説明

ゴム組成物の製造方法

【課題】タイヤのトレッドに用いた場合に、省燃費性及びグリップ性に優れたタイヤが得られる加硫ゴム組成物の原料に適したゴム組成物の製造方法、および該ゴム組成物を用いた加硫ゴム組成物の製造方法を提供すること。
【解決手段】ゴム組成物の製造方法であって、ブタジエン系ゴムと、当該ブタジエン系ゴム100重量部あたり1重量部〜20重量部のシランカップリング剤とを混練して予備混練ゴム組成物を製造する工程、及び、当該予備混練ゴム組成物と、当該予備混練ゴム組成物を製造するために用いたブタジエン系ゴム100重量部あたり30重量部〜200重量部のシリカとを混練する工程を有する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題への関心の高まりから、自動車に対して省燃費化の要求が強くなっており、タイヤに用いるゴム組成物に対しても、省燃費性に優れることが求められている。タイヤのトレッドに用いられるゴム組成物としては、ポリブタジエンやスチレン−ブタジエン共重合体等のジエン系ゴムにシリカ等の補強剤を配合したゴム組成物が用いられている。
【0003】
補強剤としてシリカをジエン系ゴムに配合する場合、ジエン系ゴムとシリカとの親和性を高めてシリカの分散性を改良するために、シランカップリング剤がさらに配合される。ジエン系ゴム、シリカ補強剤、及びシランカップリング剤を含有するゴム組成物の製造方法として、特許文献1に示すように、ジエン系ゴムとシリカ補強剤とを混練して予備混練組成物を調製し、その後、当該予備混練組成物とシランカップリング剤とを混練するゴム組成物の製造方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−201309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の方法で得られたゴム組成物を加硫して得られる加硫ゴム組成物は、タイヤのトレッドとして使用される。しかしながら、該加硫ゴム組成物は、タイヤのトレッドとして用いた場合に、省燃費性及びグリップ性において十分に満足のいくものではなかった。
【0006】
かかる状況のもと、本発明が解決しようとする課題は、タイヤのトレッドに用いた場合に、省燃費性及びグリップ性に優れたタイヤが得られる加硫ゴム組成物の原料に適したゴム組成物の製造方法、および該ゴム組成物を用いた加硫ゴム組成物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ゴム組成物の製造方法であって、ブタジエン系ゴムと、当該ブタジエン系ゴム100重量部あたり1重量部〜20重量部のシランカップリング剤とを混練して予備混練ゴム組成物を製造する工程、及び、当該予備混練ゴム組成物と、当該予備混練ゴム組成物の製造に用いたブタジエン系ゴム100重量部あたり30重量部〜200重量部のシリカとを混練する工程を有する方法に係るものである。
さらに本発明は、加硫性ゴム組成物の製造方法であって、加硫剤と前記方法で得られたゴム組成物とを混練する工程を有する方法に係るものである。
さらに本発明は、加硫ゴム組成物の製造方法であって、前記方法で得られた加硫性ゴム組成物を加熱する工程を有する方法に係るものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、タイヤのトレッドに用いた場合に、省燃費性及びグリップ性に優れたタイヤが得られる加硫ゴム組成物の原料に適したゴム組成物、および省燃費性及びグリップ性に優れたタイヤが得られる加硫ゴム組成物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<ブタジエン系ゴム>
本発明におけるブタジエン系ゴムとは、ブタジエンを単量体単位として含む重合体からなるゴムである。ブタジエン系ゴムとしては、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、ポリブタジエンゴム(BR)、ブタジエン−イソプレン共重合体ゴム、アクリロニリトル−ブタジエンゴム(NBR)、スチレン−イソプレン−ブタジエン三元共重合体ゴムなどがあげられる。本発明において使用するブタジエン系ゴムは、好ましくはスチレン−ブタジエン共重合体ゴム、ポリブタジエンゴムである。2種類以上のブタジエン系ゴムを用いてもよい。
【0010】
ブタジエン系ゴムは、ケトン、アミドなどの変性剤により重合体鎖末端が変性されていてもよい。
【0011】
100℃において測定したブタジエン系ゴムのムーニー粘度(ML1+4)は、好ましくは10以上であり、より好ましくは20以上である。また、加工性を高めるために、好ましくは200以下であり、より好ましくは150以下である。該ムーニー粘度(ML1+4)は、JIS K6300(1994)に従って測定される。
【0012】
<シランカップリング剤>
本発明におけるシランカップリング剤としては、含硫黄基を有するアルコキシシラン化合物、アミノ基を有するアルコキシシラン化合物、エポキシ基を有するアルコキシシラン化合物、ビニル基を有するアルコキシシラン化合物、アクリル基を有するアルコキシシラン化合物、メタクリル基を有するアルコキシシラン化合物、スチリル基を有するアルコキシシラン化合物、ウレイド基を有するアルコキシシラン化合物、イソシアネート基を有するアルコキシシラン化合物、ハロゲン原子を有するアルコキシシラン化合物があげられ、好ましくは、含硫黄基を有するアルコキシシラン化合物である。
【0013】
含硫黄基としては、メルカプト基、チオエステル基、チオシアナト基、ポリスルフィド基をあげることができ、好ましくは、ポリスルフィド基である。
【0014】
メルカプト基を有するアルコキシシラン化合物としては、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシランがあげられる。チオエステル基を有するアルコキシシラン化合物としては、3−オクタノイルチオ−1−プロピルトリエトキシシランがあげられる。チオシアナト基を有するアルコキシシラン化合物としては、3−チオシアナトプロピルトリエトキシシランがあげられる。
【0015】
ポリスルフィド基を有するアルコキシシラン化合物としては、下記式(2)で表される化合物があげられる。

(R21、R22、R23はそれぞれアルキル基又はアルコキシ基を表し、R21、R22、R23のうちの少なくとも1つの基がアルコキシ基であり、Aはジアルキルチオカルバミル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、及びアルコキシシリルアルキル基からなる基群より選択される1つの基を表し、iは1〜5の整数を表し、jは2〜8の整数を表す。)
【0016】
式(2)において、R21、R22、R23はそれぞれアルキル基又はアルコキシ基を表し、R21、R22、R23のうちの少なくとも1つの基がアルコキシ基である。好ましくは、R21、R22、R23のうちの少なくとも2つの基がアルコキシ基である。より好ましくは、R21、R22、R23がアルコキシ基である。
【0017】
21、R22、R23は、好ましくは炭素原子数1〜8、より好ましくは1〜6、さらに好ましくは1〜4、特に好ましくは1〜2のアルキル基又はアルコキシ基である。
【0018】
21、R22、R23のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基があげられる。好ましくは、メチル基、エチル基である。
【0019】
21、R22、R23のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基があげられる。好ましくは、メトキシ基、エトキシ基である。
【0020】
好ましくは、R21、R22、R23がメトキシ基、エトキシ基、メチル基、及びエチル基からなる基群より選択される基であり、R21、R22、R23のうちの少なくとも2つの基がそれぞれメトキシ基又はエトキシ基である。より好ましくは、R21、R22、R23がそれぞれメトキシ基又はエトキシ基である。
【0021】
式(2)中、iは1〜5の整数を表し、好ましくは2又は3である。
【0022】
式(2)中、jは2〜8の整数を表し、好ましくは2〜5の整数である。
【0023】
式(2)中、Aはジアルキルチオカルバミル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、及びアルコキシシリルアルキル基からなる基群より選択される基を表す。
【0024】
ジアルキルチオカルバミル基としては、ジメチルチオカルバミル基、ジエチルチオカルバミル基があげられる。
【0025】
アルコキシシリルアルキル基としては、下記式(2−S)で表される基があげられる。

(R24、R25、R26はそれぞれアルキル基又はアルコキシ基を表し、R24、R25、R26のうちの少なくとも1つの基がアルコキシ基であり、kは1〜5の整数を表す。)
【0026】
式(2−S)において、R24、R25、R26はそれぞれアルキル基又はアルコキシ基を表し、R24、R25、R26のうちの少なくとも1つの基がアルコキシ基である。好ましくは、R24、R25、R26のうちの少なくとも2つの基がアルコキシ基である。より好ましくは、R24、R25、R26がアルコキシ基である。
【0027】
24、R25、R26は、好ましくは炭素原子数1〜8、より好ましくは1〜6、さらに好ましくは1〜4、特に好ましくは1〜2のアルキル基又はアルコキシ基である。
【0028】
24、R25、R26のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基があげられる。好ましくは、メチル基、エチル基である。
【0029】
24、R25、R26のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基があげられる。好ましくは、メトキシ基、エトキシ基である。
【0030】
好ましくは、R24、R25、R26がメトキシ基、エトキシ基、メチル基、及びエチル基からなる基群より選択される基であり、R24、R25、R26のうちの少なくとも2つの基がそれぞれメトキシ基又はエトキシ基である。さらに好ましくは、R24、R25、R26がそれぞれメトキシ基又はエトキシ基である。
【0031】
式(2−S)中、kは1〜5の整数を表し、好ましくは2又は3である。
【0032】
式(2−S)で表される基としては、2−トリメトキシシリルエチル基、3−トリメトキシシリルプロピル基、3−トリエトキシシリルプロピル基、3−ジメトキシメチルシリルプロピル基があげられる。
【0033】
式(2)で表される化合物のうち、Aがジアルキルチオカルバミル基である化合物として、γ−トリメトキシシリルプロピルジメチルチオカルバミルテトラスルフィドがあげられる。Aがチアゾリル基である化合物として、γ−トリメトキシシリルプロピルチアゾリルテトラスルフィドがあげられる。Aがベンゾチアゾリル基である化合物として、γ−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィドがあげられる。
【0034】
式(2)で表される化合物のうち、Aが式(2−S)で表される基である化合物として、下記(2−1)で表される化合物があげられる。

(R21、R22、R23はそれぞれアルキル基又はアルコキシ基を表し、R21、R22、R23のうちの少なくとも1つの基がアルコキシ基であり、R24、R25、R26はそれぞれアルキル基又はアルコキシ基を表し、R24、R25、R26のうちの少なくとも1つの基がアルコキシ基であり、iは1〜5の整数を表し、jは2〜8の整数を表し、kは1〜5の整数を表す。)
【0035】
式(2−1)で表される化合物としては、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−ジメトキシメチルプロピル)テトラスルフィドがあげられる。
【0036】
式(2−1)で表される化合物は、市販品としては、デグッサ社製 商品名 Si69、Si75があげられる。
【0037】
ポリスルフィド基を含有するアルコキシシラン化合物は、好ましくは式(2−1)で表される化合物であり、より好ましくは、R21、R22、R23、R24、R25、R26がメトキシ基、エトキシ基、メチル基、及びエチル基からなる基群より選択される基であり、R21、R22、R23のうちの少なくとも2つの基がそれぞれメトキシ基又はエトキシ基であり、R24、R25、R26のうちの少なくとも2つの基がそれぞれメトキシ基又はエトキシ基であり、iが1〜5の整数であり、jが2〜8の整数であり、kが1〜5の整数である化合物である。さらに好ましくは、R21、R22、R23、R24、R25、R26がそれぞれメトキシ基又はエトキシ基であり、iが2又は3であり、jが2〜5の整数であり、kが2又は3である化合物である。
【0038】
ポリスルフィド基を含有するアルコキシシラン化合物として特に好ましくは、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドである。
【0039】
本発明において、1種類以上のシランカップリング剤が用いられる。
【0040】
<シリカ>
本発明におけるシリカとしては、乾式シリカ(無水ケイ酸)、湿式シリカ(含水ケイ酸)、コロイダルシリカ、沈降シリカ、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウムがあげられる。1種以上のシリカが用いられる。シリカのBET比表面積は、好ましくは、50〜250m2/gである。該BET比表面積は、ASTM D1993−03に従って測定される。市販品としては、デグッサ社製 商品名 ウルトラシルVN3−G、東ソー・シリカ社製 商品名 VN3、AQ、ER、RS−150、Rhodia社製 商品名 Zeosil 1115MP、1165MP等が用いられる。
【0041】
<予備混練ゴム組成物を得る工程>
本発明における予備混練ゴム組成物は、ブタジエン系ゴムと、当該ブタジエン系ゴム100重量部あたり1重量部〜20重量部のシランカップリング剤とを混練して得られるゴム組成物である。ブタジエン系ゴムに混練するシランカップリング剤の量は、ブタジエン系ゴム100重量部あたり1重量部〜20重量部、好ましくは3重量部〜10重量部である。
【0042】
ブタジエン系ゴムとシランカップリング剤とは、好ましくは混練機によって混練する。混練機としては、バンバリーミキサー、ラボプラストミル、ニーダー、ロール混練機、2軸押出機があげられる。ブタジエン系ゴムとシランカップリング剤とを混練する温度は、好ましくは160℃以下であり、より好ましくは130℃以下である。また、ブタジエン系ゴムとシランカップリング剤とを混練する温度は、好ましくは30℃以上であり、より好ましくは50℃以上であり、さらに好ましくは90℃以上である。ブタジエン系ゴムとシランカップリング剤とを混練する時間は、好ましくは1分以上20分以下である。ブタジエン系ゴムとシランカップリング剤とを160℃以下で1〜20分間混練することが好ましい。
【0043】
ブタジエン系ゴム及びシランカップリング剤とともに、ブタジエン系ゴム以外の重合体を混練してもよい。当該重合体としては、天然ゴム、ポリイソプレンゴム(IR)、スチレンーイソプレン共重合体ゴムなどのイソプレン系ゴム;クロロプレンゴム(CR);エチレンープロピレンージエンゴム(EPDM);エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−オクテン共重合体などのエチレン−α−オレフィン共重合体があげられる。当該重合体を混練する場合、混練する当該重合体の量は、ブタジエン系ゴム100重量部あたり、好ましくは20重量部以下であり、より好ましくは10重量部以下であり、さらに好ましくは5重量部以下であり、特に好ましくは2重量部以下である。
【0044】
また、予備混練ゴム組成物を得る工程において、カーボンブラック、シリカ以外の充填剤、老化防止剤、酸化亜鉛、ステアリン酸、伸展油、加工助剤、滑剤などの添加剤をブタジエン系ゴム及びシランカップリング剤とともに混練してもよい。
【0045】
カーボンブラックとしては、EPC、MPC及びCCのようなチャンネルカーボンブラック;SAF、ISAF、HAF、MAF、FEF、SRF、GPF、APF、FF、CF、SCF及びECFのようなファーネスカーボンブラック;FT及びMTのようなサーマルカーボンブラック;アセチレンカーボンブラック;グラファイトがあげられる。2種類以上のカーボンブラックを用いてもよい。
【0046】
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)は、好ましくは、5〜200m2/gであり、また、カーボンブラックのジブチルフタレート(DBP)吸収量は、好ましくは、5〜300ml/100gである。該窒素吸着比表面積は、ASTM D4820−93に従って測定される。該DBP吸収量は、ASTM D2414−93に従って測定される。市販品としては、三菱化学社製 商品名 ダイヤブラックN339、東海カーボン社製 商品名 シースト6、シースト7HM、シーストKH、デグッサ社製 商品名 CK 3、Special Black 4A等を用いることができる。
【0047】
充填剤としては、炭酸カルシウム、タルク、アルミナ、クレー、水酸化アルミニウムおよびマイカをあげることができる。
【0048】
伸展油としては、アロマチック系鉱物油(粘度比重恒数(V.G.C.値)0.900〜1.049)、ナフテン系鉱物油(V.G.C.値0.850〜0.899)、パラフィン系鉱物油(V.G.C.値0.790〜0.849)があげられる。伸展油の多環芳香族含有量は、好ましくは3重量%未満であり、より好ましくは1重量%未満である。該多環芳香族含有量は、英国石油学会346/92法に従って測定される。また、伸展油の芳香族化合物含有量(CA)は、好ましくは20重量%以上である。2種類以上の伸展油を用いてもよい。
【0049】
予備混練ゴム組成物を得る工程では、ブタジエン系ゴム及びシランカップリング剤とともにシリカを混練しないことが好ましいが、少量であればシリカを混練してもよい。省燃費性およびグリップ性に優れる加硫ゴム組成物を製造するために、本工程において混練してもよいシリカの量は、ブタジエン系ゴム100重量部あたり、好ましくは20重量部以下であり、より好ましくは10重量部以下であり、さらに好ましくは5重量部以下であり、特に好ましくは2重量部以下である。
【0050】
予備混練ゴム組成物を得る工程においてシリカを混練する場合、シリカ、シランカップリング剤、ブタジエン系ゴムを同時に混練して予備混練ゴム組成物を得てもよく、シリカとブタジエン系ゴムとをまず混練して混練物を得、得られた混練物にシランカップリング剤を混練し、予備混練ゴム組成物を得てもよい。
【0051】
<シリカと予備混練ゴム組成物とを混練する工程>
本発明のゴム組成物の製造方法は、前記工程により得られた予備混練ゴム組成物と、該予備混練ゴム組成物の製造に用いたブタジエン系ゴム100重量部あたり30重量部〜200重量部のシリカとを混練する工程を有する。
【0052】
シリカと予備混練ゴム組成物は、好ましくは混練機によって混練する。混練機としては、バンバリーミキサー、ラボプラストミル、ニーダー、ロール混練機、2軸押出機があげられる。シリカと予備混練ゴム組成物とを混練する温度は、好ましくは160℃以下であり、より好ましくは130℃以下であり、また、好ましくは30℃以上であり、より好ましくは50℃以上であり、さらに好ましくは90℃以上である。シリカと予備混練ゴム組成物とを混練する時間は好ましくは30秒以上20分以下であり、より好ましくは1分以上である。
【0053】
シリカと予備混練ゴム組成物とを混練する工程において混練するシリカの量は、本工程で使用する予備混練ゴム組成物の製造に用いたブタジエン系ゴム100重量部あたり、30重量部〜200重量部であり、好ましくは50重量部〜150重量部であり、さらに好ましくは70重量部〜120重量部である。
【0054】
シリカと予備混練ゴム組成物とを混練する工程において、ブタジエン系ゴム、前述のブタジエン系ゴム以外の重合体、前述の添加剤をシリカ及び予備混練ゴム組成物とともに混練してもよい。また、シリカと予備混練ゴム組成物とを混練する工程の後に、当該工程で得られたゴム組成物とブタジエン系ゴム、前述のブタジエン系ゴム以外の重合体、前述の添加剤とを混練する工程を設けてもよい。
【0055】
シリカと予備混練ゴム組成物とを混練する工程、及び当該工程の後工程において混練するブタジエン系ゴム及び前述のブタジエン系ゴム以外の重合体の総量は、予備混練ゴム組成物の製造に用いたブタジエン系ゴム100重量部あたり、好ましくは20重量部以下であり、より好ましくは10重量部以下であり、さらに好ましくは5重量部以下である。
【0056】
<加硫製ゴム組成物を製造する工程>
前記した方法で得られたゴム組成物と、加硫剤とを混練し、加硫性ゴム組成物を得る。
【0057】
加硫剤としては、硫黄、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄があげられる。混練する加硫剤の量は、混練に使用するゴム組成物の製造に用いた重合体成分100重量部あたり、好ましくは0.1重量部〜15重量部であり、より好ましくは0.3重量部〜10重量部であり、さらに好ましくは0.5重量部〜5重量部である。ここで重合体成分とは、ブタジエン系ゴムを意味するか、またはブタジエン系ゴムと、ブタジエン系ゴム以外の重合体を用いた場合はその重合体との総称を意味する。
【0058】
上記加硫性ゴム組成物を得る工程では、ゴム組成物及び加硫剤とともに加硫促進剤を混練してもよい。
【0059】
加硫促進剤としては、2−メルカプトベンゾチアゾール、ジベンゾチアジルジサルファイド等のチアゾール系加硫促進剤;テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド等のチウラム系加硫促進剤;N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−オキシエチレン−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N−ジイソプロピル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド等のスルフェンアミド系加硫促進剤;ジフェニルグアニジン、ジオルトトリルグアニジン、オルトトリルビグアニジン等のグアニジン系加硫促進剤があげられる。
【0060】
ゴム組成物と加硫剤とを混練する方法としては、ゴム組成物と加硫剤とをバンバリーミキサー、ラボプラストミル、ロール混練機などの混練機を用いて混練する方法があげられる。混練温度は、好ましくは10℃〜100℃であり、より好ましくは20℃〜80℃である。混練時間は、好ましくは30秒〜30分であり、より好ましくは1分〜20分である。
【0061】
<加硫ゴム組成物を製造する工程>
前記した方法で得られた加硫性ゴム組成物を加熱することによって、加硫ゴム組成物が得られる。
【0062】
加硫性ゴム組成物を加熱する方法として、好ましくは、プレス加硫法があげられる。プレス加硫法の一般的な手法としては、一対の金型を用い、加硫温度をX℃として、X℃±0.5℃で金型を通常20分以上加熱する。加熱した金型間に加硫性ゴム組成物を配し、金型を閉じて加硫性ゴムを加圧する。加硫開始時には、加硫性ゴム中の気泡を除くため、2〜3回、金型を開閉して加圧と圧抜きする操作を繰り返す。加硫時間とは、加硫性ゴムに負荷する圧力が所定の圧力になった瞬間から,加硫が終わり圧力が除かれる瞬間までの時間である。加硫終了後、金型を開いて直ちに加硫ゴム組成物からなるシートを取り出す。取出したシートは水冷するか、金属板上に10〜15分間静置して放冷する。加硫性ゴムを加熱する温度は、好ましくは120〜200℃、より好ましくは140〜180℃である。加硫性ゴムを圧縮する圧力は通常3.5MPa以上、好ましくは4MPa以上である。加硫性ゴムを加硫する時間は、好ましくは10分〜2時間、より好ましくは30分〜1時間である。
【0063】
本発明の加硫ゴム組成物の製造方法においてブタジエン系ゴム以外の重合体を使用する場合、全ての工程で使用するブタジエン系ゴム以外の重合体の量は、全ての工程で使用するブタジエン系ゴムの量100重量部あたり、好ましくは500重量部以下であり、より好ましくは300重量部以下である。
【0064】
本発明方法で得られる加硫ゴム組成物は、省燃費性に優れる。また、グリップ性も良好である。
【0065】
本発明方法で得られる加硫ゴム組成物は、タイヤ、靴底、床材、防振材などに用いられ、特に、タイヤに好適に用いられる。
【実施例】
【0066】
物性評価は次の方法で行った。
【0067】
1.ムーニー粘度(ML1+4
JIS K6300(1994)に従って、100℃にて重合体のムーニー粘度を測定した。
【0068】
2.スチレンに由来する繰り返し単位の含量(単位:重量%)
JIS K6383(1995)に従って、屈折率から重合体のスチレンに由来する繰り返し単位の含量を求めた。
【0069】
3.省燃費性
加硫ゴム組成物からなるシートから幅4mm、長さ40mm、厚み1.2mmの短冊上試験片を打ち抜き、試験に供した。粘弾性測定装置(上島製作所社製)によって、歪み1%及び周波数10Hzの条件下で、温度70℃での試験片の損失正接(tanδ(70℃))を測定した。この値が小さいほど、省燃費性に優れる。
【0070】
4.グリップ性
加硫ゴム組成物からなるシートから幅4mm、長さ40mm、厚み1.2mmの短冊上試験片を打ち抜き、試験に供した。粘弾性測定装置(上島製作所社製)によって、歪み2.5%及び周波数10Hzの条件下で、温度0℃での試験片の損失正接(tanδ(0℃))を測定した。この値が大きいほど、グリップ性に優れる。
【0071】
実施例および比較例で使用したブタジエン系ゴム、シリカ、シランカップリング剤及びその他の添加剤は次のものである。
(a)ブタジエン系ゴム
SBR−A:住友化学社製、スチレン‐ブタジエン共重合体。ムーニー粘度(ML1+4(100℃))75、スチレンに由来する繰り返し単位の含量25重量%。
SBR−B:住友化学社製、重合体鎖末端をアミド化合物で変性したスチレン‐ブタジエン共重合体。ムーニー粘度(ML1+4(100℃))70、スチレンに由来する繰り返し単位の含量22重量%。
(b)シリカ
デグッサ社製、商品名:ウルトラシルVN3−G
(c)シランカップリング剤
ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド (デグッサ社製、商品名:Si69)
(d)カーボンブラック
三菱化学社製、商品名:ダイヤブラックN339
(e)伸展油
ジャパンエナジー社製、商品名:JOMOプロセスNC−140
(f)老化防止剤
住友化学社製、商品名:アンチゲン3C
(g)ステアリン酸
新日本理化社製、商品名:ステアリン酸50S
(h)酸化亜鉛
正同化学工業社製、商品名:酸化亜鉛
(i)ワックス
大内新興化学工業社製、商品名:サンノックN
(j)加硫促進剤
住友化学社製、商品名:ソクシノールCZ
住友化学社製、商品名:ソクシノールD
(k)硫黄
鶴見化学工業社製、商品名:微粉硫黄
【0072】
実施例1
SBR−A100重量部、シランカップリング剤6.4重量部を、105℃に設定した10インチロールで5分間混練して混練物を得た。その後、70℃に設定したラボプラストミルに前記混練物を投入し、混練を開始した。混練開始から50秒後に混練物の温度が90℃に達した。その後も混練を続け、混練開始から2分30秒後、混練物の温度が120℃に達したところで混練を終了し、その後混練物を室温まで冷却して予備混練ゴム組成物を得た。
【0073】
予備混練ゴム組成物を70℃に設定したラボプラストミルに投入し、混練を開始した。前記の予備混練ゴム組成物の製造に用いたSBR−Aの量を100重量部として、シリカ78.4重量部、カーボンブラック6.4重量部、伸展油47.6重量部、老化防止剤1.5重量部、ステアリン酸2重量部を、混練開始から30秒後及び1分30秒後の2回に分けてラボプラストミルに投入し、これらと予備混練ゴム組成物とを混練した。混練開始から2分10秒後に混練物の温度が90℃に達した。その後も混練を続け、混練開始から4分10秒後、混練物の温度が120℃に達したところで混練を終了し、ゴム組成物を得た。次に、前記ゴム組成物を調製するために用いた予備混練ゴム組成物の製造に用いたSBR−Aの量を100重量部として、酸化亜鉛2重量部、ワックス1.5重量部を前記ゴム組成物に添加し、70℃に設定した10インチロールで10分間これらを混練し、ゴム組成物を得た。
【0074】
前記ゴム組成物を製造するために用いた予備混練ゴム組成物を製造するために用いたSBR−Aの量を100重量部として、硫黄1.4重量部、加硫促進剤2重量部(ソクシノールCZ1重量部、ソクシノールD1重量部)を前記ゴム組成物に添加し、50℃に設定した10インチロールで10分間これらを混練して加硫性ゴム組成物を得た。
【0075】
前記加硫性ゴム組成物を10インチロールで成形してシートを得た。該シートを160℃、4MPaで45分間加圧し、幅150mm、奥行150mm、厚み1.2mmの加硫ゴム組成物からなるシートを得た。
【0076】
比較例1
SBR−Aを70℃に設定したラボプラストミルに投入し、混練を開始した。前記SBR−A100重量部あたりシリカ78.4重量部、シランカップリング剤6.4重量部、カーボンブラック6.4重量部、伸展油47.6重量部、老化防止剤1.5重量部、ステアリン酸2重量部を、混練開始から30秒後及び1分30秒後の2回に分けてラボプラストミルに投入し、これらとSBR−Aとを混練した。混練開始から2分30秒後に混練物の温度が90℃に達した。その後も混練を続け、混練開始から4分20秒後、混練物の温度が120℃に達したところで混練を終了し、ゴム組成物を得た。次に、前記ゴム組成物を製造するために用いたSBR−Aの量を100重量部として、酸化亜鉛2重量部、ワックス1.5重量部を前記ゴム組成物に添加し、70℃に設定した10インチロールで10分間これらを混練し、ゴム組成物を得た。
【0077】
前記ゴム組成物を製造するために用いたSBR−Aの量を100重量部として、硫黄1.4重量部、加硫促進剤2重量部(ソクシノールCZ1重量部、ソクシノールD1重量部)を前記ゴム組成物に添加し、50℃に設定した10インチロールで10分間これらを混練して加硫性ゴム組成物を得た。
【0078】
前記加硫性ゴム組成物を10インチロールで成形してシートを得た。該シートを160℃、4MPaで45分間加圧し、幅150mm、奥行150mm、厚み1.2mmの加硫ゴム組成物からなるシートを得た。
【0079】
比較例2
SBR−Aを70℃に設定したラボプラストミルに投入し、混練を開始した。SBR−A100重量部あたりシリカ78.4重量部、カーボンブラック6.4重量部、伸展油47.6重量部、老化防止剤1.5重量部、ステアリン酸2重量部を、混練開始から30秒後及び1分30秒後の2回に分けて、ラボプラストミルに投入し、これらとSBR−Aとを混練した。混練開始から2分30秒後に混練物の温度が90℃に達した。その後も混練を続け、混練開始から4分30秒後、混練物の温度が120℃に達したところで混練を終了し、その後室温まで冷却してゴム組成物を得た。
【0080】
前記ゴム組成物、及び前記ゴム組成物を製造するために用いたSBR−Aの量100重量部あたり6.4重量部のシランカップリング剤を、70℃に設定したラボプラストミルに投入し、混練を開始した。混練開始から40秒後に混練物の温度が90℃に達した。その後も混練を続け、混練開始から1分50秒後に混練物の温度が120℃に達したところで、混練を終了し、ゴム組成物を得た。次に、前記ゴム組成物を製造するために用いたSBR−Aの量を100重量部とし、酸化亜鉛2重量部、ワックス1.5重量部を前記ゴム組成物に添加し、70℃に設定した10インチロールで10分間これらを混練してゴム組成物を得た。
【0081】
前記ゴム組成物を製造するために用いたSBR−Aの量を100重量部として、硫黄1.4重量部、加硫促進剤2重量部(ソクシノールCZ1重量部、ソクシノールD1重量部)を前記ゴム組成物に添加し、50℃に設定した10インチロールで10分間これらを混練して加硫性ゴム組成物を得た。
【0082】
前記加硫性ゴム組成物を10インチロールで成形してシートを得た。該シートを160℃、4MPaで45分間加圧し、幅150mm、奥行150mm、厚み1.2mmの加硫ゴム組成物からなるシートを得た。
【0083】
実施例1、比較例1および比較例2のそれぞれで得られた加硫ゴム組成物からなるシートの物性評価結果を表1に示す。
【0084】
【表1】

【0085】
実施例2
SBR−B100重量部、シランカップリング剤6.4重量部を、105℃に設定した10インチロールで5分間混練して混練物を得た。その後、70℃に設定したラボプラストミルに前記混練物を投入し、混練を開始した。混練開始から1分10秒後に混練物の温度が90℃に達した。その後も混練を続け、混練開始から2分50秒後、混練物の温度が120℃に達したところで混練を終了し、その後混練物を室温まで冷却して予備混練ゴム組成物を得た。
【0086】
予備混練ゴム組成物を70℃に設定したラボプラストミルに投入し、混練を開始した。前記の予備混練ゴム組成物を製造するために用いたSBR−Bの量を100重量部として、シリカ78.4重量部、カーボンブラック6.4重量部、伸展油47.6重量部、老化防止剤1.5重量部、ステアリン酸2重量部を、混練開始から30秒後及び1分30秒後の2回に分けてラボプラストミルに投入し、これらを予備混練ゴム組成物と混練した。混練開始から2分20秒後に混練物の温度が90℃に達した。その後も混練を続け、混練開始から4分10秒後、混練物の温度が120℃に達したところで混練を終了し、ゴム組成物を得た。次に、前記ゴム組成物を製造するために用いたSBR−Bの量を100重量部として、酸化亜鉛2重量部、ワックス1.5重量部を前記ゴム組成物に添加し、70℃に設定した10インチロールで10分間これらを混練し、ゴム組成物を得た。
【0087】
前記ゴム組成物を製造するために用いたSBR−Bの量100重量部あたり、硫黄1.4重量部、加硫促進剤2重量部(ソクシノールCZ1重量部、ソクシノールD1重量部)を前記ゴム組成物に添加し、50℃に設定した10イ10インチロールで10分間これらを混練して加硫性ゴム組成物を得た。
【0088】
前記加硫性ゴム組成物を10インチロールで成形してシートを得た。該シートを160℃、4MPaで45分間加熱し、幅150mm、奥行150mm、厚み1.2mmの加硫ゴム組成物からなるシートを得た。
【0089】
実施例2で得られた加硫ゴム組成物からなるシートの物性評価結果を表2に示す。
【0090】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム組成物の製造方法であって、ブタジエン系ゴムと、当該ブタジエン系ゴム100重量部あたり1重量部〜20重量部のシランカップリング剤とを混練して予備混練ゴム組成物を製造する工程、及び、当該予備混練ゴム組成物と、当該予備混練ゴム組成物の製造に用いたブタジエン系ゴム100重量部あたり30重量部〜200重量部のシリカとを混練する工程を有する方法。
【請求項2】
シランカップリング剤が、含硫黄基を有するアルコキシシラン化合物である請求項1に記載のゴム組成物の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法であって、予備混練ゴム組成物を得る工程において、ブタジエン系ゴムとシランカップリング剤とが160℃以下で1分以上20分以下混練される方法。
【請求項4】
加硫性ゴム組成物の製造方法であって、加硫剤と請求項1〜3のいずれかに記載の方法で得られたゴム組成物とを混練する工程を有する方法。
【請求項5】
加硫ゴム組成物の製造方法であって、請求項4に記載の方法で得られた加硫性ゴム組成物を加熱する工程を有する方法。

【公開番号】特開2013−10951(P2013−10951A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−124116(P2012−124116)
【出願日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】