほかは、実施例1と同様にして架橋ゴムシートを製造し、性状を評価した。結果を表1に示す。
【0153】
[実施例8]
実施例1において、架橋剤1を使用せず、架橋剤2の使用量を5重量部としたことのほかは、実施例1と同様にして架橋ゴムシートを製造し、性状を評価した。結果を表1に示す。
【0154】
[比較例1]
実施例1において、表面処理した沈殿法シリカ1に替えて、表面処理を行っていない沈殿法シリカ3(東ソー・シリカ社製E75、BET表面積:54m2/g、二次粒子径:
2.3μm、M値:0)30重量部を用い、架橋剤2を使用しなかったことの他は、実施例1と同様にして架橋ゴムシートを製造し、性状を評価した。結果を表2に示す。
【0155】
[比較例2]
実施例1において、表面処理した沈殿法シリカ1に替えて、表面処理を行っていない沈殿法シリカ4(東ソー・シリカ社製E200、BET表面積:132m2/g、二次粒子
径:3.3μm、M値:0)30重量部を用い、架橋剤2を使用しなかったことの他は、実施例1と同様にして架橋ゴムシートを製造し、性状を評価した。結果を表2に示す。
【0156】
[比較例3]
実施例1において、表面改質シリカとして、表面処理した沈殿法シリカ1に替えて、表面処理した沈殿法シリカ5(東ソー・シリカ社製SS10、BET表面積:90m2/g
、二次粒子径:2.9μm、M値:65)30重量部を用い、架橋剤2を使用しなかったことの他は、実施例1と同様にして架橋ゴムシートを製造し、性状を評価した。結果を表2に示す。
【0157】
[比較例4]
実施例1において、表面改質シリカとして、表面処理した沈殿法シリカ1に替えて、表面処理した沈殿法シリカ6(東ソー・シリカ社製SS70、BET表面積:49m2/g
、二次粒子径:4.5μm、M値:65)30重量部を用い、架橋剤2を使用しなかったことの他は、実施例1と同様にして架橋ゴムシートを製造し、性状を評価した。結果を表2に示す。
【0158】
[比較例5]
実施例1において、表面改質シリカとして、表面処理した沈殿法シリカ1に替えて、表面処理した沈殿法シリカ6(東ソー・シリカ社製SS70、BET表面積:49m2/g
、二次粒子径:4.5μm、M値:65)30重量部を用いたことの他は、実施例1と同様にして架橋ゴムシートを製造し、性状を評価した。結果を表2に示す。
【0159】
[比較例6]
実施例1において、表面改質シリカとして、表面処理した沈殿法シリカ1に替えて、表面処理した沈殿法シリカ7(東ソー・シリカ社製SS30P、BET表面積:110m2
/g、二次粒子径:8.5μm、M値:55)30重量部を用い、架橋剤2を使用しなかったことの他は、実施例1と同様にして架橋ゴムシートを製造し、性状を評価した。結果を表2に示す。
【0160】
[比較例7]
実施例1において、表面処理した沈殿法シリカ1に替えて、タルク(日本タルク(株)製L−1、BET比表面積:11m2/g、二次粒子径:4.9μm)40重量部を用い
、架橋剤2を使用しなかったことの他は、実施例1と同様にして架橋ゴムシートを製造し、性状を評価した。結果を表2に示す。
【0161】
[比較例8]
実施例1において、表面処理した沈殿法シリカ1に替えて、表面処理した焼成カオリン(BSAF社製Translink37、二次粒子径:1.4μm)40重量部を用い、架橋剤2を使用しなかったことの他は、実施例1と同様にして架橋ゴムシートを製造し、性状を評価した。結果を表2に示す。
【0162】
なお、上記実施例、比較例で用いたシリカ、タルク類の性状を表3に示す。
【0163】
【表1】

【0164】
【表2】

【0165】
【表3】

【0166】
以上の結果より、架橋剤2を多量に配合した実施例8では、架橋ゴムシートの製造は可能なものの、90℃における破断伸びが小さく、圧縮割れの可能性が高くなることがわかる。平均粒子径の大きいシリカを配合した比較例4および比較例5では、低温特性が悪いことがわかる。比較例1〜3および比較例6では、組成物の粘度が高く、成形性が不十分
となる場合があることがわかる。また、表面処理した沈殿法1以外の充填剤を用いた比較例7および比較例8では、長期のCSに劣ることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0167】
本発明のゴム組成物は、LIM成形用に好適であって、燃料電池シール材、ハードディスクドライブトップカバーガスケット材等の各種ガスケット材、および電線コネクター用シール材等に好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0168】
【図1】図1は、燃料電池用セパレーター一体型セルシール部品の一例を示す斜視図である。
【図2】図2は、図1におけるA−Aにおける模式断面図である。
【符号の説明】
【0169】
1:燃料電池用セパレーター一体型セルのカーボン、金属製あるいは樹脂製セパレーター2:空隙
3:セルのシール部品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(a)〜(e)を満足するエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[A]と、
(a)エチレンと、α−オレフィンと、非共役ポリエンとの共重合体であり、
(b)α−オレフィンの炭素数が3〜20であり、
(c)エチレン単位/α−オレフィン単位の重量比が35/65〜95/5であり、
(d)よう素価が0.5〜50の範囲であり、
(e)135℃のデカリン溶液中で測定した極限粘度[η]が0.01〜5.0dl/gである;
よう素吸着量が80mg/g以下であり、平均粒子径が250nm以下であり、かつ、DBP吸収量が10〜300cm3/100gであるカーボンブラック[B]と、
沈殿法シリカを表面改質して得られる、BET比表面積が30〜80m2/gであり、
コールターカウンター法による粒子径が1.0〜4.0μmであり、かつ、M値が50以上である表面改質シリカ[C]と
を含有してなることを特徴とするゴム組成物。
【請求項2】
エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[A]が、さらに下記(f)を満足することを特徴とする請求項1に記載のゴム組成物;
(f)非共役ポリエンが、下記の一般式[I]で表わされる少なくとも一種のノルボルネン化合物である。
【化1】

(式[I]中、nは0ないし10の整数であり、R1は水素原子または炭素原子数1〜1
0のアルキル基であり、R2は水素原子または炭素原子数1〜5のアルキル基である。)
【請求項3】
エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[A]とゴム組成物を構成するその他の樹脂成分との合計量100重量部に対して、カーボンブラック[B]を1〜40重量部、表面改質シリカ[C]を20〜60重量部含有することを特徴とする請求項1または2に記載のゴム組成物。
【請求項4】
ゴム組成物中の樹脂成分が、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[A]のみであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項5】
カーボンブラック[B]が、よう素吸着量が15〜40mg/g、平均粒子径が40〜100nm、DBP吸収量が40〜150cm3/100gを満たすことを特徴とする請
求項1〜4のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項6】
架橋剤[D]をさらに含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項7】
架橋剤[D]が、下記一般式[II]で表される、一分子中にSiH基を2個有するSiH基含有化合物(1)を含むことを特徴とする請求項6に記載のゴム組成物;
【化2】

(式[II]中、R3は炭素数1〜10の一価の基で、非置換あるいは置換の飽和単価水素
基または芳香族炭化水素基であり、1分子内で同種でも異種でもよく、aは0〜20の整数であり、bは0〜20の整数であり、R4は炭素数1〜30の二価の有機基または酸素
原子である。)。
【請求項8】
架橋剤[D]が、下記一般式[III]で表される、一分子中にSiH基を3個有するS
iH基含有化合物(2)を含むことを特徴とする請求項6または7に記載のゴム組成物;
【化3】

(式[III]中、R5は炭素数1〜10の一価の基で、非置換あるいは置換の飽和炭化水素基または芳香族炭化水素基であり、1分子内で同種でも異種でもよく、a、bおよびcはそれぞれ独立に0〜20の整数であり、R6は炭素数1〜30の三価の有機基である。)

【請求項9】
エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[A]とゴム組成物を構成するその他の樹脂成分との合計量100重量部に対して、一分子中にSiH基を2個有するSiH基含有化合物(1)を3.0〜7.0重量部含有することを特徴とする請求項7または8に記載のゴム組成物。
【請求項10】
エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[A]とゴム組成物を構成するその他の樹脂成分との合計量100重量部に対して、一分子中にSiH基を3個有するSiH基含有化合物(2)を0.1〜2.0重量部含有することを特徴とする請求項8または9に記載のゴム組成物。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載のゴム組成物からなる燃料電池シール材。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれかに記載のゴム組成物からなる燃料電池シール材を有する燃料電池。
【請求項13】
請求項1〜10のいずれかに記載のゴム組成物からなるハードディスクドライブトップカバーガスケット。
【請求項14】
請求項1〜10のいずれかに記載のゴム組成物からなるLIM成形用ガスケット材。
【請求項15】
請求項1〜10のいずれかに記載のゴム組成物からなるハードディスクドライブトップカバーガスケットを有するハードディスクドライブ。
【請求項16】
請求項1〜10のいずれかに記載のゴム組成物からなる電線コネクターシール材。
【請求項17】
請求項1〜10のいずれかに記載のゴム組成物からなる電線コネクターシール材を有する電線コネクター。
【請求項18】
自動車用電線コネクターであることを特徴とする請求項17に記載の電線コネクター。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−179783(P2008−179783A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−324439(P2007−324439)
【出願日】平成19年12月17日(2007.12.17)
【出願人】(000004385)NOK株式会社 (1,527)
【Fターム(参考)】