説明

ゴム組成物及びその製造方法

【課題】高い硬度と引張り強度を有し、かつ良好な加工性を有する物性バランスの優れたゴム組成物、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】[1]ゴムにセルロース繊維を配合してなるゴム組成物であって、該セルロース繊維の平均繊維径が1〜200nmであり、該セルロース繊維を構成するセルロースがカルボキシ基を有するゴム組成物、及び[2]ゴムラテックスとセルロース繊維の水分散液とを混合した後、少なくとも水の一部を除去してセルロース繊維/ゴム複合体を得る工程(1)及び得られた複合体とゴムとを混合する工程(2)を有する前記[1]のゴム組成物の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械的強度と加工性のバランスに優れたゴム組成物、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴム組成物は工業用途に広く用いられているが、ゴム組成物を使用した成形品の使用条
件は一段と厳しくなっており、高性能のゴム材料の開発が急務である。
例えば、自動車等の空気入りタイヤに使用されているゴム組成物においては、強度や耐摩耗性等を高めるために、カーボンブラック配合品が汎用されている。しかし、その補強性にも限界があり、カーボンブラックを多量に配合したゴム組成物をタイヤに使用すると、発熱による耐久性の低下や、ゴム組成物の粘度上昇による加工性の低下を招く等の問題がある。また、カーボンブラックの一部又は全部をシリカ系充填剤に置き換える試みも行われているが、シリカ系充填剤は有機系ゴムに親和性がなく均一分散が難しいため、分散不良による機械的強度の低下を招き易く、また未加硫ゴム粘度も高くなり加工性が悪化するという問題がある。
このように、加硫ゴム組成物の強度をさらに高くしつつ、未加硫ゴム粘度を低くして加工性に優れたゴム組成物を得ることは困難であった。
【0003】
一方、ゴムにセルロース短繊維マスターバッチを配合したゴム組成物(特許文献1)も提案されている。しかし、疎水性のゴムと親水性のセルロースを複合化させたものでは、補強材のゴムへの分散性が悪く十分な耐久性及び剛性を発揮できない。またセルロース繊維/ゴム界面の補強性も十分ではない。このため、ゴムが機械的応力を受けた場合に、セルロース繊維の離脱、又は剥離が起こり、十分な強度及び耐久性が得られない。セルロースを微細化して界面を増やして補強性を改善しようとしても、従来でもっとも微細化の進んだミクロフィブリルセルロースを配合しても、十分な強度及び耐久性が得られていない。
そこで、さらにセルロース表面とゴムとの親和性を改良して補強性を高める提案が種々行われている。例えば、セルロースナノ繊維と分散剤を含むゴム組成物(特許文献2)、セルロースナノ繊維とシランカップリング剤を含むゴム組成物(特許文献3)、ゴム成分中に、セルロース繊維の−OH基の水素結合を阻害するために、該−OH基の一部又は全部をマスク剤でマスクしたセルロースナノ繊維を含むゴム組成物(特許文献4)、変性セルロース繊維を含むゴム組成物(特許文献5)、ゴム成分と化学変性ミクロフィブリルセルロースとを含有する加硫ゴム組成物(特許文献6)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−206864号公報
【特許文献2】特開2009−191197号公報
【特許文献3】特開2009−191198号公報
【特許文献4】特開2009−249449号公報
【特許文献5】特開2010−254925号公報
【特許文献6】特開2009−084564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1〜6のゴム組成物では、近年要求されているさらに高い硬度・引張り強度と良好な加工性が高次バランスしたゴム組成物は得られていない。
本発明は、高い硬度と引張り強度を有し、かつ良好な加工性を有する物性バランスの優れたゴム組成物、及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、特定のセルロース繊維をゴムと配合することにより、加工性を低下させずに、硬度及び引張り強度を向上できることを見出した。
すなわち、本発明は、次の[1]及び[2]を提供する。
[1]ゴムにセルロース繊維を配合してなるゴム組成物であって、該セルロース繊維の平均繊維径が1〜200nmであり、該セルロース繊維を構成するセルロースがカルボキシ基を有するものである、ゴム組成物。
[2]下記工程(1)及び(2)を有する前記[1]のゴム組成物の製造方法。
工程(1):ゴムラテックスとセルロース繊維の水分散液とを混合した後、少なくとも水の一部を除去してセルロース繊維/ゴム複合体を得る工程
工程(2):前記工程(1)で得られた複合体とゴムとを混合する工程
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、高い硬度と引張り強度を有し、かつ良好な加工性を有する物性バランスの優れたゴム組成物、及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[ゴム組成物]
本発明のゴム組成物は、ゴムにセルロース繊維を配合してなるゴム組成物であって、該セルロース繊維の平均繊維径が1〜200nmであり、該セルロース繊維を構成するセルロースがカルボキシ基を有することを特徴とする。
以下、ゴム、セルロース繊維、及びゴム組成物の製造方法について説明する。
【0009】
[ゴム]
本発明において使用するゴムは特に限定されないが、補強性の観点からジエン系ゴムが好ましい。
ジエン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)、ポリイソプレンゴム(IR)、ポリブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、ブチルゴム(IIR)、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体ゴム(NBR)、及び変性天然ゴム等が挙げられる。変性天然ゴムとしては、エポキシ化天然ゴム、水素化天然ゴム等が挙げられる。
これらの中では、ゴム組成物の良好な加工性と高反発弾性を両立させる観点から、天然ゴム(NR)、ポリイソプレンゴム(IR)、ポリブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)から選ばれる1種以上が好ましく、天然ゴム(NR)、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)及び変性天然ゴムから選ばれる1種以上がより好ましい。
ジエン系ゴムは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0010】
[セルロース繊維]
本発明で用いられるセルロース繊維は、その平均繊維径が1〜200nmであり、セルロース繊維を構成するセルロースが、カルボキシ基を有するものである。
本発明で用いられるセルロース繊維は、天然セルロース繊維をその構成単位であるミクロフィブリル(結晶化度50〜95%程度、セルロース分子30〜100本よりなる)に分離することにより得られるものが好ましい。なお、該セルロース繊維は必ずしもミクロフィブリル1本1本の単位に分離されている必要はない。
ミクロフィブリルの形状は原料によって様々であるが、多くの天然セルロース繊維においては、セルロース分子鎖が数十本集まって結晶化した矩形の断面構造を有する。例えば高等植物の細胞壁中のミクロフィブリルは、セルロース分子鎖が6本×6本集まった正方形の断面構造である。本発明で用いられるセルロース繊維の繊維径は、実施例で記載する原子間力顕微鏡像で得られるセルロース繊維の高さを便宜的に繊維径として用いる。
【0011】
本発明で用いられるセルロース繊維の平均繊維径は1〜200nmであり、好ましくは1〜100nm、より好ましくは1〜50nm、更に好ましくは1〜20nm、より更に好ましくは1〜10nmである。かかる平均繊維径を有するセルロース繊維を用いることで、ゴムの引張り強度と硬度を効果的に高めることができる。
セルロース繊維の長さは、繊維長を平均アスペクト比(繊維長/繊維径)で表すと、好ましくは10〜1000、より好ましくは10〜500、更に好ましくは100〜350である。
平均繊維径及び平均アスペクト比の具体的な測定方法は、実施例記載の方法による。
【0012】
セルロース繊維は、天然セルロースにN−オキシル化合物を触媒として酸化反応させて得られるものであることが好ましい。セルロース繊維を構成するセルロースはカルボキシ基を有するものであり、そのカルボキシ基含有量は、好ましくは0.1〜3.0mmol/gであり、より好ましくは0.4〜2mmol/g、更に好ましくは0.6〜1.8mmol/g、より更に好ましくは0.6〜1.6mmol/gである。かかるセルロース繊維を用いることで、上述の微細な繊維径を一層容易に達成することができ、ゴムの加工性を維持したまま、硬度と引張り強度を高めることができる。
なお、カルボキシ基含有量は、実施例記載の方法によって測定される。
【0013】
また、前記セルロース繊維に対して、変性処理を施すことで得られるセルロース繊維誘導体も、セルロースがカルボキシ基を有する限り、本発明のセルロース繊維に包含される。該セルロース繊維誘導体は、セルロースがカルボキシ基を有しているので、微細な繊維径を容易に達成することができる。なお、天然セルロースにN−オキシル化合物を触媒として酸化反応させることで得られるセルロース繊維と、該セルロース繊維の誘導体とは、どちらか一方を用いることもでき、両者を併用することもできる。
【0014】
<セルロース繊維の製造>
天然セルロースの生合成の過程においては、通常、ミクロフィブリルと呼ばれるナノファイバーがまず形成され、これらが多束化して高次な固体構造を構築している。本発明で用いるセルロース繊維は、好適には、天然由来のセルロース固体原料においてミクロフィブリル間の強い凝集力の原動となっている表面間の水素結合を弱めるために、N−オキシル化合物を触媒として酸化反応させることでミクロフィブリル表面の水酸基の一部を酸化し、カルボキシ基に変換することによって得ることができる。
したがって、セルロースに存在するカルボキシ基量の総和(カルボキシ基含有量)が多い方が、より微小な繊維径として安定に存在することができる。また水中においては、電気的な反発力が生じることにより、ミクロフィブリルが凝集を維持せずにばらばらになろうとする傾向が高まり、ナノファイバーの分散安定性がより増大する。
【0015】
本発明で用いられるセルロース繊維は、特開2008−1728号公報や国際公開2009/069641号パンフレットの方法によれば、効率的に製造することができる。
工程(i):N−オキシル化合物と、酸化剤とを含む反応溶液中で、天然セルロース繊維を酸化して反応物繊維を得る工程(酸化工程)
工程(ii):得られた反応物繊維を媒体に分散させ微細化する工程(微細化工程)
【0016】
(工程(i):酸化工程)
工程(i)では、まず天然セルロース繊維を水中に分散させたスラリーを調製する。スラリーは、原料となる天然セルロース繊維(絶対乾燥基準)に対して約10〜1000倍量(質量基準)の水を加え、ミキサー等で処理することにより得られる。
天然セルロース繊維としては、針葉樹系パルプ、広葉樹系パルプ等の木材パルプ;コットンリンター、コットンリントのような綿系パルプ;麦わらパルプ、バガスパルプ等の非木材系パルプ;バクテリアセルロース等が挙げられ、これらを1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
天然セルロース繊維は、叩解等の表面積を高める処理が施されていてもよい。
天然セルロース繊維の平均繊維径は特に限定されないが、N−オキシル化合物の反応性の観点から、5〜100μmが好ましく、10〜50μmがより好ましい。天然セルロース繊維平均繊維径は、篩等を用いて調整することができる。
【0017】
工程(i)における酸化触媒としては、N−オキシル化合物が用いられる。
N−オキシル化合物は、分子内にN−オキシル構造を1個以上有する化合物であり、好ましくは、ピペリジン類のN−オキシド化合物である。
N−オキシル化合物の好適例としては、2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジン−N−オキシル(TEMPO)、4−アセトアミド−TEMPO、4−カルボキシ−TEMPO、4−フォスフォノオキシ−TEMPO、4−ヒドロキシ−TEMPO、4−アルコキシ−TEMPO等が挙げられるが、TEMPO及び4−アセトアミド−TEMPOがより好ましい。
N−オキシル化合物の添加は触媒量であればよく、原料として用いた天然セルロース繊維(絶対乾燥基準)に対して通常0.1〜10質量%、好ましくは0.2〜5質量%、より好ましくは0.3〜3質量%である。
【0018】
工程(i)では、酸化剤を使用する。酸化剤としては、特に、次亜塩素酸、次亜臭素酸等の次亜ハロゲン酸又はそのアルカリ金属塩等の塩、亜ハロゲン酸又はその塩、過ハロゲン酸又はその塩、過酸化水素、過有機酸等が好ましい。
酸化剤の使用量は、通常、原料として用いた天然セルロース繊維(絶対乾燥基準)に対して好ましくは1〜100質量%となる範囲である。
また、共酸化剤(例えば、臭化ナトリウム等の臭化アルカリ金属)を併用することもできる。共酸化剤の使用量は、通常、原料として用いた天然セルロース繊維(絶対乾燥基準)に対して好ましくは1〜30質量%となる範囲である。
【0019】
より具体的には、酸化剤として次亜ハロゲン酸又はそのアルカリ金属塩と臭化アルカリ金属とをアルカリ性の反応溶液中で反応を行い、天然セルロース繊維を酸化して反応物繊維を得る。その場合の前記反応溶液のpHは9〜12とすることが好ましい。
あるいは、酸化剤として前述の亜ハロゲン酸又はその塩と次亜ハロゲン酸又はそのアルカリ金属塩とを、中性又は酸性の反応溶液中で反応を行い、天然セルロース繊維を酸化して反応物繊維を得る。その場合の前記反応溶液のpHは4〜7とすることが好ましい。
酸化処理の温度(反応溶液の温度)は、好ましくは1〜50℃であるが、室温で反応可能であり、特に温度制御は必要としない。反応時間は1〜240分間が好ましい。
【0020】
工程(i)の終了後、工程(ii)の前に精製工程を実施し、未反応の酸化剤や各種副生成物等の、前記反応溶液中に含まれる反応物繊維及び水以外の不純物を除去することができる。反応物繊維は通常、この段階ではナノファイバー単位までばらばらに分散していないため、精製工程では、例えば水洗とろ過を繰り返す精製法を行うことができる。その際に用いる精製装置は特に制限されない。
こうして得られた精製後の反応物繊維は、通常、適量の水を含浸させた状態で工程(ii)に送られるが、必要に応じ、乾燥処理して繊維状や粉末状としてもよい。
【0021】
(工程(ii):微細化工程)
工程(ii)では、工程(i)で得られた反応物繊維を媒体中に分散させ微細化する処理を施す。この微細化処理を施すことにより、平均繊維径及び平均アスペクト比がそれぞれ前記範囲にあるセルロース繊維を得ることができる。
工程(ii)において、分散媒体としては、通常、水が好ましいが、水以外にも目的に応じて水に可溶なエタノール等のアルコール類、エーテル類、ケトン類等の有機溶媒やそれらの混合物を使用することもできる。
微細化処理に使用する分散機としては、例えば、離解機、叩解機、低圧ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、グラインダー、カッターミル、ボールミル、ジェットミル、単軸押出機、二軸押出機、超音波攪拌機、家庭用ジューサーミキサー等が挙げられる。微細化処理における反応物繊維の固形分濃度は50質量%以下が好ましい。
【0022】
工程(ii)で得られるセルロース繊維は、必要に応じて、固形分濃度を調整し、分散液状の形態(目視的に無色透明又は不透明な液)、又は乾燥処理した粉末状の形態(ただし、セルロース繊維が凝集した粉末状であり、セルロース粒子を意味するものではない)とすることができる。分散液状にする場合、分散媒として水のみを使用してもよく、水と前記の有機溶媒や、界面活性剤、酸、塩基等との混合溶媒を使用してもよい。
【0023】
以上の工程(i)及び(ii)により、セルロース構成単位のC6位の水酸基がN−オキシル化合物酸化によるアルデヒド基を経由し、更にカルボキシ基へと選択的に酸化され、カルボキシ基含有量が好ましくは0.1〜3.0mmol/gのセルロースからなり、平均繊維径が1〜200nmの微細化された高結晶性のセルロース繊維を容易に得ることができる。
この高結晶性のセルロース繊維は、セルロースI型結晶構造を有していることが好ましい。これは、本発明で用いるセルロース繊維が、I型結晶構造を有する天然由来のセルロース原料が表面酸化され、微細化された繊維であることを意味する。すなわち、天然セルロース繊維は、その生合成の過程において生産されるミクロフィブリルが多束化して高次な固体構造を構築しているところ、そのミクロフィブリル間の強い凝集力(表面間の水素結合)を、工程(i)の酸化処理によるアルデヒド基又はカルボキシ基の導入によって弱め、更に工程(ii)の微細化処理を施すことで、好ましくは1本1本のミクロフィブリルに分離された本発明のセルロース繊維を得ることができる。
そして、工程(i)の酸化処理条件を調整することで、カルボキシ基含有量を所定の範囲内に調整して極性を変化させることができ、またカルボキシ基の微細化処理によって、セルロース繊維の平均繊維径、平均繊維長、平均アスペクト比等を制御することができる。
【0024】
(セルロース繊維の変性処理)
このようにして得られたセルロース繊維は、必要に応じて変性処理することができる。セルロース繊維の変性処理としては、セルロース繊維のカルボキシ基のエステル化又はアミド化、水酸基のアシル化、ウレタン化、エーテル化の他、シリル基、オキシラン基、オキセタン基、チイラン基、チエタン基等の反応性基を有する化合物等と水酸基との反応によりセルロース繊維誘導体を得る方法が挙げられる。また、ゴムとの親和性を向上させる目的で、ジエン系ポリマーによる変性やスルフィド系シランカップリング剤による変性も行うことができる。
セルロース繊維のカルボキシ基のエステル化又はアミド化は、アルキル基を有するアルコール又はアミドと反応させることにより行うことができる。ここで、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、2−プロピル基、ブチル基、2−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、ミリスチル基、パルミチル基、ステアリル基等が挙げられる。
【0025】
セルロース繊維の水酸基のアシル化、ウレタン化又はエーテル化は、アシル基を有する酸やハロゲン化物、イソシアネート基を有する化合物、又はアルキル基を有するアルコールと反応させることにより行うことができる。
ここで、アシル基としては、アセチル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、プロピオニル基、プロピオロイル基、ブチリル基、2−ブチリル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基、オクタノイル基、ノナノイル基、デカノイル基、ウンデカノイル基、ドデカノイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、ナフトイル基、ニコチノイル基、イソニコチノイル基、フロイル基、シンナモイル基等が挙げられる。
また、イソシアネート基としては、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアノイル基等のイソシアネート基等が挙げられ、アルキル基としては前記のものが挙げられる。
このような各種の変性処理によって得られたセルロース繊維誘導体は、未変性のセルロース繊維に対して親疎水性が変化することに起因して、ゴム組成物中での分散性が向上する場合があり、用いるゴム組成物に応じて任意に選択することができる。
【0026】
[ゴム組成物]
本発明のゴム組成物は、少なくとも前記ゴムに前記セルロース繊維を配合してなる。セルロース繊維の配合量に特に制限はないが、硬度、引っ張り強度及び加工性の観点から、ゴム100質量部に対して、セルロース繊維を0.1〜100質量部配合することが好ましく、0.5〜80質量部配合することがより好ましく、1〜60質量部配合することが更に好ましい。セルロース繊維の配合量が、ゴム100質量部に対して、0.1質量部以上であれば、ゴム組成物の強度、硬度や引張り強度を効率的に向上させることができ、100質量部以下では、ゴム組成物中にセルロース繊維を分散させ、ゴム組成物の加工性を維持しやすい。
本発明のゴム組成物中の前記セルロース繊維の含有量は、硬度、引っ張り強度及び加工性の観点から、0.02〜50質量%が好ましく、0.05〜20質量%がより好ましく、0.1〜10質量%がより好ましい。
また、本発明のゴム組成物中のゴムの含有量は、硬度、引っ張り強度及び加工性の観点から、25〜90質量%が好ましく、30〜80質量%がより好ましく、35〜75質量%が更に好ましい。
なお、本発明のゴム組成物には、後述する添加剤を配合することができる。
【0027】
[ゴム組成物の製造方法]
本発明のゴム組成物の製造方法に特に制限はないが、下記工程(1)及び(2)を有する方法によれば、効率的に製造することができる。
工程(1):ゴムラテックスとセルロース繊維の水分散液とを混合した後、少なくとも水の一部を除去してセルロース繊維/ゴム複合体を得る工程
工程(2):前記工程(1)で得られた複合体とゴムとを混合する工程
【0028】
工程(1)におけるゴムラテックスとしては特に制限はないが、ラテックス状の前記ゴム、特に天然ゴムラテックス、BRラテックス、SBRラテックス、NBRラテックス、これらの変性ラテックス等のジエン系ゴムラテックスが好適に用いられる。得られるゴム組成物の物性に影響を与えないようにする観点から、工程(2)で用いるゴム種と同種のゴム成分を有するラテックスが好ましく、共重合系のゴムラテックスでは工程(2)で用いるゴム成分と同じ質量組成比のものが好ましい。
セルロース繊維とゴムラテックスとの混合質量比(乾燥質量比)は、セルロース繊維100質量部に対して、ゴムラテックスを10〜500質量部混合することが好ましく、20〜300質量部混合することがより好ましい。
混合方法としては、高い剪断力と圧力とをかけて分散を促進する観点から、ホモジナイザーによる混合方法が好ましいが、プロペラ式攪拌装置、ロータリー攪拌装置、電磁攪拌装置等の方法を用いることもできる。
次いで、得られたゴム混合物を乾燥し、少なくとも水の一部を除去してセルロース繊維/ゴム複合体(複合ラテックス)を得る。乾燥は、完全に水分を除去するまで行う必要はなく、本発明の目的を損なわない限り水分を含有していてもよい。乾燥方法としては、水絞りロールによって水を除去した後に加熱オーブンで乾燥させる方法、パルス燃焼による衝撃波により乾燥させる方法、凍結乾燥法、噴霧乾燥法等を採用することができる。
【0029】
工程(2)において、前記工程(1)で得られた複合体(複合ラテックス)とゴムとを混合する。その際の温度は通常10〜300℃であり、好ましくは20〜200℃である。
工程(2)における混合方法は、工程(1)における混合方法と同じ方法を用いることができる。
工程(1)で得られた複合体とゴムとの混合質量比(乾燥質量比)は、ゴム100質量部に対して、セルロース繊維が好ましくは0.1〜100質量部、より好ましくは0.5〜80質量部、更に好ましくは1〜60質量部である。
ゴム100質量部に対して、セルロース繊維/ゴム複合体は0.2〜200質量部、より好ましくは1〜160質量部、更に好ましくは2〜120質量部用いることが好ましい。
工程(2)においては、工程(1)で得られた複合体に後述する添加剤を予め分散した後、ゴムと混合することもできる。
【0030】
<ゴム組成物の添加剤>
本発明のゴム組成物には、前記セルロース繊維に加えて、本発明の目的が損なわれない範囲で、所望により、ゴム工業界で通常用いられるカーボンブラックやシリカ等の補強用充填材、各種薬品、例えば加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、スコーチ防止剤、亜鉛華、ステアリン酸、プロセスオイル、植物油脂、可塑剤等のタイヤ用、その他一般ゴム用に配合されている各種添加剤を従来の一般的な量で配合させることができる。
【0031】
(補強用充填材)
使用できるカーボンブラックに特に制限はないが、得られるゴム組成物の機械的強度と高反発弾性を両立する観点から、窒素吸着比表面積(N2SA;JIS K6217に準拠して測定)が20〜90m2/gのものが好ましく、25〜90m2/gのものがより好ましい。このようなカーボンブラックとしては、例えば、HAF、FEF、GPF、SRF、N339、IISAF−HS(N285)等が挙げられる。カーボンブラックの配合量は、ゴム、特にジエン系ゴム100質量部に対し、好ましくは100質量部以下、より好ましくは80質量部以下、更に好ましくは70質量部以下である。
使用できるシリカも特に制限はなく、例えば、湿式シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム等が挙げられ、なかでも破壊特性の改良効果に優れる湿式シリカが好ましい。シルカの配合量は、ゴム、特にジエン系ゴム100質量部に対して、好ましくは80質量部以下、より好ましくは60質量部以下、更に好ましくは50質量部以下である。
【0032】
(シランカップリング剤)
本発明のゴム組成物においては、補強性充填材としてシリカを用いる場合、その補強性等を更に向上させる目的で、シランカップリッグ剤を配合することができる。使用できるシランカップリング剤に特に制限はなく、スルフィド系、メルカプト系、ビニル系、アミノ系、グリシドキシ系、ニトロ系、クロロ系等のシランカップリング剤が挙げられる。これらの中ではスルフィド系シランカップリング剤がより好ましい。
スルフィド系シランカップリング剤の具体例としては、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4−トリエトキシシリルブチル)テトラスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3−オクタノイルチオ−1−プロピルトリメトキシシラン、3−オクタノイルチオ−1−プロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
シランカップリング剤の配合量は、シランカップリング剤の種類等により異なるが、シリカに対して、好ましくは1〜20質量%、より好ましくは5〜15質量%の範囲で選定される。
【0033】
(加硫剤、加硫促進剤)
加硫剤としては、有機過酸化物、硫黄系加硫剤を使用することができる。有機過酸化物としては、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゼン、ジ−t−ブチルパーオキシ−ジイソプロピルベンゼン等が挙げられ、硫黄系加硫剤としては、硫黄、モルホリンジスルフィド等が挙げられる。
これらの中では、硫黄系加硫剤が好ましく、特に硫黄が好適である。その使用量としては、反発弾性及び機械的強度の確保の観点から、ゴム、特にジエン系ゴム100質量部に対し、硫黄分(硫黄及び硫黄供与剤の硫黄分の合計量)を好ましくは0.1〜10質量部、より好ましくは0.5〜5質量部、配合することが好ましい。
使用できる加硫促進剤としては、例えば、2−メルカプトベンゾチアゾール(MTB)、ジ−2−ジベンゾチアジルジスルフィド(MBTS)、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド(CBS)等のチアゾール系; N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド(CBS)、N−tert−ブチル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド(TBBS)、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド等のスルフェンアミド系; ジフェニルグアニジン(DPG)等のグアニジン系の加硫促進剤等が挙げられる。
その使用量は、ゴム、特にジエン系ゴム100質量部に対し、好ましくは0.1〜5.0質量部、より好ましくは0.2〜3.0質量部である。
【0034】
(その他の添加剤)
軟化剤として用いるプロセスオイルとしては、例えば、パラフィン系、ナフテン系、芳香族系等を挙げられるが、引張強度、耐摩耗性を重視する用途には芳香族系が、ヒステリシスロス、低温特性を重視する用途にはナフテン系又はパラフィン系が用いられる。その使用量は、引張強度、低発熱性の観点から、ゴム、特にジエン系ゴム100質量部に対して、好ましくは0〜100質量部、より好ましくは80質量部以下であり、更に好ましくは50質量部以下である。
使用できる老化防止剤としては、例えば、N−イソプロピル−N'−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−(1,3−ジメチルブチル)−N'−フェニル−p−フェニレンジアミン、6−エトキシ−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン、ジフェニルアミンとアセトンの高温縮合物等が挙げられる。その使用量は、ゴム、特にジエン系ゴム100質量部に対して、好ましくは0.1〜6.0質量部、より好ましくは0.3〜5.0質量部である。
【0035】
また、本発明のゴム組成物は、公知の方法で混練して組成物とし、加硫又は架橋して使用することができる。例えば、ロール等の開放式混練機、バンバリーミキサー等の密閉式混練機等の混練機を用いて混練し、成形加工後に加硫を行い、各種ゴム製品用途に適用することができる。例えば、タイヤ用途を始め、防振ゴム、防舷材,ベルト、ホースその他の工業品等の用途に用いることができるが、特に、低燃費用タイヤ、大型タイヤ、高性能タイヤのトレッド用ゴムとして好適に使用される。
【実施例】
【0036】
以下、実施例、比較例において、各物性の測定、評価は、以下の方法により行った。
<セルロース繊維の平均繊維径の測定>
固形分濃度で0.001質量%のセルロース繊維の水分散液を調製する。この分散液を、マイカ(雲母)上に滴下して乾燥したものを観察試料とする。原子間力顕微鏡(エスアイアイナノテクノロジー株式会社製、NanoNaVi IIe, SPA400,プローブは同社製のSI−DF40Alを使用。)を用いて、観察試料中のセルロース繊維の繊維高さを測定する。セルロース繊維が確認できる顕微鏡画像において、セルロース繊維を50本抽出し、それらの繊維高さから平均繊維径を算出する。
【0037】
<セルロース繊維の平均アスペクト比の測定>
セルロース繊維に水を加えて調製した分散液(セルロース繊維の濃度0.005〜0.04質量%)の粘度から算出する。分散液の粘度は、レオメーター(MCR、DG42(二重円筒)、PHYSICA社製)を用いて20℃で測定する。
分散液のセルロース繊維の質量濃度と分散液の水に対する比粘度との関係から、下記式(1)を用いてセルロース繊維のアスペクト比を逆算し、これを平均アスペクト比とする。式(1)は、The Theory of Polymer Dynamics,M.DOI and D.F.EDWARDS, CLARENDON PRESS・OXFORD, 1986, p312に記載の剛直棒状分子の粘度式(8.138)と、Lb2×ρ=M/NAの関係〔式中、Lは繊維長、bは繊維幅(セルロース繊維の断面は正方形とする)、ρはセルロース繊維の濃度(kg/m3)、Mは分子量、NAはアボガドロ数を表す〕から導出される。なお粘度式(8.138)において、剛直棒状分子=セルロース繊維とした。また、式(1)中、ηSPは比粘度、πは円周率、lnは自然対数、Pはアスペクト比(L/b)、γ=0.8、ρSは分散媒の密度(kg/m3)、ρ0はセルロース結晶の密度(kg/m3)、Cはセルロースの質量濃度(C=ρ/ρS)を表す。
【0038】
【数1】

【0039】
<セルロース繊維のカルボキシ基含有量の測定>
乾燥質量0.5gのセルロース繊維を100mlビーカーにとり、イオン交換水を加えて全体で55mlとし、そこに0.01M塩化ナトリウム水溶液5mlを加えて分散液を調製し、セルロース繊維が十分に分散するまで該分散液を攪拌する。この分散液に0.1M塩酸を加えてpHを2.5〜3に調整する。自動滴定装置(AUT−50、東亜ディーケーケー株式会社製)を用い、0.05M水酸化ナトリウム水溶液を待ち時間60秒の条件で該分散液に滴下する。1分ごとの電導度及びpHの値を測定し、pH11程度になるまで測定を続け、電導度曲線を得る。この電導度曲線から、水酸化ナトリウム滴定量を求め、次式によりセルロース繊維のカルボキシ基含有量を算出する。
カルボキシ基含有量(mmol/g)=水酸化ナトリウム滴定量(ml)×水酸化ナトリウム水溶液濃度(0.05M)/セルロース繊維の質量(0.5g)
【0040】
<ムーニー粘度の測定>
JIS K6300−1994に基づき、株式会社上島製作所製の測定装置を用いて測定した。
L形ローターと角形溝のダイを用い、混練した未加硫ゴム試料を100℃で1分間予熱をした後、ロータの回転をスタートさせ4分後の値をML1+4とした。このML1+4の値を、対照物(比較例1)と対比した指数として示した。結果は比較例1の値を100として指数表示した。この値が小さいほど加工性に優れることを示す。
<硬度の測定>
JIS K−6301に従い、JIS A型硬度計を用いて硬度を測定した。この値が大きいほど硬いことを示す。
<引張り応力の測定>
JIS−6301に従い、ゴムシートを所定のダンベル形状を打ち抜き、加硫ゴムの引張り試験を行い、伸び50%、100%、300%時の引張り応力である50%モジュラス、100%モジュラス、300%モジュラスをそれぞれ測定した。測定値は、実施例1及び比較例2と3は比較例1の値を100として、実施例2及び比較例5と6は比較例4の値を100として、実施例3及び比較例8と9は比較例7の値を100として、それぞれの実施例の値をそのインデックス表示としたものである。この値が大きいほど引張応力に強いことを示す。
【0041】
製造例1(セルロース繊維/SBR複合体の製造)
(1)セルロース繊維の製造
まず、以下の原料等を用意した。
天然繊維:針葉樹の漂白クラフトパルプ(フレッチャー チャレンジ カナダ社製、商品名「Machenzie」、CSF650ml)
TEMPO:市販品(ALDRICH社製、 Free radical、98質量%)
次亜塩素酸ナトリウム:市販品(和光純薬工業株式会社製、Cl:5%)
臭化ナトリウム:市販品(和光純薬工業株式会社製)
次に、漂白クラフトパルプ100gを9900gのイオン交換水で十分に攪拌した後、漂白クラフトパルプ質量100gに対し、TEMPO 1.25質量%、臭化ナトリウム12.5質量%、次亜塩素酸ナトリウム28.4質量%を20℃でこの順で添加した。pHスタットを用い、0.5M水酸化ナトリウムを滴下してpHを10.5に保持し、酸化反応を行った。酸化反応を120分行った後に滴下を停止し、酸化パルプを得た。イオン交換水を用いて酸化パルプを十分に洗浄し、次いで脱水処理を行った。その後、前記酸化パルプをイオン交換水により固形分1質量%に調整し、高圧ホモジナイザー(スターバーストラボ HJP−25005、スギノマシン株式会社製)を用いて、245MPaで微細化処理を2回行い、セルロース繊維の水分散液を得た。分散液の固形分濃度は、1質量%であった。
得られたセルロース繊維の平均繊維径は3.3nm、平均アスペクト比は225、カルボキシ基含有量は1.2mmol/gであった。
【0042】
(2)セルロース繊維/SBR複合体の調製
SBRラテックス(日本ゼオン株式会社製、商品名:Nipol LX119)を用意した。SBRラテックスの樹脂濃度は50質量%であり、樹脂粒子の形状は球状であり、その平均粒径は50nmであった。
前記(1)で得られたセルロース繊維の分散液3000gと、上記で用意したSBRラテックス60gとを、5000mlのポリエチレン製容器に注ぎ、分散機(ラボリューション、プライミクス株式会社製)を用いて3000rpm、60分間混合し、複合ラテックスを得た。
この複合ラテックスを、ポリプロピレン性のトレー(内寸280×190×34mm)に800gづつ注ぎ、23℃、50%RH環境において1週間自然乾燥させ、セルロース繊維/SBR複合体を得た。複合ラテックス調製時の仕込み量から計算されたセルロース繊維の配合量は50質量%であった。
【0043】
製造例2(ミクロフィブリルセルロース/SBR複合体の製造)
製造例1で得られたセルロース繊維の水分散液に替えて、ミクロフィブリルセルロース(商品名:セリッシュFD-200L、ダイセル化学工業株式会社製)をイオン交換水により固形分1質量%に調整した水分散液を用いた以外は、製造例1と同じ方法により、ミクロフィブリルセルロース/SBR複合体を得た。
製造例3(SBRラテックス乾燥体の製造)
製造例1において(1)を省略し、(2)のセルロース繊維分散液を除いた以外は、製造例1(2)と同じ方法により、セルロース繊維を含まないSBRラテックス乾燥体を得た。
【0044】
実施例1〜3及び比較例1〜9
製造例1又は2で得られたセルロース/SBR複合体を用いてゴム組成物を製造した。
表1に示す配合組成において、加硫促進剤と硫黄を除く成分を1.7リットルの密閉型ミキサーで3〜5分間混練し、温度が165℃に達したときに放出してゴム組成物を得た。再度、該ゴム組成物を同ミキサーで同様に混合し、温度が165℃に達したときに放出した。最後に該ゴム組成物に加硫促進剤と硫黄を加えて混練し、未加硫ゴム組成物を得た。
得られた未加硫ゴム組成物を15×15×0.2cmの金型中で160℃で16分間加硫処理して加硫ゴムシートを調製し、その物性を評価した。結果を表1に示す。
【0045】
【表1】

【0046】
なお、表1に示す各成分の詳細は、以下のとおりである。
*1:溶液重合スチレン・ブタジエンゴム、旭化成ケミカルズ株式会社製、商品名:タフデン2830、油展37.5%
*2:製造例1で得られたセルロース繊維複合体
*3:製造例2で得られたミクロフィブリルセルロース複合体
*4:製造例3で得られたSBRラテックス乾燥体
*5:東海カーボン株式会社製、商品名:シースト3
*6:東ソー・シリカ株式会社製、沈殿法シリカ(ホワイトカーボン)、商品名:ニップシールAQ
*7:デグッサ社製、商品名:Si69、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド
*8:花王株式会社製、商品名:ルナックS−70V
*9:正同化学工業株式会社製、酸化亜鉛3種
*10:大内新興化学工業株式会社製、グアニジン系加硫促進剤、商品名:ノクセラーD、1,3−ジフェニルグアニジン(DPG)
*11:大内新興化学工業株式会社製、チアゾール系加硫促進剤、商品名:ノクセラーDM、ジ−2−ベンゾチアジルジスルフィド(MBTS)
*12:三新化学工業株式会社製、スルフェンアミド系加硫促進剤、商品名:サンセラーNS、N−tert−ブチル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド(TBBS)
*13:鶴見化学工業株式会社製、金華印油入微粉硫黄
【0047】
表1から、実施例1〜3のゴム組成物は、比較例1〜9のゴム組成物に比べて、硬度、引張り強度が高く、ムーニー粘度も小さく加工性に優れていることが分かる。
実施例1と比較例2及び3、実施例2と比較例5及び6、実施例3と比較例8および99とを対比しても、従来のカーボンブラックやミクロフィブリルセルロース複合体を使用した比較例のゴム組成物より、実施例1〜3のゴム組成物の方が硬度、引張り強度が大幅に優れていることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明のゴム組成物は、高い硬度と引張り強度を有し、かつ良好な加工性を有する物性バランスに優れている。このため、本発明のゴム組成物は、例えば空気入りタイヤ用ゴム組成物として、特にタイヤトレッド用、ベーストレッド用、カーカスコート用、サイドウォール用、ベルトコート用、ビートフィラー用、インナーライナー用等として有用である。ほかにも、高硬度・強度を必要とされるゴム部材、例えば免震ゴム等として有用である。
特に本発明のゴム組成物をトレッドに用いた空気入りタイヤは、反発弾性に優れ、転がり抵抗が低く低燃費性に優れる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴムにセルロース繊維を配合してなるゴム組成物であって、該セルロース繊維の平均繊維径が1〜200nmであり、該セルロース繊維を構成するセルロースがカルボキシ基を有するものである、ゴム組成物。
【請求項2】
セルロース繊維を構成するセルロースのカルボキシ基含有量が0.1〜3.0mmol/gである、請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
セルロース繊維が、天然セルロースにN−オキシル化合物を触媒として酸化反応させて得られるものである、請求項1又は2に記載のゴム組成物。
【請求項4】
ゴムがジエン系ゴムである、請求項1〜3のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項5】
ゴム100質量部に対して、セルロース繊維を0.1〜100質量部配合する、請求項1〜4のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項6】
さらに無機充填剤を含む、請求項1〜5のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項7】
さらにシランカップリング剤を含む、請求項1〜6のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項8】
下記工程(1)及び(2)を有する、請求項1〜7のいずれかに記載のゴム組成物の製造方法。
工程(1):ゴムラテックスとセルロース繊維の水分散液とを混合した後、少なくとも水の一部を除去してセルロース繊維/ゴム複合体を得る工程
工程(2):前記工程(1)で得られた複合体とゴムとを混合する工程

【公開番号】特開2013−18918(P2013−18918A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−155179(P2011−155179)
【出願日】平成23年7月13日(2011.7.13)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】