説明

ゴム組成物の混練設備及び混練方法

【課題】シランカップリング剤の反応時間を確保してゴム組成物の混練工程を効率よく行うと共に、設備の設置面積も抑制可能なゴム組成物の混練設備を提供する。
【解決手段】原料ゴム、シリカ及びシランカップリング剤(ゴム組成物)を投入する投入口10と、ゴム組成物を混練するローター11と、ゴム組成物を排出する排出口12と、を備えた密閉式混合機1と、密閉式混合機1から排出されたゴム組成物を受け入れる受け入れ容器2と、受け入れ容器2からゴム組成物を移送する移送装置3と、移送装置3からのゴム組成物が投入される投入口40と、混練するローター41と、ゴム組成物を排出する排出口42と、を備え、カップリング反応を促進させるニーダー4と、ニーダー4から排出されたゴム組成物からシート状のゴムを成形するゴム成形装置5と、を設けており、受け入れ容器2、移送装置3、ニーダー4、ゴム成形装置5が同一フロアに設置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原料ゴムに対してシリカ及びシランカップリング剤を配合したゴム組成物の混練設備及び混練方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ゴムの補強用充填剤としてシリカが使用されるようになっている。シリカは、その表面官能基であるシラノール基の水素結合により粒子同士が凝集する傾向がある。そこで、シリカをゴム組成物に配合する場合は、シリカの分散を良くするためにシランカップリング剤を添加してシリカとカップリング剤を反応させ分散性を改善し再凝集を抑え、タイヤの低燃費性・ウェット性を向上させている。
【0003】
かかるシリカ及びシランカップリング剤を配合したゴム組成物を混練するために、一対のローターを備えた密閉式のミキサー(以下「密閉式混合機」という)が広く普及している。上記シリカとシランカップリング剤のカップリング反応には、120℃〜160℃での混練温度が必要とされ、最適な反応温度・反応時間等については、さまざまな提案されている。一方、混練温度が170℃以上になると、ゲル化反応が発生することによりゴムの粘度が上昇してしまう。
【0004】
シリカが添加されたゴム組成物の低燃費性やウェット性能を十分に発揮するためには、カップリング反応の反応時間・熱履歴を確保する必要があり、ローターの速度を調整して混練時間を長くするとか、ゴム組成物の温度が上昇し過ぎないようにミキサーからゴム組成物を排出して冷却した後、再度ミキサーに投入する工程を複数回繰り返すことが行われている。従って、カップリング反応の反応時間・熱履歴を確保するため密閉式混合機での長時間の混練が必要となり、所定時間当たりのゴム組成物生産量が少ないため、ゴム組成物本来の性能を発揮させながら混練工程の効率をより向上させることが課題となっている。
【0005】
かかる課題に対処するために、下記特許文献1,2に開示する技術が知られている。特許文献1では、シリカ及びシランカップリング剤を配合したゴム組成物をミキサーで混練した後、この混練されたゴム組成物を反応制御装置に移し、ゴム組成物に対して歪を加えながら130〜170℃の温度で2〜20分滞留させている。上記反応制御装置は、温度制御機能を有するスクリュー押出機により構成されている。
【0006】
また、下記特許文献2では、シリカ及びシランカップリング剤を配合したゴム組成物をミキサーにより160℃以下の温度で混練した後、一対の混練ロールの上に搬送し、これら混練ロールにより与えられる剪断力でゴムを自己発熱させて140℃〜160℃の温度を維持しながら、混練ロールの間を通過させてシートを形成する。このシートは、コンベア上で冷却されつつ、再び混練ロールの上に戻され、再び混練ロールの間を通過させる。
【0007】
さらに特許文献3は、ゴム組成物を2つの段階、すなわち、基礎混合と完成混合に分けて製造する工程を開示する。具体的には、基礎混合にはラム式の密閉式混合機を使用し、このラム式密閉式混合機の下方に、ラムなし密閉式混合機を配置する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−352831号公報
【特許文献2】特開2007−8112号公報
【特許文献3】特開平1−125208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記各先行技術には、次のような問題点がある。すなわち、特許文献1では、スクリュー押出機を用いてカップリング反応を行っているが、押出機では反応に費やされる時間・熱履歴が十分ではない。また、特許文献2では、ロールを用いているが、ゴム組成物に対して、剪断力の作用する時間が一対のロール間隙を通過するごく短時間に限られるため、ロール間隙を何度か通過させてもシリカが再凝集する可能性がある。
【0010】
特許文献3は、上下に密閉式ミキサーを配置しており、下部に設置されるミキサーは上部のミキサーよりも大きなサイズが必要であり、広い設置面積が必要とされる。また、上部ミキサーから下部ミキサーへのゴム材料の受け渡しが重力により行われるものであり、下部ミキサーの投入口での材料詰まりの懸念も存在する。
【0011】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その課題は、シランカップリング剤の反応時間・熱履歴を確保して、シリカが配合されたゴム組成物の性能を充分に発揮させ、ゴム組成物の混練工程を効率よく行い生産性に優れながら、設備の設置面積、設備導入コストを抑制可能なゴム組成物の混練設備及び混練方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため本発明に係るゴム組成物の混練設備は、
原料ゴムに対してシリカ及びシランカップリング剤を配合したゴム組成物の混練設備であって、
少なくとも、原料ゴム、シリカ及びシランカップリング剤(以下、これらをゴム組成物)を投入する投入口と、投入された前記ゴム組成物を混練するローターと、混練されたゴム組成物を排出する排出口と、を備えた密閉式混合機と、
前記密閉式混合機から排出された前記ゴム組成物を受け入れる受け入れ容器と、
前記受け入れ容器から前記ゴム組成物を移送する移送装置と、
前記移送装置からの前記ゴム組成物が投入される投入口と、投入された前記ゴム組成物を混練するローターと、混練された前記ゴム組成物を排出する排出口と、を備え、カップリング反応を促進させるニーダーと、
前記ニーダーから排出された前記ゴム組成物が投入されてシート状のゴムを成形するシート状ゴム成形装置と、を設けており、
前記受け入れ容器と共に前記移送装置、前記ニーダー、前記ゴム成形装置が同一フロアに設置されていることを特徴とするものである。
【0013】
この構成によるゴム組成物の混練設備の作用・効果を説明する。この設備は、密閉式混合機、受け入れ容器、移送装置、ニーダー、シート状ゴム成形装置を備えている。密閉式混合機はローターを備えており、投入されたゴム組成物を混練し、排出口から排出する。第1段階の処理工程である密閉式混合機は、ゴム組成物の混練を主として行う。混練されたゴム組成物は、一旦、受け入れ容器にて受け入れられ、移送装置により、ニーダーの投入口へ移送される。このニーダーのローターにより再度混練されるが、ニーダーではカップリング反応を促進するような条件で処理が行われる。カップリング反応が十分に行われた後、次の工程において、シート材料の成形が行われる。
【0014】
密閉式混合機からニーダーへゴム組成物が送られた後は、密閉式混合機において次の処理を行うべきゴム組成物を投入することができる。すなわち、密閉式混合機においてゴム組成物の混練を行うと同時に、ニーダーでは、すでに密閉式混合機で処理済みのゴム組成物のカップリング反応を促進させることができる。従って、全体的に見れば、所定時間当たりのゴム組成物の混練処理能力を高めることができる。また、受け入れ容器、移送装置、ニーダー、ゴム成形装置は、同一フロアに設置するように配置され、上下方向に大きな配置空間を必要としない。従って、シランカップリング剤の反応時間・熱履歴を確保して、シリカが配合されたゴム組成物の性能を充分に発揮させながら、ゴム組成物の混練工程を効率よく行うことで生産性に優れ、設備の設置面積も抑制可能なゴム組成物の混練設備及び混練方法を提供することである。
【0015】
本発明において、前記受け入れ容器を前記密閉式混合機の直下に配置したことが好ましい。この構成によると、直下に配置することで、上下方向の必要空間を小さくすることができる。また、一旦、受け入れ容器でゴム組成物を受け入れるので、材料が詰まるなどの問題が生じないようにすることができる。
【0016】
上記課題を解決するため本発明に係るゴム組成物の混練方法は、
原料ゴムに対してシリカ及びシランカップリング剤を配合したゴム組成物の混練方法であって、
少なくとも、原料ゴム、シリカ及びシランカップリング剤(以下、これらをゴム組成物)を密閉式混合機に投入し、投入された前記ゴム組成物をローターにより混練し、排出する工程と、
前記密閉式混合機から排出された前記ゴム組成物を受け入れ容器により受け入れる工程と、
前記受け入れ容器から前記ゴム組成物を移送装置により移送する工程と、
前記移送装置からの前記ゴム組成物をニーダーに投入し、投入された前記ゴム組成物をローターにより混練し、カップリング反応を促進させた後に排出する工程と、
前記ニーダーから排出された前記ゴム組成物が投入されてシート状のゴムをシート状ゴム成形装置により成形する工程と、を有しており、
前記受け入れ容器と共に前記移送装置、前記ニーダー、前記ゴム成形装置が同一フロアに設置されていることを特徴とするものである。
【0017】
かかる構成によるゴム組成物の混練方法の作用・効果は、すでに述べたとおりであり、所定時間当たりのゴム組成物の混練処理能力を高めることができる。また、受け入れ容器、移送装置、ニーダー、ゴム成形装置は、同一フロアに設置するように配置され、上下方向に大きな配置空間を必要としない。従って、シランカップリング剤の反応時間・熱履歴を確保して、シリカが配合されたゴム組成物の性能を充分に発揮させながら、ゴム組成物の混練工程を効率よく行うことで生産性に優れ、設備の設置面積も抑制可能なゴム組成物の混練設備及び混練方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1実施形態に係る混練設備の構成を示す概念図
【図2】第2実施形態に係る混練設備の構成を示す概念図
【図3】実施例と比較例の実験結果を示す表
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係るゴム組成物の混練設備の好適な実施形態を図面を用いて説明する。図1は、第1実施形態に係る混練設備の構成を示す概念図である。設備は、全部で3フロアにわたって配置されている。
【0020】
<第1実施形態に係る混練設備>
3階フロアには、カーボンブラック計量装置6が設置されており、カーボンブラックの貯蔵及び計量を行っている。
【0021】
2階フロアには、密閉式混合機1が設置されている。密閉式混合機1は、原料ゴム、シリカ、シランカップリング剤、オイル等(以下、これらをCBも含めてゴム組成物という。)を投入する投入口10と、CBを投入する投入口10Aと、投入されたゴム組成物を混練するローター11と、混練されたゴム組成物を排出する排出口12と、を備えている。投入口10に隣接してゴム組成物を移送するためのベルトコンベア15が設けられている。一対のローター11の上部には、上下動可能なラム13が配置されている。ゴム組成物を混練する時は、ラム13が下方に移動してきて、ローター11の上部の空間を閉鎖するように構成される。
【0022】
排出口12には、開閉部14(ドロップドア)が設けられており、ローター11による混練を行うときは、開閉部14を閉鎖し、混練後のゴム組成物を排出する時は、開閉部14を開くように制御される。
【0023】
1階フロアには、受け入れ容器2が配置される。受け入れ容器2は、密閉式混合機1により混練されたゴム組成物が開閉部14から排出されると、それを受け入れる。排出されるゴム組成物は、受け入れ容器2内に落下する。
【0024】
受け入れ容器2内のゴム組成物は、移送装置3により、ニーダー4に移送される。移送装置3は、コンベア30を備えており、このコンベア30によりゴム組成物をニーダー4の上部に移送する。
【0025】
ニーダー4は、コンベア30により移送されてきたゴム組成物が投入される投入口40と、投入されたゴム組成物を混練する一対のローター41と、上下動可能な加圧蓋42と、を備えている。ゴム組成物を混練する時は、加圧蓋42が下方に移動し、ローター41の上部の空間を閉鎖するように構成される。密閉式混合機1は、投入されたゴム組成物の混練を主として行うのに対して、ニーダー4は、ゴム組成物に含まれるシランカップリング剤の反応を促進することを主たる機能とする。
【0026】
ニーダー4により混練されたゴム組成物は、ニーダー4全体の姿勢を矢印のように転回させることで、シート状ゴム成形装置5の投入口50へ投入される。ニーダー4から排出されるゴム組成物も塊状である。シート状ゴム成形装置5は、移送されてきたゴム組成物が投入される投入口50と、シート材を形成するための一対のローラー51と、ローラー51により成形されたシート状のゴム組成物を排出する排出口52と、を備えている。
【0027】
上記、受け入れ容器2と、移送装置3と、ニーダー4と、移送装置7と、シート状ゴム成形装置5とは、同じ1Fフロアに設置されている。
【0028】
<ゴム組成物の混練工程>
次に、図1に示す混練設備を用いてシリカ配合のゴム組成物を混練する時の工程を説明する。まず、密閉式混合機1の投入口10,10Aからゴム材料、シリカ、シランカップリング剤等を投入する。密閉式混合機1では、ローター11によりゴム組成物の混練を行う。混練を行うときは、ラム13を下降させゴム組成物の混練が行われる。混練する時の温度は170℃以下になるように設定される。
【0029】
混練を行うことで、シリカとシランカップリング剤のカップリング反応が行われる。かかる反応は120℃〜160℃以上の温度で行われるが、170℃以上になるとゴムの粘度が急激に上昇するため、170℃以上になるまでに、ゴム組成物を密閉式混合機1から排出する。排出タイミングは、開閉部14に設置された温度センサーでゴム組成物の温度を測定し基準温度になると排出される。
【0030】
排出されたゴム組成物は、受け入れ容器2の中に落下する。その後、ゴム組成物は、コンベア30によりニーダー4の投入口40の位置まで移送される。ゴム組成物は、投入口40から投入され、一対のローター41により混錬される。ニーダー4により、ゴム組成物の混練が行われるが、密閉式混合機1において熱可塑化されたゴム組成物を混練するため、動力が小さく安価なニーダー4を適用することができる。ニーダー4の容量は、密閉式混合機1と同等の容量でよい。従って、下部ミキサーに密閉式混合機を適用した場合と比較し、ニーダー4では設置面積や設備コストを抑制しながら、昇温がマイルドで、温度コントロールしやすいニーダー4の特性を活用し、シランカップリング剤の反応時間・熱履歴を確保して、シリカが配合されたゴム組成物の性能を充分に発揮させ、ゴム組成物の混練工程を効率よく行うことで生産性に優れた混練を行なうことができる。
【0031】
従って、以上のように140℃〜170℃の温度を維持しながら、ゴム組成物の混練を行い、カップリング反応の促進を行うことができる。すなわち、密閉式混合機1による混練では不十分であったカップリング反応をニーダー4により補完することができる。混練時間は、1分〜10分程度である。
【0032】
ニーダー4により混錬されたゴム組成物は、シート状ゴム成形装置5の投入口50から投入される。この投入されたゴム組成物は、一対のローラー51の間を通過することでシート状に形成される。
【0033】
密閉式混合機1に投入されたゴム材料等は、ニーダー4、シート状ゴム成形装置5において連続的に処理されて排出される。また、密閉式混合機1からゴム組成物が排出されると、次に処理すべきゴム材料等を投入口10,10Aから投入させることができる。すなわち、ニーダー4でゴム組成物の混練(カップリング反応)を行なうと同時に、次のゴム組成物の混練工程を密閉式混合機1で並行して行うことができるので、カップリング反応のための時間も十分に確保しながら、混練工程を効率よく行うことができる。
【0034】
また、図1に示すように、同じフロアに受け入れ容器2、移送装置3、ニーダー4、移送装置7、シート状ゴム成形装置5が配置されており、設置面積や設置フロアの面で従来よりも抑制した状態で各装置を設置することができる。
【0035】
<第2実施形態に係る混練設備>
次に、第2実施形態に係る混練設備を図2により説明する。図1の第1実施形態と異なる点は、第1実施形態では、密閉式混合機1と、ニーダー4、シート状ゴム成形装置5等が別のフロアに設置されていたが、この第2実施形態では、これらが同じフロアに設置されている。
【0036】
密閉式混合機1から排出されるゴム組成物は塊状であるため、そのまま長時間放置すると、部分的にシランカップリング反応が進むことがある。その結果、ゲルの発生や再凝集が進みゴム物性の悪化を招き、またゴム温度が低下すると可塑度が上昇し、動力が小さいニーダー4での混練りができなくなることから、密閉式混合機1から排出してニーダー4までの搬送時間を60秒以内、ゴム温度を120度以上に保持しておくことが好ましい。
【0037】
そこで、密閉式混合機1の直下に受け入れ容器2を配置することで、上記の点に対処しやすくなる。かかる構成によっても、第1実施形態と同じような作用・効果を奏することができる。
【0038】
また、投入されるゴム成分としては、変性前の数平均分子量が15万〜40万である末端変性ジエン系ゴムを含有するものである。かかる末端変性されるジエン系ゴムの種類としては、特に限定されないが、ブタジエンゴム(BR。例えば、シス−1,4結合90%以上のハイシスBR、シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン(SPB)含有BRなど)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、スチレンイソプレン共重合体ゴム、ブタジエンイソプレン共重合体ゴム等が挙げられ、より好ましくはBR、SBRであり、更に好ましくはSBRである。
【0039】
この末端変性ジエン系ゴムとしては、各種変性剤でポリマー末端が変性されたジエン系ゴムを用いることができ、変性方法も公知の種々の方法を用いることができる。具体的に、変性剤としては、スズ化合物、アミノベンゾフェノン化合物、イソシアネート化合物、ジグリシジルアミン化合物、環状イミン化合物、ハロゲン化アルコキシシラン化合物、グリシドキシプロピルメトキシシラン化合物、ネオジウム化合物、アルコキシシラン化合物、アミン化合物とアルコキシシラン化合物の併用などが挙げられる。
【0040】
また、混練時に用いられるシランカップリング剤としては、分子中に硫黄を含むものであれば特に限定されず、ゴム組成物においてシリカとともに配合される各種のシランカップリング剤を用いることができる。例えば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(例えば、デグサ社製「Si69」)、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド(例えば、デグサ社製「Si75」)、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4−トリエキトシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)ジスルフィドなどのスルフィドシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、メルカプトプロピルジメチルメトキシシラン、メルカプトエチルトリエトキシシランなどのメルカプトシラン、3−オクタノイルチオ−1−プロピルトリエトキシシラン、3−プロピオニルチオプロピルトリメトキシシランなどの保護化メルカプトシランが挙げられる。シランカップリング剤の配合量は、シリカ100質量部に対して2〜25質量部であることが好ましく、より好ましくは5〜15質量部である。
【0041】
<実験結果>
次に、本発明の効果を確認するために実験を行った。図3は、実施例1,2,3及び比較例1,2に関する実験結果を示す表である。
【0042】
(材料)
・変性スチレンブタジエンゴム(変性SBR):JSR(株)製のHPR340(変性S−SBR、結合スチレン量:10質量%、アミンおよびアルコキシルシランで変性)。
【0043】
・未処理シリカ:東ソーシリカ工業(株)「ニプシールAQ」
・シランカップリング剤:ビス−(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、デグサ社製「Si−75」
・保護化メルカプトシラン:(CnH2n+1O)3Si−CmH2m−S−CO−CkH2k+1で表されるカップリング剤(n=2,m=3,k=7)、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製「NXT」
・オイル:ジャパンエナジー(株)「プロセスX−140」
【0044】
<比較例1>
(第1工程)・・・原料ゴムにカーボンブラック・シリカ・シランカップリング剤・オイル等を添加して、密閉式混合機で混練後、150℃で排出し、シート状に成型し、離型剤を塗布して冷却する。なお、密閉式混合機から排出されたゴム組成物をロールやシート状ゴム成型押出機などを用いてシート状に成形する。
(第2工程)・・・第1工程後、ゴム組成物を、再度密閉式混合機で混錬し、150℃で排出、シート状に成型し、離型剤を塗布して冷却する。シート状に成形する方法は、第1工程と同じである。
(第3工程)・・・第2工程後、ゴム組成物に加硫剤等の薬品を密閉式混合機で混錬し、100℃で排出、シート状に成型し、離型剤を塗布して冷却する。シート状に成形する方法は、第1工程と同じである。
【0045】
<比較例2>
比較例1の第1工程の混練時に、150℃で3分間混錬時間を延長して、シランカップリング剤との反応時間を確保した。
【0046】
<実施例1>
比較例1の第1工程の混練後に、ニーダーへ投入し、150℃で1分間混錬し、第3工程を実施した。
【0047】
<実施例2>
比較例1の第1工程の混練後に、ニーダーへ投入し、150℃で3分間混錬し、第3工程を実施した。
【0048】
<実施例3>
比較例1の第1工程の混練後に、ニーダーへ投入し、150℃で3分間混錬し、次いで、第2工程、及び第3工程を実施した。
【0049】
実験結果における評価項目は、生産性(混練時間)、ムーニー粘度(ML1+4 at100℃)、損失抵抗(tanδ)の3つである。ムーニー粘度は、JIS K6300に準じて、100℃でのムーニー粘度ML(1+4)を測定し、比較例1を100とした指数で表示した。指数が小さいほど粘度が低く、加工性に優れることを示す。tanδは、動的粘弾性測定装置(上島製作所(株)製)を使用し、JIS K6394に準じて、周波数50Hz、動歪み1.0%、温度50℃の条件で損失係数tanδを測定した。比較例1を100とする指数で示し、値が小さいほどtanδが低く燃費性が良好であることを示す。
【0050】
なお、混練時間については、実施例1〜3はニーダーによる混練工程を用いており、第1工程とニーダー混練を並行して実施可能であるため、第1工程の混練時間を除いて計算している。
【0051】
図3からわかるように、実施例1,2は、比較例1,2に比べて混練時間が短くなっており生産性が向上している。実施例1は、ムーニー粘度と低発熱性が比較例1とほぼ同等であり、ゴム組成物の特性においても問題がない。実施例2は、比較例1に対して少し生産性が向上している。また、低発熱性は6ポイント低下しており特性が良くなっている。
【0052】
実施例3は、生産性は向上していないが、ムーニー粘度はほぼ同程度であり、低発熱性は8ポイント低下しており特性が良くなっている。
【0053】
<別実施形態>
ニーダー4については、加圧型ではないニーダーを用いてもよいし、加圧型ニーダーを用いてもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 密閉式混合機
2 受け入れ容器
3 移送装置
4 ニーダー
5 シート状ゴム成形装置
6 計量装置
10 投入口
11 ローター
12 排出口
30 コンベア
40 投入口
41 ローター
42 加圧蓋
50 投入口
51 ローラー
52 排出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料ゴムに対してシリカ及びシランカップリング剤を配合したゴム組成物の混練設備であって、
少なくとも、原料ゴム、シリカ及びシランカップリング剤(以下、これらをゴム組成物という)を投入する投入口と、投入された前記ゴム組成物を混練するローターと、混練されたゴム組成物を排出する排出口と、を備えた密閉式混合機と、
前記密閉式混合機から排出された前記ゴム組成物を受け入れる受け入れ容器と、
前記受け入れ容器から前記ゴム組成物を移送する移送装置と、
前記移送装置からの前記ゴム組成物が投入される投入口と、投入された前記ゴム組成物を混練するローターと、混練された前記ゴム組成物を排出する排出口と、を備え、カップリング反応を促進させるニーダーと、
前記ニーダーから排出された前記ゴム組成物が投入されてシート状のゴムを成形するシート状ゴム成形装置と、を設けており、
前記受け入れ容器と共に前記移送装置、前記ニーダー、前記ゴム成形装置が同一フロアに設置されていることを特徴とするゴム組成物の混練設備。
【請求項2】
前記受け入れ容器を前記密閉式混合機の直下に配置したことを特徴とする請求項1に記載のゴム組成物の混練設備。
【請求項3】
原料ゴムに対してシリカ及びシランカップリング剤を配合したゴム組成物の混練方法であって、
少なくとも、原料ゴム、シリカ及びシランカップリング剤(以下、これらをゴム組成物という)を密閉式混合機に投入し、投入された前記ゴム組成物をローターにより混練し、排出する工程と、
前記密閉式混合機から排出された前記ゴム組成物を受け入れ容器により受け入れる工程と、
前記受け入れ容器から前記ゴム組成物を移送装置により移送する工程と、
前記移送装置からの前記ゴム組成物をニーダーに投入し、投入された前記ゴム組成物をローターにより混練し、カップリング反応を促進させた後に排出する工程と、
前記ニーダーから排出された前記ゴム組成物が投入されてシート状のゴムをシート状ゴム成形装置により成形する工程と、を有しており、
前記受け入れ容器と共に前記移送装置、前記ニーダー、前記ゴム成形装置が同一フロアに設置されていることを特徴とするゴム組成物の混練方法。
【請求項4】
ゴム成分が、アミン及びアルコキシランで変性された変性スチレンブタジエンゴムを含み、
シランカップリング剤が、ビス−(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド又は保護化メルカプトシランを含むことを特徴とする請求項3に記載のゴム組成物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−22786(P2013−22786A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−157988(P2011−157988)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】