説明

ゴルフボールの摩耗インジケータ

【課題】 ゴルフボール表面が劣化したこと、及び、ボールの飛行軌道が、最初に意図されたものとは異なる可能性のあることについてゴルファーの注意を喚起するインジケータを含むゴルフボールを提供すること。
【解決手段】 ゴルフボールは、コアの上に、複数の層を含むカバーを有する。反応層は、特定の大気又は環境因子に暴露されると変化する。保護層は、反応層が該因子に暴露されることがないよう保護する。トップ層は他の層を被覆する。ただし、トップ層、保護層、及び反応層は、まちまちな程度で互いに混じり合ってもよい。トップ層及び保護層の劣化によって、反応層は、該因子に暴露されるようになり変化を受ける。この変化は、ゴルファーに、ボールの劣化について注意を促す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、大気元素に暴露されると外観を変える層を含むゴルフボールに関する。この外観変化は、該ボールの性能特徴が変化したこと、及び、該ボールを交換すべきであることについてゴルファーの注意を喚起する。
【背景技術】
【0002】
ゴルファーによって選ばれるボールは、ゴルフのラウンドにおける該ゴルファーのスコアに重大な影響を及ぼす。色々な種類の特性、例えば、特定のサイズ、重量、及び密度などを有するゴルフボールがデザインされており、これらの特性の全てが、該ボールの飛行軌道に影響を及ぼす。
【0003】
これらの特性に加えて、ボールの外表面も、該ボールの飛行軌道に影響を及ぼす。ボールは、種々のディンプルサイズ及び形状を持つものがデザインされるが、その他、同様にボールの軌道に影響を及ぼす種々の材料からも製造される。
【0004】
ゴルフボールは、特定の飛行軌道を念頭においてデザインされる場合がある。ボールが擦られたり、又はその他のやり方で損傷されると、該ボールの飛行軌道は変わる可能性がある。ゴルファーは、そのような変化が起きることを承知はしているものの、どの程度の擦過傷又は損傷が飛行軌道に変化をもたらすのかについては、気がつかない場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、ボール表面が劣化したこと、及び、ボールの飛行軌道が、最初に意図されたものとは異なる可能性のあることについてゴルファーの注意を喚起するインジケータを含むボールを所有することはゴルファーにとって有用であると考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施態様では、ゴルフボールの外方複合層は、環境の反応開始剤に暴露されると反応する摩耗インジケータを含む。外方複合層は、トップ層、反応層、及び保護層を含む。反応層は、開始剤に対し反応することが可能である。保護層は、トップ層と反応層の間にある。保護層は、反応層を、開始剤に暴露されないように保護することが可能である。
【0007】
別の実施態様では、ゴルフボールは、環境源に暴露されると反応する摩耗インジケータを含む摩耗インジケータを含む。ゴルフボールはコアとカバーを含む。カバーは、放射方向においてコアの外方にある反応層を含む。反応層は、環境源に暴露されると反応することが可能な反応物質を含む。カバーはさらに、放射方向において反応層の外方にある保護層を含む。保護層は、反応層を環境源から遮蔽することが可能な遮蔽物質を含む。
【0008】
さらに、ゴルフボールを使用すべきかどうかを決定する方法が記載される。方法は、該ゴルフボールをゴルフクラブで打つこと、ゴルフボールを調べて該ゴルフボールが環境源に対して反応したかどうかを決定すること、及び、該ゴルフボールの使用続行を選択すること、の諸工程を含む。方法はさらに、ボールの使用停止を選択すること、及び、ボールの交換を選択することを含む。
【0009】
本発明の他のシステム、方法、特色、及び利点は、当業者には明白であろうし、或いは、下記の図面及び詳細な説明を精査することによって明白となろう。そのような追加のシステム、方法、特色、及び利点は全て、本明細書及び本概要の範囲に含まれ、本発明の範囲に含まれ、且つ、下記の特許請求項によって保護されることが意図される。
【0010】
本発明は、下記の図面及び説明を参照することによってさらによく理解することが可能である。図面の成分は必ずしも実尺に合致するものではなく、強調はむしろ本発明の原理の具体的説明に置かれる。さらに、図面において、同じ参照数字は、種々の投影図を通じて対応する部品を表示する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】ゴルフボール実施態様の断面図である。
【図2】ゴルフボール実施態様の断面の拡大図である。
【図3】ゴルフボールの別実施態様の断面の拡大図である。
【図4】ゴルフボールの別実施態様の断面の拡大図である。
【図5】ゴルフボールの別実施態様の断面の拡大図である。
【図6】クラブによって打たれるボールの斜視図である。
【図7】摩耗を示すゴルフボール実施態様断面の拡大図である。
【図8】摩耗を示すゴルフボール実施態様断面の拡大図である。
【図9】摩耗及び層の褪色を示す、ゴルフボール実施態様断面の拡大図である。
【図10】摩耗及び層の褪色を示す、ゴルフボール実施態様の立面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
開示される実施態様は、外方複合層を形成する一連の層、すなわちカバーを有するゴルフボールである。ボールがゴルファーによって使用されると、該ゴルフボールの外方カバーは、通常のプレイを通じて劣化するか、又は損傷を受ける。ボールが、指定のボール軌道を実現することができなくなるほど劣化した場合、反応層は暴露され、大気の一つ以上の元素に反応し、ゴルファーに対し、このボールは劣化していること、及び、新しいボールを選択すべきであることついて注意を促す。ゴルファーに対し劣化について注意を促す、この一連の層は、摩耗インジケータと見なすことが可能である。
【0013】
図1は、ゴルフボール100の実施態様の断面図である。ゴルフボール100は、一連の、放射方向、又は輪郭的に配置される層を有する。最内側層はコア102である。コア102は、ゴルフボールにおいて一般的に使用される各種コアのいずれであってもよい。例えば、コア102は、そうしようと思えば、液体充填とすることも、固体充填とすることも可能と考えられる。固体は、ゴム、樹脂、又は、適切なものであれば他のいずれの材料であってもよい。コアはさらに、色々なタイプの錘を含んでもよい。コア102はさらに、糸巻きカバーを含んでもよい。コア102はさらに、種々の層を含んでもよい。要するに、本開示の主旨では、「コア」という用語は、ゴルフボールの、カバー又はコートを含まない部分を含む。当業者であれば、所望の、技術的及び飛行的特徴を生みだすコアを選択することは可能である。図面ではこれと具体的に示されていないが、必要に応じて選ばれてもよい外套層が、コア102に隣接して、又は、他の層の任意の二層の間に含まれてもよい。
【0014】
カバー又は外方複合層104がコア102を取り囲む。カバー104は、放射方向にコア102の外方にある。図2は、図1の破線内の区域の拡大図である。図2は、カバー104の層をさらに詳細に示す。図2のカバー104の層は、反応層110、保護層108、及びトップ層106を含む。トップ層106は、保護層108を囲み、放射方向にその外方にあってもよい。保護層108は、反応層110を囲み、放射方向にその外方にあってもよい。反応層110は、コア102を囲み、放射方向にその外方に位置づけられてもよい。
【0015】
図面では、トップ層106は、単純化された形状で示される。市販モデルでは、トップ層106、特に、トップ層106の外面154は、ゴルフクラブによって打たれるように構成される。したがって、トップ層106は、各種のディンプル、フレット又は平地、突起、プリント、又は、デザイナーが、ボール100の飛行軌道に対する影響の点で望ましいと考える可能性のある、他の任意の特色を含んでもよい。トップ層106は、擦過傷耐性を持つようにデザインされてもよい。
【0016】
反応層110は、コア102に隣接して置かれてもよい。反応層110は反応物質を含む。反応物質は、対応する活性剤に暴露されると反応する、又は反応することが可能である各種物質の中から選ばれる。本実施態様の場合、反応物質は、ゴルファーがゴルフを行うと予想される環境において瀰漫する環境源に暴露されると反応することが望ましいと考えられる。標準的ゴルフコースでは、適切な環境源となり得る多くのアイテムが普通に見出される。例えば、反応物質は、そうしようと思えば、草又は樹木の花粉に対して感受性を持ち、そのような花粉に暴露されると反応することも可能であると考えられる。それとは別に、該物質は、そうしようと思えば、大気中の酸素、窒素、又は他の元素に暴露されると反応することも可能と考えられる。しかしながら、そのボールが、ゴルフコースにおいてプレイ用ボールとして活発に使用されるとき暴露される可能性が高い何かに対してのみ反応する反応物質を選ぶことが望ましいと考えられる。空気又は花粉に対する暴露は、ボールがガレージにおいてゴルフバッグの中に納められているときにも起こり得るが、ある程度の暴露が起こるのは、ボールが近づくプレイに備えてゴルフカートの中に納められているときだけである。例えば、反応物質は、そうしようと思えば、太陽からの放射線に暴露されたときに反応することも可能であると考えられる。特に、反応物質は、太陽からの特定波長の放射線に暴露されたとき、例えば、一つ以上の波長の紫外線に暴露されたときに反応してもよい。
【0017】
環境源はさらに、反応開始剤と見なされてもよい。多くの場合、反応物質は、例えば、反応が開始剤に対する暴露によって惹起されるまでは、一形態、状態、又はカラーに留まる物質であってもよい。開始剤は、ゴルフコース大気中の大気的何か、例えば、空気、光、草、又は、反応物質と接触する可能性が高く、反応物質において反応を惹起することが可能な他の物質である。
【0018】
反応物質は、それが、環境源、すなわち開始剤に暴露されたとき、そのことについてゴルファーの注意を喚起するために色々な方法があるが、それらの内のいずれの方法で反応してよい。例えば、そうしようと思えば、反応物質はサイズを変えることも可能であると考えられる。そのような場合、例えば、反応物質は、そうしようと思えば、環境源に暴露されると大きくなることも可能であると考えられる。それとは別に、反応物質は、そうしようと思えば、イオン化されて電流を送り、反応物質が環境源に暴露されたことを示して、ユーザーの注意を喚起することも可能であると考えられる。もう一つの別態様として、反応物質は、環境源に暴露されると色を変えてもよい。
【0019】
さらに、反応物質は時間と共に異なる反応を示すと有用である場合がある。例えば、反応物質が色を変えることによって反応する場合、反応物質は、環境源に対する最初の暴露では白から淡い紫に変化してもよい。時間の進行と共に、そうしようと思えば、さらに新たな暴露と共に、暴露される反応物質の色は濃くなることも可能であると考えられる。反応物質がUV光に反応する場合、反応は、ヒトの日焼けと同様に--日焼けが濃ければ濃いほど、それは、そのヒトがどれだけ長く太陽に暴露されていたかを示す傾向がある--見なすことが可能であると考えられる。
【0020】
反応層110は、部分的にか、又は完全に反応物質から製造されてもよい。所望の反応物質の選択、及び、反応層におけるその濃度は、様々な要因に依存すると考えられる。これらの要因としては、物質の圧縮性、コスト、色、層内における該物質の全体として均一な混合物実現の難易度、及び、デザイナーが、重要であるか、又は望ましいと考える他の任意の要件が挙げられる。反応物質の、反応層の全体物質に対する比率は、環境源に対する反応において有効であるために必要な反応物質の量又は濃度に依存して変動すると考えられる。
【0021】
保護層108は、反応層110に隣接し、放射方向にその外方にあってもよい。保護層108は、トップ層106に隣接し、放射方向にその内方にあってもよい。保護層108は、反応物質を環境源から遮蔽するか、又は遮蔽することが可能な遮蔽物質を含んでもよい。保護層108中の遮蔽物質、及び、反応層110中の反応物質は、遮蔽物質が反応物質の遮蔽において有効となるように一緒に選ばれることが望ましい。ある場合では、遮蔽物質は、そうしようと思えば、酸化亜鉛又は酸化チタン単独、又は別の物質との組み合わせであることも可能と考えられる。
【0022】
例えば、反応層110における反応物質は、紫外線スペクトラムにおける光波長に対して感受性を持つ物質であってもよい。この場合、保護層における保護物質は、紫外光波が、該保護物質を透過することがないようにろ過するか、又はブロックする物質であってもよい。この場合、保護層は、反応物質が、早すぎる段階で開始剤又は環境源に暴露されることがないように阻止する。
【0023】
保護層108は、部分的か、又は完全に保護物質から製造されてもよい。所望の保護物質の選択、及びその濃度は、様々な要因に依存すると考えられる。これらの要因としては、物質の圧縮性、コスト、色、層内における該物質の全体として均一な混合物実現の難易度、及び、デザイナーが、重要であるか、又は望ましいと考える他の任意の要件が挙げられる。保護物質の、保護層の全体物質に対する比率は、環境源から反応物質を保護するのに有効であるために必要な保護物質の量又は濃度に依存して変動してよい。
【0024】
保護層108はさらに、全体又は部分が、ボールの飛行を向上させるようにデザインされる物質から製造されてもよい。トップ層の構成は、保護層108がボールの飛行を向上させるように、保護層108の表面上に複製されてもよい。さらに、保護層は、ゴルフクラブか、又はボールを打つ他のアイテムによって引き起こされる擦過傷又はその他の損傷に対し耐性を持つのに必要な特性を有する物質から、全体又は部分が製造されてもよい。
【0025】
図3に、別実施態様が示される。図3は、図1の破線区域で得られる、ボール200の別形態の拡大図である。カバー又は外方複合層204は、コア202を取り囲んでもよい。カバー204は、放射方向においてコア202の外方にあってもよい。保護層212は、反応層210を取り囲み、放射方向においてその外方にあってもよい。反応層210は、コア202を取り囲み、放射方向においてその外方にあってもよい。
【0026】
図3の実施態様では、コア202は、上述のコア102に関連して開示されたものと同じ特性及び別特性を有する。反応層210は、上述の反応層110に関連して開示されたものと同じ特性及び別特性を有する。図2の実施態様と図3の実施態様の違いは、図2における保護層108及びトップ層106の代わりに、図3では保護層212を使用していることである。
【0027】
図3では、保護層212は、保護層108及びトップ層106両方の特色を有するようにデザインされてもよい。例えば、保護層212は、保護物質の上述の有効量、すなわち、反応層210が開始剤に暴露されることが無いように保護するのに有効な量を含んでもよい。保護層212はさらに、トップ層106の特色、例えば、ディンプル、平地、及び、外面がゴルフボールによって打たれ、有効な飛行軌道を取ることを可能とするその他の特色を有するように構成される外面を有していてもよい。保護層212はさらに、擦過傷耐性であってもよい。
【0028】
ここで図4に眼を向けると、さらに別の実施態様が開示される。図1の破線の区域で得られる、ボール300の別形態の拡大図である。カバー又は外方複合層304は、コア302を取り囲んでもよい。カバー304は、放射方向においてコア302の外方にあってもよい。トップ層306は、二次層314を取り囲み、放射方向においてその外方にあってもよい。二次層314は、保護層308を取り囲み、放射方向においてその外方にあってもよい。保護層308は、反応層310を取り囲み、放射方向においてその外方にあってもよい。反応層310は、コア302を取り囲み、放射方向においてその外方にあってもよい。
【0029】
図4の実施態様では、コア302は、上述のコア102及びコア202に関連して開示されたものと同じ特性及び別特性を有する。反応層310は、上述の反応層110及び反応層210に関連して開示されたものと同じ特性及び別特性を有する。保護層308は、上述の保護層108に関連して開示されたものと同じ特性及び別特性を有する。トップ層306は、上述のトップ層106に関連して開示されたものと同じ特性及び別特性を有する。
【0030】
図4の実施態様と図2の実施態様の違いは、二次層、例えば、二次層314を含むことである。二次層314は種々の理由で含まれてよい。反応層及び保護層用の物質の含有は、ボールの全体圧縮度、又は他の性能因子を変える場合がある。そのような性能因子を標準条件に戻す二次層を含めることが望ましい場合がある。さらに、ある場合では一つを超える保護層を使用することが望ましい場合がある。そのような場合、二次層は、新たに追加の保護層を供給するために保護又は遮蔽物質を含むことが可能である。それとは別に、二次層は、ボールの外観を変える着色剤を含んでもよい。種々の特性を含む層を含めることが有用となる理由又は要因は外にもあると考えられる。図4では、二次層314が、保護層308とトップ層306の間に位置づけられるところが示されるが、そうしようと思えば、上述の位置の代わりに、二次層を含めるための理由に応じて他の層の間に位置づけることも可能と考えられる。
【0031】
ここで図5に眼を向けると、さらに別の実施態様が開示される。図1の破線区域で得られる、ボール500の別形態の拡大図である。カバー又は外方複合層504は、コア502を取り囲んでもよい。カバー504は、放射方向においてコア502の外方にあってもよい。トップ層506は、活性層516を取り囲み、放射方向においてその外方にあってもよい。
【0032】
図5の実施態様では、コア502は、上述のコア102、コア202、及びコア302に関連して開示されたものと同じ特性及び別特性を有する。図5の実施態様では、図1-4の実施態様において記載されたものと同じ反応層及び保護層の特性が組み合わされて活性層516にまとめられる。活性層516は、環境源に暴露されると反応することが可能な反応物質、及び、該反応物質を環境源から遮蔽することが可能な遮蔽物質の両方を含む。活性層516において使用される反応物質及び遮蔽物質は、上に開示した実施態様に関連して開示したものと同様又は同一であってもよい。反応物質及び遮蔽物質の比率は、適切であれば、どのような比率であってもよい。活性層516の厚みは約10ミクロンであってもよい。この実施態様では、コア502に活性層516を印加するために染料注入プロセスを用いると好都合である可能性がある。他の実施態様でも、少なくとも反応層又は物質を印加するために、同様の染料注入プロセスを用いることも、そうしようと思えば、可能であると考えられる。このような印加のために使用される方法は、従来の染料注入プロセスであってもよく、或いは、米国特許第___号、2010年1月21日出願、名称「物品にマーキングを印加するためのシステム及び方法("Systems and Methods for Applying Markings to an Article")」なる最近の米国特許出願第12/691,171号に開示される染料注入プロセスであってもよい。なお、この出願を引用により本明細書に含める。
【0033】
図6-10は、例示のボールの使用を示す。開示の実施態様は、いずれのものも使用が可能であるが、図1及び2に示すボール100を例示実施態様として選ぶ。図6は、例示のゴルフクラブ150に対する、ボール100の相対的位置を示す。ゴルフクラブ150がゴルフボール100を打つとき、それは、ゴルフボール100のカバー104の僅かな劣化を引き起こす。ゴルフボール100の飛行、及び、ゴルフコースに対するゴルフボール100の衝突も、カバー104の劣化を引き起こす。ボール100が草の上に着地する場合、該ボール100が、木、バンカー、カート通路、岩、砂利道、又は、いずれのものであれ、コース上の、他の、より堅い障害物を叩いた場合よりは、浸食は少ないと考えられる。
【0034】
図7に示すように、さらに拡大して見ると、外方すなわちトップ層106は、152に示す小さな凹みによって示されるように、摩耗劣化を開始する。多くのゴルフボールでは、トップ層106は、15ミクロン以下の厚みを持つと考えられる。したがって、ボール上の区域152に表される小さな擦過傷は、特に、ボールがディンプル又は他の不連続特性を有する場合は、ボールの外面154の残余部分とは区別がつかない可能性がある。平均的ゴルファーは、典型的には、152に示されるもののような極小の深さの僅かな擦過傷には注意しないし、且つ、そのような小さな又は浅い擦過傷は、プレイ、又はボールの飛行軌道に悪影響を及ぼすことはない。事実、ボール100が、ゴルフコースにおいて、ゴルフクラブ150又は他のアイテムで打たれる度毎に、顕微鏡量の損傷が、ボール及びトップ層106に対して加えられるが、それらの多くは、ボールの飛行軌道に否定的な影響を及ぼすことはない。したがって、ゴルファーは、恐らくその損傷に気づくことなく、そのボールを使い続ける。
【0035】
図8は、特定区域において時間と共に蓄積される劣化の作用を示す。ゴルファーは、典型的には、ボールに起こっている損傷には気がつかないので、ゴルファーは、ボール100によってプレイを続ける。時間と共に、ボール100上の擦過傷は、特に、ボールが、ボールの同じ区域において、ゴルフクラブによって繰り返し打たれることによって、より深くなる。これらの衝撃の蓄積のために、トップ層106は浸食されつづけ、浸食は最終的に保護層108に達する。次に、保護層108が、図8に示すように、浸食又は劣化を始め、劣化区域152がより広く、より深くなる可能性が高くなる。
【0036】
図9は、劣化が反応層110のレベルに達したときの作用を示す。図9では、ゴルファーは、ボール100を使いつづけ、トップ層106及び保護層108を完全に突きぬけた、小さな浸食区域が生じている。これによって、反応層110の中又は上に、暴露表面又は区域160が生まれる。これによって、反応層110中の反応物質は、ボール100を取り囲む大気に暴露される。上に論じたように、反応物質は、ゴルフコースに一般的な大気又は環境条件に対して反応してもよい。例えば、それは、太陽からの紫外線に反応してもよい。この反応によって、図9の反応層110の点描によって示されるように、反応物質は、褪色162として示されるように変色させられてもよい。この褪色162は、ゴルファーに対し、ボール100の劣化は、該劣化によってボールの飛行軌道が悪影響を蒙る程度に達したこと、したがって、ゴルファーは該ボールを廃棄し、代わりに新規ボールを使用するよう、注意を促すことが可能である。上にさらに詳細に論じたように、反応物質と環境条件の間の反応は、瞬時的なものではなく、時間と共に進行してもよい。
【0037】
これらの層同士の相対的厚み、及び、ボール100と、クラブ150などの他のアイテムとの間のいずれかの一衝撃によって与えられる、僅かな劣化量のため、ゴルファーが、ある特定の劣化区域単独に注意する可能性は低い。最初、褪色区域162は、差し渡し数ミクロンと考えられるが、褪色区域162は時間と共に拡大する。図9は、若干の劣化が起こったときの、ボール100の全体外観を示す。図10に示すように、ゴルファーは、ボール100の外面154しか見ない可能性が高い。ゴルファーは、複数の褪色区域162に、特に、褪色区域162が外面154の特定区域に集中する場合、注意することが可能となる可能性が高い。反応物質の褪色又はその他の反応は、ゴルファーの注意を、劣化に向け、且つ、ボールの設計飛行軌道がその劣化によって悪影響を蒙るという事実に向ける。ボールが、最初に設計された特定の飛行軌道を取ることがゴルファーにとって重要である場合、該ゴルファーは次に、劣化が、そのボールを廃棄し、新規ボールを使用するほど十分に大きいものであるかどうかを決定することが可能である。
【0038】
提供される摩耗又は劣化の表示は、ボールの変化を必要としない。それは単に、従来与えられなかった情報をゴルファーに提供するに過ぎない。大抵のゴルフボールの外層は白色であるから、ボールにおける擦過傷又は摩耗、又は、複数の擦過傷又は摩耗区域が、ボールの飛行軌道に悪影響を及ぼすほど十分に大きいかどうか、又は、ボールの表面に対して十分に有害であるかどうかを判断するのは、ゴルファーにとって難しい。ある特定程度の摩耗を表示するために褪色するか、又は、その他のやり方で外観を変化させる層を、ボールの中に含めることは、このような決定を実行する際、ゴルファーの役に立つ。ボールの飛行軌道が悪影響を蒙ると考えられる場合、ゴルファーは、該ボールの使用を停止して該ボールを取り換えるか、ゴルファーがしばしばボールを打ち損じて入れてしまい、ボールの位置を見定めるのが困難な区域、例えば、ウォーターハザード、又は木立、又は草むらなどの区域においてそれを使用するか、又は、そんな劣化を抱えるボールであってもプレイを続行するか、を選ぶことが可能である。例えば、ストロークプロフィールが比較的一定しないゴルファーは、ボールの飛行軌道の変化のためにスコアの増加、又はその他の否定的結果を経験する可能性は無いと考えられ、中等程度の劣化であるなら、そのボールの使用を続行したいと思う可能性があるが、一方、スウィングがより一定しているゴルファーは、譬え劣化がほんの僅かな程度であっても、そのボールの使用を止め、該ボールを取り換えることを選ぶと考えられる。なぜなら、そのゴルファーは、該ボールが指定の飛行軌道を取ることに関してより高度の確信を持っているからである。各ゴルファーは、ボールの使用を続行すべきか、又は、ボールの使用を止めてそれを別のボールと交換すべきかを判断するに際し、該ゴルファーが有用と考えるだけ頻繁に、ボールを精査することが可能である。各ゴルファーは、飛行軌道があまりに大きく影響されすぎてこれ以上ボールの使用を続けることができないとする時期の決定を個別に行うことが可能である。
【0039】
図面は、種々の厚みを有する層を描いているが、他の厚みも、一つ以上の実施態様に関連して言及されている。これらの厚みは、これらの層について唯一可能な厚みと見なしてはならない。種々の層における望ましい厚みは、デザイナーが使用したいと思う材料、及び、デザイナーが、それらの種々層によって提供したいと願う保護又は反応性に依存する。当業者であれば、適切な厚みの層を持つボールを提供するように本発明の実施態様を改変することが可能である。
【0040】
これまで本発明の各種実施態様が説明されてきたわけであるが、この説明は、限定的であるよりはむしろ例示的であることを意図するものであり、本発明の範囲内において、さらに多くの実施態様及び実行例が可能であることは当業者には明白であろう。したがって、本発明は、添付の特許請求項及びその等価物に徴することを除き、限定されてはならない。さらに、種々の改変及び変更が、添付の特許請求項の範囲内において実行することが可能である。
【符号の説明】
【0041】
100 ゴルフボール
102 コア
104 カバー(外方複合層)
106 トップ層
108 保護層
110 反応層
154 外面
200 ゴルフボール
202 コア
204 カバー(外方複合層)
210 反応層
212 保護層
300 ゴルフボール
302 コア
304 カバー(外方複合層)
306 トップ層
308 保護層
310 反応層
314 二次層
500 ゴルフボール
502 コア
504 カバー(外方複合層)
506 トップ層
516 活性層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環境の反応開始剤に暴露されると反応する摩耗インジケータを含む、ゴルフボールの外方複合層であって:
トップ層;
該開始剤に対して反応することが可能な反応層;及び、
該トップ層と該反応層の間に位置づけられる保護層であって、該反応層を該開始剤に暴露されないように保護することが可能な保護層、
を含む、外方複合層。

【請求項2】
前記開始剤が酸素であることを特徴とする、請求項1に記載の外方複合層。

【請求項3】
前記開始剤が光であることを特徴とする、請求項1に記載の外方複合層。

【請求項4】
前記開始剤が、光のある一定波長であることを特徴とする、請求項3に記載の外方複合層。

【請求項5】
前記反応層における反応物質は、前記開始剤に対する暴露に反応して色を変えることを特徴とする、請求項1に記載の外方複合層。

【請求項6】
前記トップ層が、擦過受傷を最小化するトップ物質から形成されることを特徴とする、請求項1に記載の外方複合層。

【請求項7】
前記保護層が、擦過受傷を最小化する第2物質から形成されることを特徴とする、請求項1に記載の外方複合層。

【請求項8】
前記保護層における保護物質は、前記反応層を紫外線から遮蔽することを特徴とする、請求項1に記載の外方複合層。

【請求項9】
環境源に暴露されると反応する摩耗インジケータを含むゴルフボールであって:
コア;及び、
カバーを含み、
該カバーは:
放射方向において該コアの外方にある反応層であって、該環境源に暴露されると反応することが可能な反応物質を含む反応層;及び、
放射方向において該反応層の外方にある保護層であって、該反応層を該環境源から遮蔽することが可能な遮蔽物質を含む保護層、を含む、
ことを特徴とする前記ゴルフボール。

【請求項10】
放射方向において前記保護層の外側にトップ層をさらに含むことを特徴とする、請求項9に記載のゴルフボール。

【請求項11】
前記環境源が太陽からの放射線であることを特徴とする、請求項9に記載のゴルフボール。

【請求項12】
前記環境源が空気であることを特徴とする、請求項9に記載のゴルフボール。

【請求項13】
前記反応物質が色を変えることを特徴とする、請求項9に記載のゴルフボール。

【請求項14】
ゴルフボールを使用すべきかどうかを決定する方法であって:
該ゴルフボールをゴルフクラブで打つこと;
該ゴルフボールが環境源に対して反応したかどうかを決定するために該ゴルフボールを調べること;及び、
該ゴルフボールの使用続行を選択すること、
を含む方法。

【請求項15】
前記ゴルフボールの使用停止を選択することをさらに含むことを特徴とする、請求項14に記載の、ゴルフボールを使用すべきかどうかを決定する方法。

【請求項16】
前記ゴルフボールの交換をさらに含むことを特徴とする、請求項14に記載の、ゴルフボールを使用すべきかどうかを決定する方法。

【請求項17】
ゴルフボールであって:
コア;及び、
放射方向において該コアの外方に位置づけられる活性層であって、遮蔽物質及び反応物質を含み、ここに、該反応物質は、環境源に暴露されると反応することが可能であり、該遮蔽物質は、該反応物質を該環境源から遮蔽することが可能であることを特徴とする、活性層、
を含む、前記ゴルフボール。

【請求項18】
放射方向において前記活性層の外方にトップ層をさらに含むことを特徴とする、請求項17に記載のゴルフボール。

【請求項19】
前記環境源が太陽からの放射線であることを特徴とする、請求項17に記載のゴルフボール。

【請求項20】
前記反応物質が色を変えることを特徴とする、請求項17に記載のゴルフボール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−147777(P2011−147777A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−8429(P2011−8429)
【出願日】平成23年1月19日(2011.1.19)
【出願人】(505424859)ナイキ インターナショナル リミテッド (249)