説明

ゴム組成物及びそれを用いてなるホース

【課題】蒸気加硫法により、白色又は有彩色の加硫成形品を製造するために用いられるゴム組成物であって、良好なゴム弾性を有し、その表面に、表面荒れ、色むら等の不良現象が抑制され外観性に優れる成形品を与えるゴム組成物及びそれを用いてなるホースを提供する。
【解決手段】本発明のゴム組成物は、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体(EPDM等)と、ノニオン系界面活性剤(ポリオキシエチレンモノアルキルエーテル等)とを含有し、ノニオン系界面活性剤の含有量は、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体100質量部に対して、0.4〜6質量部である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気加硫法により、白色又は有彩色(黒色を除く)の加硫成形品を製造するために用いられるゴム組成物であって、良好なゴム弾性を有し、その表面に、表面荒れ、色むら等の不良現象が抑制され外観性に優れる成形品を与えるゴム組成物及びそれを用いてなるホースに関する。
【背景技術】
【0002】
エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体を含むゴム組成物は、耐熱性、耐水性、耐オゾン性、耐薬品性、電気特性等に優れていることから、加硫させて、水回り関連のホース等の加硫成形品を得るための成形材料として広く使用されている。
加硫をともなうゴム組成物を用いた成形品の製造方法は、その形状等によって、適宜、選択されており、例えば、未加硫の管状物から、加硫ゴム組成物からなるホースを製造する場合には、蒸気加硫法が広く適用されている。しかしながら、蒸気加硫法によると、得られるホースの表面に、「ドレイン負け」といわれる不良現象が発生し、外観性が低下する場合がある。この「ドレイン負け」は、未加硫物を収容した器内に、加圧又は常圧の条件下、水蒸気を吹き込むと、水蒸気が未加硫物の表面で冷却されて、凝集水を生じ、加熱処理により得られる加硫成形品の表面に、あばた模様や色むらが形成される現象である。尚、この不良現象は、明色系の成形品では判別しやすいが、黒色等の暗色系の成形品では判別しにくくなる。
【0003】
加硫成形品を得るための組成物としては、例えば、特許文献1には、石油系プロセスオイルを含む油展エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体、水素添加液状イソプレンゴム、硫黄加硫系配合剤、カーボンブラック等を含有する、押出加工性、耐熱性及び耐寒性に優れたゴム組成物が開示されている。
特許文献2及び3には、特定の物性を有するエチレン・α−オレフィン共重合体(エチレン・1−ブテン共重合ゴム)、他のエチレン系重合体(低密度ポリエチレン)、ブロッキング防止剤、ノニオン系界面活性剤、カーボンブラック等を含有する樹脂組成物が開示されている。
特許文献4には、エチレン・α−オレフィン共重合ゴム(エチレン・1−オクテン共重合ゴム)、タルク、脂肪酸アミド、ノニオン系界面活性剤、カーボンブラック等を含有する、射出成形性、耐傷付性等に優れた組成物が開示されている。
また、特許文献5には、エチレン・α−オレフィンエラストマー(EPDM)、界面活性剤(ノニオン系界面活性剤)、カーボンブラック等を含有するゴム組成物で構成される摩擦伝動面を備える摩擦伝動ベルトが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−113683
【特許文献2】特開平8−283480
【特許文献3】特開平9−40817
【特許文献4】特開2003−171472
【特許文献5】特開2008−185162
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1〜5における加硫成形品は、いずれも、蒸気加硫法により得たものではなく、ドレイン負けを解決することを目的としていない。また、得られる加硫成形品は、カーボンブラックにより黒色を呈しており、蒸気加硫法により得られたものであったとしても、成形品の表面における「ドレイン負け」の判別が困難である。
以上より、従来、蒸気加硫法により、白色又は有彩色(黒色を除く)の加硫成形品を製造するために用いられるゴム組成物であって、良好なゴム弾性を有し、その表面に、表面荒れ、色むら等の不良現象が抑制され外観性に優れる成形品を与えるゴム組成物は知られていない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体と、黒色以外の充填剤である、シリカ、酸化チタン等の白色又は有彩色の充填剤と、硫黄とを含有するゴム組成物を用い、蒸気加硫法により、加硫成形品(架橋成形品)を製造したところ、成形品の表面に、黒色の斑点模様が観察されたのに対し、これらの成分に、更にノニオン系界面活性剤を特定量含有するゴム組成物を用い、上記と同様にして加硫成形品を製造したところ、良好なゴム弾性を有し、表面に不良現象が抑制され外観性に優れていたことから、本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明は、以下に示される。
1.蒸気加硫法により、白色又は有彩色の加硫成形品を製造するために用いられるゴム組成物であって、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体と、ノニオン系界面活性剤とを含有し、ノニオン系界面活性剤の含有量が、未加硫状態で上記エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体100質量部に対して、0.4〜6質量部であることを特徴とするゴム組成物。
2.上記ノニオン系界面活性剤のHLB値が10以上である上記1に記載のゴム組成物。
3.上記ノニオン系界面活性剤が、下記一般式(1)で表されるポリオキシエチレンモノアルキルエーテルである上記1又は2に記載のゴム組成物。
RO−(CO)−H (1)
[式中、Rは、炭素原子数が8〜40であり、飽和又は不飽和の炭化水素基であり、nは6以上の整数である。]
4.更に、硫黄を含有する上記1乃至3のいずれか一項に記載のゴム組成物。
5.上記1乃至4のいずれか一項に記載のゴム組成物を用いて得られたことを特徴とするホース。
【発明の効果】
【0008】
本発明のゴム組成物によれば、蒸気加硫法により、白色又は有彩色(黒色を除く)の加硫成形品の製造に好適であり、良好なゴム弾性を有し、その表面に、表面荒れ、色むら等の不良現象が抑制され外観性に優れる成形品を得ることができる。
また、本発明のホースによれば、特定の構成を有するゴム組成物を用いて得られた加硫ゴム組成物からなることから、その表面に不良現象が抑制されており、特に、黒色を除く着色成形品の外観性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
1.ゴム組成物
本発明のゴム組成物は、蒸気加硫法により、白色又は有彩色の加硫成形品(架橋成形品)を製造するために用いられる未加硫の組成物であって、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体(以下、「成分(A)」ともいう。)と、ノニオン系界面活性剤(以下、「成分(B)」ともいう。)とを含有し、成分(B)の含有量が、成分(A)100質量部に対して、0.4〜6質量部であることを特徴とする。
【0010】
1−1.成分(A)
この成分(A)は、エチレンと、プロピレンと、ジエンとを共重合して得られた三元共重合体である。
上記ジエンは、好ましくは非共役ジエンであり、例えば、1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン、1,9−デカジエン、3,6−ジメチル−1,7−オクタジエン、4,5−ジメチル−1,7−オクタジエン、5−メチル−1,8−ノナジエン、ジシクロペンタジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−ビニル−2−ノルボルネン、2,5−ノルボルナジエン等が挙げられる。これらのうち、5−エチリデン−2−ノルボルネンが好ましい。
【0011】
本発明のゴム組成物は、上記成分(A)を、1種のみ含んでよいし、2種以上を含んでもよい。
【0012】
1−2.成分(B)
この成分(B)は、ノニオン系界面活性剤であり、特に限定されないが、例えば、水に溶けたとき、イオン化しない親水基を有する化合物であって、水の硬度や電解質の影響を受けにくい化合物を用いることができる。
【0013】
本発明においては、その表面に、表面荒れ、色むら等の不良現象が抑制され外観性に優れる加硫成形品が得られることから、HLB値が10以上であるノニオン系界面活性剤を用いることが好ましい。このHLB値は、より好ましくは10.5〜20、特に好ましくは14〜18である。
【0014】
上記成分(B)として、具体的には、その構造により、エーテル型、エステル型、エステル・エーテル型等のノニオン系界面活性剤が挙げられる。
【0015】
エーテル型の界面活性剤としては、例えば、高級アルコール、アルキルフェノール等の、水酸基を有する化合物に、エチレンオキシド、プロピレンオキシド等のアルキレンオキシドを付加重合して得られた化合物である、ポリオキシエチレンモノアルキルエーテル、ポリオキシプロピレンモノアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルフェノールエーテル等を用いることができる。これらのうち、ポリオキシエチレンモノアルキルエーテルが好ましい。
【0016】
上記ポリオキシエチレンモノアルキルエーテルとしては、下記一般式(1)で表される化合物が好ましい。
RO−(CO)−H (1)
[式中、Rは、炭素原子数が8〜40であり、飽和又は不飽和の炭化水素基であり、nは6以上の整数である。]
【0017】
上記一般式(1)で表されるポリオキシエチレンモノアルキルエーテルとしては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレン2−エチルヘキシルエーテル、ポリオキシエチレンイソデシルエーテル等が挙げられる。
【0018】
本発明においては、上記一般式(1)におけるRの炭素数が12〜20であるポリオキシエチレンモノアルキルエーテルが特に好ましい。
【0019】
エステル型の界面活性剤としては、例えば、グリセリン、ソルビトール、ショ糖等の多価アルコールと、脂肪酸との反応により得られた化合物である、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、グリセリンエステル、ポリグリセリンエステル、ソルビタンエステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖エステル等を用いることができる。
【0020】
エステル・エーテル型の界面活性剤としては、エステル結合及びエーテル結合の両方を有する化合物であり、例えば、脂肪酸や多価アルコール脂肪酸エステルにエチレンオキシドを付加して得られた化合物である、グリセリンエステルのポリオキシエチレンエーテル、ソルビタンエステルのポリオキシエチレンエーテル、ソルビトールエステルのポリオキシエチレンエーテル等を用いることができる。
【0021】
その他、親油基と親水基がアミド結合した脂肪酸アルカノールアミド、糖類(ブドウ糖等)を原料とするアルキルポリグルコシド等を用いることもできる。
【0022】
本発明のゴム組成物は、上記成分(B)を、1種のみ含んでよいし、2種以上を含んでもよい。
上記成分(B)の含有量は、上記成分(A)100質量部に対して、0.4〜6質量部であり、好ましくは1.5〜5.0質量部である。上記成分(B)の含有量が上記範囲にあると、その表面に、表面荒れ、色むら等の不良現象が抑制され外観性に優れる加硫成形品を容易に得ることができる。尚、上記成分(B)の含有量が多すぎると、得られる加硫ゴム組成物の物性が低下する場合がある。
【0023】
1−3.他の配合剤
本発明のゴム組成物は、従来、公知の配合剤である、充填剤、加硫剤(架橋剤)、加硫促進剤(架橋促進剤)、軟化剤、可塑剤、老化防止剤、安定剤、加工助剤、着色剤等を含有してもよい。
【0024】
充填剤としては、得られる成形品の機械的強度を向上させる成分である、シリカ、カーボンブラック等の補強剤や、コーンスターチ、炭酸カルシウム、クレー、タルク、珪藻土、アルミナ、硫酸アルミニウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、塩基性炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム等が挙げられる。尚、本発明のゴム組成物は、得られる成形品が黒色を呈するものでなければ、少量のカーボンブラックを含んでもよいが、含有しないことが好ましい。
本発明のゴム組成物がシリカを含有する場合、その含有量は、上記成分(A)100質量部に対して、好ましくは5〜70質量部、より好ましくは10〜50質量部である。
また、本発明のゴム組成物が上記補強剤を除く充填剤を含有する場合、その含有量は、上記成分(A)100質量部に対して、好ましくは10〜200質量部、より好ましくは20〜150質量部である。
【0025】
また、本発明のゴム組成物がシリカを含有する場合には、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4−トリエトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4−トリメトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(4−トリエトキシシリルブチル)トリスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(4−トリメトキシシリルブチル)トリスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4−トリエトキシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4−トリメトキシシリルブチル)ジスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2−トリエトキシシリルエチル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2−トリメトキシシリルエチル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド等のスルフィド系化合物;3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2−メルカプトエチルトリメトキシシラン、2−メルカプトエチルトリエトキシシラン等のメルカプト系化合物等からなるカップリング剤を用いることができる。
本発明のゴム組成物がシリカ及びカップリング剤を含有する場合、カップリング剤の含有量は、上記シリカ100質量部に対して、好ましくは0.5〜20質量部、より好ましくは1.0〜15質量部である。
【0026】
加硫剤(架橋剤)としては、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄等の硫黄;一塩化硫黄、二塩化硫黄等のハロゲン化硫黄等が挙げられる。これらのうち、硫黄が好ましい。
本発明のゴム組成物が加硫剤(架橋剤)を含有する場合、その含有量は、上記成分(A)100質量部に対して、好ましくは0.2〜5.0質量部、より好ましくは0.5〜4.0質量部である。
【0027】
加硫促進剤(架橋促進剤)としては、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛等のジチオカルバミン酸系化合物;テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド等のチウラム系化合物;2−メルカプトベンゾチアゾール、ジベンゾチアジルジスルフィド、2−メルカプトベンゾチアゾール亜鉛塩等のチアゾール系化合物;N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−オキシエチレン−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−オキシエチレン−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N’−ジイソプロピル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド等のスルフェンアミド系化合物;ジフェニルグアニジン、ジオルトトリルグアニジン、オルトトリルビグアニジン等のグアニジン系化合物;ジエチルチオウレア等のチオウレア系化合物;イソプロピルキサントゲン酸ナトリウム、イソプロピルキサントゲン酸亜鉛、ブチルキサントゲン酸亜鉛等のキサントゲン酸系化合物等が挙げられる。
本発明のゴム組成物が加硫促進剤(架橋促進剤)を含有する場合、その含有量は、上記成分(A)100質量部に対して、好ましくは0.5〜7.5質量部、より好ましくは1.0〜6.0質量部である。
【0028】
軟化剤としては、プロセスオイル、潤滑油、パラフィン、ワセリン等の石油系軟化剤;ヒマシ油、アマニ油、ナタネ油、ヤシ油等の脂肪油系軟化剤;トール油;サブ;蜜ロウ、カルナウバロウ、ラノリン等のロウ類;リシノール酸、パルミチン酸、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸亜鉛等の脂肪酸又は脂肪酸塩;石油樹脂、アタクチックポリプロピレン、クマロンインデン樹脂等の合成高分子等が挙げられる。
老化防止剤としては、ジフェニルアミン系化合物、p−フェニレンジアミン系化合物、モノフェノール系化合物、ポリフェノール系化合物、チオビスフェノール系化合物、ヒンダードフェノール系化合物、リン系化合物、硫黄系化合物、ベンズイミダゾール系化合物等が挙げられる。
【0029】
加工助剤としては、酸化亜鉛;リシノール酸、ステアリン酸、パルチミン酸、ラウリン酸等の高級脂肪酸;ステアリン酸バリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の高級脂肪酸の塩;リシノール酸、ステアリン酸、パルチミン酸、ラウリン酸等の高級脂肪酸のエステル類等が挙げられる。
【0030】
着色剤としては、白系、赤系、青系、黄系等の顔料を、単独で、あるいは、2種以上を組み合わせて用いることができる。白色の着色剤としては、酸化チタン等が挙げられる。
本発明のゴム組成物が着色剤を含有する場合、その含有量は、上記成分(A)100質量部に対して、好ましくは0.1〜80質量部、より好ましくは1.0〜50質量部である。
【0031】
本発明のゴム組成物は、常法に従い、各成分を混合(混練)することにより製造することができる。
例えば、成分(A)及び(B)と、加硫剤及び加硫促進剤を除く配合剤とを混練し(第1混練工程)、その後、得られた混練物と、加硫剤及び加硫促進剤とを混合する(混合工程)ことにより、未加硫のゴム組成物を得ることができる。
上記第1混練工程における混練温度は、好ましくは50℃〜200℃、より好ましくは80℃〜180℃である。また、混練時間は、通常、50秒〜30分である。
上記混合工程は、上記第1混練工程により得られた混練物を、通常、80℃以下、好ましくは60℃以下にまで冷却した後に行われる。
【0032】
他の製造方法としては、成分(A)及び(B)、並びに、加硫剤及び加硫促進剤を含む他の配合剤を混合する方法とすることができる。
【0033】
2.加硫成形品
本発明のゴム組成物は、蒸気加硫法による、白色又は有彩色の加硫成形品(架橋成形品)の製造に用いられる。そして、その表面に、表面荒れ、色むら等の不良現象が抑制された成形品を得ることができる。白色又は有彩色の加硫成形品における色むらの例としては、黒色等の暗色系の成分を含有していないのにもかかわらず、成形品の表面に観察される、黒色の斑点が挙げられる。本発明者は、この斑点が、未加硫のゴム組成物に含まれる加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、無機充填剤等に由来する成分によるものと考えている。
【0034】
蒸気加硫法は、加硫剤を含有する未加硫のゴム組成物を、従来、公知の成形方法等に供して、所定形状を有する未加硫又は半加硫の成形品を作製した後、この未加硫成形品を、例えば、水蒸気供給用配管がされた耐圧容器の中に配置し、水蒸気の存在下、加圧又は常圧の条件で加熱することにより、加硫を行って、加硫成形品を得る方法である。
未加硫成形品の加熱温度は、好ましくは120℃〜190℃、より好ましくは140℃〜180℃である。また、加熱時間は、通常、10〜120分である。
【0035】
本発明のゴム組成物を用いて得られる加硫成形品のゴム物性は、以下に示される。例えば、硬さ70を設定値としたゴムの場合、硬さは65〜75(Duro−A:JIS K6253に準拠)、引張強度は9.0MPa以上(JIS K6251準拠)、伸びは380%以上(JIS K6251準拠)が規定値となる。これらの物性を有するので、加硫成形品のゴム弾性に優れる。
【0036】
加硫成形品としては、ホース、ゴムシート、パッキン類等が挙げられる。これらの成形品においては、様々な色を呈したものが、目的、用途等に応じて用いられており、いずれも、表面の外観性に優れた成形品である。
【0037】
本発明のゴム組成物を用いて、ホースを製造する場合、加硫剤として硫黄を含有する未加硫のゴム組成物を、例えば、押出成形に供して、管状の未加硫成形品とした後、この未加硫成形品を、蒸気加硫法に供することにより、加硫ゴム組成物からなるホースを製造することができる。
【実施例】
【0038】
以下、本発明について、実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら制約されるものではない。尚、下記において、部及び%は、特に断らない限り、質量基準である。
【0039】
1.原料成分
ゴム組成物の調製に用いた原料成分は、以下の通りである。
1−1.成分(A)
JSR社製EPDM「EP57C」(商品名)を用いた。
1−2.成分(B)
(1)界面活性剤B1
日油社製ポリオキシエチレンステアリルエーテル「ノニオンS−215」(商品名)を用いた。この製品のHLB値は、14.2である。
(2)界面活性剤B2
日油社製ポリオキシエチレンステアリルエーテル「ノニオンS−207」(商品名)を用いた。この製品のHLB値は、10.7である。
(3)界面活性剤B3
日油社製ポリオキシエチレンステアリルエーテル「ノニオンS−220」(商品名)を用いた。この製品のHLB値は、15.3である。
(4)界面活性剤B4
日油社製ポリオキシエチレンオレイルエーテル「ノニオンE−230」(商品名)を用いた。この製品のHLB値は、16.6である。
(5)界面活性剤B5
日油社製ポリオキシエチレンラウリルエーテル「ノニオンK−230」(商品名)を用いた。この製品のHLB値は、17.5である。
【0040】
1−3.他の配合剤
(1)加硫剤
細井化学工業社製「微粉硫黄200メッシュ」(商品名)を用いた。
(2)加硫促進剤PZ
川口化学工業社製ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛「アクセルPZ」(商品名)を用いた。
(3)加硫促進剤TMT
川口化学工業社製テトラメチルチウラムジスルフィド「アクセルTMT」(商品名)を用いた。
(4)加硫促進剤M
川口化学工業社製2−メルカプトベンゾチアゾール「アクセルM」(商品名)を用いた。
(5)酸化亜鉛
正同化学工業社製「酸化亜鉛3種」(商品名)を用いた。
(6)ステアリン酸
新日本理化社製「ステアリン酸50S」(商品名)を用いた。
(7)タルク
日本ミストロン社製「ミストロンベーパー」(商品名)を用いた。
(8)シリカ
トクヤマ社製「トクシール233」(商品名)を用いた。
(9)カップリング剤
エボニックデグサ社製ビス−〔3−(トリエトキシシリル)−プロピル〕テトラスルフィド「Si69」(商品名)を用いた。
(10)酸化チタン
テイカ社製「TITANIX JA−1」(商品名)を用いた。
【0041】
2.ゴム組成物、加硫ゴム組成物及びホースの製造並びにその評価
実施例1〜7及び比較例1〜4
上記原料成分を、表1に示す量で配合し、未加硫のゴム組成物を調製した。そして、このゴム組成物を押出機に導入して、未加硫管状物を作製した。次いで、この未加硫管状物を、加硫缶の中に静置し、水蒸気雰囲気にて、温度160℃で30分間、蒸気加硫を行い、加硫ゴム組成物からなるホース(肉厚2mm及び外径15mm)を得た。ホースの色調は白色である。
【0042】
得られたホースについて、その表面を目視観察し、以下の基準により外観性を評価した。
◎:黒色斑点が見られなかった
○:黒色斑点がわずかに見られた
×:黒色斑点が大量に見られた
【0043】
また、未加硫のゴム組成物を、上記と同様の条件により蒸気加硫に供して、加硫ゴム組成物からなる板を作製し、表面の硬さ設定値を70とした場合、表面の硬さ(単位:Duro−A)、引張強さ(単位:MPa)、及び引張伸び(単位:%)を、それぞれ、JIS K6253(表面の硬さ)及びJIS K6251(引張り強さ、引張り伸び)に準じて測定し、以下の基準によりゴム物性を判定した。
○:ゴム物性が適正(硬さが65〜75、引張強度が9.0MPa以上、引張伸びが380%以上)であった
×:ゴム物性が不十分(硬さ、引張強さ、又は引張伸びいずれかの値が適正範囲外)であった
【0044】
【表1】

【0045】
表1から明らかなように、成分(B)を、成分(A)100部に対して0.4〜6部含有するゴム組成物(実施例1〜7)を用いて得られた加硫ゴム組成物からなるホースは、良好なゴム弾性を有しつつ、その表面における不良現象が抑制されていた。一方、比較例1〜4は、成分(B)を含有しない組成物、あるいは、その含有量が多すぎる又は少なすぎる組成物を用いた例であり、本発明の効果が十分に得られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明のゴム組成物は、良好なゴム弾性を有し、様々な色を呈したものであっても、表面荒れ、色むら等の不良現象が抑制されて外観性に優れるので、ホース、ゴムシート、パッキン類等の加硫成形品の形成に好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気加硫法により、白色又は有彩色の加硫成形品を製造するために用いられるゴム組成物であって、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体と、ノニオン系界面活性剤とを含有し、該ノニオン系界面活性剤の含有量が、未加硫状態で上記エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体100質量部に対して、0.4〜6質量部であることを特徴とするゴム組成物。
【請求項2】
上記ノニオン系界面活性剤のHLB値が10以上である請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
上記ノニオン系界面活性剤が、下記一般式(1)で表されるポリオキシエチレンモノアルキルエーテルである請求項1又は2に記載のゴム組成物。
RO−(CO)−H (1)
[式中、Rは、炭素原子数が8〜40であり、飽和又は不飽和の炭化水素基であり、nは6以上の整数である。]
【請求項4】
更に、硫黄を含有する請求項1乃至3のいずれか一項に記載のゴム組成物。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のゴム組成物を用いて得られたことを特徴とするホース。

【公開番号】特開2012−92183(P2012−92183A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−239028(P2010−239028)
【出願日】平成22年10月25日(2010.10.25)
【出願人】(390019219)株式会社エラストミックス (1)
【出願人】(000233619)株式会社ニチリン (69)
【Fターム(参考)】