説明

ゴム部材の表面処理方法及びゴム部材の表面処理装置

【課題】 OPCなどの汚染やリークの問題がなく、変形に対して追随性がある低硬度のゴム部材を得ることができるゴム部材の表面処理方法及びゴム部材の表面処理装置を提供する。
【解決手段】 イソシアネート成分と有機溶媒とを含む第1の表面処理液をゴム部材に含浸させて含浸層を形成した後、空気に接触させることなく連続的に、前記含浸層中のイソシアネート成分の一部を除去する第2の表面処理液で当該ゴム部材の表面を処理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真式複写機及びプリンター、またはトナージェット式複写機及びプリンターなどの画像形成装置の帯電ロール・現像ロール・クリーニングロール・トナー供給ロール・トナー規制ロール、さらには転写ロール・中間転写ロール、クリーニングブレード、ベルトなどに好適に用いられるゴム部材の表面処理方法及びゴム部材の表面処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真式複写機及びプリンター、またはトナージェット式複写機及びプリンターなどの画像形成装置の帯電ロール・現像ロール・クリーニングロール・トナー供給ロール・トナー規制ロール、さらには転写ロール・中間転写ロール、クリーニングブレード、ベルト等には、感光体等への非汚染性の他、所定の導電性、摩擦係数等が要求される。そこで、従来、ポリウレタン、シリコーンゴム製のものが用いられていたが、感光体等への汚染性、帯電性等の理由から、コーティング層を形成したものが用いられている。
【0003】
また、近年、電子写真式複写機に用いられるトナー結着剤は低融点化が進んでおり、これに伴って、現像ロール等は十分なニップを形成してトナー帯電を確保するために低硬度化が要求されている。上述した要求を満たすものとして、弾性層と、ウレタン樹脂からなるコート層と、イソシアネートからなる薄い硬化層から構成され、全体をソフトに保ちつつ表面が硬い現像ロールが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
一方、コーティング層の形成は、工程が複雑となり製造コストが増大するという欠点を有しており、この問題点を簡便に解決する手段として、ロール表層部を化学的に処理する方法が提案されている(例えば特許文献2参照)。この処理方法は効果的なものであるが、表面処理を行った導電性ロールは、表面処理層が硬くなる傾向があった。低硬度化したロールの場合は、使用の際にロールの表層部の変形が大きくなるため変形に対して追随性が必要であるが、表面処理層が硬いロールは、追随性が乏しく、OPCなどへダメージを与える虞があった。
【特許文献1】特開2005−283913号公報
【特許文献2】特開平5−158341号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような事情に鑑み、OPCなどの汚染やリークの問題がなく、変形に対して追随性がある低硬度のゴム部材を得ることができるゴム部材の表面処理方法及びゴム部材の表面処理装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決する本発明の第1の態様は、イソシアネート成分と有機溶媒とを含む第1の表面処理液をゴム部材に含浸させて含浸層を形成した後、空気に接触させることなく連続的に、前記含浸層中のイソシアネート成分の一部を除去する第2の表面処理液で当該ゴム部材の表面を処理することを特徴とするゴム部材の表面処理方法にある。
【0007】
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載のゴム部材の表面処理方法において、前記第1の表面処理液からなる層の中に前記ゴム部材を浸漬して含浸層を形成した後、このゴム部材を前記第1の表面処理液からなる層と相分離して形成された第2の表面処理液からなる層へ移動させることを特徴とするゴム部材の表面処理方法にある。
【0008】
本発明の第3の態様は、第2の態様に記載のゴム部材の表面処理方法において、前記第1の表面処理液に前記ゴム部材を浸漬させた後、前記第1の表面処理液からなる層の上に前記第2の表面処理液からなる層を形成し、当該第2の表面処理液を介して前記ゴム部材を引き上げることを特徴とするゴム部材の表面処理方法にある。
【0009】
本発明の第4の態様は、第1〜3の何れかの態様に記載のゴム部材の表面処理方法において、前記有機溶媒が非プロトン性極性溶媒であることを特徴とするゴム部材の表面処理方法にある。
【0010】
本発明の第5の態様は、第1〜4の何れかの態様に記載のゴム部材の表面処理方法において、前記第2の表面処理液が非極性溶媒からなることを特徴とするゴム部材の表面処理方法にある。
【0011】
本発明の第6の態様は、第1〜5の何れかの態様に記載のゴム部材の表面処理方法において、前記第2の表面処理液で処理した後に、さらに、第2の含浸層を形成する第3の表面処理液を前記ゴム部材に含浸させた後、空気に接触させることなく連続的に、前記第2の表面処理液で当該ゴム部材の表面を処理することを特徴とするゴム部材の表面処理方法にある。
【0012】
本発明の第7の態様は、第1〜5の何れかの態様に記載のゴム部材の表面処理方法において、前記第2の表面処理液で処理した後に、前記含浸層中のイソシアネート成分の一部をさらに除去する第4の表面処理液で当該ゴム部材の表面を処理することを特徴とするゴム部材の表面処理方法にある。
【0013】
本発明の第8の態様は、第6の態様に記載のゴム部材の表面処理方法において、前記第3の表面処理液は、イソシアネート化合物と、導電性付与材、アクリルフッ素系ポリマー、及びアクリルシリコーン系ポリマーから選択される少なくとも一つとを含有することを特徴とするゴム部材の表面処理方法にある。
【0014】
本発明の第9の態様は、イソシアネート成分と有機溶剤とを含む第1の表面処理液にゴム部材を浸漬させた後、前記第1の表面処理液と相分離した第2の表面処理液へ前記ゴム部材を移動させることによりゴム部材の表面を処理するためのものであり、前記第1の表面処理液と前記第2の表面処理液とを相分離した状態で収容する容器と、少なくとも上層を構成する表面処理液を前記容器外へ排出する手段とを具備することを特徴とするゴム部材の表面処理装置にある。
【0015】
本発明の第10の態様は、イソシアネート成分と有機溶剤とを含む第1の表面処理液にゴム部材を浸漬させた後、前記ゴム部材を、前記第1の表面処理液と相分離した第2の表面処理液、前記第2の表面処理液と相分離した第3の表面処理液へ移動させることによりゴム部材の表面を処理するためのものであり、底部から高さ方向の途中まで設けられた仕切り板により下部が二分割されて第1の表面処理液と第3の表面処理液とを分断した状態で収容すると共にその上部に第2の表面処理液を収容する容器と、少なくとも上層を構成する表面処理液を前記容器外へ排出する手段とを具備することを特徴とするゴム部材の表面処理装置にある。
【0016】
本発明の第11の態様は、第9又は第10の態様に記載のゴム部材の表面処理装置において、前記排出手段から排出される表面処理液を前記容器内へ導入する導入手段を具備することを特徴とするゴム部材の表面処理装置にある。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、OPCなどの汚染やリークの問題がなく、変形に対して追随性がある低硬度のゴム部材を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明のゴム部材の表面処理方法は、イソシアネート成分と有機溶媒とを含む第1の表面処理液をゴム部材に含浸させて含浸層を形成した後、空気に接触させることなく連続的に、含浸層中のイソシアネート成分の一部を除去する第2の表面処理液で当該ゴム部材の表面を処理するというものである。この表面処理方法によれば、ゴム部材に含浸した第1の表面処理液が揮発してしまうことがないため、第2の表面処理液による処理を、ゴム部材の表面全体に亘って均一に行うことができる。
【0019】
ゴム部材に第1の表面処理液を含浸させることで含浸層を形成し、第2の表面処理液により含浸層中のイソシアネート成分の一部を除去した後、乾燥硬化させることにより、ゴム部材の表層部にはゴム部材と一体となった表面処理層が形成される。この表面処理層は、表面側の上層部では表面より内部の方がイソシアネート成分の密度が大きく且つこの上層部の下側の下層部ではイソシアネート成分の密度が内部に向かって漸小したものとなる。
【0020】
すなわち、本発明のゴム部材の表面処理方法によれば、従来と同様にリークの防止や電気抵抗値の調整をすると共に汚染物質の内部からのブリードを防止するという機能を果たす下層部と、硬度の上昇を抑えた上層部とからなる表面処理層を有するゴム部材を得ることができる。このため、本発明のゴム部材の表面処理方法により得られたゴム部材は、OPCなどの汚染やリークの問題がなく、変形に対して追随性がある低硬度のゴム部材となる。
【0021】
ゴム部材の表面処理方法は、上述したように、イソシアネート成分と有機溶媒とを含む第1の表面処理液をゴム部材に含浸させて含浸層を形成した後、空気に接触させることなく連続的に、含浸層中の表層部のイソシアネート成分の一部を除去する第2の表面処理液で当該ゴム部材の表面を処理するものであればよい。例えば、第1の表面処理液からなる層の中にゴム部材を浸漬して含浸層を形成した後、このゴム部材を第1の表面処理液からなる層と相分離して形成された第2の表面処理液からなる層へ移動させることによりゴム部材の表面を処理する方法がある(以下、相分離処理とする)。このように、ゴム部材を、第1の表面処理液と第2の表面処理液からなる相分離した二層間を移動させることにより、空気に接触させることのない連続的な処理を容易に行うことができる。
【0022】
このような相分離処理を行う場合には、第1の表面処理液と第2の表面処理液とが相溶性が低く相分離するものを用いるが、第1の表面処理液が上層となっても下層となってもよい。第1の表面処理液の比重が第2の表面処理液の比重より小さくても大きくてもよいが、第1の表面処理液に第2の表面処理液より比重が大きいものを用いて、第1の表面処理液を下層となるようにするのが好ましい。この場合には、第1の表面処理液にゴム部材を浸漬させた後、第1の表面処理液からなる層の上に第2の表面処理液からなる層を形成し、第2の表面処理液を介してゴム部材を引き上げることで、空気に接触させることのない連続的な処理をより容易に行うことができる。この方法によれば、ゴム部材を引き上げる際にゴム部材の表面が第2の表面処理液に払拭されるような状態となり、ゴム部材の表面に付着した余分なイソシアネート成分が除去され、場合によっては、さらに含浸層中のイソシアネート成分の一部が均一に除去される。この表面処理方法は、従来のイソシアネート成分を含浸させた後、スポンジ等により拭き取る方法とは異なり、ゴム部材に含浸した第1の表面処理液が揮発してしまうことがなく、且つ第2の表面処理液がゴム部材の表面に均一に接触することにより、ゴム部材の表面全体に亘って均一な表面処理を行うことができる。
【0023】
また、ゴム部材の表面処理方法は相分離処理に限定されず、例えば、第1の表面処理液にゴム部材を浸漬させた後、第1の表面処理液からゴム部材を引き上げながら第2の表面処理液を噴霧することにより、空気に接触させることなく連続的にゴム部材の表面を処理する方法などが挙げられる。なお、第2の表面処理液の噴霧は、乾燥空気、または不活性ガス(窒素やアルゴン等)下で行うのが好ましい。空気中の水分とイソシアネート化合物が反応するのを抑制できるためである。
【0024】
ここで、本発明にかかる第1の表面処理液及び第2の表面処理液について説明する。
【0025】
第1の表面処理液は、上述したようにイソシアネート成分と有機溶媒とを含むものである。イソシアネート成分としては、2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、パラフェニレンジイソシアネート(PPDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)及び3,3−ジメチルジフェニル−4,4′−ジイソシアネート(TODI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)などのイソシアネート化合物、および前記の多量体および変性体などを挙げることができる。さらに、ポリオールとイソシアネートからなるプレポリマーを挙げることができる。
【0026】
また、第1の表面処理液に用いる有機溶剤は、イソシアネート成分、必要に応じて含有される後述するポリエーテル系ポリマー、アクリルフッ素系ポリマー及びアクリルシリコーン系ポリマーを溶解するものであれば、特に限定されないが、ゴム部材に比較的含浸されやすく且つゴム部材を膨潤させるものを用いるのがよく、ゴム部材を構成するゴム基材の種類によって異なるが、酢酸エチル、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、トルエン等の有機溶剤を用いればよい。相分離処理の場合、第2の表面処理液に使われる溶剤の種類によって異なるが、第1の表面処理液として、例えば、ヘキサンなどの非極性溶媒に対して相分離する非プロトン性極性溶媒を用いればよく、例えばN―メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトニトリル等の有機溶剤を用いればよい。
【0027】
第1の表面処理液には、ポリエーテル系ポリマーを含有させてもよい。ここで、ポリエーテル系ポリマーは、有機溶剤に可溶であるのが好ましく、また、活性水素を有し、イソシアネート成分と反応して化学的に結合可能なものが好ましい。
【0028】
活性水素を有する好適なポリエーテル系ポリマーとしては、例えば、エピクロルヒドリンゴムが挙げられる。ここでいうエピクロルヒドリンゴムは未加硫状態のものを指す。エピクロルヒドリンゴムは、表面処理層に導電性と共に弾性を付与することができるため好ましい。なお、エピクロルヒドリンゴムは、末端に活性水素(水酸基)を有しているが、ユニットに水酸基、アリル基などの活性水素を有しているものも好ましい。なお、エピクロルヒドリンゴムとしては、エピクロルヒドリン単独重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合体、エピクロルヒドリン−アリルグリシジルエーテル共重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体やその誘導体などを挙げることができる。
【0029】
活性水素を有する他の好適なポリエーテル系ポリマーとしては、水酸基又はアリル基を有するポリマーが挙げられ、例えば、ポリオール、グリコール等が挙げられる。このようなポリエーテル系ポリマーは活性水素を有する基を両末端に備えたものよりも片末端にのみ備えたものが好ましい。また、数平均分子量が300〜1000であることが好ましい。ゴム部材の表層部に形成される表面処理層に弾性を付与することができるためである。このようなポリエーテル系ポリマーとしては、例えば、ポリアルキレングリコールモノメチルエーテル、ポリアルキレングリコールジメチルエーテル、アリル化ポリエーテル、ポリアルキレングリコールジオール、ポリアルキレングリコールトリオール等を挙げることができる。
【0030】
このように第1の表面処理液にポリエーテル系ポリマーを添加することで、ゴム部材の表層部に形成される表面処理層の柔軟性や強度が向上し、その結果、所望のゴム部材の表面が摩耗したり、当接する感光体表面等を傷つけたりする虞がなくなる。
【0031】
また、第1の表面処理液には、アクリルフッ素系ポリマー及びアクリルシリコーン系ポリマーから選択されるポリマーを含有させてもよい。
【0032】
第1の表面処理液に用いられるアクリルフッ素系ポリマー及びアクリルシリコーン系ポリマーは、所定の溶剤に可溶でイソシアネート成分と反応して化学的に結合可能なものである。アクリルフッ素系ポリマーは、例えば、水酸基、アルキル基、又はカルボキシル基を有する溶剤可溶性のフッ素系ポリマーであり、例えば、アクリル酸エステルとアクリル酸フッ化アルキルのブロックコポリマーやその誘導体等を挙げることができる。また、アクリルシリコーン系ポリマーは、溶剤可溶性のシリコーン系ポリマーであり、例えば、アクリル酸エステルとアクリル酸シロキサンエステルのブロックコポリマーやその誘導体等を挙げることができる。
【0033】
また、第1の表面処理液には、導電性付与材としてさらにアセチレンブラック、ケッチェンブラック(ライオン社製)、トーカブラック(東海カーボン社製)等のカーボンブラックや、従来の表面処理液に用いられている導電性付与材(例えば、特開2007−31703参照)を添加してもよい。第1の表面処理液にカーボンブラックを用いる場合は、イソシアネート成分に対して0〜40質量%であるのが好ましい。多すぎると脱落、物性低下等の問題が生じ、好ましくないからである。
【0034】
また、第1の表面処理液中のアクリルフッ素系ポリマー及びアクリルシリコーン系ポリマーは、イソシアネート成分100質量部に対し、アクリルフッ素系ポリマー及びアクリルシリコーン系ポリマーの総量を2〜30質量部となるようにするのが好ましい。2質量部より少ないとカーボンブラック等を表面処理層中に保持する効果が小さくなる。一方、ポリマー量が多すぎると、帯電ロールの電気抵抗値が上昇し放電特性が低下するという問題や、相対的にイソシアネート成分が少なくなって有効な表面処理層が形成できないという問題がある。
【0035】
一方、第2の表面処理液は、ゴム部材の含浸層のうち最表層部のイソシアネート成分を除去できるものであれば特に限定されないが、イソシアネート成分を含有しないもの又はイソシアネート成分の濃度が第1の表面処理液と比較して著しく小さい有機溶剤主体のものが好ましい。
【0036】
第2の表面処理液に用いることができる有機溶剤は、第1の表面処理液に用いられる有機溶剤と同様にイソシアネート成分を溶解するものでもよいが、第1の表面処理液の有機溶剤よりイソシアネート成分を溶解しないものやゴム部材を膨潤し難いものの方が好ましい。第1の表面処理液の有機溶剤よりも又は同等にイソシアネート成分を溶解するものやゴム部材を膨潤するものを用いると、最表層部だけでなく、下層部に相当するゴム部材内部の汚染防止のためのイソシアネート成分も除去する虞が高く、工程上、精密な温度管理や時間管理が必要となるからである。
【0037】
相分離処理の場合、第2の表面処理液としては、イソシアネート成分に対して貧溶媒である非極性溶媒を用いることができ、例えば、ヘキサンやシクロヘキサンなどを挙げることができる。このような処理では、表面処理層の上層部を比較的薄く且つ均一に形成できるという利点がある。また、ヘキサンやシクロヘキサンは、空気中の水分を吸収する虞が少ないことから、相分離状態となった場合、第1の表面処理液中のイソシアネート成分に対する水分の影響が抑制され、第1の表面処理液のライフが長くなるという利点がある。
【0038】
一方、相分離処理ではない場合、第2の表面処理液としては、イソシアネート成分に対する良溶媒である極性溶媒を用いることができ、第1の表面処理液の有機溶媒と同様に酢酸エチルやメチルエチルケトン(MEK)を挙げることができる。このような有機溶剤を用いて処理した場合、上層部を比較的厚く形成でき、上層部が厚くなるほど、より低硬度のゴム部材とすることができる。
【0039】
乾燥硬化は、特に限定されず、イソシアネート成分をゴム部材内部で硬化させることができるものであればよく、イソシアネートの凝固点以下の温度に冷却した後、雰囲気の水分により硬化させる方法や、減圧下で溶媒を揮発させた後、熱や水分により硬化させる方法があり、一般的には、常温乾燥後、必要に応じて加熱処理する。なお、このときの加熱温度は、例えば、40〜150℃である。
【0040】
ゴム部材は、特に限定されるものではなく、ゴム基材に、必要に応じて導電性付与材を添加して成形・加硫したものである。ここで、ゴム基材としては、ポリウレタン、エピクロルヒドリンゴム、ニトリルゴム(NBR)、スチレンゴム(SBR)、クロロプレンゴム等を挙げることができる。
【0041】
また、導電性付与材としては、カーボンブラック、金属粉などの電子導電性付与材や、イオン導電付与材、又はこれらの両者を混合して用いることができる。イオン導電付与材としては、有機塩類、無機塩類、金属錯体、イオン性液体等が挙げられる。有機塩類、無機塩類としては、過塩素酸リチウム、4級アンモニウム塩、三フッ化酢酸ナトリウムなどが挙げられる。また、金属錯体としては、ハロゲン化第二鉄−エチレングリコールなどを挙げることができ、具体的には、特許第3655364号公報に記載されたものを挙げることができる。一方、イオン性液体は、室温で液体である溶融塩であり、常温溶融塩とも呼ばれるものであり、特に、融点が70℃以下、好ましくは30℃以下のものをいう。具体的には、特開2003−202722号公報に記載されたものを挙げることができる。
【0042】
図1(a)は、本発明のゴム部材の表面処理方法により得たゴムロールの一例の断面図であり、図1(b)は、かかるゴムロールの拡大断面図である。図1(a)に示すゴムロール10は、芯金11上にゴム基材に適宜導電性付与材等を加えて加熱硬化させた弾性層(ゴム部材)12を有するものであり、弾性層12の表層部は表面処理層12aとなっている。ここで、表面処理層12aは、表面側の上層部12cと、その下の下層部12bとからなる。上層部12cは、含浸しているイソシアネート成分の密度が表面より内部の方がイソシアネート成分の密度が大きく、例えば、表面から内部に向かって漸大する領域である。下層部12bはイソシアネート成分の密度が表面側から内部に向かって漸小する領域である。なお、上層部12cが存在するとは、表面側より内部の方がイソシアネート成分の密度が大きな領域があることを意味し、逆に表面側ほどイソシアネート成分の密度が小さい領域が存在すればよく、上層部12cの最表面においてはイソシアネート成分が実質的に存在しなくてもよい。また、このような上層部12cは、下層部12bとの境界を問題とするものではなく、存在することによって内部より表層の方が低硬度である状態を形成する。上層部12cは、最表層の硬度を低硬度(下層部12bより低硬度)とするために存在するので、例えば、厚さが少なくとも1μm以上、好適には10μm以上である。上層部12cは、使用する際に変形してニップを形成する領域以上まで存在しているのが特に好ましく、例えば、厚さが10〜100μm程度であることが好ましい。また、下層部12bは、厚さが100〜1000μm程度であるのが好ましい。上層部12c及び下層部12bの厚さは、例えば、導電性ゴム部材の表面を研磨して、各部位におけるゴム硬度や電気抵抗値から予測することができる。なお、ここでは、第2の表面処理液の処理においてゴムロールの表面に付着した余分なイソシアネート成分と共に含浸層中のイソシアネート成分の一部が除去されたゴムロールを例示して説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、第2の表面処理液においてゴムロールの表面に付着した余分なイソシアネート成分のみが除去された場合は、上層部12cが形成されることなく、表面処理層12aが下層部12bのみからなるゴムロールとなる。
【0043】
本発明のゴム部材の表面処理方法により形成したゴムロール10は、弾性層12の表層部に設けられた表面処理層12aが上層部12cと下層部12bとからなり、これらが弾性層12の表層部に一体的に設けられている。このような表面処理層12aの下層部12bは主にイソシアネート成分が硬化して形成されてイソシアネート成分の密度が表面から内部に向かって漸小(漸次疎)になるように一体的に形成されることにより、ゴムロール表面への可塑剤等汚染物質のブリードを防ぐことができ、感光体への耐汚染性に優れたゴムロールとなる。
【0044】
なお、ここでは、一層の弾性層12を有するゴムロール10の表面処理を行ったが、本発明にかかるゴム部材は特に限定されるものではない。例えば、ゴム部材は2層以上の構造からなるものであってもよく、発泡層でも無発泡層でもよく、ブレード形状やブラシ形状、ベルト形状、フィルム形状、シート形状及びチップ形状であってもよい。
【0045】
また、第2の表面処理液で処理した後に、さらに、第2の含浸層を形成する第3の表面処理液をゴム部材に含浸させた後、空気に接触させることなく連続的に、第2の表面処理液でゴム部材の表面を処理してゴム部材を得てもよい。第3の表面処理液により、ゴム部材に新たな性能を付与したり、ゴム部材の変形に対する追随性をより向上させたり、ゴム部材をより低硬度化させたりすることもできる。ここでいう第3の表面処理液は、第2の含浸層を形成できるものであれば特に限定されるものではなく、目的に応じて、適宜選択する。
【0046】
第2の含浸層は、上述した含浸層(以下、第1の含浸層とする)の浅い表層領域、例えば、イソシアネート成分の一部が除去された領域に形成されることが好ましいが、第1の含浸層と重なる領域、さらには第1の表層部より深い領域まで形成されてもよい。
【0047】
ここで、図1(c)及び図1(d)に、第1の含浸層の浅い表層領域に第2の含浸層を形成して硬化させたゴムロールの一例の断面図を示す。図1(c)及び図(d)に示すゴムロールは、イソシアネート成分を含有する第3の表面処理液を用いて、第1の含浸層の浅い表層領域に第2の含浸層を形成して硬化させたものである。第1の含浸層の浅い表層領域に第2の含浸層を形成することにより、イソシアネート成分の密度が表面側から内部に向かって漸小する領域である下層部12dと、イソシアネート成分の密度が表面側より内部の方がイソシアネート成分の密度が大きい上層部12eとが形成される。すなわち、このゴム部材は、表面処理層12aが下層部12bと下層部12dと上層部12eとからなるものとなる。なお、ここでは、2度目の第2の表面処理液の処理においてゴムロールの表面に付着した余分なイソシアネート成分と共に含浸層中のイソシアネート成分の一部が除去されたゴムロールを例示して説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、2度目の第2の表面処理液においてゴムロールの表面に付着した余分なイソシアネート成分のみが除去された場合は、上層部12eが形成されることなく、表面処理層12aが下層部12b及び下層部12dからなるゴムロールとなる。
【0048】
第3の表面処理液として、例えば、第1の表面処理液と同一のものを用いてもよい。すなわち、第2の表面処理液で処理した後に、さらに第1の表面処理液を含浸させて第2の含浸層を形成させ、その後、空気に接触させることなく連続的に、第2の表面処理液でゴム部材の表層部を処理してゴム部材を得てもよい。
【0049】
第3の表面処理液は、勿論、第1の表面処理液と異なるものであってもよい。第3の表面処理液としては、例えば、イソシアネート成分を含んだものが挙げられる。この第3の表面処理液は、さらに、ポリエーテル系ポリマー、アクリルフッ素系ポリマー、アクリルシリコーン系ポリマー、及び導電性付与材からなる群から選択される少なくとも1つを含有していてもよい。
【0050】
第3の表面処理液に用いるイソシアネート成分は、特に限定されず、第1の表面処理液のイソシアネート成分と同一のものを用いても、異なるものを用いてもよい。また、第1の表面処理液と同一のイソシアネート成分を用いる場合は、第3の表面処理液は、第1の表面処理液よりもイソシアネート成分の濃度が低いことが好ましい。ゴム部材の表面側のイソシアネート成分の密度が小さくなり、柔軟性を確保しやすくなるためである。
【0051】
上述したように、第3の表面処理液を適宜選択することにより、所望のゴム部材を得ることができる。例えば、第1の表面処理液として、汚染防止効果に優れたイソシアネート成分(MDI等)を用い、第3の表面処理液として、柔軟性を付与することができるイソシアネート成分(プレポリマー等)を用いることにより、汚染性に優れ且つより柔軟性に優れたゴム部材を得ることができる。また、例えば、第1の表面処理液として、カーボンブラックを含有しないものを用い、第3の表面処理液として、カーボンブラックを含有するものを用いることにより、表層部の特に浅い表層領域にカーボンブラックを有し、導電性に優れたゴム部材を得ることができる。また、例えば、第1の表面処理液として、汚染防止効果に優れたイソシアネート成分(MDI等)を用い、第3の表面処理液として、イソシアネート成分と共に、アクリルフッ素系ポリマー、アクリルシリコーン系ポリマー、ポリエーテル系ポリマーを用いることにより、トナー成分等の付着防止性能と、特に表層部の柔軟性に優れたゴム部材を得ることができる。
【0052】
また、第3の表面処理液は、イソシアネート成分を含有せずに、ポリエーテル系ポリマー、アクリルフッ素系ポリマー及びアクリルシリコーン系ポリマーからなる群から選択される少なくとも1つのポリマーと、有機溶媒からなるものであってもよい。この第3の表面処理液を用いることにより、柔軟性や強度をより向上させたゴム部材を得ることができる。
【0053】
上述した第3の表面処理液に用いる有機溶剤は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択すればよいが、第1の表面処理液で挙げたものと同様のものを用いることができる。
【0054】
また、第2の表面処理液で処理した後に、含浸層中のイソシアネート成分の一部をさらに除去する第4の表面処理液でゴム部材の表層部を処理してもよい。第4の表面処理液は有機溶剤からなる。第4の表面処理液は、特に限定されないが、第2の表面処理液よりもイソシアネート成分を溶解させることができるものが好ましい。相分離処理の場合は、第4の表面処理液(有機溶剤)は、第1の表面処理液で挙げたものと同様のものを用いることができ、第1の表面処理液の有機溶剤よりもイソシアネート成分を溶解しないものやゴム部材を膨潤し難いものの方が好ましい。なお、相分離処理ではない場合、第2の表面処理液で挙げたものと同様のものを用いることができる。
【0055】
本発明のゴム部材の表面処理方法によれば、OPCなどの汚染やリークの問題がなく、変形に対して追随性がある低硬度のゴム部材を得ることができる。
【0056】
本発明の表面処理方法により得られるゴム部材は、例えば、電子写真式複写機及びプリンター、またはトナージェット式複写機及びプリンターなどの画像形成装置の帯電ロール・現像ロール・クリーニングロール・トナー供給ロール・トナー規制ロール、さらには転写ロール・中間転写ロール、クリーニングブレード、ベルトなどに好適なものである。
【0057】
本発明のゴム部材の表面処理装置は、イソシアネート成分と有機溶剤とを含む第1の表面処理液にゴム部材を浸漬させた後、第1の表面処理液と相分離した第2の表面処理液へ前記ゴム部材を移動させることによりゴム部材の表面を処理するためのものである。
【0058】
ここで、実施形態に基づいて本発明のゴム部材の表面処理装置の詳細を説明する。なお、以下に示す実施形態は、本発明の一実施形態であり、本発明を限定するものではない。
【0059】
(実施形態1)
図2は実施形態1にかかるゴム部材の表面処理装置の断面図である。
【0060】
ゴム部材の表面処理装置の本体となる容器50は、例えば、円筒形又は多角筒形などの形状からなり、イソシアネート成分と有機溶媒とを含む第1の表面処理液と、当該第1の有機溶媒とは相分離する第2の表面処理液とを二層状態で収容するものである。
【0061】
容器50には、上層Aを構成する表面処理液を排出するための排出管21が挿入されており、排出管21の排出口21aは上層Aと下層Bの界面より下方となるように配置されている。ここで、排出管21は複数の筒状体から構成され、容器50内に供給した下層Bの液面よりも下方となるように上下に伸縮させることができるようになっている。
【0062】
この排出管21には、上層Aを構成する表面処理液を排出するためのポンプが設けられており、当該ポンプを介して容器50の外部に設けられたタンク20に接続されている。そして、このタンク20は、導入路22を介して容器50に接続されている。導入路22は、導入口22aが容器50の側壁の排出口21aよりも上方に設けられており、タンク20に貯蔵される上層Aを構成する表面処理液(及び下層Bを構成する表面処理液)を容器50内へ導入するようになっている。なお、導入路22には、開閉自在な弁、及び上層Aを構成する表面処理液(及び下層Bを構成する表面処理液)を送液するためのポンプが設けられている。
【0063】
一方、容器50の底壁には、下層Bを構成する表面処理液を排出するための排出路31が設けられている。排出路31は、容器50の外部に設けられたタンク30に接続されている。そして、このタンク30は、導入路32を介して容器50に接続されている。導入路32は、導入口32aが容器50の側壁の排出口21aよりも下方となるように設けられており、タンク30に貯蔵される下層Bを構成する表面処理液を容器50内へ導入するようになっている。なお、導入路32には、開閉自在な弁、及び上層Aを構成する表面処理液(及び下層Bを構成する表面処理液)を吐出するためのポンプが設けられている。
【0064】
本実施形態では、排出管21は伸縮できるものとしたが、伸縮できないものであってもよく、この場合には上層Aを構成する表面処理液及び下層Bを構成する表面処理液を容器内に導入する際に下層Bを構成する表面処理液が排出口21aより下方となるように調整する。
【0065】
また、本実施形態では、排出管21からポンプにより上層Aを構成する表面処理液を排出させたが、上層Aを構成する表面処理液を排出するための排出手段はこれに限定されない。例えば、容器50の側壁の上層Aと下層Bの界面より下方となるように排出路の排出口を設け、排出する際には上層Aを構成する表面処理液の自重により当該排出路から上層Aを構成する表面処理液を排出するようにしてもよい。
【0066】
導入路22の導入口22a、導入路32の導入口32aの位置は特に限定されない。また、本実施形態では導入路22及び導入路32の開口を容器50の側面に接続したが、導入路22及び導入路32は容器50に挿入するようにしてもよい。
【0067】
また、本実施形態では、タンク20、導入路22、排出路31、タンク30、及び導入路32を設けたが、いずれも必ずしも設ける必要はない。
【0068】
上述した構成からなるゴム部材の表面処理装置100Aを用いたゴム部材の表面処理方法について図3を用いて説明する。図3は、本発明のゴム部材の表面処理方法及び表面処理装置の一例を説明する図である。本実施形態において、上層Aは第2の表面処理液、下層Bは第1の表面処理液である。
【0069】
まず、図示しない供給路から容器50内に下層Bを構成する第1の表面処理液を供給し、下層Bの液面が排出管21の排出口21aよりも高い位置となるようにする。このとき、下層Bの液面がゴム部材を浸漬させるのに十分な高さとなるようにする。なお、下層Bの液面が所望の高さより高くなった場合には、排出路31から第1の表面処理液を排出して液面を調整する。
【0070】
そして、図3(a)に示すように、この下層B(第1の表面処理液)にゴム部材1を浸漬する。これにより、ゴム部材1に第1の表面処理液を含浸させる。
【0071】
次に、ゴム部材1を浸漬した下層Bに、図示しない供給路から容器50内に第1の表面処理液と相分離する第2の表面処理液(上層A)を所定の高さまで供給する。これにより、容器50内には、第1の表面処理液と第2の表面処理液とが二層状態に湛えられる。
【0072】
そして、図3(b)に示すように、下層B(第1の表面処理液)から上層A(第2の表面処理液)を介してゴム部材1をゆっくりと引き上げる。これにより、ゴム部材1に含浸したイソシアネート成分の表層の一部が除去される。これを加熱硬化等することにより、上述したゴム部材が得られる。
【0073】
新たにゴム部材の表面処理を行う場合には、排出管21に設けられたポンプで、容器50から第2の表面処理液及び少量の第1の表面処理液を排出する。
【0074】
ここで、第1の表面処理液が減少している場合には、タンク30に貯蔵された第1の表面処理液をポンプにより導入路32から導入、又は図示しない供給路から第1の表面処理液を供給することで、容器50内の第1の表面処理液(下層B)を補充する。
【0075】
そして、下層Bにゴム部材を浸漬させた後、タンク20に貯蔵された第2の表面処理液及び少量の第1の表面処理液を導入路22から容器50内に導入する。これにより、第2の表面処理液及び第1の表面処理液により二層が形成される。その後は、同様に、下層B(第1の表面処理液)から上層A(第2の表面処理液)を介してゴム部材をゆっくりと引き上げる。
【0076】
また、第1の表面処理液が上層A、第2の表面処理液が下層Bとなる場合に、ゴム部材の表面処理装置100Aを用いたゴム部材の表面処理方法を説明する。図4及び図5は、本発明のゴム部材の表面処理方法及び表面処理装置の一例を説明する図である。
【0077】
まず、図示しない供給路から第2の表面処理液(下層B)を供給した後、図示しない供給路から第1の表面処理液(上層A)を供給して二層を形成し、図4(a)に示すように、上層Aにゴム部材を浸漬させる。
【0078】
そして、図4(b)に示すように、上層Aから下層Bへゴム部材1を移動させる。
【0079】
その後、図5(a)に示すように、排出管21に設けられたポンプで、容器50から第1の表面処理液及び少量の第2の表面処理液を排出し、これらをタンク20へ貯蔵する。最後に図5(b)に示すように、下層Bからゴム部材1を引き上げる。
【0080】
新たにゴム部材の表面処理を行う場合には、導入路22に設けられたポンプでタンク20に貯蔵された第1の表面処理液及び少量の第2の表面処理液を容器50に導入する。
【0081】
このように、本実施形態のゴム部材の表面処理装置は、第1の表面処理液及び第2の表面処理液を再利用することができ、低コストでゴム部材を製造することができるだけでなく、環境の汚染を防止したものとなる。
【0082】
(実施形態2)
図6は実施形態2にかかるゴム部材の表面処理装置の断面図である。実施形態1と同一部分には同一番号を付し、重複する説明は省略する。
【0083】
ゴム部材の表面処理装置の本体となる容器50は、底部から高さ方向途中まで設けられた仕切り板51により、下部に二層を収容することができる。この仕切り板51は、容器50の下部を分割するものであり、溶液の移動を規制できるものであればよい。このような容器50は、下層Bと下層Cとを分断した状態で収容すると共に、上部に上層Aを収容することができる。なお、上層Aと下層B、上層Aと下層Cとの界面は、仕切り板51の上端部よりも下方となるようにする。
【0084】
また、容器50には、上層Aを構成する表面処理液を排出するための排出管21Bが挿入されている。この排出管21Bの排出口21bは、仕切り板51の上端部よりも下方で且つ上層Aと下層Bの界面より下方となるように配置されている。
【0085】
この排出管21Bには、上層Aを構成する第1の表面処理液を排出するためのポンプが設けられており、当該ポンプを介して容器50の外部に設けられたタンク20Bに接続されている。そして、このタンク20Bは、導入路22Bを介して容器50に接続されている。導入路22Bは、導入口22bが容器50の側壁の排出口21bよりも上方に設けられており、タンク20Bに貯蔵される上層Aを構成する表面処理液(及び下層Bを構成する表面処理液)を容器50内へ導入するようになっている。また、導入路22Bは、導入口22bが容器50の側壁の排出口21bよりも上方に設けられており、タンク20Bに貯蔵される上層Aを構成する表面処理液(及び下層Bを構成する表面処理液)を容器50内へ導入するようになっている。なお、導入路22Bには、開閉自在な弁、及び上層Aを構成する表面処理液(及び下層Cを構成する表面処理液)を送液するためのポンプが設けられている。
【0086】
また、容器50の下層C側の側面には、開閉自在な弁が設けられた排出路40が設けられている。この排出路40の排出口40cは、排出口21bと同程度の高さに設けられており、上層Aと下層Cの界面付近の表面処理液を排出するためのものである。
【0087】
上述した構成からなるゴム部材の表面処理装置100Bを用いたゴム部材の表面処理方法について図7及び図8を用いて説明する。図7及び図8は、本発明のゴム部材の表面処理方法及び表面処理装置の一例を説明する図である。本実施形態において、上層Aは第2の表面処理液、下層Bは第1の表面処理液、下層Cは第3の表面処理液である。
【0088】
まず、図示しない供給路から容器50内に下層Bを構成する第1の表面処理液を供給する。このとき、下層Bの液面が排出管21Bの排出口21bよりも高い位置で且つ仕切り板51よりも低い位置となるようにする。また、下層Bの液面がゴム部材を浸漬させるのに十分な高さとなるようにする。また、下層Cを構成する第3の表面処理液を供給し、同様の方法により、下層Cを形成する。このとき、下層Cの液面がゴム部材を浸漬させるのに十分な高さとなるようにする。なお、下層Bの液面と下層Cの液面は必ずしも同じ高さである必要はないが、同程度であることが好ましい。
【0089】
そして、図7(a)に示すように、下層B(第1の表面処理液)にゴム部材1を浸漬する。これにより、ゴム部材1に第1の表面処理液を含浸させる。
【0090】
次に、ゴム部材1を浸漬した下層Bに、図示しない供給路から容器50内に第1の表面処理液と相分離する第2の表面処理液を所定の高さまで供給する。これにより、容器50内には、第1の表面処理液と第2の表面処理液とが相分離した状態に湛えられると同時に、第3の表面処理液と第2の表面処理液とが相分離した状態に湛えられる。このとき、上層Aはゴム部材を浸漬させるのに十分な高さとなるようにする。
【0091】
そして、図7(b)に示すように、下層B(第1の表面処理液)から上層A(第2の表面処理液)までゴム部材1をゆっくりと引き上げ、ゴム部材1が下層Bと上層Aの界面より引き上げたところで、径方向に回転させながら下層Cの上方へと移動させる。
【0092】
次に、図8(a)に示すように、ゴム部材1を下層Cに浸漬させる。そして、上層Aと下層Cとの界面付近に、ゴム部材1から溶出した第1の表面処理液が存在する場合は、排出口40cから少なくとも第1の表面処理液を排出する。
【0093】
最後に、図8(b)に示すように、上層Aを介してゴム部材1をゆっくりと引き上げる。これを加熱硬化等することにより、ゴム部材が得られる。
【0094】
新たにゴム部材の表面処理を行う場合には、排出管21Bに設けられたポンプで、容器50から第2の表面処理液及び少量の第1の表面処理液を排出する。このとき、容器50の下層C側には、第2の表面処理液(上層Aの一部)が残っていてもよい。
【0095】
ここで、第1の表面処理液が減少している場合には、図示しない供給路から第1の表面処理液を供給することで、容器50内の第1の表面処理液(下層B)を補充する。第3の表面処理液が減少している場合には、図示しない供給路から第3の表面処理液を供給することで、容器50内の第3の表面処理液(下層C)を補充する。このとき、下層Bの液面及び下層Cの液面はそれぞれ仕切り板51の上端部より下方となるようにする。
【0096】
そして、下層Bにゴム部材を浸漬させた後、タンク20Bに貯蔵された第2の表面処理液及び少量の第1の表面処理液を導入路22Bから容器50内に導入する。その後は、上述した操作と同様に行う。
【0097】
このように、実施形態2のゴム部材の表面処理装置は、第1の表面処理液、第2の表面処理液、第3の表面処理液を再利用することができ、低コストでゴム部材を製造することができるだけでなく、環境の汚染を防止したものとなる。
【0098】
なお、実施形態2では、排出管21Bの排出口21bは、仕切り板51の上端部よりも下方で且つ上層Aと下層Bの界面より下方となるように配置したが、さらに、下層C側に排出管を設けて、上層Aを構成する表面処理液及び下層Cを構成する第3の表面処理液を排出するようにしてもよい。下層C側に排出管を設ける場合は、排出口を仕切り板51の上端部よりも下方で且つ上層Aと下層Cの界面より下方に配置する。
【0099】
また、仕切り板51を容器50の上部まで設けて、上層Aも分断した状態で収容しても良い。この場合は、第2の表面処理液からゴム部材1を引き上げた際、空気中の水分と接触しないように、容器50内を乾燥空気、または不活性ガス(窒素やアルゴン等)で置換を行う。また、第3の表面処理液へのゴム部材1の浸漬は、ゴム部材1の表面が部分的に乾燥していないこと、または均一に乾燥していることを確認してから行う。ゴム部材1が半乾燥状態のまま、第3の表面処理液への浸漬を行うと、乾燥状態によって処理にムラが発生してしまうからである。
【0100】
上述したようなゴム部材の表面処理装置を用いることにより、OPCなどの汚染やリークの問題がなく、変形に対して追随性がある低硬度のゴム部材を得ることができる。
【0101】
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0102】
(実施例1)
<ロールの製造>
3官能ポリエーテル系ポリオールであるMN−3050(三井武田ケミカル製)100質量部に、ケッチェンブラックEC(ケッチェンブラックインターナショナル社製)3質量部及び旭#60(旭カーボン)5質量部を添加し、粒度が20μm以下となる程度まで分散させ、80℃に温調した後、減圧下にて6時間、脱泡、脱水操作を行ってA液を得た。一方、プレポリマーアジプレンL100(ユニロイヤル社製)22質量部に、コロネートC−HX(日本ポリウレタン社製)10質量部を添加・混合し、80℃に温調してB液を得た。このA液とB液とを混合し、あらかじめシャフト(φ:8mm、l:270mm)が中央に配置されている120℃に予熱された直径23mmの鉄製パイプ金型に注入し、120℃にて120分間加熱し、両端部を除くシャフト表面に導電性ポリウレタン層が形成されたロールを得た。このロールの表面を1.5mm研磨し、外径を20mmに調整し、ロール(未処理)を得た。
【0103】
<第1の表面処理液の調製>
N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)100質量部に、イソシアネート化合物(MDI)10質量部を添加・混合して溶解させ、第1の表面処理液を作製した。
【0104】
<ロールの表面処理>
23℃に保った第1の表面処理液に製造したロールを30秒間浸漬させた後、第2の表面処理液としてn−ヘキサン100質量部を静かに加えて相分離状態とし、250mm/minの速度で引き上げ、120℃に保持されたオーブンで1時間加熱することにより表面処理層を形成し、導電性ロールを得た。
【0105】
(実施例2)
<第1の表面処理液の調製>
N−メチルピロリドン100質量部に、イソシアネート化合物(HDI)10質量部を添加混合溶解させ、第1の表面処理液を作製した。
【0106】
<ロールの表面処理>
23℃に保った第1の表面処理液に実施例1で製造したロール(未処理)を30秒間浸漬後、表面処理液にn−ヘキサン100質量部を静かに加えて相分離状態とし、250mm/minの速度で引き上げ、120℃に保持されたオーブンで1時間加熱することにより表面処理層を形成し、導電性ロールを得た。
【0107】
(実施例3)
<ロールの製造>
エピクロルヒドリンゴム(エピクロマーCG−102;ダイソー社製)100質量部に対して、導電材として過塩素酸テトラエチルアンモニウム(関東化学社製)0.5質量部、可塑剤としてジ(2−エチルヘキシル)フタレート(DOP)を3質量部、酸化亜鉛(ZnO)5質量部、加硫剤としての2−メルカプトイミダゾリン(アクセル−22)2質量部をロールミキサーで混練りし、直径6mmの金属製シャフトの表面にプレス成形し、直径12mmに研磨加工してシャフト表面にゴム弾性部材が形成されたロール(未処理)を得た。
【0108】
<第1の表面処理液の調製>
アセトニトリル100質量部に、プレポリマーアジプレンL100(ユニロイヤル社製)10質量部を添加・混合して溶解させ、第1の表面処理液を作製した。
【0109】
<ロールの表面処理>
23℃に保った第1の表面処理液に、製造したロールを60秒間浸漬後、第2の表面処理液としてシクロヘキサン100部を静かに加えて相分離状態とし、250mm/minの速度で引き上げ、120℃に保持されたオーブンで1時間加熱することにより表面処理層を形成し、導電性ロールを得た。
【0110】
(実施例4)
<第3の表面処理液の調製>
アセトニトリル100質量部に、アセチレンブラック(電気化学社製)3質量部、及びアクリルフッ素ポリマー(モディパーF600;日本油脂社製)1質量部、アクリルシリコーン系ポリマー(モディパーFS700;日本油脂社製)1質量部、ポリエチレングリコールジアリルエーテル(分子量450)1.5質量部をボールミルで3時間分散混合した後、プレポリマーアジプレンL100(ユニロイヤル社製)10質量部を添加混合溶解させ、第3の表面処理液を作製した。
【0111】
<ロールの表面処理>
23℃に保った実施例1の第1の表面処理液に、製造したロールを60秒間浸漬後、第2の表面処理液としてシクロヘキサン100質量部を静かに加えて相分離状態とし、250mm/minの速度で第1の表面処理液から引き上げ、第2の表面処理液中に10秒間保持した。次に、第2の表面処理液から、第3の表面処理液にロールを移動させ、60秒間浸漬させた。その後、再び、250mm/minの速度で第3の表面処理液ならびに第2の表面処理液からロールを引き上げ、120℃に保持されたオーブンで1時間加熱することにより表面処理層を形成し、導電性ロールを得た。
【0112】
(比較例1)
n−ヘキサンを加えなかった以外は、実施例1と同様にして、導電性ロールを得た。
【0113】
(比較例2)
第1の表面処理液に浸漬後、ロールの表面をn−ヘキサンを浸み込ませたスポンジで払拭した以外は、比較例1と同様にして、導電性ロールを得た。
【0114】
(比較例3)
シクロヘキサンを加えなかった以外は、実施例3と同様にして、導電性ロールを得た。
【0115】
(比較例4)
第1の表面処理液にロールを浸漬後取り出し、23℃に保ったシクロヘキサンに60秒間浸漬した以外は、実施例3と同様にして、導電性ロールを得た。
【0116】
(比較例5)
シクロヘキサンの代わりにアセトニトリルを用いた以外は、比較例4と同様にして、導電性ロールを得た。
【0117】
(試験例1):ロールのマイクロ硬度測定
各未処理品の導電性ロール、各実施例及び各比較例の導電性ロールのマイクロ硬度(Hs)を、マイクロ硬度計(MD−1:高分子計器株式会社製)を用いて測定した。この結果を表1及び表2に示す。
【0118】
(試験例2):ロールの電気抵抗値測定
各未処理品の導電性ロール、各実施例及び各比較例の導電性ロールについて、印加電圧を100Vとしたときの電気抵抗値を測定した。電気抵抗値の測定は、NN環境(23℃、55%RH)下、ロールをSUS304板からなる電極部材の上に置いてロールの両端に500g荷重をかけた状態で、電圧を30秒間印加した後、芯金と電極部材との間の抵抗値を、ULTRAHIGH RESISTANCE METER R8340A(株式会社アドバンテスト製)を用いて測定した。なお、周方向に45°ずつ回転させて回転方向に亘って8ヶ所測定し、そのときの最大値、最小値、平均値をそれぞれ測定した。この結果を表1及び表2に示す。
【0119】
(試験例3):表面状態の観察
各実施例、各比較例の導電性ロールについて、ロールの表面状態を目視にて確認した。なお、表面の状態が良好であった場合は○、表面の状態が普通であった場合は△、表面の状態が不良であった場合は×とした。この結果を下記表1及び表2に示す。
【0120】
(試験例4):画像評価
実施例1、2、比較例1、2の導電性ロールを現像ロールとし、実施例3、比較例3〜5の導電性ロールを帯電ロールとして、それぞれ市販のレーザープリンター(MICROLINE9600PS 株式会社沖データ製)に実装し、NN環境(23℃、55%RH)下、1万枚通紙後の印刷物の画像変化を目視にて確認した。なお、画像が良好であった場合は○、画像が普通であった場合は△、画像が不良であった場合は×とした。この結果を表1及び表2に示す。
【0121】
【表1】

【0122】
【表2】

【0123】
(試験結果のまとめ)
イソシアネート化合物と有機溶媒とを含む第1の表面処理液をゴム部材に含浸させた後、空気に接触させることなく連続的に当該ゴム部材の表面を第2の表面処理液で処理を行った実施例1〜3の導電性ロールは、従来の表面処理を行った比較例1、3の導電性ロールよりも、マイクロ硬度ならびに電気抵抗値が低くなっていることが確認された。また、第1、第2の表面処理液で処理を行い、さらに第3の表面処理液で処理を行った実施例4の導電性ロールにおいても、同様にマイクロ硬度ならびに電気抵抗値が低くなっていることが確認された。また、実施例1〜4の導電性ロールはいずれも1万枚通紙後の画像評価において、印刷物の画像は良好であったのに対し、比較例1の導電性ロールはロール表面にワレが発生し、比較例3の導電性ロールは、さらに感光体にもキズがついてしまい、印刷物の画像はともに不良であった。
【0124】
第1の表面処理液に浸漬後、ロールの表面を、n−ヘキサンを浸み込ませたスポンジで払拭処理をした比較例2の導電性ロールは、マイクロ硬度ならびに電気抵抗値が、実施例1及び2の導電性ロールと同等レベルまで低くなっていることが確認されたが、拭きムラによる電気抵抗値の大きなバラつきが見られた。また、画像評価においては、印刷物の画像に濃度ムラが見られ、不良の評価であった。
【0125】
第1の表面処理液にロールを浸漬後、シクロヘキサンに60秒間浸漬した比較例4の導電性ロールは、マイクロ硬度、電気抵抗値ともに、従来の表面処理を行った比較例3よりも低くなったが、半乾燥状態のロールを溶媒に再度、浸漬させたことで表面に処理ムラが発生したためか、電気抵抗値に若干のバラつきが見られた。また、画像評価においては、印刷物の画像に若干の濃度ムラが見られ、やや不良の評価であった。
【0126】
一方、第1の表面処理液にロールを浸漬後、アセトニトリルに60秒間浸漬した比較例5の導電性ロールは、比較例4の導電性ロールよりもさらに、マイクロ硬度と電気抵抗値の低下が見られたが、比較例4の導電性ロールと同様に処理ムラが見られ、電気抵抗値は若干のバラつきが見られた。画像評価においては、印刷物の画像に濃度ムラが見られ、不良の評価であった。また、アセトニトリルに浸漬したことによって、必要以上に表面処理層のイソシアネートの濃度が低下してしまったのか、可塑剤によるOPC汚染が見られた。
【0127】
以上より、イソシアネート成分と有機溶媒とを含む第1の表面処理液をゴム部材に含浸させて含浸層を形成した後、空気に接触させることなく連続的に、含浸層中のイソシアネート成分の一部を除去する第2の表面処理液で当該ゴム部材の表面を処理することにより、OPCなどの汚染やリークの問題がなく、変形に対して追随性がある低硬度のゴム部材を得ることができることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】本発明のゴム部材の表面処理方法により得たゴムロールの一例の断面図である。
【図2】本発明の実施形態1にかかるゴム部材の表面処理装置の断面図である。
【図3】本発明のゴム部材の表面処理方法及び表面処理装置の一例を説明する図である。
【図4】本発明のゴム部材の表面処理方法及び表面処理装置の一例を説明する図である。
【図5】本発明のゴム部材の表面処理方法及び表面処理装置の一例を説明する図である。
【図6】本発明の実施形態2にかかるゴム部材の表面処理装置の断面図である。
【図7】本発明のゴム部材の表面処理方法及び表面処理装置の一例を説明する図である。
【図8】本発明のゴム部材の表面処理方法及び表面処理装置の一例を説明する図である。
【符号の説明】
【0129】
1 ゴム部材
20 タンク
21 排出管
22 導入路
30 タンク
31 排出路
32 導入路
50 容器
100A, 100B 表面処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソシアネート成分と有機溶媒とを含む第1の表面処理液をゴム部材に含浸させて含浸層を形成した後、空気に接触させることなく連続的に、前記含浸層中のイソシアネート成分の一部を除去する第2の表面処理液で当該ゴム部材の表面を処理することを特徴とするゴム部材の表面処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載のゴム部材の表面処理方法において、前記第1の表面処理液からなる層の中に前記ゴム部材を浸漬して含浸層を形成した後、このゴム部材を前記第1の表面処理液からなる層と相分離して形成された第2の表面処理液からなる層へ移動させることを特徴とするゴム部材の表面処理方法。
【請求項3】
請求項2に記載のゴム部材の表面処理方法において、前記第1の表面処理液に前記ゴム部材を浸漬させた後、前記第1の表面処理液からなる層の上に前記第2の表面処理液からなる層を形成し、当該第2の表面処理液を介して前記ゴム部材を引き上げることを特徴とするゴム部材の表面処理方法。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載のゴム部材の表面処理方法において、前記有機溶媒が非プロトン性極性溶媒であることを特徴とするゴム部材の表面処理方法。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかに記載のゴム部材の表面処理方法において、前記第2の表面処理液が非極性溶媒からなることを特徴とするゴム部材の表面処理方法。
【請求項6】
請求項1〜5の何れかに記載のゴム部材の表面処理方法において、前記第2の表面処理液で処理した後に、さらに、第2の含浸層を形成する第3の表面処理液を前記ゴム部材に含浸させた後、空気に接触させることなく連続的に、前記第2の表面処理液で当該ゴム部材の表面を処理することを特徴とするゴム部材の表面処理方法。
【請求項7】
請求項1〜5の何れかに記載のゴム部材の表面処理方法において、前記第2の表面処理液で処理した後に、前記含浸層中のイソシアネート成分の一部をさらに除去する第4の表面処理液で当該ゴム部材の表層部を処理することを特徴とするゴム部材の表面処理方法。
【請求項8】
請求項6に記載のゴム部材の表面処理方法において、前記第3の表面処理液は、イソシアネート化合物と、導電性付与材、アクリルフッ素系ポリマー、及びアクリルシリコーン系ポリマーから選択される少なくとも一つとを含有することを特徴とするゴム部材の表面処理方法。
【請求項9】
イソシアネート成分と有機溶剤とを含む第1の表面処理液にゴム部材を浸漬させた後、前記第1の表面処理液と相分離した第2の表面処理液へ前記ゴム部材を移動させることによりゴム部材の表面を処理するためのものであり、前記第1の表面処理液と前記第2の表面処理液とを相分離した状態で収容する容器と、少なくとも上層を構成する表面処理液を前記容器外へ排出する手段とを具備することを特徴とするゴム部材の表面処理装置。
【請求項10】
イソシアネート成分と有機溶剤とを含む第1の表面処理液にゴム部材を浸漬させた後、前記ゴム部材を、前記第1の表面処理液と相分離した第2の表面処理液、前記第2の表面処理液と相分離した第3の表面処理液へ移動させることによりゴム部材の表面を処理するためのものであり、底部から高さ方向の途中まで設けられた仕切り板により下部が二分割されて第1の表面処理液と第3の表面処理液とを分断した状態で収容すると共にその上部に第2の表面処理液を収容する容器と、少なくとも上層を構成する表面処理液を前記容器外へ排出する手段とを具備することを特徴とするゴム部材の表面処理装置。
【請求項11】
請求項9又は10に記載のゴム部材の表面処理装置において、前記排出手段から排出される表面処理液を前記容器内へ導入する導入手段を具備することを特徴とするゴム部材の表面処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2009−102634(P2009−102634A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−257880(P2008−257880)
【出願日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【出願人】(000227412)シンジーテック株式会社 (99)
【Fターム(参考)】