説明

ゴム被覆コードの製造方法及びピッチ可変治具

【課題】扇状に補強コードを予め作成する等の準備工程を不要としながら、テーパ筒状ゴム等の巻付対象の大きさが大きいとかテーパ角度が比較的大きいものであっても、大径側と小径側との巻き付け角度差が発生せずにゴム被覆コードが巻回できるようにすべく、改善されたゴム被覆コードの製造方法を提供する。
【解決手段】芯材供給部aから送り出される並列配置状態で複数の芯材2を、ゴム供給部cから供給されるゴム16で被覆して広幅ベルト状の未加硫コード体17を作成する被覆工程を有するゴム被覆コードの製造方法において、前記芯材供給部aから送り出される複数の芯材2の配列ピッチPを、芯材2の送り出し量に従属させて変化させながらゴム16で被覆させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芯材供給部から送り出される並列配置状態で複数の芯材を、ゴム供給部から供給されるゴムで被覆して広幅ベルト状の未加硫コード体を作成する被覆工程を有するゴム被覆コードの製造方法及びピッチ可変治具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記のゴム被覆コードは、複数本の芯材を列状に並べた状態、即ち並列状態でゴム被覆して成る広幅ベルト状のものであり、使い方の一例としては、これを筒状テーパゴムに巻付けて加硫処理して成る繊維補強ゴムホースがあり、この繊維補強ゴムホースは、例えば、スクイーズ式ポンプのポンピングチューブ等の高圧補強が必要なゴム製品或いは高圧ホースに用いられる。因みに、ポンピングチューブには、頻繁な変形に耐え得る柔軟性と強度、並びに高い耐圧性が要求される。
【0003】
ゴム被覆コードを筒状ゴム等の巻付対象に巻付けたときの補強特性を一様なものとするには、巻付対象の表面に対する芯材の巻付け角度(コード角度)が一定のものとするのが望ましい(図11のα又はβ参照)。従来、この種のゴム被覆コードの芯材ピッチを変更させる方法や、それを用いて作成される繊維補強ゴムホースの製造方法としては、特許文献1や特許文献2において開示されたものが知られている。
【0004】
特許文献1に示されたものは、一定幅のスチールコードを円錐台状ゴムホースに巻き付けるにあたり、ゴムホースに至る途中に設けたガイドレールの傾きにて強制的に大径側をより多く引き出す(テンションを大にする)ようにして巻き付けることにより、ゴムホース小径側と大径側との径差に因る巻き付け長さの差を相殺させる方法である。つまり、大径側と小径側との巻き付け速度差による皺を巻き付け時のコード幅において取り去ろうとするものであるが、その作用を得るには製品の長さやテーパ角度に制限があるとともに、ゴムホース表面での巻き付け角度が徐々に変化することは防止できないという問題がある。従って、特許文献1による手段では、比較的短尺のものやテーパ角の小さいもの等に用途が限られてしまうものであった。
【0005】
特許文献2に示されたものは、円錐台状のゴムホースを平面展開し、その平面展開されたゴムホースの表面に、予め作成しておいた扇形のすだれ状補強コード(芯材)を貼り付け、かつ、丸めてテーパホース状に形成する、という方法により、繊維補強された円錐台状のゴムホースを作成するものである。この手段によれば、補強繊維のゴムホース表面に対する角度は一定の値に保たれるが、予め扇形に補強コードを裁断し、かつ、繊維をウェーブさせる面倒で熟練を要する予備工程を必要とするものであるとともに、ある程度の数を作る場合でないと生産性が芳しくないものであった。従って、長尺状のもの、テーパ角度の大きいもの、径の大きいもの、生産数量の少ないものには適用が困難であった。
【特許文献1】特開平11−58544号公報
【特許文献2】特開平8−159349号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上述のような実情に鑑みて、扇状に補強コードを予め作成する等の準備工程を不要としながら、テーパ筒状ゴム等の巻付対象の大きさが大きいとかテーパ角度が比較的大きいものであっても、大径側と小径側との巻き付け角度差が発生せずにゴム被覆コードが巻回できるようにすべく、改善されたゴム被覆コードの製造方法を提供する点にある。また、その製造方法を行うにおいて用いるピッチ可変治具を提供することも目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、芯材供給部aから送り出される並列配置状態で複数の芯材2を、ゴム供給部cから供給されるゴム16で被覆して広幅ベルト状の未加硫コード体17を作成する被覆工程を有するゴム被覆コードの製造方法において、前記芯材供給部aから送り出される複数の芯材2の配列ピッチPを、芯材2の送り出し量に従属させて変化させながらゴム16で被覆させることを特徴とするものである。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載のゴム被覆コードの製造方法において、前記芯材2がスライド移動自在な長溝6又は長孔6が前記芯材2の数分は並列形成されるとともに、それら隣合う前記長溝6又は長孔6の配列ピッチPが、それら長溝6又は長孔6の長手方向において同調して漸変する状態に構成されたピッチ可変治具3を用意し、
前記芯材供給部aから送り出される複数の芯材2を、前記ピッチ可変治具3の前記長溝6又は長孔6に互いに隣合わせて通した状態で、前記ピッチ可変治具3を前記長溝6又は長孔6の長手方向に移動させることにより、前記芯材2の配列ピッチPを前記芯材2の送り出し量に従属させて変化させることを特徴とするものである。
【0009】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に記載のゴム被覆コードの製造方法において、前記被覆工程を経て作成される前記未加硫コード体17を、テーパ部を有する筒状ゴム20の外周面に螺旋状に巻付けて前記筒状ゴム20の外周に繊維補強層12を形成することを特徴とするものである。
【0010】
請求項4に係る発明は、芯材供給部aから送り出される並列配置状態で複数の芯材2を、ゴム供給部cから供給されるゴム16で被覆して広幅ベルト状の未加硫コード体17を作成する被覆工程にて、前記芯材供給部aから送り出される複数の芯材2の配列ピッチPを、芯材2の送り出し量に従属させて変化させるために用いられるピッチ可変治具3において、前記芯材2がスライド移動自在な長溝6又は長孔6が前記芯材2の数分は並列形成されるとともに、それら隣合う前記長溝6又は長孔6の配列ピッチPが、それら長溝6又は長孔6の長手方向において同調して漸変する状態に構成されていることを特徴とするものである。
【0011】
請求項5に係る発明は、請求項4に記載のピッチ可変治具3において、前記配列ピッチPの全てが互いに等しい値で、かつ、互いに等しい変化率で漸変するように、前記長溝6又は長孔6が形成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、芯材のゴムによる被覆後に無理な力を作用させて配列ピッチ(芯材密度)を変更させるのではなく、ゴムの被覆前に配列ピッチを増減制御させるものであるから、未加硫コード体の形状精度、表面形状が良好であるとともに、ゴムに残留応力が残らないので、ゴムで被覆された後に配列ピッチPが元の状態に戻ろうとする不都合も回避されるようになる。芯材の配列ピッチが正確に精度良く増減制御されるので、テーパ筒状ゴム等の巻付対象に未加硫コード体を巻付ける際に、隣合う未加硫コード体の端面どうしの間に隙間ができたり、部分的に重なったりすることが無く、ゴム繋ぎ合せ精度も良いものとなる。また、そのような利点は長さの長短に拘らずに得ることができる。その結果、扇状に補強コードを予め作成する等の準備工程を不要としながら、テーパ筒状ゴム等の巻付対象の大きさが大きいとかテーパ角度が比較的大きいものであっても、大径側と小径側との巻き付け角度差が発生せずにゴム被覆コードが巻回できるようにすべく、改善されたゴム被覆コードの製造方法を提供するこができる。
【0013】
請求項2の発明によれば、芯材の配列ピッチを変更する手段として、各芯材に対応してそれら芯材をガイドする長溝または長孔が形成されたピッチ可変治具を移動させることで行うものであるから、ピッチ可変治具を動かすだけで全芯材の配列ピッチを一挙に変更させることができる。従って、比較的廉価な設備で簡便なる操作制御でありながら、芯材の配列ピッチが自在に変更設定可能なゴム被覆コードの製造方法が提供できる。
【0014】
請求項3の発明によれば、配列ピッチを芯材の送り出し量に従属させて任意に調節設定することができるから、巻付対象がテーパ部を有する筒状ゴム、即ち円錐台状の筒状ゴムであっても、隣合う未加硫コード体の端面どうしの間に隙間ができたり、部分的に重なったりすることが無く、ゴム繋ぎ合せ精度も良い状態としながら巻付けることがで可能になる。これにより、芯材の配列ピッチを小径側程狭くなる(密度が大きくなる)ように制御して、小径側ほど高圧に耐える強度を要するポンピングチューブ等の構成部材としても好適となるゴム被覆コードを提供することができる。
【0015】
請求項4の発明は、請求項1の発明の要部、即ち、「複数の芯材の配列ピッチを、芯材の送り出し量に従属させて変化させる」ための具体構成としてのピッチ可変治具を規定したものであり、請求項1の製造方法による作用効果と同等の作用効果を得ることができる。
【0016】
請求項5の発明によれば、請求項2の発明に用いられるピッチ可変治具をある程度具体化して規定したものであり、請求項2の製造方法による作用効果と同等の作用効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、本発明によるゴム被覆コードの製造方法とそれに用いられるピッチ可変治具の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。図1はゴム被覆コードの製造装置を示す概略の全体系統図、図2はピッチ可変治具を示す正面斜視図、図3はスチールコードの配列ピッチ可変状況を示す作用図、図4,5は従来の製造方法で、図6,7は本発明による製造方法でそれぞれ作成された未加硫コード体を示す平面図、図8,9はそれぞれ図4,5の未加硫コード体をテーパ筒状ゴムに巻付けた状態を、図10は図6及び7の未加硫コード体をテーパ筒状ゴムに巻付けた状態をそれぞれ示す平面図、図11は入射角の説明図、図12は比較例と実施例との各種緒元の比較表である。
【0018】
ここで、ゴム被覆コード12とは、狭義には未加硫コード体17を加硫処理したものを言うが、被覆工程を経て作成される未加硫コード体12の複数を重ねたり、並列や直列に合体させて未加硫コード体12とすることもあるので、広義には製造装置Aによって製造された製品としての未加硫コード体17そのものをゴム被覆コード12と言うこともある。また、未加硫コード体17をテーパ筒状ゴム等の巻付対象20に巻付けられた状態のものをゴム被覆コード(繊維補強層)12と呼ぶ場合もある。
【0019】
まず、ゴム被覆コードの製造装置Aについて説明する。図1に示すように、ゴム被覆コードの製造装置Aは、芯材供給部aと、ピッチ可変部bと、ゴム供給部cと、ゴム被覆部dと、搬送駆動部e等を有して構成されている。芯材供給部aは、スチールコード2を嵌めて案内すべく外周に複数の円周溝(符号省略)が形成されて回転自在な溝付ローラ1や、スチールコード(芯材の一例)2が巻回装備される複数のボビン(図示省略)等から構成されており、並列配置された複数のスチールコード2を供給する機能を有している。なお、芯材2としては、スチールコードの他、カーボンファイバ、高分子合成樹脂繊維等、種々の変更が可能である。
【0020】
ピッチ可変部bは、芯材供給部aを経た複数のスチールコード2の配列ピッチを変更設定するためのピッチ可変治具3と、このピッチ可変治具3をスチールコード2の搬送方向と直交する方向に駆動移動調節する駆動機構4とを有して構成されている。ピッチ可変治具3は、図2、図3に示すように、直方体のブロック材5に複数の深い長溝6をスチールコード2の数分以上形成して構成されている。なお、長溝6に代えて長孔とすることも可能である。長孔6にすれば、スチールコード2をその端から予め通す必要はあるが、後述の側壁部7は両持ち支持状態となり、配列ピッチPのより一層の精度向上やピッチ可変治具3としての強度向上が図れる利点がある。
【0021】
詳述すると、長溝6は、スチールコード2がスライド移動自在な状態で並列形成されるとともに、それら隣合う長溝6の配列ピッチPが、それら長溝6の長手方向において同調して漸変する状態に構成されている。各長溝6は一定の溝幅wを有しており、隣合う長溝6,6間の側壁部7の幅寸法が、長溝6の先端開口側に行く程小さくなるテーパ状に形成されている。従って、長溝6で案内されるスチールコード2が長溝6の奥に向かって移動すれば配列ピッチPは大きくなり、開口に向かって移動すれば配列ピッチPは小さくなる。つまり、配列ピッチPの全てが互いに等しい値で、かつ、互いに等しい変化率で漸変するように、長溝6がブロック材5に形成されている。なお、図示は省略するが、ピッチ可変治具3の直上又は/及び直下にスチールコード2の前後方向の移動は規制し、かつ、左右方向の移動は規制しないガイド部材を配備し、スチールコード2がピッチ可変治具3の前後移動に連れて動かないようにして、より制御精度を向上させる手段も可能である。
【0022】
駆動機構4は、ピッチ可変治具3をスライド移動自在に支持する左右一対のレールガイド8,8と、ブロック材5の突出部5aに螺合するネジ軸9と、ネジ軸9を正逆に駆動回転させる電動モータ10とから構成されている。電動モータ10を正方向に駆動すると、ピッチ可変治具3が前進(図1の矢印イ方向)して配列ピッチPが増大する方向に変更され、逆方向に駆動すると、ピッチ可変治具3が後進(図1の矢印ロ方向)して配列ピッチPが減少する方向に変更されるのであり、電動モータ1おを停止すれば、そのときの配列ピッチPが維持される。尚、15は、ネジ軸9を回転自在に支持し、かつ、電動モータ10の回転力をネジ軸9に伝動するための軸受け伝動機構である。
【0023】
ゴム供給部cは、ゴム被覆部dにゴム16を供給するゴム供給機11で構成されている。このゴム供給機11は公知の一般的なものであるため、詳細な説明は割愛する。ゴム被覆部dは、ピッチ可変治具3を経た複数のスチールコード2に、ゴム供給機11から供給されてくるゴム16を被覆してゴム層16を形成して未加硫コード体17とする手段である。スチールコード2の配列ピッチPが広狭に変化されると、それに応じてゴム被覆された後の未加硫コード体17としての全幅も同調して広狭するようになる。このゴム被覆部dは、例えば、複数のスチールコード2を通しながらそれらスチールコード2にゴムを流し込むためのダイスと、これを左右から挟み込む左右一対のゴムガイドと、これら三者を収容保持するホルダとから構成される。
【0024】
搬送駆動部eは、ゴム被覆部dから下方に排出されてくる未加硫コード体17の搬送方向を水平方向に変換するとともに、その未加硫コード体17に搬送力を付与する引取りローラ13と、この引取りローラ13を駆動回転させる回転機構14とから構成されている。つまり、未加硫コード体17を引っ張って搬送することにより、複数のスチールコード2も引張って搬送するように構成されている。引取りローラ13は、これによる引張り力によって複数のスチールコード2に集束力が作用して配列ピッチが変化することを防止する点から、ゴム被覆部d通過後のスチールコード2、即ち未加硫コード体17(ゴム被覆コード12)に作用させる構造とされている。
【0025】
以上の構成による製造装置Aを用いて、スチールコード2の配列ピッチが漸変する状態で埋設されたゴム被覆コード12を作成する製造方法について説明する。即ち、ゴム被覆コード12の製造方法は、芯材供給部aから送り出される並列配置状態で複数のスチールコード2の配列ピッチを、ピッチ可変部bを用いて制御するピッチ制御工程と、ピッチ制御工程を経たスチールコード2を、ゴム供給部cから供給されるゴム16で被覆して広幅ベルト状の未加硫コード体17を作成する被覆工程と、を有している。
【0026】
ピッチ制御工程においては、芯材供給部aから送り出される複数のスチールコード2の配列ピッチPを、スチールコード2の送り出し量に従属させて変化させながらゴム16で被覆させることが行われる。つまり、複数のスチールコード2を、ピッチ可変治具3の対応する長溝6に互いに隣合わせて通した状態で、駆動機構4を用いてピッチ可変治具3を長溝6の長手方向に移動させることにより、スチールコード2の配列ピッチをスチールコード2の送り出し量に従属させて変化させるのである。
【0027】
即ち、図2に示すように、配列ピッチPは、ピッチ可変治具3の前進に伴って狭くなり、後進に伴って広くなるように変化する。これにより、ピッチ可変治具3を限界まで前進させた状態でのスチールコード2の基準全幅Dは最小値Dminになり、限界まで後進させた状態でのスチールコード2の基準全幅Dは最大値Dmaxになる。例えば、スチールコード2の搬送に伴ってピッチ可変治具3を前進させれば、搬送下手側ほどスチールコード2の配列ピッチが広がる状態の未加硫コード体17が作成できる。また、搬送に伴ってピッチ可変治具3を後進させれば、搬送下手側ほどスチールコード2の配列ピッチが狭まる状態の未加硫コード体17が作成できる。
【0028】
このように、スチールコード2の配列ピッチPを任意に変更制御できるので、例えば、テーパ筒状ゴムにゴム被覆コードとして巻付けた際に、小径側ほど配列ピッチが狭く(高密度)なる未加硫コード体となるように制御すれば、小径側となる吐出側ほど高い耐圧特性を必要とするポンピングチューブに好適な繊維補強ゴムホースを作成することができる。また、逆に小径側ほど配列ピッチが大きくなるものや、一様な径を有する円筒ゴムに巻付ける際に、一端側に行くに従って配列ピッチが大に(又は小に)なるように未加硫コード体を作成することも自在である。
【0029】
次に、本発明による未加硫コード体17と従来製法による未加硫コード体17、並びにこれらをテーパ筒状ゴム(テーパ部を有する筒状ゴムの一例)20に巻付けた場合の製品(ゴム被覆コード12)を比較して説明する。ここで、前提条件として、全長Zmm(例:3420mm)、一端の外径Ymm(例:180.7mm)、他端の外径Xmm(例:Y−41.7mm)の円錐台状ゴムホース(テーパ筒状ゴム)において、大径側径174mmから小径側径153mmの範囲に、例えば入射角55度一定でもって隙間無く未加硫ゴムコード17を巻付けるものとする。
【0030】
この条件で必要となる未加硫コード体17の一端の幅は270mmで、他端の幅は312.3mmであり、これを9分割したもの、即ち、一端の幅が30mmで、他端の幅が34.7mmの長尺状に形成された未加硫コード体17を実施例1(図6参照)、3分割したもの、即ち、一端の幅が90mmで、他端の幅が104.1mmの長尺状に形成された未加硫コード体17を実施例2(図7参照)とする。なお、入射角とは、図11に示すように、平面視におけるテーパ筒状ゴム20の中心線Qに対するスチールコード2の為す巻付け角度α又はβ(α=βで共に平均角度)のことを指す。
【0031】
図4に示す未加硫コード体17は、複数のスチールコード2がすだれ状に配された状態、即ち隣合うスチールコード2,2が互いに平行となる状態でのゴム被覆後にテーパ形状に裁断されて成るものであり、スチールコード2の配列ピッチPは一定である。幅の狭い小幅側端部の幅は30mmで、幅の広い大幅側端部の幅は34.7mmに設定された長尺状の未加硫コード体17を比較例1とする(前記特許文献1に開示された製法による)。そして、図5に示す未加硫コード体17は、円錐形状の一部を展開して得られる全体的に湾曲した略扇状を呈するものであって、一端の幅が30mm、他端の幅が34.7mmに形成されたものであり、これを比較例2とする(前記特許文献2に開示された製法による)。
【0032】
これら比較例1,2のもの、及びおよび実施例1のものを、それぞれ前述のテーパ筒状ゴム20に巻付けてゴム被覆コード12(繊維補強層12)とされた状態を、図8〜10に示す。比較例1の未加硫コード体17を用いたゴム被覆コード12では、図8に示すように、配列ピッチPの増減変化が不可能なものであり、幅方向の端部に途中で寸断されているスチールコード2の端部2tが境目(巻付けられて隣合う未加硫コード体17どうしの境目)sにおいて露出する不都合もある。また、製法上、図4に示すテーパ状のものを直接製造することはできない(製造した後の裁断工程が必要)不利もある。
【0033】
比較例2の未加硫コード体17を用いたゴム被覆コード12では、図9に示すように、未加硫コード体17の長さが長くなるに連れて配列ピッチPの変更精度が悪くなり、角度ずれの蓄積により、大径側端部において未加硫コード体17の幅方向端部どうしが境目sにおいて重なりkが生じる不都合が発生するとともに、製法上、図5に示す扇形のものを直接製造することはできない。
【0034】
実施例1及び2の未加硫コード体17を用いたゴム被覆コード12では、図10に示すように、長尺、短尺に関係無く、一定の高精度を維持したまま配列ピッチPの変更が可能であるとともに、製品特性として内圧2MPaにおける伸び量が1%と微小であり、かつ、捩れの発生も生じないことが確認された。当然ながら、これら実施例1,2のものは製造装置Aによって直接製造することができる。参考に、これら比較例1,2、及び実施例1,2の各種特性比較表を図12に示す。
【0035】
本発明によるゴム被覆コードの製造方法によれば、スチールコードのゴムによる被覆後に無理な力を作用させてスチールコード2の配列ピッチ(密度)を変更させるのではなく、ゴムの被覆前に配列ピッチを増減制御させるものであるから、未加硫コード体17の形状精度、表面形状が良好であり、ゴム16に残留応力が残らないのでゴムで被覆された後に配列ピッチPが元の状態に戻ろうとする現象も解消されるようになる。スチールコード2の配列ピッチPが正確に精度良く増減制御されるので、テーパ筒状ゴム20等の巻付対象に未加硫コード体17を巻付ける際に、隣合う未加硫コード体17の端面どうしの間に隙間ができたり、部分的に重なったりすることが無く、ゴム繋ぎ合せ精度が良いものとなる。
【0036】
被覆工程を経て作成される未加硫コード体17を、テーパ部を有する筒状ゴム20の外周面に螺旋状に巻付けて筒状ゴム20の外周に繊維補強層12(ゴム被覆コード)が形成された繊維補強ゴムホースを作成する、といった具合に、引取りローラ13の搬送下手側近傍に巻付対象20を設置することにより、ゴム被覆コード12としての巻付け工程をほぼ同時に行えることとなり、繊維補強ゴムホースを製造する上での工程短縮による効率向上、並びに生産性向上を図ることが可能になる。
【0037】
また、比較的廉価な設備で簡便なる操作制御でありながら、スチールコード2の配列ピッチPが自在に変更設定できる未加硫コード体17、即ちゴム被覆コード12を得ることができる。そして、配列ピッチPの自在な拡大、縮小が任意に行うことが可能であるから、それによって作成される未加硫コード体17が全体としてテーパ状のものに限らず、例えば、両端部が大径で中央部が小径となる鼓形のゴムホースであっても、芯材の配列ピッチが高精度に変化するゴム被覆コード12を得ることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】ゴム被覆コードの製造装置の概略を示す系統図
【図2】ピッチ可変治具を示す正面斜視図
【図3】スチールコードの配列ピッチ可変状況を示す作用図
【図4】比較例1による未加硫コード体を示す平面図
【図5】比較例2による未加硫コード体を示す平面図
【図6】実施例1による未加硫コード体を示す平面図
【図7】実施例2による未加硫コード体を示す平面図
【図8】図4の未加硫コード体をテーパ筒状ゴムに巻付けた状態を示す平面図
【図9】図5の未加硫コード体をテーパ筒状ゴムに巻付けた状態を示す平面図
【図10】図6の未加硫コード体をテーパ筒状ゴムに巻付けた状態を示す平面図
【図11】スチールコードの入射角を示す部分平面図
【図12】各種未加硫コード体の緒元特性の比較表を示す図
【符号の説明】
【0039】
2 芯材
3 ピッチ可変治具
6 長溝又は長孔
12 繊維補強層(ゴム被覆コード)
16 ゴム(ゴム層)
17 未加硫コード体
20 筒状ゴム
a 芯材供給部
c ゴム供給部
A ゴム被覆コードの製造装置
P 芯材の配列ピッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯材供給部から送り出される並列配置状態で複数の芯材を、ゴム供給部から供給されるゴムで被覆して広幅ベルト状の未加硫コード体を作成する被覆工程を有するゴム被覆コードの製造方法であって、
前記芯材供給部から送り出される複数の芯材の配列ピッチを、芯材の送り出し量に従属させて変化させながらゴムで被覆させるゴム被覆コードの製造方法。
【請求項2】
前記芯材がスライド移動自在な長溝又は長孔が前記芯材の数分は並列形成されるとともに、それら隣合う前記長溝又は長孔の配列ピッチが、それら長溝又は長孔の長手方向において同調して漸変する状態に構成されたピッチ可変治具を用意し、
前記芯材供給部から送り出される複数の芯材を、前記ピッチ可変治具の前記長溝又は長孔に互いに隣合わせて通した状態で、前記ピッチ可変治具を前記長溝又は長孔の長手方向に移動させることにより、前記芯材の配列ピッチを前記芯材の送り出し量に従属させて変化させる請求項1に記載のゴム被覆コードの製造方法。
【請求項3】
前記被覆工程を経て作成される前記未加硫コード体を、テーパ部を有する筒状ゴムの外周面に螺旋状に巻付けて前記筒状ゴムの外周に繊維補強層を形成する請求項1又は2に記載のゴム被覆コードの製造方法。
【請求項4】
芯材供給部から送り出される並列配置状態で複数の芯材を、ゴム供給部から供給されるゴムで被覆して広幅ベルト状の未加硫コード体を作成する被覆工程において、前記芯材供給部から送り出される複数の芯材の配列ピッチを、芯材の送り出し量に従属させて変化させるために用いられるピッチ可変治具であって、
前記芯材がスライド移動自在な長溝又は長孔が前記芯材の数分は並列形成されるとともに、それら隣合う前記長溝又は長孔の配列ピッチが、それら長溝又は長孔の長手方向において同調して漸変する状態に構成されているピッチ可変治具。
【請求項5】
前記配列ピッチの全てが互いに等しい値で、かつ、互いに等しい変化率で漸変するように、前記長溝又は長孔が形成されている請求項4に記載のピッチ可変治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−255934(P2006−255934A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−72921(P2005−72921)
【出願日】平成17年3月15日(2005.3.15)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】