説明

ゴム金属積層体

【課題】金属/接着剤層/パーフルオロエラストマー層積層体よりなるゴム金属積層体において、パーフルオロエラストマー層の金属に対する層間接着性や金属に積層されたパーフルオロエラストマー層表面のあばた性を改善せしめたものを提供する。
【解決手段】金属/接着剤層/パーフルオロエラストマー層積層体のパーフルオロエラストマー層が、パーフルオロエラストマー100重量部当り2〜10重量部のフッ化ビニリデン-クロロトリフルオロエチレン共重合体をブレンドしたブレンド物の加硫物層によって形成されたゴム金属積層体。本発明に係るゴム金属積層体にあっては、パーフルオロエラストマーの金属に対する層間接着性や金属に積層されたパーフルオロエラストマー層表面のあばた性(クレーター状の凹凸ができる状態)の点での有効な改善が図られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム金属積層体に関する。さらに詳しくは、金属/接着剤層/パーフルオロエラストマー層積層体よりなるゴム金属積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高温環境下で使用される各種シール部品の成形材料としてはフッ素ゴムが使用されているが、自動車エンジンの高性能化などにより、さらに高温環境下での使用に耐え得るシール部品が要求されるようになってきている。また、フッ素ゴムは、耐熱性や耐油性にはすぐれているものの、エーテル類、ケトン類などの有機溶媒に対する耐性に劣るため、これらをシールするための部品への適用が妨げられており、さらにアルカリ、酸、有機溶媒などの洗浄工程用ロールやコピー機、プリンタ用ロールなどにも、耐薬品性が劣るため使用することができない。
【0003】
こうしたフッ素ゴムの欠点を補うため、それに代わってパーフルオロエラストマーが用いられるようになってきている。これは、それ自体がシール部品を形成するOリング等には多く用いられているものの、オイルシール、ロール、バルブなどの金属と複合した部品には、その接着方法が確立されていないため、殆んど用いられていないのが実情である。また、パーフルオロエラストマーに好適な加硫接着剤というものも市販されてはいない。
【0004】
かかる状況に対して、本出願人は先に金属上に順次形成させたシランカップリング剤を主成分とする加硫接着剤層および有機過酸化物加硫フッ素ゴム層を介して有機過酸化物加硫パーフルオロエラストマー層を積層させることにより、層間接着性を改善せしめたパーフルオロエラストマー積層金属を提案している(特許文献1参照)。しかし、この積層金属は接着剤層が加硫接着剤層および加硫フッ素ゴム層の2層となるため製造工程が多くなり、これは工業的にはコストアップにつながるものであり、接着剤層の単層化が望まれるところである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−272045号公報
【特許文献2】特開2007−277340号公報
【特許文献3】特開2008−31195号公報
【特許文献4】特開昭55−108410号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本出願人はまた、パーフルオロエラストマーの接着に好適に用いられ、また単層の接着剤層によりパーフルオロエラストマー積層金属の層間接着性を改善せしめる加硫接着剤組成物として、フェノール樹脂100重量部当り、50〜400重量部のシランカップリング剤および50〜400重量部の有機金属化合物を含有せしめてなる加硫接着剤組成物を提案している(特許文献2参照)。
【0007】
金属とパーフルオロエラストマーとの接着に有効に用いられる、かかる接着剤組成物を用いたパーフルオロエラストマー積層金属は、従来の如く接着剤層を複層形成することなく、単層にてパーフルオロエラストマーと金属との間の積層を行うことができ、しかも耐熱性および耐薬品(酸)性にすぐれた複合化シール部品を得ることを可能とするといったすぐれた効果を奏するが、なお金属に対する層間接着性や金属に積層されたゴム層表面のあばた性の点での改善が求められた。
【0008】
本発明の目的は、金属/接着剤層/パーフルオロエラストマー層積層体よりなるゴム金属積層体において、パーフルオロエラストマー層の金属に対する層間接着性や金属に積層されたパーフルオロエラストマー層表面のあばた性を改善せしめたものを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる本発明の目的は、金属/接着剤層/パーフルオロエラストマー層積層体のパーフルオロエラストマー層が、パーフルオロエラストマー100重量部当り2〜10重量部のフッ化ビニリデン-クロロトリフルオロエチレン共重合体をブレンドしたブレンド物の加硫物層によって形成されたゴム金属積層体によって達成される。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るゴム金属積層体にあっては、パーフルオロエラストマー100重量部当り2〜10重量部のフッ化ビニリデン-クロロトリフルオロエチレン共重合体をブレンドしたブレンド物の加硫物層によって形成させることにより、パーフルオロエラストマーの金属に対する層間接着性や金属に積層されたパーフルオロエラストマー層表面のあばた性(クレーター状の凹凸ができる状態)の点での有効な改善が図られる。
【0011】
本発明に係るゴム金属積層体は、金属とパーフルオロエラストマー層とが効果的に接着されているので、かかるパーフルオロエラストマー積層金属は、バルブ、コピー機、プリンターのロール、オイルシールなどパーフルオロエラストマー積層金属部品として有効に用いられる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
パーフルオロエラストマーが積層される金属としては、軟鋼、ステンレススチール、アルミニウム、アルミニウムダイキャスト等が用いられ、その形状は製品の種類により様々であり、例えばシール材などにあっては板状体、ロールなどにあっては棒状体である。
【0013】
これらの金属上には接着剤、例えばシランカップリング剤を主成分とする加硫接着剤が塗布され、室温下で乾燥、一般には風乾され、好ましくは更に約120〜200℃で約5〜10分間程度焼付処理される。シランカップリング剤としては、アミノシランおよびビニルシランの少くとも一種を主成分とする市販の加硫接着剤、例えばロード社製品ケムロックAP-133、Y4310、607等をそのまま用いることができる。
【0014】
加硫接着剤の上には、未加硫のパーフルオロエラストマーが組成物として接合される。パーフルオロエラストマーとしては、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロペンまたはこれら両者の少くとも一種とパーフルオロビニルエーテルとの共重合体等が挙げられる。
【0015】
共単量体であるパーフルオロビニルエーテルは、一般式
CF=CF(CFCFXO)Rf
Rf:C〜Cの低級パーフルオロアルキル基
X:FまたはCF
n:0または1〜4の整数
で表わされるものなどが用いられる。
【0016】
かかる一般式で表わされるパーフルオロビニルエーテルとしては、例えば次のような化合物が挙げられる。
CF=CFOCF
CF=CFOCF
CF=CFOCF
CF=CFO[CFCF(CF)O]1〜4CF
CF=CFO[CFCF(CF)O]1〜4CF
【0017】
また、上記一般式で表わされるパーフルオロビニルエーテル以外のパーフルオロビニルエーテルとしては、一般式
CF=CFO(RfO)(RfO)Rf
Rf:C〜Cのパーフルオロアルキル基
Rf、Rf:C〜Cの直鎖状または分岐状パーフルオロアルキレン基
Rf、Rfとは異なる炭素数を有する
m、n:1〜10
で表わされるものなどが挙げられ、例えば次のような化合物が挙げられる。
CF=CFO(CFCFO)(CFO)CF
さらに、CF=CFO(CF)OCF等も用いられる。
【0018】
これらのパーフルオロエラストマー中には、含臭素基、含ヨウ素基および含臭素・ヨウ素基の少くとも一種であるパーオキサイド架橋性基またはシアノ基、含フッ素ジエン化合物由来の不飽和基などからなるアミン加硫性基が導入される。かかるパーオキサイド架橋性基またはアミン加硫性基は、例えば次のような飽和または不飽和の臭素含有化合物、ヨウ素含有化合物、臭素およびヨウ素含有化合物またはシアノ基含有化合物が挙げられる。
CF=CFBr
CF=CFI
CF=CHBr
CF=CHI
CH=CHCFCFBr
CH=CHCFCFI
CF=CFOCFCFBr
CF=CFOCFCFI
CH=CHBr
CH=CHI
Br(CF)Br
I(CF)I
Br(CH)(CF)(CH)Br
I(CH)(CF)(CH)I
ICFCFBr
CF=CFO(CF)OC(CF)FCN
CF=CFO(CF)CN
CF=CFO〔CFC(CF)FO〕(CF)CN
【0019】
パーオキサイド架橋を行なう場合には、さらに多官能性不飽和化合物共架橋剤であるジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリメタリルイソシアヌレート、トリアリルトリメリテート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレートなどが、含フッ素エラストマー100重量部当り約1〜10重量部、好ましくは約2〜5重量部の割合で用いられることが好ましい。
【0020】
かかるパーフルオロエラストマーには、それの100重量部当り2〜10重量部、好ましくは3〜8重量部のフッ化ビニリデン-クロロトリフルオロエチレン共重合体がブレンドされて用いられ、加硫物層が形成される。フッ化ビニリデン-クロロトリフルオロエチレン共重合体のブレンド割合がこれよりも少ないと、所望の効果、すなわちパーフルオロエラストマーの金属に対する層間接着性やパーフルオロエラストマー層表面のあばた性の点での有効な改善が図られず、一方これよりも多いブレンド割合では、剥離強度や表面あばた性は改善されるものの、フッ素含量が低下して耐アミン性の低下が著しくなる。
【0021】
なお、フッ化ビニリデン-クロロトリフルオロエチレン共重合体としては、接着性の観点から、クロロトリフルオロエチレンを20〜50モル%、好ましくは25〜45モル%共重合させたものが用いられる。また分子量調節剤として、イソプロパノールまたは前記飽和臭素含有化合物、ヨウ素含有化合物、臭素およびヨウ素含有化合物等、例えば1-ブロモ-2-ヨードエタン等を、共重合反応の際用いることもできる。
【0022】
フッ化ビニリデン-クロロトリフルオロエチレン共重合体をブレンドさせ、パーオキサイド架橋性基を有するパーフルオロエラストマーは、有機過酸化物によって架橋される。架橋剤として用いられる有機過酸化物としては、例えば第3ブチルハイドロパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、p-メンタンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジハイドロパーオキサイド、ジ第3ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、第3ブチルクミルパーオキサイド、1,1-ジ(第3ブチルパーオキシ)シクロドデカン、2,2-ジ(第3ブチルパーオキシ)オクタン、1,1-ジ(第3ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(第3ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(第3ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、1,3-ビス(第3ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、1,1-ジ(第3ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、n-ブチル-4,4-ジ(第3ブチルパーオキシ)バレレート、ベンゾイルパーオキサイド、m-トルイルパーオキサイド、p-クロロベンゾイルパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、第3ブチルパーオキシイソブチレート、第3ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、第3ブチルパーオキシベンゾエート、第3ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、第3ブチルパーオキシアリルカーボネート等が、パーフルオロエラストマー100重量部当り約0.1〜10重量部、好ましくは約0.5〜3重量部の割合で用いられる。
【0023】
パーオキサイド架橋を行なう場合には、さらに多官能性不飽和化合物共架橋剤であるジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリメタリルイソシアヌレート、トリアリルトリメリテート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレートなどが、パーフルオロエラストマー100重量部当り約1〜10重量部、好ましくは約2〜5重量部の割合で用いられることが好ましい。
【0024】
また、パーフルオロエラストマー中には、共重合体中0.001〜1モル%、好ましくは0.1〜0.5モル%の共重合割合で含フッ素ジエン化合物を共重合させ、ジエン化合物由来の不飽和基よりなるアミン加硫性基をパーフルオロエラストマー中に形成させることができる(特許文献3参照)。
【0025】
この含フッ素ジエン化合物としては、特許文献4に記載される如き炭素数4〜8の含フッ素ジエンの少くとも1種、例えばCF=CF-、CF=CH-またはCF=CFO-を一方の末端不飽和基とするもの、具体的にはCF=CFCF=CF、CF=CF(CF)CF=CF、CF=CFCH=CF、CF=CHCH=CF、CF=CF(CF)CF=CF、CF=CFO(CF)OCF=CF、CF=CFO(CF)OCFCF(CF)OCF=CF、CF=CFO(CF)OCF(CF)CFOCF=CF等が挙げられる。
【0026】
含フッ素ジエン化合物を共重合させ、アミン加硫性基を導入したパーフルオロエラストマーは、アミン化合物によって加硫される。加硫剤として用いられるアミン化合物としては、下記一般式[I]〜[IV]で表わされるアミン化合物のいずれかがパーフルオロエラストマー100重量部当り0.1〜10重量部、好ましくは0.5〜5重量部の割合で用いられる。


R:炭素数1〜6のアルキリデン基またはアルキレン基、炭素数1〜10のパーフルオロ
アルキリデン基またはパーフルオロアルキレン基、SO基、O基、CO基、2つの
ベンゼン環を直接結合させる炭素−炭素結合
X:水酸基またはアミノ基



n:1〜10の整数



R:H、NH
n:1〜10の整数
好ましくは、








R:H、OH
R:H、NH
好ましくは、





【0027】
ゴム金属積層体の製造は、一般に金属板が用いられる金属の表面に加硫接着剤層を形成させた後、パーフルオロエラストマーとフッ化ビニリデン-クロロトリフルオロエチレン共重合体とのブレンド物に、前記の如き有機過酸化物および多官能性不飽和化合物またはアミン化合物、さらにはゴム工業で一般に用いられている各種配合剤、例えばカーボンブラック、シリカ等の補強剤または充填剤、2価金属の酸化物または水酸化物、ハイドロタルサイト等を受酸剤等を配合した未加硫のパーフルオロエラストマー組成物を加硫接着剤層上に任意の接合方法で接合させ、約180〜200℃で約2〜30分間加圧加硫することによって、パーフルオロエラストマー層が金属上に形成される。パーフルオロエラストマー層は、用途によっても異なるが、一般に約1〜1.5mmの厚さに形成される。
【実施例】
【0028】
次に、実施例について本発明を説明する。
【0029】
参考例1
容量10Lのステンレス鋼製オートクレーブ内を窒素ガスで置換し、脱気した後、
界面活性剤 CF(CF)OCF(CF)CFOCF(CF)COONH 50.0g
NaHPO・12HO 5.0g
イオン交換水 4000ml
を仕込み、オートクレーブ内を再び窒素ガスで置換し、脱気した後、
テトラフルオロエチレン〔TFE〕 130g(59.1モル%)
パーフルオロ(メチルビニルエーテル)〔FMVE〕 150g(40.9モル%)
1-ブロモ-2-ヨードエタン〔IBrTFE〕 8.0g
を仕込んだ。
【0030】
次いで、オートクレーブ内部の温度を80℃とし、そこに過硫酸アンモニウム7.0gを0.3重量%水溶液として加え、重合反応を開始させた。圧力を7〜8相対バール(7〜8×10Pa)に保ったまま、
TFE 820g(61.1モル%)
FMVE 870g(38.9モル%)
の混合ガスを添加し、80℃に保ったまま、オートクレーブ内圧力が5相対バール(5×10Pa)に低下する迄反応を行った。
【0031】
反応終了後冷却し、残ガスを排出して、乳化液6110gを得た。この乳化液を、10重量%カリミョウバン水溶液中に等容積比で添加し、凝析物を水洗、乾燥して、含フッ素エラストマーA(19F-NMRによるポリマー組成比:TFE/FMVEモル比=34.0/66.0)を2039g得た。
【0032】
参考例2
容量10Lのステンレス鋼製オートクレーブ内を窒素ガスで置換し、脱気した後、
界面活性剤 CF(CF)OCF(CF)CFOCF(CF)COONH 10.0g
NaHPO・12HO 10.0g
イオン交換水 4400ml
を仕込み、オートクレーブ内を再び窒素ガスで置換し、脱気した後、
フッ化ビニリデン〔VdF〕 480g(86.2モル%)
クロロトリフルオロエチレン〔CTFE〕 140g(13.8モル%)
イソプロパノール〔IPA〕 6.0g
を仕込んだ。
【0033】
次いで、オートクレーブ内部の温度を80℃とし、そこに過硫酸アンモニウム4.0gを0.3重量%水溶液として加え、重合反応を開始させた。圧力を22〜23相対バール(22〜23×10Pa)に保ったまま、
VdF 780g(56.3モル%)
CTFE 1100g(43.7モル%)
の混合ガスを添加し、80℃に保ったまま、オートクレーブ内圧力が7相対バール(7×10Pa)に低下する迄反応を行った。
【0034】
反応終了後冷却し、残ガスを排出して、乳化液6530gを得た。この乳化液を、2重量%CaCl水溶液中に等容積比で添加し、凝析物を水洗、乾燥して、含フッ素エラストマーI(19F-NMRによるポリマー組成比:VdF/CTFEモル比=58.0/42.0)を2189g得た。
【0035】
参考例3
参考例2において、添加する混合ガスを
VdF 1320g(81.1モル%)
CTFE 560g(18.9モル%)
に変更し、オートクレーブ内圧力が5相対バール(5×10Pa)に低下する迄反応を行い、含フッ素エラストマーII(VdF/CTFEモル比=83.8/16.2)を2162g(乳化液としては6530g)得た。
【0036】
参考例4
参考例3において、IPAの代りにIBrTFE 8.0gを用い、含フッ素エラストマーIII(VdF/CTFEモル比=83.4/16.6)を2189g(乳化液として6552g)を得た。
【0037】
実施例1
含フッ素エラストマーA 100重量部
含フッ素エラストマーI 5重量部
MTカーボンブラック(キャンキャブ製品サーマックスN990) 30重量部
ハイドロタルサイト(協和化学製品DHT-4A) 1重量部
トリアリルイソシアヌレート(日本化成製品) 3重量部
2,5-ジメチル-2,5-ジ(第3ブチルパーオキシ)ヘキサン 2重量部
(日本油脂製品パーヘキサ25B-40;濃度40重量%)
以上の各成分を2本ロールミルで混和し、得られた硬化性組成物を180℃で10分間圧縮成形して、シート(120×150×2mm)およびOリング(P24)を成形し、さらに230℃で24時間のオーブン加硫(二次加硫)を行った。
【0038】
これらの二次加硫物について、次の各項目の測定を行った。
常態物性:JIS K6250、K6253準拠
圧縮永久歪:ASTM B395 Method B準拠;
P24 Oリングについて、200℃、70時間の値を測定
90°剥離試験:リン酸亜鉛処理鋼板(SPCC)の表面に、アミノシランおよびビニル
シランを主成分とする接着剤(ロード社製品ケムノックAP-133)を4
倍量のメチルエチルケトンに溶解させた溶液を塗布し、室温条件下
で30分間乾燥させた後、150℃、30分間のベーキングを実施し、こ
の接着剤層形成金属板上に上記硬化性組成物よりなる未架橋生地を
接合させ、180℃、6分間の加圧架橋を行って含フッ素エラストマー
積層金属板を作製し、この含フッ素エラストマー積層金属板につい
て、JIS K6256に準拠して、90°剥離試験を行った
耐アミン性:エチレンジアミン中に、室温条件下で70時間浸漬したときの体積変化
率を測定
表面あばた性:試験片であるシートについて、その表面にクレーター状の凹凸がで
きる状態をあばたとし、表面に全くあばたがない場合を○、5ヶ以
下のあばたがある場合を△、6ヶ以上あばたがある場合を×と評

【0039】
実施例2〜5、比較例1〜3
実施例1において、含フッ素エラストマーI〜IIIの種類および配合量を種々変更した。測定結果は、用いられた含フッ素エラストマーI〜IIIの種類および配合量と共に、次の表に示される。

実施例 比較例

〔含フッ素エラストマー〕
種類 I II III I I − I I
配合量 (重量部) 5 5 5 3 10 0 1 15
〔測定結果〕
常態物性
硬さ (Duro-A) 79 81 80 80 78 80 80 77
破断強度 (MPa) 13.8 13.2 14.3 13.6 13.2 13.5 13.7 13.1
破断時伸び (%) 300 260 280 310 320 310 300 340
圧縮永久歪
200℃、70時間(%) 43 46 41 43 45 43 44 47
90°剥離試験
剥離強度 (N/mm) 3.4 2.2 3.8 2.6 4.1 0.3 0.9 5.4
耐アミン性
体積変化率 (%) 2 5 3 3 8 2 2 31
表面あばた性
評価 ○ ○ ○ ○ ○ × △ ○
【0040】
以上の結果から、次のようなことがいえる。
(1) 各実施例では、パーフルオロエラストマー中にVdF-CTFE共重合体を一定量ブレンドさせることで、パーフルオロエラストマーと金属との接着性や耐アミン性が殆ど損なわれることなく、表面あばた性が改善されている。
(2) VdF-CTFE共重合体を用いていない比較例1においては、パーフルオロエラストマーと金属との接着性が大きく低下しており、また表面あばた性の評価も低い。
(3) VdF-CTFE共重合体の配合量が規定量よりも少ないと、パーフルオロエラストマーと金属との接着性や表面あばた性の改善効果は、わずかである。
(4) VdF-CTFE共重合体の配合量が規定量よりも多いと、パーフルオロエラストマーと金属との接着性は増大するものの、耐アミン性に大きく劣るようになる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属/接着剤層/パーフルオロエラストマー層積層体のパーフルオロエラストマー層が、パーフルオロエラストマー100重量部当り2〜10重量部のフッ化ビニリデン-クロロトリフルオロエチレン共重合体をブレンドしたブレンド物の加硫物層によって形成されたゴム金属積層体。
【請求項2】
パーフルオロエラストマーとして、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロペンまたはこれら両者の少くとも一種とパーフルオロビニルエーテルとの共重合体が用いられた請求項1記載のゴム金属積層体。
【請求項3】
一般式
CF=CF(CFCFXO)Rf
(ここで、RfはC〜Cの低級パーフルオロアルキル基であり、XはF原子またはCF基であり、nは0または1〜4の整数である)で表わされるパーフルオロビニルエーテルの共重合体が用いられた請求項2記載のゴム金属積層体。
【請求項4】
テトラフルオロエチレン-パーフルオロ(メチルビニルエーテル)共重合体がパーフルオロエラストマーとして用いられた請求項2または3記載のゴム金属積層体。
【請求項5】
クロロトリフルオロエチレンを20〜50モル%共重合させたフッ化ビニリデン-クロロトリフルオロエチレン共重合体が用いられた請求項1記載のゴム金属積層体。

【公開番号】特開2012−223888(P2012−223888A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−90586(P2011−90586)
【出願日】平成23年4月15日(2011.4.15)
【出願人】(502145313)ユニマテック株式会社 (169)
【Fターム(参考)】