説明

ゴム組成物および空気入りタイヤ

【課題】湿潤路面でのグリップ性(ウェットグリップ性能)および耐摩耗性を両立させることができるタイヤを提供する。
【解決手段】ゴム成分100質量%中にイソブチレン系ブロック共重合体を5〜100質量%含むゴム組成物であって、前記イソブチレン系ブロック共重合体が、イソブチレンを主体とする重合体ブロック(a)と芳香族ビニル系化合物を主体とする重合体ブロック(b)とからなり、少なくとも一つのブロックがβ−ピネン由来の単位を0.5〜25質量%含むランダム共重合体ブロックであることを特徴とするゴム組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イソブチレン系ブロック共重合体を含むゴム組成物および該ゴム組成物を用いた空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤのタイヤトレッドには、湿潤路面でのグリップ性(ウェットグリップ性能)および耐摩耗性の優れた性能を両立させることが要求されており、様々な検討がなされてきた。
【0003】
たとえば、特許文献1には、ハロゲン化ブチルゴムまたはイソブチレンとパラメチルスチレンとの共重合体の臭素化物とジエン系ゴムを配合するゴム組成物が開示されている。それによると、ハロゲン化ブチルゴムまたはイソブチレンとパラメチルスチレンとの共重合体の臭素化物とジエン系ゴムとの混合、さらにはハロゲン化ブチルゴムまたはイソブチレンとパラメチルスチレンとの共重合体の臭素化物の選択的加硫からウェットグリップ性能がある程度向上しているが、まだ充分なものではなかった。さらに、ハロゲン化ブチルゴムまたはイソブチレンとパラメチルスチレンとの共重合体の臭素化物のウェットグリップ性能を増大させるべく、その混合量を増加させると、耐摩耗性が低下する傾向があった。
【0004】
高いグリップ性能を示すゴム組成物を得るために、たとえば、ガラス転移温度(Tg)の高いスチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)をゴム成分として使用したゴム組成物、プロセスオイルを高軟化点樹脂に等量置換し、ゴム成分に充填したゴム組成物、軟化剤またはカーボンブラックを高充填したゴム組成物、あるいは該SBR、高軟化点樹脂、該軟化剤またはカーボンブラックを組み合わせて配合したゴム組成物が知られている。しかし、Tgの高いSBRを使用したゴム組成物は、温度依存性が大きくなり、温度変化に対する性能変化が大きくなるという問題がある。さらに、粒子径の小さいカーボンブラックや多量の軟化剤を使用した場合、カーボンブラックの分散性が悪く、耐摩耗性が低下してしまうという問題があった。
【0005】
一方で、ウェットグリップ性能を向上させる為に、各種レジンを配合することが実施されている。レジンとしては、石油系、C5レジン系、C9レジン系、DCPDレジン系、αメチルスチレン系、フェノール系、クマロンインデン系、天然系 ロジン系、テルペン系などが知られている。テルペン系の中には、ヘミテルペン、モノテルペン、ジテルペン、トリテルペン、テトラテルペン等のレジンがあり、そのモノテルペンの中にリモネン、ピネンがありウェット性能向上の目的で使用されている。特に、ピネンは破壊特性向上の効果が高い。しかしながら、これらのレジンを配合したとしても、湿潤路面でのグリップ性(ウェットグリップ性能)および耐摩耗性を満足できるレベルで両立させることができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−191865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、湿潤路面でのグリップ性(ウェットグリップ性能)および耐摩耗性を両立させることができるタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、鋭意検討した結果、ゴム成分として特定のイソブチレン系ブロック共重合体を用いることで、湿潤路面でのグリップ性(ウェットグリップ性能)および耐摩耗性の優れた性能を両立させることが可能であることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、ゴム成分100質量%中にイソブチレン系ブロック共重合体を5〜100質量%含むゴム組成物であって、前記イソブチレン系ブロック共重合体が、イソブチレンを主体とする重合体ブロック(a)と芳香族ビニル系化合物を主体とする重合体ブロック(b)とからなり、少なくとも一つのブロックがβ−ピネン由来の単位を0.5〜25質量%含むランダム共重合体ブロックであることを特徴とするゴム組成物に関する。
【0010】
前記ゴム成分100質量%中、前記イソブチレン系ブロック共重合体の含有量は20〜80質量%、ジエン系ゴムの含有量が20〜80質量%であることが好ましい。
本発明はまた、前述のゴム組成物をトレッドに用いた空気入りタイヤに関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、特定のイソブチレン系ブロック共重合体を特にトレッドに使用することで、湿潤路面でのグリップ性(ウェットグリップ性能)および耐摩耗性の優れた性能を両立させた空気入りタイヤを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のゴム組成物は、ゴム成分100質量%中にイソブチレン系ブロック共重合体を5〜100質量%含み、前記イソブチレン系ブロック共重合体が、イソブチレンを主体とする重合体ブロック(a)と芳香族ビニル系化合物を主体とする重合体ブロック(b)とからなり、少なくとも一つのブロックがβ−ピネン由来の単位を0.5〜25質量%含むランダム共重合体ブロックであることを特徴とする。
【0013】
本発明では、ゴム成分として、前記イソブチレン系ブロック共重合体が使用される。なお、本発明では、該共重合体はジエン系ゴムに該当しないものとする。前記イソブチレン系ブロック共重合体は、イソブチレンを主体とする重合体ブロック(a)と芳香族ビニル系化合物を主体とする重合体ブロック(b)とからなり、少なくとも一つのブロックがβ−ピネン由来の単位を0.5〜25質量%含むランダム共重合体ブロックである。
【0014】
イソブチレンを主体とする重合体ブロック(a)は、イソブチレン由来の単位を60質量%以上、好ましくは80質量%以上含む重合体ブロックである。一方、芳香族ビニル系化合物を主体とする重合体ブロック(b)は、芳香族ビニル系化合物由来の単位を60質量%以上、好ましくは80質量%以上含む重合体ブロックである。
【0015】
芳香族ビニル系化合物としては、スチレン、o−、m−又はp−メチルスチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、2,6−ジメチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、α−メチル−o−メチルスチレン、α−メチル−m−メチルスチレン、α−メチル−p−メチルスチレン、β−メチル−o−メチルスチレン、β−メチル−m−メチルスチレン、β−メチル−p−メチルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン、α−メチル−2,6−ジメチルスチレン、α−メチル−2,4−ジメチルスチレン、β−メチル−2,6−ジメチルスチレン、β−メチル−2,4−ジメチルスチレン、o−、m−又はp−クロロスチレン、2,6−ジクロロスチレン、2,4−ジクロロスチレン、α−クロロ−o−クロロスチレン、α−クロロ−m−クロロスチレン、α−クロロ−p−クロロスチレン、β−クロロ−o−クロロスチレン、β−クロロ−m−クロロスチレン、β−クロロ−p−クロロスチレン、2,4,6−トリクロロスチレン、α−クロロ−2,6−ジクロロスチレン、α−クロロ−2,4−ジクロロスチレン、β−クロロ−2,6−ジクロロスチレン、β−クロロ−2,4−ジクロロスチレン、o−、m−又はp−t−ブチルスチレン、o−、m−又はp−メトキシスチレン、o−、m−又はp−クロロメチルスチレン、o−、m−又はp−ブロモメチルスチレン、シリル基で置換されたスチレン誘導体、インデン、ビニルナフタレン等が挙げられる。なかでも、ウェット性能向上という理由から、スチレン、α−メチルスチレンが好ましく、α−メチルスチレンが特に好ましい。
【0016】
重合体ブロック(a)、(b)において、共重合成分として、相互の単量体を使用することができるほか、その他の重合可能な単量体を使用できる。このような単量体としては、脂肪族オレフィン類、ジエン類、ビニルエーテル類、シラン類、ビニルカルバゾール、アセナフチレン等が挙げられる。これらは単独又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0017】
イソブチレン系ブロック共重合体は(a)、(b)のうち少なくとも一つのブロックがβ−ピネン由来の単位を有するとのランダム共重合体であるが、ウェット性能向上の点で、(b)のブロックにβ−ピネン由来する単位を含むことが好ましい。β−ピネン由来の単位を含むブロック100質量%において、β−ピネン由来の単位の含有量は、0.5〜25質量%、好ましくは5〜10質量%である。0.5質量%未満であると、ウェット性能が劣る傾向にあり、25質量%を超えると、破壊性能が低下する傾向がある。
【0018】
本発明のイソブチレン系ブロック共重合体は、イソブチレンを主体とする重合体ブロック(a)と芳香族ビニル系化合物を主体とする重合体ブロック(b)から構成されている限り、その構造には特に制限はなく、例えば、直鎖状、分岐状、星状等の構造を有するブロック共重合体、トリブロック共重合体、マルチブロック共重合体等のいずれも選択可能である。
【0019】
イソブチレン系ブロック共重合体のGPC測定による重量平均分子量は、好ましくは30,000〜300,000、より好ましくは30,000〜150,000である。30,000未満であると、破壊性能が低下する傾向があり、300,000を超えると、混練しにくくなる傾向がある。また、イソブチレン系ブロック共重合体の重量平均分子量/数平均分子量(Mw/Mn)は、1.3以下が好ましい。
【0020】
このようなイソブチレン系ブロック共重合体としては、例えば、スチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体(以下SIBSともいう)、スチレン−イソブチレンジブロック共重合体(以下SIBともいう)などが挙げられる。なかでも、ウェット性能向上の観点から、SIBSが好ましい。
【0021】
<スチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体>
SIBSは一般的にスチレン成分を10〜40質量%含む。ウェット性能向上の観点から、SIBS中のスチレン成分の含有量は10〜30質量%であることが好ましい。
【0022】
SIBSの分子量は特に制限はない。
【0023】
SIBSは、イソブチレンとスチレンのモル比(イソブチレン/スチレン)が、該共重合体のゴム弾性の点から40/60〜95/5であることが好ましい。SIBSにおいて、各ブロックの重合度は、ゴム弾性と取り扱い(重合度が10,000未満では液状になる)の点からイソブチレンでは10,000〜150,000程度、またスチレンでは5,000〜30,000程度であることが好ましい。
【0024】
SIBSは、一般的なビニル系化合物の重合法(リビングカチオン重合法など)により調製され、例えば、特開昭62−48704号公報および特開昭64−62308号公報に、イソブチレンと他のビニル化合物とのリビングカチオン重合が可能であり、ビニル化合物にイソブチレンと他の化合物を用いることでポリイソブチレン系のブロック共重合体を製造できることが開示されている。このほかにも、リビングカチオン重合法によるビニル化合物重合体の製造法が、例えば、米国特許第4,946,899号、米国特許第5,219,948号、特開平3−174403号公報などに記載されている。
【0025】
<スチレン−イソブチレンジブロック共重合体>
SIBとしては、直鎖状のものを用いることがゴム弾性および接着性の観点から好ましい。また、SIB中のスチレン成分の含有量は、粘着性、接着性およびゴム弾性の観点から10〜35質量%であることが好ましい。
【0026】
SIBの分子量は特に制限はないが、ゴム弾性および成形性の観点から、GPC測定による重量平均分子量が40,000〜120,000であることが好ましい。重量平均分子量が40,000未満であると、引張強度が低下するおそれがあり、120,000を超えると、押出加工性が悪くなるおそれがある。
【0027】
SIBは、イソブチレンとスチレンのモル比(イソブチレン/スチレン)が、90/10〜65/35であることが好ましい。SIBにおいて、各ブロックの重合度は、ゴム弾性と取り扱いの観点から、イソブチレンでは300〜3,000程度、またスチレンでは10〜1,500程度であることが好ましい。
【0028】
SIBは、一般的なビニル系化合物の重合法(リビングカチオン重合法など)により調製され、例えば、国際公開第2005/033035号には、攪拌機にメチルシクロヘキサン、n−ブチルクロライド、クミルクロライドを加え、−70℃に冷却した後、2時間反応させ、その後大量メタノールを添加して反応を停止させ、60℃で真空乾燥してSIBを得るという製造方法が開示されている。
【0029】
本発明において、ゴム成分100質量%中のイソブチレン系ブロック共重合体の含有量は、5質量%以上、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは40質量%以上である。5質量%未満であると、破壊特性が低下する傾向にある。
該イソブチレン系ブロック共重合体の含有量は、100質量%以下、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、更に好ましくは60質量%以下である。
【0030】
本発明では、イソブチレン系ブロック共重合体以外のゴム成分を併用することが好ましく、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)等のジエン系ゴムを好適に使用できる。
【0031】
ジエン系ゴムの含有量は、ゴム成分100質量%中、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは40質量%以上である。20質量%未満であると、ウェット性能が低下する傾向にある。該ジエン系ゴムの含有量は、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、更に好ましくは60質量%以下である。80質量%を超えると、破壊特性が低下する傾向にある。
【0032】
天然ゴムとしては、NR、SIR20、RSS#3、TSR20、脱タンパク質天然ゴム(DPNR)、高純度天然ゴム(HPNR)等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。SBRとしては、例えばE−SBR、S−SBR等が使用でき、WET性能向上という意味からはS−SBRを使用するのが好ましい。BRとしては、日本ゼオン(株)製のBR1220、宇部興産(株)製のBR130B、BR150B等の高シス含有量のBR、宇部興産(株)製のVCR412、VCR617等のシンジオタクチックポリブタジエン結晶を含有するBR等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。これらのジエン系ゴムは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0033】
上記イソブチレン系ブロック共重合体と併用するジエン系ゴムとしては、破壊特性の点で、天然ゴムを使用することが好ましい。
【0034】
本発明で天然ゴムを配合する場合、その含有量は、ゴム成分100質量%中、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは40質量%以上である。20質量%未満であると、破壊特性が劣る傾向にある。該天然ゴムの含有量は、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、更に好ましくは60質量%以下である。80質量%を超えると、ウェット性能が劣る傾向にある。
【0035】
本発明のゴム組成物には、カーボンブラックやシリカなどのフィラーや、シランカップリング剤を配合してもよい。これらの成分を配合することで、補強性やゴム物性の向上効果が得られる。
【0036】
カーボンブラックとしては特に限定されず、例えば、GPF、HAF、ISAF、SAFなど、タイヤ工業において一般的なものを用いることができる。
【0037】
カーボンブラックを使用する場合、カーボンブラックのチッ素吸着比表面積(NSA)は、好ましくは30m/g以上、より好ましくは70m/g以上である。NSAが30m/g未満では、充分な補強性が得られない傾向がある。また、カーボンブラックのNSAは、好ましくは250m/g以下、より好ましくは150m/g以下、更に好ましくは120m/g以下である。NSAが250m/gを超えると、未加硫ゴム組成物の粘度が非常に高くなって混練加工性が悪化し、ゴム物性が低下する傾向がある。
なお、カーボンブラックのNSAは、JIS K6217−2:2001に準拠して測定される。
【0038】
カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上、更に好ましくは20質量部以上である。5質量部未満では、充分な補強性が得られない傾向がある。また、カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは100質量部以下、より好ましくは60質量部以下、更に好ましくは20質量以下である。100質量部を超えると、低燃費性が悪化する傾向がある。
【0039】
シリカとしては特に限定されず、例えば、乾式法シリカ(無水ケイ酸)、湿式法シリカ(含水ケイ酸)等が挙げられるが、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。
【0040】
シリカのチッ素吸着比表面積(NSA)は、好ましくは40m/g以上、より好ましくは50m/g以上である。40m/g未満では、補強性が低下する傾向がある。また、シリカのNSAは、好ましくは220m/g以下、より好ましくは200m/g以下である。220m/gを超えると、混練加工性が悪化し、ゴム物性が低下する傾向がある。
なお、シリカのチッ素吸着比表面積は、ASTM D3037−81に準じてBET法で測定される値である。
【0041】
シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、5質量部以上、好ましくは20質量部以上、より好ましくは45質量部である。シリカの含有量が5質量部未満では、シリカの配合による充分な効果が得られない傾向がある。また、シリカの含有量は、150質量部以下、好ましくは120質量部以下、より好ましくは100質量部以下、更に好ましくは85質量部以下である。シリカの含有量が150質量部を超えると、シリカが分散しにくく、混練加工性が悪化し、ゴム物性が低下する傾向がある。
【0042】
シリカを使用する場合、ゴム物性の向上という点から、シランカップリング剤を配合することが好ましい。
シランカップリング剤としては、特に限定されず、例えば3−アミノプロピルジメチルメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルエチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルジメチルエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルジメチルブトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジブトキシシラン、ジメチルアミノメチルトリメトキシシラン、2−ジメチルアミノエチルトリメトキシシラン、3−ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、4−ジメチルアミノブチルトリメトキシシラン、ジメチルアミノメチルジメトキシメチルシラン、2−ジメチルアミノエチルジメトキシメチルシラン、3−ジメチルアミノプロピルジメトキシメチルシラン、4−ジメチルアミノブチルジメトキシメチルシラン、ジメチルアミノメチルトリエトキシシラン、2−ジメチルアミノエチルトリエトキシシラン、3−ジメチルアミノプロピルトリエトキシシラン、4−ジメチルアミノブチルトリエトキシシラン、ジメチルアミノメチルジエトキシメチルシラン、2−ジメチルアミノエチルジエトキシメチルシラン、3−ジメチルアミノプロピルジエトキシメチルシラン、4−ジメチルアミノブチルジエトキシメチルシラン、ジエチルアミノメチルトリメトキシシラン、2−ジエチルアミノエチルトリメトキシシラン、3−ジエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、4−ジエチルアミノブチルトリメトキシシラン、ジエチルアミノメチルジメトキシメチルシラン、2−ジエチルアミノエチルジメトキシメチルシラン、3−ジエチルアミノプロピルジメトキシメチルシラン、4−ジエチルアミノブチルジメトキシメチルシラン、ジエチルアミノメチルトリエトキシシラン、2−ジエチルアミノエチルトリエトキシシラン、3−ジエチルアミノプロピルトリエトキシシラン、4−ジエチルアミノブチルトリエトキシシラン、ジエチルアミノメチルジエトキシメチルシラン、2−ジエチルアミノエチルジエトキシメチルシラン、3−ジエチルアミノプロピルジエトキシメチルシラン、4−ジエチルアミノブチルジエトキシメチルシラン等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なお、シランカップリング剤の配合量は、適宜設定すればよく、例えば、シリカ100質量部に対して、3〜20質量部程度である。
【0043】
本発明のゴム組成物には、前記成分以外にも、ゴム組成物の製造に一般に使用される配合剤、例えば、酸化亜鉛、ステアリン酸、各種老化防止剤、アロマオイル等のオイル、ワックス、硫黄等の加硫剤、加硫促進剤などを適宜配合することができる。
【0044】
本発明のゴム組成物は、一般的な方法で製造される。すなわち、バンバリーミキサー、ニーダー、オープンロール等の混練機で上記各成分を混練りし、その後加硫する方法等により製造できる。
【0045】
本発明のゴム組成物は、ウェットグリップ性能および耐摩耗性を両立できるので、トレッドとして好適に使用できる。
【0046】
本発明の空気入りタイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法で製造される。
すなわち、前記成分を配合したゴム組成物を、未加硫の段階でトレッドの形状にあわせて押出し加工し、他のタイヤ部材とともに、タイヤ成型機上にて通常の方法で成形することにより、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することにより、空気入りタイヤを製造できる。
【実施例】
【0047】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0048】
以下、実施例及び比較例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
イソブチレンとp−メチルスチレンとの共重合体のハロゲン化物:エクソン化学(株)製のEXXPRO90−10
NR:RSS#3
SBR:日本ゼオン(株)製のニッポールNS116(溶液重合SBR、結合スチレン量:21質量%、Tg:−25℃)
シリカ:エボニックデグッサ社製のウルトラシルVN3(平均一次粒子径:15nm、NSA:175m/g)
カーボンブラック:三菱化学(株)製のダイアブラックI(N220、NSA:114m/g)
シランカップリング剤:エボニックデグッサ社製のSi75(ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド)
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華1号
ステアリン酸:日油(株)製のステアリン酸「椿」
老化防止剤:住友化学(株)製のアンチゲン6C(N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン)
ワックス:大内新興化学工業(株)製のサンノックN
軟化剤:(株)ジャパンエナジー製のプロセスX−140
硫黄:軽井沢硫黄(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤1:大内新興化学工業(株)製のノクセラーCZ(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
加硫促進剤2:大内新興化学工業(株)製のノクセラーD(N,N’−ジフェニルグアニジン)
【0049】
(製造例1)[(スチレン/β−ピネン)−イソブチレン−(スチレン/β−ピネン)ブロック共重合体(成分(A)−1)]の製造]
2Lのセパラブルフラスコの重合容器内を窒素置換した後、注射器を用いて、n−ヘキサン(モレキュラーシーブスで乾燥したもの)31.0mL及び塩化ブチル(モレキュラーシーブスで乾燥したもの)294.6mLを加え、重合容器を−70℃のドライアイス/メタノールバス中につけて冷却した後、イソブチレンモノマー88.9mL(941.6mmol)が入っている三方コック付耐圧ガラス製液化採取管にテフロン(登録商標)製の送液チューブを接続し、重合容器内にイソブチレンモノマーを窒素圧により送液した。p−ジクミルクロライド0.148g(0.6mmol)及びa−ピコリン0.07g(0.8mmol)を加えた。次にさらに四塩化チタン0.87mL(7.9mmol)を加えて重合を開始した。重合開始から1.5時間同じ温度で撹絆を行った後、重合溶液からサンプリング用として重合溶液約1mLを抜き取った。続いて、あらかじめ−70℃に冷却しておいたスチレンモノマー10.4g(99.4mmol)とβ−ピネン6.8g(49.7mmol)をよく混ぜ均一にした後重合容器内に添加した。スチレンとβ−ピネン添加45分後に約40mLのメタノールを加えて反応を終了させた。反応溶液から溶剤等を留去した後、トルエンに溶解し2回水洗を行った。さらにトルエン溶液を多量のメタノールに加えて重合体を沈殿させ、得られた重合体を60℃で24時間真空乾燥することにより目的のブロック共重合体を得た。ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により得られた重合体の分子量を測定した。Mnが103,000、Mw/Mnが1.21であるブロック共重合体が得られた。
【0050】
(製造例2)[(スチレン/β−ピネン)−イソブチレン−(スチレン/β−ピネン)ブロック共重合体(成分(A)−2)]の製造]
2Lのセパラブルフラスコの重合容器内を窒素置換した後、注射器を用いて、n−ヘキサン(モレキュラーシーブスで乾燥したもの)31.0mL及び塩化ブチル(モレキュラーシーブスで乾燥したもの)294.6mLを加え、重合容器を−70℃のドライアイス/メタノールバス中につけて冷却した後、イソブチレンモノマー88.9mL(941.6mmol)が入っている三方コック付耐圧ガラス製液化採取管にテフロン(登録商標)製の送液チューブを接続し、重合容器内にイソブチレンモノマーを窒素圧により送液した。p−ジクミルクロライド0.148g(0.6mmol)及びa−ピコリン0.07g(0.8mmol)を加えた。次にさらに四塩化チタン0.87mL(7.9mmol)を加えて重合を開始した。重合開始から1.5時間同じ温度で撹拌を行った後、重合溶液からサンプリング用として重合溶液約1mLを抜き取った。続いて、あらかじめ−70℃に冷却しておいたスチレンモノマー10.4g(99.4mmol)とβ−ピネン3.6g(26.3mmol)をよく撹絆し均一にした後重合容器内に添加した。スチレンとβ−ピネン添加45分後に約40mLのメタノールを加えて反応を終了させた。反応溶液から溶剤等を留去した後、トルエンに溶解し2回水洗を行った。さらにトルエン溶液を多量のメタノールに加えて重合体を沈殿させ、得られた重合体を60℃で24時間真空乾燥することにより目的のブロック共重合体を得た。ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により得られた重合体の分子量を測定した。Mnが107,000、Mw/Mnが1.23であるブロック共重合体が得られた。
【0051】
実施例1〜2及び比較例1〜2
表1に示す配合処方に従い、1.7Lバンバリーミキサーを用いて、配合材料のうち、硫黄及び加硫促進剤以外の材料を150℃の条件下で5分間混練りし、混練り物を得た。次に、得られた混練り物に硫黄及び加硫促進剤を添加し、2軸オープンロールを用いて、80℃の条件下で3分間練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。得られた未加硫ゴム組成物を150℃で30分間加硫し、加硫ゴム組成物を得た。
また、得られた未加硫ゴム組成物をキャップトレッドの形状に成形し、タイヤ成型機上で他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、150℃で30分間加硫することにより、試験用タイヤ(サイズ:195/65R15)を製造した。
【0052】
得られた加硫ゴム組成物、試験用タイヤを使用して以下の評価を行い、その結果を表1に示す。
【0053】
(WET性能試験)
上記試験用タイヤを装着した車両を用いて、湿潤アスファルト路面にて初速度100km/hからの制動距離を求めた。比較例1のウェットグリップ性能指数を100として、下記計算式により指数表示した。値が大きいほど、ウェットグリップ性能に優れることを示す。
(ウェットグリップ性能指数)=(比較例1の制動距離)/(各配合の制動距離)×100
【0054】
(摩耗試験)
ランボーン摩耗試験機にて、荷重1.5kgf、温度23℃、スリップ率50%、試験時間3分間の条件下で、各配合の加硫ゴム組成物(評価用ゴム)のランボーン摩耗量を測定し、各配合の容積損失量を計算し、比較例1の容積損失量を100として下記計算式で指数表示した。摩耗指数が大きいほど耐摩耗性が優れることを示す。
(摩耗指数)=(比較例1の容積損失量)/(各配合の容積損失量)x100
【0055】
【表1】

【0056】
β−ピネン由来の単位を含有するイソブチレン系共重合体とNRを併用した実施例では、ウエット性能及び耐摩耗性能がバランスよく良好であった。
【0057】
一方、イソブチレンとp−メチルスチレンとの共重合体のハロゲン化物と天然ゴムの混合物を使用した比較例1ではウエット性能及び耐摩耗性能が大きく劣り、SBRのみを使用した比較例2では耐摩耗性が非常に悪く、性能バランスが相当劣っていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム成分100質量%中にイソブチレン系ブロック共重合体を5〜100質量%含むゴム組成物であって、
前記イソブチレン系ブロック共重合体が、イソブチレンを主体とする重合体ブロック(a)と芳香族ビニル系化合物を主体とする重合体ブロック(b)とからなり、少なくとも一つのブロックがβ−ピネン由来の単位を0.5〜25質量%含むランダム共重合体ブロックであることを特徴とするゴム組成物。
【請求項2】
前記ゴム成分100質量%中、前記イソブチレン系ブロック共重合体の含有量は20〜80質量%、ジエン系ゴムの含有量が20〜80質量%である請求項1記載のゴム組成物。
【請求項3】
請求項1又は2記載のゴム組成物をトレッドに用いた空気入りタイヤ。

【公開番号】特開2013−60550(P2013−60550A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−200811(P2011−200811)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】