説明

ゴルフボール材料およびこれを用いたゴルフボール

【課題】剛性と反発弾性、及び、耐久性に優れたゴルフボール材料、及びそれを用い作製され、飛距離、打球感、耐久性に優れたゴルフボールを提供する。
【解決手段】エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体のカルボキシル基が金属イオンで20〜90%中和されてなるアイオノマー(A)60〜96.7重量部、グリシジル(メタ)アクリレート又はグリシジル不飽和エーテルを含有するエチレン又はα−オレフィン共重合体、あるいはさらにビニルエステル又は不飽和カルボン酸エステルを含有する三元共重合体(B)0.3〜10重量部及びポリオレフィン(C)3〜30重量部からなることを特徴とするゴルフボール材料,及び,それを用いて作製されたゴルフボール。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフボール材料およびこれを用いたゴルフボールに関する。
さらに詳しくは、剛性、反発弾性、耐久性に優れ、良好な打球感を保持すると共に、特に、従来品に比べ飛距離が延長されたゴルフボールを提供することができるゴルフボール材料およびこれを用いたゴルフボールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、耐久性が良好な点から種々のアイオノマーがゴルフボールの表皮材として提案され、広く使用されてきた。
アイオノマーは、一般に硬質になる程、反発弾性が優れ、低スピン化が図れることから、ゴルフボールの飛距離アップのために硬質アイオノマーが使用されてきた。
しかしながら、主としてその加工性やゴルフボールに求められる種々の諸特性からアイオノマー単体での硬質化には限度があり、硬質アイオノマーに他種材料を配合することによってそれらを改善しようとする試みがなされてきた。
【0003】
たとえば、特許文献1には、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体金属イオンアイオノマーに塩素化エチレンコポリマー架橋体アロイをブレンドして得られた組成物からなり、製品ボールのコントロール性に優れたゴルフボール材料が開示されている。
ところが近年に至り、ゴルフボールのコントロール性や打球感等を損なうことなく、その飛距離を更に一層延したいと云う要望が強くなされるようになってきた。
上記の要望に対処するための方策の一つとして、硬質アイオノマーに硬質の材料を配合する方法が考えられ、これによりゴルフボールの低スピン化が図られ、飛距離延長が期待される。
然し、従来、この方法に用いた殆ど全ての硬質材料では、得られた組成物に於いてアイオノマーの優れた諸特性が損なわれ、例えば、耐久性が低下して繰り返し打球されることによりボールにささくれや割れが生じやすくなったりするという新たな不利益を招来した。
【0004】
【特許文献1】特開平11−244420号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、このような状況に鑑みて、ボールコントロール性や打球感等を損なうことなく、飛距離を更に延したいと云う上記要望を満たすと共にアイオノマー樹脂製ゴルフボールの特徴である優れた耐摩耗性や耐切傷性等の耐久性をそのまま保持したゴルフボール材料を開発すべく鋭意研究を重ねた。
そして、その過程に於いて、ゴルフボールに求められる上記問題点を全てクリアーし、且つ、更にボールの飛距離を延ばすには、材料の反発弾性と共に剛性が重要であることを知り、該知見に基づいて、更に研究を重ねた結果、特定の硬質アイオノマーに、後記するエチレン共重合体及びポリオレフィンを特定量配合するときに所望の性能を有する組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
従って、本発明は、剛性、反発弾性、耐久性に優れたゴルフボール材料を提供することを目的としている。
さらに、本発明は、飛距離、打球感、耐久性に優れたゴルフボールを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るゴルフボール材料は、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体のカルボキシル基が金属イオンで20〜90%中和されてなるアイオノマー(A)60〜96.7重量部、グリシジル(メタ)アクリレート又はグリシジル不飽和エーテルを含有するエチレン又はα−オレフィン共重合体、あるいはさらにビニルエステル又は不飽和カルボン酸エステルを含有する三元共重合体(B)0.3〜10重量部及びポリオレフィン(C)3〜30重量部からなるものであることを特徴としている。
【0008】
上記ゴルフ材料は、アイオノマー(A)における金属イオンの少なくとも一部が1価金属イオンであるもが好ましい。
又、上記ゴルフ材料は、アイオノマー(A)における金属イオンの少なくとも一部が2価金属イオンであるものも好ましい。
又、前記ポリオレフィンが、プロピレン・α−オレフィン共重合体であることが好ましい。
更に、グリシジル(メタ)アクリレート又はグリシジル不飽和エーテルを含有するエチレン又はα−オレフィン共重合体、あるいはさらにビニルエステル又は不飽和カルボン酸エステルを含有する三元共重合体(B)及びポリオレフィン(C)の溶融混合物とアイオノマー(A)を溶融混合して得たものが好ましい。
【0009】
本発明に係るゴルフボール材料は、曲げ剛性率(オルゼン式(JIS K 7106))が200MPa以上であることが好ましい。
又、本発明に係るゴルフボール材料は、ショアD硬度(JIS K 7215)が50以上であることが好ましい。
又、反発弾性率(JIS K 6301準拠)が50%以上であることが好ましい。
【0010】
本発明に係るゴルフボールは、前記ゴルフボール材料を表皮材、中間層、コア材のいずれかまたはすべてに含むことを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体アイオノマーにグリシジルモノマー単位を含有する特定の共重合体及びポリオレフィンを特定量配合することによって、優れた剛性、反発弾性、耐久性を有するゴルフボール材料を提供できる。
さらに、このゴルフボール材料を表皮材および/またはコア材として含むゴルフボールは、飛距離、打球感、耐久性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明で用いられるアイオノマー(A)は、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体のカルボキシル基が金属イオンで20〜90モル%、好ましくは30〜85モル%中和されているものである。
ここにベースポリマーとなるエチレン・(メタ)アクリル酸共重合体の(メタ)アクリル酸含量は2〜30重量%、好ましくは3〜25重量%の共重合体であり、エチレンとアクリル酸又はメタクリル酸の二元共重合体のみならず、任意に他の単量体が共重合された多元共重合体であってもよい。
酸含量が上記範囲より少ない共重合体のアイオノマーを使用すると、剛性、反発弾性が優れ、飛距離に優れたゴルフボール材料を得ることが難しい。
【0013】
上記任意に共重合されていてもよい他の単量体としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルのようなビニルエステル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸nブチル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソブチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチルなどの不飽和カルボン酸エステル、一酸化炭素、二酸化硫黄などを例示することができる。
これら他の単量体は、例えば0〜40重量%、好ましくは0〜30重量%の範囲で共重合されていてもよいが、一般にこのような他の単量体の含有量が増えると、剛性に優れた組成物を得ることが難しくなるので、このような単量体を含まないものか、あるいは含んでいたとしても20重量%以下の量で共重合されているものを使用するのが好ましい。
【0014】
このようなエチレン・(メタ)アクリル酸共重合体は、190℃、2160g荷重におけるメルトフローレートが、1〜1000g/10分、とくに2〜800g/10分程度のものを使用するのが望ましい。
このような共重合体は、高温、高圧下のラジカル共重合によって得ることができる。
【0015】
アイオノマー(A)としては、上記共重合体のカルボキシル基の20〜90モル%、好ましくは30〜85モル%を金属イオンで中和したものが使用される。
ここに金属イオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属や、マグネシウム、カルシウムのようなアルカリ土類金属や亜鉛のような2価金属、また、数種類の金属の組み合わせでもよい。
【0016】
アイオノマーとしてはまた、成形性、機械的特性、他成分との混和性などを考慮すると、190℃、2160g荷重におけるメルトフローレートが0.01〜100g/10分、とくに0.1〜50g/10分のものを使用するのが好ましい。
【0017】
本発明で使用されるグリシジル(メタ)アクリレート又はグリシジル不飽和エーテルを含有するエチレン又はα−オレフィン共重合体、(グリシジル(メタ)アクリレート又はグリシジル不飽和エーテルを含有するエチレン共重合体 又はグリシジル(メタ)アクリレート又はグリシジル不飽和エーテルを含有するα−オレフィン共重合体)あるいはさらにビニルエステル又は不飽和カルボン酸エステルを含有する三元共重合体(B)において、α−オレフィンの共重合体としては、プロピレン、1−ブテンなどの炭素数3〜8程度のα−オレフィンの共重合体を挙げることができるが、とくにエチレンの共重合体が好ましい。
【0018】
またグリシジル(メタ)アクリレート又はグリシジル不飽和エーテル(以下単にグリシジルモノマーという場合がある)としては、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、ビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、2−メチルアリルグリシジルエーテル等を挙げることができる。
【0019】
エチレン又はα−オレフィンと上記グリシジルモノマーとの共重合体は二元共重合体である必要はなく、他の単量体、例えばビニルエステルや不飽和カルボン酸エステルなどが共重合された多元共重合体であってもよい。
これら他の単量体の具体例としては、アイオノマー(A)のベースポリマーであるエチレン・(メタ)アクリル酸共重合体における他の単量体としてすでに例示したものを挙げることができる。
また本発明においては、エチレンとα−オレフィンと上記グリシジルモノマーとを含む3元系以上の多元共重合体を用いることもできる。
【0020】
エチレン(又はα−オレフィン)とグリシジルモノマーの共重合体(B)において、エチレン又はα−オレフィンが50〜99重量%、とくに52〜98重量%、グリシジルモノマーが0.5〜20重量%、とくに1〜18重量%、上記他の単量体が0〜49.5重量%、好ましくは0〜40重量%の範囲で共重合されているものが好ましい。
グリシジルモノマー含量が少なすぎると、耐久性の改良が顕著でなく、一方その量が多くなりすぎると、アイオノマーとの反応が強くなりすぎ、樹脂粘度が急激に上昇して成形が困難となったり、また組成物中にゲルが発生するなどの加工性能上の問題を起こすことがある。
【0021】
このような共重合体は、ランダム共重合体であってもグラフト共重合体であってもよいが、一般にはアイオノマーとの反応の均一性からランダム共重合体を使用するのが好ましい。
このようなランダム共重合体は、例えば、高温、高圧下のラジカル共重合によって得ることができる。
【0022】
上記共重合体としてエチレン共重合体を使用する場合には、190℃、2160g荷重におけるメルトフローレートが、0.01〜1000g/10分、とくに0.1〜200g/10分のものを使用するのが好ましい。
【0023】
本発明においては、アイオノマー(A)、エチレン又はα−オレフィン・グリシジルモノマー共重合体(B)と共にポリオレフィン(C)が使用される。
このようなポリオレフィンを特定量使用することにより、他成分との分散性が優れ、剛性、耐久性等に優れた樹脂組成物を容易に得ることができる。
【0024】
本発明で使用されるポリオレフィン(C)は、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、4−メチル−1−ペンテンなどの炭素数2〜12程度のα−オレフィンの単独重合体、相互共重合体などであり、各種触媒を使用し、種々の方法で製造されたものが使用できる。
また融点が200℃以下、とくに180℃以下のものを使用するのが好ましい。
【0025】
本発明のポリオレフィン(C)の好ましい例として、エチレン単独重合体またはエチレンを主体とするエチレン・α−オレフィン共重合体を挙げることができる。
これらを総称してポリエチレンと呼ぶ。
ポリエチレンとしては、メタロセン触媒を用いて製造されたものが好ましい。
中でも、エチレンを主体とするエチレン・α−オレフィン共重合体であって、密度が870〜930kg/m、好ましくは880〜920kg/m、190℃、2160g荷重におけるメルトフローレートが0.1〜100g/10分、好ましくは0.2〜80g/10分のものを挙げることができる。
またエチレン・α−オレフィン共重合体におけるα−オレフィンとしては、炭素数4〜12、とくに炭素数5〜10程度のものが好ましい。
【0026】
上記エチレン・α−オレフィン共重合体としては、重量平均分子量/数平均分子量(MWD)が2.5以下、とくに2.0以下のものを使用するのが好ましい。
また組成分布幅指数(CDBI)が50%以上、とくに70%以上のものを使用するのが好ましい。
このような共重合体は、例えば特表平6−509528号公報に開示されている。
また他の好ましいエチレン・α−オレフィン共重合体としては、メルトフロー比(I10/I)が5.63以上、とくに7〜20のものを挙げることができる。
このような共重合体の例については、WO95/00857号公報に開示されている。
【0027】
また本発明のポリオレフィン(C)の他の好ましい例として、プロピレン・α−オレフィン共重合体を挙げることができる。
プロピレン・α−オレフィン共重合体としては、プロピレンを主体とするプロピレンとその他のα−オレフィンとの共重合体であって、密度は870〜930kg/m、とくに880〜920kg/mのものが好ましく、また230℃、2160g荷重におけるメルトフローレートが0.1〜100g/10分、とくに0.2〜80g/10分のものが好ましい。
【0028】
上記プロピレン・α−オレフィン共重合体においてプロピレンと共重合されるα−オレフィンとしては、炭素数2又は4〜12、とくに炭素数2又は4〜10のものが好ましく、具体的には、エチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、4−メチルー1−ペンテンなどの1種または2種以上を例示することができる。
【0029】
上記プロピレン・α−オレフィン共重合体は、ランダム共重合体でもブロック共重合体であってもよい。
とくに好適なランダム共重合体は、プロピレン含量が85〜99.9重量%、好ましくは90〜99.5重量%であるプロピレンとエチレンのランダム共重合体またはプロピレンとエチレンと他のα−オレフィンとからなるランダム共重合体である。
これらは立体特異性触媒の存在下で共重合された結晶性の重合体であることが好ましい。
【0030】
プロピレン・α−オレフィン共重合体として使用可能な上記ブロック共重合体は、プロピレンと他のα−オレフィンを順次に重合または共重合して得られるもので、一般には(1)プロピレンの重合ののち(2)プロピレンとやや多量のα−オレフィンの共重合および/または(3)α−オレフィンの重合からなる重合段階を一つ以上組み合わせることによって行われる。
上記(1)のプロピレンの重合においては少量のα−オレフィンを共重合させる場合があり、また(3)のα−オレフィンの重合においてプロピレンを少量共重合させる場合がある。
いずれにしても上記ブロック重合体は、立体特異性触媒の存在下で上記多段階の重合によって得ることができる。
好適なプロピレン・α−オレフィンブロック共重合体は、(1)のプロピレン重合体ブロックを60〜95重量%程度含有するプロピレンとエチレンのブロック共重合体である。
【0031】
本発明の熱可塑性樹脂組成物における(A)、(B)、(C)各成分の配合割合は、これら合計量を100重量部とするときに、エチレン・(メタ)アクリル酸金属イオンアイオノマー(A)が60〜96.7重量部、エチレン・グリシジル(メタ)アクリレート共重合体等のエチレン又はα−オレフィン・グリシジルモノマー系共重合体(B)が0.3〜10重量部、プロピレン・エチレン共重合体等のポリオレフィン(C)が3〜30重量部、より好ましくは(A)が73〜95.5重量部、(B)が0.5〜7重量部、(C)が4〜20重量部、更に好ましくは(A)が81〜94重量部、(B)が1〜4重量部、(C)が5〜15重量部となる割合である。
【0032】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、アイオノマー(A)、エチレン又はα−オレフィン・グリシジルモノマー系共重合体(B)及びポリオレフィン(C)を溶融混合することによって得ることができる。
溶融混合に際しては、スクリュー押出機、ロールミキサー、バンバリミキサー等の通常の混合装置を使用することができる。
また溶融混合は上記3成分を同時に配合して行うことができるが、最も好ましいのは(B)と(C)を予め溶融混合したものと(A)を溶融混合する方法である。
この方法によれば、(B)が(C)に希釈されることにより(A)との反応が局部的に起こらず均一となるためで、優れた諸性質を有する組成物を品質安定性よく製造できるという利点がある。
先に(A)と(B)を溶融混合した後、(C)を混合するというような方法を取ると、局部的な反応によりゲルが発生する恐れがあるので避けたほうがよい。
【0033】
このようにして得られた本発明のゴルフボール材用樹脂組成物は、前記グリシジルモノマー系共重合体(B)が配合されていることにより、例えば、スクリュー押出機、ロールミキサー、バンバリミキサー等の混合装置を用いた前記溶融混合過程に於いて、前記(C)成分に希釈された(B)成分が(A)成分中に分散しながら部分架橋反応し、最終的に、前記(B)、(C)成分からなる微細分散体が前記(A)成分マトリックス中に部分架橋結合を有して均質に微細分散した状態となると推定される。
このため、本発明のゴルフボール材用樹脂組成物は架橋結合を有してしているにもかかわらず熱可塑性であり、造粒ペレット化やゴルフボール成形等の熱成形加工が容易である。
又、高い剛性と反発弾性を有し、ゴルフボールとして飛距離、打球感に優れる。
【0034】
本発明の樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲内においてその他の重合体や各種添加剤を配合することができる。
このような他の重合体や各種添加剤は、上記(A)、(B)、(C)の合計100重量部に対し、例えば10重量部以下の割合で配合することができる。
また上記添加剤の一例として、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、顔料、染料、滑剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、防黴剤、抗菌剤、難燃剤、難燃助剤、架橋剤、架橋助剤、発泡剤、発泡助剤、無機充填剤、繊維強化材などを挙げることができる。
【0035】
本発明に係るゴルフボール材料は、曲げ剛性率(オルゼン式(JIS K 7106))が200MPa以上であることが好ましい。
また、本発明に係るゴルフボール材料は、ショアD硬度(JIS K 7215)が50以上であることが好ましい。
また、本発明に係るゴルフボール材料は、反発弾性率(JIS K 6301準拠)が50%以上であることが好ましい。
【0036】
上述したゴルフボール材料は、糸巻きボールまたはソリッドボールなどのゴルフボールの表皮材、中間層、またはコア材として使用することができる。
前記ソリッドボールとしては、ワンピースボールまたはツーピースボールの他、3ピース、4ピースなどのマルチピースボールが挙げられる。
【0037】
本発明に係るゴルフボール材料は、曲げ剛性率が200MPa以上、ショアD硬度が50以上という高硬質を達成し、かつ反発弾性率(JIS K 6301準拠)50%以上という高反発弾性を兼ね備え、耐久性に優れることから、このゴルフボール材料をゴルフボールの表皮材、中間層、コア材のいずれかまたはすべてに用いることで、飛距離、打球感、耐久性に優れたゴルフボールを得ることができる。
【実施例】
【0038】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
尚、実施例、比較例に用いた原料の組成と物性および得られたシートの物性の測定方法は以下の通りである。
【0039】
1.原材料
(1)アイオノマー(A)
アイオノマー1:
ベースポリマー:エチレン・メタクリル酸共重合体(メタクリル酸含量15重量%)
金属カチオン源:ナトリウム、中和度:30モル%、MFR:2.8g/10分
アイオノマー2:
ベースポリマー:エチレン・メタクリル酸共重合体(メタクリル酸含量15重量%)
金属カチオン源:亜鉛、中和度:59モル%、MFR:0.9g/10分
アイオノマー3:
ベースポリマー:エチレン・メタクリル酸共重合体(メタクリル酸含量15重量%)
金属カチオン源:マグネシウム、中和度:54モル%、MFR:0.7g/10分
(2)α−オレフィン・グリシジルモノマー共重合体(B)
GMA共重合体:
エチレン・グリシジルメタクリレート共重合体(グリシジルメタクリレート含量:12重量%)、MFR:3.0g/10分
(3)ポリオレフィン(C)
ランダムPP(プロピレン・エチレンランダム共重合体)(プライムポリマー社製、F−219DA、密度910kg/m、MFR8.5g/10分(230℃))
【0040】
2.物性測定方法
(1)曲げ剛性率(オルゼン式)_ 曲げ剛性率(オルゼン式)は、JIS K7106に従って測定した。_(2)ショアD硬度_ ショアD硬度は、JIS K7215に従って測定した。
(3)反発弾性率_ 反発弾性率は、JIS K6301に準拠して測定した。
【0041】
(実施例1)
エチレン・メタクリル酸共重合体アイオノマー(A)(アイオノマー1)83重量部と、α−オレフィン・グリシジルモノマー共重合体(B)(GMA共重合体)2重量部と、ポリオレフィン(C)(ランダムPP)15重量部とを、ペレタイザーを備えた30mmφの二軸押出機[池貝(株)製、品番PCM30−35−3V−1SF]に定量フィーダーで所定量フィードし、下記の押出条件(ないし溶融混練条件)で溶融混練し、造粒してペレットを得た。
上記二軸押出機における押出条件は、次の通りである。_ L/D:35_ バレル温度(℃);
C1(160),C2(190),C3(210),C4−C9(210),A(210),D(210)
スクリュー回転数:200rpm_ 押出量:10kg/h_ 得られたゴルフボール材料は、MFR(JIS K7210、190℃、2.16kg荷重)が0.1g/10分であった。
【0042】
次に、得られたペレットを、160℃に設定したプレス成形機にて、プレス成形し150mm角のシートを作製した。_ 得られたプレスシートについて、曲げ剛性率、硬度、反発弾性率を測定した。
その結果を表1に示す。
【0043】
(実施例2)
実施例1において、アイオノマー1をアイオノマー2に変更した以外は、実施例1と同様に行った。
結果を表1に示す。
【0044】
(実施例3)
実施例1において、アイオノマー1をアイオノマー3に変更した以外は、実施例1と同様に行った。
結果を表1に示す。
【0045】
(実施例4)
実施例1において、GMA共重合体の配合量を1重量部に変更した以外は、実施例1と同様に行った。
結果を表1に示す。
【0046】
(実施例5)
実施例1において、GMA共重合体の配合量を0.5重量部に変更した以外は、実施例1と同様に行った。
結果を表1に示す。
【0047】
(比較例1)
実施例1において、アイオノマー2単体を用いた以外は、実施例1と同様に行った。
結果を表1に示す。
【0048】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体のカルボキシル基が金属イオンで20〜90%中和されてなるアイオノマー(A)60〜96.7重量部、グリシジル(メタ)アクリレート又はグリシジル不飽和エーテルを含有するエチレン又はα−オレフィン共重合体、あるいはさらにビニルエステル又は不飽和カルボン酸エステルを含有する三元共重合体(B)0.3〜10重量部及びポリオレフィン(C)3〜30重量部からなることを特徴とするゴルフボール材料。
【請求項2】
アイオノマー(A)における金属イオンの少なくとも一部が1価金属イオンである請求項1に記載のゴルフボール材料。
【請求項3】
アイオノマー(A)における金属イオンの少なくとも一部が2価金属イオンである請求項1記載のゴルフボール材料。
【請求項4】
前記ポリオレフィンが、プロピレン・α−オレフィン共重合体であることを特徴とする請求項1に記載のゴルフボール材料。
【請求項5】
グリシジル(メタ)アクリレート又はグリシジル不飽和エーテルを含有するエチレン又はα−オレフィン共重合体、あるいはさらにビニルエステル又は不飽和カルボン酸エステルを含有する三元共重合体(B)及びポリオレフィン(C)の溶融混合物とアイオノマー(A)を溶融混合して得たことを特徴とする請求項1記載のゴルフボール材料。
【請求項6】
曲げ剛性率(オルゼン式(JIS K 7106))が200MPa以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のゴルフボール材料。
【請求項7】
ショアD硬度(JIS K 7215)が50以上であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のゴルフボール材料。
【請求項8】
反発弾性率(JIS K 6301準拠)が50%以上であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のゴルフボール材料。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載のゴルフボール材料を表皮材、中間層、コア材のいずれかまたはすべてに含むことを特徴とするゴルフボール。

【公開番号】特開2008−79669(P2008−79669A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−260127(P2006−260127)
【出願日】平成18年9月26日(2006.9.26)
【出願人】(000174862)三井・デュポンポリケミカル株式会社 (174)