説明

ゴルフシューズ用靴底およびそれを用いたゴルフシューズ

【課題】体の回転運動を妨げないゴルフスイングに寄与することのできるゴルフシューズ用靴底およびそれを用いたゴルフシューズを提供する。
【解決手段】ゴルフシューズ用靴底10は、靴底本体14の底面16を少なくとも踵部領域22を含む複数の領域に区画するとともに、踵部領域22の少なくとも足の内側に位置する内側下縁部および足の外側に位置する外側下縁部を湾曲面30とし、さらに、外側下縁部の湾曲面30には(先端が前記底面より下方に突出する)突出部32を設け、内側下縁部の湾曲面30には突出部32を設けない。ゴルフシューズ1は、ゴルフシューズ用靴底10を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体の回転運動を妨げないゴルフスイングに好適なゴルフシューズ用靴底およびそれを用いたゴルフシューズに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ゴルフシューズとして、多くの提案がなされている。例えば、特許文献1には、スイング時に地面とのグリップ力が求められる部位にゴム組成物からなる複数の突起を設けてグリップ力を向上させたものが開示されている。
【0003】
一般的に、右打ち(右利き)のゴルファーによるゴルフスイングは、通常のスイングとして左足を軸足とし、右足を蹴足として左足の外側に壁を作ってスイングすることが多い。
【0004】
一方、近年、体の回転運動を妨げないゴルフスイングの一例として、非特許文献1に記載されている「うねり」を利用したスイング(うねり打法)などのスイングがある。
【0005】
前記体の回転運動を妨げないゴルフスイングの一例であるうねり打法によるスイングを行うときの体重移動の軌跡の一例は、図9の矢印に示すように、右足の踵部外側から右足の爪先部外側を通り左足の踵部外側に直線的に至る形状となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第2946215号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】手塚一志著、「図解手塚一志のうねり打法ゴルフ編」、PHP研究所、2004年11月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来のゴルフシューズは、前記体の回転運動を妨げないゴルフスイングを考慮しておらず、体の回転運動を妨げないゴルフスイングを行う場合、スイング時に、必ずしも円滑な体重移動ができるとは限らず、体の回転運動を妨げてしまう可能性があるため、それに伴って回転運動のエネルギーがロスしてしまう場合もある。
【0009】
図9は、体の回転運動を妨げないゴルフスイングの一例であるうねり打法を行う場合の体重移動の一例を示している。
【0010】
そこで、体の回転運動を妨げないゴルフスイングに寄与することのできるゴルフシューズ用靴底およびそれを用いたゴルフシューズが求められている。
【0011】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたもので、体の回転運動を妨げないゴルフスイングに寄与することのできるゴルフシューズ用靴底およびゴルフシューズを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、前記目的を達成するために、体の回転運動を妨げないゴルフスイング時に、体重移動の妨げにならず、円滑な体重移動を行うことができるゴルフシューズ用靴底およびそれを用いたゴルフシューズの研究を鋭意行った。
【0013】
本発明は、上記研究の結果なされたもので、靴底本体を有する左右1対のゴルフシューズ用靴底であって、前記靴底本体の底面は、踵部領域を含む複数の領域に区画され、かつ、前記踵部領域の内側下縁部および外側下縁部は、縦断面が湾曲状をなす湾曲面とされているとともに、前記外側下縁部の湾曲面には下方に突出する突出部が設けられ、前記内側下縁部の湾曲面には前記突出部が設けられていないことを特徴とするゴルフシューズ用靴底を提供する。
【0014】
本発明では、前記突出部は、複数に分割されている構成とすることができる。これにより、上記突出部の一部だけ動くことができるので、突出部がスイング時に円滑な体重移動の妨げにならず、足への負荷を低減することができる。
【0015】
本発明では、ゴルファーが反打球進行方向の足に履くゴルフシューズにおける前記靴底の靴底本体の踏付け部の内側下縁部は、縦断面が湾曲状をなす湾曲面とされている構成とすることができる。これにより、体の回転運動を妨げないゴルフスイング時に、より円滑な体重移動ができる。
【0016】
本発明では、前記靴底は、ゴルファーが打球進行方向の足に履くゴルフシューズに備えられ、当該靴底の靴底本体の踏付け部の底面外側には、前記突出部が設けられている構成とすることができる。これにより、体の回転運動を妨げないゴルフスイングと、通常のゴルフスイングの一例である壁を作るスイングとの両者に対応できる。
【0017】
本発明では、前記靴底本体の底面外側に鋲が取り付けられている構成とすることができる。これにより、地面とのグリップ力を高めることができる。また、通常のゴルフスイングの一例である壁を作るスイングの時には、壁をより意識できる。
【0018】
本発明では、前記靴底本体の底面は、前記踵部領域と、踏付け部の内側を含む踏付け部内側領域と、踏付け部の外側を含む踏付け部外側領域とに凹溝を介して区画されており、前記踵部領域、踏付け部内側領域および踏付け部外側領域の2つ以上が、前記凹溝により物理的に分断されている状態、または、前記凹溝の底部を介して物理的につながっている状態となっている構成とすることができる。これにより、上記領域の境界部分で靴底が屈曲しやすくなるので、より細かい足の動きに柔軟に対応できる。
【0019】
本発明では、前記靴底本体の底面部分は、熱可塑性ポリウレタン樹脂により形成されている構成とすることができる。これにより、靴底本体の底面に柔軟性およびソフト感を付与できるので、スイング時に、体重移動を円滑にできる。
【0020】
本発明のゴルフシューズは、上記のゴルフシューズ用靴底を具備する構成とされている。これにより、体の回転運動を妨げないゴルフスイング時に、体重移動を妨げることなく円滑な体重移動ができる。その結果、体の回転運動を妨げないゴルフスイングに寄与できるゴルフシューズを容易に実現できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明のゴルフシューズ用靴底およびゴルフシューズは、体の回転運動を妨げないゴルフスイング時に、体重移動の妨げにならず、円滑な体重移動を行うことができるなどの優れた効果を奏する。その結果、体の回転運動を妨げないゴルフスイングに寄与するなどの優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係るゴルフシューズ用靴底を装着したゴルフシューズの実施形態の要部を上方から見て示す概略図である。
【図2】図1のゴルフシューズのゴルフシューズ用靴底の要部を下方から見て示す概略図である。
【図3】図1のゴルフシューズの要部を後方から見て示す概略図である。
【図4】図1の左足用ゴルフシューズの右側面図である。
【図5】図1の右足用ゴルフシューズの右側面図である。
【図6】図1の左足用ゴルフシューズの左側面図である。
【図7】図1の右足用ゴルフシューズの左側面図である。
【図8】図1のゴルフシューズのアッパーデザインを説明する説明図である。
【図9】右打ちゴルファーの体の回転運動を妨げないゴルフスイング時における体重移動の軌跡の一例を上から見て示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を図面に示す実施形態により説明する。
【0024】
図1から図8は、本発明に係るゴルフシューズ用靴底を装着したゴルフシューズの実施形態を示すものであり、図1は要部を上方から見て示す概略図、図2は図1のゴルフシューズのゴルフシューズ用靴底の要部を下方から見て示す概略図、図3は要部を後方から見て示す概略図、図4は図1の左足用ゴルフシューズの右側面図、図5は図1の右足用ゴルフシューズの右側面図、図6は図1の左足用ゴルフシューズの左側面図、図7は図1の右足用ゴルフシューズの左側面図、図8は図1のゴルフシューズのアッパーデザインを説明する説明図である。
【0025】
本実施形態のゴルフシューズ1は、右打ち(一般的には右利き)のゴルファーが用いるものを示しており、右打ちゴルファーが左足に履く左足用ゴルフシューズ1Lと、右足に履く右足用ゴルフシューズ1Rとにより左右1対とされている。そして、右打ちゴルファーは、図1の左方向(図2の右方向)が打球進行方向であり、図1の右方向(図2の左方向)が反打球進行方向である。また、図1の左右方向の中央が足の内側であり、図1の左右方向の両端が足の外側であり、図1の上下方向の上方が足の前側であり、図1の上下方向の下方が足の後側である。したがって、左足用ゴルフシューズ1Lは、右打ちゴルファーが打球進行方向の足に履くものであり、右足用ゴルフシューズ1Rは、右打ちゴルファーが反打球進行方向の足に履くものである。なお、左打ちゴルファーのゴルフシューズは、図1から図8の形状を左右反転した形状となる。
【0026】
本実施形態のゴルフシューズ1は、ゴルフシューズ用靴底10とアッパー部12とを備えている。
【0027】
本実施形態のゴルフシューズ用靴底10は、靴底本体14を備えており、靴底本体14は、地面に接する底面16を具備するアウトソール18と、アウトソール18に積層されたミッドソール20とを有している。アウトソール18の材質としては、熱可塑性ポリウレタン樹脂(熱可塑性ポリウレタンエラストマー:TPU)が用いられているが、アウトソール18の材質は他のものでもよい。ミッドソール20の材質としては、例えば、EVA、ポリオレフィン発泡体、ポリウレタン発泡体、TPU、ゴムなどを挙げることができる。そして、ミッドソール20の上面にアッパー部12が装着されている。
【0028】
本実施形態のゴルフシューズ1の靴底本体14の底面16は、図2に示すように、前側から順に、爪先部A、踏付け部B、土踏まず部C、踵部Dとなっている。
【0029】
本実施形態の底面16は、踵部Dを含む踵部領域22と、踏付け部Bの内側部分(親指側部分)を含む踏付け部内側領域24と、踏付け部Bの外側部分(小指側部分)を含む踏付け部外側領域26との3つの領域を有しており、これらの領域は、底面16より上方(アッパー部12側)に凹んだ凹溝28によって区画されている。この場合、踵部領域22、踏付け部内側領域24および踏付け部外側領域26は、凹溝28により物理的に分断されている状態、または、前記凹溝28の底部を介して物理的につながっている状態となっている。なお、底面16に設ける領域としては、少なくとも踵部領域22とその他の領域の2つがあればよい。また、例えば踵部領域22を内側と外側とに区画したり、踏付け部内側領域24および踏付け部外側領域26の少なくとも一方をさらに前後方向に複数に区画したりすることにより、4以上の領域を設けることもできる。さらに、各領域と凹溝28との境界部分に、屈曲性をさらに向上させるための凹溝28より深いすじ状の深溝を設けてもよい。
【0030】
本実施形態の右足用ゴルフシューズ1Rの底面16に設けられた踏付け部外側領域26は、爪先部Aの外側下縁部を含むように形成されており、左足用ゴルフシューズ1Lの底面16に設けられた爪先部Aを含まないように形成された踏付け部外側領域26とは異なる形状とされている。すなわち、左足用ゴルフシューズ1Lの底面16の形状と、右足用ゴルフシューズ1Rの底面16の形状とは非対称とされている。なお、左足用ゴルフシューズ1Lの底面16の形状と、右足用ゴルフシューズ1Rの底面16の形状とを対称にしてもよい。この場合、左足用ゴルフシューズ1Lの底面16の形状と、右足用ゴルフシューズ1Rの底面16の形状とのどちらを用いてもよい。
【0031】
本実施形態の底面16の外周下縁部は、全周に亘り、縦断面が湾曲状をなす湾曲面30とされている。この湾曲面30は、外周下縁部に対して断面ほぼ円弧状に湾曲した丸み(コーナーアール)をつけるように形成されている。なお、湾曲面30は、少なくとも、左足用ゴルフシューズ1Lの底面16における踵部領域22の内側下縁部および外側下縁部と、右足用ゴルフシューズ1Rの底面16における踵部領域22の内側下縁部および外側下縁部と、右足用ゴルフシューズ1Rの底面16における踏付け部Bの内側下縁部とに設けることが好適である。
【0032】
本実施形態の左足用ゴルフシューズ1Lの底面16における踵部領域22の外側下縁部に設けられた湾曲面30には、先端が底面16より下方(地面側)に突出する突出部32としての左外後側突出部32Laが設けられている。この左外後側突出部32Laは、アウトソール18の外周に沿って踵部Dの外側前端から後端中央部に亘り7つに分割された状態で配列されている(1つのみ符号を付す。)。なお、左外後側突出部32Laとしては、複数に分割せずに一体のものとしてもよい。また、分割数および配置は、設計コンセプトなどの必要に応じて変更できる。
【0033】
本実施形態の左足用ゴルフシューズ1Lの底面16における踏付け部外側領域26の外側下縁部に設けられた湾曲面30にも、突出部32としての左外前側突出部32Lbが設けられている。この左外前側突出部32Lbは、アウトソール18の外周に沿って踏付け部Bの外側に間隔をおいて3つに分割された状態で配列されている。なお、左外前側突出部32Lbとしては、複数に分割せずに一体のものとしてもよい。また、分割数および配置は、設計コンセプトなどの必要に応じて変更できる。さらに、左外前側突出部32Lbは、湾曲面30が設けられない場合であっても、踏付け部Bの前後方向中央部に設けることができる。
【0034】
本実施形態の右足用ゴルフシューズ1Rの底面16における踵部領域22の外側下縁部に設けられた湾曲面30にも、突出部32としての右外後側突出部32Raが設けられている。この右外後側突出部32Raは、アウトソール18の外周に沿って踵部Dの外側前端から外側後端に亘り4つに分割された状態で配列されている(1つのみ符号を付す。)。なお、右外後側突出部32Raとしては、複数に分割せずに一体のものとしてもよい。また、分割数および配置は、設計コンセプトなどの必要に応じて変更できる。
【0035】
本実施形態の右足用ゴルフシューズ1Rの底面16における踏付け部外側領域26の外側下縁部に設けられた湾曲面30にも、突出部32としての右外前側突出部32Rbが設けられている。この右外前側突出部32Rbは、右利きのプレーヤーが、スイング動作におけるテイクバックをとった際に、いわゆるためが作りやすくなるように、靴底に安定性を持たせることを目的とするものであり、アウトソール18の外周に沿って踏付け部Bの外側から爪先部Aの外側にかけて間隔をおいて5つに分割された状態で配列されている(1つのみ符号を付す。)。なお、右外前側突出部32Rbとしては、複数に分割せずに一体のものとしてもよい。また、分割数および配置は、設計コンセプトなどの必要に応じて変更できる。さらに、右外前側突出部32Rbは、湾曲面30が設けられない場合であっても、踏付け部Bの外側で、前端から前後方向中央部にかけて設けることができる。
【0036】
本実施形態の底面16には、地面とのグリップ力を向上させるための個別に形成された鋲34(スタッド:図2において円形にて簡略化して示す。)が着脱可能に取り付けられている。この鋲34は、少なくとも地面と接地する部分がゴムや熱可塑性プラスチックなどにより形成されている。
【0037】
本実施形態の鋲34は、左足用ゴルフシューズ1Lの底面16における踵部領域22において4つ、踏付け部内側領域24において2つ、踏付け部外側領域26において2つの総計8つが配置されている。そして、左足用ゴルフシューズ1Lの底面16における踵部領域22に配置された4つの鋲34は、前後方向に2列、内外方向に2列のマトリックス(行列状)に配置されている。また、左足用ゴルフシューズ1Lの底面16における踏付け部内側領域24に配置された2つの鋲34は、踏付け部Bの内側前部(左足の足裏の親指の付け根近傍)と、踏付け部Bの内側後部とに配置されている。さらに、左足用ゴルフシューズ1Lの底面16における踏付け部外側領域26に配置された2つの鋲34は、踏付け部Bの外側前部(左足の足裏の小指の付け根近傍)と、踏付け部Bの外側後部とに配置されている。
【0038】
本実施形態の鋲34は、右足用ゴルフシューズ1Rの底面16における踵部領域22において3つ、踏付け部内側領域24において3つ、踏付け部外側領域26において2つの総計8つが配置されている。そして、右足用ゴルフシューズ1Rの底面16における踵部領域22に配置された3つの鋲34は、外側前部と、外側後部の少し内側寄りと、内側の前後方向ほぼ中央部とに配置されている。また、右足用ゴルフシューズ1Rの底面16における踏付け部内側領域24に配置された3つの鋲34は、踏付け部Bの前部(左足の足裏の親指の付け根近傍)と、踏付け部Bの内側中央部と、踏付け部Bの内側後部とに配置されている。さらに、右足用ゴルフシューズ1Rの底面16における踏付け部外側領域26に配置された2つの鋲34は、踏付け部Bの外側前部(左足の足裏の小指の付け根近傍)と、踏付け部Bの内側後側とに配置されている。
【0039】
すなわち、左足用ゴルフシューズ1Lの底面16に配置された8つの鋲34と、右足用ゴルフシューズ1Rの底面16に配置された8つの鋲34とは非対称に配置されている。
【0040】
なお、鋲34は、靴底本体14の底面16の外側に配置されていればよい。また、鋲34の配置および数は、設計コンセプトなどの必要に応じて設定することができる。さらに、鋲34の形状、構造は、設計コンセプトなどの必要に応じて設定すればよい。
【0041】
本実施形態の靴底本体14の底面16(凹溝28の上面を含む)には、領域の境界部分(屈曲部分)以外の部分に、地面とのグリップ力を向上させるための図示しない複数の突起を設けることができる。この突起の形状は、設計コンセプトなどの必要に応じて設定すればよい。
【0042】
本実施形態のゴルフシューズ1は、トウスプリングZを15〜19mmに設定している(図4〜図7参照)。このトウスプリングZはヒール高さHやシューズのサイズで変わるが、従来の26cmサイズのシューズのトウスプリングZが27mm程度であったのに対して、本実施形態では26cmサイズのシューズのトウスプリングZを17mm程度と小さくすることにより、靴底本体14の底面16が地面と接地する面積を大きくできるので、スイングをする際に、地面とのグリップ力が向上する。
【0043】
本実施形態のアッパー部12の表面には、アッパーデザインとして体重移動の軌跡(動き)をゴルファーに意識付けるための太ライン40(図中、点を表示した部分)が設けられている(図1、図6参照)。この太ライン40は、右足用ゴルフシューズ1Rにおいて爪先部Aの上面における前端中央部よりやや内側から土踏まず部Cの内側下縁部前端に向かって斜めに形成された右ライン40Rと、左足用ゴルフシューズ1Lにおいて外側の最も履き口の開口端に近い部位に設けられた靴紐挿通孔42の形成部位から踵部Dの外側下縁部後端に向かって斜めに形成された左ライン40Lとを有しており、図8に示すように、右足用ゴルフシューズ1Rの下に左足用ゴルフシューズ1Lを重ねたときに、左側から見て全体として左上から右下に向かう傾斜線をなすように形成されている。なお、太ライン40の色としては、アッパー部12の表面の色と異なる色で、ゴルファーがゴルフシューズ1を足に履いた状態で視認性に優れた色であればよい。本実施形態においては、アッパー部12の表面の色を「黒」とし、太ライン40の色を「赤」としている。このように、太ライン40を設けることにより、体の回転運動を妨げないゴルフスイング時の体重移動の動き、すなわち図9に示す体重移動の軌跡をゴルファーに確実かつ容易に意識付けることができる。
【0044】
その他の構成については従来のゴルフシューズと同様とされているので、その詳しい説明については省略する。
【0045】
つぎに、前述した構成からなる本実施形態の作用について説明する。
【0046】
本実施形態のゴルフシューズ用靴底10によれば、靴底本体14の底面16は、少なくとも踵部領域22を含む複数の領域に区画されているから、各領域の境界部分が屈曲しやすくなるので、スイング時および歩行時の足の動きに対応して底面16を容易に変形できる。また、踵部領域22の少なくとも足の内側に位置する内側下縁部および足の外側に位置する外側下縁部がともに縦断面が湾曲状をなす湾曲面30とされているから、ゴルファーが体の回転運動を妨げないゴルフスイングを行う時に、踵部領域22の内側下縁部および外側下縁部が体重移動を阻止することがない。さらに、踵部領域22の外側下縁部の湾曲面30には突出部32(左外後側突出部32La、右外後側突出部32Ra)が設けられ、内側下縁部の湾曲面30には突出部32が設けられていないから、体の回転運動を妨げないゴルフスイング時に、ゴルファーの足のグリップして欲しい最適な位置で、最適なグリップ力を得られる。
【0047】
したがって、本実施形態のゴルフシューズ用靴底10によれば、体の回転運動を妨げないゴルフスイング時に、体重移動の妨げにならず、円滑な体重移動を行うことができる。
【0048】
つまり、本実施形態のゴルフシューズ用靴底10によれば、体の回転運動を妨げないゴルフスイングに寄与できる。このよう体の回転運動を妨げないゴルフスイングに寄与する構成は、従来のゴルフシューズ用靴底およびそれを用いたゴルフシューズにはない新規なものである。
【0049】
本実施形態のゴルフシューズ用靴底10によれば、突出部32は、複数に分割されているから、突出部32の一部だけ動くことができるので、体の回転運動を妨げないゴルフスイング時に、円滑な体重移動の妨げにならず、足への負荷を低減できる。
【0050】
本実施形態のゴルフシューズ用靴底10によれば、ゴルファーが打球進行方向の足に履くゴルフシューズ1(右打ちゴルファーの左足用ゴルフシューズ1L)の靴底本体14の底面16は、少なくとも踵部領域22の内側下縁部および外側下縁部に湾曲面30が設けられ、ゴルファーが反打球進行方向の足に履くゴルフシューズ1(右打ちゴルファーの右足用ゴルフシューズ1R)の靴底本体14の底面16は、少なくとも踏付け部Bの内側下縁部に湾曲面30が設けられているから、体の回転運動を妨げないゴルフスイング時に、より円滑な体重移動ができる。
【0051】
本実施形態のゴルフシューズ用靴底10によれば、ゴルファーが打球進行方向の足に履くゴルフシューズ1(右打ちゴルファーの左足用ゴルフシューズ1L)の靴底本体14の底面16は、少なくとも踵部領域22の内側下縁部および外側下縁部に湾曲面30が設けられ、この靴底本体14の底面16は、少なくとも踏付け部Bの外側下縁部にも突出部32(左外前側突出部32Lb)が設けられているから、体の回転運動を妨げないゴルフスイングと、通常のゴルフスイングの一例である壁を作るスイングとの両者に対応できる。
【0052】
本実施形態のゴルフシューズ用靴底10によれば、靴底本体14の少なくとも外側に鋲34が配置されているから、地面とのグリップ力を高めることができる。また、通常のゴルフスイングの一例である壁を作るスイング時には、壁をより意識できる。
【0053】
本実施形態のゴルフシューズ用靴底10によれば、靴底本体14の底面16は、踵部領域22と、踏付け部Bの内側を含む踏付け部内側領域24と、踏付け部Bの外側を含む踏付け部外側領域26との3つの領域に凹溝28を介して区画されているから、靴底本体14が変形(屈曲)しやすくなり、より細かい足の動きに柔軟に対応できる。
【0054】
本実施形態のゴルフシューズ用靴底10によれば、靴底本体14の少なくとも底面16は、熱可塑性ポリウレタン樹脂により形成されているから、靴底本体14の底面16に柔軟性およびソフト感を付与できるので、スイング時に体重移動を円滑にできるし、歩行しやすくなる。
【0055】
また、本実施形態のゴルフシューズ用靴底10によれば、アウトソール18が柔軟なTPUにより形成され、かつ、踵部領域22、踏付け部内側領域24および踏付け部外側領域24が、凹溝28により区画されているので、靴底本体14の底面16に柔軟性およびソフト感がより向上し、スイング時に体重移動をより円滑にできるし、より歩行しやすくなる。
【0056】
本実施形態のゴルフシューズ1によれば、本実施形態のゴルフシューズ用靴底10を装着した構成とされているから、体の回転運動を妨げないゴルフスイングに寄与できるゴルフシューズを容易に実現できる。
【0057】
なお、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、必要に応じて種々の変更が可能である。例えば、本発明の靴底は、突起として左外後側突出部、右外後側突出部のみを有していればよく、左外前側突出部、右外前側突出部、鋲などは必ずしも必要ではない。
【符号の説明】
【0058】
1 ゴルフシューズ
10 ゴルフシューズ用靴底
12 アッパー部
14 靴底本体
16 底面
22 踵部領域
24 踏付け部内側領域
26 踏付け部外側領域
30 湾曲面
32 突出部
32La 左外後側突出部
32Lb 左外前側突出部
32Ra 右外後側突出部
32Rb 右外前側突出部
34 鋲
A 爪先部
B 踏付け部
C 土踏まず部
D 踵部
Z トウスプリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
靴底本体を有する左右1対のゴルフシューズ用靴底であって、
前記靴底本体の底面は、踵部領域を含む複数の領域に区画され、かつ、
前記踵部領域の内側下縁部および外側下縁部は、縦断面が湾曲状をなす湾曲面とされているとともに、
前記外側下縁部の湾曲面には下方に突出する突出部が設けられ、前記内側下縁部の湾曲面には前記突出部が設けられていないことを特徴とするゴルフシューズ用靴底。
【請求項2】
前記突出部は、複数に分割されていることを特徴とする請求項1に記載のゴルフシューズ用靴底。
【請求項3】
ゴルファーが反打球進行方向の足に履くゴルフシューズにおける前記靴底の靴底本体の踏付け部の内側下縁部は、縦断面が湾曲状をなす湾曲面とされていることを特徴とする請求項1または2に記載のゴルフシューズ用靴底。
【請求項4】
前記靴底は、ゴルファーが打球進行方向の足に履くゴルフシューズに備えられ、当該靴底の靴底本体の踏付け部の底面外側には、前記突出部が設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のゴルフシューズ用靴底。
【請求項5】
前記靴底本体の底面外側に鋲が取り付けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のゴルフシューズ用靴底。
【請求項6】
前記靴底本体の底面は、前記踵部領域と、踏付け部の内側を含む踏付け部内側領域と、踏付け部の外側を含む踏付け部外側領域とに凹溝を介して区画されており、前記踵部領域、踏付け部内側領域および踏付け部外側領域の2つ以上が、前記凹溝により物理的に分断されている状態、または、前記凹溝の底部を介して物理的につながっている状態となっていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のゴルフシューズ用靴底。
【請求項7】
前記靴底本体の底面部分は、熱可塑性ポリウレタン樹脂により形成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のゴルフシューズ用靴底。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のゴルフシューズ用靴底を具備することを特徴とするゴルフシューズ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−139348(P2012−139348A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−293756(P2010−293756)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(592014104)ブリヂストンスポーツ株式会社 (652)
【Fターム(参考)】