説明

ゴルフボール及びその製造方法

【課題】 本発明は、コアとウレタンカバーからなるゴルフボールにおいて、ウレタンプレポリマーを硬化させることによりカバー材料を形成する際の硬化反応制御の問題を解決したゴルフボール及びその製造方法及びを提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明によれば、60℃以下では、不活性であり、60℃を超えると活性なアミノ基が再生するポリアミン化合物と金属塩との錯体である硬化剤を用いて、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを硬化することにより、硬化反応制御が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ポリウレタンカバーを有するゴルフボール及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】カバー材料としてバラタカバーを有する糸巻きゴルフボールが、打球感、コントロール性に優れていることから、上級ゴルファー及びプロゴルファーに広く使用されている。しかし、バラタカバーで被覆したゴルフボールの製造工程が複雑であり、耐久性及び耐カット性に劣るため、最近ではバラタカバーに代わる種々のカバー材料が提案されている。
【0003】例えば、特開平1−308577号公報には、アイオノマー樹脂から形成されるカバーを有するゴルフボールが開示されている。アイオノマー樹脂カバーは、バラタカバーに比べて安価であり、また耐久性に優れているという特徴がある。しかし、アイオノマー樹脂カバーを有するゴルフボールは、打球感が悪いと指摘されている。
【0004】米国特許4123061号には、ウレタンプレポリマーとジアミン系の硬化剤から作製されるポリウレタンカバーが開示されている。また、特許2662909号は、イソシアネート基に対して反応性の低いポリアミン系硬化剤を使用したポリウレタンカバーを提案している。ポリウレタンカバーを使用したゴルフボールは、アイオノマー樹脂カバーを使用したゴルフボールに比べて反発弾性に富み、バラタカバーの様な打球感が得られる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ウレタンプレポリマーを硬化させてカバーを形成するゴルフボールの製造工程は、硬化反応に伴う様々な問題がある。
【0006】米国特許4123061号に開示されているジアミン系硬化剤のアミノ基とウレタンプレポリマーのイソシアネート基の反応は、非常に早く、室温(25℃以下)においても反応が進むため、配合途中の硬化反応による粘度上昇やゲル化を防ぐことができない。また、ジアミン系硬化剤として挙げられている3,3'−ジクロロ−4,4'−ジアミノジフェニルメタンは、得られるポリウレタンの物性が良好であるという理由から、ポリウレタンの硬化剤として好適に使用されているが、その融点が約100℃であるために、通常100℃以上に溶解して使用する必要があるため、蒸気の発生による作業環境の悪化の問題や、配合途中の硬化反応がさらに促進されるという問題がある。
【0007】また、ウレタンプレポリマーに低温で配合できる液状ジアミン系硬化剤を用いた場合は、やはり配合途中の硬化反応による粘度上昇やゲル化を防ぐことができないだけではなく、さらには、3,3'−ジクロロ−4,4'−ジアミノジフェニルメタンを用いたとき程のポリウレタンの物性が得られない。
【0008】上記問題を解決するために、特許2662909号に開示されている反応性の低いポリアミン系硬化剤を使用した場合には、硬化時間が長くなるために生産性が低下するという問題が生じる。また硬化時間を短縮するために、硬化温度を高めた場合には、コアの熱劣化による品質低下という新たな問題が生じる。
【0009】本発明は、ウレタンプレポリマーを硬化させることによりカバーを形成する際の前記問題点を解決したゴルフボールの製造方法及びゴルフボールを提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明は、コアと該コアを被覆するカバーとを含むゴルフボールの製造方法であって、ポリアミン化合物と金属塩との錯体及びイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを含む組成物で、前記コアを被覆する工程及び前記組成物を硬化することにより前記カバーを作製する工程を含むゴルフボールの製造方法である。前記硬化は、前記組成物を前記錯体から金属塩が脱離する温度に昇温することにより行われることが好ましい。前記ポリアミン化合物は、好ましくはメチレンジアニリンまたはその誘導体であり、その金属塩は塩化ナトリウムまたは塩化リチウムであることが望ましい。また前記錯体は、好ましくは可塑剤に分散されて使用される。
【0011】本発明は、さらに、コアと、該コアを被覆するポリウレタンカバーとを含むゴルフボールにおいて、前記ポリウレタンカバーはイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーをポリアミン化合物と金属塩との錯体によって硬化することにより形成されていることを特徴とするゴルフボールである。前記イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーは、ポリエーテル系ウレタンプレポリマーであることが好ましい。
【0012】
【発明の実施の形態】本発明のゴルフボールの製造方法は、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー及びポリアミン化合物と金属塩との錯体を含む組成物を用いて、コアを被覆し、前記組成物を硬化してカバーを作製することにより製造される。まず、前記イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーとポリアミン化合物と金属塩との錯体を含む組成物(以下、カバー用組成物という)について述べる。
【0013】本発明において使用されるイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーは、イソシアネート基をウレタンプレポリマー分子鎖中に少なくとも2以上有するものであれば、特に限定はされない。イソシアネート基のウレタンプレポリマー分子鎖中の位置も特に限定はされず、ウレタンプレポリマー分子鎖主鎖末端にあってもよいし、側鎖末端にあってもよい。
【0014】前記イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーは、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基が、ポリオールのヒドロキシル基に対してモル比で過剰になるように反応を行うことにより得ることができる。
【0015】前記ポリイソシアネート化合物としては、特に限定されず、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネートと2,6−トリレンジイソシアネートの混合物(TDI)、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、4,4'−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水素添加MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、1,5−ナフチレンジイソシアネート(NDI)、3,3'−ビトリレン−4,4'−ジイソシアネート(TODI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI),パラフェニレンジイソシアネート(PPDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)等が挙げられ、ゴルフボールの反発性や、その製造時の作業性という点からTDI若しくはMDIまたはそれらを主成分とするポリイソシアネートが好ましい。
【0016】前記ポリオールとしては、水酸基を複数有するものであれば、低分子量化合物、高分子量化合物の如何を問わない。低分子量のポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール等のジオール;グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオールなどのトリオールが挙げられる。高分子のポリオールとしては、活性水素を持つ開始剤とアルキレンオキサイドとの反応によって得ることができるポリエーテルポリオール;アジピン酸等の2塩基酸とグリコール又はトリオールとの脱水縮合によって得られる縮合系ポリエステルポリオール;ε−カプロラクタム等のラクタムの開環重合によって得られるラクトン系ポリエステルポリオール;環状ジオールを用いて合成されるポリカーボネートジオール;アクリル系共重合体に適宜水酸基を導入してなるアクリルポリオールなどのポリマーポリオールが挙げられる。前記ポリエーテルポリオールとしては、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール(PPG)、ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)等が挙げられ、縮合系ポリエステルポリオールとしてはポリエチレンアジぺート(PEA)、ポリブチレンアジペート(PBA)、ポリヘキサメチレンアジペート(PHMA)などが挙げられ、ラクトン系ポリエステルポリオールとしてはポリ−ε−カプロラクトン(PCL)などが挙げられる。反発性及び耐水性に優れているという点からは、好ましくはポリエーテルポリオール、さらに好ましくはポリオキシテトラメチレングリコールが使用される。
【0017】また、前記イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーの前記ポリイソシアネートと前記ポリオールの組合せとしては、TDI若しくはMDI又それらを主成分とするポリイソシアネートとポリオキシテトラメチレングリコールとの組合せが好ましい。
【0018】本発明に使用されるポリアミン化合物と金属塩との錯体は、一定の温度以下では、ポリアミンが金属塩と錯体を形成しているために、アミノ基は不活性であり、その温度より高い温度では、金属塩がポリアミンから脱離し、アミノ基が活性となる特徴を有している。従って本発明によれば、ポリアミン化合物と金属塩との錯体及びイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを、金属塩がポリアミンから脱離しない温度以下で配合することにより、従来ウレタンプレポリマーを配合する時の課題であった配合途中の硬化反応による粘度上昇やゲル化を防ぐことができる。
【0019】前記錯体中のポリアミン化合物は、特に限定されず、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ペンタンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどのアルキルジアミン;トリレンジアミン、メチレンジアニリン、キシリレンジアミンなどの芳香族アミン;イソホロンジアミン、ピペラジンなどの脂環式またはヘテロ環式アミン;エタノールアミン、ジエタノールアミンなどのアミノアルコール;ヒドラジン、ヒドラジン誘導体などが挙げられる。錯体の安定性という点からは、メチレンジアニリンおよび/またはその誘導体が好ましい。メチレンジアニリンの誘導体としては、3,3−ジクロロ−4,4−ジアミノジフェニルメタン、2,2',3,3'−テトラクロロ−4,4−ジアミノジフェニルメタン等のハロゲン化ジアミノジフェニルメタン;2,2−ジメチル−4,4'−ジアミノジフェニルメタン、2,2−ジエチル−4,4'−ジアミノジフェニルメタン等のジアルキルジアミノジフェニルメタン;2,2',3,3'−テトラメチル−4,4'−ジアミノジフェニルメタン、2,2',3,3'−テトラエチル−4,4'−ジアミノジフェニルメタン等のテトラアルキルジアミノジフェニルメタンなどが挙げられる。
【0020】前記錯体中の金属塩は、特に限定されず、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩;マグネシウム、カルシウム、ストロンチウムなどのアルカリ土類金属塩;クロム、鉄、コバルト、銅、亜鉛などの遷移金属塩等が挙げられ、好ましくはアルカリ金属塩である。前記アルカリ金属塩としては、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、亜硝酸ナトリウム、塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム、亜硝酸リチウムおよびシアン化ナトリウムなどが挙げられ、より好ましくは、塩化ナトリウムまたは塩化リチウムである。
【0021】前記錯体中のポリアミン化合物と金属塩の比率は、錯体の安定性という点から、ポリアミン化合物3モルに対して1モルの金属塩の比率が望ましい。
【0022】前記錯体は、好ましくは分散液に分散させて使用される。前記分散液に分散させて使用することにより、前記錯体をイソシアネート基末端プレポリマー中へ均一に分散させることができるだけでなく、その配合温度を低くすることができる。前記分散液は、特に限定されず、例えば、酢酸エチル、メチルエチルケトン、N,N−ジメチルフォルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、トルエン、キシレン、N−メチルピロリドンなどの溶剤やジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタレート(DOP)等のフタレート系、ジオクチルアジペート(DOA)等のアジペート系、ジオクチルセバケート(DOS)等のセバケート系、トリクレジルホスフェート(TCP)などのホスフェート系、アジピン酸系ポリエステル等の可塑剤を使用することができる。イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーへの分散を均一にかつ低温で実施することができるという点から、ジオクチルフタレートを分散液として使用することがさらに望ましい。
【0023】前記ポリアミン化合物と金属塩との錯体は、前記ポリアミン化合物と前記金属塩との組合せのうち、60℃以下では錯体を形成し、60℃より高い温度では、金属塩が脱離して、アミノ基が活性となる組合せが好ましい。かかる組合せとしては、メチレンジアニリンと塩化ナトリウムの組合せが挙げられ、例えば、ユニロイヤル社製のメチレンジアニリンと塩化ナトリウムの錯体(メチレンジアニリン:塩化ナトリウム=3:1モル比)のジオクチルフタレートの50%分散液が挙げられる。
【0024】本発明においては、前記ポリアミン化合物と金属塩との錯体系硬化剤の他に、低分子量ポリオールを併用してもよい。前記低分子量ポリオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオールなどのジオール;グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール等のトリオールが挙げられる。前記低分子量ポリオールを併用することにより、前記金属塩が前記ポリアミン化合物から脱離する温度を低下させることができる。
【0025】本発明で用いるカバー用組成物は、さらに必要に応じて、硫酸バリウム等の充填剤や二酸化チタン等の着色剤や、その他の添加剤、例えば分散剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤ならびに蛍光材料または蛍光増白剤などを、ゴルフボールカバーによる所望の特性が損なわれない範囲で含有してもよい。
【0026】前記カバー用組成物の配合は、前記金属塩が前記ポリアミン化合物から脱離しない温度以下で実施される。前記配合温度は、かかる温度以下であれば特に制限されないが、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーの蒸気毒性が高いという作業環境の問題及び低温での作業が好ましいという安全性の観点から、好ましくは60℃以下、より好ましくは50℃以下であり、好ましくは10℃以上、より好ましくは20℃以上である。前記配合温度が10℃未満の場合には、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーの粘度が高くなりすぎて、ポリアミン化合物と金属塩との錯体を均一に分散するのが困難になる。上述の様に配合した前記カバー用組成物は、金属塩がポリアミン化合物から脱離しない温度以下では、硬化反応が抑制されるため、経時による増粘やゲル化という問題もない。従って、本発明においては、前記カバー用組成物を配合した後、続いてカバーを成形してもよく、また前記カバー用組成物を一旦保管した後に改めてカバーを成形することもできる。
【0027】前記配合は、ウレタンプレポリマーの配合に使用される通常の配合装置を使用することができ、例えば、通常の二液混合吐出装置を使用することができる。
【0028】以上の様に配合した前記カバー用組成物を用いて、コアを被覆し、硬化させることによりカバーを作製し、本発明のゴルフボールを得ることができる。具体的には、半球状の金型にコアを保持させた状態で、前記カバー用組成物を注入し、次にこれを反転させて、別の半球状の金型に注入した前記組成物とあわせて硬化すればよい。前記コアとしては、例えば、後述する様なゴム製コアや糸ゴム層を設けた糸巻きコアなどがある。
【0029】前記硬化反応は、金属塩がポリアミン化合物から脱離する温度より高い温度で行われるのが好ましい。具体的には前記配合温度より高い温度で、すなわち60℃より高い温度で、好ましくは65℃以上で、120℃以下、好ましくは100℃以下で行われる。120℃より高い温度で硬化すると、前記ゴム製コアまたは糸ゴム層の熱劣化がおこるために、得られるゴルフボールの反発性は低下し、ゴルフボールの飛行性能が低下する。
【0030】前記硬化温度により、本発明で使用されるポリアミン化合物と金属塩との錯体による硬化時間は適宜設定されるが、120℃以下の温度においては短時間で行うことができ、好ましくは15分以下、より好ましくは10分以下で行うことができる。
【0031】前記硬化工程では、必要に応じてカバー表面にディンプルが形成される。またカバー形成後、美観及び商品価値を高めるために、通常マーキングスタンプ、ペイント仕上げ等を施して市場に投入される。
【0032】本発明のゴルフボールは、コアと該コアを被覆するポリウレタンカバーとを含み、該ポリウレタンカバーとして前記カバー用組成物の硬化体を用いたものである。
【0033】前記コアの構造は、特に限定されず、例えば、単層コア、多層コア、前記単層及び多層コアを糸ゴムで被覆した糸巻きコアなどを挙げることができる。前記コアの材料も特に限定されず、ゴルフボールのコア材料として公知のものを使用することができ、例えば、ブダジエンゴム(BR)、天然ゴム(NR)、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体(EPDM)、ポリノルボルネン等のゴム;熱可塑性樹脂;熱可塑性エラストマーなどがある。また、前記コアは前記ゴムと相溶する石油系配合油、可塑剤、サブ(ファクチス)、アルキルベンゼン、液状ゴム等の油状物質;硫酸バリウム、タングステン等の充填剤;酸化防止剤;硫黄、酸化亜鉛、ステアリン酸、ステアリン酸亜鉛、有機過酸化物(例えば、ジクミルパーオキサイド、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等)等の加硫剤を含有してもよい。
【0034】本発明のゴルフボールのポリウレタンカバーは、本発明の製造方法により製造することが好ましい。これにより、生産性に優れ、しかもコアの熱劣化が防止されるので反発性に優れている。
【0035】以下、実施例によって本発明を説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
【0036】
【実施例】[ 評価方法 ]
■ゴルフボール硬度の測定ゴルフボールの硬度は、JIS−K6301に定めるスプリング式硬度計A型を、ボールの表面に硬度計を接触させることにより測定した。
【0037】■ゴルフボールの反発係数静止しているゴルフボールに200gのアルミニウム製の円筒物を速度45m/秒で衝突させ、衝突前後の円筒物およびゴルフボールの速度を測定し、それぞれの速度および重量からゴルフボールの反発係数を算出した。測定は、各ゴルフボールで12個づつ行って、その平均を算出して、各ゴルフボールの結果とした。反発係数の値は、比較例2の値を100として指数化した。指数が大きい程反発力が大きいことを示す。
【0038】■ゴルフボールの飛行性能ツルーテンパー社製スイングロボットにメタルヘッド製ドライバー(W#1)を取付け、ゴルフボールをヘッドスピード45m/秒で打撃し、落下点までの飛距離を測定した。
【0039】■ゴルフボール製造時の作業性の判定基準は、以下の通りとした。
判定基準○:配合温度が60℃以下で配合しやすく、配合時の硬化反応による粘度上昇がなく作業性が良好であり、さらに硬化反応を短時間で行うことができた。
×:配合温度が60℃より高く配合しにくい、配合時の硬化反応による粘度上昇がある、または硬化時間が長い等のいずれかの問題がある。
【0040】[ ゴルフボールの作製 ](1)コアの作製表1に示したコア組成物を混練し、金型内で160℃×15分間プレスすることによりコアを作製した。
【0041】
【表1】


【0042】BR11:日本合成ゴム(株)製のブタジエンゴムノクラックNS-6:大内新興化学工業社製老化防止剤。
【0043】(2)糸巻きコアの作製前記コアの周囲に、基材ゴムが天然ゴム/低シスイソプレンゴム(シェル化学社製のシェルIR−309)=50/50(質量比)のブレンドゴムを巻き付け、外径約39.0mmの糸巻きコアを作製した。
【0044】(3)カバーの作製表2に示した配合処方に基づいて、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーと硬化剤との配合し、カバー用組成物を得た。前記糸巻きコアを保持させた半球状の金型に前記カバー用組成物を注入し、次いでこれを反転し、別の半球状の金型に注入した前記カバー用組成物とあわせてプレス成形し硬化を行った。硬化条件は、表2に示した。得られたゴルフボールを取り出し、バリ取りをした後、表面に白色ペイントとクリアペイントを施して、直径42.8mm、重量45.4gのゴルフボールを得た。
【0045】前記測定・評価方法に基づいて、ゴルフボール作製時の作業性の評価および得られたゴルフボールの物性を測定した結果を表2に示す。
【0046】
【表2】


【0047】■コロネート4095:日本ポリウレタン工業(株)製のTDI/PTMG系ウレタンプレポリマー■ケイチャー21:ユニロイヤル社製のメチレンジアニリン(MDA)と塩化ナトリウム(NaCl)のモル比 MDA:NaCl=3:1の錯体の50%ジオクチルフタレート分散液■イハラキュアミンMT:イハラケミカル工業(株)製3,3'−ジクロロ−4,4'−ジアミノジフェニルメタン、従来よりウレタンプレポリマーの硬化剤として使用されている汎用のジアミン系硬化剤で、イソシアネート基に対する反応性も高い。融点が約100℃であるために、コロネート4095に均一分散させるために80℃以上で配合をする必要があった。
■ポラミン250:エアープロダクト社製ポリテトラメチレンオキサイド−ジ−パラ−アミノベンゾエート、特許2662909号に記載されている反応性の低いジアミン系硬化剤に相当する。
【0048】表2より、実施例1は、ポリウレタンカバー用組成物の配合を低温で実施し、配合時の粘度上昇を抑制することができ、さらには硬化時間も5分と短く生産性を向上することができた。また、得られたゴルフボールの物性は、従来のゴルフボールの物性を低下することなく同等であった。
【0049】比較例1は、アミン系硬化剤としてイハラキュアミンMTを使用したため、配合時に硬化反応によるウレタンプレポリマーの粘度上昇があり、作業性が悪かった。
【0050】比較例2は、低反応性のアミン系硬化剤であるポラミン250を使用したため、硬化時間が30分と長く生産性が低下した。
【0051】
【発明の効果】本発明のゴルフボールの製造方法によれば、従来解決できなかったウレタンカバー材料の配合時の硬化反応の制御が可能であり、しかも室温程度で配合できるので作業性が良好である。また、硬化反応は、金属塩が脱離する温度以上で行えばよいので、生産性を低下させることなく、60℃〜120℃、好ましくは65℃〜100℃の低温で硬化反応を行うことができ、コアの熱劣化によるゴルフボールの品質低下を防止できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 コアと該コアを被覆するカバーとを含むゴルフボールの製造方法であって、ポリアミン化合物と金属塩との錯体及びイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを含む組成物で、前記コアを被覆する工程;及び前記組成物を硬化することにより前記カバーを作製する工程を含むゴルフボールの製造方法。
【請求項2】 前記硬化は、前記組成物を、前記錯体から金属塩が脱離する温度に昇温することにより行う請求項1に記載のゴルフボールの製造方法。
【請求項3】 前記ポリアミン化合物はメチレンジアニリンまたはその誘導体である請求項1または2に記載のゴルフボールの製造方法。
【請求項4】 前記金属塩は、塩化ナトリウムまたは塩化リチウムである請求項1〜3のいずれかに記載のゴルフボールの製造方法。
【請求項5】 前記錯体が可塑剤に分散されている請求項1〜4のいずれかに記載のゴルフボールの製造方法。
【請求項6】 コアと、該コアを被覆するポリウレタンカバーとを含むゴルフボールにおいて、前記ポリウレタンカバーはイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーをポリアミン化合物と金属塩との錯体によって硬化することにより形成されていることを特徴とするゴルフボール。
【請求項7】 前記イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーがポリエーテル系ウレタンプレポリマーである請求項6に記載のゴルフボール。

【公開番号】特開2002−17901(P2002−17901A)
【公開日】平成14年1月22日(2002.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−205400(P2000−205400)
【出願日】平成12年7月6日(2000.7.6)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】