説明

ゴム補強用セルロース系繊維コード

【課題】接着剤処理後におけるセルロース系繊維コードの強力低下を防止して、高強度を確保したゴム補強用セルロース系繊維コードを提供する。
【解決手段】セルロース系繊維コードが、下記条件、
1/2.3≦R/F≦1/1.1(モル比),1/10≦RF/L≦1/4(固形分質量比),0≦S≦0.6(質量%),0≦A≦0.8(質量%),0.05≦S+A≦0.8(質量%),10≦C≦24(質量%)、10≦a≦50(質量%),10≦b≦40(質量%),20≦c≦75(質量%)を同時に満足するRFL接着剤液を用いて接着剤処理され、ゴム中に埋め込まれて加硫されてなるゴム補強用セルロース系繊維コードである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はゴム補強用セルロース系繊維コードに関し、詳しくは、使用する接着剤液の改良に係るゴム補強用セルロース系繊維コードに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、有機繊維コードは、タイヤを始めとする各種ゴム製品の補強材として多用されている。中でも、セルロース系繊維の一種であるリヨセルは、低温時から高温時までの弾性率が、同じセルロース系繊維であるレーヨン同等以上で安定であって、かつ、レーヨンより高い弾性率を有するという特徴を持っている。そのため、かかる高剛性を活かして、カーカスコード等のタイヤ用補強コード材料として用いることが考えられる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一方で、近年、タイヤ業界においては、タイヤの軽量化や低燃費化、省資源化、コスト低減、生産性向上等を目的として、補強材の積層枚数の低減や、コード打ち込み本数の減少、コード太さの細糸化等による補強材量の減少が強く要請されている。ここで、コード−ゴム複合体としてのトータル強度を維持しつつ、補強材量を減少させるためには、より高強度の有機繊維を用いることが必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−297761号公報(特許請求の範囲等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、有機繊維コードにおいては、有機繊維とゴムとの間の接着に必要な接着剤液に浸漬後、乾燥熱処理し、次いで、有機繊維の融点近傍の高温下で熱処理する、いわゆるディップ処理(接着剤処理)を施すことで、繊維の強力が低下して、コード強度が大幅に低下してしまうという問題があった。したがって、セルロース系繊維コードにおいても、接着剤処理後における物性を低下させることなく、高いスペックを保持した状態で補強コードとするための技術の確立が求められていた。
【0006】
そこで本発明の目的は、接着剤処理後におけるセルロース系繊維コードの強力低下を防止して、高強度を確保したゴム補強用セルロース系繊維コードを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は鋭意検討した結果、セルロース系繊維コードに用いる接着剤液として、特定のレゾルシン−ホルムアルデヒド−ゴムラテックス(RFL)接着剤液を用いることで、上記問題を解決できることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明のゴム補強用セルロース系繊維コードは、セルロース系繊維コードが、レゾルシン−ホルムアルデヒド−ゴムラテックス接着剤液を用いて接着剤処理され、ゴム中に埋め込まれて加硫されてなるゴム補強用セルロース系繊維コードであって、前記レゾルシン−ホルムアルデヒド−ゴムラテックス接着剤液が、下記式、
1/2.3≦R/F≦1/1.1(モル比)
1/10≦RF/L≦1/4(固形分質量比)
0≦S≦0.6(質量%)
0≦A≦0.8(質量%)
0.05≦S+A≦0.8(質量%)
10≦C≦24(質量%)
(但し、上式において、R/Fはレゾルシン/ホルムアルデヒド総量のモル比、RF/Lはレゾルシンおよびホルムアルデヒド総量とゴムラテックス固形分の総量との比、SはRFL接着剤液の総固形分量に対するアルカリ金属水酸化物の質量%、AはRFL接着剤液の総固形分量に対するNH水溶液のNHOHベースの質量%、CはRFL接着剤液の総固形分質量%を示す)で示される関係を全て同時に満足し、かつ、ブタジエン−スチレン−ビニルピリジン共重合体ラテックスと、ブタジエン−スチレン共重合体ラテックスと、天然ゴムおよび/またはイソプレンゴムラテックスの各々の固形分質量の全ラテックス固形分質量に対する質量比率%をそれぞれa,b,cとしたときに、下記式、
ブタジエン−スチレン−ビニルピリジン共重合体ラテックス:10≦a≦50(質量%)
ブタジエン−スチレン共重合体ラテックス:10≦b≦40(質量%)
天然ゴムおよび/またはイソプレンゴムラテックス:20≦c≦75(質量%)
を同時に満足することを特徴とするものである。
【0009】
本発明においては、前記セルロース系繊維コードがリヨセルからなることが好ましい。また、下記式、
Nt=tanθ=0.001×N×√(0.125×D/ρ)
(式中、Nはコードの撚り数(回/10cm)であり、Dはコードの総デシテックスの半分(dtex)であり、ρはコードの比重(g/cm)である)で定義される前記セルロース系繊維コードの撚り係数Ntが、0.5〜0.8であることが好ましい。さらに、前記セルロース系繊維コードの、温度180℃でのコード1本あたり29.4Nの応力負荷時における引張弾性率は、好適には40cN/dtex以上である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、上記構成としたことにより、接着剤処理後におけるセルロース系繊維コードの強力低下を防止して、高強度を確保したゴム補強用セルロース系繊維コードを実現することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例における接着剤処理方法の概要を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明のゴム補強用セルロース系繊維コードは、セルロース系繊維コードが、レゾルシン−ホルムアルデヒド−ゴムラテックス(RFL)接着剤液を用いて接着剤処理され、ゴム中に埋め込まれて加硫されてなるものである。
【0013】
本発明においては、上記RFL接着剤液として、下記式、
1/2.3≦R/F≦1/1.1(モル比)
1/10≦RF/L≦1/4(固形分質量比)
0≦S≦0.6(質量%)
0≦A≦0.8(質量%)
0.05≦S+A≦0.8(質量%)
10≦C≦24(質量%)
(但し、上式において、R/Fはレゾルシン/ホルムアルデヒド総量のモル比、RF/Lはレゾルシンおよびホルムアルデヒド総量とゴムラテックス固形分の総量との比、SはRFL接着剤液の総固形分量に対するアルカリ金属水酸化物の質量%、AはRFL接着剤液の総固形分量に対するNH水溶液のNHOHベースの質量%、CはRFL接着剤液の総固形分質量%を示す)で示される関係を全て同時に満足し、かつ、ブタジエン−スチレン−ビニルピリジン共重合体(VP)ラテックスと、ブタジエン−スチレン共重合体(SBR)ラテックスと、天然ゴム(NR)および/またはイソプレンゴム(IR)ラテックスの各々の固形分質量の全ラテックス固形分質量に対する質量比率%をそれぞれa,b,cとしたときに、下記式、
VPラテックス:10≦a≦50(質量%)
SBRラテックス:10≦b≦40(質量%)
NRおよび/またはIRラテックス:20≦c≦75(質量%)
を同時に満足するものを用いる点が重要である。かかる条件を満足するRFL接着剤液を用いてセルロース系繊維コードを接着剤処理するものとしたことで、接着剤液の柔軟性により、処理後のコードにおいて強力を向上させることができ、これにより高強度のゴム補強用セルロース系繊維コードを得ることが可能となった。また、上記RFL接着剤液によれば高い接着性を確保することが可能であるとともに、処理後のコードへの入力を低減することができるので、耐疲労性を向上して、耐久性能の向上効果も得ることができる。
【0014】
本発明において、R/Fが1/2.3未満では、F量がR量に対して多すぎて、R−F間での架橋が進みすぎ、熱処理後の最終的なRF樹脂の網目が密になりすぎるため、結果としてRFL接着剤層の硬さが硬くなってしまう。一方、R/Fが1/1.1を超えると、逆にF量がR量に対して少なすぎて、RF間での架橋が少なく、RFL層の強度が弱くなり、ゴムとの十分な接着が得られないことに加え、コード表面がべたついてしまい、作業性の観点からも好ましくない。また、RF/Lが1/4を超えると、RF量がL量に対して多すぎて、結果としてRFL接着剤層の硬さが硬くなりすぎ、一方、RF/Lが1/10未満では、逆にRF量がL量に対して少なすぎて、ゴムとの十分な接着が得られなくなる。
【0015】
さらに、Sが0.6質量部を超えると、FとRとの反応触媒であるアルカリ金属水酸化物の量が多すぎて、R−F間での架橋が進みすぎ、熱処理後の最終的なRF樹脂の網目が密になりすぎる。なお、アルカリ金属水酸化物としては一般的にはNaOHが良いが、他のアルカリ金属水酸化物、例えば、KOH等でもよいし、また、アルカリ土類金属水酸化物を用いてもよい。
【0016】
さらに、NH水溶液を少量添加することにより、ゴムとの接着性がやや向上するが、NH水溶液の量Aが0.8質量%を超えるか、または、Aが0.8質量%以下でもS+Aが0.8質量%を超えると、やはりFとRとの架橋反応が進み過ぎて、熱処理後のRF樹脂の網目が密となり、結果としてRFL接着剤層の硬さが硬くなりすぎる。SおよびAはいずれも上記接着剤液の必須成分ではないが、S+Aが0.05質量%以上ないと、上記接着剤液の安定性が低下することから、RFL接着剤層の接着性にバラツキが大きくなり、本発明の所期の効果が得られない。
【0017】
さらにまた、RFL接着剤液の総固形分Cが10質量%未満では、接着剤浸漬時にゴムとの接着のために必要なだけの十分な接着剤固形分をコードに付着せしめることができず、一方、Cが24質量%を超えると、濃度が高過ぎてRFL接着剤液がゲル化し易くなり、不安定になる。
【0018】
次に、RFL接着剤液中のラテックス成分については、VPラテックス量aが、10質量%未満ではゴムとの充分な接着が得られず、一方、50質量%を超えると接着力の被着ゴム選択性が大きくなってしまい、また、RFL接着剤液のコストも高くなり過ぎる。また、ラテックス成分としてSBRラテックスを加えると、耐熱接着性が向上するので好ましいが、SBRラテックス量bが40質量%を超えると、ゴムとの接着性が低下する。
【0019】
さらに、特開平2−91276号公報に開示されているように、NRおよび/またはIRラテックスを適当量使用することによって加硫時の強力低下を抑制することができるが、このNRおよび/またはIRラテックス量cが20質量%未満では、充分な加硫時の強力低下抑制効果がなく、一方、cが75質量%を超えると、ゴムとの充分な接着が得られない。なお、本発明においては、上記RFL接着剤液中に、ラテックス成分として、上記以外のラテックスが含まれていてもよく、また、本発明の効果を損なわない範囲内で、SiO、カーボンブラック、ホウ素化合物等を添加してもよい。
【0020】
なお、本発明において、RFL接着剤液に関する上記の各要件は、全ての要件を同時に満たして初めて本発明の所期の効果が得られるものである。
【0021】
また、本発明において、酸性触媒前縮合タイプのノボラックRF樹脂を用いた場合、RとFとが直線状に縮合しているので、熱処理後の最終的なRF樹脂のR−F網目がやや粗になり、RFL接着剤層が比較的柔軟になる傾向があるが、この場合でも、やはり上記要件を同時に満足しなければ、本発明の範囲を満足するものではなく、ゴム補強用セルロース系繊維コードにおいて十分な強度は得られない。但し、前縮合タイプのノボラックスRF樹脂を用いると、コード表面がベタついたり、液の安定性が通常アルカリ触媒のレゾール系と比べてやや劣る等の問題点があるので、通常アルカリ触媒のレゾール系の方が好ましい。
【0022】
本発明において使用するセルロース系繊維コードとしては、レーヨンコードおよびリヨセルコードの他、天然の高分子であるセルロースを化学的にエステル化又はエーテル化等することによって得られるセルロース誘導体を原料とするコードも挙げることができる。中でも、本発明において好適には、セルロース系繊維コードとして、レーヨン対比高弾性率であって低温時から高温時まで弾性率が安定であるリヨセルコードを用いる。
【0023】
また、本発明においては、かかるセルロース系繊維コードの下記式、
Nt=tanθ=0.001×N×√(0.125×D/ρ)
(式中、Nはコードの撚り数(回/10cm)であり、Dはコードの総デシテックスの半分(dtex)であり、ρはコードの比重(g/cm)である)で定義される撚り係数Ntが、0.5〜0.8であることが好ましい。撚り係数Ntをこの範囲内とすることで、適正な接着剤付着量とすることができ、高強力を得ることができる。
【0024】
さらに、本発明においては、かかるセルロース系繊維コードの、温度180℃におけるコード1本あたり29.4Nの応力負荷時における引張弾性率が、40cN/dtex以上、特には50cN/dtex以上であることが好ましい。セルロース系繊維コードの引張弾性率を40cN/dtex以上とすることで、タイヤにおいて良好な熱寸法安定性を得ることができる。
【0025】
なお、本発明のゴム補強用セルロース系繊維コードを、例えば、タイヤに用いる際に、補強材の積層枚数の低減やコード打ち込み本数の低減、コード太さの細糸化等により、充分なタイヤ軽量化、低燃費化、省資源化、コスト低減および生産性向上等の目的を達成するためには、その強度を2g/d以上、好適には3g/d以上とする。また、コードの単糸繊度としては、0.2〜4.5デニールが好ましく、0.5〜4.0デニールがより好ましい。コードの単糸繊度が小さすぎると、コードを構成するフィラメント本数が多く、フィラメント表面積も大きすぎるので、乾燥熱処理後、接着剤層の各繊維フィラメントに対する拘束および不均一応力分担が増大して、ディップ処理時に強力低下が生じやすくなる。一方、コードの単糸繊度が大きすぎると、紡糸時のフィラメントの均一冷却が妨げられるので、安定して高強度糸を生産する上で好ましくない。
【0026】
また、セルロース系繊維コードを接着剤処理するにあたり、上記RFL接着剤液に浸漬する際のコード張力Tが0.3g/d以上では、コード内部に接着剤液が充分含浸せず、上撚交差面でのフィラメントの接触摩耗疲労に劣る。上記コード張力Tは、好ましくは0.2g/d以下であり、より好ましくは0.1g/d以下である。
【0027】
本発明に係る上記RFL接着剤液により接着剤処理されてゴム中に埋め込まれたゴム補強用セルロース系繊維コードにおいては、そのRFL接着剤層が従来のものと比べて柔軟であり、コードを構成する各繊維フィラメントに対する接着剤層による拘束が少ないので、コード伸長時において各繊維フィラメントの均一な応力分担が達成できるものとなり、これにより、コードが本来もっている高強力を発揮できるものと考えられる。
【実施例】
【0028】
以下、本発明を、実施例を用いてより詳細に説明する。
単糸繊度3.5デニール、原糸強度5.0g/dの再生セルロース繊維および単糸繊度3.0デニール、原糸強度4.5g/dのリヨセルを用いて、それぞれコード構成1840/2、生コード強力100kgのセルロース系繊維コードを作製した。得られた各セルロース系繊維コードについて、下記に従い強力を求めた。
【0029】
<強力の測定方法>
原糸、生コード、ディップコード、加硫後コードおよび疲労テスト後のコードの強力は、JIS L1017に従い、島津製作所製オートグラフにて引っ張りテストを行い、破断時の強力(kg)として求めた。
【0030】
各実施例および比較例におけるRFL接着剤液は、まず、軟水にレゾルシンを溶解させた後、NaOH水溶液を添加し、次いでホルマリンを添加し、室温下で6時間放置熟成させ、次いで、NH水溶液を加える配合の場合はNH水溶液を加えた後、ラテックスを加え、さらに、室温下で24時間放置熟成させた後に、接着剤処理に用いた。
【0031】
図1に、各実施例および比較例における接着剤液処理の方法の概要を示す。図中、プレ緊張熱処理ゾーン11、乾燥ゾーン12、ホットゾーン13およびノルマライズゾーン14の各ゾーンにおいて、コードにかける温度、露出時間および張力は、それぞれ150℃×30秒×0.8g/d、150℃×60秒×0.8g/d、150℃×60秒×0.8g/dおよび170℃×60秒×0.8g/dとした。
【0032】
上記の条件で接着剤液処理を実施した後、接着剤液処理後のコード(ディップコード)について上記の方法で強力を測定し、ディップコードの強力を生コードの強力で除して、ディップ時強力保持率(%)を求めた。
【0033】
次に、上記ディップコードを、天然ゴム70質量部、スチレン・ブタジエン共重合体ゴム30質量部、カーボンブラック40質量部、ステアリン酸2質量部、石油系軟化剤10質量部、パインタール4質量部、亜鉛華5質量部、N−フェニル−β−ナフチルアミン1.5質量部、2−ベンゾチアゾリルスルフィド0.75質量部、ジフェニルグアニジン0.75質量部および硫黄3.5質量部からなる未加硫ゴム組成物中に埋め込み、コード両端を固定して、153 ℃×40分間、定長状態にて加硫した。その後、定長状態のまま自然放冷後に加硫サンプルを取り出し、コード引き剥がし時のケバ立ちを避けるため、ゴムが周囲に付いたままのコードをハサミで切り出して、表面ゴムを出来得る限りそぎ落とした。このコードにつき、表面ゴムが付いたままの状態で、上記の方法に従い破断強力を測定した。この加硫後のコード強力を生コードの強力で除して、加硫時強力保持率(%)を求めた。
【0034】
また、接着剤処理済みコードを55本/5cmの打ち込み数で並べて、これに、上記と同様の未加硫ゴム組成物の厚み0.4mmのシートを両側から貼り合わせ、5cm幅×60cm長さのゴムトッピングシートを作製した。このようなトッピングシート2枚の間に厚さ3mmの未加硫ゴムシートを挟み、さらに、この上下面に、サンプル全体の厚さが15mmになるように未加硫ゴムシートを貼り合わせて、コード両端を固定し、定長下で145℃×40分、20kg/cmの加圧下で加硫し、耐屈曲疲労性テスト用サンプルを作製した。次に、このサンプルを直径60mmのプーリーに掛け、両端より150kgの荷重を掛けて、120℃の雰囲気温度下で毎時5000回の繰り返し屈曲を加えた。100万回屈曲後に取り外し、2層のセルロース系繊維コード層のうち、プーリーに接する側(繰り返し圧縮歪を受ける側)のコードを取り出して、その破断強力を測定した。この疲労テスト後のコード強力を生コードの強力で除して、疲労テスト後時強力保持率(%)を求めた。
これらの結果を下記の表中に示す。
【0035】
【表1】

【0036】
【表2】

【0037】
上記表中の結果から、本発明に係る条件を満足するRFL接着剤液を用いて接着剤処理され、ゴム中に埋め込まれて加硫されてなる各実施例のゴム補強用セルロース系繊維コードにおいては、かかる条件を満足しない比較例のゴム補強用セルロース系繊維コードと比較して、加硫後および疲労テスト後のいずれについても、良好な強力保持率が得られていることが確認できた。
【符号の説明】
【0038】
11 プレ緊張熱処理ゾーン
12 乾燥ゾーン
13 ホットゾーン
14 ノルマライズゾーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロース系繊維コードが、レゾルシン−ホルムアルデヒド−ゴムラテックス接着剤液を用いて接着剤処理され、ゴム中に埋め込まれて加硫されてなるゴム補強用セルロース系繊維コードであって、前記レゾルシン−ホルムアルデヒド−ゴムラテックス接着剤液が、下記式、
1/2.3≦R/F≦1/1.1(モル比)
1/10≦RF/L≦1/4(固形分質量比)
0≦S≦0.6 (質量%)
0≦A≦0.8 (質量%)
0.05≦S+A≦0.8 (質量%)
10≦C≦24(質量%)
(但し、上式において、R/Fはレゾルシン/ホルムアルデヒド総量のモル比、RF/Lはレゾルシンおよびホルムアルデヒド総量とゴムラテックス固形分の総量との比、SはRFL接着剤液の総固形分量に対するアルカリ金属水酸化物の質量%、AはRFL接着剤液の総固形分量に対するNH水溶液のNHOHベースの質量%、CはRFL接着剤液の総固形分質量%を示す)で示される関係を全て同時に満足し、かつ、ブタジエン−スチレン−ビニルピリジン共重合体ラテックスと、ブタジエン−スチレン共重合体ラテックスと、天然ゴムおよび/またはイソプレンゴムラテックスの各々の固形分質量の全ラテックス固形分質量に対する質量比率%をそれぞれa,b,cとしたときに、下記式、
ブタジエン−スチレン−ビニルピリジン共重合体ラテックス:10≦a≦50(質量%)
ブタジエン−スチレン共重合体ラテックス:10≦b≦40(質量%)
天然ゴムおよび/またはイソプレンゴムラテックス:20≦c≦75(質量%)
を同時に満足することを特徴とするゴム補強用セルロース系繊維コード。
【請求項2】
前記セルロース系繊維コードがリヨセルからなる請求項1記載のゴム補強用セルロース系繊維コード。
【請求項3】
下記式、
Nt=tanθ=0.001×N×√(0.125×D/ρ)
(式中、Nはコードの撚り数(回/10cm)であり、Dはコードの総デシテックスの半分(dtex)であり、ρはコードの比重(g/cm)である)で定義される前記セルロース系繊維コードの撚り係数Ntが、0.5〜0.8である請求項1または2記載のゴム補強用セルロース系繊維コード。
【請求項4】
前記セルロース系繊維コードの、温度180℃でのコード1本あたり29.4Nの応力負荷時における引張弾性率が、40cN/dtex以上である請求項1〜3のうちいずれか一項記載のゴム補強用セルロース系繊維コード。

【図1】
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【公開番号】特開2012−57279(P2012−57279A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−203654(P2010−203654)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】