説明

ゴム組成物

【課題】本発明の目的は、耐摩耗性と低発熱化を実現することで、高耐久性を有し、摩擦係数を容易に調整することができ、かつ硬度の高いゴム組成物を提供する。
【解決手段】ゴム弾性を有する高分子材料からなるゴム組成物であって、該ゴム組成物には、該高分子材料100重量部に対して、平均一次粒子径が1〜50μφのコポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレン・テレフタルアミドの粉体が10〜50重量部混合分散されており、かつ、該粉体に、該粉体の重量に対してアミド系溶剤が0.0001重量%以上0.01重量%未満付着していることを特徴とするゴム組成物とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤやベルト、ホースに好適に用いられる、耐久性を向上させたゴム組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ゴム補強や性能向上を狙ってゴム組成物にアラミド短繊維やアラミド粒子を配合することは良く知られた方法である。
例えば、特許文献1に例示されるようにアラミド短繊維をゴムに配合し、ゴムの耐摩耗性を向上させることが例示される。しかしながら、アラミド繊維はゴム中分散性が悪く、10部以上配合しようとすると、混練に時間が多くかかったり、品質にバラツキが生じたりする。
【0003】
また、特許文献2には、ゴム組成物にアラミド粒子を配合することが開示されているが、実質メタアラミド粒子を用いて防振特性を向上させることが記載されているものの、本発明者が検討したところ、同特許文献に記されたゴム組成物は、耐久性や摩擦調整の効果、硬度が十分なものではない。
特許文献3にもゴム組成物にアラミド粒子を配合することが開示されている。しかしながら、同特許文献発明では、耐摩耗性が発現する10部以下での配合であり、耐久性や摩擦調整効果、ゴム組成物の硬度が得られるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3464938号公報
【特許文献2】特開平08−188677号公報
【特許文献3】特開2008−150436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、耐摩耗性と低発熱化を実現することで、高耐久性を有し、摩擦係数を容易に調整することができ、かつ硬度の高いゴム組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らが検討した結果、上記課題は、特定の溶剤を付着させたとき達成できることを見出した。かくして本発明によれば、ゴム弾性を有する高分子材料からなるゴム組成物であって、該ゴム組成物には、該高分子材料100重量部に対して、平均一次粒子径が1〜50μφのコポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレン・テレフタルアミドの粉体が10〜50重量部混合、分散されており、かつ、該粉体に、該粉体の重量に対してアミド系溶剤が0.0001重量%以上0.01重量%未満付着していることを特徴とするゴム組成物が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明のゴム組成物においては、ゴム弾性を有する高分子材料に、アミド系溶剤が少量含まれるコポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレン・テレフタルアミドからなる平均一次粒子径が1〜50μφの粉体を添加されていることによって、ゴムの圧縮側損失正接(tanδ)を低減し、これにより低発熱を実現している。また、本発明のゴム組成物においては、上記粉体が含有することによって、耐摩耗性が向上し、摩擦係数を下げる効果があり、摩擦伝動、しゅう動性を制御できるとともに、ゴム組成物の硬度が向上するため、形態保持性にも優れる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明で使用するゴム弾性を有する高分子材料とは、ゴム弾性を発揮できる高分子材料であれば、特に規定するものではない。例えば、アクリルゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ウレタンゴム、エチレン−プロピレンゴム、エピクロロヒドリンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、クロロプレンゴム、シリコーンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、多硫化ゴム、天然ゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、フッ素ゴムなどが挙げられ、これらを単独で用いても良いし、ブレンドして用いても良い。
【0009】
なお、これらゴムには、主成分であるゴム以外に、カーボンブラック、シリカ等の無機充填剤、クマロン樹脂、フェノール樹脂等の有機充填剤、ナフテン系オイル等の軟化剤、老化防止剤、加硫助剤、加工助剤等を必要に応じて含ませてもよい。特に無機充填剤を添加したゴム組成物を用いることが本発明の効果をより得ることができる。
【0010】
本発明で用いる粉体の粒子はゴム組成物によって1〜50μφの間で調整されるものであるが、分散性がよく、かつtanδを下げやすい粒径は1〜30μφの範囲である。また、製造時の難易を考えると4〜30μφの範囲がさらに好ましい。
【0011】
本発明においては、アミド系溶剤はコポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレン・テレフタルアミド粉体に0.0001重量%以上0.01重量%未満の範囲で含まれるが、好ましくは0.0001〜0.005重量%、さらに好ましくは0.0001〜0.001重量%、特に好ましくは0.0001〜0.0005重量%の範囲である。アミド系溶剤が少なすぎると、ゴム混練時の分散及び、tanδ低減効果に直接関与すると考えられるゴムとのインタラクションを損なう。逆にアミド系溶剤が多すぎると、ゴムの種類によってはゴムを膨潤させてしまい、ゴム物性を変質させてしまう場合があり、好ましくない。
【0012】
本発明のゴム組成物はゴム弾性を発揮できる高分子材料すなわちゴムポリマー100重量部に対して上記粉体を10〜50重量部配合することによって得られる。10重量部より少なければ、耐摩耗性向上において、十分な効果を得られない。また50重量部よりも多ければ、混練りする工程において粉体が分散しにくいというデメリットがある。上記粉体の配合量は、高分子材料100重量部に対して好ましくは11〜50重量部であり、より好ましくは11〜30重量部である。
【0013】
本発明で得られるゴム組成物は前述のアミド系溶剤を0.0001重量%以上0.01重量%未満含有または付着するコポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレン・テレフタルアミドからなる粉体を含むことによって、優れた耐久性を示す。具体的に述べると、該粉体を含まないゴム組成物に比べて、ゴムの摩擦係数低減、発熱性低減(tanδ低減)、耐摩耗性向上、硬度向上の効果が得られる。これはゴムよりも高い弾性率を有するコポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレン・テレフタルアミドが通常繊維化する際に高延伸・高配向する前に、粉体状にされ、なおかつその中にアミド系溶剤が0.0001重量%以上0.01重量%未満含まれていることによって、ゴムマトリックスに均一に分散し、実現される。
【0014】
また、本発明ではアラミドの中でもコポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレン・テレフタルアミドを用いることでより高い効果を得る。アラミドでよく知られているのはパラ系ではポリパラフェニレンテレフタルアミドであり、メタ系ではポリメタフェニレンイソフタルアミドであるが、これらと比較すると同じ粒子径の場合、コポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレン・テレフタルアミド粉体が最も高い効果を得ることが分かっている。
【0015】
これらの表面はアミド系溶剤が染み出すことによって十分な効果を得るが、ゴムとのインタラクションをさらに高めることでより高い効果を得る。処理剤としてはゴムマトリックスの種類にもよるが、スチレン・ブタジエンの共重合ポリマー、ウレタンポリマーなどが好適に用いられる。また、通常ゴムと繊維の接着剤として用いられるレゾルシン・ホルマリン・ラテックス(RFL)でもよい。また、アミド系溶剤の含有量または付着量が50重量部に近くなる場合は、ポリエチレンワックスで処理することにより、粉体の分散性が非常に良くなる。
【0016】
本発明で用いられるコポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレン・テレフタルアミドからなる粉体は紡糸用のコポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレン・テレフタルアミドからなるドープを半乾半湿式紡糸法により凝固液中に押し出し、凝固液から凝固糸として引き取ることで製造される。
【0017】
ドープの溶媒は、アミド系溶剤を用い、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルイミダゾリジノン等を例示することができるが、取り扱い性や安定性等の点から、N−メチル−2−ピロリドンが最も優れている。
【0018】
よって、本発明において、アミド系溶剤を0.0001重量%以上0.01重量%未満付着または含有させたコポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレン・テレフタルアミド粉体とする方法としては、上記の凝固糸の水洗工程において、水洗の条件を調整することによって容易に製造することができる。水洗方法は、均一に水洗する方法として、0.1〜1%のアミド系溶剤に浸漬し引き上げる方法や、ウォータージェットで吹き付ける方法などが好ましく例示される。
【0019】
製造された凝固糸は水洗され、ミルによって1〜50μmに粉砕されることで、コポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレン・テレフタルアミド粉体製造することができる。また、必要に応じ、さらに得られた粉体を水洗しても良い。
【0020】
コポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレン・テレフタルアミドからなるドープから凝固液に押し、凝固糸を引き取る半乾半湿式紡糸法については、さらに、特公平1−15605号公報、特公平1−15606号公報に記載された方法を採用することができる。
【0021】
上記方法により製造された粉体は、公知の方法によりゴム弾性を有する高分子材料に配合することによって、本発明のゴム組成物を製造することができる。
また、本発明によって得られたゴム組成物は、タイヤ、ベルト、ホースなどの高耐久性が求められる用途に用いることで、その性能を十分に発揮することができる。その際、タイヤ、ベルト、ホースの製造方法は、従来公知の方法を用いることができる。
【実施例】
【0022】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
なお、実施例中の各評価項目の測定値は下記の測定方法にしたがって求めた。
【0023】
(1)アミド系溶剤付着量
コポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレン・テレフタルアミド樹脂を熱分解GCMSでアミド系溶剤を定量した。
【0024】
(2)分散性
ゴムコンパウンドを混練後、1mm厚のシートに目視でフィラーの分散性を判定。均一分散したものを○、1m中に1〜5個の凝集物が観察されたら△、6個以上で×とした。
【0025】
(3)摩擦係数、耐磨耗性試験
各ゴム組成物を160℃×20分の条件で加硫して得られた厚さ7mmのゴムシートから、幅5mm、長さ15mmのブロックを切り出して試料とした。オリエンテック株式会社製のピンオンディスク摩擦摩耗試験機を用い荷重5Kg、周速100rpm条件下、ステンレス板上回転させたときの摩擦係数を測定した。同様のサンプル形状、装置で、ディスク側を320番のサンドペーパーに替えて回転摩耗させ、摩耗量を測定した。摩耗量をアラミド粉体添加なしのサンプルを100とする比をインデックス表示した。このインデックスが低い方が、耐磨耗性が良い。
【0026】
(4)ゴム組成物硬度
各ゴム組成物を160℃×20分の条件で加硫して得られた厚さ7mmのゴムシートから、幅5mm、長さ15mmのブロックを切り出して試料とした。古里精機製作所製の硬度計を用いてゴムサンプルの硬さを測定し、形態保持性を評価した。硬度測定中に形状変化を起こした物を×、形態に変化が見られなかった物を○とした。
【0027】
(5)損失正接(tanδ)
耐磨耗性試験と同様の厚さ7mm、幅5mm、長さ15mmのブロックを圧縮測定用チャックに挟み、オリエンテック株式会社製粘弾性測定装置を用い、荷重:1200gf、動的歪:10%、周波数:10Hz、測定温度:20℃と100℃の条件下で、ゴム組成物の損失正接(tanδ)を測定した。
【0028】
(6)判定
分散性が△〜○、摩擦係数、耐磨耗性、硬度、損失正接(tanδ)がPPOPTA粉体添加なしのサンプルに比べて10%以上改善したものを○とした。
【0029】
[実施例1〜7、比較例2〜6]
特公平1−15605号公報実験例1と同様の方法により、コポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレン・テレフタルアミドのN−メチル−2−ピロリドン(以下NMPと称することがある)を溶剤としたドープ(濃度6%)を作成し、これを特公平1−15605号公報の実施例実験例1に記載の半乾半湿式紡糸法により1%のN−メチル−2−ピロリドン水溶液の凝固液中に1000ホールの紡糸口金から押し出し、10分間凝固液に浸漬させた後、凝固液から単繊維径100μφの凝固糸として引き取り、水層中の凝固糸を落とし、水に浸漬した凝固糸を水と共にミルに投入し30分間粉砕し、さらに水を交換して1時間洗浄し、4.9μφサイズのコポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレン・テレフタルアミド粉体TN−P1を作成した。また、ミルの粉砕時間、洗浄時間を調整することにより、さらに表1に記載のTN−P2からTN−P8を作成した。評価で用いたゴム組成物中の各成分の配合量と、上記粉体の分散性、ゴム組成物の摩擦係数、摩耗性、損失正接(tanδ)、硬度の測定結果を表2に示す。
【0030】
[比較例1]
コポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレン・テレフタルアミド粉体を添加せずに前述と同様のサンプルを作成した。ゴム組成物中の各成分の配合量と、上記粉体の分散性、ゴム組成物の摩擦係数、摩耗性、損失正接(tanδ)試験結果を表2に示す。
【0031】
【表1】

【0032】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明によれば、耐摩耗性と低発熱による高耐久性を有し、摩擦係数を容易に調整することのできるゴム組成物を提供することができる。このため、このゴム組成物を使用することにより、優れた耐久性や用途に適した摩耗係数を有するタイヤやベルト、ホースが得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム弾性を有する高分子材料からなるゴム組成物であって、該ゴム組成物には、該高分子材料100重量部に対して、平均一次粒子径が1〜50μφのコポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレン・テレフタルアミドの粉体が10〜50重量部混合分散されており、かつ、該粉体に、該粉体の重量に対してアミド系溶剤が0.0001重量%以上0.01重量%未満付着していることを特徴とするゴム組成物。
【請求項2】
アミド系溶剤がN−メチル−2−ピロリドンである請求項1記載のゴム組成物。
【請求項3】
請求項1または2のいずれかに記載のゴム組成物で製造されたタイヤ、ベルト、またはホース。

【公開番号】特開2012−162611(P2012−162611A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−22756(P2011−22756)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【出願人】(303013268)帝人テクノプロダクツ株式会社 (504)
【Fターム(参考)】