説明

ゴム補強用アラミド繊維およびその製造方法、ゴム資材

【課題】ゴム接着性に優れたアラミド繊維およびその製造方法、それを用いたゴム資材を提供する。
【解決手段】アラミドポリマーから構成されるアラミド繊維であって、該アラミド繊維に平均粒径10μm以下のカーボンブラックが含有され、該アラミド繊維の全表面積に占める該カーボンブラックの面積の割合が10〜70%であることを特徴とするゴム補強用アラミド繊維とする。前記ゴム補強用アラミド繊維を用いたゴム資材とする。また、アラミドポリマー、該アラミドポリマー重量に対して3〜50重量%の平均粒径10μm以下のカーボンブラック、および溶媒からなる紡糸用溶液をノズルから吐出し、凝固浴で固化、脱溶媒し、乾燥してアラミド繊維とし、これに研磨剤を付与し、該アラミド繊維を擦過処理することにより、アラミド繊維の全表面積に占めるカーボンブラックの面積の割合が10〜70%であるアラミド繊維を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム補強用アラミド繊維およびその製造方法、ゴム資材に関する。さらに詳しくは、ゴム接着性に優れたカーボンブラックを含有するアラミド繊維およびその製造方法、該繊維を補強材として用いたゴム資材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、芳香族ジカルボン酸成分と芳香族ジアミン成分とからなるアラミド繊維(全芳香族ポリアミド繊維)、特にパラ系のアラミド繊維は、その強度、高弾性率、高耐熱性といった特性を活かして、ゴム補強に好適に用いられている。
【0003】
一方、アラミド繊維としては、ポリパラフェニレンテレフタルアミド(PPTA)繊維やコポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミド繊維があり、これらの繊維は多くの利点を有するが、ゴムとの接着性が悪いため、より高性能なゴム資材を作ることが困難であった。
【0004】
このような課題を解決するため、接着性を付与した繊維が考えられており、例えば繊維表面を接着層で被覆する方法(例えば、特許文献1:特開平10−025667号公報)などが提案されている。
しかしながら、上記方法では、高いゴムとの接着性が得られるものの、被覆された接着層の剥離が生じるといった問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−025667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる従来技術を背景になされたもので、その目的は、ゴム接着性に優れたアラミド繊維およびその製造方法、それを用いたゴム資材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討を行った。その結果、カーボンブラックを含有させ、これを繊維表面に露出させた繊維とすることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、アラミドポリマーから構成されるアラミド繊維であって、該アラミド繊維に平均粒径10μm以下のカーボンブラックが含有され、該アラミド繊維の全表面積に占める該カーボンブラックの面積の割合が10〜70%であることを特徴とするゴム補強用アラミド繊維である。
また、上記ゴム補強用アラミド繊維を用いたゴム資材である。
【0009】
さらに、アラミドポリマー、該アラミドポリマー重量に対して3〜50重量%の平均粒径10μm以下のカーボンブラック、および溶媒からなる紡糸用溶液をノズルから吐出し、凝固浴で固化、脱溶媒し、乾燥してアラミド繊維とし、これに研磨剤を付与し、該アラミド繊維を擦過処理することにより、アラミド繊維の全表面積に占めるカーボンブラックの面積の割合が10〜70%であるアラミド繊維を製造することを特徴とするゴム補強用アラミド繊維の製造方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明のアラミド繊維は、カーボンブラックを含有し製糸した後、研磨剤を付与しヒーターにて接触加熱延伸するといった方法により、カーボンブラックを繊維表面に多く露出させることによって、ゴムとの接着性が著しく改善している。このため、ゴム資材に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
<アラミドポリマー>
本発明におけるアラミドポリマーは、溶液中でのジカルボン酸ジクロライドとジアミンとの低温溶液重合、または界面重合から得ることができる。
【0012】
[アラミドポリマーの原料]
(ジアミン成分)
具体的に本発明において使用されるジアミン成分としては、p−フェニレンジアミン、2−クロルp−フェニレンジアミン、2,5−ジクロルp−フェニレンジアミン、2,6−ジクロルp−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、3,3’−ジアミノジフェニルスルフォンなどを単独あるいは2種以上挙げることができるが、これらに限定されるものではない。中でも、ジアミン成分として、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミンおよび3,4’−ジアミノジフェニルエーテルを単独あるいは2種以上使用することができる。
【0013】
(芳香族ジカルボン酸ジクロライド成分)
具体的に本発明において使用されるジカルボン酸クロライド成分としては、例えばイソフタル酸クロライド、テレフタル酸クロライド、2−クロルテレフタル酸クロライド、2,5−ジクロルテレフタル酸クロライド、2,6−ジクロルテレフタル酸クロライド、2,6−ナフタレンジカルボン酸クロライドなど挙げられるが、これらに限定されるものではない。中でも、ジカルボン酸クロライド成分として、テレフタル酸ジクロライド、イソフタル酸ジクロライドが好ましい。従って、本発明におけるアラミドポリマーの例として、コポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミド、ポリパラフェニレンテレフタルアミド、およびポリメタフェニレンテレフタルアミドなどを挙げることができる。特に好ましくは、コポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミドである。
【0014】
[溶媒]
また、アラミドポリマーを重合する際の溶媒としては、具体的にN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチルカプロラクタムなどの有機極性アミド系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの水溶性エーテル化合物、メタノール、エタノール、エチレングリコールなどの水溶性アルコール系化合物、アセトン、メチルエチルケトンなどの水溶性ケトン系化合物、アセトニトリル、プロピオニトリルなどの水溶性ニトリル化合物などが挙げられる。これらの溶媒は、2種以上の混合溶媒として使用することも可能であり、特に制限されることはない。上記溶媒は、脱水されていることが望ましい。
この場合、溶解性を挙げるために、重合前、途中、終了時に一般に公知の無機塩を適当量添加しても差し支えない。このような無機塩として、例えば塩化リチウム、塩化カルシウムなどが挙げられる。
【0015】
[濃度]
本発明のアラミドポリマーの製造において用いられるアラミド溶液のポリマー濃度は、好ましくは0.5〜30重量%、より好ましくは1〜10重量%である。ポリマー濃度が0.5重量%未満では、ポリマーの絡み合いが少なく紡糸に必要な粘度が得られない。一方で、ポリマー濃度が30重量%を超える場合、ノズルから吐出する際に不安定流動が起こりやすくなり安定的に紡糸することが困難となる。
【0016】
(ジアミン成分と芳香族ジカルボン酸ジクロライド成分との組成)
また、アラミドポリマーを製造する際、これらのジアミン成分と酸クロライド成分は、ジアミン成分対酸クロライド成分のモル比として好ましくは0.90〜1.10、より好ましくは0.95〜1.05で、用いることが好ましい。
【0017】
[その他]
このアラミドポリマーの末端は、封止されることもできる。末端封止剤を用いて封止する場合、その末端封止剤としては、例えばフタル酸クロライドおよびその置換体、アミン成分としてはアニリンおよびその置換体が挙げられる。
一般に用いられる酸クロライドとジアミンの反応においては生成する塩化水素のごとき酸を捕捉するために脂肪族や芳香族のアミン、第4級アンモニウム塩を併用できる。
反応の終了後、必要に応じて塩基性の無機化合物、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウムなどを添加し中和反応する。
反応条件は、特別な制限を必要としない。酸クロライドとジアミンとの反応は、一般に急速であり、反応温度は例えば−25℃〜100℃好ましくは−10℃〜80℃である。
【0018】
このようにして得られるアラミドポリマーは、アルコール、水といった非溶媒に投入して、沈殿させ、パルプ状にして取り出すことができる。これを再度他の溶媒に溶解して成形に供することもできるが、重合反応によって得た溶液をそのまま成形用溶液として用いることができる。再度溶解させる際に用いる溶媒としては、アラミドポリマーを溶解するものであれば特に限定はされないが、上記アラミドポリマーの重合に使用される溶媒が好ましい。
【0019】
(カーボンブラック)
アラミドポリマーに添加するカーボンブラックの形状については特に指定は無いが、平均粒径は、10μm以下、好ましくは8μm以下、特に好ましくは2〜6μmである。平均粒径が10μmを超えると、紡糸時の糸切れが頻発し連続的な紡糸が不可能である。
ここで、平均粒径は、粒度分布計により測定した値により定義される値である。
【0020】
(カーボンブラックの含有量)
カーボンブラックのアラミド繊維中における含有量は、紡糸の安定性から好ましくは3〜50重量%の範囲であり、より好ましくは5〜20重量%である。含有量が3重量%より低いと、アラミド繊維表面のカーボンブラックの比率が少なくなり高い接着性が得られ難くなる。一方、含有量が50重量%を超えるときには、紡糸時の糸切れが頻発し、連続的な紡糸が難しくなる傾向にある。
【0021】
(カーボンブラック表面積比率)
本発明においては、アラミド繊維の全表面積に対する該カーボンブラックの表面積の割合(以下、カーボンブラック表面積比率と称することがある)が10〜70%、好ましくは15〜60%であることが肝要である。カーボンブラック表面積比率が10%未満では目的とする高いゴム接着性が得られず、一方70%を超えると該ポリアミド繊維を紡糸や後述する熱延伸工程で、断糸が発生しやすくなり品質が低下する。上記のように、カーボンブラック表面積比率を10〜70%とする方法については、前記のようにアラミド繊維にカーボンブラックを3〜50重量%含有させて紡糸し、後で詳細に説明するように乾燥糸状態で研磨剤を付与し、擦過処理することに容易に達成することができる。
【0022】
本発明でいう、カーボンブラック表面積比率とは、落射型蛍光顕微鏡を用いてUV励起光を照射し、繊維軸方向に20cmの長さについて、デジタル画像を取り込み、画像処理を行って、繊維の黒色部分の面積を(b)、繊維の全表面積を(S)として夫々の面積を計測し、カーボンブラック表面積比率を式(1)より求めた値である。
カーボンブラック表面積比率=(b)/(S)×100(%) (1)
【0023】
<アラミド繊維の製造方法>
本発明において、アラミド繊維は、アラミドポリマー、平均粒径が10μm以下のカーボンブラック、および溶媒からなる紡糸用溶液(ドープ)を調製し、得られたドープをノズルより吐出し、貧溶媒からなる凝固浴中で凝固、脱溶媒し、熱処理(乾燥)、延伸することにより製造することができる。
【0024】
紡糸用ドープにカーボンブラックをブレンドする際、該カーボンブラックの凝集を抑制するため、該紡糸用ドープの調製において、カーボンブラック分散液を、アラミドポリマー溶液に一定の圧力で注入し、ダイナミックミキジングおよび/またはスタティックミキシングする方法が好ましい。
紡糸用ドープのポリマー濃度、すなわちアラミドポリマーの濃度は、好ましくは0.05〜30重量%、より好ましくは1〜10重量%である。
【0025】
また、本発明における紡糸用ドープには、本発明の効果を損なわない範囲で他の成分、例えば酸化防止剤や耐熱安定剤、耐候剤、染料、帯電防止剤、難燃剤、導電性ポリマー、その他の重合体を添加することができる。
【0026】
上記紡糸用ドープを用いて、湿式法、半乾半湿式法などにより、ノズルより吐出し、凝固浴中で凝固、脱溶媒し、乾燥して繊維状物とする。続いて、得られたアラミドポリマーからなる繊維状物に対して、加熱条件下で延伸を行う。延伸倍率は、機械的物性から2〜10倍の範囲が好ましく、さらに好ましくは3〜6倍である。延伸倍率が2倍より低いと、高強力繊維としてのアラミド繊維の特徴が得られ難い。一方、延伸倍率が10倍を超えるときには、延伸時の糸切れが頻発し連続的な延伸が難しくなる。また、延伸温度は、機械的物性から、好ましく450〜550℃、さらに好ましくは500〜530℃である。延伸温度が450℃より低いと、延伸時の糸切れが頻発し、連続的な延伸が難しくなる傾向にある。一方、延伸温度が550℃を超えるときには、アラミドポリマーの熱劣化が起こり、高強力繊維としてのアラミド繊維の特徴が得られ難い。
【0027】
なお、本発明におけるアラミドポリマー、およびアラミド繊維の製造方法については、例えば英国特許第1501948号明細書、米国特許第3738964号明細書などに記載されている。
【0028】
このようにして得られるアラミド繊維の具体例としては、芳香族ジカルボン酸成分と芳香族ジアミン成分、もしくは芳香族アミノカルボン酸成分から構成されるアラミドポリマー、またはこれらの共重合アラミドポリマーからなる繊維であり、例えばポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維、コポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミド繊維、ポリメタフェニレンテレフタルアミド繊維などが例示できる。なかでも、コポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミド繊維が高い強度を有すると同時に耐久性に優れているので特に好ましい。
【0029】
カーボンブラック表面積比率10〜70%のアラミド繊維を得るためには、前記のアラミド繊維の紡糸条件を調整し繊維表面にカーボンブラックをブリードアウトさせる方法も考えられるが、前記のようにカーボンブラックを含む紡糸用溶液(ドープ)をノズルから吐出し、凝固浴で固化、脱溶媒し、乾燥したアラミド繊維に研磨剤を付与し擦過処理を行うことにより、前記割合の繊維表面にカーボンブラックを露出させる方法が望ましい。また、該擦過処理は、前記延伸工程を利用して行い、金属製やセラミック製等のヒーターにて接触加熱延伸することにより、繊維を構成するアラミドポリマーを高度に配向させると共に、アラミド繊維を擦過し繊維表面にカーボンブラックを露出させることが好ましい。この場合、無機微粒子は500℃以上の温度に耐えられる素材であれば特に制限は無いが、無機微粒子、中でもタルクやオスモスが入手の容易さなどの点より好ましい。研磨剤を用いない場合には擦過が不十分となり本発明の効果が十分に得られ難い。
【0030】
上記ヒーターとしては熱板を用いるのが好ましく、該熱板の素材は特に制限は無いが、耐熱性や耐摩耗性の点よりステンレス、特にSUS316が好ましい。熱板の表面粗度は1.0〜5.0μmの範囲が好ましい。表面粗度が1.0μmより低いと、熱板との摩擦が大きくなり過ぎ擦過中の糸切れが頻発し連続的な接触加熱延伸が難しい。一方、表面粗度が5.0μmより大きいと、熱板との摩擦が小さく擦過が不十分となり本発明の効果が得られ難い傾向がある。
【0031】
アラミド繊維の強度としては、18cN/dtex以上、さらに好ましくは20〜30cN/dtexの範囲が適当である。強度が18cN/dtex未満である場合には、長期間の使用に対し強度が十分でないため優れた耐久性をえることが困難である。単繊維繊度および長繊維で用いる場合のヤーン繊度とも特に限定する必要はないが、好適な単繊維繊度は、0.55〜5.5dtex、特に1.1〜3.3dtexであり、ヤーン繊度は110〜5500dtex、特に330〜3300dtexの範囲が適当である。
【0032】
本発明のアラミド繊維は、ゴム接着性に優れているため、例えば繊維をすだれ状にしたタイヤ補強素材、織物状にした伝動ベルトやゴムホース補強素材、また、カットファイバーとしてゴム中に混練したベルト補強素材として有用である。
【実施例】
【0033】
以下、実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0034】
<測定・評価方法>
(1)繊度
JIS−L−1015 B法に準じ、測定した。
【0035】
(2)引張強度、破断伸度、モジュラス
引張試験機(INSTRON社製、商品名:INSTRON、型式:5565型)を用いて、ASTM D885の手順に基づき、糸試験用チャックを用いて、以下の条件の引張試験を行い、引張強度を測定した。
温度 :室温
測定試料長 :250mm
チャック引張速度 :100mm/min
初荷重 :0.35cN/dtex
チャック間距離 :250mm
試験スタート法 :スラックスタート法
【0036】
(3)平均粒径
粒度分布計(島津製作所製、商品名:SALD−200V ER)を用いてレーザー回折/散乱法に基づく粒度分布計算により求めた。
【0037】
(4)ゴム接着性
引張試験機(INSTRON社製、商品名:INSTRON、型式:5565型)を用いて、ASTM D885の手順に基づき、糸試験用チャックを用いて、以下の条件の引張試験を行い、引張強力を測定した。
温度 :室温
測定試料長 :100mm
チャック引張速度 :20mm/min
初荷重 :0.35cN/dtex
チャック間距離 :50mm
試験スタート法 :スラックスタート法
【0038】
(5)カーボンブラック表面積比率
落射型蛍光顕微鏡(ニコン製 ECLIPSE E600)を用いてUV励起光を照射し、繊維軸方向に20cmの長さにおいて、倍率100倍にて50箇所のデジタル画像を取り込み、画像処理を行って、繊維の黒色部分の面積を(b)、繊維の全表面積を(S)として夫々の面積を計測し、カーボンブラック表面積比率を式(1)より求めた。
カーボンブラック表面積比率=(b)/(S)×100(%) (1)
【0039】
(6)ヒーター(熱板)の表面粗度
JIS B 0601に準じ測定した、算術平均高さを表面粗度とした。
【0040】
[実施例1]
平均粒径が5μmのカーボンブラック(大日精化社製MPS−1100)を用いた。ここで、カーボンブラックの分散は、浅田鉄工株式会社製、ビーズミル(Nano Grain Mill)を用いて行い、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)分散体を調製した。このとき、メディアとして、0.3mmのジルコニアビーズを使用した。
このカーボンブラック分散体およびNMPを、コポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミド(共重合モル比が1:1のアラミドポリマー、帝人テクノプロダクツ社製)の濃度6重量%のNMP溶液中に、得られるドープ中のカーボンブラックの含有量が芳香族ポリアミドの全重量を基準として15重量%となる割合で添加し、温度80℃下4時間撹拌混合した。得られたドープを用い、孔数667ホールの紡糸口金から吐出し、エアーギャップ約10mmを介してNMP濃度30重量%の水溶液中に紡出し凝固した後(半乾半湿式紡糸法)、水洗、乾燥し、次いで、研磨剤(富士タルク工業社製タルク、製品名:LMRA200、平均粒径:1.9μm)を付与し、表面粗度3.7μmのSUS316L製の熱板上で温度500℃下で10倍に接触延伸した後、巻き取ることによりカーボンブラックが良好に分散した状態で添加されたアラミド繊維を得た。
その結果、得られたアラミド繊維のカーボンブラック表面積比率は10%であり、剥離強力は8.6Nであった。
【0041】
[実施例2]
カーボンブラック添加量を50重量%とした以外は、実施例1と同様の方法でアラミド繊維を得た。得られたアラミド繊維の特性を表1に示す。
【0042】
[実施例3]
カーボンブラック添加量を5重量%とした以外は、実施例1と同様の方法でアラミド繊維を得た。得られたアラミド繊維の特性を表1に示す。
【0043】
[実施例4]
熱板表面粗度を1.1μmとした以外は、実施例1と同様の方法でアラミド繊維を得た。得られたアラミド繊維の特性を表1に示す。
【0044】
[実施例5]
熱板表面粗度を4.8μmとした以外は、実施例1と同様の方法でアラミド繊維を得た。得られたアラミド繊維の特性を表1に示す。
【0045】
[比較例1]
カーボンブラック添加量を1重量%とした以外は、実施例1と同様の方法でアラミド繊維を得た。得られたアラミド繊維の特性を表1に示す。
【0046】
[比較例2]
カーボンブラック添加量を80重量%とした以外は、実施例1と同様の方法でアラミド繊維を作製したが、紡糸中の断糸が多発し、繊維を得ることができなかった。
【0047】
[比較例3]
熱板表面粗度を0.5μmとした以外は、実施例1と同様の方法でアラミド繊維を得た。得られたアラミド繊維の特性を表1に示す。
【0048】
[比較例4]
熱板表面粗度を6.5μmとした以外は、実施例1と同様の方法でアラミド繊維を作製したが、紡糸中の断糸が多発し、繊維を得ることができなかった。
【0049】
[比較例5]
アラミド繊維を延伸するに際し、研磨剤を用いなかったこと以外は、実施例1と同様の方法でアラミド繊維を得た。得られたアラミド繊維の特性を表1に示す。
【0050】
[比較例6]
アラミド繊維を延伸するに際し、研磨剤を用いず、熱延伸を熱板に対して非接触で行なかったこと以外は、実施例1と同様の方法でアラミド繊維を得た。得られたアラミド繊維の特性を表1に示す。
【0051】
[比較例7]
アラミド繊維を延伸するに際し、研磨剤を用いず、熱延伸を熱板に対して非接触で行なかったこと以外は、実施例2と同様の方法でアラミド繊維を得た。得られたアラミド繊維の特性を表1に示す。
【0052】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明のゴム補強用アラミド繊維はゴム接着性が著しく向上しており、タイヤ、ベルト、ホースなどのゴム資材に好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アラミドポリマーから構成されるアラミド繊維であって、該アラミド繊維に平均粒径10μm以下のカーボンブラックが含有され、該アラミド繊維の全表面積に占める該カーボンブラックの面積の割合が10〜70%であることを特徴とするゴム補強用アラミド繊維。
【請求項2】
カーボンブラックの含有量が、アラミド繊維重量に対して3〜50重量%である請求項1に記載のゴム補強用アラミド繊維。
【請求項3】
アラミド繊維の表面が擦過されることによりカーボンブラックの少なくとも一部が繊維表面に露出している請求項1に記載のゴム補強用アラミド繊維。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のゴム補強用アラミド繊維を用いたゴム資材。
【請求項5】
アラミドポリマー、該アラミドポリマー重量に対して3〜50重量%の平均粒径10μm以下のカーボンブラック、および溶媒からなる紡糸用溶液をノズルから吐出し、凝固浴で固化、脱溶媒し、乾燥してアラミド繊維とし、これに研磨剤を付与し、該アラミド繊維を擦過処理することにより、アラミド繊維の全表面積に占めるカーボンブラックの面積の割合が10〜70%であるアラミド繊維を製造することを特徴とするゴム補強用アラミド繊維の製造方法。
【請求項6】
擦過処理が、ヒーターによる接触加熱延伸である請求項5記載のゴム補強用アラミド繊維の製造方法。

【公開番号】特開2012−36515(P2012−36515A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−175385(P2010−175385)
【出願日】平成22年8月4日(2010.8.4)
【出願人】(303013268)帝人テクノプロダクツ株式会社 (504)
【Fターム(参考)】