説明

ゴム補強用繊維コード及びそれを用いた空気入りタイヤ

【課題】リヨセル繊維コードと被覆ゴムとの接着性をレーヨン繊維コードと同等以上に向上するようにしたゴム補強用繊維コードを提供する。
【解決手段】レゾルシン・ホルマリン・ラテックス混合液で処理したリヨセル繊維コードであって、前記レゾルシン・ホルマリン・ラテックス混合液が、レゾルシン(R)とホルマリン(F)のモル比(R/F)が0.25〜0.40、かつ前記レゾルシン・ホルマリン(RF)及びラテックス(L)中の固形分の重量比(RF/L)が0.2〜0.4であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム補強用繊維コード及びそれを用いた空気入りタイヤに関し、さらに詳しくは、リヨセル繊維コードと被覆ゴムとの接着性を向上するようにしたゴム補強用繊維コード及びそれを用いた空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
レーヨン繊維は、ナイロン繊維などに比べ弾性率が大きいため、高性能タイプの空気入りタイヤのカーカス層などに使用することで、その操縦安定性を向上させることができる。一方、リヨセル繊維は、レーヨン繊維と同じセルロース繊維であり、レーヨン繊維同様に高弾性で寸法安定性に優れていることから、レーヨン繊維の代わりに使用することが多数提案されている(例えば特許文献1,2参照)。
【0003】
しかし、リヨセル繊維は、一般のレゾルシン・ホルマリン・ラテックス(以下、「RFL」ということがある。)混合液の処理では、ゴムとの接着性が十分でなく、従来のレーヨン繊維並みの耐久性が得られないという問題があった。その対策として、例えば、ナイロン繊維用のRFL混合液で処理することが提案されている(特許文献2参照)。しかし、この方法で得られたリヨセル繊維コードでも空気入りタイヤのカーカスプライやベルト補強層を成形すると、被覆ゴムとの接着性がレーヨン繊維と同等以上に得られないため、リヨセル繊維コードはレーヨン繊維コードを上回る空気入りタイヤの高速耐久性が得られないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−66930号公報
【特許文献2】特開2004−168118号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、リヨセル繊維コードと被覆ゴムとの接着性をレーヨン繊維コードと同等以上に向上するようにしたゴム補強用繊維コード及びそれを用いた空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成する本発明のゴム補強用繊維コードは、レゾルシン・ホルマリン・ラテックス混合液で処理したリヨセル繊維コードであって、前記レゾルシン・ホルマリン・ラテックス混合液がレゾルシン(R)とホルマリン(F)のモル比(R/F)が0.25〜0.40、かつ前記レゾルシン・ホルマリン(RF)及びラテックス(L)中の固形分の重量比(RF/L)が0.2〜0.4であることを特徴とする。
【0007】
本発明のゴム補強用繊維コードを製造する方法は、複数本のリヨセル繊維フィラメントを撚り合わせた撚りコードをレゾルシン・ホルマリン・ラテックス混合液にディップ処理し、これを乾燥処理した後に緊張熱処理及び弛緩熱処理を行なうゴム補強用繊維コードの製造方法であって、前記レゾルシン・ホルマリン・ラテックス混合液がレゾルシン(R)とホルマリン(F)のモル比(R/F)が0.25〜0.40、かつ前記レゾルシン・ホルマリン(RF)及びラテックス(L)中の固形分の重量比(RF/L)が0.2〜0.4であるを特徴とする。
【0008】
前記ディップ処理は、前記撚りコードに0.03〜0.15cN/dtexの張力をかけながら行なうとよい。
【0009】
上記ゴム補強用繊維コードは、カーカス層のカーカスコード及び/又はベルト補強層の補強コードとして使用することにより、高速耐久性に優れた空気入りタイヤを得ることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明のゴム補強用繊維コードは、リヨセル繊維をレゾルシン(R)とホルマリン(F)のモル比(R/F)が0.25〜0.40、かつレゾルシン・ホルマリン(RF)及びラテックス(L)中の固形分の重量比(RF/L)が0.2〜0.4であるレゾルシン・ホルマリン・ラテックス混合液で処理することにより、リヨセル繊維コードに付着したRFL接着層の硬さ及び強度を最適化し、リヨセル繊維コードと被覆ゴムとの接着性を向上することができる。
【0011】
したがって、特に上記ゴム補強用繊維コードを空気入りタイヤのカーカス層のカーカスコード及びベルト補強層の補強コードに使用した場合には、カーカス層及びベルト補強層の強度を向上して、空気入りタイヤの高速耐久性を向上することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のゴム補強用繊維コードに使用されるリヨセル繊維は、セルロースを有機溶媒で溶解した溶液を紡糸原液とした溶剤紡糸法により紡糸した精製セルロース繊維である。リヨセル繊維としては、通常入手可能なものを使用することができる。
【0013】
本発明のゴム補強用繊維コードは、リヨセル繊維コードの表面に、特定の組成を有するレゾルシン・ホルマリン・ラテックス(以下、「RFL」ということがある。)からなる接着層が形成されている。このRFL接着層は、レゾルシン(R)・ホルマリン(F)の初期縮合物(RF初期縮合物)とゴムラテックス(L)との水系混合液であるRFL混合液を使用してリヨセル繊維コードを処理することにより形成され、リヨセル繊維コードとゴムとの接着性を向上する。
【0014】
本発明で使用するRFL混合液において、RF初期縮合物は、レゾルシンとホルマリンを水に溶解し、これに水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物を加えてレゾルシンとホルマリンとを反応させたレゾール型、あるいはシュウ酸、塩酸等の酸性触媒下でレゾルシンとホルマリンとを反応させたノボラック型があり、いずれのものを用いてもよい。好ましくはノボラック型を使用するとよい。
【0015】
RF初期縮合物は、レゾルシン(R)とホルマリン(F)のモル比(R/F)が0.25〜0.40、好ましくは0.30〜0.35である。レゾルシンとホルマリンのモル比(R/F)が0.25未満ではホルマリンの配合量が多くなりRFL接着層の硬さが増すため接着性が低下する。また、レゾルシンとホルマリンのモル比(R/F)が0.40を超えるとRFL接着層の強度が十分に得られないため接着性が低下する。
【0016】
また、RFL混合液は、レゾルシン・ホルマリン(RF)初期縮合物とラテックス(L)中の固形分の重量比(RF/L)が0.2〜0.4、好ましくは0.25〜0.35である。RF初期縮合物とラテックス(L)中の固形分の重量比(RF/L)が0.2未満ではRFL接着層の硬さが過大になるため接着性が低下する。また、レゾルシン・ホルマリンの初期縮合物とラテックス中の固形分の重量比(RF/L)が0.4を超えるとRFL接着層の強度が十分に得られないため接着性が低下する。
【0017】
RF初期縮合物に混合するゴムラテックス(L)は、被覆ゴム層を構成するゴムの種類に応じて適宜選択することができる。ゴムラテックスとしては、例えばビニルピリジン・スチレン・ブタジエンターポリマー(VP)ラテックス、スチレン−ブタジエン共重合体(SBR)ラテックス、天然ゴムラテックス等が例示される。特にVPラテックスが接着性の観点から好ましい。また、VPラテックスにはSBRラテックスや天然ゴムラテックスを適宜混合して用いることができる。
【0018】
本発明で使用するRFL混合液は、水酸化ナトリウム水溶液、アンモニア水、炭酸ナトリウム水溶液、又はこれらを組み合わせて配合することにより調製することができる。水酸化ナトリウム水溶液を使用するときは、水酸化ナトリウム(NaOH)とレゾルシン(R)とのモル比(NaOH/R)を好ましくは0.40〜0.70、より好ましくは0.45〜0.60にするとよい。水酸化ナトリウムとレゾルシンとのモル比(NaOH/R)が0.40未満であると、RFL混合液の安定性が低下し、ゲル化を起こしやすくなる。また、水酸化ナトリウムとレゾルシンとのモル比(NaOH/R)が0.70を超えると、RFL接着層の硬さが増大して接着性が低下する。
【0019】
本発明のリヨセル繊維コードを製造する方法としては、複数本のリヨセル繊維フィラメントを撚り合わせた撚りコードを、RFL混合液でディップ処理を行い、これを乾燥処理した後に緊張熱処理及び弛緩熱処理を行なう。ディップ処理、乾燥処理、緊張熱処理及び弛緩熱処理では、それぞれ繊維コードに適当な張力を負荷しながら行なうとよい。
【0020】
特にRFL混合液でのディップ処理時にリヨセル繊維の撚りコードに張力をかけながら行なうことにより、リヨセル繊維コードに付着するRFLのうち繊維コードの表面に局在する割合を高くするので、ゴムとの接着性をより高くすることができる。ディップ処理時の張力は、好ましくは0.03〜0.15cN/dtex、より好ましくは0.05〜0.13cN/dtexにするとよい。ディップ処理時の張力が0.03cN/dtex未満であると、リヨセル繊維コードの内部に含浸するRFLの量が多くなるため、繊維コードが硬くなり、疲労性が悪化する。また、繊維コードの空気透過性が低くなるため、空気入りタイヤの加硫時にエア溜まりを形成しやすくなり、加硫故障を起こしやすくなる。また、ディップ処理時の張力が0.15cN/dtexを超えると、リヨセル繊維コードの表面に付着するRFLの量が頭打ちになる。なお、RFL混合液によるディップ処理により、繊維コードの表面に過剰のRFLが付着したときは、そのRFLの過剰分を、繊維コードの表面から除去してもよい。RFLを除去する方法としては、吸引除去、空気の吹き付け、振動による除去、ナイフによるかき落とし等の通常の方法を用いることができる。
【0021】
次に、このRFLを付着させた繊維コードを、乾燥する。乾燥条件は、温度が好ましくは90〜170℃、より好ましくは120〜150℃で、時間が好ましくは30〜180秒間、より好ましくは60〜120秒間、繊維コードの張力が好ましくは0.03〜0.15cN/dtex、より好ましくは0.05〜0.13cN/dtexの条件にするとよい。
【0022】
乾燥処理の後、リヨセル繊維コードに緊張熱処理(ヒートセット処理)を行なう。ヒートセット処理は、繊維コードに張力を負荷しながら加熱することにより、RFLの反応を完了させると共に、繊維コードの寸法安定性、強度などを高くすることができる。ヒートセット処理の条件は、温度が好ましくは140〜190℃、より好ましくは150〜170℃、時間が好ましくは30〜180秒間、より好ましくは60〜120秒間、繊維コードにかける張力が好ましくは0.13〜0.27cN/dtex、より好ましくは0.15〜0.25cN/dtexの条件で行なうとよい。
【0023】
次いでヒートセット処理した繊維コードに、弛緩熱処理(ノルマライジング処理)を行なう。ノルマライジング処理は、繊維コードにヒートセット処理時の張力と同等又はそれよりもやや低い張力を負荷して弛緩させた状態で行なう熱処理であり、ヒートセット処理時に生じた繊維の歪みを除去することができる。ノルマライジング処理の条件は、温度が好ましくは140〜190℃、より好ましくは150〜170℃、時間が好ましくは30〜180秒間、より好ましくは60〜120秒間、繊維コードの張力が好ましくは0.13〜0.27cN/dtex、より好ましくは0.15〜0.25cN/dtexの条件で、行なうとよい。
【0024】
上述したゴム補強用繊維コードを被覆するゴムとしては、タイヤ等のゴム製品に使用可能な任意のジエン系ゴム、例えば天然ゴム(NR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、イソプレンゴム(IR)、ブチルゴム(IIR)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム(NBR)など例示される。これらのジエン系ゴムは単独又は任意のブレンドとして用いることができる。
【0025】
本発明のゴム補強用繊維コードは、上述した特定組成のRFL混合液を用いてディップ処理を行ったリヨセル繊維コードにより構成したので、リヨセル繊維コードに付着したRFL接着層の硬さ及び強度を最適化し、被覆ゴムとの接着性を向上することができる。このためタイヤ、コンベヤベルトなど繊維コードで補強されたゴム製品全般に有効に適用することができる。特に空気入りタイヤのカーカスコード及びベルト補強層の補強コードとして優れる。このゴム補強用繊維コードを使用したカーカス層及びベルト補強層は、カーカスコード及び補強コードと被覆ゴムとの接着力が優れるため、タイヤ耐久性を向上することができる。特に、このようなカーカス層及び/又はベルト補強層により構成した高性能用空気入りタイヤは、高速耐久性に優れている。
【0026】
以下、実施例によって本発明をさらに説明するが、本発明の範囲をこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0027】
ゴム補強用繊維コード(実施例1〜6)
リヨセル繊維又はレーヨン繊維からなる複数本のフィラメントを撚り合わせた撚りコードを、レゾルシン・ホルマリン・ラテックス(RFL)混合液にディップ処理し、乾燥処理の条件を130℃、張力500g、144秒、ヒートセット処理の条件を160℃、張力600g、120秒、ノルマライジング処理の条件を160℃、張力600g、120秒とすることを共通条件にし、繊維コードの種類、レゾルシン(R)とホルマリン(F)のモル比(R/Fモル比)及びレゾルシン・ホルマリンの初期縮合物(RF)とラテックス(L)中の固形分の重量比(RF/L重量比)を表1〜3に示すように異ならせて、18種類のゴム補強用繊維コード(実施例1〜6、比較例1〜12)を作製した。なお、供試コードとしては、リヨセル繊維コード(1830dtexの2本撚り、撚り数47.0S×47.0Z)又はレーヨン繊維コード(1840dtexの2本撚り、撚り数47.0S×47.0Z)を使用した。またRFL混合液のディップ処理は0.133cN/dtexの張力をかけながら行った。ゴムラテックス(L)としては、ビニルピリジン・スチレン・ブタジエンターポリマー(VP)ラテックスを使用した。
【0028】
得られた18種類のゴム補強用繊維コード(実施例1〜6、比較例1〜12)を未加硫ゴムシート上に隙間なく引揃えて配置した後、その繊維コードの上から未加硫ゴムシートを積層した。この積層シートに、別の未加硫ゴムシート上にそれぞれのゴム補強用繊維コードを隙間なく引揃えて配置したシートを、繊維コード方向が同方向になるように貼り合わせ、170℃で15分間の加硫し、加硫サンプルを作製した。得られた加硫サンプルを100℃の恒温槽で30分間加熱した後、その温度下で、中央のゴムシートの両側の繊維コードと加硫ゴム部分を、互いに反対方向(180°)に引張ったときの剥離力を測定した。得られた結果は、比較例1の剥離力を100とする指数として表1〜3に示した。この値が大きいほど、ゴム補強用繊維コードと被覆ゴムとの接着強度が高いことを意味する。
【0029】
【表1】

【0030】
【表2】

【0031】
【表3】

【0032】
空気入りタイヤ
実施例7〜12
リヨセル繊維又はレーヨン繊維からなる複数本のフィラメントを撚り合わせた撚りコードを、RFL混合液にディップ処理し、乾燥処理の条件を130℃、張力500g、144秒、ヒートセット処理の条件を160℃、張力600g、120秒、ノルマライジング処理の条件を160℃、張力600g、120秒とすることを共通条件にし、繊維コードの種類、レゾルシン(R)とホルマリン(F)のモル比(R/Fモル比)及びレゾルシン・ホルマリンの初期縮合物(RF)とラテックス(L)中の固形分の重量比(RF/L重量比)を表4〜6に示すように異ならせて、14種類のゴム補強用繊維コード(実施例7〜12、比較例13〜20)を作製した。なお、供試コードとしては、リヨセル繊維コード(1830dtexの3本撚り、撚り数40.0S×40.0Z)又はレーヨン繊維コード(1840dtexの3本撚り、撚り数40.0S×40.0Z)を使用した。またディップ処理は、0.088cN/dtexの張力をかけながら行った。ゴムラテックス(L)としては、ビニルピリジン・スチレン・ブタジエンターポリマー(VP)ラテックスを使用した。
【0033】
得られた14種類のゴム補強用繊維コード(実施例7〜12、比較例13〜20)をそれぞれカーカスコードとして、エンド数45本/50mmで引き揃えてゴム引きし未加硫のカーカスプライを成形した。得られたカーカスプライを使用して、タイヤサイズが275/40R20、ベルト層全幅とベルト層端部を覆う繋ぎ目のないベルト補強層(ベルト層全幅×2層、ベルト両端部×1層からなる構造)を有する構造の14種類の空気入りタイヤ(実施例7〜12、比較例13〜20)を製作した。なお、ベルト補強層を構成する補強コードとしては、ナイロン66繊維コード(旭化成社製レオナT−5、1400dtexの2本撚り、撚り数35.0S×35.0Z、50本/50mm)にRFL液で接着処理を施し、これにゴムを被覆したものを使用した。得られた空気入りタイヤの高速耐久性を下記の方法で評価した。
【0034】
高速耐久性
得られた空気入りタイヤをリムサイズ20×9Jのリムに装着し、空気圧を210kPaにしてJIS D4230に準拠する室内ドラム試験機(ドラム径1707mm)に取付け、速度81km/hの条件で、JATMAで規定された空気圧条件に対応する荷重の88%を負荷し、120分間ならし走行した。次に3時間以上放冷した後、空気圧を210kPaに再調整し、121km/hの速度から試験を開始し、30分毎に8km/hづつ段階的に速度を上昇させ故障が発生するまで走行させ、タイヤ故障が起きるまでの走行距離を測定した。得られた結果は、比較例13の走行距離を100とする指数として表4〜6に示した。この値が大きいほど、空気入りタイヤの高速耐久性が優れることを意味する。
【0035】
【表4】

【0036】
【表5】

【0037】
【表6】

【0038】
実施例13〜18
リヨセル繊維又はレーヨン繊維からなる複数本のフィラメントを撚り合わせた撚りコードを、RFL混合液にディップ処理し、乾燥処理の条件を130℃、張力500g、144秒、ヒートセット処理の条件を160℃、張力600g、120秒、ノルマライジング処理の条件を160℃、張力600g、120秒とすることを共通条件にし、繊維コードの種類、レゾルシン(R)とホルマリン(F)のモル比(R/Fモル比)及びレゾルシン・ホルマリンの初期縮合物(RF)とラテックス(L)中の固形分の重量比(RF/L重量比)を表7〜9に示すように異ならせて、16種類のゴム補強用繊維コード(実施例13〜18、比較例21〜30)を作製した。なお、供試コードとしては、リヨセル繊維コード(1830dtexの2本撚り、撚り数47.0S×47.0Z)又はレーヨン繊維コード(1840dtexの2本撚り、撚り数47.0S×47.0Z)を使用した。またディップ処理は、0.133cN/dtexの張力をかけながら行った。ゴムラテックス(L)としては、ビニルピリジン・スチレン・ブタジエンターポリマー(VP)ラテックスを使用した。
【0039】
得られた16種類のゴム補強用繊維コード(実施例13〜18、比較例21〜30)をそれぞれベルト補強層の補強コードとして、エンド数50本/50mmで引き揃えてゴム引きし未加硫のストリップ材を成形した。得られたストリップ材をベルト補強層に使用して、タイヤサイズが195/65R15、ベルト層全幅とベルト層端部を覆う繋ぎ目のないベルト補強層(ベルト層全幅×1層、ベルト両端部×1層からなる構造)を有する構造の16種類の空気入りタイヤ(実施例13〜18、比較例21〜30)を製作した。なお、カーカス層を構成するカーカスコードとしては、レーヨン繊維コード(CORDENKA社製RT−700 Super3、1840dtexの3本撚り、撚り数40.0S×40.0Z、45本/50mm)にRFL液で接着処理を施し、これにゴムを被覆したものを使用した。
【0040】
得られた空気入りタイヤの高速耐久性を上述した方法で評価した。得られた結果は、比較例21の空気入りタイヤの走行距離を100にする指数として表7〜9に示した。この値が大きいほど、空気入りタイヤの高速耐久性が優れることを意味する。また、実施例13〜18、比較例21の空気入りタイヤについてロードノイズを下記の方法で評価した。
【0041】
ロードノイズ
得られた空気入りタイヤ(実施例13〜18、比較例21)をリムサイズ15×6JJのリムに装着し、空気圧を200kPaに調整し、国産3000ccのFR車に装着してロードノイズ測定路面を50km/hで走行したとき、運転席の窓の内側に取付けた集音マイクにより、周波数315Hzのロードノイズ音圧(dB)を測定した。測定した結果は、比較例21の空気入りタイヤを100にする指数として表7〜9に示した。この値が大きいほど騒音が少なく優れることを意味する。
【0042】
【表7】

【0043】
【表8】

【0044】
【表9】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
レゾルシン・ホルマリン・ラテックス混合液で処理したリヨセル繊維コードであって、前記レゾルシン・ホルマリン・ラテックス混合液がレゾルシン(R)とホルマリン(F)のモル比(R/F)が0.25〜0.40、かつ前記レゾルシン・ホルマリン(RF)及びラテックス(L)中の固形分の重量比(RF/L)が0.2〜0.4であるゴム補強用繊維コード。
【請求項2】
複数本のリヨセル繊維フィラメントを撚り合わせた撚りコードをレゾルシン・ホルマリン・ラテックス混合液にディップ処理し、これを乾燥処理した後に緊張熱処理及び弛緩熱処理を行なうゴム補強用繊維コードの製造方法であって、前記レゾルシン・ホルマリン・ラテックス混合液がレゾルシン(R)とホルマリン(F)のモル比(R/F)が0.25〜0.40、かつ前記レゾルシン・ホルマリン(RF)及びラテックス(L)中の固形分の重量比(RF/L)が0.2〜0.4であるゴム補強用繊維コードの製造方法。
【請求項3】
前記ディップ処理を、前記撚りコードに0.03〜0.15cN/dtexの張力をかけながら行なう請求項2に記載のゴム補強用繊維コードの製造方法。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の製造方法により得られたゴム補強用繊維コード。
【請求項5】
請求項1又は4に記載のゴム補強用繊維コードをカーカス層のカーカスコード及び/又はベルト補強層の補強コードに用いた空気入りタイヤ。

【公開番号】特開2010−281016(P2010−281016A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−136832(P2009−136832)
【出願日】平成21年6月8日(2009.6.8)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】