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ゴム補強用スチールコード及びその製造方法、並びにゴム−スチールコード複合体及び空気入りタイヤ
説明

ゴム補強用スチールコード及びその製造方法、並びにゴム−スチールコード複合体及び空気入りタイヤ

【課題】作業環境を悪化させることがなく、ゴムとの接着性に優れたゴム補強用スチールコードを提供する。
【解決手段】メッキ付きスチールコードを、置換基として少なくとも1つの水酸基を有する2置換又は3置換ベンゼン環を含む化合物を溶解させた溶液で表面処理してなるゴム補強用スチールコードである。前記置換ベンゼン環を含む化合物としては、下記式(I):
【化1】


[式中、Xは、水酸基、カルボキシル基又は−COOCm2m+1(mは1〜5の整数)であり;Yは、2-位,4-位,5-位又は6-位にあり、水素、水酸基又は下記式(II):
【化2】


{式中、Z1及びZ2は、それぞれ独立して水酸基、カルボキシル基又は−COOCn2n+1(nは1〜5の整数)であり;pは、1〜7のいずれかの整数である}で表される置換基である]で表される化合物が好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム補強用スチールコード及びその製造方法、並びに該ゴム補強用スチールコードを用いたゴム−スチールコード複合体及び空気入りタイヤに関し、特にゴムとの接着性が高く、製造工程におけるレゾルシン系化合物の昇華・発煙の懸念がないゴム補強用スチールコードに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、タイヤや工業用ベルト等のゴム物品の補強用に使用されるスチールワイヤや、該スチールワイヤを複数本撚り合わせたスチールコードには、ゴムに対する補強効果を十分に発揮させるために、ゴムとの接着性に優れることが要求される。これに対し、例えば、ブラスメッキ付きのスチールワイヤやこれを複数本撚り合わせたスチールコードにおいて、ブラスメッキ中の銅と亜鉛との割合や該ブラスメッキの厚さを適正化することにより、スチールワイヤ又はスチールコードとゴムとの接着性を改善する技術が広く知られている。また、スチールワイヤ又はスチールコードに対するゴム組成物の接着性を改良する技術として、RHS(レゾルシン・ヘキサメチレンテトラミン・シリカ)系の配合技術が広く一般に知られている。
【0003】
しかしながら、上記RHS系配合剤の一つであるレゾルシンは、昇華性を有するため、レゾルシンをゴム組成物に配合した場合、ゴム組成物の混練り中にレゾルシンが昇華・発煙して、混練りの作業環境を著しく悪化させるという問題があった。これに対し、作業環境を改善するために、レゾルシンの代替材料として、多くのレゾルシン誘導体が開発されてきたが、いずれもゴム組成物に配合することを前提としており、レゾルシン誘導体及び残留レゾルシンが混練り中に高温環境下に曝されて昇華・発煙するため、根本的な解決には至っていない。
【0004】
また、特開昭53−274号公報(特許文献1)には、レゾルシン系の化合物を用いた金属とゴムとの接着方法が開示されているが、レゾルシン系化合物を金属表面に塗布乾燥した後、高温で加熱するため、残留レゾルシンの昇華が懸念される。
【0005】
更に、特開2004−66298号公報(特許文献2)には、湿式潤滑剤中にレゾルシンを添加してスチールフィラメント表面にレゾルシンを付着させる方法が開示されているが、伸線時の発熱によりレゾルシンが変質してしまうため、スチールフィラメントとゴムとの接着耐久性を十分に向上させることができなかった。
【0006】
【特許文献1】特開昭53−274号公報
【特許文献2】特開2004−66298号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の目的は、上記従来技術の問題を解決し、作業環境を悪化させることがなく、ゴムとの接着性に優れたゴム補強用スチールコード及びその製造方法を提供することにある。また、本発明の他の目的は、かかるゴム補強用スチールコードを用いたゴム−スチールコード複合体及び該ゴム−スチールコード複合体を用いた空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、特開2001−234140号公報に記載のように、RHS系配合剤の中でも、レゾルシン系の化合物をゴム組成物に配合したときに、該ゴム組成物とスチールコードとの接着性が大幅に改善することに着目して鋭意研究を行った結果、レゾルシン系化合物が溶解した溶液でスチールコードを表面処理することで、該コードとゴム組成物との接着性が改善し、また、上記レゾルシン系化合物の溶液は、高温にせずとも乾燥するので、製造中のレゾルシン系化合物の昇華・発煙の問題が解消されることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
即ち、本発明のゴム補強用スチールコードは、メッキ付きスチールコードを、置換基として少なくとも1つの水酸基を有する2置換又は3置換ベンゼン環を含む化合物を溶解させた溶液で表面処理してなることを特徴とする。
【0010】
本発明のゴム補強用スチールコードの好適例においては、前記置換ベンゼン環を含む化合物が下記一般式(I)で表される。
【化1】


[式中、Xは、水酸基、カルボキシル基又は−COOCm2m+1(ここで、mは1〜5のいずれかの整数である)であり;Yは、2-位,4-位,5-位又は6-位にあり、水素、水酸基又は下記一般式(II)で表される置換基である。]
【化2】


[式中、Z1及びZ2は、それぞれ独立して水酸基、カルボキシル基又は−COOCn2n+1(ここで、nは1〜5のいずれかの整数である)であり;pは、1〜7のいずれかの整数である。]
【0011】
本発明のゴム補強用スチールコードは、前記表面処理の後、100℃以下で乾燥したものであることが好ましく、該乾燥を風乾で行ったものであることが更に好ましい。この場合、上記置換ベンゼン環を含む化合物の昇華・発煙を確実に防止することができる。
【0012】
また、本発明のゴム−スチールコード複合体は、ゴムを上記ゴム補強用スチールコードで補強してなることを特徴とし、本発明の空気入りタイヤは、該ゴム−スチールコード複合体をタイヤのいずれかの部材に用いたことを特徴とする。
【0013】
更に、本発明のゴム補強用スチールコードの製造方法は、メッキ付きスチールコードに、置換基として少なくとも1つの水酸基を有する2置換又は3置換ベンゼン環を含む化合物を溶解させた溶液で表面処理を施すことを特徴とする。ここで、前記置換ベンゼン環を含む化合物としては、上記一般式(I)で表される化合物が好ましい。また、本発明のゴム補強用スチールコードの製造方法においては、前記表面処理の後に、表面処理されたメッキ付きスチールコードを100℃以下で乾燥することが好ましく、該乾燥を風乾で行うことが更に好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、レゾルシン系化合物の溶液でメッキ付きスチールコードを表面処理することで、作業環境を悪化させることなく、ゴムとの初期接着性及び湿熱接着性に優れたゴム補強用スチールコードを提供することができる。また、該ゴム補強用スチールコードを用いた接着耐久性に優れたゴム−スチールコード複合体及び耐久性に優れた空気入りタイヤを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明を詳細に説明する。本発明のゴム補強用スチールコードは、メッキ付きスチールコードを、置換基として少なくとも1つの水酸基を有する2置換又は3置換ベンゼン環を含む化合物を溶解させた溶液で表面処理してなる。本発明のゴム補強用スチールコードに用いる上記置換ベンゼン環を含む化合物は、接着反応時にメッキ層とゴム組成物との界面に作用して強固な接着層を形成するものと考えられる。従って、上記置換ベンゼン環を含む化合物は、接着反応時に接着界面にのみ存在すればよく、ゴム組成物に配合しなくても、メッキ付きスチールコードの表面に存在するだけで、メッキ層とゴム組成物との接着性を十分に改善することができる。また、上記置換ベンゼン環を含む化合物の溶液は、高温にしなくても十分に乾燥するため、該溶液でメッキ付きスチールコードを表面処理した後、表面処理済みのスチールコードを高温に曝す必要がない。そのため、本発明のゴム補強用スチールコードでは、上記置換ベンゼン環を含む化合物の昇華・発煙の問題は生じない。
【0016】
本発明のゴム補強用スチールコードに用いるスチールコードは、メッキ処理されていることを要し、黄銅メッキされていることが好ましいが、銅及び亜鉛にニッケルやコバルトを加えた3元系の合金でメッキされていてもよい。ここで、メッキ組成は、特に限定されるものではなく、黄銅メッキの場合は、Cuが60〜70wt%の範囲で、Znが30〜40wt%の範囲であることが好ましい。また、上記スチールコードの構造、サイズ、撚り数、撚り条件等は、特に限定されず、使用目的に応じて適宜選択される。
【0017】
上記メッキ付きスチールコードを表面処理するために用いる溶液は、置換基として少なくとも1つの水酸基を有する2置換又は3置換ベンゼン環を含む化合物を溶媒に溶解させてなる。ここで、置換ベンゼン環を含む化合物を溶解させる溶媒としては、特に限定されず、水、エタノール等の各種アルコール類、及びアセトン等の各種ケトン類等が挙げられる。これら溶媒は、表面処理の後に、高温にせずとも気化することが好ましく、また、1種単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0018】
上記表面処理用の溶液に用いる置換ベンゼン環を含む化合物としては、上記一般式(I)で表される化合物が好ましい。式(I)において、Xは、水酸基、カルボキシル基又は−COOCm2m+1であり、ここで、mは1〜5のいずれかの整数である。また、Yは、ベンゼン環の2-位,4-位,5-位及び6-位のいずれに結合していてもよく、水素、水酸基又は上記一般式(II)で表される置換基である。なお、式(II)において、Z1及びZ2は、それぞれ独立して水酸基、カルボキシル基又は−COOCn2n+1であり、ここで、nは1〜5のいずれかの整数であり、また、pは1〜7のいずれかの整数である。また、式(I)の化合物として、具体的には、レゾルシン、レゾルシン・ホルムアルデヒド樹脂等が挙げられる。
【0019】
上記表面処理用溶液における上記置換ベンゼン環を含む化合物の濃度は、高過ぎると、スチールコードのメッキに悪影響を及ぼし、結果として、ゴムとスチールコードとの接着性が低下するため、比較的低濃度であることが好ましく、具体的には、2wt%程度が好ましい。
【0020】
上記置換ベンゼン環を含む化合物の溶液による表面処理は、スチールワイヤの湿式伸線後でも、撚線加工後のいずれでもよく、また、表面処理方法としては、上記溶液にスチールコードを浸漬する方法等が挙げられる。なお、上記置換ベンゼン環を含む化合物の昇華・発煙を確実に防止する観点から、該表面処理の後、表面処理されたメッキ付きスチールコードを100℃以下で乾燥することが好ましく、風乾で乾燥することが更に好ましい。
【0021】
本発明のゴム−スチールコード複合体は、上述のようにして製造されたゴム補強用スチールコードでゴムを補強してなる。ここで、上記ゴム補強用スチールコードで補強されるゴムに用いるゴム組成物の配合は特に限定されるものではなく、通常のゴム−スチールコード複合体に使用されるゴム組成物を適用することができる。また、本発明のゴム−スチールコード複合体は、ゴムとスチールコードとの接着性に優れるため、スチールコードで補強された各種ゴム物品、例えば、ラジアルタイヤ、コンベアベルト、タイミングベルト、ホース、ハンドレール等に使用することができ、これらの中でも、ラジアルタイヤに好適であり、該ラジアルタイヤのベルトやカーカスに特に好適である。
【0022】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0023】
レゾルシン又はレゾルシン樹脂[B19S, Indspec製]をエタノールに溶解させて2wt%の表面処理液をそれぞれ調製し、該表面処理液に黄銅メッキ(Cu:63wt%, Zn:37wt%)したスチールコード(1×5構造, 素線径0.25mm)を10秒間浸漬した後、風乾してゴム補強用スチールコードを作製した。また、得られたゴム補強用スチールコードに対して、下記の方法で接着試験を行った。なお、比較例として、未処理の黄銅メッキ付きスチールコードに対しても同様に接着試験を行った。結果を表1に示す。
【0024】
<接着試験方法>
上記のようにして作製したゴム補強用スチールコードを12.5mm間隔で平行に並べ、該スチールコードを上下両側からゴム組成物でコーティングし、これを160℃で15分間加硫して、幅12.5mmのサンプル(ゴム−スチールコード複合体)を作製した。次に、ASTM-D-2229に準拠して、各サンプルからスチールコードを引き抜き、コードに付着しているゴムの被覆率を0〜100%で表示して接着性の指標とした。数値が大きい程、接着性が高く良好であることを示す。なお、表1中の初期接着性は、加硫直後に測定した結果であり、湿熱接着性は、70℃、100%RHの湿熱条件下で4日間老化させた後に測定した結果である。また、使用したゴム組成物の配合は、天然ゴム:100質量部、HAFカーボンブラック(N326):60質量部、亜鉛華:5質量部、老化防止剤6C[N-(1,3-ジメチルブチル)-N'-フェニル-p-フェニレンジアミン]:2質量部、加硫促進剤DZ[N,N'-ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド]:1質量部、硫黄:5質量部、Co塩[マノボンドC22.5]:1質量部である。
【0025】
【表1】

【0026】
表1から、メッキ付きスチールコードを1つ以上の水酸基が結合した2置換又は3置換ベンゼン環を含む化合物の溶液で表面処理することにより、ゴムとメッキ付きスチールコードとの湿熱接着性を著しく改善できることが分る。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
メッキ付きスチールコードを、置換基として少なくとも1つの水酸基を有する2置換又は3置換ベンゼン環を含む化合物を溶解させた溶液で表面処理してなるゴム補強用スチールコード。
【請求項2】
前記置換ベンゼン環を含む化合物が下記一般式(I)で表されることを特徴とする請求項1に記載のゴム補強用スチールコード。
【化1】


[式中、Xは、水酸基、カルボキシル基又は−COOCm2m+1(ここで、mは1〜5のいずれかの整数である)であり;Yは、2-位,4-位,5-位又は6-位にあり、水素、水酸基又は下記一般式(II)で表される置換基である。]
【化2】


[式中、Z1及びZ2は、それぞれ独立して水酸基、カルボキシル基又は−COOCn2n+1(ここで、nは1〜5のいずれかの整数である)であり;pは、1〜7のいずれかの整数である。]
【請求項3】
前記表面処理の後、100℃以下で乾燥したことを特徴とする請求項1に記載のゴム補強用スチールコード。
【請求項4】
前記乾燥を風乾で行ったことを特徴とする請求項3に記載のゴム補強用スチールコード。
【請求項5】
ゴムを、請求項1〜4のいずれかに記載のゴム補強用スチールコードで補強してなるゴム−スチールコード複合体。
【請求項6】
請求項5に記載のゴム−スチールコード複合体を用いた空気入りタイヤ。
【請求項7】
メッキ付きスチールコードに、置換基として少なくとも1つの水酸基を有する2置換又は3置換ベンゼン環を含む化合物を溶解させた溶液で表面処理を施すことを特徴とするゴム補強用スチールコードの製造方法。
【請求項8】
前記置換ベンゼン環を含む化合物が上記一般式(I)で表されることを特徴とする請求項7に記載のゴム補強用スチールコードの製造方法。
【請求項9】
前記表面処理の後、100℃以下で乾燥することを特徴とする請求項7に記載のゴム補強用スチールコードの製造方法。
【請求項10】
前記乾燥を風乾で行うことを特徴とする請求項9に記載のゴム補強用スチールコードの製造方法。



【公開番号】特開2006−118104(P2006−118104A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−309738(P2004−309738)
【出願日】平成16年10月25日(2004.10.25)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】