説明

ゴム組成物及び空気入りタイヤ

【課題】ウェットグリップ性能と、環境性能(転がり抵抗の低減、石油資源枯渇への対応、CO排出量への配慮)と、耐久性能(耐クラック性能、耐摩耗性能)とを高次元でバランスよく改善できるゴム組成物、及びこれを用いた空気入りタイヤの提供。
【解決手段】天然ゴム、エポキシ化天然ゴム、非変性のスチレンブタジエンゴム、及びブタジエンゴムからなる群より選択される3種以上のゴムと、下記式(1)又は(2)により変性された変性スチレンブタジエンゴムとを含有するゴム組成物。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物及び空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、石油資源の枯渇、転がり抵抗の低減、環境(CO排出量の削減)への配慮等の観点から、天然ゴム等を主成分とするタイヤトレッド用ゴム組成物が提案されている。しかし、ゴム成分として天然ゴムだけを用いた場合、従来のSBR等を用いたトレッドに比べてウェットグリップ性能が劣ってしまうという問題がある。
【0003】
そのため、エポキシ化天然ゴムをトレッドに用い、石油資源の枯渇への対応やCO排出量の削減に積極的に取り組みつつ、ウェットグリップ性能を改善する試みが行われている。しかし、エポキシ化天然ゴムだけでは、従来のSBR系のトレッドに比較し、特に、高性能(高扁平)タイヤや、乗用車でも高荷重車両用タイヤに用いた場合、耐クラック性能や耐摩耗性能において、さらなる改善が必要である。耐クラック性能としては、特にトレッド溝底での溝方向に沿ったクラック(溝底の繰り返し変形により発生するクラック)の発生を抑制する必要がある。
【0004】
特許文献1、2には、アミノ基とアルコキシ基を有する珪素化合物により変性されたポリブタジエンゴムを配合することにより、耐摩耗性能が高く、転がり抵抗が低く、ウェットスキッド性能が良好なタイヤトレッド用ゴム組成物について開示されている。しかし、このような変性ポリブタジエンを使用しても、ウェットグリップ性能と、環境性能(転がり抵抗の低減、石油資源枯渇への対応、CO排出量への配慮)と、耐久性能(耐クラック性能、耐摩耗性能)とを高次元でバランスよく改善するという点については未だ改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−159814号公報
【特許文献2】特開2000−344955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記課題を解決し、ウェットグリップ性能と、環境性能(転がり抵抗の低減、石油資源枯渇への対応、CO排出量への配慮)と、耐久性能(耐クラック性能、耐摩耗性能)とを高次元でバランスよく改善できるゴム組成物、及びこれを用いた空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、天然ゴム、エポキシ化天然ゴム、非変性のスチレンブタジエンゴム、及びブタジエンゴムからなる群より選択される3種以上のゴムと、下記式(1)又は(2)で表される化合物により変性された変性スチレンブタジエンゴムとを含有するゴム組成物に関する。
【0008】
【化1】

(式中、R、R及びRは、同一若しくは異なって、アルキル基、アルコキシ基、シリルオキシ基、アセタール基、カルボキシル基、メルカプト基又はこれらの誘導体を表す。R及びRは、同一若しくは異なって、水素原子、アルキル基又は環状エーテル基を表す。nは整数を表す。)
【0009】
【化2】

(式中、R、R及びRは、同一若しくは異なって、アルキル基、アルコキシ基、シリルオキシ基、アセタール基、カルボキシル基、メルカプト基又はこれらの誘導体を表す。Rは、環状エーテル基を表す。p及びqは整数を表す。)
【0010】
上記ゴム組成物は、ゴム成分100質量%中、天然ゴムを10〜20質量%、エポキシ化天然ゴムを1〜5質量%、変性スチレンブタジエンゴムを15〜60質量%、ブタジエンゴムを20〜40質量%含有することが好ましい。
【0011】
上記ゴム組成物は、ゴム成分100質量%中の天然ゴム、エポキシ化天然ゴム、変性スチレンブタジエンゴム、非変性のスチレンブタジエンゴム、及びブタジエンゴムの合計含有量が100質量%であることが好ましい。
【0012】
上記ゴム組成物は、ゴム成分100質量部に対して、シリカを45質量部以上含有することが好ましい。
上記ゴム組成物は、エポキシ化天然ゴムのエポキシ化率が10〜50モル%であることが好ましい。
【0013】
上記ゴム組成物がトレッド用ゴム組成物であることが好ましい。
【0014】
本発明はまた、上記ゴム組成物を用いて作製したトレッドを有する空気入りタイヤに関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、天然ゴム、エポキシ化天然ゴム、非変性のスチレンブタジエンゴム、及びブタジエンゴムからなる群より選択される3種以上のゴムと、特定の化合物により変性された変性スチレンブタジエンゴムとを含有するゴム組成物であるので、ウェットグリップ性能と、環境性能(転がり抵抗の低減、石油資源枯渇への対応、CO排出量への配慮)と、耐久性能(耐クラック性能、耐摩耗性能)とを高次元でバランスよく改善できるゴム組成物、及びこれを用いた空気入りタイヤを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のゴム組成物は、天然ゴム(NR)、エポキシ化天然ゴム(ENR)、非変性のスチレンブタジエンゴム(SBR)、及びブタジエンゴム(BR)からなる群より選択される3種以上のゴムと、上記式(1)又は(2)で表される化合物により変性された変性スチレンブタジエンゴム(変性SBR)とを含有する。
【0017】
上記式(1)で表される化合物において、R、R及びRは、同一若しくは異なって、アルキル基、アルコキシ基、シリルオキシ基、アセタール基、カルボキシル基(−COOH)、メルカプト基(−SH)又はこれらの誘導体を表す。上記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基(好ましくは炭素数1〜3)等が挙げられる。上記アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、t−ブトキシ基等の炭素数1〜8のアルコキシ基(好ましくは炭素数1〜6、より好ましくは炭素数1〜4)等が挙げられる。なお、アルコキシ基には、シクロアルコキシ基(シクロヘキシルオキシ基等の炭素数5〜8のシクロアルコキシ基等)、アリールオキシ基(フェノキシ基、ベンジルオキシ基等の炭素数6〜8のアリールオキシ基等)も含まれる。
【0018】
上記シリルオキシ基としては、例えば、炭素数1〜20の脂肪族基、芳香族基が置換したシリルオキシ基(トリメチルシリルオキシ基、トリエチルシリルオキシ基、トリイソプロピルシリルオキシ基、ジエチルイソプロピルシリルオキシ基、t−ブチルジメチルシリルオキシ基、t−ブチルジフェニルシリルオキシ基、トリベンジルシリルオキシ基、トリフェニルシリルオキシ基、トリ−p−キシリルシリルオキシ基等)等が挙げられる。
【0019】
上記アセタール基としては、例えば、−C(RR′)−OR″、−O−C(RR′)−OR″で表される基を挙げることができる。前者としては、メトキシメチル基、エトキシメチル基、プロポキシメチル基、ブトキシメチル基、イソプロポキシメチル基、t−ブトキシメチル基、ネオペンチルオキシメチル基等が挙げられ、後者としては、メトキシメトキシ基、エトキシメトキシ基、プロポキシメトキシ基、i−プロポキシメトキシ基、n−ブトキシメトキシ基、t−ブトキシメトキシ基、n−ペンチルオキシメトキシ基、n−ヘキシルオキシメトキシ基、シクロペンチルオキシメトキシ基、シクロヘキシルオキシメトキシ基等を挙げることができる。R、R及びRとしては、省燃費性(転がり抵抗)を著しく改善できるという理由から、アルコキシ基、アルキル基が好ましい。
【0020】
上記式(1)で表される化合物において、R及びRのアルキル基としては、例えば、上記アルキル基と同様の基を挙げることができる。
【0021】
上記式(1)で表される化合物において、R及びRの環状エーテル基としては、例えば、オキシラン基、オキセタン基、オキソラン基、オキサン基、オキセパン基、オキソカン基、オキソナン基、オキセカン基、オキセト基、オキソール基等のエーテル結合を1つ有する環状エーテル基、ジオキソラン基、ジオキサン基、ジオキセパン基、ジオキセカン基等のエーテル結合を2つ有する環状エーテル基、トリオキサン基等のエーテル結合を3つ有する環状エーテル基等が挙げられる。なかでも、エーテル結合を1つ有する炭素数2〜7の環状エーテル基が好ましく、エーテル結合を1つ有する炭素数3〜5の環状エーテル基がより好ましい。また、環状エーテル基は環骨格内に不飽和結合を有していないことが好ましい。
【0022】
n(整数)としては、化合物の耐熱安定性という理由から1〜5が好ましい。更には、nは2〜4がより好ましく、3が最も好ましい。nが0であるとケイ素原子と窒素原子との結合が困難であり、nが6以上であると変性剤としての効果が薄れる。
【0023】
上記式(1)で表される化合物の具体例としては、3−アミノプロピルジメチルメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルエチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルジメチルエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルジメチルブトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジブトキシシラン、ジメチルアミノメチルトリメトキシシラン、2−ジメチルアミノエチルトリメトキシシラン、3−ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、4−ジメチルアミノブチルトリメトキシシラン、ジメチルアミノメチルジメトキシメチルシラン、2−ジメチルアミノエチルジメトキシメチルシラン、3−ジメチルアミノプロピルジメトキシメチルシラン、4−ジメチルアミノブチルジメトキシメチルシラン、ジメチルアミノメチルトリエトキシシラン、2−ジメチルアミノエチルトリエトキシシラン、3−ジメチルアミノプロピルトリエトキシシラン、4−ジメチルアミノブチルトリエトキシシラン、ジメチルアミノメチルジエトキシメチルシラン、2−ジメチルアミノエチルジエトキシメチルシラン、3−ジメチルアミノプロピルジエトキシメチルシラン、4−ジメチルアミノブチルジエトキシメチルシラン、ジエチルアミノメチルトリメトキシシラン、2−ジエチルアミノエチルトリメトキシシラン、3−ジエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、4−ジエチルアミノブチルトリメトキシシラン、ジエチルアミノメチルジメトキシメチルシラン、2−ジエチルアミノエチルジメトキシメチルシラン、3−ジエチルアミノプロピルジメトキシメチルシラン、4−ジエチルアミノブチルジメトキシメチルシラン、ジエチルアミノメチルトリエトキシシラン、2−ジエチルアミノエチルトリエトキシシラン、3−ジエチルアミノプロピルトリエトキシシラン、4−ジエチルアミノブチルトリエトキシシラン、ジエチルアミノメチルジエトキシメチルシラン、2−ジエチルアミノエチルジエトキシメチルシラン、3−ジエチルアミノプロピルジエトキシメチルシラン、4−ジエチルアミノブチルジエトキシメチルシラン、下記式(3)〜(10)で表される化合物等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、省燃費性(転がり抵抗)を著しく改善できるという理由から、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−ジエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、下記式(3)で表される化合物が好ましい。
【0024】
【化3】

【0025】
上記式(2)で表される化合物において、R、R及びRは、上記式(1)で表される化合物におけるR、R及びRと同様である。
【0026】
上記式(2)で表される化合物において、Rの環状エーテル基としては、上記式(1)で表される化合物におけるR及びRの環状エーテル基と同様の基が挙げられる。なかでも、エーテル結合を1つ有する炭素数2〜7の環状エーテル基が好ましく、エーテル結合を1つ有する炭素数2〜4の環状エーテル基がより好ましい。また、環状エーテル基は環骨格内に不飽和結合を有していないことが好ましい。
【0027】
p(整数)としては、化合物の耐熱安定性という理由から1〜5が好ましい。更には、pは2〜4がより好ましく、3が最も好ましい。pが0であると、化合物として不安定であり、量産が困難であり、pが6以上であると変性剤としての効果が薄れる。
【0028】
q(整数)としては、化合物の耐熱安定性という理由から1〜5が好ましい。更には、qは1〜3がより好ましく、1が最も好ましい。qが0であると、化合物として不安定であり、量産が困難であり、qが6以上であると変性剤としての効果が薄れる。
【0029】
上記式(2)で表される化合物の具体例としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(下記式(11)で表される化合物)、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、2−グリシドキシエチルメチルジメトキシシラン、2−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、2−グリシドキシエチルメチルジエトキシシラン、4−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、4−グリシドキシブチルメチルジメトキシシラン、4−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、4−グリシドキシブチルメチルジエトキシシラン、グリシドキシメチルトリメトキシシラン、グリシドキシメチルトリエトキシシラン、下記式(12)〜(15)で表される化合物等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、省燃費性(転がり抵抗)を著しく改善できるという理由から、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(下記式(11)で表される化合物)が好ましい。
【0030】
【化4】

【0031】
上記式(1)又は(2)で表される化合物(変性剤)によるスチレンブタジエンゴム(SBR)の変性方法としては、特公平6−53768号公報、特公平6−57767号公報等に記載されている方法等、従来公知の手法を用いることができる。例えば、SBRと変性剤とを接触させればよく、SBRを重合し、該重合体ゴム溶液中に変性剤を所定量添加する方法、SBR溶液中に変性剤を添加して反応させる方法等が挙げられる。
【0032】
変性されるスチレンブタジエンゴム(SBR)としては特に限定されず、タイヤ工業で一般的なものを使用できる。
【0033】
本発明のゴム組成物は、変性SBRを含有することにより、良好な耐摩耗性能、耐クラック性能、ウェットグリップ性能、転がり抵抗の低減を実現することができる。耐摩耗性能と耐クラック性能に関しては、特に、高性能(高扁平)タイヤや、乗用車でも高荷重車両用タイヤに使用される場合により良好な性能を発揮する。
【0034】
上記変性SBRのシス含量は、好ましくは35質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは25質量%以下である。シス含量が35質量%を超えると、押出し加工性が劣る傾向がある。上記変性SBRのシス含量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、更に好ましくは20質量%以上である。10質量%未満であると、耐摩耗性が悪化する傾向がある。
なお、シス含量(シス−1,4−結合ブタジエン単位量)は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定できる。
【0035】
上記変性SBRのビニル含量は、好ましくは70質量%以下、より好ましくは65質量%以下、更に好ましくは60質量%以下である。ビニル含量が70質量%を超えると、低発熱性が損なわれる傾向にある。上記変性SBRのビニル含量は、好ましくは45質量%以上、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは55質量%以上である。45質量%未満であると、耐摩耗性が充分に改善されない傾向がある。
なお、ビニル含量(1,2−結合ブタジエン単位量)は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定できる。
【0036】
ゴム成分100質量%中の変性SBRの含有量は、好ましくは15質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは25質量%以上である。15質量%未満であると、ウェットグリップ性能が低下し、さらに、転がり抵抗の低減を充分に図れない傾向がある。変性SBRの含有量は、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは45質量%以下、特に好ましくは43質量%以下である。60質量%を超えると、混練り加工性が著しく悪化する傾向がある。
【0037】
ゴム組成物に使用される変性SBR以外のゴム成分として、ジエン系ゴムが挙げられ、例えば、NR、ENR、BR、SBR、イソプレンゴム(IR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(X−IIR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリルニトリル(NBR)、イソモノオレフィンとパラアルキルスチレンとの共重合体のハロゲン化物等を使用できる。なかでも、ウェットグリップ性能と、環境性能(転がり抵抗の低減、石油資源枯渇への対応、CO排出量への配慮)と、耐久性能(耐クラック性能、耐摩耗性能)とを高次元でバランスよく改善できる点から、NR、ENR、BRを上記変性SBRと併用することが好ましく、NR、ENR、BR、SBRを上記変性SBRと併用することがより好ましい。
【0038】
NRとしては特に限定されず、例えば、SIR20、RSS♯3、TSR20等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。
【0039】
ゴム成分100質量%中のNRの含有量は、好ましくは7質量%以上、より好ましくは10質量%以上である。7質量%未満であると、破断強度が低下する傾向がある。NRの含有量は、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。30質量%を超えると、ウェットグリップ性能が低下する傾向がある。
【0040】
ENRとしては特に限定されず、市販のエポキシ化天然ゴムでも、天然ゴムをエポキシ化したものでも、液状エポキシ化天然ゴムでもよい。天然ゴムをエポキシ化する方法は、天然ゴムに過酢酸や過ギ酸などの有機過酸を反応させる方法などがあげられる。
【0041】
ENRのエポキシ化率は10モル%以上であることが好ましく、20モル%以上であることが好ましい。エポキシ化率が10モル%未満では、転がり抵抗の低減を充分に図れない傾向がある。また、エポキシ化率は50モル%以下であることが好ましく、30モル%以下であることがより好ましい。エポキシ化率が50モル%をこえると、混練り加工性が悪化する傾向がある。
【0042】
ゴム成分100質量%中のENRの含有量は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上である。1質量%未満であると、転がり抵抗の低減が充分に図れない傾向がある。ENRの含有量は、好ましくは7質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。7質量%を超えると、破断強度が低下する傾向がある。
【0043】
本発明のゴム組成物がENRを含有する場合には、良好な環境性能(転がり抵抗の低減、石油資源枯渇への対応、CO排出量への配慮)と共に、良好なウェットグリップ性能を得ることができる。また、変性SBRと、ENRを併用することにより、転がり抵抗の低減を効果的に行うことができる。
【0044】
BRとしては特に限定されず、例えば、日本ゼオン(株)製のBR1220、宇部興産(株)製のBR130B、BR150B等の高シス含有量のBR、宇部興産(株)製のVCR412、VCR617等のシンジオタクチックポリブタジエン結晶を含有するBR等を使用できる。BRのシス含量は特に限定されないが、耐摩耗性、耐クラック性能が良好であるという理由から、93質量%以上が好ましい。
【0045】
ゴム成分100質量%中のBRの含有量は、好ましくは17質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは25質量%以上である。17質量%未満であると、耐クラック性能が悪化する傾向がある。BRの含有量は、好ましくは43質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは38質量%以下である。43質量%を超えると、混練り加工性が悪化する傾向がある。
【0046】
SBR(非変性のスチレンブタジエンゴム)としては特に限定されず、例えば、乳化重合SBR(E−SBR)、溶液重合SBR(S−SBR)が挙げられるが、混練り加工性が良好であるという理由から、E−SBRが好ましい。
【0047】
SBRのシス含量は、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは15質量%以下である。シス含量が25質量%を超えると、押出し加工性が劣る傾向にある。SBRのシス含量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは13質量%以上である。13質量%未満であると、耐摩耗性が悪化する傾向がある。
なお、シス含量(シス−1,4−結合ブタジエン単位量)は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定できる。
【0048】
SBRのビニル含量は、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは15質量%以下である。ビニル含量が25質量%を超えると、低発熱性が損なわれる傾向がある。SBRのビニル含量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは13質量%以上である。
13質量%未満であると、耐摩耗性が充分に改善されない傾向がある。
なお、ビニル含量(1,2−結合ブタジエン単位量)は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定できる。
【0049】
ゴム成分100質量%中のSBRの含有量は、好ましくは17質量%以上、より好ましくは20質量%以上である。17質量%未満であると、ウェットグリップ性能、混練り加工性が悪化する傾向がある。SBRの含有量は、好ましくは43質量%以下、より好ましくは35質量%以下である。43質量%を超えると、転がり抵抗の低減が見られない傾向がある。
【0050】
ゴム成分100質量%中の変性SBR、NR、ENR、BR、SBRの含有量がそれぞれ上記好ましい範囲である場合には、ウェットグリップ性能と、環境性能(転がり抵抗の低減、石油資源枯渇への対応、CO排出量への配慮)と、耐久性能(耐クラック性能、耐摩耗性能)とをより高次元でバランスよく改善することができる。
【0051】
本発明では、ゴム成分100質量%中の変性SBR、NR、ENR、BR、及びSBRの合計含有量が好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは100質量%である。合計含有量が80質量%未満であると、充分なゴム物性が得られないおそれがある。
【0052】
本発明のゴム組成物はシリカを含有することが好ましい。これにより、ウェットグリップ性能の向上、転がり抵抗の低減を図ることができる。シリカとしては特に限定されず、例えば、乾式法シリカ(無水ケイ酸)、湿式法シリカ(無水ケイ酸)等が挙げられるが、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。シリカは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0053】
上記シリカの窒素吸着比表面積(NSA)は、好ましくは100m/g以上、より好ましくは120m/g以上である。100m/g未満であると、補強性が充分ではなく、タイヤの耐摩耗性が悪化する傾向がある。また、シリカのNSAは、好ましくは300m/g以下、より好ましくは250m/g以下である。300m/gを超えると、シリカの分散性が低下し、発熱が悪化する傾向がある。
なお、シリカの窒素吸着比表面積は、ASTM D3037−81に準じてBET法で測定される値である。
【0054】
本発明のゴム組成物がシリカを含有する場合、シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは20質量部以上、より好ましくは30質量部以上、更に好ましくは40質量部以上、最も好ましくは45質量部以上である。20質量部未満では、ウェットグリップ性能の向上、転がり抵抗の低減の両立が図れない傾向がある。該シリカの含有量は、好ましくは60質量部以下、より好ましくは55質量部以下以下である。60質量部を超えると、混練り時の粘度が上昇し、加工性が悪化する傾向がある。
【0055】
本発明のゴム組成物には、シリカとともに、シランカップリング剤を含有することが好ましい。
シランカップリング剤としては、ゴム工業において、従来からシリカと併用される任意のシランカップリング剤を使用することができ、例えば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4−トリエトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4−トリメトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(4−トリエトキシシリルブチル)トリスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(4−トリメトキシシリルブチル)トリスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4−トリエトキシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4−トリメトキシシリルブチル)ジスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィドなどのスルフィド系が挙げられる。また、メルカプト系、ビニル系、グリシドキシ系、ニトロ系、クロロ系なども挙げられる。なかでも、シランカップリング剤の補強性効果と加工性という点から、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドを用いることが好ましい。これらのシランカップリング剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0056】
シランカップリング剤の含有量は、シリカの含有量100質量部に対して、3質量部以上が好ましく、7質量部以上がより好ましい。3質量部未満では、破壊強度が大きく低下する傾向がある。また、該シランカップリング剤の含有量は、15質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましい。15質量部を超えると、シランカップリング剤を添加することによる破壊強度の増加や転がり抵抗低減などの効果が得られない傾向がある。
【0057】
本発明のゴム組成物は、カーボンブラックを含有することが好ましい。これにより、ウェットグリップ性能、耐摩耗性の向上を両立できる。使用できるカーボンブラックとしては、GPF、FEF、HAF、ISAF、SAFなどが挙げられるが、特に限定されない。
【0058】
カーボンブラックのチッ素吸着比表面積(NSA)は80m/g以上が好ましく、100m/g以上がより好ましい。80m/g未満では、グリップ性能及び耐摩耗性が低下する傾向がある。また、カーボンブラックのチッ素吸着比表面積は280m/g以下が好ましく、200m/g以下がより好ましい。280m/gを超えると、良好な分散が得られにくく、耐摩耗性が低下する傾向がある。
なお、カーボンブラックのチッ素吸着比表面積は、JIS K6217のA法によって求められる。
【0059】
本発明のゴム組成物がカーボンブラックを含有する場合、カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは20質量部以上である。10質量部未満では、耐摩耗性が悪化する傾向がある。また、該カーボンブラックの含有量は、好ましくは35質量部以下、より好ましくは30質量部以下である。35質量部を超えると、加工性、低燃費性(転がり抵抗)が悪化する傾向がある。
【0060】
本発明のゴム組成物がカーボンブラック及びシリカを含有する場合、カーボンブラックとシリカの割合(シリカ/カーボンブラック)は、好ましくは1.5以上、より好ましくは1.67以上である。1.5未満では、環境性能(転がり抵抗の低減、石油資源枯渇への対応、CO排出量への配慮)が充分向上できない傾向がある。また、シリカ/カーボンブラックは、好ましくは2.5以下、より好ましくは2.25以下である。2.5を超えると、転がり抵抗とグリップ性能のバランスが悪化するおそれがある。
【0061】
本発明のゴム組成物は、オイル又は可塑剤を含むことが好ましい。これにより、混練り及び押出し加工性が良好となる。オイルとしては、例えば、パラフィン系プロセスオイル、アロマ系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイルなどを用いることができる。なかでも、変性SBRとシリカの相溶性が向上するという理由から、パラフィン系プロセスオイルが好適に用いられる。パラフィン系プロセスオイルとして、具体的には出光興産(株)製のPW−32、PW−90、PW−150、PS−32などが挙げられる。また、アロマ系プロセスオイルとして、具体的には出光興産(株)製のAC−12、AC−460、AH−16、AH−24、AH−58などが挙げられる。
【0062】
上記ゴム組成物がオイル又は可塑剤を含有する場合、これらの配合量は、ゴム成分100質量部に対して、10質量部以上が好ましく、20質量部以上がより好ましい。10質量部未満であると、混練り加工性が悪化する傾向がある。一方、上記配合量は、ゴム成分100質量部に対して、35質量部以下が好ましく、25質量部以下がより好ましい。35質量部を超えると、発熱が増大し、低燃費性が悪化するおそれがある。
【0063】
本発明のゴム組成物には、前記ゴム成分、シリカ、シランカップリング剤、カーボンブラック、オイル、可塑剤以外にも、ゴム組成物の製造に一般に使用される配合剤、例えば、クレー等の補強用充填剤、酸化亜鉛、ステアリン酸、各種老化防止剤、ワックス、硫黄などの加硫剤、加硫促進剤などを適宜配合することができる。
【0064】
加硫促進剤としては、N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(TBBS)、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)、N,N’−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(DZ)、メルカプトベンゾチアゾール(MBT)、ジベンゾチアゾリルジスルフィド(MBTS)、ジフェニルグアニジン(DPG)などが挙げられる。なかでも、熱的に安定であり、ゴム組成物中への分散性に優れるという理由からTBBSが好ましく、TBBSとDPGを併用することがより好ましい。
【0065】
本発明のゴム組成物の製造方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、前記各成分をオープンロール、バンバリーミキサーなどのゴム混練装置を用いて混練し、その後加硫する方法等により製造できる。
【0066】
本発明のゴム組成物は、タイヤの各部材に使用できるが、なかでも、トレッドに好適に適用できる。トレッドとしては、単層構造のトレッドに使用できるが、多層構造(キャップトレッド及びベーストレッドからなる二層構造など)のキャップトレッドにも使用できる。トレッドはシート状にしたものを、所定の形状に張り合わせる方法、又は2本以上の押出し機に装入して押出し機のヘッド出口で2層に形成する方法により作製できる。
【0067】
本発明の空気入りタイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法によって製造される。すなわち、必要に応じて各種添加剤を配合したゴム組成物を、未加硫の段階でトレッド形状に合わせて押し出し加工し、タイヤ成型機上にて通常の方法にて成形し、他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、未加硫タイヤを形成した後、加硫機中で加熱加圧してタイヤを製造することができる。
【0068】
また、本発明のタイヤは、乗用車用タイヤ、バス用タイヤ、トラック用タイヤ等として好適に用いられる。
【実施例】
【0069】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0070】
以下、実施例及び比較例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
NR:テッフビンハーグ社製のRSS#3
BR:宇部興産(株)製のBR150B(シス含量93質量%)
SBR:日本ゼオン製のSBR1502(シス含量:14質量%、ビニル含量:15質量%、非変性)
変性SBR:住友化学(株)製の変性スチレンブタジエンゴム(シス含量:28質量%、ビニル含量56質量%、R、R及びR=−OCH、R及びR=−CHCH、n=3)
ENR:Guthrie Polymer SDN,BHD社製のENR25(エポキシ化率25モル%)
カーボンブラック:キャボットジャパン(株)製のショウブラックN220(NSA125m/g)
シリカ:デグッサ社製のウルトラジル(NSA210m/g)
シランカップリング剤:デグッサ社製のSi266(ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド)
ミネラルオイル:出光興産(株)製のPS−32(パラフィン系プロセスオイル)
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華1号
ステアリン酸:日油(株)製のステアリン酸「椿」
老化防止剤:住友化学(株)製のアンチゲン6C(N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン)
ワックス:大内新興化学工業(株)製のサンノックN
硫黄:軽井沢硫黄(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤(1):大内新興化学工業(株)製のノクセラーCZ
加硫促進剤(2):大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS
加硫促進剤(3):大内新興化学工業(株)製のノクセラーDPG
【0071】
実施例1〜17及び比較例1〜8
表1〜3に示す配合処方に従い、1.7Lバンバリーミキサーを用いて、硫黄及び加硫促進剤以外の材料を150℃の条件下で5分間混練りし、混練り物を得た。次に、得られた混練り物に硫黄及び加硫促進剤を添加し、オープンロールを用いて、80℃の条件下で3分間練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。得られた未加硫ゴム組成物を170℃で15分間、2mm厚の金型でプレス加硫し、加硫ゴム組成物を得た。
【0072】
(転がり抵抗性能)
粘弾性スペクトロメーターVES((株)岩本製作所製)を用いて、温度50℃、初期歪10%、動歪2%、周波数10Hzの条件下で、各加硫ゴム組成物のtanδを測定し、基準配合(比較例1(表1)又は比較例4(表2、3))の転がり抵抗指数を100として、下記計算式により転がり抵抗性能をそれぞれ指数表示した。転がり抵抗指数が小さいほど、転がり抵抗が低く、転がり抵抗性能が優れていることを示す。
(転がり抵抗指数)=(各配合のtanδ/基準配合のtanδ)×100
【0073】
(耐摩耗性能)
ランボーン摩耗試験機にて、負荷荷重2.5kg、温度20℃、スリップ率40%、試験時間2分間の条件下で、各加硫ゴム組成物から得られたランボーン摩耗試験用加硫ゴム試験片を摩耗させて、ランボーン摩耗量を測定し、各配合の容積損失量をそれぞれ計算し、基準配合(比較例1(表1)又は比較例4(表2、3))の耐摩耗性能指数を100として、下記計算式により耐摩耗性能をそれぞれ指数表示した。耐摩耗性能指数が大きいほど、耐摩耗性能が優れていることを示す。
(耐摩耗性能指数)=(基準配合の容積損失量/各配合の容積損失量)×100
【0074】
(ウェットグリップ性能)
スタンレー社製のポータブルスキッドテスターを用いて、ASTM E303−83の方法にしたがって、各加硫ゴム組成物の最大摩擦係数を測定し、基準配合(比較例1(表1)又は比較例4(表2、3))のウェットグリップ性能指数を100として、下記計算式で指数表示した。ウェットグリップ性能指数が大きいほどウェットグリップ性能が優れる。
(ウェットグリップ性能指数)=(各配合の数値/基準配合の数値)×100
【0075】
(耐クラック性能)
JIS K 6252「加硫ゴムおよび熱可塑性ゴム―引裂強さの求め方」に準じて、各加硫ゴム組成物から成形した切り込み無しのアングル形試験片を用いることにより、引裂強さ(N/mm)を測定し、基準配合(比較例1(表1)又は実施例2(表2、3))の引裂強度指数を100とし、下記計算式により、引裂強度を指数表示した。引裂強度指数が大きいほど、引裂強度が大きく、耐クラック性に優れることを示す。
(引裂強度指数)=(各配合の引裂強度/基準配合の引裂強度)×100
【0076】
【表1】

【0077】
【表2】

【0078】
【表3】

【0079】
表1より、変性SBR、NR、BR、ENRの4種類のゴム成分を含有する実施例1では、変性SBRと、NR、BR、ENRのうち2種類のゴム成分とを含有する比較例1〜3と比較して、転がり抵抗性能、耐摩耗性能、ウェットグリップ性能、耐クラック性能の全てにおいて優れていた。また、NR、ENRを含有することにより、石油資源枯渇への対応、CO排出量への配慮も行うことができる。
【0080】
表2、3より、変性SBR、NR、BR、ENR、SBRの5種類のゴム成分を含有する実施例は、上記5種類のゴム成分を含有しない比較例と比較して、転がり抵抗性能、耐摩耗性能、ウェットグリップ性能、耐クラック性能の全てにおいて優れていた。また、NR、ENRを含有することにより、石油資源枯渇への対応、CO排出量への配慮も行うことができる。また、NR量が多くなると、耐クラック性能が低下し、BR量が多くなると、耐クラック性能が向上する傾向が見られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然ゴム、エポキシ化天然ゴム、非変性のスチレンブタジエンゴム、及びブタジエンゴムからなる群より選択される3種以上のゴムと、下記式(1)又は(2)で表される化合物により変性された変性スチレンブタジエンゴムとを含有するゴム組成物。
【化1】

(式中、R、R及びRは、同一若しくは異なって、アルキル基、アルコキシ基、シリルオキシ基、アセタール基、カルボキシル基、メルカプト基又はこれらの誘導体を表す。R及びRは、同一若しくは異なって、水素原子、アルキル基又は環状エーテル基を表す。nは整数を表す。)
【化2】

(式中、R、R及びRは、同一若しくは異なって、アルキル基、アルコキシ基、シリルオキシ基、アセタール基、カルボキシル基、メルカプト基又はこれらの誘導体を表す。Rは、環状エーテル基を表す。p及びqは整数を表す。)
【請求項2】
ゴム成分100質量%中、天然ゴムを7〜30質量%、エポキシ化天然ゴムを1〜7質量%、変性スチレンブタジエンゴムを15〜60質量%、ブタジエンゴムを17〜43質量%含有する請求項1記載のゴム組成物。
【請求項3】
ゴム成分100質量%中の天然ゴム、エポキシ化天然ゴム、変性スチレンブタジエンゴム、非変性のスチレンブタジエンゴム、及びブタジエンゴムの合計含有量が100質量%である請求項1又は2記載のゴム組成物。
【請求項4】
ゴム成分100質量部に対して、シリカを20質量部以上含有する請求項1〜3のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項5】
エポキシ化天然ゴムのエポキシ化率が10〜50モル%である請求項1〜4のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項6】
前記ゴム組成物がトレッド用ゴム組成物である請求項1〜5のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のゴム組成物を用いて作製したトレッドを有する空気入りタイヤ。

【公開番号】特開2011−79883(P2011−79883A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−230890(P2009−230890)
【出願日】平成21年10月2日(2009.10.2)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】