説明

ゴム組成物及びそれを用いたタイヤ

【課題】ウェット性能を損なうことなく低温柔軟性、即ち氷雪上性能を改善し、ウェット性能と氷雪上性能とに共に優れたタイヤを提供する。
【解決手段】天然ゴム及び合成ジエン系ゴムの内の少なくとも1種をゴム成分として含むゴム組成物において、該ゴム成分の変性停止なしの状態をゲル浸透クロマトグラフィーで測定したポリスチレン換算重量平均分子量が15万以上であり、前記ゴム組成物がゴムマトリクス中に気泡を含有し、かつ、変性停止なしの状態をゲル浸透クロマトグラフィーで測定したポリスチレン換算重量平均分子量が2×10〜2×10の低分子量共役ジエン(共)重合体に少なくとも一つの官能基を導入してなる変性(共)重合体を含有するゴム組成物。特定のゴム成分に対して、特定の重量平均分子量を有し、かつ官能基が導入された低分子量共役ジエン(共)重合体を配合し、更に、ゴムマトリクス中に気泡を含ませることにより、0℃におけるE’を大きく下げることなく−20℃でのE’を下げることができ、これにより氷雪上性能を高めることができ、しかも、0℃におけるtanδが大きく損なわれることがなく、従ってウェット性能を維持することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物及び該ゴム組成物をトレッド部の少なくとも接地部分に用いたタイヤに関し、特にスタッドレスタイヤに用いることで、ウエット性能を損なうことなく、タイヤの氷雪上性能を向上させることが可能なゴム組成物と、このゴム組成物をトレッド部の少なくとも接地部分に用いたタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のスタッドレスタイヤは、氷雪上性能を向上させるためにガラス転移点(Tg)を下げ、低温での弾性率(E’)を低く設定したもの(低温柔軟性を高めたもの)が多い。しかしながら、Tgの低いものでは、通常走行時での湿潤路面上においては、十分な摩擦係数が得られず、このため、通常走行時での湿潤路面におけるグリップ性能(ウェット性能)が悪いという欠点がある。
【0003】
特許文献1には、これを改良するために、発泡剤を配合して、ゴム成分からなるマトリクス中に気泡を生成させると共に、所定のスチレン量及びビニル結合量の低分子量スチレン−ブタジエン共重合体を配合したゴム組成物が提案されている。このゴム組成物であれば、タイヤ除水効果及びエッジ効果が発現し、摩擦力を向上することができるため、ウェット性能が改良される。
【特許文献1】特開平9−194640号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のゴム組成物では、ウェット性能の改良が図れる半面、Tgが高くなったことにより、低温柔軟性が損なわれる欠点があり、ウェット性能と低温柔軟性、即ち、氷雪上性能との両立にも限界があった。
【0005】
本発明は上記従来の問題点を解決し、ウェット性能を損なうことなく低温柔軟性、即ち、氷雪上性能を改善し、ウェット性能と氷雪上性能とに共に優れたタイヤを実現することができるゴム組成物と、このゴム組成物をトレッド部の少なくとも接地部分に用いたタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、特定のゴム成分に対して、特定の重量平均分子量を有し、かつ官能基が導入された低分子量共役ジエン(共)重合体を配合し、更に、ゴムマトリクス中に発泡性気泡を含ませることにより、0℃におけるtanδを大きく下げることなく−20℃でのE’を下げることができ、これにより氷雪上性能を高めることができ、しかも、ウェット性能を維持することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明は以下を要旨とする。
【0007】
(1) 天然ゴム及び合成ジエン系ゴムの内の少なくとも1種をゴム成分として含むゴム組成物において、
該ゴム成分の変性停止なしの状態をゲル浸透クロマトグラフィーで測定したポリスチレン換算重量平均分子量が15万以上であり、
前記ゴム組成物がゴムマトリクス中に気泡を含有し、かつ、変性停止なしの状態をゲル浸透クロマトグラフィーで測定したポリスチレン換算重量平均分子量が2×10〜8×10の低分子量共役ジエン(共)重合体に少なくとも一つの官能基を導入してなる変性(共)重合体を含有することを特徴とするゴム組成物。
【0008】
なお、本発明において「(共)重合体」とは「重合体及び/又は共重合体」を意味し、「(共)重合」とは、「重合及び/又は共重合」を意味する。
【0009】
(2) (1)において、前記変性(共)重合体を前記ゴム成分100重量部に対して1〜60重量部含むことを特徴とするゴム組成物。
【0010】
(3) (1)又は(2)において、変性(共)重合体に導入された官能基が、ケイ素含有官能基であることを特徴とするゴム組成物。
【0011】
(4) (3)において、前記ケイ素含有官能基がヒドロカルビルオキシシラン由来の官能基であることを特徴とするゴム組成物。
【0012】
(5) (1)ないし(4)のいずれかにおいて、前記低分子量共役ジエン(共)重合体がブタジエン単独重合体であることを特徴とするゴム組成物。
【0013】
(6) (1)ないし(4)のいずれかにおいて、前記低分子量共役ジエン(共)重合体がブタジエンとビニル芳香族化合物との共重合体であることを特徴とするゴム組成物。
【0014】
(7) (6)において、前記ビニル芳香族化合物がスチレンであることを特徴とするゴム組成物。
【0015】
(8) (1)ないし(7)のいずれかにおいて、ゴム組成物を加硫して得られる加硫ゴムをクロロホルムで48時間抽出して抽出される変性(共)重合体量が全配合変性(共)重合体量の60%以上であることを特徴とするゴム組成物。
【0016】
(9) (1)ないし(8)のいずれかにおいて、前記ゴム成分100重量部に対して充填剤を20〜100重量部含むことを特徴とするゴム組成物。
【0017】
(10) (1)ないし(9)のいずれかにおいて、前記ゴム成分100重量部に対してシリカを10重量部以上含むことを特徴とするゴム組成物。
【0018】
(11) (1)ないし(10)のいずれかにおいて、タイヤトレッド用ゴム組成物であることを特徴とするゴム組成物。
【0019】
(12) (1)ないし(11)のいずれかに記載のゴム組成物を、トレッド部の少なくとも接地部分に用いたことを特徴とするタイヤ。
【0020】
(13) (12)において、スタッドレスタイヤであることを特徴とするタイヤ。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、特定の分子量のゴム成分に対して、特定の重量平均分子量を有し、かつ官能基が導入された低分子量共役ジエン(共)重合体を配合してなり、ゴムマトリクス中に気泡を含有するゴム組成物により、タイヤのトレッド部の少なくとも接地部分に用いることで、通常走行時での湿潤路面におけるグリップ性能(ウェット性能)を損なうことなく、氷雪上でのグリップ性能(氷雪上性能)を向上させることが可能なゴム組成物を提供することができる。また、かかるゴム組成物をトレッド部の少なくとも接地部分に適用した、ウェット性能及び氷雪上性能に優れたタイヤを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に、本発明のゴム組成物及びタイヤの実施の形態を詳細に説明する。
【0023】
本発明のゴム組成物は、天然ゴム及び合成ジエン系ゴムの内の少なくとも1種をゴム成分として含むゴム組成物において、該ゴム成分の変性停止なしの状態をゲル浸透クロマトグラフィーで測定したポリスチレン換算重量平均分子量が15万以上であり、前記ゴム組成物がゴムマトリクス中に気泡を含有し、かつ、変性停止なしの状態をゲル浸透クロマトグラフィーで測定したポリスチレン換算重量平均分子量が2×10〜15×10の低分子量共役ジエン(共)重合体に少なくとも一つの官能基を導入してなる変性(共)重合体を含有することを特徴とする。
【0024】
なお、「変性停止なしの状態を測定」とは、重合反応終了後に変性剤を添加して変性反応、又は分子量ジャンプなどが発生する高分子量体同士をカップリング反応をすることなく、アルコール等の停止剤により活性末端を失活させる事により低分子量共役ジエン系重合体を得、測定することを意味する。このことは開始剤に窒素などの官能基を含む場合も同様である。
【0025】
本発明のゴム組成物は、気泡を含むため、氷雪路面に対する除水効果及びエッジ効果により、氷上性能及びウェット性能が高い。加えて、本発明のゴム組成物においては、官能基が導入された特定の重量平均分子量を有する低分子量共役ジエン(共)重合体を含むことにより、シリカ等の充填剤と親和性が高く、充填剤の分散性が改良されている。このため、本発明のゴム組成物は、破壊特性(耐久性)、E’低下等の物性が改良される。
なお、本発明のゴム組成物に含まれる気泡は、発泡剤をゴム組成物に予め添加しておき、加硫時に発泡させて導入することができる。以下、このような気泡を「発泡性気泡」と称す場合がある。
【0026】
[ゴム成分]
本発明のゴム組成物のゴム成分は、変性停止なしの状態をゲル浸透クロマトグラフィーで測定したポリスチレン換算重量平均分子量が15万以上の天然ゴム(NR)及び合成ジエン系ゴムの内の少なくとも1種からなり、該ゴム成分としては、未変性のゴム及び変性ゴムのいずれを用いても良い。ここで、合成ジエン系ゴムとしては、乳化重合又は溶液重合で合成されたものが好ましい。また、上記合成ジエン系ゴムとして、具体的には、ポリイソプレンゴム(IR)、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、ポリブタジエンゴム(BR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、イソブチレン−イソプレンゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム、アクリロニリトル−ブタジエンゴム(NBR)等が挙げられる。上記ゴム成分としては、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム、ポリブタジエンゴム、イソブチレン−イソプレンゴムが好ましい。なお、上記ゴム成分は、1種を単独で用いても良いし、2種以上をブレンドして用いても良い。
【0027】
このゴム成分の分子量が15万未満では耐摩耗性に劣る。
【0028】
[変性(共)重合体]
<低分子量共役ジエン(共)重合体>
本発明に係る変性(共)重合体は、変性停止なしの状態をゲル浸透クロマトグラフィーで測定したポリスチレン換算重量平均分子量が2×10〜8×10の低分子量共役ジエン(共)重合体に少なくとも一つの官能基が導入されたものである。
官能基を導入する前の低分子量共役ジエン(共)重合体は、変性停止なしの状態をゲル浸透クロマトグラフィーで測定したポリスチレン換算重量平均分子量が2×10〜8×10であることを要し、この低分子量共役ジエン(共)重合体の重量平均分子量は2×10〜5×10であることが好ましく、2×10〜3×10であることがより好ましい。低分子量共役ジエン(共)重合体の重量平均分子量が上記範囲より大きくても小さくてもウェット性能の改善効果を得ることができない。
【0029】
低分子量共役ジエン(共)重合体としては、特定の重量平均分子量を有する限り特に限定されないが、共役ジエン化合物の単独重合体、又はビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物との共重合体が好ましい。ここで、単量体としての共役ジエン化合物としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチルブタジエン、2−フェニル−1,3−ブタジエン、1,3−ヘキサジエン等が挙げられ、これらの中でも、1,3−ブタジエンが好ましい。低分子量共役ジエン(共)重合体がブタジエン単独重合体である場合には、ガラス転移温度(Tg)が低いため、低温での柔軟性に優れ、氷雪上性能が高い。一方、単量体としてのビニル芳香族化合物としては、スチレン、p−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、クロロメチルスチレン、ビニルトルエン等が挙げられ、これらの中でも、スチレンが好ましい。従って、低分子量共役ジエン(共)重合体がビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物との共重合体である場合、低分子量共役ジエン(共)重合体としては、スチレン−ブタジエン共重合体が特に好ましい。
なお、これら共重合成分としての単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0030】
低分子量共役ジエン(共)重合体が、ビニル芳香族化合物−共役ジエン化合物共重合体である場合、ビニル芳香族化合物の結合量が共役ジエン化合物の結合量に対して80重量%以下であることが好ましい。ビニル芳香族化合物の結合量が80重量%を超えると、低温でのE’が大幅に上昇し、氷雪上性能を悪化させる傾向がある。
【0031】
また、低分子量共役ジエン(共)重合体は、共役ジエン化合物部分のビニル結合量が共役ジエン化合物の結合量に対して0〜80重量%であることが好ましい。共役ジエン化合物部分のビニル結合量が80重量%を超えると、低温でのE’が上昇し、氷雪上性能を悪化させる傾向がある。
【0032】
<官能基>
上記低分子量共役ジエン(共)重合体に導入される官能基としては、シリカ等の充填剤と親和性を有する官能基が好ましく、ケイ素を含む官能基が好ましい。低分子量共役ジエン(共)重合体は、このような官能基を有することにより、官能基を有しない場合に比べて、充填剤に対する親和性が高くなる。このため、充填剤の分散性が向上して、氷雪上性能を大幅に向上できる上、高温でのtanδが低下し、ゴム組成物自体の発熱を抑制できる。このような官能基を導入した本発明に係る変性(共)重合体は、上記低分子量共役ジエン(共)重合体をケイ素含有化合物で変性して、ケイ素含有官能基を導入することにより、容易に得ることができる。
【0033】
<製造方法>
本発明に係る低分子量共役ジエン(共)重合体の製造方法は、特に制限されず、例えば、重合反応に不活性な炭化水素溶媒中で、単量体である共役ジエン化合物を単独で、又は単量体であるビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物との混合物を重合して得ることができるが、官能基は、下記(i)又は(ii)の方法、好ましくは(i)の方法で低分子量共役ジエン(共)重合体に導入することができる。
(i)単量体を重合開始剤を用いて(共)重合させ、重合活性部位を有する(共)重合体を生成させた後、該重合活性部位を各種変性剤で変性する方法。
(ii)単量体を官能基を有する重合開始剤を用いて(共)重合させる方法。
【0034】
低分子量共役ジエン(共)重合体の合成に用いる重合開始剤としては、有機リチウム化合物が好ましく、ヒドロカルビルリチウムが更に好ましい。なお、重合開始剤として有機リチウム化合物を用いた場合、共役ジエン系(共)重合体は、アニオン重合で製造される。
【0035】
上記ヒドロカルビルリチウムとしては、エチルリチウム、n−プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−オクチルリチウム、n−デシルリチウム、フェニルリチウム、2−ナフチルリチウム、2−ブチル−フェニルリチウム、4−フェニル−ブチルリチウム、シクロヘキシルリチウム、シクロペンチルリチウム、ジイソプロペニルベンゼンとブチルリチウムとの反応生成物等が挙げられ、これらの中でも、エチルリチウム、n−プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−オクチルリチウム、n−デシルリチウム等のアルキルリチウムが好ましく、n−ブチルリチウムが特に好ましい。
【0036】
重合開始剤として、これらのヒドロカルビルリチウムを用いる場合、重合開始末端にヒドロカルビル基を有し、他方の末端が重合活性部位である共重合体が得られる。
【0037】
重合開始剤は1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
重合開始剤の使用量は、単量体100g当り0.2〜20ミリモルの範囲とすることが好ましい。
【0038】
上記重合開始剤を用いて、低分子量共役ジエン(共)重合体を製造する方法としては、上述のとおり、特に制限はなく、例えば、重合反応に不活性な炭化水素溶媒中で、単量体を重合させることで低分子量共役ジエン(共)重合体を製造することができる。ここで、重合反応に不活性な炭化水素溶媒としては、プロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、プロペン、1−ブテン、イソブテン、トランス−2−ブテン、シス−2−ブテン、1−ペンテン、2−ペンテン、1−ヘキセン、2−ヘキセン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等が挙げられる。これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
【0039】
上記重合反応は、ランダマイザーの存在下で実施しても良い。該ランダマイザーは、共重合体の共役ジエン化合物部分のミクロ構造を制御することができ、より具体的には、共重合体の共役ジエン化合物部分のビニル結合量を制御したり、共重合体中の共役ジエン化合物単位とビニル芳香族化合物単位とをランダム化する等の作用を有する。上記ランダマイザーとしては、ジメトキシベンゼン、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ビステトラヒドロフリルプロパン、トリエチルアミン、ピリジン、N−メチルモルホリン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、1,2−ジピペリジノエタン、カリウム−t−アミレート、カリウム−t−ブトキシド、ナトリウム−t−アミレート等が挙げられる。
これらのランダマイザーは1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
これらのランダマイザーの使用量は、重合開始剤1モル当り0.01〜100モル当量の範囲が好ましい。
【0040】
上記アニオン重合は、溶液重合で実施することが好ましく、重合反応溶液中の上記単量体の濃度は、5〜50重量%の範囲が好ましく、10〜30重量%の範囲が更に好ましい。なお、共役ジエン化合物とビニル芳香族化合物を併用する場合、単量体混合物中のビニル芳香族化合物の含有率は、80重量%以下が好ましく、目的とする共重合体のビニル芳香族化合物量に応じて適宜選択することができる。また、重合形式は特に限定されず、回分式でも連続式でも良い。
【0041】
上記アニオン重合の重合温度は、0〜150℃の範囲が好ましく、20〜130℃の範囲が更に好ましい。また、該重合は、発生圧力下で実施できるが、通常は、使用する単量体を実質的に液相に保つのに十分な圧力下で行うことが好ましい。ここで、重合反応を発生圧力より高い圧力下で実施する場合、反応系を不活性ガスで加圧することが好ましい。また、重合に使用する単量体、重合開始剤、溶媒等の原材料は、水、酸素、二酸化炭素、プロトン性化合物等の反応阻害物質を予め除去したものを用いることが好ましい。
【0042】
このようにして得られる低分子量共役ジエン(共)重合体に官能基を導入するためのケイ素含有化合物としては、下記一般式(I)で表されるヒドロカルビルオキシシラン化合物及びその部分縮合物、並びに、下記一般式(II)で表されるヒドロカルビルオキシシラン化合物及びその部分縮合物が挙げられる。
【0043】
【化1】

(式中、Aは(チオ)エポキシ、(チオ)インシアネート、(チオ)ケトン、(チオ)アルデヒド、イミン、アミド、イソシアヌル酸トリエステル、(チオ)カルボン酸ヒドロカルビルエステル、(チオ)カルボン酸の金属塩、カルボン酸無水物、カルボン酸ハロゲン化物、炭酸ジヒドロカルビルエステル、環状三級アミン、非環状三級アミン、ニトリル、ピリジン、スルフィド及びマルチスルフィドの中から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する1価の基を表し、Rは単結合又は2価の不活性炭化水素基を表し、R及びRは、それぞれ独立に炭素数1〜20の1価の脂肪族炭化水素基又は炭素数6〜18の1価の芳香族炭化水素基を表し、nは0〜2の整数であり、R,ORが複数ある場合、複数のR,ORは、それぞれ、互いに同一でも異なっていても良い。なお、分子中には活性プロトン及びオニウム塩は含まれない。)
【0044】
−Si−(OR4−p …(II)
(式中、R及びRは、それぞれ独立して炭素数1〜20の1価の脂肪族炭化水素基又は炭素数6〜18の1価の芳香族炭化水素基を表し、pは0〜2の整数であり、R,ORが複数ある場合、複数のR,ORは、それぞれ、互いに同一でも異なっていても良い。なお、分子中には活性プロトン及びオニウム塩は含まれない。)
【0045】
一般式(I)において、Aにおける官能基の中で、イミンはケチミン、アルジミン、アミジンを包含し、(チオ)カルボン酸エステルは、アクリレートやメタクリレート等の不飽和カルボン酸エステルを包含し、非環状三級アミンは、N,N−二置換アニリン等のN,N−二置換芳香族アミンを包含し、また環状三級アミンは、環の一部として(チオ)エーテルを含むことができる。また、(チオ)カルボン酸の金属塩の金属としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、Al、Sn、Zn等を挙げることができる。
【0046】
のうちの2価の不活性炭化水素基としては、炭素数1〜20のアルキレン基が好ましい。該アルキレン基は直鎖状、枝分かれ状、環状のいずれであっても良いが、特に直鎖状のものが好適である。該直鎖状アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、デカメチレン基、ドデカメチレン基等が挙げられる。
【0047】
また、R及びRとしては、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、炭素数6〜18のアリール基、炭素数7〜18のアラルキル基等が挙げられる。ここで、上記アルキル基及びアルケニル基は直鎖状、枝分かれ状、環状のいずれであっても良く、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ビニル基、プロぺニル基、アリル基、ヘキセニル基、オクテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等が挙げられる。また、上記アリール基は、芳香環上に低級アルキル基等の置換基を有していても良く、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等が挙げられる。更に、上記アラルキル基は、芳香環上に低級アルキル基等の置換基を有していても良く、例えば、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基等が挙げられる。
【0048】
一般式(I)において、nは0〜2の整数であるが、0が好ましく、また、この分子中には活性プロトン及びオニウム塩を有しないことが必須である。
【0049】
一般式(I)で表されるヒドロカルビルオキシシラン化合物としては、例えば(チオ)エポキシ基含有ヒドロカルビルオキシシラン化合物として、2−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、2−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、(2−グリシドキシエチル)メチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)メチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル(メチル)ジメトキシシラン及びこれらの化合物におけるエポキシ基をチオエポキシ基に置き換えたものを挙げることができるが、これらの中でも、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン及び3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランが特に好ましい。
【0050】
また、イミン基含有ヒドロカルビルオキシシラン化合物として、N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(1−メチルエチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−エチリデン−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(1−メチルプロピリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(4−N,N−ジメチルアミノベンジリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(シクロヘキシリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン及びこれらのトリエトキシシリル化合物に対応するトリメトキシシリル化合物、メチルジエトキシシリル化合物、エチルジエトキシシリル化合物、メチルジメトキシシリル化合物、エチルジメトキシシリル化合物等を挙げることができるが、これらの中でも、N−(1−メチルプロピリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン及びN−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミンが特に好ましい。
【0051】
更に、イミン(アミジン)基含有化合物としては、1−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]−4,5−ジヒドロイミダゾール、1−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]−4,5−ジヒドロイミダゾール、N−(3−トリエトキシシリルプロピル)−4,5−ジヒドロイミダゾール、N−(3−イソプロポキシシリルプロピル)−4,5−ジヒドロイミダゾール、N−(3−メチルジエトキシシリルプロピル)−4,5−ジヒドロイミダゾール等が挙げられ、これらの中でも、N−(3−トリエトキシシリルプロピル)−4,5−ジヒドロイミダゾールが好ましい。
【0052】
また更に、カルボン酸エステル基含有化合物としては、3−メタクリロイロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロイロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロイロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロイロキシプロピルトリイソプロポキシシランなどが挙げられ、これらの中でも、3−メタクリロイロキシプロピルトリメトキシシランが好ましい。
【0053】
また、イソシアネート基含有化合物としては、3−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアナトプロピルメチルジエトキシシラン、3−イソシアナトプロピルトリイソプロポキシシランなどが挙げられ、これらの中でも、3−イソシアナトプロピルトリエトキシシランが好ましい。
【0054】
更に、カルボン酸無水物含有化合物としては、3−トリエトキシシリルプロピルコハク酸無水物、3−トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物、3−メチルジエトキシシリルプロピルコハク酸無水物等が挙げられ、これらの中でも、3−トリエトキシシリルプロピルコハク酸無水物が好ましい。
【0055】
また、環状三級アミン基含有ヒドロカルビルオキシシラン化合物としては、3−(1−ヘキサメチレンイミノ)プロピル(トリエトキシ)シラン、3−(1−ヘキサメチレンイミノ)プロピル(トリメトキシ)シラン、(1−ヘキサメチレンイミノ)メチル(トリメトキシ)シラン、(1−ヘキサメチレンイミノ)メチル(トリエトキシ)シラン、2−(1−ヘキサメチレンイミノ)エチル(トリエトキシ)シラン、2−(1−ヘキサメチレンイミノ)エチル(トリメトキシ)シラン、3−(1−ピロリジニル)プロピル(トリエトキシ)シラン、3−(1−ピロリジニル)プロピル(トリメトキシ)シラン、3−(1−ヘプタメチレンイミノ)プロピル(トリエトキシ)シラン、3−(1−ドデカメチレンイミノ)プロピル(トリエトキシ)シラン、3−(1−ヘキサメチレンイミノ)プロピル(ジエトキシ)メチルシラン、3−(1−ヘキサメチレンイミノ)プロピル(ジエトキシ)エチルシラン、3−[10−(トリエトキシシリル)デシル]−4−オキサゾリン等が挙げられ、これらの中でも、3−(1−ヘキサメチレンイミノ)プロピル(トリエトキシ)シラン及び(1−ヘキサメチレンイミノ)メチル(トリメトキシ)シランが好ましい。
【0056】
更に、非環状三級アミン基含有ヒドロカルビルオキシシラン化合物としては、3−ジメチルアミノプロピル(トリエトキシ)シラン、3−ジメチルアミノプロピル(トリメトキシ)シラン、3−ジエチルアミノプロピル(トリエトキシ)シラン、3−ジエチルアミノプロピル(トリメトキシ)シラン、2−ジメチルアミノエチル(トリエトキシ)シラン、2−ジメチルアミノエチル(トリメトキシ)シラン、3−ジメチルアミノプロピル(ジエトキシ)メチルシラン、3−ジブチルアミノプロピル(トリエトキシ)シラン等が挙げられ、これらの中でも、3−ジエチルアミノプロピル(トリエトキシ)シラン及び3−ジメチルアミノプロピル(トリエトキシ)シランが好ましい。
【0057】
また更に、その他のヒドロカルビルオキシシラン化合物としては、2−(トリメトキシシリルエチル)ピリジン、2−(トリエトキシシリルエチル)ピリジン、2−シアノエチルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0058】
前記一般式(I)で表されるヒドロカルビルオキシシラン化合物は、1種を単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いても良い。また、上記ヒドロカルビルオキシシラン化合物の部分縮合物も用いることができる。
【0059】
一般式(II)において、R及びRについては、それぞれ上記一般式(I)におけるR及びRについて説明したものと同様である。
【0060】
一般式(II)で表されるヒドロカルビルオキシシラン化合物としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトライソブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−tert−ブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ジビニルジメトキシシラン、ジビニルジエトキシシラン等が挙げられ、これらの中でも、テトラエトキシシランが特に好ましい。
【0061】
上記一般式(II)で表されるヒドロカルビルオキシシラン化合物は、1種単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いても良い。また、これらヒドロカルビルオキシシラン化合物の部分縮合物を用いることもできる。
【0062】
なお、低分子量共役ジエン(共)重合体に官能基を導入するための変性剤としてのケイ素含有化合物としては、下記一般式(III)で表されるカップリング剤も好ましい。
SiX …(III)
(式(III)中、Rは、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、又は炭素数7〜20のアラルキル基を表し、Xは、塩素又は臭素を表し、aは0〜3であり、bは1〜4である。但し、a+b=4である。なお、a,bが2以上の場合、複数のR,Xは、それぞれ、互いに同一であっても良く、異なるものであっても良い。)
【0063】
一般式(III)で表される変性停止剤で変性することにより、低分子量共役ジエン(共)重合体の耐コールドフロー性を改良することができる。なお、一般式(III)の変性停止剤で変性して得られる低分子量共役ジエン(共)重合体は、少なくとも1種のケイ素−炭素結合を有する。
【0064】
一般式(III)において、Rとして、具体的には、メチル基、エチル基、n−ブチル基、ネオフィル基、シクロヘキシル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基等が挙げられる。
【0065】
また、一般式(III)で表される変性停止剤として、具体的には、SnCl、RSnCl、RSnCl、RSnCl、SiCl、RSiCl、RSiCl、RSiCl等が好ましく、SnCl及びSiClが特に好ましい。
【0066】
上記変性剤による重合活性部位の変性反応は、溶液反応で行うことが好ましく、該溶液中には、重合時に使用した単量体が含まれていても良い。また、変性反応の反応形式は特に制限されず、バッチ式でも連続式でも良い。更に、変性反応の反応温度は、反応が進行する限り特に限定されず、重合反応の反応温度をそのまま採用しても良い。なお、変性剤の使用量は、(共)重合体の製造に使用した重合開始剤1モルに対し、0.25〜3.0モルの範囲が好ましく、0.5〜1.5モルの範囲が更に好ましい。
【0067】
本発明においては、官能基導入低分子量共役ジエン(共)重合体を含む反応溶液を乾燥して低分子量共役ジエン(共)重合体を分離した後、得られた低分子量共役ジエン(共)重合体を前記ゴム成分に配合しても良いし、官能基導入低分子量共役ジエン(共)重合体を含む反応溶液を前記ゴム成分のゴムセメントに溶液状態で混合した後、乾燥して、ゴム成分及び官能基導入低分子量共役ジエン(共)重合体の混合物を得ても良い。
【0068】
なお、官能基導入量は、低分子量共役ジエン(共)重合体に官能基を導入する際に使用するケイ素含有化合物の使用量により調節することができる。
【0069】
<官能基導入低分子量共役ジエン(共)重合体の配合量>
本発明のゴム組成物は、上述のような官能基導入低分子量共役ジエン(共)重合体を、前述のゴム成分100重量部に対して1〜60重量部含有することが好ましく、特に3〜40重量部含有することが好ましい。
この配合量が少な過ぎると、官能基導入低分子量共役ジエン(共)重合体を配合することによる本発明の効果を十分に得ることができず、多過ぎると破壊特性が悪化する。
【0070】
[気泡]
本発明のゴム組成物は、ゴムマトリクス中に気泡、好ましくは発泡性気泡を含有する。
本発明おいて、この気泡は、例えば、通常のゴム配合物に発泡剤を加えて混練し、得られたゴム組成物を通常の条件で加硫することにより、発泡剤を発泡させて、ガスを発生させることにより形成することができる。また本発明に用いる気泡は、発泡性気泡が好ましいが、中空粒子の破壊によるもの、親水性粒子の溶出によるもの、脱落性異物の脱落によるものでもよい。ここで、ゴム組成物中の発泡率(Vs)は、5〜35%の範囲であるのが好ましい。発泡率が5%未満であると、氷雪上性能が低下し、35%を超えると、破壊特性及び耐摩耗性が低下する傾向がある。
【0071】
なお、ゴム組成物の発泡率(Vs)(%)は、下記式(A)により算出できる。
Vs={(ρ−ρ)/(ρ−ρ)−1}×100 …(A)
(式中、ρはゴム組成物の密度(g/cm)、ρはゴム組成物における固相部の密度(g/cm)、ρはゴム組成物における気泡部の密度(g/cm)である。)
また、気泡部の密度ρは無視できる程度に小さいので、上記発泡率(Vs)(%)を、下記式(B)により算出しても良い。
Vs=(ρ/ρ−1)×100 …(B)
【0072】
本発明のゴム組成物に用いることができる発泡剤としては、アゾジカルボンアミド(ADCA)、ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)、ジニトロソペンタスチレンテトラミンやベンゼンスルホニルヒドラジド誘導体、p,p’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド(OBSH)、二酸化炭素を発生する重炭酸アンモニウム、重炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、窒素を発生するニトロソスルホニルアゾ化合物、N,N’−ジメチル−N,N’−ジニトロソフタルアミド、トルエンスルホニルヒドラジド、p−トルエンスルホニルセミカルバジド、p,p’−オキシビスベンゼンスルホニルセミカルバジド等が挙げられる。これら発泡剤の中でも、製造加工性の観点から、アゾジカルボンアミド(ADCA)、ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)等が好ましい。
これら発泡剤は、1種単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0073】
上記発泡剤の形態としては、特に制限はなく、目的に応じて粒子状、液状等の中から適宜選択することができる。なお、発泡剤の形態は、例えば顕微鏡を用いて観察することができる。また、粒子状の発泡剤の平均粒径は、例えば、コールターカウンター等を用いて測定することができる。
【0074】
本発明のゴム組成物においては、前記ゴム成分100重量部に対して、上記発泡剤を1〜20重量部の割合で配合することが好ましく、2〜10重量部の割合で配合することが更に好ましい。
【0075】
[充填剤]
本発明のゴム組成物においては、更に充填剤を前記ゴム成分100重量部に対して20〜100重量部の割合で配合することが好ましい。充填剤の配合量が20重量部未満では、加硫ゴムの破壊特性及び耐摩耗性が十分でなく、一方、100重量部を超えると、作業性が悪化する傾向がある。
ここで、充填剤としては、カーボンブラック及びシリカが好ましい。なお、カーボンブラックとしては、FEF、SRF、HAF、ISAF、SAFグレードのものが好ましく、HAF、ISAF、SAFグレードのものが更に好ましい。一方、シリカとしては、湿式シリカ及び乾式シリカ等が好ましく、湿式シリカが更に好ましい。
これら補強性の充填剤は、1種単独で用いても良いし、2種以上を混合して用いても良い。
【0076】
特に、本発明のゴム組成物は充填剤としてシリカを前記ゴム成分100重量部に対して10重量部以上、とりわけ10〜80重量部含むことが好ましい。即ち、本発明で用いる変性(共)重合体は、シリカに対する親和性に優れるため、充填剤としてはシリカを用いることが好ましい。
【0077】
[抽出率]
本発明のゴム組成物は、これを加硫して得られる加硫ゴムを48時間クロロホルム抽出したとき抽出される変性(共)重合体が全変性(共)重合体配合量対比で、60%以上であることが望ましい。
【0078】
[その他の成分]
本発明のゴム組成物には、前記ゴム成分、官能基導入低分子量共役ジエン(共)重合体、発泡剤、発泡助剤、充填剤の他に、ゴム工業界で通常使用される配合剤、例えば、老化防止剤、シランカップリング剤、加硫促進剤、加硫促進助剤、加硫剤等を、本発明の目的を害しない範囲内で適宜選択して配合することができる。これら配合剤としては、市販品を好適に使用することができる。
【0079】
[ゴム組成物の製造方法]
本発明のゴム組成物は、ゴム成分に、官能基導入低分子量共役ジエン(共)重合体及び発泡剤と、必要に応じて適宜選択した各種配合剤とを配合して、混練り、熱入れ、押出等することにより製造することができる。
【0080】
[タイヤ]
本発明のタイヤは、上述した本発明のゴム組成物をトレッド部の少なくとも接地部分に用いたことを特徴とする。
本発明のゴム組成物をトレッド部の少なくとも接地部分に用いたタイヤは、ウェット性能及び氷雪上性能に優れる。従って、本発明のタイヤを、スタッドレスタイヤ、特に乗用車用スタッドレスタイヤに用いるのが好ましい。なお、本発明のタイヤは、上述のゴム組成物をトレッド部の少なくとも接地部分に用いる以外特に制限は無く、常法に従って製造することができる。また、該タイヤに充填する気体としては、通常の或いは酸素分圧を調整した空気の他、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスを用いることができる。
【実施例】
【0081】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0082】
製造例1:ブタジエン重合体(B−1)の製造
乾燥し、窒素置換した800mLの耐圧ガラス容器に、シクロへキサン300g、1,3−ブタジエン50gを加え、ジテトラヒドロフリルプロパン0.11mlを注入し、更にn−ブチルリチウム(n−BuLi)3.6ミリモルを加えた後、50℃で5時間重合反応を行った。この際の重合転化率は、ほぼ100%であった。その後、重合反応系に、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT)のイソプロパノール溶液(BHT濃度:5重量部)0.5mLを加えて、重合反応を停止させ、更に常法に従って乾燥してブタジエン重合体(B−1)を得た。
【0083】
製造例2:シラン変性ブタジエン重合体(Si−B−1)の製造
n−ブチルリチウムと共に、重合反応後にテトラエトキシシランを加え、50℃で30分変性反応を行い、その後にBHTで反応を停止したこと以外は、製造例1と同様にして、シラン変性ブタジエン重合体(Si−B−1)を得た。
【0084】
製造例3:スチレン−ブタジエン共重合体(S/B−1)の製造
単量体として、1,3−ブタジエン50gに代えて、1,3−ブタジエン45gとスチレン5gとを用い、更にジテトラヒドロフリルプロパン1.8ミリモルを加えたことと、重合条件を50℃、1.5時間としたこと以外は、製造例1と同様にして、スチレン−ブタジエン共重合体(S/B−1)を得た。
【0085】
製造例4:シラン変性スチレンブタジエン重合体(Si−S/B−1)の製造
n−ブチルリチウムと共に、重合反応後にテトラエトキシシラン3.24ミリモルを加え、50℃で30分変性反応を行い、その後にBHTで反応を停止したこと以外は、製造例3と同様にして、シラン変性スチレンブタジエン重合体(Si−S/B−1)を得た。
【0086】
上記のようにして製造した(共)重合体の重量平均分子量(Mw)、ミクロ構造及び結合スチレン量を下記の方法で測定し、結果を表1に示した。
【0087】
(1)重量平均分子量(Mw)
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー[GPC:東ソー製HLC−8020、カラム:東ソー製GMH−XL(2本直列)、検出器:示差屈折率計(RI)]で単分散ポリスチレンを基準として、各(共)重合体のポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)を求めた。
【0088】
(2)ミクロ構造及び結合スチレン量
重合体のミクロ構造を赤外法(モレロ法)で求め、重合体の結合スチレン量をH−NMRスペクトルの積分比より求めた。
【0089】
【表1】

【0090】
実施例1,2、比較例1,2
表2に示す配合でゴム組成物を調製し、得られたゴム組成物を160℃で15分間加硫して加硫ゴムを得た。得られた加硫ゴムについて、以下の物性ないし性能の評価を行って、結果を表2に示した。
【0091】
(1)発泡率
前記式(A)より求めた。
【0092】
(2)破壊強度(引張強度)
JIS K6301−1995に準拠して室温で引張試験を行い、引張強度を測定し、比較例1のゴム組成物の引張強度を100として指数表示した。指数値が大きい程、破壊強度が良好であることを示す。
【0093】
(3)氷雪上性能(−20℃弾性率(E’))
レオメトリックス社製の粘弾性測定装置を用いて、周波数10Hz、歪0.1%の条件で、温度−20℃での弾性率(E’)を測定し、比較例1のゴム組成物の弾性率(E’)を100として指数表示した。指数値が小さい程、氷雪上性能に優れることを示す。
【0094】
(4)ウェット性能(0℃tanδ)
上記と同様に、レオメトリックス社製の粘弾性測定装置を使用し、0℃において、歪み0.1%、周波数10Hzで測定し、比較例1のゴム組成物のtanδを100として指数表示した。指数値が大きい程、ウェット性能優れることを示す。
【0095】
なお、表2において、ゴム組成物の調製に用いた各材料の詳細は次の通りである。
天然ゴム:RSS#1(Mw=200万)
ポリブタジエンゴム:シス−1,4−ポリブタジエン、UBEPOL BR150L
(商品名)(宇部興産製)(Mw=50万)
カーボンブラック:SAF
シリカ:Nipsil AQ(商品名)(日本シリカ製)
シランカップリング剤:Si69(商品名)(デグッサ製)
老化防止剤IPPD:N−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン
加硫促進剤MBTS:ジベンゾチアジルジスルフィド
加硫促進剤CBS:N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド
DPT:ジニトロソペンタメチレンテトラミン
【0096】
【表2】

【0097】
上記の結果から、本発明のゴム組成物を用いたタイヤは、ウェット性能と氷雪上性能とに優れ、しかも耐久性にも優れることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然ゴム及び合成ジエン系ゴムの内の少なくとも1種をゴム成分として含むゴム組成物において、
該ゴム成分の変性停止なしの状態をゲル浸透クロマトグラフィーで測定したポリスチレン換算重量平均分子量が15万以上であり、
前記ゴム組成物がゴムマトリクス中に気泡を含有し、かつ、変性停止なしの状態をゲル浸透クロマトグラフィーで測定したポリスチレン換算重量平均分子量が2×10〜8×10の低分子量共役ジエン(共)重合体に少なくとも一つの官能基を導入してなる変性(共)重合体を含有することを特徴とするゴム組成物。
【請求項2】
請求項1において、前記変性(共)重合体を前記ゴム成分100重量部に対して1〜60重量部含むことを特徴とするゴム組成物。
【請求項3】
請求項1又は2において、変性(共)重合体に導入された官能基が、ケイ素含有官能基であることを特徴とするゴム組成物。
【請求項4】
請求項3において、前記ケイ素含有官能基がヒドロカルビルオキシシラン由来の官能基であることを特徴とするゴム組成物。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項において、前記低分子量共役ジエン(共)重合体がブタジエン単独重合体であることを特徴とするゴム組成物。
【請求項6】
請求項1ないし4のいずれか1項において、前記低分子量共役ジエン(共)重合体がブタジエンとビニル芳香族化合物との共重合体であることを特徴とするゴム組成物。
【請求項7】
請求項6において、前記ビニル芳香族化合物がスチレンであることを特徴とするゴム組成物。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項において、ゴム組成物を加硫して得られる加硫ゴムをクロロホルムで48時間抽出して抽出される変性(共)重合体量が全配合変性(共)重合体量の60%以上であることを特徴とするゴム組成物。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか1項において、前記ゴム成分100重量部に対して充填剤を20〜100重量部含むことを特徴とするゴム組成物。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか1項において、前記ゴム成分100重量部に対してシリカを10重量部以上含むことを特徴とするゴム組成物。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれか1項において、タイヤトレッド用ゴム組成物であることを特徴とするゴム組成物。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれか1項に記載のゴム組成物を、トレッド部の少なくとも接地部分に用いたことを特徴とするタイヤ。
【請求項13】
請求項12において、スタッドレスタイヤであることを特徴とするタイヤ。

【公開番号】特開2008−88423(P2008−88423A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−229304(P2007−229304)
【出願日】平成19年9月4日(2007.9.4)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】