説明

ゴム部材及び空気入りタイヤ

【課題】コード端面を起点とする亀裂の発生を抑制するゴム部材を提供する。
【解決手段】ゴムのシートに複数本のコード10が埋設され、コード10の端面10bに加硫接着剤が塗布されている。このため、ゴム11をコーティングした場合、コード1とゴム11との間に隙間が無く、自由端が無くなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数本のコードが埋設されたゴム部材及びゴム部材を用いた空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、タイヤの補強に使用されるベルト層など、複数本のコードが埋設されたゴム部材がある。ベルト層においては、図4に示すように、耐ベルト端セパレーション性を向上させるために、スチールのコード周面110aにめっき層を配し、コーティングゴムも熱老化が少なく、耐亀裂進展性に優れるものを用いることが通常である(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一方、コード110の端面110bには、製造工程の制約上、めっき層が施されていない。
【特許文献1】特開平4−19201号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このため、ゴム部材をタイヤに組み込んだ場合、コード110の端面110bを起点として、様々な亀裂が進展し、タイヤの破壊に至る場合があった。又、図5に示すように、コード110の端面110bとゴム11との隙間12にタイヤの亀裂等で水分が浸透したとき、その水分がコード110の端面110bに接触して腐蝕の原因となり、更にその腐蝕の進行でコード110にセパレーション現象が生じ、タイヤの耐久性を低下させてしまう。
【0005】
そこで、本発明は、上記の問題に鑑み、コード端面を起点とする亀裂の発生を抑制するゴム部材及び空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の第1の特徴は、ゴムのシートに複数本のコードが埋設されたゴム部材であって、コードの端面に加硫接着剤が塗布されているゴム部材であることを要旨とする。
【0007】
第1の特徴に係るゴム部材によると、コードの端面とゴムとの接着加工を行うことで、自由端を無くし、コード端面を起点とする亀裂の発生を抑制することができる。
【0008】
本発明の第2の特徴は、ゴムのシートに複数本のコードが埋設され、コードの端面に加硫接着剤が塗布されているゴム部材をタイヤ部材として用いる空気入りタイヤであることを要旨とする。
【0009】
第2の特徴に係る空気入りタイヤによると、コードの端面とゴムとの接着加工を行うことで、自由端を無くし、コード端面を起点とする亀裂の発生を抑制するゴム部材を用いることができる。このため、耐久性に優れた空気入りタイヤを提供することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、コード端面を起点とする亀裂の発生を抑制するゴム部材及び空気入りタイヤを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。従って、具体的な寸法等は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0012】
(ゴム部材)
例えば、タイヤの補強に使用されるスチールコードは、まず複数本のコードが平行に引き揃えられて、帯状のゴムのシート内に埋設される。そして、このゴムのシートを斜めにバイアスカットすることにより、図1に示すような短冊状のゴム部材を得る。このゴム部材は、タイヤのベルト層等に組み込まれて、その補強に使用される。
【0013】
本実施形態に係るゴム部材では、図1に示すように、バイアスカットされたゴム11の端面には、コード10の端面10bが露出する。又、コード10の端面10bに加硫接着剤が塗布されている。
【0014】
ここで、「加硫接着剤」とは、ゴムの加硫成型時の熱と圧力を利用して、加硫と同時に金属や有機繊維とゴムとの接着を行うものをいう。例えば、加硫接着剤としては、トルエン等で希釈された有機化合物と鉱物質充填剤との混合物による接着剤が用いられる。具体的には、ロードコーポレーションのケムロックなどが挙げられる。
【0015】
又、図2に、ゴム部材をタイヤの内部に組み込んだときの断面図を示す。上述したように、端面10bに加硫接着剤を塗布することにより、コード1とゴム11との間に隙間が無く、自由端が無くなる。
【0016】
尚、本実施形態に係るゴム部材は、タイヤに限らず、ベルトコンベア等に組み込まれてもよい。
【0017】
又、コードの材質は、金属でも有機繊維でも構わない。
【0018】
(ゴム部材の製造方法)
次に、本実施形態に係るゴム部材の製造方法について説明する。
【0019】
まず、有機繊維やスチールワイヤーからなるコード10を簾織りしたものに、カレンダーなどによってゴム11をコーティングしたゴム部材を作成する。
【0020】
次に、このゴム部材をタイヤのサイズなどに応じて所要の巾、角度に裁断する。
【0021】
次に、裁断後のゴム部材の端面において、露出したコード1の端面10bに加硫接着剤を塗布する。塗布方法としては、例えば、刷毛による塗布、スプレーによる散布、加硫接着剤を満たした接着槽に浸すことなどが挙げられる。尚、このとき、コード1の端面10b以外に加硫接着剤が付着しても構わない。又、塗布する加硫接着剤の膜厚は、200μm以下とする。
【0022】
次に、塗布後のゴム部材を30分以上乾燥させる。
【0023】
その後、ゴム部材同士を結合し、タイヤに組み込む成型工程などを経て、加硫工程を行う。この加硫工程における熱と圧力を利用して、コード10の端面10bとゴム11との接着が行われる。
【0024】
(空気入りタイヤ)
上述したゴム部材は、空気入りタイヤのタイヤ部材として用いることができる。
【0025】
本発明の実施の形態に係る空気入りタイヤ100は、図3に示すように、一対のビード部1及び一対のサイドウォール部2と、サイドウォール部2相互間にわたりトロイド状に連なるトレッド部3とを備える。カーカス5はビード部1内に埋設した一対のビードコア4相互間にわたってビード部1、サイドウォール部2及びトレッド部3を補強するトロイド状ラジアルカーカスであり、カーカス5のクラウン部周上には、1層以上のベルト層6を配置し、トレッド部3を強化する。図1では、ベルト層6を2層積層している。
【0026】
ベルト層6は、有機繊維やスチールワイヤーからなるコードを簾織りしたものに、ゴムをコーティングして形成される。このコードの端面には、加硫接着剤が塗布されている。
【0027】
又、本実施形態に係る空気入りタイヤは、ベルト層6に限らず、カーカスプライや、ベルト補強層に上述したゴム部材を用いてもよい。
【0028】
(作用及び効果)
従来、ゴム部材のコード110の端面110bは、図5に示すように、隙間12が存在していた。本実施形態に係るゴム部材は、図2に示すように、コードの10端面10bとゴム11との接着加工を行うことで、隙間が存在しないので、コード端面を起点とした亀裂が発生しない。
【0029】
又、上記のゴム部材を用いた空気入りタイヤは、コード端面10bを起点とする亀裂が発生しないので、耐久性を向上させることができる。
【0030】
又、加硫接着剤としては、樹脂とゴムとの接着剤、金属とゴムとの接着剤など多種類の接着剤が開発されている。このため、コードがスチールコードであっても、有機繊維コードであっても適用することが可能である。
【0031】
又、ゴム部材の製造方法において、コード端面に加硫接着剤を塗布した後、すぐに結合する必要はなく、放置することができる。このため、生産性への影響が少ない。
【実施例】
【0032】
以下に実施例を挙げて、本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0033】
本発明の効果を確かめるために、本発明が適用された実施例のタイヤ1種、従来例のタイヤ1種を製造し、耐久性を調べた。実施例、従来例共に、サイズ11/70R22.5のタイヤであった。
【0034】
又、実施例1は、図1に示すコード端面10bを加硫接着剤加工したベルト層を有するタイヤを用い、従来例1は、図4に示すコード端面110bを加硫接着剤加工しない従来製法のベルト層を有するタイヤを用いた。
【0035】
(耐久性)
試供タイヤを標準リムに組み付けたのち、900kPaの空気圧に調整し、最大負荷能力(3150kg)の1.5倍の荷重で、ドラム上を60km/hの速度で走行させて、破壊に至るまでの走行距離を測定した。測定地は、従来タイヤの走行距離を100として指数化することにより評価した。この指数が大きいほど、耐久性に優れることを示している。
【0036】
(結果)
結果を表1に示す。
【表1】

【0037】
実施例1は、従来例1と比較すると、耐久性が向上していた。よって、コードの端面に加硫接着剤が塗布されているゴム部材を用いることにより、耐久性が向上することが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本実施形態に係るゴム部材のコード拡大斜視図である。
【図2】本実施形態に係るゴム部材の断面図である。
【図3】本実施形態に係る空気入りタイヤの回転軸心を含む断面図である。
【図4】本実施形態に係るゴム部材のコード拡大斜視図である。
【図5】本実施形態に係るゴム部材の断面図である。
【符号の説明】
【0039】
1…ビード部
2…サイドウォール部
3…トレッド部
4…ビードコア
5…カーカス
6…ベルト層
10、110…コード
10a、110a…周面
10b、110b…端面
11…ゴム
12…隙間
100…空気入りタイヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴムのシートに複数本のコードが埋設されたゴム部材であって、
前記コードの端面に加硫接着剤が塗布されていることを特徴とするゴム部材。
【請求項2】
ゴムのシートに複数本のコードが埋設され、前記コードの端面に加硫接着剤が塗布されているゴム部材をタイヤ部材として用いることを特徴とする空気入りタイヤ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−117192(P2006−117192A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−309709(P2004−309709)
【出願日】平成16年10月25日(2004.10.25)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】