説明

ゴルフシューズ

【課題】スイングの状態に応じて各部位にかかる力に対応させてスパイク鋲を適切に配置し、シューズの機能を高める。
【解決手段】本発明にかかるゴルフシューズ1は、シューズの靴底10Rにおいて第二中節骨42Rに対応する部位にスパイク鋲29Rを配置している。これにより、第二中節骨42Rに対応する部位にかかる力に対応させてスパイク鋲を適切に配置でき、シューズのグリップ力と安定性を向上させたゴルフシューズ1を提供することができるようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフシューズに関する。
【背景技術】
【0002】
芝生等を十分にグリップして安定したスイングを行なえるようにするため、靴底に複数のスパイク鋲を備えたゴルフシューズが知られている(たとえば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−276211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなゴルフシューズでは、スイング時に足の各部位にかかる垂直力、せん断力、回転力、及び足圧等を計測することは難しかった。このため、これらの力が複合的に足に加わった場合を想定してスパイク鋲の配置がなされていなかった。その結果、かかるゴルフシューズでは、十分なグリップ力や安定性を得ることができなかった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、スイングの状態に応じて各部位にかかる力に対応させてスパイク鋲を適切に配置し、シューズの機能を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための主たる発明は、
シューズの靴底において第二中節骨に対応する部位にスパイク鋲を配置したことを特徴とするゴルフシューズである。
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】ゴルフシューズ1の靴底を示す底面図である。
【図2】ゴルフシューズ1に足の骨格構造を重ねた状態を示す平面図である。
【図3】スイング動作時に靴底に力が加わるエリアを示す図である。
【図4】スイング動作時にゴルフシューズ1に加わる力の向き及び回転モーメントの方向を示す図である。
【図5】スパイク鋲の他の構成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも、以下の事項が明らかとなる。
即ち、シューズの靴底において第二中節骨に対応する部位にスパイク鋲を配置したことを特徴とするゴルフシューズである。
このようなゴルフシューズによれば、第二中節骨に対応する部位にかかる力に対応させてスパイク鋲を適切に配置でき、シューズの機能を高めることができる。特に、スイング動作がトップのときに第二中節骨には、最大の時計回りの回転トルクが生じるが、第二中節骨に対応させてスパイク鋲を配置することで、グリップ力や安定性を向上させることが可能となる。
【0009】
また、かかるゴルフシューズであって、
左右のシューズのうち、一方のシューズの靴底において第二中節骨に対応する部位にスパイク鋲を配置し、他方のシューズの靴底において第二中節骨に対応する部位にスパイク鋲を配置しないこととしてもよい。
このようなゴルフシューズによれば、左右の足に加えられる力に応じてスパイク鋲を配置する又は配置しないことにより、左右のシューズそれぞれの機能を高めることができる。
【0010】
また、かかるゴルフシューズであって、
シューズの靴底において、踵骨に対応する部位を、前後方向後側かつ幅方向内側の第一領域と、前後方向後側かつ幅方向外側の第二領域と、前後方向前側かつ幅方向外側の第三領域と、前後方向前側かつ幅方向内側の第四領域に区分したときに、前記第一領域乃至前記第三領域にスパイク鋲を配置し、前記第四領域にはスパイク鋲を配置しないこととしてもよい。
このようなゴルフシューズによれば、左右の足に加えられる力に応じてスパイク鋲を配置する又は配置しないことにより、左右のシューズそれぞれの機能を高めることができる。
【0011】
また、かかるゴルフシューズであって、
前記一方のシューズの靴底において、第一趾及び第二趾の爪先に対応する部位を、幅方向内側の内側領域と幅方向外側の外側領域に区分したときに、前記内側領域にスパイク鋲を配置し、前記外側領域にはスパイク鋲を配置せず、
前記他方のシューズの靴底において、第一趾及び第二趾の爪先に対応する部位を、幅方向内側の内側領域と幅方向外側の外側領域に区分したときに、前記外側領域にスパイク鋲を配置し、前記内側領域にはスパイク鋲を配置しないこととしてもよい。
このようなゴルフシューズによれば、左右の足に加えられる力に応じてスパイク鋲を配置する又は配置しないことにより、左右のシューズそれぞれの機能を高めることができる。
【0012】
===実施の形態===
<<<ゴルフシューズ1の構成について>>>
本発明の一実施形態であるゴルフシューズ1の構成例について、図1を用いて説明する。図1は、ゴルフシューズ1の靴底を示す底面図である。
【0013】
ゴルフシューズ1は、図1に示すように、右足用シューズ1R及び左足用シューズ1Lからなる。そして、右足用シューズ1Rは靴底10Rに複数のスパイク鋲21R〜29Rを有しており、左足用シューズ1Lは靴底10Lに複数のスパイク鋲21L〜28Lを有している。各スパイク鋲は、シューズの靴底から突出して設けられており、芝生等に圧接することによってグリップ力や安定性を向上させることができる。
【0014】
具体的には、本実施形態におけるゴルフシューズ1の靴底10R、10Lには、図1及び図2に示すように、第一趾及び第二趾の爪先に対応する部位に爪先部11R、11Lと、中節骨及び中足骨周辺に対応する部位に踏み付け部12R、12Lと、踵骨に対応する部位に踵部13R、13Lと、を有している。
【0015】
そして、本実施形態における右足用シューズ1Rは、図1に示すように、爪先部11Rに1つのスパイク鋲21Rを有し、踏み付け部12Rに5つのスパイク鋲22R〜25R、29Rを有し、踵部13Rに3つのスパイク鋲26R〜28Rを有している。
【0016】
一方で、本実施形態における左足用シューズ1Lは、図1に示すように、爪先部11Lに1つのスパイク鋲21Lを有し、踏み付け部12Lに4つのスパイク鋲22L〜25Lを有し、踵部13Lに3つのスパイク鋲26L〜28Lを有している。
【0017】
このように、右足用シューズ1Rは合計9個のスパイク鋲を備えている一方で、左足用シューズ1Lは合計8個のスパイク鋲を備えていることから、スパイク鋲の個数は左右のシューズによって異なることがわかる。
【0018】
これは、左右の足が3軸方向から受ける力を検知するセンサー、左右の足が受ける回転力を検知するセンサー、及び足底圧力センサー等を用いて、スイングの状態に応じて左右の足にかかる力を計測し、左右のシューズそれぞれに適した位置を割り出すことにより、スパイク鋲を配置した結果によるものである。以下、スパイク鋲の配置について、具体的に説明する。
【0019】
<<<スパイク鋲の配置について>>>
次に、ゴルフシューズ1の靴底におけるスパイク鋲の配置について、図1乃至図4を用いて説明する。図2は、ゴルフシューズ1に足の骨格構造を重ねた状態を示す平面図である。図3は、スイング動作時に靴底に力が加わるエリアを示す図である。図4は、スイング動作時にゴルフシューズ1に加わる力の向き及び回転モーメントの向きを示す図である。なお、図4Aは、テイクバックからトップにかけて、右足用シューズ1Rに加わるせん断力の向き及び回転モーメントの向き、スパイク鋲26R〜29Rにかかるせん断力の向きを示している。図4Bは、ダウンスイング時に、右足用シューズ1Rに加わるせん断力の向き及び回転モーメントの向き、スパイク鋲21R、29Rにかかるせん断力の向きを示している。図4Cは、後述する後半フェーズのときに、左足用シューズ1Lに加わる力の向き及び回転モーメントの向き、スパイク鋲21L、26R〜28Rにかかるせん断力の向きを示している。
【0020】
本実施形態におけるスパイク鋲の配置は、左右のシューズそれぞれについて、スパイク鋲が垂直方向に受ける力(垂直力)及び水平方向に受ける力(せん断力)や、スイングの際の捻転動作によって左右の足が受ける垂直力及び回転モーメント(トルク)や、左右の足底に加わる圧力を、スイングの状態ごとに各種センサーを用いて計測し、この計測データに基づき評価・解析することにより、決定されている。
【0021】
ここで、スイングの状態を前半フェーズと後半フェーズの2つに分け、アドレスから、テイクバック、トップまでの一連のスイング動作のことを前半フェーズと呼び、トップから、ダウンスイング、インパクト、フォローまでの一連のスイング動作のことを後半フェーズと呼ぶこととする。
【0022】
この計測データにより、前半フェーズにおいては、第一エリア(図3の上図参照)により示されているとおり、右足用シューズ1Rの爪先部11R及び踏み付け部12Rに垂直力が作用し、踵部13Rに上半身の捻転動作による時計回りの回転モーメントに耐えようとする反力が作用し、かつ、左足用シューズ1Lの内側に垂直力が作用することが明らかとなった。
【0023】
このように、この第一エリアに沿ってスパイク鋲を配置すれば、右足に体重をしっかり乗せることができ、かつ、上半身の捻転動作による回転モーメントにも耐えることができるため、前半フェーズにおいて左右の足にかかる力に応じたグリップ力や安定性を向上させることができる。
【0024】
一方、後半フェーズにおいては、第二エリア(図3の下図参照)により示されているとおり、左足用シューズ1Lの外側に垂直力と外側方向へのせん断力が作用し、踵部13Lに反時計回りの回転モーメントに耐えようとする反力が作用し、かつ、右足用シューズ1Rの踏み付け部12Rに蹴り出し動作による垂直力が作用することが明らかとなった。
【0025】
このように、かかる第二エリアに沿ってスパイク鋲を配置すれば、体重移動を支えてしっかりと壁を作ることができ、かつ、上半身の捻転動作による回転モーメントにも耐えることができるため、後半フェーズにおいて左右の足にかかる力に応じたグリップ力や安定性を向上させることができる。
【0026】
そこで、本実施形態におけるゴルフシューズ1は、図3に示すように、計測結果に基づく各エリアに対応させてスパイク鋲を配置することによって、左右のシューズそれぞれの機能を高めることを可能とした。すなわち、この配置によってグリップ力や安定性を向上させることができるため、アドレスからトップまでの体重移動をスムーズに移行させてエネルギーを蓄積させることができると共に、トップからダウンスイング、フォローまでの激しい動きを伴う体重移動を支えつつ蓄積したエネルギーをロスなくゴルフボールに伝えることが可能となり、ひいては、ゴルフボールの飛距離をアップさせることが可能となる。
【0027】
以下では、靴底の各部位(踏み付け部、踵部、爪先部)ごとに、左右のシューズそれぞれのスパイク鋲の配置について詳述する。
【0028】
<踏み付け部について>
上述したように、右足用シューズ1Rの踏み付け部12Rには、5つのスパイク鋲22R〜25R、29Rが配置され、左足用シューズ1Lの踏み付け部12Lには、4つのスパイク鋲22L〜25Lが配置されている。
【0029】
具体的には、右足用シューズ1Rの踏み付け部12Rには、図1に示すように、スパイク鋲29Rと、スパイク鋲29Rに対し前後方向後側かつ幅方向内側の位置にスパイク鋲22Rと、スパイク鋲29Rに対し前後方向後側かつ幅方向外側の位置にスパイク鋲23Rと、スパイク鋲23Rに対し前後方向後側の位置にスパイク鋲24Rと、スパイク鋲22Rに対し前後方向後側の位置にスパイク鋲25Rと、が配置されている。そして、スパイク鋲29Rは、図2に示すように、着用時の第二中節骨42R(人差指)に対応する部位に配置されている。
【0030】
このようにスパイク鋲29Rを配置したのは、計測データを解析した結果、図4Aに示すように、スイング動作がトップのときに右足には時計回り(外側方向へ)に最大の回転トルクが生じ、この力に対抗すべく第二中節骨42Rに対応する部位に大きな力がかかることとなり、この位置に対応させてスパイク鋲29Rを配置すれば、グリップ力と安定性を向上させることが可能となるからである。
【0031】
また、スパイク鋲29R、スパイク鋲22R、スパイク鋲23Rは、各自の位置を頂点として、三角形状をなすように配置されている。これらを三角形状に配置することによってグリップ力をさらに高めることができるため、ダウンスイングのときに右足は前後方向後側へ移動しようとする傾向があるが(図4B参照)、この移動により生じる力に対してより強く対抗することが可能となる。
【0032】
以上のとおり、スパイク鋲29Rは、右足用シューズ1Rのみに存在するものであり、右足のグリップ力と安定性を向上させるため特に重要な役割を果たしている。
【0033】
一方で、左足用シューズ1Lの踏み付け部12Lには、図1に示すように、幅方向内側にスパイク鋲22L、25Lが前後方向に並べられ、幅方向外側にスパイク鋲23L、24Lが前後方向に並べられて配置されている。そして、図2に示すとおり、右足用シューズ1Rの踏み付け部12Rと比較すれば明らかであるが、左足用シューズ1Lの踏み付け部12Lには、着用時の第二中節骨42L(人差指)に対応する部位にスパイク鋲が配置されていない。
【0034】
これは、計測データによれば、左足の場合には第二中節骨42Lに対応する部位にはほとんど力がかからず、この位置にスパイク鋲を配置しないことで、軽量化を図ることができるからである。
【0035】
以上のように、スイングの状態に応じて左右足の踏み込み部12R、12Lにかかる力に対応させて必要最小限のスパイク鋲を最適位置のみに配置することで、左右のシューズそれぞれの機能を高めることが可能となる。
【0036】
<踵部について>
上述したように、右足用シューズ1Rの踵部13Rには、3つのスパイク鋲26R〜28Rが配置され、左足用シューズ1Lの踵部13Lには、3つのスパイク鋲26L〜28Lが配置されている。
【0037】
具体的には、先ず、右足用シューズ1Rの踵部13Rには、図1に示すように、当該踵部13Rを、踵骨43Rの中央を基準として、前後方向後側かつ幅方向内側の第一領域13R1と、前後方向後側かつ幅方向外側の第二領域13R2と、前後方向前側かつ幅方向外側の第三領域13R3と、前後方向前側かつ幅方向内側の第四領域13R4に区分したときに、第一領域13R1内にスパイク鋲26R、第二領域13R2内にスパイク鋲28R、第三領域13R3内にスパイク鋲27R、が配置されている。
【0038】
このように配置したのは、計測データを解析した結果、図4Aに示すように、テイクバックからトップにかけて、右足に時計回り(外側方向へ)に大きな回転トルクが生じ、かつ、体重が前後方向後側へ移動するので、この力に対抗すべく踵部13Rの第一領域13R1〜第三領域13R3に大きな力がかかることとなり、この位置に対応させてスパイク鋲26R〜28Rを配置すれば、グリップ力と安定性を向上させることが可能となるからである。
一方で、右足用シューズ1Rの踵部13Rの第四領域13R4には、スパイク鋲が配置されていない。
【0039】
これは、計測データによれば、テイクバックからトップにかけて右足には時計回り(外側方向へ)に回転トルクが生じるため、右足の踵骨43Rの内側部位(第四領域13R4に対応する部位)にはほとんど力がかからず、この位置にスパイク鋲を配置しないことで、軽量化を図ることができるからである。
【0040】
次に、左足用シューズ1Lの踵部13Lには、図1に示すように、当該踵部13Lを、踵骨43Lの中央を基準として、前後方向後側かつ幅方向内側の第一領域13L1と、前後方向後側かつ幅方向外側の第二領域13L2と、前後方向前側かつ幅方向外側の第三領域13L3と、前後方向前側かつ幅方向内側の第四領域13L4に区分したときに、第一領域13L1内にスパイク鋲26L、第二領域13L2内にスパイク鋲28L、第三領域13L3内にスパイク鋲27L、が配置されている。
【0041】
このように配置したのは、計測データを解析した結果、図4Cに示すように、スイング状態がダウンスイングのときに左足には幅方向内側から外側へ向けて大きな力がかかり、さらにスイング動作がフォロー後のフィニッシュのときに左足には反時計回り(外側方向へ)に回転トルクが生じ、かつ、体重が幅方向内側から外側へ移動するので、踵部13Lの第一領域13L1〜第三領域13L3に大きな力がかかることとなり、この位置に対応させてスパイク鋲26L〜28Lを配置すれば、グリップ力と安定性を向上させることが可能となるからである。
一方で、左足用シューズ1Lの踵部13Lの第四領域13L4には、スパイク鋲が配置されていない。
【0042】
これは、計測データによれば、ダウンスイングからフィニッシュにかけて左足には反時計回り(外側方向へ)に回転トルクが生じるため、左足の踵骨43Lの内側部位(第四領域13L4に対応する部位)にはほとんど力がかからず、この位置にスパイク鋲を配置しないことで、軽量化を図ることができるからである。
【0043】
以上のように、スイングの状態に応じて左右足の踵部13R、13Lにかかる力に対応させて必要最小限のスパイク鋲を最適位置のみに配置することで、左右のシューズそれぞれの機能を高めることが可能となる。
【0044】
<爪先部について>
上述したように、右足用シューズ1Rの爪先部11Rには、1つのスパイク鋲21Rが配置され、左足用シューズ1Lの爪先部11Lには、1つのスパイク鋲21Lが配置されている。
【0045】
具体的には、先ず、右足用シューズ1Rの爪先部11Rには、図1に示すように、当該爪先部11Rを幅方向内側の内側領域11Riと幅方向外側の外側領域11Roに区分したときに、内側領域11Riにスパイク鋲21Rが配置されているが、外側領域11Roにはスパイク鋲を配置されていない。
【0046】
このような配置にしたのは、計測データを解析した結果、図4A及び図4Bに示すように、テイクバック、トップおよびダウンスイングのときに右足に回転トルクが生じ、この力を支持すべく右足の第一趾(親指)先端に垂直力がかかることとなり、特に、切り返しのときに(トップを境にテイクバックからダウンスイングへと切り替わるときに)、右足には大きな回転トルクが生じ、この力を支持すべく右足の第一趾(親指)先端に大きな垂直力がかかることとなるため、右足の第一趾先端に対応する部位にスパイク鋲21Rを配置することにより、グリップ力と安定性を向上させることが可能となるからである。
【0047】
次に、左足用シューズ1Lの爪先部11Lには、図1に示すように、当該爪先部11Lを幅方向内側の内側領域11Liと幅方向外側の外側領域11Loに区分したときに、外側領域11Loにスパイク鋲21Lが配置されているが、内側領域11Liにはスパイク鋲を配置されていない。
【0048】
このような配置にしたのは、計測データを解析した結果、図4Cに示すように、ダウンスイングからフィニッシュにかけて左足には反時計回り(外側方向へ)に回転トルクが生じ、かつ、体重が幅方向内側から外側へ移動することで左足に大きなせん断力が生じ、この力を支持すべく左足の第二趾(人差指)の先端に大きな力がかかることとなるため、左足の第二趾先端に対応する部位にスパイク鋲21Lを配置することにより、グリップ力と安定性を向上させることが可能となるからである。また、左足の第二趾先端に対応する部位にスパイク鋲21Lを配置することにより、傾斜面にてスイングを行う際、インパクト後の捻転動作を制限することも可能となる。
【0049】
以上のように、スイングの状態に応じて左右足の爪先部11R、11Lにかかる力に対応させて必要最小限のスパイク鋲を最適位置のみに配置することで、左右のシューズそれぞれの機能を高めることが可能となる。
【0050】
<<<本実施の形態に係るゴルフシューズ1の有効性について>>>
上述したとおり、本実施形態に係るゴルフシューズ1は、シューズの靴底において第二中節骨に対応する部位にスパイク鋲を配置した。そして、このことにより、第二中節骨に対応する部位にかかる力に対応させてスパイク鋲を適切に配置でき、シューズの機能を高めることができる。特に、スイング動作がトップのときに第二中節骨には、最大の時計回りの回転トルクが生じるが、第二中節骨に対応させてスパイク鋲を配置することで、グリップ力や安定性を向上させることが可能となる。
【0051】
また、本実施形態においては、左右のシューズ1R、1Lのうち、右足用シューズ1Rの靴底10Rにおいて第二中節骨42Rに対応する部位にスパイク鋲29Rを配置し、左足用シューズ1Lの靴底10Rにおいて第二中節骨42Lに対応する部位にスパイク鋲を配置しないようにした。そして、このことにより、左右の足に加えられる力に応じてスパイク鋲を配置する又は配置しないことにより、左右のシューズそれぞれの機能を高めることができる。すなわち、第二中節骨42Rに対応する部位にスパイク鋲29Rを配置することで、スイング動作がトップのときに右足に生じた時計回り(外側方向へ)の回転トルクに対抗することができ、第二中節骨42Rに対応する部位にかかる力を受け止めることができるため、グリップ力と安定性を向上させることが可能となる。また、左足の第二中節骨42Lに対応する部位には力がかからず、スパイク鋲を配置する必要がないので、軽量化を図ることができる。
【0052】
また、本実施形態においては、ゴルフシューズ1R、1Lの靴底10R、10Lにおいて、踵骨43R、43Lに対応する部位を、第一領域13R1、13L1と、第二領域13R2、13L2と、第三領域13R3、13L3と、第四領域13R4、13L4に区分したときに、第一領域13R1、13L1乃〜第三領域13R3、13L3にスパイク鋲26R〜28R、26L〜28Lを配置し、第四領域13R4、13L4にはスパイク鋲を配置しないようにした。そのため、左右の足に加えられる力に応じてスパイク鋲を配置する又は配置しないことにより、左右のシューズそれぞれの機能を高めることができる。すなわち、ダウンスイングのときに左足にかかる幅方向内側から外側へ向う力を受け止め、さらにフィニッシュのときに左足に生じる反時計回り(外側方向へ)の回転トルクに対抗することができ、かつ、体重が幅方向内側から外側へ移動することで踵部13Lの第一領域13L1〜第三領域13L3にかかる力を受け止めることができるため、グリップ力と安定性を向上させることが可能となる。
【0053】
また、本実施形態においては、右足用シューズ1Rの靴底10Rにおいて、第一趾(親指)及び第二趾(人差指)の爪先に対応する部位を、内側領域12Riと外側領域12Roに区分したときに、内側領域12Riにスパイク鋲21Rを配置し、外側領域12Roにはスパイク鋲を配置しないようにし、左足用シューズ1Lの靴底10Lにおいて、第一趾及び第二趾の爪先に対応する部位を、内側領域12Liと外側領域12Loに区分したときに、外側領域12Loにスパイク鋲21Lを配置し、内側領域12Liにはスパイク鋲を配置しないようにした。そのため、左右の足に加えられる力に応じてスパイク鋲を配置する又は配置しないことにより、左右のシューズそれぞれの機能を高めることができる。すなわち、右足用シューズ1Rにあっては、テイクバック、トップ、及びダウンスイングのときに右足に生じる回転トルクに対抗することができ、かつ、右足の第一趾(親指)先端にかかる垂直力を受け止めることができるため、グリップ力と安定性を向上させることが可能となる。また、左足用シューズ1Lにあっては、ダウンスイングからフィニッシュにかけて左足に生じる反時計回り(外側方向へ)の回転トルクに対抗することができ、かつ、体重が幅方向内側から外側へ移動することで左足にかかるせん断力を受け止めることができるため、グリップ力と安定性を向上させることが可能となる。
【0054】
以上のとおり、このようにスパイク鋲を配置することよって、左右のシューズそれぞれに適したグリップ力や安定性を向上させることが可能となる。そして、アドレスからトップまでの体重移動をスムーズに移行させてエネルギーを蓄積させることができると共に、トップからフォローまでの激しい動きを伴う体重移動を支えつつ蓄積したエネルギーをロスなくゴルフボールに伝えることが可能となり、ひいては、ゴルフボールの飛距離をアップさせることが可能となる。
【0055】
===その他の実施の形態===
上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。特に、以下に述べる実施形態であっても、本発明に含まれるものである。
【0056】
<スパイク鋲の配置>
上記の実施形態においては、右足用シューズ1Rのみにスパイク鋲29Rを設けたゴルフシューズ1を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではない。すなわち、左右のシューズそれぞれの靴底において、第二中節骨に対応する部位にスパイク鋲を配置するようにしてもよい。
【0057】
また、上記の実施形態においては、右利き用のゴルフシューズ1を例に挙げ、スパイク鋲の配置について説明したが、これに限定されるものではない。すなわち、上記の実施形態に係るスパイク鋲の配置は、左利き用のゴルフシューズ1にも適用することができる。なお、上記の実施形態に係るスパイク鋲の配置を左利き用のゴルフシューズ1に適用する場合には、図1に示すスパイク鋲の配置を左右反転させる必要がある。
【0058】
また、上記の実施形態におけるスパイク鋲の配置は、図1に示すように、左右のシューズにおいて爪先部、踏み付け部、踵部の各部位にスパイク鋲をそれぞれ配置してなるものであるが、これに限定されるものではない。
【0059】
たとえば、右足用シューズ1Rにおいてスパイク鋲を配置する場合、爪先部11Rにおけるスパイク鋲の配置(図1参照)のみを採用し、踏み付け部12Rや踵部13Rにおけるスパイク鋲の配置を他の配置のものに変更してもよい。また、爪先部11R及び踏み付け部12Rにおけるスパイク鋲の配置(図1参照)のみを採用し、踵部13Rにおけるスパイク鋲の配置を他の配置のものに変更してもよい。また、爪先部11R及び踵部13Rにおけるスパイク鋲の配置(図1参照)のみを採用し、踏み付け部12Rにおけるスパイク鋲の配置を他の配置のものに変更してもよい。すなわち、スパイク鋲を配置する際に、グリップ力を高めたい部位(又は位置)に合わせて選択的に配置してもよい。
【0060】
<スパイク鋲>
上記の実施形態においてスパイク鋲の配置について説明したが、このようにスパイク鋲を配置する際に、スパイク鋲の向きを当該スパイク鋲が受ける力の向きに合わせて配置するようにしてもよい。
【0061】
具体的には、図5に示すとおり、加わる力の向き(図中の矢印方向)に沿うように、各スパイク鋲を配置する。この際、スパイク鋲の形状を、加わる力の向き(図中の矢印方向)に進むにつれて靴底10Rから徐々に下方へ突出するように傾斜したテーパー形状にしてもよい。これにより、スパイク鋲は、加わる力を効率良く受け止めることができるため、グリップ力をさらに高めることが可能となる。
【0062】
たとえば、スパイク鋲29Rについては、図4Aに示すように、テイクバックからトップにかけて右足に大きな回転力がかかり、また、図4Bに示すように、ダウンスイングのときに右足には前後方向後側に大きなせん断力がかかることにより、前後方向前側を12時の方向とした場合に6時〜7時の方向にせん断力が作用する。よって、この方向に一致させてスパイク鋲29Rを配置すると良い。
【0063】
また、スパイク鋲21Rについては、図4Bに示すように、トップからダウンスイングにかけて右足に大きな回転力がかかることにより、前後方向前側を12時の方向とした場合に4時の方向にせん断力が作用する。よって、この方向に一致させてスパイク鋲21Rを配置すると良い。
【0064】
また、スパイク鋲21Lについては、図4Cに示すように、ダウンスイングのときに左足には幅方向内側から外側へ向けて大きな力がかかり、さらにフィニッシュのときに左足に反時計回り(外側方向へ)に回転力がかかることにより、前後方向前側を12時の方向とした場合に10時〜12時の方向にせん断力が作用する。よって、この方向に一致させてスパイク鋲21Lを配置すると良い。
【0065】
また、スパイク鋲26R、27R、28Rそれぞれについては、図4Aに示すように、テイクバックからトップにかけて右足に大きな回転力がかかることにより、前後方向前側を12時の方向とした場合、4時〜5時の方向、10時〜11時の方向、1時〜2時の方向にせん断力が作用する。よって、この方向に一致させてスパイク鋲26R、27R、28Rをそれぞれ配置すると良い。
【0066】
また、スパイク鋲26L、27L、28Lそれぞれについては、図4Cに示すように、ダウンスイングからフィニッシュにかけて左足に大きな回転力がかかることにより、前後方向前側を12時の方向とした場合、4時〜5時の方向、7時〜8時の方向、8時〜10時の方向にせん断力が作用する。よって、この方向に一致させてスパイク鋲26L、27L、28Lをそれぞれ配置すると良い。
【符号の説明】
【0067】
1 ゴルフシューズ、
1R 右足用シューズ、 1L 左足用シューズ、
10R、10L 靴底、
11R、11L 爪先部、
12R、12L 踏み付け部、
12Ri、12Li 内側領域、
12Ro、12Lo 外側領域、
13R、13L 踵部、
13R1、13L1 第一領域、
13R2、13L2 第二領域、
13R3、13L3 第三領域、
13R4、13L4 第四領域、
21R〜29R、21L〜28L スパイク鋲、
42R、42L 第二中節骨(人差指)、
43R、43L 踵骨

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シューズの靴底において第二中節骨に対応する部位にスパイク鋲を配置したことを特徴とするゴルフシューズ。
【請求項2】
請求項1に記載のゴルフシューズであって、
左右のシューズのうち、一方のシューズの靴底において第二中節骨に対応する部位にスパイク鋲を配置し、他方のシューズの靴底において第二中節骨に対応する部位にスパイク鋲を配置しないことを特徴とするゴルフシューズ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のゴルフシューズであって、
シューズの靴底において、踵骨に対応する部位を、前後方向後側かつ幅方向内側の第一領域と、前後方向後側かつ幅方向外側の第二領域と、前後方向前側かつ幅方向外側の第三領域と、前後方向前側かつ幅方向内側の第四領域に区分したときに、前記第一領域乃至前記第三領域にスパイク鋲を配置し、前記第四領域にはスパイク鋲を配置しないことを特徴とするゴルフシューズ。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載のゴルフシューズであって、
前記一方のシューズの靴底において、第一趾及び第二趾の爪先に対応する部位を、幅方向内側の内側領域と幅方向外側の外側領域に区分したときに、前記内側領域にスパイク鋲を配置し、前記外側領域にはスパイク鋲を配置せず、
前記他方のシューズの靴底において、第一趾及び第二趾の爪先に対応する部位を、幅方向内側の内側領域と幅方向外側の外側領域に区分したときに、前記外側領域にスパイク鋲を配置し、前記内側領域にはスパイク鋲を配置しないことを特徴とするゴルフシューズ。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−170507(P2012−170507A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−32504(P2011−32504)
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(390010917)ヨネックス株式会社 (31)
【Fターム(参考)】