説明

ゴム組成物及びその製造方法

【課題】カップリング剤とゴム成分との反応性を向上させ、低発熱性に優れたゴム組成物及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】ゴム成分(A)、無機充填材(B)を含む充填材、シランカップリング剤(C)、並びに下記一般式(I)で表される有機アルミニウム化合物(D)を含むことを特徴とするゴム組成物及びその製造方法である。
【化1】


(式中、Raはアルキル基、アルケニル基及びアリール基から選ばれる置換基又は水素原子であり、Rb及びRcは同一でも異なっていてもよく、アルキル基、ハロゲン化アルキル基及びアリール基から選ばれる置換基であり、nは1〜3の整数を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低発熱性を向上する、無機充填材を含むゴム組成物及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題への関心の高まりに伴う世界的な二酸化炭素排出の規制の動きに関連して、自動車の低燃費化に関する要求が高まりつつある。このような要求に対応するため、タイヤには転がり抵抗の低減が求められており、さらには、湿潤路面で高制動性を低下させないで、転がり抵抗のさらなる低減が求められている。
転がり抵抗の低減(低発熱性)と湿潤路面で高制動性(ウェット性)を両立する技術として、充填材としてシリカ等の無機充填材を用いることが有効である。ここでは、シランカップリング剤をシリカ等の無機充填材と併用することが、更なる低発熱性や耐摩耗性を確保するためには必須である。また、シランカップリング剤は、シリカ表面と相互作用することにより加硫促進剤のシリカ表面への吸着を防ぐ役割もある。
しかし、シランカップリング剤を用いた場合にはゴム中に未反応成分が残ってしまい、混練り中にゴム焦けを起こすことがある。そのため、非イオン性の界面活性剤と組み合わせて、少量のシランカップリング剤を使用することにより、ゴムやけを起こすことなく、低転がり抵抗性(低発熱性)、ウェット性、耐摩耗性、加工性などに優れたゴム組成物を得ることができることが知られている(特許文献1参照)。
しかし、この場合、非イオン性界面活性剤のシリカ表面への吸着が早いため、シランカップリング剤とシリカの反応が阻害されてしまう。結果として、シリカとゴム成分の補強性が低下し、ゴム組成物としての耐摩耗性が悪化する。
現状では以上のように、シランカップリング剤とシリカ等の無機充填材との反応が十分ではなく、低発熱性を向上させる観点より改良する余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−130908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このような状況下で、シランカップリング剤とシリカ等の無機充填材との反応性を向上させ、低発熱性に優れたゴム組成物及びその製造方法を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するために、ゴム成分(A)、無機充填材(B)を含む充填材及びシランカップリング剤(C)を含むゴム組成物において特定の有機アルミニウム化合物を配合することにより、シランカップリング剤(C)のカップリング機能の活性をさらに高める得ることを見出して、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、
[1] ゴム成分(A)、無機充填材(B)を含む充填材、シランカップリング剤(C)、並びに下記一般式(I)で表される有機アルミニウム化合物(D)を含むことを特徴とするゴム組成物、及び
【化1】

(式中、Raはアルキル基、アルケニル基及びアリール基から選ばれる置換基又は水素原子であり、Rb及びRcは同一でも異なっていてもよく、アルキル基、ハロゲン化アルキル基及びアリール基から選ばれる置換基であり、nは1〜3の整数を表す。)
[2] ゴム成分(A)、無機充填材(B)を含む充填材、シランカップリング剤(C)、並びに上記一般式(I)で表される有機アルミニウム化合物(D)を含むゴム組成物の製造方法であって、該ゴム組成物を複数段階で混練し、混練の第一段階で、該ゴム成分(A)、該無機充填材(B)の全部又は一部、及び該シランカップリング剤(C)の全部又は一部、及び該上記一般式(I)で表される有機アルミニウム化合物(D)を混練することを特徴とするゴム組成物の製造方法である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、シランカップリング剤とシリカ等の無機充填材との反応性を向上させ、シリカ等の無機充填材のゴム組成物中の分散を良好にして、低発熱性に優れたゴム組成物及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明のゴム組成物は、ゴム成分(A)、無機充填材(B)を含む充填材、シランカップリング剤(C)、並びに下記一般式(I)で表される有機アルミニウム化合物(D)を含むことを特徴とする。
【0008】
【化2】

式中、Raはアルキル基、アルケニル基及びアリール基から選ばれる置換基又は水素原子であり、Rb及びRcは同一でも異なっていてもよく、アルキル基、ハロゲン化アルキル基及びアリール基から選ばれる置換基であり、nは1〜3の整数を表す。シランカップリング剤とシリカ等の無機充填材との反応性をより向上させる観点から、nは2〜3の整数であることが好ましい。
【0009】
また、本発明の係る一般式(I)で表される有機アルミニウム化合物(D)が、下記一般式(II)で表される有機アルミニウム化合物化合物(D’)であることが、シランカップリング剤とシリカ等の無機充填材との反応性を更に向上させ、より低発熱性に優れたゴム組成物を得る観点から好ましい。
【0010】
【化3】

式中、Rb及びRcは同一でも異なっていてもよく、アルキル基、ハロゲン化アルキル基及びアリール基から選ばれる置換基である。)
【0011】
上記一般式(I)及び(II)中、Ra、Rb及びRcにおいて、アルキル基及びハロゲン化アルキル基の炭素数は1〜20が好ましく、1〜10がより好ましく、1〜6が更に好ましい。アリール基の炭素数は6〜20が好ましく、6〜10がより好ましい。
ハロゲン化アルキル基のハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、好ましくはフッ素原子である。
アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられ、好ましくはメチル基、tert−ブチル基が挙げられる。
ハロゲン化アルキル基の具体例としては、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、トリフルオロエチル基、クロロメチル基、クロロエチル基、ジクロロエチル基、クロロプロピル基、クロロブチル基、ブロモブチル基、ヨードブチル基等が挙げられ、好ましくはトリフルオロメチル基である。
上記一般式(I)で表される有機アルミニウム化合物(D)の好ましい具体例としては、トリス(2,4−ペンタンジオナト)アルミニウム(III){下記化学式(II-a)}、及びトリス(トリフルオロ−2,4−ペンタンジオナト)アルミニウム(III){下記化学式(II-b)}である
【0012】
【化4】

【0013】
【化5】

【0014】
本発明に係る一般式(I)で表される有機アルミニウム化合物(D){以下、「有機アルミニウム化合物(D)」という。}の配合量は、ゴム組成物中の質量比{有機アルミニウム化合物(D)/シランカップリング剤(C)}が(2/100)〜(100/100)であることが好ましい。(2/100)以上であれば、シランカップリング剤(C)とシリカ等の無機充填材との反応が好適に起こり、(100/100)以下であれば、加硫速度に大きな影響は与えないからである。さらに好ましくは、有機アルミニウム化合物(D)の配合量は、質量比{有機アルミニウム化合物(D)/シランカップリング剤(C)}が(4/100)〜(80/100)であり、特に好ましくは、(4/100)〜(50/100)である。
【0015】
本発明のゴム組成物の製造方法は、ゴム成分(A)、無機充填材(B)を含む充填材、シランカップリング剤(C)、並びに下記一般式(I)で表される有機アルミニウム化合物(D)を含むゴム組成物の製造方法であって、該ゴム組成物を複数段階で混練し、混練の第一段階で、該ゴム成分(A)、該無機充填材(B)の全部又は一部、及び該シランカップリング剤(C)の全部又は一部、及び上記一般式(I)で表される有機アルミニウム化合物(D)を混練することを特徴とする。
混練の第一段階におけるゴム組成物中の有機アルミニウム化合物(D)の配合量は、前記第一段階におけるゴム組成物中の質量比{有機アルミニウム化合物(D)/シランカップリング剤(C)}が(2/100)〜(100/100)であることが上述の理由により好ましい。さらに好ましくは、質量比{有機アルミニウム化合物(D)/シランカップリング剤(C)}が(4/100)〜(80/100)であり、特に好ましくは、(4/100)〜(50/100)である。
【0016】
シリカ等の無機充填材のゴム組成物中での分散をより良好にするためには、混練の第一段階におけるゴム組成物の最高温度が、120〜190℃であることが好ましく、130〜175℃であることがより好ましく、140〜170℃であることがさらに好ましい。
混練の第一段階の混練時間は10秒から20分であることが好ましく、10秒から10分であることがより好ましく、30秒から5分であることがさらに好ましい。
【0017】
また、本発明において、ゴム成分(A)、無機充填材(B)の全部又は一部、及びシランカップリング剤(C)の全部又は一部を混練りした後に、有機アルミニウム化合物(D)を加えて更に混練することが、シリカ、カーボンブラック等の充填材のゴム組成物中での分散をさらに良好にするために好ましい。混練の第一段階で、ゴム成分(A)、無機充填材(B)の全部又は一部、及びシランカップリング剤(C)の全部又は一部を加えた後、第一段階の途中で有機アルミニウム化合物(D)を加えるまでの時間を10〜180秒とすることが好ましい。この時間の上限値は150秒以下であることがより好ましく、120秒以下であることが更に好ましい。この時間が10秒以上であれば無機充填材(B)とシランカップリング剤(C)の反応を十分に進行させることができる。この時間が180秒を超えても無機充填材(B)とシランカップリング剤(C)の反応は既に十分に進行しているので、更なる効果は享受しにくく、上限値を180秒とすることが好ましい。
【0018】
本発明におけるゴム組成物の混練工程は、加硫剤等を含まない混練の第一段階と、加硫剤等を含む混練の最終段階の少なくとも2つの段階を含むものであり、必要に応じ加硫剤等を含まない混練の中間段階を含んでもよい。ここで、加硫剤等とは、加硫剤及び加硫促進剤をいう。
なお、本発明における混練の第一段階とは、ゴム成分(A)と無機充填材(B)とシランカップリング剤(C)とを混練する最初の段階をいい、最初の段階でシランカップリング剤(C)を加えずにゴム成分(A)と充填材とを混練する場合やゴム成分(A)のみを予備練りする場合の段階は含まれない。
なお、混練の中間段階でゴム成分や充填剤等を配合し、混練してもよい。
混練の第一段階より後、かつ最終段階より前の中間段階を含む際には、混練の中間段階におけるゴム組成物の最高温度は120〜190℃であることが好ましく、130〜175℃であることがより好ましく、140〜170℃であることがさらに好ましい。なお、混練時間は10秒から20分であることが好ましく、10秒から10分であることがより好ましく、30秒から5分であることがさらに好ましい。なお、混練の中間段階を含む際には、前段階の混練終了後の温度より10℃以上低下させてから次の段階へ進むことが好ましい。
また、混練の最終段階とは、加硫系薬品(加硫剤、加硫促進剤)を配合し、混練する工程をいう。この最終段階におけるゴム組成物の最高温度は60〜140℃であることが好ましく、80〜120℃であることがより好ましく、100〜120℃であることがさらに好ましい。なお、混練時間は10秒から20分であることが好ましく、10秒から10分であることがより好ましく、20秒から5分であることがさらに好ましい。
混練の第一段階、中間段階から最終段階に進む際には、前段階の混練終了後の温度より10℃以上低下させてから次の段階へ進むことが好ましい。
【0019】
本発明のゴム組成物及びその製造方法に用いられるシランカップリング剤(C)は、下記一般式(III)〜(VI)で表される化合物からなる群から1種以上選択される化合物であることが好ましい。
本発明のゴム組成物は、このようなシランカップリング剤(C)を用いることにより、ゴム加工時の作業性に更に優れると共に、より耐摩耗性の良好な空気入りタイヤを与えることができる。
以下、下記一般式(III)〜(VI)を順に説明する。
【0020】
【化6】

式中、R1は複数ある場合には同一でも異なっていてもよく、各々水素原子、炭素数1〜8の直鎖、環状もしくは分枝のアルキル基又は炭素数2〜8の直鎖もしくは分枝のアルコキシアルキル基であり、R2は複数ある場合には同一でも異なっていてもよく、各々炭素数1〜8の直鎖、環状もしくは分枝のアルキル基であり、R3は複数ある場合には同一でも異なっていてもよく、各々炭素数1〜8の直鎖もしくは分枝のアルキレン基である。aは平均値として2〜6であり、p及びrは同一でも異なっていてもよく、各々平均値として0〜3である。但しp及びrの双方が3であることはない。
【0021】
上記一般式(III)で表わされるシランカップリング剤(C)の具体例として、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−メチルジメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3−メチルジメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3−メチルジメトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(3−モノエトキシジメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−モノエトキシジメチルシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3−モノエトキシジメチルシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3−モノメトキシジメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−モノメトキシジメチルシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3−モノメトキシジメチルシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−モノエトキシジメチルシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(2−モノエトキシジメチルシリルエチル)トリスルフィド、ビス(2−モノエトキシジメチルシリルエチル)ジスルフィド等が挙げられる。
【0022】
【化7】

式中、R4は−Cl、−Br、R9O−、R9C(=O)O−、R910C=NO−、R910CNO−、R910N−、及び−(OSiR910h(OSiR91011)から選択される一価の基(R9、R10及びR11は各々水素原子又は炭素数1〜18の一価の炭化水素基であり、hは平均値として1〜4である。)であり、R5はR4、水素原子又は炭素数1〜18の一価の炭化水素基であり、R6はR4、R5、水素原子又は−[O(R12O)j]0.5 −基(R12は炭素数1〜18のアルキレン基、jは1〜4の整数である。)であり、R7は炭素数1〜18の二価の炭化水素基であり、R8は炭素数1〜18の一価の炭化水素基である。x、y及びzは、x+y+2z=3、0≦x≦3、0≦y≦2、0≦z≦1の関係を満たす数である。
【0023】
上記一般式(IV)において、R8、R9、R10及びR11は同一でも異なっていてもよく、好ましくは各々炭素数1〜18の直鎖、環状もしくは分枝のアルキル基、アルケニル基、アリール基及びアラルキル基からなる群から選択される基であることが好ましい。また、R5が炭素数1〜18の一価の炭化水素基である場合は、直鎖、環状もしくは分枝のアルキル基、アルケニル基、アリール基及びアラルキル基からなる群から選択される基であることが好ましい。R12は直鎖、環状又は分枝のアルキレン基であることが好ましく、特に直鎖状のものが好ましい。R7は例えば炭素数1〜18のアルキレン基、炭素数2〜18のアルケニレン基、炭素数5〜18のシクロアルキレン基、炭素数6〜18のシクロアルキルアルキレン基、炭素数6〜18のアリーレン基、炭素数7〜18のアラルキレン基を挙げることができる。前記アルキレン基及びアルケニレン基は、直鎖状、枝分かれ状のいずれであってもよく、前記シクロアルキレン基、シクロアルキルアルキレン基、アリーレン基及びアラルキレン基は、環上に低級アルキル基等の置換基を有していてもよい。このR7としては、炭素数1〜6のアルキレン基が好ましく、特に直鎖状アルキレン基、例えばメチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基を好ましく挙げることができる。
【0024】
上記一般式(IV)におけるR5、R8、R9、R10及びR11の炭素数1〜18の一価の炭化水素基の具体例としては、メチル基,エチル基,n−プロピル基,イソプロピル基,n−ブチル基,イソブチル基,sec−ブチル基,tert−ブチル基,ペンチル基,ヘキシル基,オクチル基,デシル基,ドデシル基,シクロペンチル基,シクロヘキシル基,ビニル基,プロぺニル基,アリル基,ヘキセニル基,オクテニル基,シクロペンテニル基,シクロヘキセニル基,フェニル基,トリル基,キシリル基,ナフチル基,ベンジル基,フェネチル基,ナフチルメチル基等が挙げられる。
上記一般式(IV)におけるR12の例としては、メチレン基,エチレン基,トリメチレン基,テトラメチレン基,ペンタメチレン基,ヘキサメチレン基,オクタメチレン基,デカメチレン基,ドデカメチレン基等が挙げられる。
【0025】
前記一般式(IV)で表されるシランカップリング剤(C)の具体例としては、3−ヘキサノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3−オクタノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3−デカノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3−ラウロイルチオプロピルトリエトキシシラン、2−ヘキサノイルチオエチルトリエトキシシラン、2−オクタノイルチオエチルトリエトキシシラン、2−デカノイルチオエチルトリエトキシシラン、2−ラウロイルチオエチルトリエトキシシラン、3−ヘキサノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3−オクタノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3−デカノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3−ラウロイルチオプロピルトリメトキシシラン、2−ヘキサノイルチオエチルトリメトキシシラン、2−オクタノイルチオエチルトリメトキシシラン、2−デカノイルチオエチルトリメトキシシラン、2−ラウロイルチオエチルトリメトキシシラン等を挙げることができる。これらの内、3−オクタノイルチオプロピルトリエトキシシラン(Momentive Performance Materials社製、商標「NXTシラン」)が特に好ましい。
【0026】
【化8】

式中、R13は複数ある場合には同一でも異なっていてもよく、各々水素原子、炭素数1〜8の直鎖、環状もしくは分枝のアルキル基又は炭素数2〜8の直鎖もしくは分枝のアルコキシアルキル基であり、R14は複数ある場合には同一でも異なっていてもよく、各々炭素数1〜8の直鎖、環状もしくは分枝のアルキル基であり、R15は複数ある場合には同一でも異なっていてもよく、各々炭素数1〜8の直鎖もしくは分枝のアルキレン基である。R16は一般式
(−S−R17−S−)、(−R18−Sm1−R19−)及び(−R20−Sm2−R21−Sm3−R22−)のいずれかの二価の基(R17〜R22は各々炭素数1〜20の二価の炭化水素基、二価の芳香族基、又は硫黄及び酸素以外のヘテロ元素を含む二価の有機基であり、m1、m2及びm3は各々平均値として1以上4未満である。)であり、複数あるkは同一でも異なっていてもよく、各々平均値として1〜6であり、s及びtは各々平均値として0〜3である。但しs及びtの双方が3であることはない。
【0027】
上記一般式(V)で表わされるシランカップリング剤(C)の具体例として、
平均組成式(CH3CH2O)3Si−(CH23−S2−(CH26−S2−(CH23−Si(OCH2CH33
平均組成式(CH3CH2O)3Si−(CH23−S2−(CH210−S2−(CH23−Si(OCH2CH33
平均組成式(CH3CH2O)3Si−(CH23−S3−(CH26−S3−(CH23−Si(OCH2CH33
平均組成式(CH3CH2O)3Si−(CH23−S4−(CH26−S4−(CH23−Si(OCH2CH33
平均組成式(CH3CH2O)3Si−(CH23−S−(CH26−S2−(CH26−S−(CH23−Si(OCH2CH33
平均組成式(CH3CH2O)3Si−(CH23−S−(CH26−S2.5−(CH26−S−(CH23−Si(OCH2CH33
平均組成式(CH3CH2O)3Si−(CH23−S−(CH26−S3−(CH26−S−(CH23−Si(OCH2CH33
平均組成式(CH3CH2O)3Si−(CH23−S−(CH26−S4−(CH26−S−(CH23−Si(OCH2CH33
平均組成式(CH3CH2O)3Si−(CH23−S−(CH210−S2−(CH210−S−(CH23−Si(OCH2CH33
平均組成式(CH3CH2O)3Si−(CH23−S4−(CH26−S4−(CH26−S4−(CH23−Si(OCH2CH33
平均組成式(CH3CH2O)3Si−(CH23−S2−(CH26−S2−(CH26−S2−(CH23−Si(OCH2CH33
平均組成式(CH3CH2O)3Si−(CH23−S−(CH26−S2−(CH26−S2−(CH26−S−(CH23−Si(OCH2CH33等で表される化合物が好適に挙げられる
【0028】
【化9】

式中、R23は炭素数1〜20の直鎖、分岐又は環状のアルキル基であり、複数あるGは同一でも異なっていてもよく、各々炭素数1〜9のアルカンジイル基又はアルケンジイル基であり、複数あるZaは同一でも異なっていてもよく、各々二つの珪素原子と結合することのできる官能基であり、且つ [−0−]0.5、[−0−G−]0.5及び[−O−G−O−]0.5から選ばれる官能基であり、複数あるZbは同一でも異なっていてもよく、各々二つの珪素原子と結合することのできる官能基であり、且つ [−O−G−O−]0.5で表される官能基であり、複数あるZcは同一でも異なっていてもよく、各々−Cl、−Br、−ORe、ReC(=O)O−、RefC=NO−、RefN−、Re−及びHO−G−O−(Gは上記表記と一致する。)から選ばれる官能基であり、Re及びRfは各々炭素数1〜20の直鎖、分岐又は環状のアルキル基である。m、n、u、v及びwは、1≦m≦20、0≦n≦20、0≦u≦3、0≦v≦2、0≦w≦1であり、且つ(u/2)+v+2w=2又は3である。A部が複数である場合、複数のA部におけるZau、Zbv及びZcwそれぞれにおいて、同一でも異なっていてもよく、B部が複数である場合、複数のB部におけるZau、Zbv及びZcwそれぞれにおいて、同一でも異なってもよい。
【0029】
上記一般式(VI)で表わされるシランカップリング剤(C)の具体例として、化学式(VII)、化学式(VIII)及び化学式(IX)が挙げられる。
【0030】
【化10】

【0031】
【化11】

【0032】
【化12】

式中、Lはそれぞれ独立して炭素数1〜9のアルカンジイル基又はアルケンジイル基であり、x=m、y=nである。
【0033】
化学式(VII)で表されるシランカップリング剤としては、Momentive Performance Materials社製、商標「NXT Low−V Silane」、が市販品として入手できる。
また、化学式(VIII)で表されるシランカップリング剤としては、Momentive Performance Materials社製、商標「NXT Ultra Low−V Silane」、が同様に市販品として入手することができる。
更に、化学式(IX)で表されるシランカップリング剤としては、Momentive Performance Materials社製、商標「NXT−Z」として挙げることができる。
上記一般式(IV)、化学式(VI)、化学式(VII)及び化学式(VIII)で得られるシランカップリング剤は、保護されたメルカプト基を有するので、加硫工程以前の工程での加工中に初期加硫(スコーチ)の発生を防止することができるため、加工性が良好となる。
また、化学式(VII)、(VIII)及び(IX)で得られるシランカップリング剤はアルコキシシラン炭素数が多いため、揮発性化合物VOC(特にアルコール)の発生が少なく、作業環境上好ましい。また、化学式(IX)のシランカップリング剤はタイヤ性能として低発熱性を得ることから更に好ましい。
【0034】
本発明に係るシランカップリング剤(C)は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明に係るゴム組成物のシランカップリング剤(C)の配合量は、ゴム組成物中の質量比{シランカップリング剤(C)/無機充填材(B)}が(1/100)〜(20/100)であることが好ましい。(1/100)以上であれば、ゴム組成物の低発熱性向上の効果をより好適に発揮することとなり、(20/100)以下であれば、ゴム組成物のコストが低減し、経済性が向上するからである。更には質量比(3/100)〜(20/100)であることがより好ましく、質量比(4/100)〜(10/100)であることが特に好ましい。
【0035】
本発明のゴム組成物及びその製造方法に用いられるゴム成分(A)は、天然ゴム及び合成ジエン系ゴムから選ばれる少なくとも1種からなるゴム成分であることが好ましい。ここで、合成ジエン系ゴムとしては、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、ポリブタジエンゴム(BR)、ポリイソプレンゴム(IR)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、エチレン-プロピレン−ジエン三元共重合体ゴム(EPDM)等を用いることができ、天然ゴム及び合成ジエン系ゴムは、1種単独でも、2種以上のブレンドとして用いてもよい。
【0036】
本発明のゴム組成物及びその製造方法に用いられる無機充填材(B)は、シリカ及び下記一般式(X)で表される無機化合物を用いることができる。
dM1・xSiOy・zH2O ・・・(X)
ここで、一般式(X)中、M1は、アルミニウム、マグネシウム、チタン、カルシウム、及びジルコニウムからなる群から選ばれる金属、これらの金属の酸化物又は水酸化物、及びそれらの水和物、又はこれらの金属の炭酸塩から選ばれる少なくとも一種であり、d、x、y及びzは、それぞれ1〜5の整数、0〜10の整数、2〜5の整数、及び0〜10の整数である。
尚、一般式(X)において、x、zがともに0である場合には、該無機化合物はアルミニウム、マグネシウム、チタン、カルシウム及びジルコニウムから選ばれる少なくとも1つの金属、金属酸化物又は金属水酸化物となる。
【0037】
本発明においては、上述の無機充填材(B)の内、低転がり性と耐摩耗性の両立の観点からシリカが好ましい。シリカとしては市販のあらゆるものが使用でき、なかでも湿式シリカ、乾式シリカ、コロイダルシリカを用いるのが好ましく、湿式シリカを用いるのが特に好ましい。シリカのBET比表面積(ISO 5794/1に準拠して測定する)は40〜350m2/gであるのが好ましい。BET比表面積がこの範囲であるシリカは、ゴム補強性とゴム成分中への分散性とを両立できるという利点がある。この観点から、BET比表面積が80〜350m2/gの範囲にあるシリカがより好ましく、BET比表面積が130m2/gを超え、350m2/g以下であるシリカが更に好ましく、BET比表面積が135〜350m2/gの範囲にあるシリカが特に好ましい。このようなシリカとしては東ソー・シリカ株式会社製、商品名「ニップシールAQ」(BET比表面積 =205m2/g)、「ニップシールKQ」(BET比表面積 =240m2/g)、デグッサ社製商品名「ウルトラジルVN3」(BET比表面積 =175m2/g)等の市販品を用いることができる。
【0038】
前記一般式(X)で表わされる無機化合物としては、γ−アルミナ、α−アルミナ等のアルミナ(Al23)、ベーマイト、ダイアスポア等のアルミナ一水和物(Al23・H2O)、ギブサイト、バイヤライト等の水酸化アルミニウム[Al(OH)3]、炭酸アルミニウム[Al2(CO32]、水酸化マグネシウム[Mg(OH)2]、酸化マグネシウム(MgO)、炭酸マグネシウム(MgCO3)、タルク(3MgO・4SiO2・H2O)、アタパルジャイト(5MgO・8SiO2・9H2O)、チタン白(TiO2)、チタン黒(TiO2n-1)、酸化カルシウム(CaO)、水酸化カルシウム[Ca(OH)2]、酸化アルミニウムマグネシウム(MgO・Al23)、クレー(Al23・2SiO2)、カオリン(Al23・2SiO2・2H2O)、パイロフィライト(Al23・4SiO2・H2O)、ベントナイト(Al23・4SiO2・2H2O)、ケイ酸アルミニウム(Al2SiO5 、Al4・3SiO4・5H2O等)、ケイ酸マグネシウム(Mg2SiO4、MgSiO3等)、ケイ酸カルシウム(Ca2・SiO4等)、ケイ酸アルミニウムカルシウム(Al23・CaO・2SiO2等)、ケイ酸マグネシウムカルシウム(CaMgSiO4)、炭酸カルシウム(CaCO3)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、水酸化ジルコニウム[ZrO(OH)2・nH2O]、炭酸ジルコニウム[Zr(CO32]、各種ゼオライトのように電荷を補正する水素、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を含む結晶性アルミノケイ酸塩などが使用できる。また、前記一般式(X)中のM1がアルミニウム金属、アルミニウムの酸化物又は水酸化物、及びそれらの水和物、又はアルミニウムの炭酸塩から選ばれる少なくとも一つである場合が好ましい。
一般式(X)で表されるこれらの無機化合物は、単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。これらの無機化合物の平均粒径は、混練作業性、耐摩耗性及びウェットグリップ性能のバランスなどの観点から、0.01〜10μmの範囲が好ましく、0.05〜5μmの範囲がより好ましい。
本発明における無機充填材(B)は、シリカ単独で使用してもよいし、シリカと一般式(X)で表される無機化合物の1種以上とを併用してもよい。
【0039】
本発明のゴム組成物及びその製造方法に用いられる充填材は、所望により、上述の無機充填材(B)に加えてカーボンブラックを含有してもよい。カーボンブラックを含有することにより、電気抵抗を下げて帯電を抑止する効果を享受できる。このカーボンブラックとしては、特に制限はなく、例えば高、中又は低ストラクチャーのSAF、ISAF、IISAF、N339、HAF、FEF、GPF、SRFグレードのカーボンブラック、特にSAF、ISAF、IISAF、N339、HAF、FEFグレードのカーボンブラックを用いるのが好ましい。窒素吸着比表面積(N2SA、JIS K 6217−2:2001に準拠して測定する)が30〜250m2/gであることが好ましい。このカーボンブラックは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。本発明において、カーボンブラックは無機充填材(B)に含まれない。
【0040】
本発明のゴム組成物及びその製造方法に用いられる無機充填材(B)は、ゴム成分(A)100質量部に対して、20〜120質量部使用することが好ましい。20質量部以上であれば、ウエット性能を確保する観点から好ましく、120質量部以下であれば、転がり抵抗低減(低発熱性向上)の観点から好ましい。更には、30〜100質量部使用することがより好ましい。
また、本発明に係るゴム組成物の充填材は、ゴム成分(A)100質量部に対して、20〜150質量部使用することが好ましい。20質量部以上であれば、ゴム組成物の補強性向上の観点から好ましく、150質量部以下であれば、転がり抵抗低減の観点から好ましい。
前記充填材中、無機充填材(B)が30質量%以上であることがウェット性能と転がり抵抗低減の両立の観点から好ましく、40質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがさらに好ましい。
なお、無機充填材(B)としてシリカを使用する場合は、前記充填材中におけるシリカが30質量%以上であることが好ましい。
【0041】
本発明のゴム組成物の製造方法において、通常、ゴム組成物に配合されるステアリン酸、樹脂酸、亜鉛華等の加硫活性剤、老化防止剤等の各種配合剤は、必要に応じ、混練の第一段階又は最終段階、あるいは第一段階と最終段階の中間段階において混練りされる。
本発明の製造方法における混練装置として、バンバリーミキサー、ロール、インテンシブミキサー、ニーダー、二軸押出機等が用いられる。
【実施例】
【0042】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
なお、低発熱性(tanδ指数)を下記の方法により評価した。
【0043】
低発熱性(tanδ指数)
上島製作所製スペクトロメーター(動的粘弾性測定試験機)を用い、周波数52Hz、初期歪10%、測定温度60℃、動歪1%で測定し、tanδの数値を、比較例1又は7のtanδを100として下記式にて指数表示した。指数値が小さい程、低発熱性であり、ヒステリシスロスが小さいことを示す。
低発熱性指数={(供試加硫ゴム組成物のtanδ)/(比較例1又は7の加硫ゴム組成物のtanδ)}×100
【0044】
製造例1 平均組成式
(CH3CH2O)3Si-(CH2)3-S-(CH2)6-S2.5-(CH2)6-S-(CH2)3-Si(OCH2CH3)3 で表されるシランカップリング剤の製造
窒素ガス導入管、温度計、ジムロート型コンデンサー及び滴下ロートを備えた2リットルのセパラブルフラスコに、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン119g(0.5モル)を仕込み、攪拌下、有効成分20質量%のナトリウムエトキシドのエタノール溶液151.2g(0.45モル)を加えた。その後、80℃に昇温し、3時間攪拌を続けた。その後冷却し、滴下ロートに移した。
次いで、上記と同様のセパラブルフラスコに、1,6−ジクロロヘキサンを69.75g(0.45モル)仕込み、80℃に昇温した後、上記の3−メルカプトプロピルトリエトキシシランとナトリウムエトキシドの反応物をゆっくり滴下した。滴下終了後、80℃で5時間攪拌を続けた。その後冷却し、得られた溶液中から塩を濾別し、さらにエタノール及び過剰の1,6−ジクロロヘキサンを減圧留去した。得られた溶液を減圧蒸留し、沸点148〜150℃/0.005torr(0.67Pa)の無色透明の液体137.7gを得た。IR分析、1H−NMR分析及びマススペクトル分析(MS分析)を行った結果、(CH3CH2O)3Si−(CH23S−(CH26−Clで表される化合物であった。また、ガスクロマトグラフ分析(GC分析)による純度は97.5%であった。
次いで、上記と同様の0.5リットルのセパラブルフラスコに、エタノール80g、無水硫化ソーダ5.46g(0.07モル)、硫黄3.36g(0.105モル)を仕込み、80℃に昇温した。この溶液を攪拌しながら、上記(CH3CH2O)3Si−(CH23−S−(CH26−Clを49.91g(0.14モル)ゆっくり滴下した。滴下終了後、80℃にて10時間攪拌を続けた。攪拌終了後、冷却し、生成した塩を濾別した後、溶媒のエタノールを減圧蒸留した。
得られた赤褐色透明の溶液をIR分析、1H−NMR分析及び超臨界クロマトグラフィー分析を行った結果、平均組成式
(CH3CH2O)3Si-(CH2)3-S-(CH2)6-S2.5-(CH2)6-S-(CH2)3-Si(OCH2CH3)3で表される化合物であることを確認した。このもののGPC分析における純度は85.2%であった。
【0045】
実施例1〜42及び比較例1〜12
第1表及び第2表に示す配合処方及び混練方法により、混練の第一段階におけるゴム組成物の最高温度がいずれも150℃になるように調整してバンバリーミキサーで混練し、54種類のゴム組成物を調製した。実施例1〜42のゴム組成物の混練の第一段階において、ゴム成分(A)、無機充填材(B)の全部及びシランカップリング剤(C)を加えて30秒間混練した後に、有機アルミニウム化合物(D)を加えて、さらに混練した。ゴム組成物の加硫は温度165℃で行い、加硫時間はtc(90)値(分)×1.5倍で規定した{JIS K 6300−2:2001において規定されたtc(90)値}。得られた54種類のゴム組成物の低発熱性(tanδ指数)を上記の方法により評価した。結果を第1表及び第2表に示す。
【0046】
【表1】

【0047】
【表2】

【0048】
[注]
*1: 旭化成株式会社製、溶液重合SBR、商品名「タフデン2000」
*2: N220(ISAF)、旭カーボン株式会社製、商品名「#80」
*3: 東ソー・シリカ株式会社製、商品名「ニップシールAQ」、 BET比表面積205m2/g
*4: ビス(3−トリエトシキシリルプロピル)ジスルフィド(平均硫黄鎖長:2.35)、Evonik社製シランカップリング剤、商品名「Si75」(登録商標)
*5: 製造例1で得られた下記平均組成式で表されるシランカップリング剤
(CH3CH2O)3Si-(CH2)3-S-(CH2)6-S2.5-(CH2)6-S-(CH2)3-Si(OCH2CH3)3
*6: 3−オクタノイルチオプロピルトリエトキシシラン(Momentive Performance Materials社製、商標:NXTシラン)
*7: 化学式(VI)で表されるシランカップリング剤(Momentive Performance Materials社製、商標「NXT Low−V Silane」)
*8: 化学式(VII)で表されるシランカップリング剤(Momentive Performance Materials社製、商標「NXT Ultra Low−V Silane」)
*9: 化学式(VIII)で表されるシランカップリング剤(Momentive Performance Materials社製、商標「NXT−Z」
*10: トリス(2,4−ペンタンジオナト)アルミニウム(III)、東京化成工業株式会社製
*11: トリス(トリフルオロ−2,4−ペンタンジオナト)アルミニウム(III)、東京化成工業株式会社製
*12: N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、大内新興化学工業株式会社製、商品名「ノクラック6C」
*13: 2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体、大内新興化学工業株式会社製、商品名「ノクラック224」
*14: 1,3−ジフェニルグアニジン、三新化学工業株式会社製、商品名「サンセラーD」
*15: ジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィド、三新化学工業株式会社製、商品名「サンセラーDM」
*16: N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、三新化学工業株式会社製、商品名「サンセラーNS」
*17: ポリブタジエンゴム、JSR株式会社製、商品名「BR01」
*18: 水酸化アルミニウム、昭和電工株式会社製、商品名「ハイジライト」
*19: N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、大内新興化学工業株式会社製、商品名「ノクセラーCZ」
【0049】
第1表から明らかなように、実施例1〜21のゴム組成物は、比較例1〜6中の対比すべきゴム組成物と比較して、いずれも低発熱性(tanδ指数)が良好であった。
また、第2表から明らかなように、実施例22〜42のゴム組成物は、比較例7〜12中の対比すべきゴム組成物と比較して、いずれも低発熱性(tanδ指数)が良好であった。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明のゴム組成物は、低発熱性に優れるので、乗用車用、小型トラック用、軽乗用車用、軽トラック用及び大型車両用(トラック・バス用、建設車両用等)等の各種空気入りタイヤの各部材、特に空気入りラジアルタイヤのトレッド用部材の製造方法として好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム成分(A)、無機充填材(B)を含む充填材、シランカップリング剤(C)、並びに下記一般式(I)で表される有機アルミニウム化合物(D)を含むことを特徴とするゴム組成物。
【化1】

(式中、Raはアルキル基、アルケニル基及びアリール基から選ばれる置換基又は水素原子であり、Rb及びRcは同一でも異なっていてもよく、アルキル基、ハロゲン化アルキル基及びアリール基から選ばれる置換基であり、nは1〜3の整数を表す。)
【請求項2】
前記ゴム組成物中の質量比{前記一般式(I)で表される有機アルミニウム化合物(D)/前記シランカップリング剤(C)}が(2/100)〜(100/100)である請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
前記一般式(I)中のnが2〜3の整数である請求項1又は2に記載のゴム組成物。
【請求項4】
前記一般式(I)で表される有機アルミニウム化合物(D)が、下記一般式(II)で表される有機アルミニウム化合物(D’)である請求項1〜3のいずれかに記載のゴム組成物。
【化2】

(式中、Rb及びRcは同一でも異なっていてもよく、アルキル基、ハロゲン化アルキル基及びアリール基から選ばれる置換基であり、nは1〜3の整数を表す。)
【請求項5】
前記一般式(I)で表される有機アルミニウム化合物(D)が、トリス(2,4−ペンタンジオナト)アルミニウム(III)又はトリス(トリフルオロ−2,4−ペンタンジオナト)アルミニウム(III)である請求項1〜4のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項6】
前記シランカップリング剤(C)が、下記一般式(III)〜(VI)で表わされる化合物からなる群から1種以上選択される化合物である請求項1〜5のいずれかに記載のゴム組成物。
【化3】

(式中、R1は複数ある場合には同一でも異なっていてもよく、各々水素原子、炭素数1〜8の直鎖、環状もしくは分枝のアルキル基又は炭素数2〜8の直鎖もしくは分枝のアルコキシアルキル基であり、R2は複数ある場合には同一でも異なっていてもよく、各々炭素数1〜8の直鎖、環状もしくは分枝のアルキル基であり、R3は複数ある場合には同一でも異なっていてもよく、各々炭素数1〜8の直鎖もしくは分枝のアルキレン基である。aは平均値として2〜6であり、p及びrは同一でも異なっていてもよく、各々平均値として0〜3である。但しp及びrの双方が3であることはない。)
【化4】

{式中、R4は−Cl、−Br、R9O−、R9C(=O)O−、R910C=NO−、R910CNO−、R910N−、及び−(OSiR910h(OSiR91011)から選択される一価の基(R9、R10及びR11は各々水素原子又は炭素数1〜18の一価の炭化水素基であり、hは平均値として1〜4である。)であり、R5はR4、水素原子又は炭素数1〜18の一価の炭化水素基であり、R6はR4、R5、水素原子又は−[O(R12O)j]0.5 −基(R12は炭素数1〜18のアルキレン基、jは1〜4の整数である。)であり、R7は炭素数1〜18の二価の炭化水素基であり、R8は炭素数1〜18の一価の炭化水素基である。x、y及びzは、x+y+2z=3、0≦x≦3、0≦y≦2、0≦z≦1の関係を満たす数である。}
【化5】

{式中、R13は複数ある場合には同一でも異なっていてもよく、各々水素原子、炭素数1〜8の直鎖、環状もしくは分枝のアルキル基又は炭素数2〜8の直鎖もしくは分枝のアルコキシアルキル基であり、R14は複数ある場合には同一でも異なっていてもよく、各々炭素数1〜8の直鎖、環状もしくは分枝のアルキル基であり、R15は複数ある場合には同一でも異なっていてもよく、各々炭素数1〜8の直鎖もしくは分枝のアルキレン基である。R16は一般式
(−S−R17−S−)、(−R18−Sm1−R19−)及び(−R20−Sm2−R21−Sm3−R22−)のいずれかの二価の基(R17〜R22は各々炭素数1〜20の二価の炭化水素基、二価の芳香族基、又は硫黄及び酸素以外のヘテロ元素を含む二価の有機基であり、m1、m2及びm3は各々平均値として1以上4未満である。)であり、複数あるkは同一でも異なっていてもよく、各々平均値として1〜6であり、s及びtは各々平均値として0〜3である。但しs及びtの双方が3であることはない。}
【化6】

{式中、R23は炭素数1〜20の直鎖、分岐又は環状のアルキル基であり、複数あるGは同一でも異なっていてもよく、各々炭素数1〜9のアルカンジイル基又はアルケンジイル基であり、複数あるZaは同一でも異なっていてもよく、各々二つの珪素原子と結合することのできる官能基であり、且つ [−0−]0.5、[−0−G−]0.5及び[−O−G−O−]0.5から選ばれる官能基であり、複数あるZbは同一でも異なっていてもよく、各々二つの珪素原子と結合することのできる官能基であり、且つ [−O−G−O−]0.5で表される官能基であり、複数あるZcは同一でも異なっていてもよく、各々−Cl、−Br、−ORe、ReC(=O)O−、RefC=NO−、RefN−、Re−及びHO−G−O−(Gは上記表記と一致する。)から選ばれる官能基であり、Re及びRfは各々炭素数1〜20の直鎖、分岐又は環状のアルキル基である。m、n、u、v及びwは、1≦m≦20、0≦n≦20、0≦u≦3、0≦v≦2、0≦w≦1であり、且つ(u/2)+v+2w=2又は3である。A部が複数である場合、複数のA部におけるZau、Zbv及びZcwそれぞれにおいて、同一でも異なっていてもよく、B部が複数である場合、複数のB部におけるZau、Zbv及びZcwそれぞれにおいて、同一でも異なってもよい。
【請求項7】
ゴム成分(A)、無機充填材(B)を含む充填材、シランカップリング剤(C)、並びに下記一般式(I)で表される有機アルミニウム化合物(D)を含むゴム組成物の製造方法であって、該ゴム組成物を複数段階で混練し、混練の第一段階で、該ゴム成分(A)、該無機充填材(B)の全部又は一部、及び該シランカップリング剤(C)の全部又は一部、及び該下記一般式(I)で表される有機アルミニウム化合物(D)を混練することを特徴とするゴム組成物の製造方法。
【化7】

(式中、Raはアルキル基、アルケニル基及びアリール基から選ばれる置換基又は水素原子であり、Rb及びRcは同一でも異なっていてもよく、アルキル基、ハロゲン化アルキル基及びアリール基から選ばれる置換基であり、nは1〜3の整数を表す。)
【請求項8】
前記混練の第一段階におけるゴム組成物中の質量比{前記一般式(I)で表される有機アルミニウム化合物(D)/前記シランカップリング剤(C)}が(2/100)〜(100/100)である請求項7に記載のゴム組成物の製造方法。
【請求項9】
前記一般式(I)中のnが2〜3の整数である請求項7又は8に記載のゴム組成物の製造方法。
【請求項10】
前記一般式(I)で表される有機アルミニウム化合物(D)が、下記一般式(II)で表される有機アルミニウム化合物(D’)である請求項7〜9のいずれかに記載のゴム組成物の製造方法。
【化8】

(式中、Rb及びRcは同一でも異なっていてもよく、アルキル基、ハロゲン化アルキル基及びアリール基から選ばれる置換基であり、nは1〜3の整数を表す。)
【請求項11】
前記一般式(I)で表される有機アルミニウム化合物(D)が、トリス(2,4−ペンタンジオナト)アルミニウム(III)又はトリス(トリフルオロ−2,4−ペンタンジオナト)アルミニウム(III)である請求項7〜10のいずれかに記載のゴム組成物の製造方法。
【請求項12】
前記シランカップリング剤(C)が、下記一般式(III)〜(VI)で表わされる化合物からなる群から1種以上選択される化合物である請求項7〜11のいずれかに記載のゴム組成物の製造方法。
【化9】

(式中、R1は複数ある場合には同一でも異なっていてもよく、各々水素原子、炭素数1〜8の直鎖、環状もしくは分枝のアルキル基又は炭素数2〜8の直鎖もしくは分枝のアルコキシアルキル基であり、R2は複数ある場合には同一でも異なっていてもよく、各々炭素数1〜8の直鎖、環状もしくは分枝のアルキル基であり、R3は複数ある場合には同一でも異なっていてもよく、各々炭素数1〜8の直鎖もしくは分枝のアルキレン基である。aは平均値として2〜6であり、p及びrは同一でも異なっていてもよく、各々平均値として0〜3である。但しp及びrの双方が3であることはない。)
【化10】

{式中、R4は−Cl、−Br、R9O−、R9C(=O)O−、R910C=NO−、R910CNO−、R910N−、及び−(OSiR910h(OSiR91011)から選択される一価の基(R9、R10及びR11は各々水素原子又は炭素数1〜18の一価の炭化水素基であり、hは平均値として1〜4である。)であり、R5はR4、水素原子又は炭素数1〜18の一価の炭化水素基であり、R6はR4、R5、水素原子又は−[O(R12O)j]0.5 −基(R12は炭素数1〜18のアルキレン基、jは1〜4の整数である。)であり、R7は炭素数1〜18の二価の炭化水素基であり、R8は炭素数1〜18の一価の炭化水素基である。x、y及びzは、x+y+2z=3、0≦x≦3、0≦y≦2、0≦z≦1の関係を満たす数である。}
【化11】

{式中、R13は複数ある場合には同一でも異なっていてもよく、各々水素原子、炭素数1〜8の直鎖、環状もしくは分枝のアルキル基又は炭素数2〜8の直鎖もしくは分枝のアルコキシアルキル基であり、R14は複数ある場合には同一でも異なっていてもよく、各々炭素数1〜8の直鎖、環状もしくは分枝のアルキル基であり、R15は複数ある場合には同一でも異なっていてもよく、各々炭素数1〜8の直鎖もしくは分枝のアルキレン基である。R16は一般式
(−S−R17−S−)、(−R18−Sm1−R19−)及び(−R20−Sm2−R21−Sm3−R22−)のいずれかの二価の基(R17〜R22は各々炭素数1〜20の二価の炭化水素基、二価の芳香族基、又は硫黄及び酸素以外のヘテロ元素を含む二価の有機基であり、m1、m2及びm3は各々平均値として1以上4未満である。)であり、複数あるkは同一でも異なっていてもよく、各々平均値として1〜6であり、s及びtは各々平均値として0〜3である。但しs及びtの双方が3であることはない。}
【化12】

{式中、R23は炭素数1〜20の直鎖、分岐又は環状のアルキル基であり、複数あるGは同一でも異なっていてもよく、各々炭素数1〜9のアルカンジイル基又はアルケンジイル基であり、複数あるZaは同一でも異なっていてもよく、各々二つの珪素原子と結合することのできる官能基であり、且つ [−0−]0.5、[−0−G−]0.5及び[−O−G−O−]0.5から選ばれる官能基であり、複数あるZbは同一でも異なっていてもよく、各々二つの珪素原子と結合することのできる官能基であり、且つ [−O−G−O−]0.5で表される官能基であり、複数あるZcは同一でも異なっていてもよく、各々−Cl、−Br、−ORe、ReC(=O)O−、RefC=NO−、RefN−、Re−及びHO−G−O−(Gは上記表記と一致する。)から選ばれる官能基であり、Re及びRfは各々炭素数1〜20の直鎖、分岐又は環状のアルキル基である。m、n、u、v及びwは、1≦m≦20、0≦n≦20、0≦u≦3、0≦v≦2、0≦w≦1であり、且つ(u/2)+v+2w=2又は3である。A部が複数である場合、複数のA部におけるZau、Zbv及びZcwそれぞれにおいて、同一でも異なっていてもよく、B部が複数である場合、複数のB部におけるZau、Zbv及びZcwそれぞれにおいて、同一でも異なってもよい。}
【請求項13】
前記混練の第一段階において、前記ゴム成分(A)、前記無機充填材(B)の全部又は一部、及び前記シランカップリング剤(C)の全部又は一部を混練りした後に、前記下記一般式(I)で表される有機アルミニウム化合物(D)を加えて更に混練する請求項7〜12のいずれかに記載のゴム組成物の製造方法。

【公開番号】特開2013−87273(P2013−87273A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−232268(P2011−232268)
【出願日】平成23年10月21日(2011.10.21)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】