説明

ゴム組成物及びそれを用いた空気入りタイヤ

【課題】充填材の分散性をより改善することができ、低発熱性、耐摩耗性に優れたゴム組成物及び該組成物を用いてなる、上記特性を有する空気入りタイヤを提供すること。
【解決手段】配合工程において充填材表面と反応する変性部位(A)を分子構造中に含む変性ポリマー(B)5〜90質量部と他のポリマー成分(C)95から10質量部からなるゴム成分において、他のポリマー成分(C)がポリマーの生産工程で添加された有機酸の残渣(D)を含み、そのゴム成分100質量部に対して、補強性充填材(E)10〜150質量部、前記(D)と配合時に添加される有機酸(F)との総和が3.5質量部以下であることを特徴とするゴム組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物それを用いたタイヤに関する。さらに詳しくは、本発明は、ヒステリシスロスを低減させ、転がり抵抗が良好で、耐摩耗性に優れたタイヤを与えることが可能なゴム組成物、及びそれを用いた空気入りタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、省エネルギーの社会的な要請及び環境問題への関心の高まりに伴う世界的な二酸化炭素排出規制の動きに関連して、自動車の低燃費化及び省資源化につながる耐摩耗性の向上に対する要求はより過酷なものとなりつつある。このような要求に対応するため、タイヤ性能についても転がり抵抗の減少が求められてきている。タイヤの転がり抵抗を下げる手法としては、タイヤ構造の最適化による手法についても検討されてきたものの、ゴム組成物としてより発熱性の低い材料を用いることが最も一般的な手法として行われている。
【0003】
このような発熱性の低いゴム組成物を得るために、これまで、シリカやカーボンブラックを充填材とするゴム組成物用の変性ゴムの技術開発が多くなされてきた。その中でも特に、有機リチウムを用いたアニオン重合で得られる共役ジエン系重合体の重合活性末端を充填材と相互作用する官能基を含有するアルコキシシラン誘導体で変性する方法が有効なものとして提案されている(例えば、特許文献1、2及び3参照)。
【0004】
これらのアルコキシシラン誘導体は、いずれも分子内に、ケイ素原子に直接結合するアルコキシ基を有すると共に、充填材と相互作用を有する含窒素官能基を含むケイ素化合物であって、これにより重合活性末端が変性されてなる変性共役ジエン系重合体は、タイヤの転がり抵抗を減少させると共に、破壊特性や耐摩耗性を向上させる効果を奏する。しかしながら、近年、省エネルギーや環境問題などの観点から、さらなる自動車の低燃費化(タイヤの転がり抵抗の減少)や耐摩耗性の向上が望まれている。
また、スチレン−ブタジエンを乳化重合するに当り、ポリマー中に含まれる乳化剤の量を特定の範囲(1〜3.5phr)に限定することによって耐摩耗性が向上することが開示されている(例えば、特許文献4〜5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−103925号公報
【特許文献2】WO02/002356パンフレット
【特許文献3】特開2004−74960号公報
【特許文献4】特表2003−521574号公報
【特許文献5】特表2003−521575号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような状況下で、ゴム成分とカーボンブラック及び/又はシリカとの相互作用に優れ、これら充填材の分散性をより改善することができ、低発熱性、耐摩耗性に優れたゴム組成物及び該組成物を用いてなる、上記特性を有する空気入りタイヤを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、配合工程において充填材表面と反応する変性部位を分子構造中に含む特定の変性ポリマーと、生産工程で添加された有機酸の残渣を含む他のポリマー成分からなるゴム成分100質量部に対して、特定量の補強性充填材、生産工程で添加された有機酸の残渣と配合時に添加される有機酸との総和を特定の値以下にして、生産工程で添加された有機酸の残渣を有効に活用することによって、上記目的を達成し得ることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち本発明は、
[1] 配合工程において充填材表面と反応する変性部位(A)を分子構造中に含む変性ポリマー(B)5〜90質量部と他のポリマー成分(C)95〜10質量部からなるゴム成分において、他のポリマー成分(C)がポリマーの生産工程で添加された有機酸の残渣(D)を含み、そのゴム成分100質量部に対して、補強性充填材(E)10〜150質量部、前記(D)と配合時に添加される有機酸(F)との総和が3.5質量部以下であることを特徴とするゴム組成物、
[2] 前記変性部位(A)が、補強性充填材(E)と配合工程にて酸塩基反応を起こし得る官能基を含む上記[1]のゴム組成物、
[3] 前記変性部位(A)が、有機酸の残渣(D)及び/又は配合時に添加される有機酸(F)と配合工程にて酸塩基反応を起こし得る官能基を含む上記[1]又は[2]のゴム組成物、
[4] 前記変性部位(A)が、有機酸の残渣(D)及び/又は配合時に添加される有機酸(F)と配合工程にて酸塩基反応を起こし、オニウムカチオンを生成し得る上記[1]〜[3]いずれかのゴム組成物、
[5] 前記変性部位(A)が、含窒素官能基を含む上記[1]〜[4]いずれかのゴム組成物、
[6] 前記含窒素官能基が、アミノ基、イミノ基、ピリジル基、ニトリル基、ヒドラジン基、アミジン基、アミドラドン基、ウレア基、チオウレア基の中から選ばれる少なくとも一種を含む上記[5]のゴム組成物、
[7] ポリマー成分(C)が、天然ゴム及び/又はジエン系合成ゴムである上記[1]のゴム組成物、
[8] ポリマー成分(C)が乳化重合により得られるジエン系合成ゴムを含む上記[7]のゴム組成物、
[9] ポリマー成分(C)が、乳化重合により得られるスチレン−ブタジエン共重合体(ESBR)を含む上記[8]のゴム組成物、
[10] ポリマーの生産工程で添加された有機酸の残渣(D)が、脂肪酸類、樹脂酸類、石炭酸類及びロジン酸類の中から選ばれる少なくとも一種を含む上記[1]〜[9]いずれかのゴム組成物、
[11] ポリマーの生産工程で添加された有機酸の残渣(D)が、脂肪酸類の金属塩、樹脂酸類の金属塩、石炭酸類の金属塩及びロジン酸類の金属塩の中から選ばれる少なくとも一種を含む上記[1]〜[10]いずれかのゴム組成物、
[12] 前記金属塩を構成する金属が、アルカリ金属又はアルカリ土類金属である上記[11]のゴム組成物、
[13] 補強性充填材(E)が、カーボンブラック及び/又はシリカを含む上記[1]のゴム組成物。
[14] 補強性充填材(E)が、ゴム成分100質量部に対して55質量部未満のカーボンブラックを含む上記[13]のゴム組成物、
[15] 補強性充填材(E)が、ゴム成分100質量部に対して40質量部未満のシリカを含む上記[13]のゴム組成物、
[16] 配合時に添加される有機酸(F)が、脂肪酸類を含む上記[1]のゴム組成物、
[17] 配合時に添加される有機酸(F)が、ステアリン酸を含む上記[16]のゴム組成物、
[18] 硫黄架橋性である上記[1]〜[17]のいずれかに記載のゴム組成物。
[19] 配合時に添加される有機酸(F)以外の、硫黄、加硫促進剤、軟化剤、スコーチ防止剤、老化防止剤、粘着付与剤、発泡剤、発泡助剤、樹脂の中から選ばれる任意の配合剤を配合して得られる上記[1]〜[18]いずれかのゴム組成物、及び
[20] 上記[1]〜[19]いずれかのゴム組成物をトレッド部材又はサイドウォール部材として用いたことを特徴とするタイヤ、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、配合工程において充填材表面と反応する変性部位(A)を分子構造中に含む変性ポリマーの存在下、ポリマーの生産工程で添加された有機酸の残渣と配合時に添加される有機酸の総和を抑制し、ポリマーの生産工程で添加された有機酸の残渣を有効に活用することによって、ゴム組成物の低発熱性、耐摩耗性を改善し、同時に該ゴム組成物をタイヤのトレッド又はサイド部材として用いた空気入りタイヤの低発熱性、耐摩耗性を改良することができる。
すなわち、上記有機酸性成分を抑制することにより酸性成分により中和される変性基の数が少なくなるために、存在する変性基の多くが中和されずに充填材の分散、補強に供されることで低発熱性、耐摩耗性を改良することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
まず、本発明のゴム組成物について説明する。
[ゴム組成物]
本発明ゴム組成物は、配合工程において充填材表面と反応する変性部位(A)を分子構造中に含む変性ポリマー(B)5〜90質量部と他のポリマー成分(C)が95から10質量部からなるゴム成分において、他のポリマー成分(C)がポリマーの生産工程で添加された有機酸の残渣(D)を含み、そのゴム成分100質量部に対して、補強性充填材(E)10〜150質量部、前記(D)と配合時に添加される有機酸(F)との総和が3.5質量部以下であることを特徴とする。
【0010】
(配合工程において充填材表面と反応する変性部位(A)を分子構造中に含む変性ポリマ
−(B)の合成)
<配合工程において充填材表面と反応する変性部位(A)>
前記変性部位(A)が、補強性充填材(E)と配合工程にて酸塩基反応を起こし得る官能基を含むことが好ましい。
前記変性部位(A)がヘテロ原子である窒素原子を含んだ、含窒素官能基であることが好ましく、例えば、前記含窒素官能基が、アミノ基、イミノ基、ピリジル基、ニトリル基、ヒドラジン基、アミジン基、アミドラドン基、ウレア基、チオウレア基等が好ましい。
【0011】
<変性部位(A)を分子構造中に含む変性ポリマー(B)>
前記変性ポリマー(B)は有機アルカリ金属化合物を開始剤とし、有機溶媒中で共役ジ塩化合物単独、又は共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とをアニオン重合させて得られた共役ジエン系合成ゴムの活性アニオン部位に、活性アニオン部位と結合を生成する官能基と充填材表面と反応する変性部位(A)を生成し得る官能基を1分子中に含む化合物を反応させて得られる。
【0012】
上記共役ジエン系合成ゴムの分子中に存在する活性部位の金属はアルカリ金属及びアルカリ土類金属から選ばれる1種であることが望ましく、中でもアルカリ金属が好ましく、特にリチウム金属が好ましい。
上記溶液重合法においては、例えば有機アルカリ金属化合物、特にリチウム化合物を重合開始剤とし、共役ジエン化合物単独又は共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物をアニオン重合させることにより、目的の重合体を製造することができる。
【0013】
(モノマー例)
上記共役ジエン化合物としては、例えば1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−フェニル−1,3−ブタジエン、1,3−ヘキサジエンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよいが、これらの中で、1,3−ブタジエン、イソプレン及び2,3−ジメチル−1,3−ブタジエンが特に好ましい。
また、これらの共役ジエン化合物との共重合に用いられる芳香族ビニル化合物としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、1−ビニルナフタレン、3−ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン、ジビニルベンゼン、4−シクロへキシルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよいが、これらの中で、スチレンが特に好ましい。
【0014】
さらに、単量体として共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物を用いて共重合を行う場合、それぞれ1,3−ブタジエン及びスチレンの使用が、単量体の入手の容易さなどの実用性面、及びアニオン重合特性がリビング性などの点で優れることなどから、特に好適である。
また、溶液重合法を用いた場合には、溶媒中の単量体濃度は、好ましくは5〜50質量%、より好ましくは10〜30質量%である。尚、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物を用いて共重合を行う場合、仕込み単量体混合物中の芳香族ビニル化合物の含量は0〜55質量%の範囲が好ましい。好ましくは45%以下、より好ましくは40%以下である。
【0015】
(重合開始剤)
重合開始剤のリチウム化合物としては、特に制限はないが、ヒドロカルビルリチウム及びリチウムアミド化合物が好ましく用いられ、前者のヒドロカルビルリチウムを用いる場合には、重合開始末端にヒドロカルビル基を有し、かつ他方の末端が重合活性部位である共役ジエン系重合体が得られる。また、後者のリチウムアミド化合物を用いる場合には、重合開始末端に窒素含有基を有し、他方の末端が重合活性部位である共役ジエン系重合体が得られる。
【0016】
上記ヒドロカルビルリチウムとしては、炭素数2〜20のヒドロカルビル基を有するものが好ましく、例えばエチルリチウム、n−プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−オクチルリチウム、n−デシルリチウム、フェニルリチウム、2−ナフチルリチウム、2−ブチル−フェニルリチウム、4−フェニル−ブチルリチウム、シクロへキシルリチウム、シクロベンチルリチウム、ジイソプロペニルベンゼンとブチルリチウムとの反応性生物などが挙げられるが、これらの中で、特にn−ブチルリチウムが好適である。
【0017】
<含窒素リチウムアミド化合物>
一方、窒素原子を含むリチウムアミド化合物としては、以下の一般式(1)、
【0018】
【化1】

【0019】
[式中、R1、R2は、1〜12炭素原子を有するアルキル、シクロアルキルまたはアラルキルからなる群から選ばれ、同一でも異なっても良い。Liはリチウムを示す。]または、一般式(2)
【0020】
【化2】

【0021】
[式中、R3は、3〜12のメチレン基を有するアルキレン、オキシ-又はアミノ−アルキレン基からなる群から選ばれる一種である。Liはリチウムを示す。]
上記一般式(1)又は(2)で表される窒素原子を含むリチウムアミド化合物としては例えば、リチウムヘキサメチレンイミド、リチウムピロリジド、リチウムピぺリジド、リチウムへプタメチレンイミド、リチウムドデカメチレンイミド、リチウムジメチルアミド、リチウムジエチルアミド、リチウムジブチルアミド、リチウムジプロピルアミド、リチウムジへプチルアミド、リチウムジへキシルアミド、リチウムジオクチルアミド、リチウムジ−2−エチルへキシルアミド、リチウムジデシルアミド、リチウム−N−メチルピベラジド、リチウムエチルプロピルアミド、リチウムエチルブチルアミド、リチウムエチルベンジルアミド、リチウムメチルフェネチルアミドなどが挙げられる。これらの中で、カーボンブラックに対する相互作用効果及び重合開始能の点から、リチウムヘキサメチレンイミド、リチウムピロリジド、リチウムピぺリジド、リチウムへプタメチレンイミド、リチウムドデカメチレンイミドなどの環状リチウムアミドが好ましく、特にリチウムヘキサメチレンイミドおよびリチウムピロリジドが好適である。
【0022】
これらのリチウムアミド化合物は、一般に、二級アミンとリチウム化合物とから、予め調製したものを重合に使用することができるが、重合系中(in−situ)で調製することもできる。また、この重合開始剤の使用量は、好ましくは単量体100g当たり、0.2〜20ミリモルの範囲で選定される。
【0023】
前記リチウム化合物を重合開始剤として用い、アニオン重合によって共役ジエン系重合体を製造する方法としては、特に制限はなく、従来公知の方法を用いることができる。
具体的には、反応に不活性な有機溶剤、例えば脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素化合物などの炭化水素系溶剤中において、共役ジエン化合物又は共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物を、前記リチウム化合物を重合開始剤として、所望により、用いられるランダマイザーの存在下にアニオン重合させることにより、目的の共役ジエン系重合体が得られる。
【0024】
(溶剤)
前記炭化水素系溶剤としては、炭素数3〜8のものが好ましく、例えばプロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、プロペン、1−ブテン、イソブテン、トランス−2−ブテン、シス−2−ブテン、1−ペンテン、2−ペンテン、1−へキセン、2−へキセン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどを挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0025】
(ランダマイザー)
また、所望により用いられるランダマイザーとは共役ジエン系重合体のミクロ構造の制御、例えばブタジエン−スチレン共重合体におけるブタジエン部分の1,2結合、イソプレン重合体における3,4結合の増加など、あるいは共役ジエン化合物−芳香族ビニル化合物共重合体における単量体単位の組成分布の制御、例えばブタジエンースチレン共重合体におけるブタジエン単位、スチレン単位のランダム化などの作用を有する化合物のことである。このランダマイザーとしては、特に制限はなく、従来ランダマイサーとして一般に使用されている公知の化合物の中から任意のものを適宜選択して用いることができる。具体的には、ジメトキシベンゼン、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、2,2−ビス(2−テトラヒドロフリル)−プロパン、トリエチルアミン、ピリジン、N−メチルモルホリン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、1,2−ジピぺリジノエタンなどのエーテル類及び三級アミン類などを挙げることができる。また、カリウム−tert−アミレート、カリウム−tert−ブトキシドなどのカリウム塩類、ナトリウム−tert−アミレートなどのナトリウム塩類も用いることができる。
【0026】
これらのランダマイザーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、その使用量は、リチウム化合物1モル当たり、好ましくは0.01〜1000モル当量の範囲で選択される。
【0027】
この重合反応における温度は、好ましくは0〜150℃、より好ましくは20〜130℃の範囲で選定される。重合反応は、発生圧力下で行うことができるが、通常は単量体を実質的に液相に保つに十分な圧力で操作することが望ましい。すなわち、圧力は重合される個々の物質や、用いる重合媒体及び重合温度にもよるが、所望ならばより高い圧力を用いることができ、このような圧力は重合反応に関して不活性なガスで反応器を加圧する等の適当な方法で得られる。
【0028】
この重合においては、重合開始剤、溶媒、単量体など、重合に関与する全ての原材料は、水、酸素、二酸化炭素、プロトン性化合物などの反応阻害物質を除去したものを用いることが望ましい。
得られる共役ジエン系重合体の示差熱分析法により求めたガラス転移温度(Tg)は−95℃〜−15℃であることが好ましい。ガラス転移温度を上記範囲にすることによって、粘度が高くなるのを抑え、取り扱いが容易な共役ジエン系重合体を得ることができる。
【0029】
(変性剤)
<重合ポリマー中間体の活性アニオン部位と結合を生成する官能基>
前記官能基は、C=X[式中Xは炭素原子、窒素原子、硫黄原子の中から選ばれる一種。]で示される官能基、又はSiRn(3n)[Rは炭素数2〜18のヒドロカルビル基であり、Rが複数存在する場合は互いに同一でも異なっていても良く、Yはハロゲン基又は炭素数1〜18のヒドロカルビルオキシ基であり、Yが複数存在する場合は互いに同一でも異なっていても良い。]で示される官能基である。
C=X型の変性剤の例としては、4−ジエチルアミノベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリン−2−チオン、1−メチルピロリドン、1−メチルピロリドン−2−チオン、1−メチルシリルピロリドン、メチレンビス(1,4−フェニレン)ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。また、上記化合物のメチル、エチル等を他のアルキル基に替えた化合物も使用することが出来る。
また、SiRn(an)で示される官能基において、Rは、炭素数1〜18のヒドロカルビル基であり、Yはハロゲン基又は炭素数1〜18のヒドロカルビルオキシ基であり、炭素数1〜18のアルコキシ基若しくはアルケニロキシ基、炭素数6〜18のアリーロキシ基、炭素数7〜18のアラルキロキシ基等が挙げられるが、これらの中で、良好な反応性を有する観点から、炭素数1〜10のアルコキシ基が好ましい。このアルコキシ基を構成するアルキル基は、直鎖状、枝分かれ状、環状のいずれであってもよい。このようなアルコキシ基としては、例えばエトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、各種ペントキシ基、各種ヘキソキシ基、各種ヘプトキシ基、各種オクトキシ基、各種デシロキシ基、シクロペチロキシ基、シクロヘキシロキシ基などを挙げることができ、これらの中で、反応性の観点から、炭素数1〜6のアルコキシ基が好ましい。
【0030】
前記Rで表される炭素数1〜18のヒドロカルビル基としては、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、炭素数6〜18のアリール基、炭素数7〜18のアラルキル基などが挙げられるが、これらの中で、変性剤の反応性や性能の観点から、炭素数1〜18のアルキル基が好ましく、炭素数1〜10のアルキル基がより好ましい。このアルキル基は、直鎖状、枝分かれ状、環状のいずれであってもよく、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種オクチル基、各種デシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などを挙げることができる。これらの中で、変性剤の反応性や性能の観点から、炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、特にメチル基が好ましい。
【0031】
<配合工程において充填材表面と反応する変性部位(A)>
配合工程において充填材表面と反応する変性部位(A)としては上述のように、含窒素官能基であることが好ましい。
上記変性部位(A)を構成する含窒素官能基としては、保護された一級アミノ基、保護された二級アミノ基、三級アミノ基、イミノ基、ケチミノ基、アルジミノ基、ピリジル基、ニトリル基、イソシアネート基、ヒドラジン基、アミジン基、アミドラゾン基、ウレア基、チオウレアなどが挙げられる。
【0032】
前記含窒素変性部位(A)のうちの飽和環状三級アミン化合物残基としては、例えばヘキサメチレンイミノ基、ピロリジニル基、ピペリジニル基、ヘプタメチレンイミノ基、ドデカメチレンイミノ基などを挙げることができ、不飽和環状三級アミン化合物残基としては、例えばイミダゾール残基、ジヒドロイミダゾール残基、オキサゾール残基、ピリジル基などを挙げることができる。
また、前記含窒素変性部位(A)としては、性能の観点から、ケチミン残基、飽和環状3級アミン化合物残基、イミダゾール残基、ジヒドロイミダゾール残基、ピリジル基、ニトリル基、イソシアネート基及び脱離可能な官能基を有する2級アミノ基の中から選ばれる少なくとも1種の含窒素官能基を有する一価の基であることが好ましく、飽和環状3級アミン化合物残基、ケチミン残基、イミダゾール残基、ジヒドロイミダゾール残基及び脱離可能な官能基を有する一級アミノ基、二級アミノ基の中から選ばれる少なくとも1種を有する一価の基であることが、より好ましい。
前記含窒素変性部位(A)で表される一価の基における含窒素変性部位(A)の中で、脱保護可能な保護された一級アミノ基の例として、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノ基、2,2,5,5テトラメチル−1−アザ−2,5−ジシラシクロペンタン基、また、二級アミノ基の例としては、N−(トリメチルシリル)アミノ基などを挙げることができる。
【0033】
本発明で用いられる変性剤は、アニオン重合させて得られた共役ジエン系合成ゴムの活性末端に、重合ポリマー中間体の活性アニオン部位と結合を生成する官能基と含窒素官能基を1分子中に含む化合物を反応させる。該化合物は重合ポリマー中間体の活性アニオン部位と結合を生成する官能基と変性部位(A)とを炭素数1〜20の二価ヒドロカルビル基によって連結された1分子化合物であってもよく、炭素数1〜20の二価のヒドロカルビル基としては、変性剤の性能の観点から、炭素数1〜20のアルカンジイル基が好ましく、炭素数2〜10のアルカンジイル基がより好ましく、炭素数2〜6のアルカンジイル基がさらに好ましい。
【0034】
上記化合物は、例えば,保護基を有する変性部位(A)の保護基が−SiRabcで表されるトリアルキルシリル基(ここで、Ra、Rb及びRcはそれぞれ独立に炭素数1〜12のアルキル基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、プロピル基またはブチル基が好ましい。)を2つ有する、保護された1級アミノ基を有するヒドロカルビルオキシシラン化合物が挙げられる。この保護された1級アミノ基を有する場合、具体例として、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、1−トリメチルシリル−2,2−ジメトキシ−1−アザ−2−シラシクロペンタン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルトリエトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチルトリメトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチルトリエトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチルメチルジメトキシシラン及びN,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチルメチルジエトキシシラン等を挙げることができ、好ましくは、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン又は1−トリメチルシリル−2,2−ジメトキシ−1−アザ−2−シラシクロペンタンである。
また、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピル(メチル)メトキシクロロシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピル(メチル)エトキシクロロシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチル(メチル)メトキシクロロシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチル(メチル)エトキシクロロシランなどの二官能アルコキシクロロシラン化合物;N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピル(メチル)ジクロロシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピル(メチル)ジクロロシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチル(メチル)ジクロロシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチル(メチル)ジクロロシランなどの二官能クロロシラン化合物等を挙げることができる。
【0035】
また、上記化合物は、例えば,保護基を有する変性部位(A)の保護基が−SiRabcで表されるトリアルキルシリル基を1つ有する、保護された2級アミノ基を有するヒドロカルビルオキシシラン化合物が挙げられる。この保護された2級アミノ基を有するヒドロカルビルオキシシラン化合物の具体例としては、また、変性剤としては、N−メチル−N−トリメチルシリルアミノプロピル(メチル)ジメトキシシラン、N−メチル−N−トリメチルシリルアミノプロピル(メチル)ジエトキシシラン、N−トリメチルシリル(ヘキサメチレンイミン−2−イル)プロピル(メチル)ジメトキシシラン、N−トリメチルシリル(ヘキサメチレンイミン−2−イル)プロピル(メチル)ジエトキシシラン、N−トリメチルシリル(ピロリジン−2−イル)プロピル(メチル)ジメトキシシラン、N−トリメチルシリル(ピロリジン−2−イル)プロピル(メチル)ジエトキシシラン、N−トリメチルシリル(ピペリジン−2−イル)プロピル(メチル)ジメトキシシラン、N−トリメチルシリル(ピペリジン−2−イル)プロピル(メチル)ジエトキシシラン、N−トリメチルシリル(イミダゾール−2−イル)プロピル(メチル)ジメトキシシラン、N−トリメチルシリル(イミダゾール−2−イル)プロピル(メチル)ジエトキシシラン、N−トリメチルシリル(4,5−ジヒドロイミダゾール−5−イル)プロピル(メチル)ジメトキシシラン、N−トリメチルシリル(4,5−ジヒドロイミダゾール−5−イル)プロピル(メチル)ジエトキシシラン等が挙げられ、中でもN−メチル−N−トリメチルシリルアミノプロピル(メチル)ジメトキシシラン、N−メチル−N−トリメチルシリルアミノプロピル(メチル)ジエトキシシランが好ましい。
また、N−メチル−N−トリメチルシリルアミノプロピル(メチル)メトキシクロロシラン、N−メチル−N−トリメチルシリルアミノプロピル(メチル)エトキシクロロシラン、N−トリメチルシリル(ヘキサメチレンイミン−2−イル)プロピル(メチル)メトキシクロロシラン、N−トリメチルシリル(ヘキサメチレンイミン−2−イル)プロピル(メチル)エトキシクロロシラン、N−トリメチルシリル(ピロリジン−2−イル)プロピル(メチル)メトキシクロロシラン、N−トリメチルシリル(ピロリジン−2−イル)プロピル(メチル)エトキシクロロシラン、N−トリメチルシリル(ピペリジン−2−イル)プロピル(メチル)メトキシクロロシラン、N−トリメチルシリル(ピペリジン−2−イル)プロピル(メチル)エトキシクロロシラン、N−トリメチルシリル(イミダゾール−2−イル)プロピル(メチル)メトキシクロロシラン、N−トリメチルシリル(イミダゾール−2−イル)プロピル(メチル)エトキシクロロシラン、N−トリメチルシリル(4,5−ジヒドロイミダゾール−5−イル)プロピル(メチル)メトキシクロロシラン、N−トリメチルシリル(4,5−ジヒドロイミダゾール−5−イル)プロピル(メチル)エトキシクロロシラン等のクロロシラン化合物が挙げられる。
【0036】
さらに、上記化合物は、例えば、変性部位(A)がケチミン残基を有する場合、具体例として、N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−[ジエトキシ(メチル)シリル]−1−プロパンアミン、N−(1−メチルエチリデン)−3−[ジエトキシ(メチル)シリル]−1−プロパンアミン、N−エチリデン−3−[ジエトキシ(メチル)シリル]−1−プロパンアミン、N−[1−メチルプロピリデン)−3−[ジエトキシ(メチル)シリル]−1−プロパンアミン、N−(4−N,N−ジメチルアミノベンジリデン)−3−[ジエトキシ(メチル)シリル]−1−プロパンアミン、N−(シクロヘキシリデン)−3−[ジエトキシ(メチル)シリル]−1−プロパンアミン及びこれらのジエトキシ(メチル)シリル化合物に対応するジエトキシ(エチル)シリル化合物,ジプロポキシ(メチル)シリル化合物,ジプロポキシ(エチル)シリル化合物等を挙げることができるが、これらの中でも、N−(1,3−ジメチルブチリデン)−[ジエトキシ(メチル)シリル]−1−プロパンアミン及びN−(1,3−ジメチルブチリデン)−[ジプロポキシ(メチル)シリル]−1−プロパンアミンが好適である。
また、N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−[エトキシ(メチル)クロロシリル]−1−プロパンアミン、N−(1−メチルエチリデン)−3−[エトキシ(メチル)クロロシリル]−1−プロパンアミン、N−エチリデン−3−[エトキシ(メチル)クロロシリル]−1−プロパンアミン、N−[1−メチルプロピリデン)−3−[エトキシ(メチル)クロロシリル]−1−プロパンアミン、N−(4−N,N−ジメチルアミノベンジリデン)−3−[エトキシ(メチル)クロロシリル]−1−プロパンアミン、N−(シクロヘキシリデン)−3−[エトキシ(メチル)クロロシリル]−1−プロパンアミン及びこれらのエトキシ(メチル)クロロシリル化合物に対応するエトキシ(エチル)クロロシリル化合物,プロポキシ(メチル)クロロシリル化合物,プロポキシ(エチル)クロロシリル化合物等を挙げることができる。
【0037】
また、上記化合物は、例えば変性部位(A)がイミダゾール残基又はジヒドロイミダゾール残基を有する場合、具体例として、1−[3−[ジエトキシ(メチル)シリル]プロピル]−イミダゾール、1−[3−[ジエトキシ(エチル)シリル]プロピル]−イミダゾール、1−[3−[ジプロポキシ(メチル)シリル]プロピル]−イミダゾール、1−[3−[ジプロポキシ(エチル)シリル]プロピル]−イミダゾール、1−[3−[ジエトキシ(メチル)シリル]プロピル]−4,5−ジヒドロイミダゾール、1−[3−[ジエトキシ(エチル)シリル]プロピル]−4,5−ジヒドロイミダゾール、1−[3−[ジプロポキシ(メチル)シリル]プロピル]−4,5−ジヒドロイミダゾール、1−[3−[ジプロポキシ(エチル)シリル]プロピル]−4,5−ジヒドロイミダゾールなどを挙げることができるが、これらの中で1−[3−[ジエトキシ(メチル)シリル]プロピル]−イミダゾール、1−[3−[ジプロポキシ(メチル)シリル]プロピル]−イミダゾール、1−[3−[ジエトキシ(メチル)シリル]プロピル]−4,5−ジヒドロイミダゾール及び1−[3−[ジプロポキシ(メチル)シリル]プロピル]−4,5−ジヒドロイミダゾールが好適である。
また、1−[3−[エトキシ(メチル)クロロシリル]プロピル]−イミダゾール、1−[3−[エトキシ(エチル)クロロシリル]プロピル]−イミダゾール、1−[3−[プロポキシ(メチル)クロロシリル]プロピル]−イミダゾール、1−[3−[プロポキシ(エチル)クロロシリル]プロピル]−イミダゾール、1−[3−[エトキシ(メチル)クロロシリル]プロピル]−4,5−ジヒドロイミダゾール、1−[3−[エトキシ(エチル)クロロシリル]プロピル]−4,5−ジヒドロイミダゾール、1−[3−[プロポキシ(メチル)クロロシリル]プロピル]−4,5−ジヒドロイミダゾール、1−[3−[プロポキシ(エチル)クロロシリル]プロピル]−4,5−ジヒドロイミダゾールなどを挙げることができる。
【0038】
また、上記化合物は、例えば変性部位(A)がピリジル基、又はニトリル基を有する場合、具体例として、2−[2−[ジエトキシ(メチル)シリル]エチル]−ピリジン、2−[2−[ジプロポキシ(メチル)シリル]エチル]−ピリジン、2−[3−[ジエトキシ(メチル)シリル]プロピル]−ピリジン、2−[3−[ジエトキシ(エチル)シリル]プロピル]−ピリジン、2−[3−[ジプロポキシ(メチル)シリル]プロピル]−ピリジン、2−[3−[ジプロポキシ(エチル)シリル]プロピル]−ピリジン、4−[2−[ジエトキシ(メチル)シリル]エチル]−ピリジン、4−[2−[ジプロポキシ(メチル)シリル]エチル]−ピリジン、4−[3−[ジエトキシ(メチル)シリル]プロピル]−ピリジン、4−[3−[ジエトキシ(エチル)シリル]プロピル]−ピリジン、4−[3−[ジプロポキシ(メチル)シリル]プロピル]−ピリジン、4−[3−[ジプロポキシ(エチル)シリル]プロピル]−ピリジンなどのピリジン化合物、1−シアノ−3−[ジエトキシ(メチル)シリル]−プロパン、1−シアノ−3−[ジエトキシ(エチル)シリル]−プロパン、1−シアノ−3−[ジプロポキシ(メチル)シリル]−プロパン、1−シアノ−3−[ジプロポキシ(エチル)シリル]−プロパンなどのシアノ化合物を挙げることができる。これらの中で、2−[3−[ジエトキシ(メチル)シリル]プロピル]−ピリジン、2−[3−[ジプロポキシ(メチル)シリル]プロピル]−ピリジン、4−[3−[ジエトキシ(メチル)シリル]プロピル]−ピリジン、4−[3−[ジプロポキシ(メチル)シリル]プロピル]−ピリジン、1−シアノ−3−[ジエトキシ(メチル)シリル]−プロパン及び1−シアノ−3−[ジプロポキシ(メチル)シリル]−プロパンが好適である。
また、2−[2−[エトキシ(メチル)クロロシリル]エチル]−ピリジン、2−[2−[プロポキシ(メチル)クロロシリル]エチル]−ピリジン、2−[3−[エトキシ(メチル)クロロシリル]プロピル]−ピリジン、2−[3−[エトキシ(エチル)クロロシリル]プロピル]−ピリジン、2−[3−[プロポキシ(メチル)クロロシリル]プロピル]−ピリジン、2−[3−[プロポキシ(エチル)クロロシリル]プロピル]−ピリジン、4−[2−[エトキシ(メチル)クロロシリル]エチル]−ピリジン、4−[2−[プロポキシ(メチル)クロロシリル]エチル]−ピリジン、4−[3−[エトキシ(メチル)クロロシリル]プロピル]−ピリジン、4−[3−[エトキシ(エチル)クロロシリル]プロピル]−ピリジン、4−[3−[プロポキシ(メチル)クロロシリル]プロピル]−ピリジン、4−[3−[プロポキシ(エチル)クロロシリル]プロピル]−ピリジンなどのピリジン化合物、1−シアノ−3−[エトキシ(メチル)クロロシリル]−プロパン、1−シアノ−3−[エトキシ(エチル)クロロシリル]−プロパン、1−シアノ−3−[プロポキシ(メチル)クロロシリル]−プロパン、1−シアノ−3−[プロポキシ(エチル)クロロシリル]−プロパンなどのシアノ化合物を挙げることができる。
【0039】
また、上記化合物は、例えば変性部位(A)が(チオ)イソシアナート基又はオキサゾール残基を有する場合、具体例として、1−イソシアナート3−[ジエトキシ(メチル)シリル]−プロパン、1−イソシアナート3−[ジエトキシ(エチル)シリル]−プロパン、1−イソシアナート3−[ジプロポキシ(メチル)シリル]−プロパン、1−イソシアナート3−[ジプロポキシ(エチル)シリル]−プロパンなどのイソシアナート化合物、上記イソシアナート化合物におけるイソシアナートをチオイソシアナートに置き換えたチオイソシアナート化合物、4−[3−[ジエトキシ(メチル)シリル]プロピル]−オキサゾール、4−[3−[ジエトキシ(エチル)シリル]プロピル]−オキサゾール、4−[3−[ジプロポキシ(メチル)シリル]プロピル]−オキサゾール、4−[3−[ジプロポキシ(エチル)シリル]プロピル]−オキサゾールなどのオキサゾール化合物などを挙げることができる。これらの中で、1−イソシアナート3−[ジエトキシ(メチル)シリル]−プロパン、1−イソシアナート3−[ジプロポキシ(メチル)シリル]−プロパン、4−[3−[ジエトキシ(メチル)シリル]プロピル]−オキサゾール及び4−[3−[ジプロポキシ(メチル)シリル]プロピル]−オキサゾールが好適である。
なお、本発明においては、オキサゾール残基はイソオキサゾール残基をも包含する。
また、1−イソシアナート3−[エトキシ(メチル)クロロシリル]−プロパン、1−イソシアナート3−[エトキシ(エチル)クロロシリル]−プロパン、1−イソシアナート3−[プロポキシ(メチル)クロロシリル]−プロパン、1−イソシアナート3−[プロポキシ(エチル)クロロシリル]−プロパンなどのイソシアナート化合物、上記イソシアナート化合物におけるイソシアナートをチオイソシアナートに置き換えたチオイソシアナート化合物、4−[3−[エトキシ(メチル)クロロシリル]プロピル]−オキサゾール、4−[3−[エトキシ(エチル)クロロシリル]プロピル]−オキサゾール、4−[3−[プロポキシ(メチル)クロロシリル]プロピル]−オキサゾール、4−[3−[プロポキシ(エチル)クロロシリル]プロピル]−オキサゾールなどのオキサゾール化合物などを挙げることができる。
【0040】
また、変性ポリマー(B)は、重合性官能基と充填材表面と反応する変性部位(A)を生成し得る官能基を分子内に有する変性モノマー化合物を、共役ジエン化合物及び/又は芳香族ビニル化合物と共重合させることで得ることができる。上記変性モノマー化合物の例として、重合性官能基と充填材表面と反応する変性部位(A)を生成し得る官能基により置換された共役ジエン化合物、もしくは芳香族ビニル化合物であることが望ましい。
この変性モノマーに用いられる充填材表面と反応する変性部位(A)は、保護された第一アミノ基、保護された第二アミノ基、第三アミノ基、イミノ基、ケチミン基、アルジミノ基、ピリジル基、ニトリル基、イソシアネート基、ヒドラジン基、アミジン基、アミドラゾン基、ウレア基、チオウレア基などが挙げられる。 代表的な変性モノマー化合物としては、保護された4−ビニルアニリン(第一アミン)、保護されたアニリノスチレン(第二級アミン)等が挙げられる。
また、ピリジル基を有するビニルモノマーとしては、たとえば2−ビニルピリジン、3−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、5−メチル−2−ビニルピリジン、5−エチル2−ビニルピリジン等が挙げられる。特に、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン等が好ましい。
共役ジエン系の変性モノマーとしては、アニリノフェニルブタジエン、1−アニリノフェニル−1,3−ブタジエン、1−アニリノフェニル−3−メチル−1,3−ブタジエン、1−アニリノフェニル−3−クロロ−1,3−ブタジエン、3−アニリノフェニル−2−メチル−1,3−ブタジエン、1−アニリノフェニル−2−クロロ−1,3−ブタジエン、2−アニリノフェニル−1,3−ブタジエン、2−アニリノフェニル−3−メチル−1,3−ブタジエン、2−アニリノフェニル−3−クロロ−1,3−ブタジエン等があげられる。
【0041】
上記変性モノマーと共重合させる共役ジエン系化合物としては1,3−ブタジエン及び/又はイソプレンであることが好ましく、芳香族ビニル化合物としてはスチレンであることが好ましい。
【0042】
また、本発明に用いられる変性共役ジエン系ポリマーの変性剤由来のアミノ基は、保護されていても、脱保護して1級アミン又は2級アミンに変換されていても、いずれの場合でも好適である。もし脱保護処理を行なう場合には以下の手順が用いられる。
すなわち、該保護アミノ基上のシリル保護基を加水分解することによって遊離したアミノ基に変換する。これを脱溶媒処理することにより、1級アミノ基または2級アミノ基を有する乾燥したポリマー(B)が得られる。
【0043】
<変性ポリマー(B)>
このようにして得られた変性ポリマー(B)はムーニー粘度(ML1+4,100℃)が、好ましくは10〜150、より好ましくは15〜100である。ムーニー粘度が10未満の場合は耐破壊特性を始めとするゴム物性が十分に得られず、150を超える場合は作業性が悪く配合剤とともに混練りすることが困難である。
また、前記変性ポリマー(B)を配合した本発明に係る未加硫ゴム組成物のムーニ−粘度(ML1+4,130℃)は、好ましくは10〜150、より好ましくは30〜100である。
本発明に係るゴム組成物に用いられる変性ポリマー(B)は、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)、即ち分子量分布(Mw/Mn)が1〜3であることが好ましく、1.1〜2.7であることがより好ましい。
変性ポリマー(B)の分子量分布(Mw/Mn)を前記範囲内にすることで該変性共役ジエン系(共)ポリマーをゴム組成物に配合しても、ゴム組成物の作業性を低下させることがなく、混練りが容易で、ゴム組成物の物性を十分に向上させることができる。
【0044】
また、本発明に係るゴム組成物に用いられる変性ポリマー(B)は、数平均分子量(Mn)が100,000〜500,000であることが好ましく、150,000〜300,000であることがさらに好ましい。変性ポリマー(B)の数平均分子量を前記範囲内にすることによって加硫物の弾性率の低下、ヒステリシスロスの上昇を抑えて優れた耐破壊特性を得るとともに、該変性ポリマー(B)を含むゴム組成物の優れた混練作業性が得られる。
本発明に係るゴム組成物に用いられる変性ポリマー(B)は1種用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
<ゴム成分(C)>
本発明においては、ゴム成分として、前述の変性ポリマー(B)5〜90質量と、ゴム成分として(C)成分のジエン系合成ゴム95〜10質量%とから構成される。
ポリマー成分(C)は、ポリマーの生産工程で添加された有機酸の残渣(D)を含み、乳化重合により得られるジエン系合成ゴム、特にスチレン−ブタジエン共重合体(ESBR)が挙げられる。
タイヤのトレッドには汎用合成ゴムとしてスチレンブタジエンゴムが使用されている。
このスチレンブタジエンの重合方法は、水を媒体とした石鹸ミセルで重合する乳化乳合スチレンブタジエンゴム(E−SBR)、及び炭化水素化合物を媒体として重合する溶液重合スチレンブタジエンゴム(S−SBR)に大別される。
E−SBRは水を媒体として石鹸でスチレンとブタジエンとを乳化して共重合させる乳化重合法によって製造される。重合温度によってホット重合法とコールド重合法(レドックス触媒)とに分けられるが、現在E−SBRの大部分がコールド重合法で製造されている。コールド重合法では5℃で重合率60%まで反応させる。乳化剤として不均化ロジン酸石鹸を用いるのがコールド重合法の特徴で、重合速度も速く、ゴムの接着性が改善され加工性にすぐれる。また、乳化剤として不均化ロジン酸石鹸を用いると着色する欠点があるため非汚染性のゴムには脂肪酸石鹸との併用系も広く用いられている。
【0046】
その他の乳化重合で得られるゴム成分(C)としては、スチレンとブタジエンモノマーに次に記載のモノマーを共重合させた三元共重合体を用いることができる。その代表的なモノマー化合物としては、保護された4−ビニルアニリン(第一アミン)、保護されたアニリノスチレン(第二級アミン)等が挙げられる。
また、ピリジル基を有するビニルモノマーとしては、たとえば2−ビニルピリジン、3−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、5−メチル−2−ビニルピリジン、5−エチル2−ビニルピリジン等が挙げられる。特に、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン等が好ましい。
共役ジエン系の変性モノマーとしては、アニリノフェニルブタジエン、1−アニリノフェニル−1,3−ブタジエン、1−アニリノフェニル−3−メチル−1,3−ブタジエン、1−アニリノフェニル−3−クロロ−1,3−ブタジエン、3−アニリノフェニル−2−メチル−1,3−ブタジエン、1−アニリノフェニル−2−クロロ−1,3−ブタジエン、2−アニリノフェニル−1,3−ブタジエン、2−アニリノフェニル−3−メチル−1,3−ブタジエン、2−アニリノフェニル−3−クロロ−1,3−ブタジエン等があげられる。
【0047】
<その他のゴム成分>
所望に応じてポリマー成分(B)及び(C)以外もゴム成分として、溶液重合のジエン系合成ゴム、天然ゴム等を加えることができる。溶液重合ジエン系合成ゴムとしては、ポリブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエン共重合体ゴム(SBR)、ポリイソプレンゴム等が挙げられる。
また、天然ゴムをその他のゴム成分として用いる場合、天然ゴム中に含まれる有機酸は配合系全体に含まれる有機酸として計算の中に加えることができる。その総和が本発明で規定する範囲にある限り、天然ゴムもその他のゴム成分として好ましく用いることができる。
【0048】
<ポリマー生産工程で添加された有機酸の残渣(D)及び配合時に使用される有機酸(F)>
通常使用されているE−SBRの中には、上述の石鹸が有機酸の残渣(D)として含まれている。これらの有機酸の残渣(D)として含まれる石鹸は混合工程での加工性を良くするという目的で積極的には取り除かれてはおらず、通常4〜8%の有機酸の残渣として含まれている。
一方、本発明に用いられる充填材表面と反応する変性部位(A)を分子構造中に含む変性ポリマー(B)のような溶液重合のジエン系ゴム等には通常上記残渣は含まれておらず、ゴム組成物として溶液重合のジエン系ゴムを使用する場合には通常、加硫促進助剤としてステアリン酸などの有機酸(F)が配合剤として使用される。ゴム成分として乳化重合で得られたジエン系ゴムと溶液重合で得られたジエン系ゴムを混合して用いる場合は、ポリマーの生産工程で添加された有機酸の残渣(D)と配合時に添加された有機酸(F)も混合されることになり、その混合された(D)成分と(F)成分の総和をコントロールし、ポリマーの生産工程で添加された有機酸の残渣(D)を有効に使用することが重要となる。
例えば、ゴム成分として(S−SBR)50質量部とE−SBRを50質量部とを混合した場合、S−SBRには有機酸が含まれていないが、E−SBRの有機酸の残渣(D)がゴム成分100質量部に換算して、有機酸残渣が0.1〜3.5質量部の範囲内であれば配合系には新たにステアリン酸に代表される有機酸(F)加えなくても本発明の範囲内であり、(D)成分の有機酸の残渣を加硫促進助剤として有効に活用することができる。
【0049】
上記配合時に使用される有機酸(F)成分として脂肪酸を含むことが好ましい。中でも加硫促進助剤として使用されるステアリン酸が特に好ましい。
上記、加硫促進助剤は、硫黄加硫系に金属酸化物(主に亜鉛華)及び脂肪酸(主にステアリン酸)の組み合わせで使用され、加硫促進剤を活性にし、加硫(架橋)効率を向上するために使用する。
【0050】
前記(C)成分のポリマーの生産工程で添加された有機酸の残渣(D)は、脂肪酸類、樹脂酸類(ロジン酸)、石炭酸類であることが好ましい。
脂肪酸類としては、脂肪酸石鹸、例えば、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸又はオレイン酸が挙げられ、樹脂酸類(ロジン酸として知られる)は、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、パラストリンサン酸、ピマール酸、イソピマール酸又はデヒドロアビエチン酸等の有機酸を含む化合物が挙げられる。これらの中の樹脂酸はトールロジン、ガムロジン、ウッドロジン中に含まれる天然の樹脂酸であり、上記E−SBRの合成に使用される乳化剤は主にロジン酸石鹸単独又はロジン酸と脂肪酸の混合石鹸が用いられる。また、石炭酸類としてはフェノール系樹脂類が挙げられる。
しかしながら、本発明の目的(低発熱性及び耐摩耗性の向上)を達成するためにはE−SBR中に含まれる上記有機酸の残渣(A)成分の量は少ないほうが好ましい。
【0051】
また、前記(C)成分のポリマーの生産工程で添加された有機酸の残渣(D)は、乳化剤として用いられる炭素数12以上の高級脂肪酸類の金属塩、樹脂酸類の金属塩(ロジン酸類の金属塩)、石炭酸類の金属塩も用いることができる。前記金属塩を構成する金属がアルカリ金属またはアルカリ土類金属である。特に合成ゴム用乳化剤としては不均化ロジン酸石鹸が用いられアルカリ金属のナトリウム塩、カリウム塩の物が用いられる。
【0052】
本発明のゴム組成物は硫黄架橋性であり、加硫系として硫黄や加硫促進剤、加硫促進助剤が配合される。中でも加硫促進助剤は加硫促進剤を活性化し促進反応をさらに促進させる。酸化亜鉛(亜鉛華)を代表とする金属酸化物、ステアリン酸を代表とする脂肪酸があり、いずれもジエン系ゴムの場合は必ずといってよいくらい配合される。
本発明において上記ステアリン酸は、配合時に使用される代表的な有機酸(F)として用いられる。
【0053】
<補強性充填材(E)>
本発明のゴム組成物は、補強性充填剤としてシリカ及び/又はカーボンブラックを含有することが好ましい。
上記シリカとしては特に制限はなく、従来ゴムの補強性充填剤(E)として慣用されているものの中から任意に選択して用いることができる。
このシリカとしては、例えば湿式シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウムなどが挙げられるが、中でも破壊特性の改良効果並びにウェットグリップ性の両立効果が最も顕著である湿式シリカが好ましい。
【0054】
カーボンブラックとしても特に制限はなく、例えばSRF、GPF、FEF、HAF、1SAF、SAFなどが用いられ、ヨウ素吸着量(IA)が60mg/g以上、かつジブチルフタレート吸油量(DBP)が80ml/100g以上のカーボンブラックが好ましい。
カーボンブラックを用いることにより、グリップ性能および耐破壊特性の改良効果は大きくなるが、耐摩耗性に優れるHAF、ISAF、SAFが特に好ましい。
シリカ及び/又はカーボンブラックは、1種用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0055】
シリカ及び/又はカーボンブラックは、ゴム成分100質量部に対して、10〜150質量部配合されることが必要であり、補強性とそれによる諸物性の改良効果の観点から25〜100質量部がさらに好ましい。カーボンブラック及び/又はシリカの量を上記範囲にすることによって混練作業性などの工場作業性に優れ、ゴム組成物として、所望の耐摩耗性を得ることができる。
【0056】
本発明のゴム組成物においては、補強用充填剤としてシリカを用いる場合、その補強性及び低発熱性をさらに向上させる目的で、シランカップリッグ剤を配合することができる。
このシランカップリング剤としては、例えばビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−卜)エトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリメトキシシー)ルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2−メルカプトエチルトリメトキシシラン、2−メルカプトエチルトリエトキシシラン、3−トリメトキシシリルプロピル−N、N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピル−N、N−−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2−トリエトキシシーリルエチル−N、N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルベンゾリルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、ビス(3−ジエトキシメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、3−メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、ジメトキシメチルシリルプロピル−N、N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、ジメトキシメチルシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィドなどが挙げられるが、これらの中で補強性改善効果などの点から、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィドおよび3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアジルテトラスルフィドが好適である。
これらのシランカップリング剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0057】
(ゴム組成物の調製、用途)
本発明に係るゴム組成物には、本発明の効果が損なわれない範囲で、所望により、通常ゴム工業界で用いられる各種薬品、例えば硫黄、加硫促進剤、軟化剤、プロセス油、老化防止剤、スコーチ防止剤、亜鉛華、粘着防止剤、発泡剤、発泡助剤及び樹脂などを含有させることができる。
また、本発明のゴム組成物は、ロールなどの開放式混練機、バンバリーミキサーなどの密閉式混練機などの混練り機を用いて混練りすることによって得られ、成形加工後に加硫を行ない、各種ゴム製品に適用可能である。例えば、タイヤトレッド、アンダートレッド、カーカス、サイドウォールサイド補強ゴム及びビードフィラーなどのタイヤ用途に用いることができるが、特に、低発熱性、耐摩耗性、破壊強度のバランスに優れた、低燃費用タイヤ、大型タイヤ、高性能タイヤのトレッド用ゴムとして好適に使用される。
【0058】
[タイヤ]
本発明のタイヤは、前述した本発明の硫黄架橋性ゴム組成物をタイヤ部材に用いたことを特徴とする。タイヤ部材としては、トレッド、ベーストレット、サイドウォール、サイド補強ゴム及びビードフィラーを好ましく挙げることができ、これらのいずれかに、本発明の硫黄架橋性ゴム組成物を用いることができるが、特にトレッドに用いることが好ましい。
本発明の硫黄架橋性ゴム組成物をトレッドに用いたタイヤは、転がり抵抗が低く低燃費性に優れると共に、破壊特性及び耐摩耗性が優れる。なお、本発明のタイヤに充填する気体としては、通常の或いは酸素分圧を変えた空気、又は窒素等の不活性ガスが挙げられる。本発明のゴム組成物をトレッドに用いる場合は、例えばトレッド用部材に押出し加工され、タイヤ成形機上で通常の方法により貼り付け成形され、生タイヤが成形される。この生タイヤを加硫機中で加熱加圧して、タイヤが得られる。
【実施例】
【0059】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
なお、変性スチレン−ブタジエンゴム(変性SBR)のミクロ構造(結合ビニル含量、結合スチレン含量)及び加硫後のゴム組成物の損失正接(tanδ)と耐摩耗性を下記の方法により評価した。
(1)変性SBRの共役ジエン部分の結合ビニル含量(ジエン部分全体に対する%)
270MHz1H−NMRによって求めた。測定結果を第1表に示す。
(2)変性SBRの結合スチレン含量(ポリマー中の質量%)
270MHz1H−NMRによって求めた。測定結果を第1表に示す。
(3)損失正接(tanδ)
米国レオメトリックス社製の動的スペクトロメーターを使用し、引張動歪1%、周波数10Hz、50℃の条件で測定し、コントロール(比較例5)のtanδの逆数を100として指数表示した。指数の値が大きいほど、低発熱性に優れることを示す。測定結果を第2表−1及びに第2表−2示す。
(4)耐摩耗性
ランボーン型摩耗試験機を用い、室温におけるスリップ率が25%の摩耗量を測定し、コントロール(比較例5)の摩耗量の逆数を100として指数表示した。指数の大きいほど、耐摩耗性に優れていることを示す。測定結果を第2表−1及びに第2表−2示す。
(5)エマルジョンSBR中の有機酸量の測定
JIS K6237:2001に準拠して測定した。実施例で用いた非油展SBR#1500は6.39質量部の有機酸を含んでいた。
【0060】
<S−SBRの製造>
製造比較例1
SBR Lの製造
乾燥し、窒素置換した800mLの耐圧ガラス容器に、1,3−ブタジエンのシクロヘキサン溶液、及びスチレンのシクロヘキサン溶液を、1,3−ブタジエン60g及びスチレン15gとなるように加え、2,2−ジテトラヒドロフリルプロパン0.29mmolを加え、更にn−ブチルリチウム(BuLi)0.57mmolを加えた後、50℃の温水浴中で1.5時間重合反応を行なった。この際の重合転化率は、ほぼ100%であった。
その後、重合反応系に、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールのイソプロパノール5質量%溶液0.5mlを加えて重合反応を停止させ、常法に従い乾燥しSBR Lを得た。得られたSBR Lの結合スチレン含量及びブタジエン部分の結合ビニル含量を第1表に示す。
【0061】
<充填材と反応する変性部位(A)を有するS−SBRの製造>
製造実施例1
S−SBR Mの製造
乾燥し、窒素置換した800mLの耐圧ガラス容器に、1,3−ブタジエンのシクロヘキサン溶液、及びスチレンのシクロヘキサン溶液を、1,3−ブタジエン60g及びスチレン15gとなるように加え、2,2−ジテトラヒドロフリルプロパン0.36mmolを加え、更にn−ブチルリチウム(BuLi)0.72mmolを加えた後、50℃の温水浴中で1.5時間重合反応を行なった。この際の重合転化率は、ほぼ100%であった。
次に、重合反応系に、N、N−ビス(トリメチルシリル)−3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン0.65ミリモルを加え、さらに50℃で30分間変性反応をおこなった。その後、重合反応系に2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾールのイソプロパノール5質量%溶液0.5mlを加えて重合反応を停止させ、常法に従い乾燥しSBR Mを得た。得られたSBR Mの結合スチレン含量及びブタジエン部分の結合ビニル含量を第1表に示す。
【0062】
製造実施例2〜3
S−SBR N〜Oの製造
上記SBR Mの製造におけるN、N−ビス(トリメチルシリル)−3−アミノプロピルメチルジエトキシシランに替えて、第1表に示す変性剤を用いることで、SBR
N〜Oを得た。S−SBR N〜Oの結合スチレン含量及びブタジエン部分の結合ビニル含量を第1表に示す。
【0063】
製造実施例4
S−SBR Pの製造
乾燥し、窒素置換した800mLの耐圧ガラス容器に、1,3−ブタジエンのシクロヘキサン溶液、及びスチレンのシクロヘキサン溶液を、1,3−ブタジエン60g及びスチレン15gとなるように注入し、ヘキサメチレンイミン0.72ミリモル、n−ブチルリチウム0.72モル、及び2,2−テトラヒドロフリルプロパン0.36ミリモルを順次加えた後、50℃で2.5時間重合を行った。重合転化率はほぼ100%であった。
その後、重合反応系に2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾールのイソプロパノール5質量%溶液0.5mlを加えて重合反応を停止させ、微量の塩酸及びイソプロパノール中で沈殿させた後、常法にて乾燥しS−SBR Pを得た。S−SBR Pの結合スチレン含量及びブタジエン部分の結合ビニル含量を第1表に示す。
【0064】
製造実施例5
S−SBR Qの製造
乾燥し、窒素置換した800mLの耐圧ガラス容器に、1,3−ブタジエンのシクロヘキサン溶液、及びスチレンのシクロヘキサン溶液を、1,3−ブタジエン60g及びスチレン15gとなるように加え、2,2−テトラヒドロフリルプロパン0.360ミリモル及びN,N−ビス(トリメチルシリル)−4−ビニルアニリン3.6ミリモルを加えた後、50℃で1.5時間重合を行った。この際の重合転化率はほぼ100%であった。その後、重合反応系に2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾールのイソプロパノール5質量%溶液0.5mlを加えて重合反応を停止させた後、微量のポリマーセメントをガスクロマトグラフィーにより分析し、ビニルアニリン由来の未反応のモノマー化合物が含まれていないことを確認した。この残りのポリマーセメントを常法に従い乾燥することでS−SBR Qを得た。S−SBR Qの結合スチレン含量及びブタジエン部分の結合ビニル含量を第1表に示す。
【0065】
<乳化重合SBR(E−SBRの製造)>
製造実施例6
E−SBR−(1)の製造
以下の処方に基いてて乳化剤量の異なるE−SBRを調製した。
ゴム成分100質量部に対して有機酸の残渣量6.39質量部を含むE−SBR、「SBR#1500:(JSR社製)スチレン含量23.5%、乳化剤ロジン酸石鹸」を約0.5kg、容器下部側面にボールバルブを備えた容量200リットルの円筒型ステンレス容器に入れ、関東化学社製の特級シクロへキサンを加え、テフロン(登録商標)製の羽付きシャフトを備えたミキサー撹拌機で均一に溶解するまで撹拌させた。この溶液を撹拌させながら0.1NのKOH水溶液を添加し、水相のpHが10〜11の間になるように調整した。この液を13時間撹拌した後に、撹拌を止めて静置した。水相と有機相がおおよそ分離した後、ステンレス容器下部のボールバルブより水相を排出した。次いで、容器の有機相にイオン交換水約3リットルを加えて30分間撹拌した後、水相を排出する操作を5回繰り返すことで、有機相より有機酸成分を排出した。この抽出操作の繰り返しにおいて、5回のイオン交換水添加時に、水相のpHが5〜6の間になるように0.1Nの硫酸を添加し30分間撹拌した後に水相を排出した。その後、容器内の有機相に老化防止剤6PPDを1グラムを加えて十分撹拌した。この後、常法により溶媒を留去し、得られた個体を60℃の真空オーブン内で2.5時間乾燥することで、E−SBR−(1)を得た。乾燥後のポリマーに含まれる有機酸を測定した結果、0.47質量部の有機酸残渣を含んでいた。
【0066】
製造実施例7
E−SBR−(2)の製造
イオン交換水による抽出を3回にした以外は製造実施例と同様にすることで、E−SBR−(2)を得た。乾燥後のポリマーに含まれる有機酸量を測定した結果、1.24質量部の有機酸残渣を含んでいた。
【0067】
製造実施例8
E−SBR−(3)の製造
イオン交換水による抽出を2回にした以外は製造実施例と同様にすることで、E−SBR−(3)を得た。乾燥後のポリマーに含まれる有機酸量を測定した結果、2.21質量部の有機酸残渣を含んでいた。
【0068】
製造実施例9
E−SBR−(4)の製造
イオン交換水による抽出を1回にした以外は製造実施例と同様にすることで、E−SBR−(4)を得た。乾燥後のポリマーに含まれる有機酸量を測定した結果、3.82質量部の有機酸残渣を含んでいた。
【0069】
【表1】

【0070】
【表2】

【0071】
「注」
*1.カーボンブラック:HAF(N330)、旭カーボン社製「旭#70」
*2.シリカ:東ソー・シリカ製、商標「ニプシルAQ」
*3.シランカップリング剤:ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、デグサ社製、商標「Si69」
*4.老化防止剤:6C(N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、大内新興化学工業社製「ノクラック6C」
*5.加硫促進剤DPG:ジフェニルグアニジン、大内新興化学工業社製「ノクセラーD」
*6.加硫促進剤DM:ジベンゾチアジルジサルファイド、大内新興化学工業社製「ノクセラーDM」
*7.:加硫促進剤CZ:(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド、大内新興化学工業社製「ノクセラーCZ」
【0072】
【表3】

【0073】
実施例1〜20及び比較例1〜10
未変性S−SBR(製造比較例1)、(B)成分の充填材表面と反応する変性部位(A)を分子構造中に含む変性ポリマー(製造実施例1〜5)、有機酸残渣(D)量の異なる(製造実施例6−9)の(C)成分のE−SBR、10種類のゴム成分を用いて第2表−1及び第2表−2に記載の配合組成に基づいて実施例20種、比較例10種合計30種のゴム組成物を調製し、常法により、評価に用いる試料を加硫し、低発熱性(tanδ)及び耐摩耗性の評価を行った。評価結果を第2表−1及び第2表−2に示す。
第2表−1及び第2表−2に記載しているように、本発明の実施例は比較例に比べ低発熱性、耐摩耗性に優れていることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明の硫黄架橋性ゴム組成物は、ゴム成分とカーボンブラック及び/又はシリカとの相互作用に特に優れ、これら充填材の分散性をより改善することができ、低発熱性、耐摩耗性に優れたタイヤを与えることができる。
本発明のタイヤは、上記性状を有することから、乗用車用ラジアルタイヤ、軽乗用車用ラジアルタイヤ、軽トラック用ラジアルタイヤ、トラック・バス用ラジアルタイヤ、建設車両用タイヤ等の各種空気入りタイヤに好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配合工程において充填材表面と反応する変性部位(A)を分子構造中に含む変性ポリマー(B)5〜90質量部と他のポリマー成分(C)95〜10質量部からなるゴム成分において、他のポリマー成分(C)がポリマーの生産工程で添加された有機酸の残渣(D)を含み、そのゴム成分100質量部に対して、補強性充填材(E)10〜150質量部、前記(D)と配合時に添加される有機酸(F)との総和が3.5質量部以下であることを特徴とするゴム組成物。
【請求項2】
前記変性部位(A)が、補強性充填材(E)と配合工程にて酸塩基反応を起こし得る官能基を含む請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
前記変性部位(A)が、有機酸の残渣(D)及び/又は配合時に添加される有機酸(F)と配合工程にて酸塩基反応を起こし得る官能基を含む請求項1又は2に記載のゴム組成物。
【請求項4】
前記変性部位(A)が、有機酸の残渣(D)及び/又は配合時に添加される有機酸(F)と配合工程にて酸塩基反応を起こし、オニウムカチオンを生成し得る請求項1〜3のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項5】
前記変性部位(A)が、含窒素官能基を含む請求項1〜4のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項6】
前記含窒素官能基が、アミノ基、イミノ基、ピリジル基、ニトリル基、ヒドラジン基、アミジン基、アミドラドン基、ウレア基、チオウレア基の中から選ばれる少なくとも一種を含む請求項5に記載のゴム組成物。
【請求項7】
ポリマー成分(C)が、天然ゴム及び/又はジエン系合成ゴムである請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項8】
ポリマー成分(C)が乳化重合により得られるジエン系合成ゴムを含む請求項7に記載のゴム組成物。
【請求項9】
ポリマー成分(C)が、乳化重合により得られるスチレン−ブタジエン共重合体(ESBR)を含む請求項8に記載のゴム組成物。
【請求項10】
ポリマーの生産工程で添加された有機酸の残渣(D)が、脂肪酸類、樹脂酸類、石炭酸類及びロジン酸類の中から選ばれる少なくとも一種を含む請求項1〜9のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項11】
ポリマーの生産工程で添加された有機酸の残渣(D)が、脂肪酸類の金属塩、樹脂酸類の金属塩、石炭酸類の金属塩及びロジン酸類の金属塩の中から選ばれる少なくとも一種を含む請求項1〜10のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項12】
前記金属塩を構成する金属が、アルカリ金属又はアルカリ土類金属である請求項11に記載のゴム組成物。
【請求項13】
補強性充填材(E)が、カーボンブラック及び/又はシリカを含む請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項14】
補強性充填材(E)が、ゴム成分100質量部に対して55質量部未満のカーボンブラックを含む請求項13に記載のゴム組成物。
【請求項15】
補強性充填材(E)が、ゴム成分100質量部に対して40質量部未満のシリカを含む請求項13に記載のゴム組成物。
【請求項16】
配合時に添加される有機酸(F)が、脂肪酸類を含む請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項17】
配合時に添加される有機酸(F)が、ステアリン酸を含む請求項16に記載のゴム組成物。
【請求項18】
硫黄架橋性である請求項1〜17のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項19】
配合時に添加される有機酸(F)以外の、硫黄、加硫促進剤、軟化剤、スコーチ防止剤、老化防止剤、粘着付与剤、発泡剤、発泡助剤、樹脂の中から選ばれる任意の配合剤を配合して得られる請求項1〜18のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項20】
請求項1〜19のいずれかに記載のゴム組成物をトレッド部材又はサイドウォール部材として用いたことを特徴とするタイヤ。

【公開番号】特開2012−172121(P2012−172121A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−37715(P2011−37715)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】