説明

ゴム組成物及び加硫ゴム成形体

【課題】本発明は、コピー機、プリンター等に使用される電子写真用プロセスの帯電、現像、転写等のローラー、ベルト等に利用可能な半導電領域の体積抵抗率を有し、耐移行性を兼ね備えた低硬度の加硫ゴム成形体を提供する。
【解決手段】ゴム成分100重量%中に、エピクロルヒドリン系重合体ゴムを20重量%以上含有しており、前記ゴム成分100重量部に対して、酸化鉱油を0.1〜20重量部、加硫剤を0.1〜10重量部含有するゴム組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コピー機、プリンター等に使用される電子写真用プロセスの帯電、現像、転写等のローラー、ベルトや、自動車部品等に使用されるパッキング、オイルシール、燃料ホース等に用いられる、エピクロルヒドリン系重合体ゴムを用いたゴム組成物及びその組成物を加硫してなる加硫ゴム成形体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、接触型帯電方式に用いられる帯電ローラー、転写ローラー、現像ローラーにおいて、高画質化や高速化等の要求から、基材部分であるゴム材料のさらなる物性向上が求められている。
【0003】
例えば、ゴム材料の体積抵抗率は、測定部位によるバラツキがなく105〜1011Ωcm程度の半導電領域の範囲で選定される値の1オーダー以内であることが要求されている。ゴム材料に半導電領域の体積抵抗率を発現させる方法のひとつとしては、カーボンブラックを添加する方法があげられる。しかしながら、カーボンブラックにより導電性を発現させる場合、わずかな添加量の差異や、カーボンブラックの分散状態の違いにより、体積抵抗率が1オーダーの範囲を超えて大きく変化してしまう問題がある。また、印加電圧により体積抵抗率の変動が大きいという問題も含んでいる。
【0004】
一方、エピクロルヒドリン系重合体ゴムのようなイオン導電性を有したゴムを用いることにより、前述したカーボンブラックの問題点は改善される。近年では、更にローラーの駆動トルクを低減させるため、また感光体表面を均一に帯電させるため、各種ローラーにおけるゴム材料の低硬度化が必要とされている。
【0005】
ゴム材料の硬度を下げる方法は種々提案されており、例えば、特許文献1では、スチレン/エチレン/プロピレン/スチレン共重合体等のスチレン系エラストマーに、パラフィン系及びナフテン系のプロセスオイル、ミネラルオイル、流動パラフィン等のゴム用軟化剤を添加する方法が記載されている。しかしながら、ポリマー種が変化することにより、相溶性が変化し、特にエピクロルヒドリン系重合体ゴムに対して、前記ゴム用軟化剤の練りこみ性は極端に悪化し、ゴム表面からの前記軟化剤の移行や、ベタツキ等の問題を起こす恐れがある。
【0006】
また、エピクロルヒドリン系重合体ゴムの硬度を下げる方法として、可塑剤を添加する方法が挙げられる。しかしながら、エピクロルヒドリン系重合体ゴムに一般的に用いられている可塑剤は分子量が低いものが多く、可塑剤を添加することにより、ゴム表面から可塑剤成分が移行し、保護を目的としたコーティング層を侵食し、コピー機やプリンター等の感光体を汚染するといった問題が生じている。
【0007】
上記問題を解決するため、特許文献2にはポリエステル系高分子可塑剤を添加する方法や、特許文献3において、特定のポリエステル系合成可塑剤を添加する方法が記載されている。しかしながら、上記可塑剤は少量添加による硬度低下の効果は小さく、充分な低硬度化を図るためには、可塑剤の大量添加が必要であり、結局、ゴム表面から可塑剤成分が移行する問題を解決する方法ではない。
【0008】
一方、可塑剤を使用せずに低硬度化を図る方法として、硫黄及び塩素を含まないサブを、エピクロルヒドリン系重合体ゴムに添加する方法が開示されている(特許文献4)。しかしながら、前記サブを少量添加した場合、硬度低下の効果は小さく、前記サブを大量に添加した場合、エピクロルヒドリン系重合体ゴムの成形加工性が低下するという問題がある。
【0009】
また、特許文献5には、ゴム材料を発泡体とする方法が挙げられている。しかしながら、この方法では発泡剤の添加量に硬度が大きく依存しているため、低硬度とするためには発泡剤を多量に添加しなければならず、その結果、発泡倍率やセル径の制御が困難となる問題がある。
【0010】
【特許文献1】特開平7−228749号公報
【特許文献2】特開2000−162850号公報
【特許文献3】特開2003−207992号公報
【特許文献4】特開2002−146177号公報
【特許文献5】特開2004−263059号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記実情に鑑み、本発明の目的は、コピー機、プリンター等に使用される電子写真用プロセスの帯電、現像、転写等のローラー、ベルト、自動車部品等に使用されるパッキング、オイルシール、燃料ホース等に利用可能な半導電領域の体積抵抗率を有し、耐移行性を兼ね備えた低硬度の加硫ゴム成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下に示すゴム組成物及び加硫ゴム成形体を用いることにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
本発明は、ゴム成分100重量%中に、エピクロルヒドリン系重合体ゴムを20重量%以上含有しており、前記ゴム成分100重量部に対して、酸化鉱油を0.1〜20重量部、加硫剤を0.1〜10重量部含有するゴム組成物に関する。
【0014】
従来、エピクロルヒドリン系重合体ゴムに鉱油を混練することが不可能であった。しかし、酸化鉱油とすることにより、混練することが可能となり、しかも少量の酸化鉱油の添加で、混練後のゴム組成物を加硫して得られる加硫ゴム成形体は、低硬度かつ耐移行性を有する。
【0015】
また、酸化鉱油を添加することにより、混練後のゴム組成物の成形加工性を向上させる効果も得られる。
【0016】
前記ゴム成分100重量%中、エピクロルヒドリン系重合体ゴムが20重量%未満であると、体積抵抗率の上昇が顕著になり好ましくない。従って、前記エピクロルヒドリン系重合体の配合量は、50重量%以上であることがより好ましい。
【0017】
本発明に用いられる前記酸化鉱油の配合割合は、ゴム成分100重量部に対して、0.1〜20重量部、好ましくは0.2〜15重量部、更に好ましくは0.3〜13重量部が用いられる。ここで、前記酸化鉱油が0.1重量部未満であると、硬度低下の効果が不十分となる。一方、20重量部を越えるとエピクロルヒドリン系重合体ゴム成分と酸化鉱油との混練が困難になる。
【0018】
本発明において、ゴム組成物には加硫剤を含んでおり、その配合量は、前記ゴム成分100重量部に対して、0.1〜10重量部であり、好ましくは0.5〜5重量部である。ここで、加硫剤が0.1重量部未満であると、架橋効果が不十分であり、一方、10重量部を越えると、本発明における加硫ゴム成形体が、剛直になりすぎ実用的なゴム物性が得られない。なお、前記ゴム成分との関係から、相溶性を示す加硫剤を選択する。
【0019】
本発明において、ゴム成分として、エピクロルヒドリン系重合体ゴムのみを含有していることが、特に好ましい。
【0020】
本発明におけるゴム成分として、エピクロルヒドリン系重合体ゴム以外の他のゴム成分として、クロロプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、エチレン−プロピレンゴム(EPM)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、イソプレンゴム(IR)、ブチルゴム(IIR)、アクリルゴム(ACM)、塩素化ポリエチレン(CPE)、クロルスルホン化ポリエチレン(CSM)、及びポリウレタンゴム(UR)よりなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、より好ましくは、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)である。前記他のゴム成分をエピクロルヒドリン系重合体ゴムとブレンドすることにより、加工性の更なる改良や低コスト化が図れる利点がある。
【0021】
ゴム成分100重量%中、前記他のゴム成分が80重量%以下であることが好ましく、より好ましくは、50重量%以下である。80重量%を超えると、エピクロルヒドリン系重合体ゴムに基づく加硫ゴム成形体の半導電特性の効果が低下する。
【0022】
前記エピクロルヒドリン系重合体ゴムは、エピクロルヒドリン単独重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合体、エピクロルヒドリン−アリルグリシジルエーテル共重合体、及びエピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体よりなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。前記エピクロルヒドリン系重合体ゴムを用いることにより、より優れた半導電特性を有した加硫ゴム成形体を得ることができる。
【0023】
前記酸化鉱油は、全酸価が5〜100mgKOH/gであることが好ましく、より好ましくは全酸価が10〜80mgKOH/gであり、さらに好ましくは全酸価が15〜60mgKOH/gである。だたし、酸化は重合による固化、又はスラッジ生成が起きない範囲で行う。なお、本発明における酸化鉱油は、流動パラフィンを酸化した酸化流動パラフィンが好ましい。前記酸化鉱油を使用することにより、加工性が改善され、エピクロルヒドリン系重合体ゴムと混練することが可能となる。また、前記ゴム組成物は前記酸化鉱油の添加量が少量でも加硫すると、低硬度かつ耐移行性を示す加硫ゴム成形体が得られる。
【0024】
前記加硫剤がポリアミン類、チオウレア類、チアジアゾール類、メルカプトトリアジン類、ピラジン類、メルカプトキノキサリン類、有機過酸化物、硫黄、モルホリンポリスルフィド類、及びチウラムポリスルフィド類よりなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、より好ましくは、チオウレア類、メルカプトキノキサリン類、硫黄、モルホリンポリスルフィド類、チウラムポリスルフィド類である。
【0025】
また本発明のゴム組成物は、更に発泡剤0.1〜20重量部を含有していても良い。
【0026】
本発明のゴム組成物は、これに発泡剤を添加することにより、スポンジ状加硫ゴム成形体とすることができる。酸化鉱油を含む本発明の組成物をスポンジ状として使用する場合、所要の硬度とする際に発泡倍率を比較的小さく設定することができるため、発泡倍率やセル径の制御が比較的容易となる利点がある。発泡剤の添加量は、通常、ゴム成分100重量部に対して、0.1〜20重量部であることが好ましい。好ましい発泡剤としてはN,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、アゾジカルボンアミド、p,p’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジドを挙げることができ、これらを1種または2種以上を混合して使用することができる。
【0027】
本発明によれば、半導電領域の体積抵抗率を有し、耐移行性を兼ね備えた低硬度(軟質)の加硫ゴム成形体が得られる。前記加硫ゴム成形体は、コピー機、プリンター等の電子写真プロセスに使用される半導電性ゴムローラー、ゴムベルト、自動車部品等に使用されるパッキング、オイルシール、燃料ホース等に広く応用可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0029】
本発明におけるゴム成分としては、エピクロルヒドリン系重合体ゴムを少なくとも20重量%以上使用する。
【0030】
前記エピクロルヒドリン系重合体ゴムとしては、特に制限されないが、エピクロルヒドリン単独重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合体、エピクロルヒドリン−アリルグリシジルエーテル共重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体、エピクロルヒドリン−プロピレンオキサイド共重合体、エピクロルヒドリン−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル四元共重合体等が挙げられる。特に好ましくは、エピクロルヒドリン単独重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合体、エピクロルヒドリン−アリルグリシジルエーテル共重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体が挙げられる。これらを単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0031】
本発明における前記エピクロルヒドリン系重合体ゴムの成分組成は通常、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合体では、エピクロルヒドリン成分が5〜70mol%、エチレンオキサイド成分が30〜95mol%であり、好ましくはエピクロルヒドリン成分が10〜60mol%、エチレンオキサイド成分が40〜90mol%である。また、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体では、エピクロルヒドリン成分が5〜75mol%、エチレンオキサイド成分が20〜90mol%、アリルグリシジルエーテル成分が1〜10mol%であり、好ましくはエピクロルヒドリン成分が10〜65mol%、エチレンオキサイド成分が30〜85mol%、アリルグリシジルエーテル成分が2〜8mol%である。成分組成中のエチレンオキサイド成分の含有量が増加するほど、半導電性の向上、すなわち体積抵抗率を低下させることができる。
【0032】
前記エピクロルヒドリン系重合体ゴムの製造方法としては公知の重合法を採用できる。特に、米国特許第3,773,694号に記載された有機錫−リン酸エステル縮合物を重合触媒とする方法は、重合物が高収率で得られるので好ましい。具体的には、上記触媒の存在下で脂肪族又は芳香族炭化水素を溶媒として重合温度10〜70℃で5〜15時間重合させることにより、重合収率90%以上で製品を得ることができる。前記エピクロルヒドリン系重合体ゴムの分子量範囲は、100℃におけるムーニー粘度表示で30〜200のものが好ましい。
【0033】
本発明にけるゴム成分としては、エピクロルヒドリン系重合体ゴム以外の他のゴム成分として、一般的なゴム成分を特に限定することなく使用することができる。ここで、ゴム成分100重量%中、前記他のゴム成分が80重量%以下であり、他のゴム成分として、クロロプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、エチレン−プロピレンゴム(EPM)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、イソプレンゴム(IR)、ブチルゴム(IIR)、アクリルゴム(ACM)、塩素化ポリエチレン(CPE)、クロルスルホン化ポリエチレン(CSM)、及びポリウレタンゴム(UR)よりなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、より好ましくは、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)である。
【0034】
本発明における前記酸化鉱油は、鉱油を一般的な酸化方法、例えば空気酸化することで得られる。酸化鉱油の酸化度合は、全酸価で示される。酸化鉱油の全酸価は5〜100mgKOH/gであることが好ましく、より好ましくは全酸価が10〜80mgKOH/gであり、さらに好ましくは全酸価が15〜60mgKOH/gである。なお、酸化鉱油の全酸価は、JIS K 2501に記載の方法に準じて測定される。
【0035】
前記酸化鉱油の生成に用いられる鉱油とは、原油を蒸留して得られる潤滑油留分のことである。例えば、パラフィン系、ナフテン系、芳香族系等のプロセスオイル、流動パラフィン等が挙げられる。特に、鉱油を精製することで芳香族炭化水素等を除いた飽和炭化水素である流動パラフィンを酸化した流動パラフィンが好ましい。
【0036】
本発明に用いられる前記酸化鉱油の配合割合は、ゴム成分100重量部に対して、0.1〜20重量部、好ましくは0.2〜15重量部、更に好ましくは0.3〜13重量部が用いられる。
【0037】
本発明に用いられる前記加硫剤としては、塩素原子の反応性を利用する公知の加硫剤、例えば、ポリアミン類、チオウレア類、チアジアゾール類、メルカプトトリアジン類、ピラジン類、メルカプトキノキサリン類等や、二重合結合の反応性を利用する公知の加硫剤、例えば、有機過酸化物、硫黄、モルホリンポリスルフィド類、及びチウラムポリスルフィド類等があげられる。特に好ましくは、チオウレア類、メルカプトキノキサリン類、硫黄、モルホリンポリスルフィド類、チウラムポリスルフィド類である。これらの加硫剤は単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0038】
前記加硫剤を例示すれば、ポリアミン類としては、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ヘキサメチレンテトラミン、p−フェニレンジアミン、クメンジアミン、N,N’−ジシンナミリデン−1,6−ヘキサンジアミン、エチレンジアミンカーバメート、ヘキサメチレンジアミンカーバメート等があげられる。
【0039】
前記チオウレア類としては、エチレンチオウレア、1,3−ジエチルチオウレア、1,3−ジブチルチオウレア、トリメチルチオウレア等があげられる。
【0040】
前記チアジアゾール類としては、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、2−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール5−チオベンゾエート等があげられる。
【0041】
前記メルカプトトリアジン類としては、2,4,6−トリメルカプト−1,3,5−トリアジン、1−メトキシ−3,5−ジメルカプトトリアジン、1−ヘキシルアミノ−3,5−ジメルカプトトリアジン、1−ジエチルアミノ−3,5−ジメルカプトトリアジン、1−シクロヘキサンアミノ−3,5−ジメルカプトトリアジン、1−ジブチルアミノ−3,5−ジメルカプトトリアジン、2−アニリノ−4,6−ジメルカプトトリアジン、1−フェニルアミノ−3,5−ジメルカプトトリアジン等があげられる。
【0042】
前記ピラジン類としては、2,3−ジメルカプトピラジン誘導体等があげられ、2,3−ジメルカプトピラジン誘導体を例示すると、ピラジン−2,3−ジチオカーボネート、5−メチル−2,3−ジメルカプトピラジン、5−エチルピラジン−2,3−ジチオカーボネート、5,6−ジメチル−2,3−ジメルカプトピラジン、5,6−ジメチルピラジン−2,3−ジチオカーボネート等があげられる。
【0043】
前記メルカプトキノキサリン類としては、2,3−ジメルカプトキノキサリン誘導体等があげられ、2,3−ジメルカプトキノキサリン誘導体を例示すると、キノキサリン−2,3−ジチオカーボネート、6−メチルキノキサリン−2,3−ジチオカーボネート、6−エチル−2,3−ジメルカプトキノキサリン、6−イソプロピルキノキサリン−2,3−ジチオカーボネート、5,8−ジメチルキノキサリン−2,3−ジチオカーボネート等があげられる。
【0044】
前記有機過酸化物としては、tert−ブチルヒドロパーオキサイド、p−メンタンヒドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキサイド、1,3−ビス(tert−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシベンゾエート等があげられる。
【0045】
前記モルホリンポリスルフィド類としては、モルホリンジスルフィド等があげられる。
【0046】
前記チウラムポリスルフィド類としては、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、N,N’−ジメチル−N,N’−ジフェニルチウラムジスルフィド、ジペンタンメチレンチウラムテトラスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド、ジペンタメチレンチウラムヘキサスルフィド等をあげられる。
【0047】
本発明に用いられる前記加硫剤の配合割合は、ゴム成分100重量部に対して、0.1〜10重量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜5重量部である。
【0048】
また、前記加硫剤と共に公知の加硫促進剤、遅延剤を本発明においてそのまま用いることができる。加硫促進剤としては、塩基性シリカ、1級、2級、3級アミン、該アミンの有機酸塩もしくはその付加物、アルデヒドアンモニア系促進剤、アルデヒドアミン系促進剤、グアニジン系促進剤、チアゾール系促進剤、スルフェンアミド系促進剤、チウラム系促進剤、ジチオカルバミン酸系促進剤、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7及びその弱酸塩、1,5−ジアザビシクロ(4,3,0)ノネン−5、6−ジブチルアミノ1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7及びその弱酸塩、第4級アンモニウム化合物等を挙げることができる。また、遅延剤としてはN−シクロヘキサンチオフタルイミド、酸性シリカ等を挙げることができる。
【0049】
上記加硫促進剤を例示すれば、1級、2級、3級アミンとしては、特に炭素数5〜20の脂肪族又は環式脂肪酸の第1、第2もしくは第3アミンが好ましく、このようなアミンの代表例は、n−ヘキシルアミン、オクチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、ヘキサメチレンジアミン等である。
【0050】
上記アミンと塩を形成する有機酸としては、カルボン酸、カルバミン酸、2−メルカプトベンゾチアゾール、ジチオリン酸等が例示される。また上記アミンと付加物を形成する物質としては、アルコール類、オキシム類等が例示される。アミンの有機酸塩もしくは付加物の具体例としては、n−ブチルアミン・酢酸塩、ヘキサメチレンジアミン・カルバミン酸塩、2−メルカプトベンゾチアゾールのジシクロヘキシルアミン塩等が挙げられる。
【0051】
上記アルデヒドアンモニア系促進剤の例としては、ヘキサメチレンテトラミン、アセトアルデヒドとアンモニアの反応生成物等が挙げられる。アルデヒドアミン系促進剤の例としては、アミンと少なくとも1種の炭素数1〜7のアルデヒドとの縮合生成物であり、このようなアミンの例としては、アニリン、ブチルアミン等が挙げられる。これらのなかで、アニリンと少なくとも1種の炭素数1〜7のアルデヒドとの縮合生成物が好ましい。具体例としては、アニリンとブチルアルデヒドの縮合物、アニリンとヘプタアルデヒドの縮合物、アニリンとアセトアルデヒド及びブチルアルデヒドの縮合物等がある。
【0052】
上記グアニジン系促進剤の例としては、ジフェニルグアニジン、ジトリルグアニジン等が挙げられる。
【0053】
上記チアゾ−ル系促進剤の例としては、2−メルカプトベンゾチアゾール、ジベンゾチアジルジスルフィド、2−メルカプトベンゾチアゾ−ルの亜鉛塩等が挙げられる。
【0054】
上記スルフェンアミド系加硫促進剤の具体例としては、N−エチル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド、N−t−ブチル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド、N,N−ジ−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド、等が挙げられる。
【0055】
上記チウラム系加硫促進剤の具体例としては、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等が挙げられる。
【0056】
上記ジチオカルバミン酸系促進剤の例としては、ペンタメチレンジチオカルバミン酸ピペリジン塩、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルカルバミン酸銅等が挙げられる。
【0057】
前記加硫促進剤又は遅延剤は、無機充填剤、オイル、ポリマー等に予備分散させた形で使用しても良い。また、これらの加硫促進剤は単独で又は2種類以上を組み合わせで用いてもよい。前記促進剤又は遅延剤の配合量は、ゴム成分100重量部に対して0〜10重量部であることが好ましく、より好ましくは0.1〜5重量部である。
【0058】
本発明のゴム組成物をスポンジ状加硫ゴム成形体とする場合の発泡剤の配合割合は、ゴム成分100重量部に対して0.1〜20重量部が好ましく、より好ましくは0.2〜10重量部、更に好ましくは0.3〜7重量部の範囲である。発泡剤の配合割合が0.1重量部未満では発泡が不十分となり硬度低下の効果が不十分となる。一方、20重量部を越えるとスポンジのセル径が不均一となる。好ましい発泡剤としてはN,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、アゾジカルボンアミド、p,p’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジドを挙げることができ、これらを1種または2種以上を混合して使用することができる。
【0059】
本発明において用いることができる受酸剤としては、周期表第II族金属酸化物、水酸化物、炭酸塩、カルボン酸塩、ケイ酸塩、ホウ酸塩、亜リン酸塩、周期表第IV族金属の酸化物、塩基性炭酸塩、塩基性カルボン酸塩、塩基性亜リン酸塩、塩基性亜硫酸塩等、及び下記一般式(I)で示される合成ハイドロタルサイト類、及び一般式(II)で示されるLi−Al系包接化合物が挙げられる。

MgZnAl(OH)2(x+y)+3z―2CO・wHO (I)

(xとyは0〜10の実数、ただしx+y=1〜10、zは1〜5の実数、wは0〜10の実数を表す)

〔AlLi(OH)X・mHO (II)

(式中Xは、無機又は有機のアニオンであり、nはアニオンXの価数であり、mは3以下の数)
【0060】
前記受酸剤の具体的な例としては、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、生石灰、消石灰、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、酸化亜鉛、フタル酸カルシウム、亜リン酸カルシウム、酸化錫、塩基性亜リン酸錫をあげることができる。
【0061】
さらに、前記一般式(I)で示される合成ハイドロタルサイト類については、例えば、MgZnAl2 (OH)12CO・wHO等を挙げることができる。また、一般式(I)に含まれる下記一般式(III)であってもよい。例えば、

MgAl(OH)2x+3y−2CO・wHO (III)

(但しxは1〜10、yは1〜10、wは正の実数を表す)
であってよく、更に具体的に例示すれば、Mg4.5Al(OH)13CO.5HO、Mg4.5Al(OH)13CO、MgAl(OH)12CO・3.5HO、MgAl(OH)16CO・4HO、MgAl(OH)10CO1.7HO等を挙げることができる。
【0062】
さらに、前記一般式(II)で示されるLi−Al系包接化合物については、〔AlLi(OH)CO・HO等が挙げられる。
【0063】
また、前記Li−Al系包接化合物のアニオン種としては、炭酸、硫酸、過塩素酸、リン酸のオキシ酸、酢酸、プロピオン酸、アジピン酸、安息香酸、フタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、p−オキシ安息香酸、サリチル酸、ピクリン酸等が挙げられ、これらの受酸剤は単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0064】
前記受酸剤の配合量は、ゴム成分100重量部に対して0.5〜50重量部であることが好ましく、より好ましくは1〜20重量部である。
【0065】
更に、本発明において用いることができる導電付与剤として、アルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩などの金属塩、第4級アンモニウム塩、ホスホニウム塩等が挙げられる。
【0066】
前記導電性付与剤を構成するアニオン種としては、具体的に例示すると、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、酢酸イオン、硫酸イオン、過塩素酸イオン、チオシアン酸イオン、テトラフルオロホウ素酸イオン、硝酸イオン、AsF6-、PF6-、ステアリールスルホン酸イオン、オクチルスルホン酸イオン、ドデシルベンゼンスルホン酸イオン等が挙げられ、これらを単独で又は2種以上混合して使用することができる。
【0067】
前記金属塩におけるカチオン種としては、例えば、アルカリ金属であるLi、Na及びK、アルカリ土類金属であるBe、Mg、Ca及びBa、遷移金属であるFe、Ni、Cu、Zn及びAgの金属陽イオンが挙げられる。
【0068】
前記第4級アンモニウム塩におけるカチオン種としては、以下に示す一般式(IV)で表される。

(IV)
(式中R1、R、R及びRはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、炭素原子数1〜18のアルキル基、アルケニル基、アリール基、シクロアルキル基、アルコキシ基あるいは主鎖がポリオキシエチレン鎖もしくはポリオキシプロピレン鎖で、末端にアルキル基、アルケニル基、アリール基、シクロアルキル基、アルコキシ基、水酸基を有する基である。)
【0069】
前記第4級アンモニウム塩におけるカチオン種として、具体的に例示すると、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、オクタデシルトリメチルアンモニウム、ドデシルトリメチルアンモニウム、トリメチルフェニルアンモニウム、ベンジルトリメチルアンモニウム、トリメチル2−(2−メトキシプロキシ)エチルアンモニウム、ジメチルドデシル2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルアンモニウム、ジメチルオクタデシル2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルアンモニウム等の第4級アンモニウムイオンが挙げられる。
【0070】
前記ホスホニウム塩におけるカチオン種としては、テトラメチルホスホニウム、テトラプロピルホスホニウム等のホスホニウムイオンが挙げられる。
【0071】
前記カチオン種である第4級アンモニウムイオン等と、前記アニオン種である過塩素酸イオンなどの無機酸イオン、塩化物イオンなどのハロゲンイオン等を有した第4級アンモニウム塩等が、前記導電付与剤として挙げられる。
【0072】
上記導電付与剤の配合量は、ゴム成分100重量部に対して0〜10重量部であることが好ましく、より好ましくは0〜5重量部である。
【0073】
本発明の組成物の配合方法としては、従来ポリマー加工の分野において利用されている任意の手段、例えばミキシングロール、バンバリーミキサー、各種ニーダー類等を利用することができる。
【0074】
また、本発明のゴム組成物は、当該技術分野で通常使用される他の添加剤、例えば滑剤、老化防止剤、充填剤、補強剤、可塑剤、加工助剤、顔料、発泡剤等を任意に配合することができる。
【0075】
更に、本発明の特性が失われない範囲で、当該技術分野で通常行われている樹脂等とのブレンドを行うことも可能である。本発明に用いられる樹脂を例示すれば、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)樹脂、ポリスチレン(PS)樹脂、ポリウレタン(PUR)樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂、エチレン/酢酸ビニル(EVA)樹脂、スチレン/アクリロニトリル(AS)樹脂、ポリエチレン(PE)樹脂等が挙げられる。
【0076】
本発明のゴム組成物を得る方法としては、特に制限はなく、従来公知の方法で行うことができる。例えば、本発明におけるゴム組成物の調製は、前記原料を汎用のミキシングロール、バンバリーミキサー、各種ニーダー類等を用いて、均一に混練することによって行われる。
【0077】
本発明の加硫ゴム成形体を得る方法としては、特に制限はなく、本発明におけるゴム組成物を、通常100〜250℃に加熱することで得ることができる。加硫時間は温度によって異なるが、一般的には、0.5〜300分の間で行われる。成形方法としては、圧縮成型、射出成型、スチーム缶、エアーバス、赤外線、あるいはマイクロウェーブによる加熱等の任意の方法を用いることができる。
【実施例】
【0078】
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例等について説明する。なお、実施例等における物性等の評価方法は次のとおりである。
【0079】
得られた実施例1〜7及び比較例1〜5の試験片については、目視又は各種測定機器を使用して、ムーニースコーチ試験(最低粘度、ムーニースコーチ時間)、常態物性(引張応力、引張強さ、破断伸び、硬さ)、圧縮永久歪試験、体積固有抵抗、感光体汚染性試験(貼りつき、表面観察)を測定・観察した。
【0080】
また、表1の割合で各種のゴム組成物を調製した。
【0081】
[実施例1]
120℃に設定した容量1リットルのニーダー中でエピクロルヒドリン系重合体ゴム100重量部を1分間素練りした後、表1に示したA練り配合剤を表1に示した配合量で投入した。これらを4分間混練した後、ニーダーより取り出し、70℃に設定した7インチロールでシート化してゴムシート(以下、「A練りシート」とする。)を作製した。
【0082】
次いで、70℃に温度設定した7インチロールを用い、前記A練りシートに、表1に示した配合割合のB練り配合剤を加え、約5分間混練することにより、ゴムシート(以下、「B練りシート」とする。)を作製した。
【0083】
なお、実施例2〜7及び比較例1〜5については、上記実施例1と同様の方法で、表1の配合に従いゴムシートを作製した。
【0084】
[ムーニースコーチ試験]
L型ロータ(径38.1mm)を用いて、JIS K 6300に準拠して、測定した。
【0085】
[常態物性]
【0086】
(引張応力・引張強さ・破断伸び)
前記B練りシートを試験片作製用金型を用いて、170℃で15分間プレス加硫し、加硫ゴム成形体(150mm×150mm×2mm)を成形した。得られた加硫ゴム成形体より、JIS K 6251に示されるダンベル状3号形試験片を、打ち抜き型を用いて打ち抜き、JIS K 6251に準拠して、測定した。
【0087】
(硬さ)
JIS K 6253に準拠して測定し、A硬度が50以下であれば、低硬度(軟質)であり、本発明の目的に適当であると判断した。
【0088】
[圧縮永久歪試験]
JIS K 6262に準拠して測定した。すなわち、前記B練りシートを試験片作製用金型を用いて170℃で20分間プレス加硫し、円柱状加硫ゴム試験片(厚さ約12.5mm×直径約29mm)を得た。得られた加硫ゴム試験片を用いて、測定した。
【0089】
[体積固有抵抗]
体積抵抗率の測定は次のように行った。加硫ゴム試験片(80mm×80mm×2mm)及び絶縁抵抗計(三菱油化(株)製ハイレスタHP、プローブHRタイプ)を、23℃×50%RH条件に設定した恒温恒湿槽中に入れ、24時間以上静置した後、10V印可し、1分後の値を読み取った。
【0090】
[感光体汚染性試験]
【0091】
(貼りつき、表面観察)
感光体汚染性試験は次のように行った。本発明における加硫ゴム試験片(20mm×40mm×2mm)を市販の感光体に巻きつけ、45℃×85%RH条件に設定した恒温恒湿槽中に入れて、3週間放置し、感光体への貼りつき及び感光体表面の変化を目視にて観察した。
(感光体表面観察)
〇:表面の変化なし
△:表面に薄く跡が残る
×:表面に濃く跡が残る
【0092】
【表1】


1)エピクロルヒドリン系重合体ゴム:「エピクロマーCG−102」、ダイソー(株)製
2)NBR(アクリロニトリル−ブタジエンゴム):「N260S」、JSR(株)製
3)EPDM(エチレン−プロピレン−ジエンゴム):「EP22」、JSR(株)製
4)酸化流動パラフィン1:「モレスコホワイトP−260」、(株)松村石油研究所製を
酸化したもの((株)松村石油研究所製)(全酸価15mgKOH/g)
5)酸化流動パラフィン2:「モレスコホワイトP−260」、(株)松村石油研究所製を
酸化したもの((株)松村石油研究所製)(全酸価40mgKOH/g)
6)流動パラフィン:「モレスコホワイトP−260」、(株)松村石油研究所製
7)合成ハイドロタルサイト:「DHT−4A」、協和化学工業(株)製
8)DBUのフェノール樹脂塩:「P−152」、ダイソー(株)製

【0093】
【表2】


:最低粘度
5:ムーニースコーチ時間(分)
100:100%伸び時の引張応力(MPa)
b:引張強さ(MPa)
b:破断伸び(%)
:硬さ(JIS−A)

【0094】
実施例1〜7より、エピクロルヒドリン系重合体ゴムを用いることにより、半導電領域の体積抵抗率を発現させることができることを確認した。
【0095】
また、実施例1〜7より、エピクロルヒドリン系重合体ゴムに酸化鉱油を少量添加することにより、加硫ゴム成形体の低硬度化を図ることができ、感光体汚染が認められないことが確認できた。
【0096】
比較例1では、酸化鉱油を使用していないため、低硬度化(軟質化)が図れないことが確認できた。
【0097】
比較例2では、実施例と比較して酸化鉱油を多く添加した場合、エピクロルヒドリン系重合体ゴムとの混練が困難となった。また、比較例3は、酸化していない鉱油(流動パラフィン)を使用したため、エピクロルヒドリン系重合体ゴムとの混練が困難となることが確認できた。
【0098】
比較例4及び5では、ゴム用に通常使用されるポリエステル系可塑剤を添加することにより硬度は下げることは出来るが、その効果は酸化鉱油を添加した場合よりも小さく、前記ポリエステル系可塑剤の添加量の増大により、感光体への貼りつきや感光体表面の変化が顕著に認められ、感光体汚染性が悪化したことが確認できた。
【0099】
次いで、本発明の構成をスポンジ状加硫ゴム成形体としたときの効果を実施例、比較例にて説明する。
【0100】
まず、表3の割合で各種のゴム組成物を調製した。実施例8、9及び比較例6については、上記実施例1と同様の方法で、ゴムシートを作製した。
【0101】
得られた実施例8、9及び比較例6の試験片については、各種測定機器を使用して、硬さ、比重を測定した。その評価結果を表4に示す。
【0102】
(硬さ)
前記B練りシートを試験片作製用金型を用いて、80℃で3分間予熱、3分間プレスし、加圧下で冷却することにより未加硫ゴム成形体(150mm×150mm×2mm)を成形した。得られた未加硫ゴム成形体を150℃に温度設定したエアーオーブン中で40分間加硫発泡させた。得られたスポンジ状加硫ゴムシートをJIS K 7312に準拠してC硬度を測定した。
【0103】
(比重)
前記未加硫ゴム成形体(発泡前)及び前記スポンジ状加硫ゴムシート(発泡後)より切り出した試験片を用い、JIS K 6268に準拠してA法にて加硫発泡前後の比重を測定した。
【0104】
【表3】

【0105】
【表4】

【0106】
実施例8、9では、エピクロルヒドリン系重合体ゴムに酸化鉱油を少量添加したスポンジ状加硫ゴム成形体においても低硬度化を図れることが確認できた。
【0107】
比較例6では、酸化鉱油を使用していないため、スポンジ状加硫ゴム成形体の低硬度化(軟質化)が図れないことが確認できた。これは、酸化鉱油を用いずに実施例8、9と同等の硬度とするには、発泡倍率をさらに大きくしなければならないことを意味する。
【0108】
更に、本発明の構成により得られる成形加工性の改善効果を実施例、比較例にて説明する。
【0109】
まず、表5の割合で各種のゴム組成物を調製した。上記実施例1と同様の方法で、ゴムシートを作製した。
【0110】
得られた実施例10及び比較例7の組成物については、目視又は各種測定機器を使用して、流動性試験(フローレート)、押出成形性試験(ガーベイダイ押出試験)を測定・観察した。その評価結果を表6に示す。
【0111】
[流動性試験]
JIS K 7210に準じて未加硫ゴム組成物の80℃、21.6Kg荷重でのメルトフローレート(MFR)を測定した。同試験でMFRが大きいことは射出成形時の流動性に優れていることを意味する。
【0112】
[ガーベダイ押出試験]
ASTM D 2230に準じて未加硫ゴム組成物をガーベイ型ダイで押出成形した際の成形状態を目視観察した。なお、使用した押出機はスクリュー径19mm、L/D10で、バレル温度60℃、ダイス温度70℃、スクリュー回転数25rpmにて試験を行った。
【0113】
【表5】


9)エピクロルヒドリン系重合体ゴム:「エピクロマーC」、ダイソー(株)製
10)FEFカーボンブラック:「シーストSO」、東海カーボン(株)製

【0114】
【表6】

【0115】
実施例10と比較例7を対比すると、酸化鉱油を使用した実施例10の組成物は流動性試験及び押出成形性試験の両試験において、高い値を示し、成形加工性に優れていることが確認できた。一方、比較例7では、酸化鉱油を使用していないため、両試験共に実施例10より劣ることが確認できた。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム成分100重量%中に、エピクロルヒドリン系重合体ゴムを20重量%以上含有しており、前記ゴム成分100重量部に対して、酸化鉱油を0.1〜20重量部、加硫剤を0.1〜10重量部含有するゴム組成物。
【請求項2】
ゴム成分がエピクロルヒドリン系重合体ゴムのみである請求項1記載のゴム組成物。
【請求項3】
他のゴム成分が、クロロプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、エチレン−プロピレンゴム(EPM)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、イソプレンゴム(IR)、ブチルゴム(IIR)、アクリルゴム(ACM)、塩素化ポリエチレン(CPE)、クロルスルホン化ポリエチレン(CSM)、及びポリウレタンゴム(UR)よりなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1記載のゴム組成物。
【請求項4】
前記エピクロルヒドリン系重合体ゴムが、エピクロルヒドリン単独重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合体、エピクロルヒドリン−アリルグリシジルエーテル共重合体、及びエピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体よりなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜3のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項5】
前記酸化鉱油は、全酸価が5〜100mgKOH/gである請求項1〜4のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項6】
前記酸化鉱油が、流動パラフィンを酸化した酸化流動パラフィンである請求項1〜5のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項7】
前記加硫剤が、ポリアミン類、チオウレア類、チアジアゾール類、メルカプトトリアジン類、ピラジン類、メルカプトキノキサリン類、有機過酸化物、硫黄、モルホリンポリスルフィド類、及びチウラムポリスルフィド類よりなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜6のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項8】
更に、ゴム成分100重量部に対して、発泡剤を0.1〜20重量部含有する請求項1〜7のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項9】
前記発泡剤が、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、アゾジカルボンアミド、p,p’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジドよりなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項8記載のゴム組成物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載のゴム組成物を加硫してなる加硫ゴム成形体。
【請求項11】
請求項10に記載の加硫ゴム成形体を用いた半導電性ゴムローラー又は半導電性ゴムベルト。
【請求項12】
請求項10に記載の加硫ゴム成形体を用いた自動車用ゴム部品。


【公開番号】特開2007−262387(P2007−262387A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−42645(P2007−42645)
【出願日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【出願人】(000108993)ダイソー株式会社 (229)
【出願人】(000146180)株式会社松村石油研究所 (20)
【Fターム(参考)】