説明

ゴム組成物およびそれを用いたタイヤ

【課題】低燃費性とウェットグリップ性能に優れたタイヤを供することができるゴム組成物を提供する。
【解決手段】ゴム成分100質量%中に、共役ジエン化合物および/または芳香族ビニル化合物と特定の窒素含有化合物とを共重合して得られた重合体を5質量%以上含み、
該ゴム成分100質量部に対してカーボンブラックを1〜20質量部、シリカを5質量部以上含むことを特徴とするゴム組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物およびそれを用いたタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、省資源、省エネルギー、加えて、環境保護の立場から排出炭酸ガスの低減の社会的要求が強まっている。自動車に対しても排出炭酸ガスの低減を目的として、自動車の軽量化・電気エネルギーの利用等の様々な対応策が検討されている。自動車の共通の課題として、タイヤの転がり抵抗改善による燃費性能の向上が必要とされており、更に自動車に対しては、走行時の安全性向上の要求も強まっている。これら自動車の燃費性能及び安全性は使用されるタイヤの性能に負うところが大きく、自動車用のタイヤに対しては、省燃費性、操縦安定性、耐久性の改善要求が強まっている。これらのタイヤ特性は、タイヤの構造・使用材料等種々の要素に左右されるが、特に路面に接するトレッド部分に用いるゴム組成物の性能が低燃費性・安全性・耐久性等のタイヤ特性への寄与が大きい。このため、タイヤ用ゴム組成物の技術的改良が多く検討・提案され、実用化されている。
【0003】
例えば、タイヤトレッドのゴム性能として、低燃費性向上にはヒステリシスロスが小さいこと、ウェットグリップ性能向上にはウェットスキッド抵抗性が高いことが要求されている。しかしながら、低ヒステリシスロスとウェットスキッド抵抗性との関係は相反するものであり、一つだけの性能向上では問題点の解決は難しいのが現状である。タイヤ用ゴム組成物の改良の代表的な手法は、使用する原材料の改良であり、SBRやBRに代表される原料ゴムの構造の改良、カーボンブラック・シリカ等の補強充填剤、加硫剤、可塑剤等の構造や組成の改良が行われている。
【0004】
ヒステリシスロスの小さいゴムを得るために、特許文献1では、1,2−シンジオタクチックポリブタジエン結晶を含むポリブタジエンゴムおよびスズ変性ポリブタジエンゴムを含むゴム成分が開示されている。また、特許文献2では、(A)コバルト化合物、(B)有機アルミニウム化合物および(C)水からなる触媒を用いて、共役二重結合を有するジオレフィンを重合して得られたジエン系ゴムを、変性剤であるアミノ基とアルコキシ基とを含有する有機ケイ素化合物を用いて変性したジエン系重合体が開示されている。しかしながら、近年では、環境問題からタイヤの低燃費性に対する要求はますます厳しくなっており、上記の方法では低燃費性に対する要求を充分に満たすことができていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−63143号公報
【特許文献2】特開2000−344955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記課題を解決するものであって、低燃費性とウェットグリップ性能に優れたタイヤを供することができるゴム組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ゴム成分100質量%中に、共役ジエン化合物および/または芳香族ビニル化合物と下記一般式
【化1】

(式中、R及びRは水素、
【化2】

又は
【化3】

であり、少なくともR及びRのいずれかは水素ではない。Rは水素又は炭素数1〜4の炭化水素基を表す。Xは(CR、(CR1011−NR12−(CR1314、(CR1011−O−(CR1314、又は、(CR1011−S−(CR1314からなる飽和形環形成部を表す。Xは
【化4】

又は
【化5】

で置換されていてもよい。Zは(CR、(CR1011−NR12−(CR1314、(CR1011−O−(CR1314、又は、(CR1011−S−(CR1314からなる飽和形環形成部を表す。R〜Rは水素、炭素数1〜30の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜30の脂環族炭化水素基、炭素数5〜30の芳香族炭化水素基、又は環構成原子数3〜30の複素環基を表す。R〜Rは同じであっても異なっていてもよい。R及びR〜R14は水素、炭素数1〜30の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜30の脂環族炭化水素基又は炭素数5〜30の芳香族炭化水素基を表す。R及びR〜R14は同じであっても異なっていてもよい。lは3〜10の整数を表す。m及びnは1〜9の整数を表す。)
で表される窒素含有化合物とを共重合して得られた重合体を5質量%以上含み、該ゴム成分100質量部に対してカーボンブラックを1〜20質量部、シリカを5質量部以上含むことを特徴とするゴム組成物に関する。
【0008】
前記重合体における窒素含有化合物の含有量が0.05〜30質量%であることが好ましい。
【0009】
また、本発明は、前記ゴム組成物を用いて作製したタイヤに関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、特定の窒素化合物含有重合体、特定量のカーボンブラックおよびシリカを含有するので、低燃費性とウェットグリップ性能に優れたタイヤを供することができるゴム組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のゴム組成物は、ゴム成分100質量%中に、共役ジエン化合物および/または芳香族ビニル化合物と下記一般式
【化6】

(式中、R及びRは水素、
【化7】

又は
【化8】

であり、少なくともR及びRのいずれかは水素ではない。Rは水素又は炭素数1〜4の炭化水素基を表す。Xは(CR、(CR1011−NR12−(CR1314、(CR1011−O−(CR1314、又は、(CR1011−S−(CR1314からなる飽和形環形成部を表す。Xは
【化9】

又は
【化10】

で置換されていてもよい。Zは(CR、(CR1011−NR12−(CR1314、(CR1011−O−(CR1314、又は、(CR1011−S−(CR1314からなる飽和形環形成部を表す。R〜Rは水素、炭素数1〜30の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜30の脂環族炭化水素基、炭素数5〜30の芳香族炭化水素基、又は環構成原子数3〜30の複素環基を表す。R〜Rは同じであっても異なっていてもよい。R及びR〜R14は水素、炭素数1〜30の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜30の脂環族炭化水素基又は炭素数5〜30の芳香族炭化水素基を表す。R及びR〜R14は同じであっても異なっていてもよい。lは3〜10の整数を表す。m及びnは1〜9の整数を表す。)
で表される窒素含有化合物とを共重合して得られた重合体を5質量%以上含み、
該ゴム成分100質量部に対してカーボンブラックを100〜180質量部、軟化剤を50質量部以上含む。
【0012】
及びR〜R14が脂肪族炭化水素基である場合、炭素数は1〜30であり、好ましくは1〜5である。また、R及びR〜R14が脂環族炭化水素基である場合、炭素数は3〜30であり、好ましくは3〜10である。更に、R及びR〜R14が芳香族炭化水素基である場合、炭素数は5〜30であり、好ましくは5〜10である。
また、R及びR〜R14は、水素又は炭素数1〜2の脂肪族炭化水素基であることが好ましい。
【0013】
は、水素又は炭素数1〜2の炭化水素基であることが好ましい。
【0014】
〜Rが脂肪族炭化水素基である場合、炭素数は1〜30であり、好ましくは1〜10である。また、R〜Rが脂環族炭化水素基である場合、炭素数は3〜30であり、好ましくは3〜10である。更に、R〜Rが芳香族炭化水素基である場合、炭素数は5〜30であり、好ましくは5〜10である。そして、R〜Rが複素環基(芳香族複素環基を含む)である場合、環構成原子数は3〜30であり、好ましくは3〜10である。
また、R〜Rは、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基又は複素環基であることが好ましく、脂肪族炭化水素基であることがより好ましい。
【0015】
lの値は、3〜10であり、好ましくは3〜7である。m及びnの値は、1〜9であり、好ましくは1〜6である。
【0016】
lの値は3〜10であるため、(CR)は複数存在する。複数の(CR)のそれぞれは同じであっても異なってもよい。同様に、mが2以上の場合、複数の(CR1011)のそれぞれは同じであっても異なってもよく、nが2以上の場合、複数の(CR1314)のそれぞれは同じであっても異なってもよい。
【0017】
本明細書において、飽和形環形成部とは、飽和環基の一部であることを意味する。すなわち、上記一般式において、XとNとは飽和環基を構成し、ZとNとは飽和環基を構成する。
【0018】
前記重合体は、共役ジエン化合物および/または芳香族ビニル化合物と、前記一般式で表される窒素含有化合物とを共重合して得られた重合体である。前記一般式で表される窒素含有化合物を共重合すると、窒素とフィラーとの相互作用が生じ、フィラーの分散性が向上し、またポリマーの動きが拘束されることで、ヒステリシスロスが低減するという効果が得られる。
【0019】
前記共役ジエン化合物としては、例えば1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチルブタジエン、2−フェニル−1,3−ブタジエン、1,3−ヘキサジエンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよいが、これらの中で、モノマーの入手容易性などの実用面の観点から1,3−ブタジエン、イソプレンが特に好ましい。
【0020】
前記芳香族ビニル化合物としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、1−ビニルナフタレン、3−ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン、ジビニルベンゼン、4−シクロヘキシルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよいが、これらの中で、モノマーの入手容易性などの実用面からスチレンが特に好ましい。
【0021】
前記一般式で表される窒素含有化合物としては、例えば3−または4−(2−アゼチジノエチル)スチレン、3−または4−(2−ピロリジノエチル)スチレン、3−または4−(2−ピペリジノエチル)スチレン、3−または4−(2−ヘキサメチレンイミノエチル)スチレン、3−または4−(2−ヘプタメチレンイミノエチル)スチレン、3−または4−(2−オクタメチレンイミノエチル)スチレン、3−または4−(2−(2,5−ジメチルピロリジノ)エチル)スチレン、3−または4−(2−(2−メチルピペリジノ)エチル)スチレン、3−または4−(2−(3−メチルピペリジノ)エチル)スチレン、3−または4−(2−(4−メチルピペリジノ)エチル)スチレン、3−または4−(2−(2−エチルピペリジノ)エチル)スチレン、3−または4−(2−(4−(1−ピロリジニル)ピペリジノ)エチル)スチレン、3−または4−(2−(4−ピペリジノピペリジノ)エチル)スチレン、3−または4−(2−(2,6−ジメチルピペリジノ)エチル)スチレン、3−または4−(2−(3,3−ジメチルピペリジノ)エチル)スチレン、3−または4−(2−(3,5−ジメチルピペリジノ)エチル)スチレン、3−または4−(2−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジノ)エチル)スチレン、3−または4−(2−(4−ジメチルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジノ)エチル)スチレン、3−または4−(2−(1−メチルピペラジノ)エチル)スチレン、3−または4−(2−(1−エチルピペラジノ)エチル)スチレン、3−または4−(2−(1−メチルホモピペラジノ)エチル)スチレン、3−または4−(2−モルホリノエチル)スチレン、3−または4−(2−(2,6−ジメチルモルホリノ)エチル)スチレン、3−または4−(2−チアゾリジリノエチル)スチレン、3−または4−(2−トオモルホリノエチル)スチレン、3−または4−(2−ジメチルアミノエチル)スチレン、3−または4−(2−(N−エチルメチルアミノ)エチル)スチレン、3−または4−(2−ジエチルアミノエチル)スチレン、3−または4−(2−(N−メチルプロピルアミノ)エチル)スチレン、3−または4−(2−(N−メチルイソプロピルアミノ)エチル)スチレン、3−または4−(2−(N−エチルイソプロピルアミノ)エチル)スチレン、3−または4−(2−ジプロピルアミノエチル)スチレン、3−または4−(2−ジイソプロピルアミノエチル)スチレン、3−または4−(2−(N−メチルブチルアミノ)エチル)スチレン、3−または4−(2−(N−エチルブチルアミノ)エチル)スチレン、3−または4−(2−(N−メチル−tert−ブチルアミノ)エチル)スチレン、3−または4−(2−(N−tert−ブチルイソプロピルアミノ)エチル)スチレン、3−または4−(2−ジブチルアミノエチル)スチレン、3−または4−(2−(ジ−sec−ブチル)アミノエチル)スチレン、3−または4−(2−ジイソブチルアミノエチル)スチレン、3−または4−(2−(tert−アミル−tert−ブチルアミノ)エチル)スチレン、3−または4−(2−ジペンチルアミノエチル)スチレン、3−または4−(2−(N−メチルヘキシルアミノ)エチル)スチレン、3−または4−(2−ジヘキシルアミノエチル)スチレン、3−または4−(2−(tert−アミル−tert−オクチルアミノ)エチル)スチレン、3−または4−(2−ジオクチルアミノエチル)スチレン、3−または4−(2−ビス(2−エチルヘキシルアミノ)エチル)スチレン、3−または4−(2−ジデシルアミノエチル)スチレン、3−または4−(2−(N−メチルオクタデシルアミノ)エチル)スチレン、3−または4−(2−(N−メチルアニリノ)エチル)スチレン、3−または4−(2−ジフェニルアミノエチル)スチレン、3−または4−(2−(N−フェニルベンジルアミノ)エチル)スチレン、3−または4−(2−(N−フェニル−1−ナフチルアミノ)エチル)スチレン、3−または4−(2−(N−フェニル−2−ナフチルアミノ)エチル)スチレン、3−または4−(2−(N−ベンジルメチルアミノ)エチル)スチレン、3−または4−(2−(N−エチルベンジルアミノ)エチル)スチレン、3−または4−(2−(N−イソプロピルベンジルアミノ)エチル)スチレン、3−または4−(2−(N−ブチルベンジルアミノ)エチル)スチレン、3−または4−(2−(N−(tert−ブチル)ベンジルアミノ)エチル)スチレン、3−または4−(2−ジベンジルアミノエチル)スチレン、3−または4−(2−(N−メチルフェネチルアミノ)エチル)スチレン、3−または4−(2−(N−ベンジル−2−フェネチルアミノ)エチル)スチレン、3−または4−(2−(4−ベンジルピペリジノ)エチル)スチレン、3−または4−(2−(1−フェニルピペラジノ)エチル)スチレン、3−または4−(2−(1−ベンジルピペラジノ)エチル)スチレン、3−または4−(2−インドリノエチル)スチレン、3−または4−(2−(2−メチルインドリノ)エチル)スチレン、3−または4−(2−(1,2,3,4−テトラヒドロキノリノ)エチル)スチレン、3−または4−(2−(1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリノ)エチル)スチレン、3−または4−(2−フェノキサジノエチル)スチレン、3−または4−(2−フェノチアジノエチル)スチレン、3−または4−(2−アニリノピリジノエチル)スチレン、3−または4−(2−(2−ベンジルアミノピリジノ)エチル)スチレン、3−または4−(2−(2,2’−ジピリジルアミノ)エチル)スチレン、3−または4−(2−(2−メチルアミノ)ピリジノエチル)スチレン、3−または4−(2−(1−(2−ピリジル)ピペラジノ)エチル)スチレン、3−または4−(2−(2−(2−メチルアミノエチル)ピリジノ)エチル)スチレン、3−または4−(2−(4−(エチルアミノメチル)ピリジノ)エチル)スチレン、3−または4−(2−(4−(エチルアミノメチル)ピリジノ)エチル)スチレンなどがあげられる。これらは単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。これらの中では、性能改善の点で、3−または4−(2−ジメチルアミノエチル)スチレン、3−または4−(2−ピロリジノエチル)スチレン、3−または4−(2−ピペリジノエチル)スチレン、3−または4−(2−ヘキサメチレンイミノエチル)スチレン、3−または4−(2−モルホリノエチル)スチレン、3−または4−(2−チアゾリジリノエチル)スチレンなどが好ましい。
【0022】
本発明で使用する前記重合体は、前記窒素化合物を、共役ジエン化合物および/または芳香族ビニル化合物と共重合させることにより製造することができる。重合方法については特に制限はなく、溶液重合法、気相重合法、バルク重合法のいずれも用いることができるが、特に重合体の設計の自由度、加工性等の観点から溶液重合法が好ましい。また、重合形式は、回分式及び連続式のいずれであってもよい。溶液重合法においては、例えばリチウム化合物を重合開始剤とし、前記窒素化合物を、共役ジエン化合物および/または芳香族ビニル化合物とアニオン重合させることにより、目的の重合体を製造することができる。
【0023】
溶液重合法を用いた場合には、溶液中のモノマー濃度は、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましい。溶液中のモノマー濃度が5質量%未満では、得られる重合体の量が少なく、コストが高くなる傾向がある。また、溶液中のモノマー濃度は50質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましい。溶液中のモノマー濃度が50質量%をこえると、溶液粘度が高くなりすぎて撹拌が困難となり、重合しにくくなる傾向がある。
【0024】
アニオン重合を行う場合、重合開始剤としては特に制限はないが、有機リチウム化合物が好ましく用いられる。前記有機リチウム化合物としては、炭素数2〜20のアルキル基を有するものが好ましく、例えばエチルリチウム、n−プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、tert−オクチルリチウム、n−デシルリチウム、フェニルリチウム、2−ナフチルリチウム、2−ブチルーフェニルリチウム、4−フェニル−ブチルリチウム、シクロヘキシルリチウム、シクロペンチルリチウム、ジイソプロペニルベンゼンとブチルリチウムとの反応生成物などが挙げられるが、これらの中で、入手容易性、安全性等の観点からn−ブチルリチウムまたはsec−ブチルリチウムが好ましい。
【0025】
前記有機リチウム化合物を重合開始剤として用い、アニオン重合によって重合体を製造する方法としては、特に制限はなく、従来公知の方法を用いることができる。
【0026】
具体的には、反応に不活性な有機溶剤、例えば脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素化合物などの炭化水素系溶剤中において、共役ジエン化合物および/または芳香族ビニル化合物と一般式で表される窒素含有化合物を、前記リチウム化合物を重合開始剤として、必要に応じてランダマイザーの存在下でアニオン重合させることにより、目的の重合体が得られる。
【0027】
前記炭化水素系溶剤としては、炭素数3〜8のものが好ましく、例えばプロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、プロペン、1−ブテン、イソブテン、トランス−2−ブテン、シス−2−ブテン、1−ペンテン、2−ペンテン、1−ヘキセン、2−ヘキセン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどを挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0028】
また、前記ランダマイザーとは、重合体中の共役ジエン部分のミクロ構造制御、例えばブタジエンにおける1、2−結合、イソプレンにおける3、4−結合の増加など、あるいは重合体におけるモノマー単位の組成分布の制御、例えばブタジエン−スチレン重合体におけるブタジエン単位、スチレン単位のランダム化などの作用を有する化合物のことである。このランダマイザーとしては、特に制限はなく、従来ランダマイザーとして一般に使用されている公知の化合物の中から任意のものを用いることができる。例えば、ジメトキシベンゼン、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ビステトラヒドロフリルプロパン、トリエチルアミン、ピリジン、N−メチルモルホリン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、1,2−ジピペリジノエタンなどのエーテル類及び第三級アミン類などを挙げることができる。また、カリウム−t−アミレート、カリウム−t−ブトキシドなどのカリウム塩類、ナトリウム−t−アミレートなどのナトリウム塩類も用いることができる。これらのランダマイザーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、ランダマイザーの使用量は、有機リチウム化合物1モル当たり、0.01モル当量以上が好ましく、0.05モル当量以上がより好ましい。ランダマイザーの使用量が0.01モル当量未満では、添加効果が小さく、ランダム化しにくい傾向がある。また、ランダマイザーの使用量は、有機リチウム化合物1モル当たり1000モル当量以下が好ましく、500モル当量以下がより好ましい。ランダマイザーの使用量が1000モル当量をこえると、モノマーの反応速度が大きく変化してしまい、逆にランダム化しにくくなる傾向がある。
【0029】
本発明においては、この反応後に、必要に応じて、公知の老化防止剤や重合反応を停止する目的でアルコールなどを加えることができる。
【0030】
前記重合体における窒素含有化合物の含有量は0.05〜30質量%が好ましく、特に下限は0.1質量%が、上限は20質量%がより好ましい。窒素含有化合物の含有量が0.05質量%未満では低燃費性およびウェットグリップ性能の改善効果が得られにくく、一方、30質量%を超えると高コストになってしまう傾向がある。
【0031】
前記重合体の重量平均分子量Mwは1.0×10〜2.0×10が好ましく、特に下限は2.0×10が、上限は1.5×10がより好ましい。重量平均分子量が1.0×10未満ではヒステリシスロスが大きく十分な低燃費性が得られにくいだけでなく、耐摩耗性も低下する傾向がある。一方、2.0×10を超えると加工性が低下する傾向がある。
【0032】
前記重合体は、貯蔵安定性が良好でフローしにくく、混練中、後述するカーボンブラックとの反応性にすぐれ、低燃費性に適しているという点から、カップリング剤を用いてカップリングし、分子量分布(Mw/Mn)が二山形状を有するスター型溶液重合ゴムにして使用することもできる。カップリング剤としては、四塩化スズ、四塩化ケイ素などが挙げられる。カップリング率は25%以上、好ましくは30〜60%である。かかるカップリング率が25%未満では、得られる重合体の貯蔵安定性が低下し、フローしやすくなる。なお、カップリング率とは、反応活性末端にスズまたはケイ素−ブタジエニル結合を有する重合体の全重合体に対する割合のことをいう。
【0033】
前記カップリングした重合体は、分子量分布(Mw/Mn)が1.1〜3であることが好ましく、1.5〜2.5がより好ましい。分子量分布(Mw/Mn)が1.1よりも小さい場合には、得られるベーストレッド用ゴム組成物が呈する加工性が低下するようになり、また3よりも大きい場合には、ベーストレッド用ゴム組成物を用いて製造されたタイヤの転動抵抗が大きくなるようになる。また、該分子量分布が二山形状を有するというのは、分子量分布曲線中に2つのピークがあることをいい、2つのピークのうち、分子量分布が小さいほうに現れたピークが、分子量分布が大きいほうに現れたピークよりも低いほど前記カップリング率が高いことを示す。なお、本発明においては、かかる2つのピークについて、その間隔(分子量分布の値の差)や高低差などにはとくに限定がない。
【0034】
ゴム成分としては、前記重合体は、他のゴム成分とともに使用することができる。他のゴム成分としては、特に限定されないが、たとえば、天然ゴム(NR)、エポキシ化天然ゴム(ENR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(X−IIR)などがあげられる。なかでも、グリップ性能および耐摩耗性をバランスよく示すことから、NR、BR、SBRが好ましい。これらのゴムは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。とくに、NR、BRおよびSBRと前記重合体を組み合わせることが、低燃費性、ウェットグリップ性能および耐摩耗性のバランスの点で好ましい。NR、BRおよびSBRを組み合わせる場合には、NR、BRおよびSBRのゴム成分中での含有量は、10〜95質量%であることが好ましい。
【0035】
前記重合体は、ゴム成分100質量%中、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましい。5質量%未満であると低燃費性およびウェットグリップ性能の改善効果が得られにくい傾向がある。上限は特に限定されないが、90質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましい。90質量%を超えると、コストが高くなる傾向がある。
【0036】
カーボンブラックのチッ素吸着比表面積(NSA)は、80〜280m/gが好ましく、特に下限は100m/gが、上限は250m/gがより好ましい。カーボンブラックのNSAが80m/g未満では十分なウェットグリップ性能が得られず、また耐摩耗性が低下する傾向がある。カーボンブラックのNSAが280m/gをこえると、分散性に劣り、耐摩耗性が低下する傾向がある。
【0037】
カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して1〜20質量部であるが、下限は3質量部が好ましく、上限は15質量部が好ましい。カーボンブラックの含有量が1質量部未満では、耐摩耗性が低下する傾向にある。一方、20質量部をこえると、燃費性能が低下する傾向がある。カーボンブラックは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
本発明で使用するシリカは、チッ素吸着比表面積(NSA)が50〜300m/gであることが好ましく、特に下限は80m/gが、上限は250m/gがより好ましい。チッ素吸着比表面積が50m/g未満のシリカでは補強効果が小さく耐摩耗性が低下する傾向があり、300m/gをこえるシリカでは分散性が悪く、ヒステリシスロスが増大し燃費性能が低下する傾向がある。
【0039】
シリカの配合量は、ゴム成分100質量部に対して、5質量部以上であるが、10質量部以上がより好ましい。シリカの配合量が5質量部未満であると耐摩耗性が十分でない傾向がある。一方、配合量の上限は、150質量部以下が好ましく、100質量部以下がより好ましい。シリカの配合量が150質量部をこえると、加工性が悪化する傾向がある。シリカは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
シリカを配合する場合には、シランカップリング剤を併用しても良い。シランカップリング剤としては、例えば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2−メルカプトエチルトリメトキシシラン、2−メルカプトエチルトリエトキシシラン、3−トリメトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2−トリエトキシシリルエチル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、ビス(3−ジエトキシメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、3−メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、ジメトキシメチルシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、ジメトキシメチルシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィドなどがあげられる。なかでも、補強性改善効果などの点から、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドおよび3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィドが好ましい。これらのシランカップリング剤は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
シランカップリング剤の配合量は、前記シリカ100質量部に対して1質量部以上であることが好ましく、2質量部以上であることがより好ましい。シランカップリング剤の配合量が1質量部未満では、未加硫ゴム組成物の粘度が高く加工性が悪くなる傾向がある。また、シランカップリング剤の配合量は、前記シリカ100質量部に対し、20質量部以下であることが好ましく、15質量部以下であることがより好ましい。シランカップリング剤の配合量が20質量部をこえると、その配合量ほどのシランカップリング剤の配合効果が得られず、コストが高くなる傾向がある。
【0042】
本発明のゴム組成物には、その他の補強剤、加硫剤、加硫促進剤、各種オイル、老化防止剤、軟化剤、可塑剤、カップリング剤などのタイヤ用または一般のゴム組成物用に配合される各種配合剤および添加剤を配合することができる。また、これらの配合剤、添加剤の含有量も一般的な量とすることができる。
【0043】
また、本発明は、前記ゴム組成物を用いて作製したタイヤに関し、該タイヤは、本発明のゴム組成物を用いて通常の方法によって製造される。すなわち、必要に応じて前記各種薬品を配合した本発明のゴム組成物を未加硫の段階でタイヤの各部材の形状に合わせて押し出し加工し、タイヤ成型機上にて通常の方法にて成形し、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧してタイヤを得る。このようにして得られた本発明のタイヤは、グリップ性能に優れ、かつその性能が低下しにくいものである。タイヤの部材の中でも、特にトレッド部に使用することが好ましい。
【実施例】
【0044】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0045】
以下に、モノマー(1)〜(10)の合成で用いた各種薬品について説明する。
シクロヘキサン:関東化学(株)製シクロヘキサン
ピロリジン:関東化学(株)製ピロリジン
ヘキサメチレンイミン:関東化学(株)製ヘキサメチレンイミン
モルホリン:関東化学(株)製モルホリン
チアゾリジン:東京化成工業(株)製のチアゾリジン
4−ピペリジノピペリジン:関東化学(株)製の4−ピペリジノピペリジン
4−ジメチルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン:シグマアルドリッチ社製の4−ジメチルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン
ジプロピルアミン:シグマアルドリッチ社製のジプロピルアミン
ジフェニルアミン:シグマアルドリッチ社製のジフェニルアミン
2,2’−ジピリジルアミン:シグマアルドリッチ社製の2,2’−ジピリジルアミン
ジビニルベンゼン:シグマアルドリッチ社製のジビニルベンゼン
1,3−ジイソプロペニルベンゼン:シグマアルドリッチ社製の1,3−ジイソプロペニルベンゼン
1.6M n−ブチルリチウムヘキサン溶液:関東化学(株)製の1.6M n−ブチルリチウムヘキサン溶液
イソプロパノール:関東化学(株)製のイソプロパノール
【0046】
製造例1(モノマー(1)の合成)
十分に窒素置換した100ml容器に、シクロヘキサン50ml、ピロリジン4.1ml(3.6g)、ジビニルベンゼン8.9ml(6.5g)を加え、0℃にて1.6M n−ブチルリチウムヘキサン溶液0.7mlを加えて攪拌した。1時間後、イソプロパノールを加えて反応を停止させ、抽出・精製を行うことでモノマー(1)を得た。
【0047】
製造例2〜10(モノマー(2)〜(10)の合成)
表1に示す処方に従って、モノマー(1)と同様の処方にてモノマー(2)〜(10)を得た。
【0048】
【表1】

【0049】
以下に、重合体(1)〜(12)の合成で用いた各種薬品について説明する。
シクロヘキサン:関東化学(株)製のシクロヘキサン
スチレン:関東化学(株)製のスチレン
ブタジエン:高千穂化学工業(株)製の1,3−ブタジエン
テトラメチルエチレンジアミン:関東化学(株)製のN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン
1.6M n−ブチルリチウムヘキサン溶液:関東化学(株)製の1.6M n−ブチルリチウムヘキサン溶液
1.0M 四塩化ケイ素:シグマアルドリッチ社製の四塩化ケイ素をシクロヘキサンで1.0Mに希釈したもの
イソプロパノール:関東化学(株)製のイソプロパノール
【0050】
製造例11
重合体(1)の合成
十分に窒素置換した1000ml耐圧製容器に、シクロヘキサン600ml、スチレン12.6ml(11.4g)、ブタジエン71.0ml(41.0g)、モノマー(1)0.29g、テトラメチルエチレンジアミン0.11mlを加え、40℃で1.6M n−ブチルリチウムヘキサン溶液0.2mlを加えて撹拌した。3時間後、1.0M四塩化ケイ素を0.1ml添加して重合体をカップリングさせた。30分後、イソプロパノール2mlを加えて重合を停止させた。反応溶液に2,6−tert−ブチル−p−クレゾール1gを添加後、メタノールで再沈殿処理を行い、加熱乾燥させて重合体(1)を得た。
【0051】
製造例12〜22
重合体(2)〜(12)の合成
表2に示す処方に従って、重合体(1)と同様の処方により重合体(2)〜(12)を得た。
【0052】
【表2】

【0053】
(重量平均分子量Mwの測定)
重量平均分子量Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)(東ソー(株)製GPC−8000シリーズ、検出器:示差屈折計、カラム:東ソー(株)製のTSKGEL SUPERMALTPORE HZ−M)を用い、分子量は標準ポリスチレンにより校正した。低分子量側のピークをピーク1とし、高分子量側のピークをピーク2として重量平均分子量を算出した。また、ピーク1と2の面積比より、カップリング率を算出した。
【0054】
(重合体中の窒素含有化合物誘導体モノマー量の測定)
重合体中の窒素含有化合物誘導体モノマー量は、日本電子(株)製JNM−ECAシリーズの装置を用いて測定した。
【0055】
実施例1〜12および比較例1〜3
以下に、実施例および比較例で用いた各種薬品について説明する。
NR:RSS#3
BR:宇部興産(株)製のウベポールBR150L
カーボンブラック:キャボットジャパン(株)製のショウブラックN220(チッ素吸着比表面積(NSA):125m/g)
シリカ:デグッサ社製のウルトラシルVN3(チッ素吸着比表面積(NSA):210m/g)
シランカップリング剤:デグッサ社製のSi69
オイル:(株)ジャパンエナジー製のJOMOプロセスX140
ステアリン酸:日油(株)製のステアリン酸
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華1号
老化防止剤:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C(N−1,3−ジメチルブチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン)
硫黄:鶴見化学(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤1:大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS
加硫促進剤2:大内新興化学工業(株)製のノクセラーD
【0056】
表3に示す配合処方にしたがって、混練り配合し、各種供試ゴム組成物を得た。これらの配合物を170℃で20分間プレス加硫して加硫物を得て、これらについて以下に示す試験方法により低燃費性およびウェットグリップ性能を評価した。
【0057】
(低燃費性)
(株)上島製作所製スペクトロメーターを用いて、動的歪振幅1%、周波数10Hz、温度60℃でtanδを測定した。tanδの逆数の値について比較例1を100として指数表示した。数値が大きいほど低燃費であることを示している。
【0058】
(ウェットグリップ性能(1))
(株)上島製作所製フラットベルト式摩擦試験機(FR5010型)を用いてグリップ性能を評価した。幅20mm、直径100mmの円筒形のゴム試験片を用い、速度20km/時間、荷重4kgf、路面温度20℃の条件で、路面に対するサンプルのスリップ率を0〜50%まで変化させ、その際に検出される摩擦係数の最大値を読みとった。比較例1を100として指数表示した。指数が大きいほどウェットグリップ性能が高いことを示す。
【0059】
(ウェットグリップ性能(2))
前記未加硫ゴム組成物をトレッドの形状に成形し、他のタイヤ部材とともに貼り合わせて未加硫タイヤを形成し、170℃の条件下で10分間プレス加硫し、タイヤ(サイズ195/65R15)を製造した。水を撒いて湿潤路面としたテストコースにて、タイヤを排気量2000ccの国産FR車に装着し、速度70km/hで制動し、タイヤに制動をかけてから停車するまでの走行距離(制動距離)を測定し、その距離の逆数の値を比較例1を100として、それぞれ指数表示した。数値が大きいほどウェットグリップ性能が高いことを示す。
【0060】
【表3】

【0061】
表3に示すように、窒素含有化合物を含んだ重合体を含有し、特定量のカーボンブラックおよびシリカを含有した実施例1〜12のゴム組成物は、比較例1〜3のゴム組成物に比べて、低燃費性とウェットグリップ性能のバランスに優れたタイヤを提供できることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム成分100質量%中に、共役ジエン化合物および/または芳香族ビニル化合物と下記一般式
【化1】

(式中、R及びRは水素、
【化2】

又は
【化3】

であり、少なくともR及びRのいずれかは水素ではない。Rは水素又は炭素数1〜4の炭化水素基を表す。Xは(CR、(CR1011−NR12−(CR1314、(CR1011−O−(CR1314、又は、(CR1011−S−(CR1314からなる飽和形環形成部を表す。Xは
【化4】

又は
【化5】

で置換されていてもよい。Zは(CR、(CR1011−NR12−(CR1314、(CR1011−O−(CR1314、又は、(CR1011−S−(CR1314からなる飽和形環形成部を表す。R〜Rは水素、炭素数1〜30の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜30の脂環族炭化水素基、炭素数5〜30の芳香族炭化水素基、又は環構成原子数3〜30の複素環基を表す。R〜Rは同じであっても異なっていてもよい。R及びR〜R14は水素、炭素数1〜30の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜30の脂環族炭化水素基又は炭素数5〜30の芳香族炭化水素基を表す。R及びR〜R14は同じであっても異なっていてもよい。lは3〜10の整数を表す。m及びnは1〜9の整数を表す。)
で表される窒素含有化合物とを共重合して得られた重合体を5質量%以上含み、
該ゴム成分100質量部に対してカーボンブラックを1〜20質量部、シリカを5質量部以上含むことを特徴とするゴム組成物。
【請求項2】
前記重合体における窒素含有化合物の含有量が0.05〜30質量%である請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載のゴム組成物を用いて作製したタイヤ。

【公開番号】特開2010−116556(P2010−116556A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−238514(P2009−238514)
【出願日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】