説明

ゴム組成物

【課題】シリカの分散性の向上および転がり抵抗の低減がされたゴム組成物およびそのゴム組成物をタイヤのトレッドゴムに用いる空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】ジエン系ゴムと、シリカと、硫黄含有シランカップリング剤と、アミノ酸と、尿素とを含み、前記ジエン系ゴム100質量部に対して、前記シリカを20〜120質量部含有し、前記シリカ100質量部に対して、前記硫黄含有シランカップリング剤を3〜15質量部と、前記アミノ酸を0.5〜10質量部と、前記尿素を0.25〜5.0質量部含有し、かつ、前記尿素が、0.5〜50質量%尿素水溶液として、前記シリカ100質量部に対して0.5〜10質量部混合されるゴム組成物およびこのゴム組成物をタイヤのトレッドゴムに用いる空気入りタイヤ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はゴム組成物に関する。より詳細には、本発明はタイヤ用ゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤの転がり抵抗を低減する手法として、シリカを配合したゴム組成物を用いることが知られているが、カーボンブラックと対比すると、シリカはゴム分子に対する親和性が高くないため、補強性や耐摩耗性が劣る。
【0003】
そこで、シリカのゴム分子に対する親和性を高くし、シリカの分散性を向上するため、シランカップリング剤を併用することが一般的である。
【0004】
ところが、シリカとシランカップリング剤とのカップリング反応(シラニゼーション)が不十分であると、シリカの良好な分散性は得られず、また、カップリング反応が過剰であると、ゴム焼けを招いて品質(特に、補強性)が低下するという問題があった。
【0005】
このような問題に対し、アミノ酸を配合することによって、シリカの分散性を向上させたゴム組成物が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−19098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、さらなるシリカの分散性の向上および転がり抵抗の低減がされたゴム組成物およびそのゴム組成物をタイヤのトレッドゴムに用いる空気入りタイヤが求められていた。
【0008】
そこで、本発明は、シリカの分散性の向上および転がり抵抗の低減がされたゴム組成物およびそのゴム組成物をタイヤのトレッドゴムに用いる空気入りタイヤを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、ジエン系ゴムと、シリカと、硫黄含有シランカップリング剤とを含むゴム組成物において、アミノ酸および尿素をさらに含み、その尿素が水溶液の状態で混合されるものであると、シリカの分散性の向上および転がり抵抗の低減がされたゴム組成物およびそのゴム組成物をタイヤのトレッドゴムに用いる空気入りタイヤを提供することができることを知得した。
【0010】
すなわち、本発明は、以下に掲げるゴム組成物およびそのゴム組成物をタイヤのトレッドゴムに用いる空気入りタイヤを提供する。
(1)ジエン系ゴムと、シリカと、硫黄含有シランカップリング剤と、アミノ酸と、尿素とを含み、
前記ジエン系ゴム100質量部に対して、前記シリカを20〜120質量部含有し、
前記シリカ100質量部に対して、前記硫黄含有シランカップリング剤を3〜15質量部と、前記アミノ酸を0.5〜10質量部と、前記尿素を0.25〜5.0質量部含有し、かつ、
前記尿素が、0.5〜50質量%尿素水溶液として、前記シリカ100質量部に対して0.5〜10質量部混合されるゴム組成物。
(2)前記(1)に記載のゴム組成物をタイヤのトレッドゴムに用いる空気入りタイヤ。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、シリカの分散性の向上および転がり抵抗の低減がされたゴム組成物およびそのゴム組成物をタイヤのトレッドゴムに用いる空気入りタイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明のタイヤの実施態様の一例を表すタイヤの部分断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[ゴム組成物]
本発明のゴム組成物は、「(1)ジエン系ゴムと、シリカと、硫黄含有シランカップリング剤と、アミノ酸と、尿素とを含み、前記ジエン系ゴム100質量部に対して、前記シリカを20〜120質量部含有し、前記シリカ100質量部に対して、前記硫黄含有シランカップリング剤を3〜15質量部と、前記アミノ酸を0.5〜10質量部と、前記尿素を0.25〜5.0質量部含有し、かつ、前記尿素が、0.5〜50質量%尿素水溶液として、前記シリカ100質量部に対して0.5〜10質量部混合されるゴム組成物」である。
【0014】
なお、アミノ酸と尿素との併用によって、本発明の作用効果が奏されるメカニズムの詳細は不明であるが、アミノ酸が固有に持つ等電点ではシラニゼーション促進効果に限界があるところ、尿素水溶液とともに配合することによって、アミノ酸のカルボキシ基やヒドロキシ基と反応し、酸が中和することによって、見かけ上の等電点を高くすることによって、シランカップリング剤の加水分解を早め、シリカの分散を促進しているものと考えている。また、尿素が単独で混合されても効果がなく、尿素水溶液として混合されることにより、本発明の効果が達成できると考えている。ただし、本発明の作用効果は、このメカニズムによるものに限定されるものではない。
【0015】
以下、各成分について詳細に説明する。
〈ジエン系ゴム〉
本発明のゴム組成物に含有するジエン系ゴムは、主鎖に二重結合を有するものであれば特に限定されず、その具体例としては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体ゴム(EPDM)、スチレン−イソプレンゴム、イソプレン−ブタジエンゴム、ニトリルゴム、水添ニトリルゴム等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0016】
これらのうち、ウェット性能と補強性能とのバランスが取れるという理由から、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)を用いるのが好ましく、これらを併用するのがより好ましい。
【0017】
ジエン系ゴムとしてスチレン・ブタジエンゴム(SBR)およびブタジエンゴム(BR)を併用する場合には、ジエン系ゴム100質量部中、SBRが50〜90質量部であることが好ましく、60〜85質量部であることがより好ましい。この範囲内であると、加硫後のゴム組成物の一般的物性がより良好なものとなる。
【0018】
〈シリカ〉
本発明のゴム組成物に含有するシリカは特に限定されず、タイヤ等の用途でゴム組成物に配合されている従来公知の任意のシリカを用いることができる。
【0019】
前記シリカとしては、具体的には、例えば、ヒュームドシリカ、焼成シリカ、沈降シリカ、粉砕シリカ、溶融シリカ、コロイダルシリカ等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0020】
本発明においては、前記シリカの含有量は、前記ジエン系ゴム100質量部に対してシリカを20〜120質量部であり、得られるタイヤの耐摩耗性が良好となり、補強性指数すなわち転がり抵抗性能のバランスが良好となるため、40〜100質量部であるのがより好ましい。
【0021】
〈硫黄含有シランカップリング剤〉
本発明のゴム組成物に含有する硫黄含有シランカップリング剤は特に限定されず、タイヤ等の用途でゴム組成物に配合されている従来公知の任意のシランカップリング剤を用いることができる。
【0022】
前記シランカップリング剤としては、具体的には、例えば、3−トリメトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイル−テトラスルフィド、トリメトキシシリルプロピル−メルカプトベンゾチアゾールテトラスルフィド、トリエトキシシリルプロピル−メタクリレート−モノスルフィド、ジメトキシメチルシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイル−テトラスルフィド、ビス−[3−(トリエトキシシリル)−プロピル]テトラスルフィド、ビス−[3−(トリメトキシシリル)−プロピル]テトラスルフィド、ビス−[3−(トリエトキシシリル)−プロピル]ジスルフィド、3−メルカプトプロピル−トリメトキシシラン、3−メルカプトプロピル−トリエトキシシラン等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0023】
本発明においては、前記硫黄含有シランカップリング剤の含有量は、前記シリカ100質量部に対して3〜15質量部であり、得られるタイヤの耐摩耗性が良好となり、補強性指数すなわち転がり抵抗性能のバランスが良好となるため、5〜10質量部であるのがより好ましい。
【0024】
〈アミノ酸〉
本発明のゴム組成物に使用することができるアミノ酸は、1分子中に、1個以上のアミノ基(−NRR’で表される基(RおよびR’はそれぞれ独立に水素原子または一価の有機基を表す。)をいう。)および/またはイミノ基(=NR”または>NR”で表される基(R”は水素原子または一価の有機基を表す。)をいう。)と、1個以上のカルボキシ基とを有する有機化合物であれば特に限定されない。
【0025】
本発明においては、前記アミノ酸の含有量は、前記シリカ100質量部に対して0.5〜10質量部であり、0.5〜5.0質量部が好ましく、1.0〜3.0質量部がより好ましい。また、上記アミノ酸は、1種類を単独で、または2種類以上を組合せて、使用することができる。
【0026】
また、上記アミノ酸は、上記アミノ基またはイミノ基と、上記カルボキシ基とが、同一の炭素原子に結合していてもよいし、相違する炭素原子に結合していてもよい。さらに、上記相違する炭素原子は、隣接する炭素原子であってもよいし、隣接しない炭素原子であってもよい。
【0027】
また、上記アミノ酸にエナンチオマーが存在する場合には、そのエナンチオマーもまた使用することができる。エナンチオマーの関係にあるアミノ酸はその一方を使用してもよいし、他方を使用してもよいし、両方を組み合わせて使用してもよい。
【0028】
また、上記アミノ酸にジアステレオマーが存在する場合には、そのジアステレオマーもまた使用することができる。ジアステレオマーの関係にあるアミノ酸は、いずれか1つを使用してもよいし、2つ以上を組み合わせて使用してもよい。
【0029】
また、上記アミノ酸は、塩の形態でも使用することができる。塩の形態としては、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、バリウム塩等の金属塩;塩酸塩、硝酸塩等の無機酸塩;酢酸塩等の脂肪族カルボン酸塩;o−アセチルサリチル酸塩等の芳香族カルボン酸塩;p−トルエンスルホン酸塩等の芳香族スルホン酸塩;などが挙げられる。このようなアミノ酸の金属塩としては、例えば、L−グルタミン酸ナトリウムが挙げられ、無機酸塩としては、例えば、L−リシン塩酸塩が挙げられる。
また、上記アミノ酸は、アルコールとのエステルの形態でも使用することができる。また、上記アミノ酸が水酸基を有する場合には、リン酸等のオキソ酸とのエステルの形態でも使用することができる。このようなアミノ酸のリン酸エステルとしては、例えば、O−ホスホセリン等が挙げられる。
【0030】
また、上記アミノ酸ならびにその塩およびエステルは、水和物の形態でも使用することができる。
【0031】
上記アミノ酸としては、グリシン、アラニン等のα−アミノ酸;β−アラニン(3−アミノプロパン酸)等のβ−アミノ酸;γ−アミノ酪酸(GABA)等のγ−アミノ酸;などが挙げられる。
【0032】
上記α−アミノ酸としては、下記式(i)または(ii)で表されるものが好ましい。
【化1】


[ここで、R、R、RおよびRはそれぞれ独立に水素原子または有機基であり、RとRとは一緒になって環を形成してもよく、RとRとは一緒になって環を形成してもよい。]
【0033】
上記式(i)または(ii)で表されるα−アミノ酸としては、具体的には、例えば、グリシン、L−アラニン、L−アルギニン、L−アスパラギン、L−アスパラギン酸、L−システイン、L−グルタミン、L−グルタミン酸、L−ヒスチジン、L−イソロイシン、L−ロイシン、L−リシン、L−メチオニン、L−フェニルアラニン、L−プロリン、L−セリン、L−トレオニン、L−トリプトファン、L−チロシン、L−バリン、L−ピロリシン、L−セレノシステイン、L−シスチン、L−ヒドロキシリシン、L−ヒドロキシプロリン、O−ホスホ−L−セリン、サイロキシン、L−ピログルタミン酸、L−シトルリンおよびL−オルニチンならびにこれら(グリシンを除く。)のエナンチオマー(例えば、D体のことである。)からなる群から選択される少なくとも1つが挙げられる。
【0034】
上記α−アミノ酸としては、下記式(iii)または(iv)で表されるものがより好ましい。
【化2】


[ここで、RおよびRはそれぞれ独立に水素原子または有機基を表す。]
【0035】
上記式(iii)または(iv)で表されるα−アミノ酸としては、具体的には、例えば、グリシン、L−アラニン、L−アルギニン、L−アスパラギン、L−アスパラギン酸、L−システイン、L−グルタミン、L−グルタミン酸、L−ヒスチジン、L−イソロイシン、L−ロイシン、L−リシン、L−メチオニン、L−フェニルアラニン、L−セリン、L−トレオニン、L−トリプトファン、L−チロシン、L−バリン、L−ピロリシン、L−セレノシステイン、L−シスチン、L−ヒドロキシリシン、O−ホスホ−L−セリン、サイロキシン、L−ピログルタミン酸、L−シトルリンおよびL−オルニチンならびにこれら(グリシンを除く。)のエナンチオマー(例えば、D体のことである。)からなる群から選択される少なくとも1つが挙げられる。
【0036】
さらに好ましいα−アミノ酸としては、グリシン、L−アラニン、L−アルギニン、L−アスパラギン、L−アスパラギン酸、L−システイン、L−グルタミン、L−グルタミン酸、L−ヒスチジン、L−イソロイシン、L−ロイシン、L−リシン、L−メチオニン、L−フェニルアラニン、L−セリン、L−トレオニン、L−トリプトファン、L−チロシンおよびL−バリンならびにこれら(グリシンを除く。)のエナンチオマー(例えば、D体のことである。)からなる群から選択される少なくとも1つが挙げられる。
【0037】
いっそう好ましいα−アミノ酸としては、グリシン、L−アルギニン、D−アルギニン、L−グルタミン酸、D−グルタミン酸、L−セリンおよびD−セリンからなる群から選択される少なくとも1つが挙げられる。
【0038】
また、上記α−アミノ酸としては、等電点3.0〜11.0であるものが好ましく、等電点5.0〜11.0であるものがより好ましい。
【0039】
上記等電点3.0〜11.0のα−アミノ酸としては、例えば、L−アラニン(等電点 6.0)、L−アルギニン(等電点 10.76)、L−アスパラギン(等電点 5.41)、L−システイン(等電点 5.05)、L−グルタミン(等電点 5.65)、L−グルタミン酸(等電点 3.22)、グリシン(等電点 5.97)、L−ヒスチジン(等電点 7.59)、L−イソロイシン(等電点 6.05)、L−ロイシン(等電点 5.98)、L−リシン(等電点 9.75)、L−メチオニン(等電点 5.74)、L−フェニルアラニン(等電点 5.48)、L−プロリン(等電点 6.30)、L−セリン(等電点 5.68)、L−トレオニン(等電点 6.16)、L−トリプトファン(等電点 5.89)、L−チロシン(等電点 5.66)およびL−バリン(等電点 5.96)ならびにこれら(グリシンを除く。)のエナンチオマー(例えば、D体のことである。)からなる群から選択される少なくとも1つ以上のアミノ酸が挙げられる。
【0040】
〈尿素〉
尿素は特に限定されず、従来公知の尿素を使用することができる。グレードは特に限定されず、例えば、一般有機合成用、生化学用など、各種のグレードを使用することができる。
【0041】
前記尿素の含有量は、前記シリカ100質量部に対して0.25〜5.0質量部であり、0.5〜4.0質量部が好ましく、1.0〜3.0質量部がより好ましい。また、前記尿素は、0.5〜50質量%水溶液として、シリカ100質量部に対して0.5〜10質量部が、ジエン系ゴムその他の成分と混合される。前記尿素を水溶液とするための水は、特に限定されず、水道水、純水(イオン交換水、蒸留水、RO水等)、超純水(ミリQ水等)などを用いることができる。
【0042】
〈前記以外の成分〉
本発明のゴム組成物には、前記成分の他に、シリカ以外のフィラー(例えば、カーボンブラック等)、加硫または架橋剤、加硫または架橋促進剤、酸化亜鉛、軟化剤(オイル)、老化防止剤、可塑剤等のタイヤ用ゴム組成物に一般的に用いられている各種のその他添加剤を配合することができる。これらの添加剤の配合量は本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。
【0043】
[ゴム組成物の製造方法]
本発明のゴム組成物は、前記した成分を混合・混錬することによって製造することができる。
前記した成分のうち、尿素は、0.5〜50質量%水溶液として、シリカ100質量部に対して0.5〜10質量部が、ジエン系ゴムその他の成分と混合される。尿素が水溶液として混合されると、本発明のゴム組成物中の尿素の分散性が良好なものとなり、尿素とアミノ酸との混合性も向上する。
また、前記した成分のうち、加硫(架橋)剤および加硫(架橋)促進剤以外の成分を混合および混練してマスターバッチを作成し、このマスターバッチに加硫(架橋)剤および加硫(架橋)促進剤を混合し、オープンロール等を用いて混練してゴム組成物を製造することが好ましい。このように、加硫(架橋)剤および加硫(架橋)促進剤以外の成分からなるマスターバッチを作成し、そのマスターバッチに加硫(架橋)剤および加硫(架橋)促進剤を混合・混練すると、加硫(架橋)剤および加硫(架橋)促進剤を混合してからの混練時間を短くすることができ、不均一な加硫(架橋)が生じることによる加硫(架橋)ゴム組成物の物性低下を防止することができるうえ、加硫(架橋)の制御が容易となる。
【0044】
[空気入りタイヤ]
本発明の空気入りタイヤ(以下、単に「本発明のタイヤ」ともいう。)は、上述した本発明のゴム組成物を用いた空気入りタイヤである。
図1に、本発明のタイヤの実施態様の一例を表すタイヤの部分断面概略図を示すが、本発明のタイヤは図1に示す態様に限定されるものではない。
【0045】
図1において、符号1はビード部を表し、符号2はサイドウォール部を表し、符号3はタイヤトレッド部を表す。
また、左右一対のビード部1間においては、繊維コードが埋設されたカーカス層4が装架されており、このカーカス層4の端部はビードコア5およびビードフィラー6の廻りにタイヤ内側から外側に折り返されて巻き上げられている。
また、タイヤトレッド3においては、カーカス層4の外側に、ベルト層7がタイヤ1周に亘って配置されている。
また、ビード部1においては、リムに接する部分にリムクッション8が配置されている。
【0046】
本発明のタイヤは、例えば、本発明のゴム組成物が含有するジエン系ゴム、加硫剤または架橋剤、加硫促進剤または架橋促進剤の種類およびその配合割合に応じた温度で加硫または架橋し、トレッド部やサイドウォール部等を形成することにより製造することができる。
【0047】
本発明においては、シリカの分散性が向上し、転がり抵抗の低減がされる。また、耐摩耗性および補強性も優れたものとなる。そのため、他の部材よりもシリカの配合量が多いタイヤトレッド部を本発明のゴム組成物で形成することが好ましい。
【実施例】
【0048】
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲をこれらの実施例に限定するものではない。
【0049】
[ゴム組成物]
〈標準例、実施例1〜4、比較例1〜8〉
第1表の標準例の欄、実施例の欄および比較例の欄に示すとおり、標準例、実施例1〜4および比較例1〜8に係るゴム組成物は、第1表に示す各成分を、第1表に示す配合量で配合して製造した。
【0050】
[試験評価方法]
〈G’0.28(シリカの分散性の指標)〉
未加硫ゴムを用いて160℃で20分間の加硫を行い、歪率0.28%〜30.0%までの歪せん断応力G’を測定した(単位:MPa)。測定には、粘弾性測定装置RPA2000(アルファテクノロジーズ社製)を使用した。歪率0.28%時のG’(G’0.28)と歪30.0%時のG’(G’30.0)との差ΔG’=(G’0.28−G’30.0)を計算し、標準例の測定値を基準(100)として、実施例1〜4、比較例1〜8の測定値を指数で表した。指数が小さいほどシリカ分散性が良好である。
【0051】
〈M300/M100(補強性の指標)〉
得られたゴム組成物を、150×150×2mmの金型を用いて160℃で20分間プレス加硫し、厚さ2mmの加硫ゴムシートを成形した。
この加硫ゴムシートから3号ダンベル状の試験片を打ち抜き、JIS K 6251:2004に準拠して100%モジュラス(M100)および300%モジュラス(M300)を測定し、M300/M100の値を求めた。標準例の値を基準(100)として、実施例1〜4、比較例1〜8のM300/M100の値を指数で表した。これを補強性の指標とした。指数が大きいほど補強性が良好である。
【0052】
〈反発弾性(40℃)(転がり抵抗の指標)〉
加硫ゴムについて、JIS K 6255:1996に準拠して、リュプケ式反発弾性試験を40℃の恒温槽内で行い、温度40℃での反発弾性を測定した。標準例の値を基準(100)として、実施例1〜4、比較例1〜8の反発弾性の測定値を指数で表した。これを転がり抵抗の指標とした。指数が大きいほど転がり抵抗性能が良好である。
【0053】
〈耐摩耗性(耐摩耗性の指標)〉
加硫ゴムについて、JIS K 6264−2:2005に準拠して、ランボーン摩耗性試験機(岩本製作所社製)を使用し、荷重5kg(=49N)、スリップ率25%、時間4分、室温の条件で摩耗減量を測定した。標準例の値を基準(100)として、実施例1〜4、比較例1〜8の摩耗減量の測定値を指数で表した。これを耐摩耗性の指標とした。指数が大きいほど耐摩耗性が良好である。
【0054】
【表1】

【0055】
第1表に示す各成分は以下に掲げるものである。また、各成分の配合量は質量部単位で表している。
(1)ジエン系ゴム
・SBR:スチレン・ブタジエンゴム(BUNA VSL 5025−1 HM,ランクセス社製;油展,第1表には展開油分28.1質量部を除いたスチレン・ブタジエンゴムの正味質量部を表す)
・BR:ブタジエンゴム(Nipol(R) 1220,日本ゼオン社製)
(2)シリカ、シランカップリング剤
・シリカ1:沈降シリカ(Zeosil(R) 1165MP,ローディア社製)
・シランカップリング剤1:硫黄含有シランカップリング剤(Si69(R),エボニック・デグッサ社製;3,3′−ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド)
(3)アミノ酸
・アミノ酸1:L−グルタミン酸
・アミノ酸2:グリシン
・アミノ酸3:L−アルギニン
(4)尿素、尿素水溶液
・尿素水溶液1:50質量%尿素水溶液(下記尿素および蒸留水から調製)
・尿素水溶液2:0.1質量%尿素水溶液(下記尿素および蒸留水から調製)
・尿素1:尿素(東京化成工業社製)
・水1:蒸留水
(5)軟化剤
・軟化剤1:アロマオイル(プロセスX−140,ジャパンエナジー社製)
(6)加硫剤、加硫促進剤、加硫促進助剤
・加硫剤1:硫黄(油処理イオウ,細井化学社製)
・加硫促進剤1:チアゾール系加硫促進剤(CBS,フレキシス社製;N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルフルフェンアミド)
・加硫促進剤2:グアニジン系加硫促進剤(DPG,フレキシス社製;ジフェニルグアニジン)
・加硫促進助剤1:酸化亜鉛(亜鉛華3種,正同化学社製)
・加硫促進助剤2:ステアリン酸(ビーズステアリン酸YR,日油社製)
【0056】
[試験結果の説明]
〈実施例1〜4〉
(1)シリカ分散性の指標であるG’0.28は、標準例の100に対して、52〜63の範囲内であり、顕著な改善が認められた。
(2)補強性の指標であるM300/M100は、標準例の100に対して、113〜116の範囲内であり、顕著な改善が認められた。
(3)転がり抵抗の指標である反発弾性(40℃)は、標準例の100に対して、104〜109の範囲内であり、顕著な改善が認められた。
(4)耐摩耗性は、標準例の100に対して、117〜125の範囲内であり、顕著な改善が認められた。
【0057】
〈比較例1〜8〉
《比較例1》
アミノ酸を配合したが、尿素水溶液を配合しなかった比較例である。
シリカ分散性の指標であるG’0.28には改善が認められたが、補強性の指標であるM300/M100、転がり抵抗の指標である反発弾性(40℃)および耐摩耗性は、いずれも、標準例から悪化していた。
【0058】
《比較例2》
アミノ酸および尿素水溶液を配合せず、水を配合した比較例である。
シリカ分散性の指標であるG’0.28および補強性の指標であるM300/M100は、標準例から改善が認められたが、転がり抵抗の指標である反発弾性(40℃)には改善が認められず、しかも、耐摩耗性が悪化していた。
【0059】
《比較例3》
アミノ酸および尿素水溶液を配合せず、尿素を粉末の状態で配合した比較例である。
シリカ分散性の指標であるG’0.28および補強性の指標であるM300/M100は、標準例から改善が認められたが、転がり抵抗の指標である反発弾性(40℃)および耐摩耗性には改善が認められなかった。
【0060】
《比較例4》
アミノ酸を配合したが、尿素水溶液を配合せず、尿素を粉末の状態で配合した比較例である。
シリカ分散性の指標であるG’0.28、補強性の指標であるM300/M100および耐摩耗性は、標準例から改善が認められたが、転がり抵抗の指標である反発弾性(40℃)には改善が認められなかった。
【0061】
《比較例5》
アミノ酸を配合せず、尿素水溶液を配合した比較例である。
シリカ分散性の指標であるG’0.28、補強性の指標であるM300/M100および耐摩耗性は、標準例から改善が認められたが、転がり抵抗の指標である反発弾性(40℃)は十分な改善が認められなかった。
【0062】
《比較例6》
アミノ酸を配合せず、尿素水溶液を配合した比較例である。比較例5とは、尿素水溶液の濃度が異なり、本比較例の方が薄い。
シリカ分散性の指標であるG’0.28、補強性の指標であるM300/M100、転がり抵抗の指標である反発弾性(40℃)および耐摩耗性のいずれについても、標準例から改善が認められなかった。
【0063】
《比較例7》
アミノ酸を配合したが、尿素水溶液を配合せず、尿素および水を個別に配合した比較例である。
シリカ分散性の指標であるG’0.28、補強性の指標であるM300/M100および耐摩耗性は、標準例から改善が認められたが、転がり抵抗の指標である反発弾性(40℃)は十分な改善が認められなかった。
【0064】
《比較例8》
アミノ酸を配合したが、尿素水溶液を配合せず、さらに、シランカップリング剤を配合しなかった比較例である。
シリカ分散性の指標であるG’0.28、補強性の指標であるM300/M100および耐摩耗性は、標準例から改善が認められたが、転がり抵抗の指標である反発弾性(40℃)は十分な改善が認められなかった。
【符号の説明】
【0065】
1 ビード部
2 サイドウォール部
3 タイヤトレッド部
4 カーカス層
5 ビードコア
6 ビードフィラー
7 ベルト層
8 リムクッション

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジエン系ゴムと、シリカと、硫黄含有シランカップリング剤と、アミノ酸と、尿素とを含み、
前記ジエン系ゴム100質量部に対して、前記シリカを20〜120質量部含有し、
前記シリカ100質量部に対して、前記硫黄含有シランカップリング剤を3〜15質量部と、前記アミノ酸を0.5〜10質量部と、前記尿素を0.25〜5.0質量部含有し、かつ、
前記尿素が、0.5〜50質量%尿素水溶液として、前記シリカ100質量部に対して0.5〜10質量部混合されるゴム組成物。
【請求項2】
請求項1に記載のゴム組成物をタイヤのトレッドゴムに用いる空気入りタイヤ。

【図1】
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【公開番号】特開2012−224685(P2012−224685A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−91572(P2011−91572)
【出願日】平成23年4月15日(2011.4.15)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】