説明

ゴルフボール用樹脂組成物及びゴルフボール

【課題】反発性及び柔軟性に優れたゴルフボール用樹脂組成物、及び反発性及び打球感に優れたゴルフボールを提供する。
【解決手段】(A)(a−1)オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸との二元共重合体、(a−2)オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸との二元共重合体の金属イオン中和物、(a−3)オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体、及び、(a−4)オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体の金属イオン中和物からなる群より選択される少なくとも1種と、(B)分子中に、炭化水素鎖、カチオン性部位及びアニオン性部位を有する化合物とを含有するゴルフボール用樹脂組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフボール用樹脂組成物及びこれを用いたゴルフボールに関する。
【背景技術】
【0002】
ゴルフボールの構造として、ゴルフボール本体からなるワンピースゴルフボール、コアとカバーとを有するツーピースゴルフボール、センター及び該センターを被覆する一層の中間層からなるコアと該コアを被覆するカバーとを有するスリーピースゴルフボール、センター及び該センターを被覆する少なくとも二以上の中間層からなるコアと該コアを被覆するカバーとを有するマルチピースゴルフボール、などが提案されている。
【0003】
ゴルフボールの構成する材料としては、剛性が高く、飛距離の大きいゴルフボールが得られるという理由から、アイオノマー樹脂が汎用され、特に反発性が高い材料が求められている。アイオノマー樹脂は、中和度を高めることで反発性を向上できることが知られているが、同時に硬度も上昇する傾向にあるため、柔軟性が低下し、打球感が悪化してしまう。
【0004】
この点について、高中和度のアイオノマー樹脂に多量の脂肪酸(金属石鹸)を添加することにより、反発性を高めながら硬度を低下させることが提案されている。しかし、脂肪酸の酸成分が中和に使用される金属イオンを消費してしまうため、高中和による高反発化の効果が充分に得られず、ゴルフボールの打球感と反発性の両立という観点では、柔軟化と高反発化が不充分である。また、金属成分も多量に必要になる。
【0005】
例えば、特許文献1には、アイオノマー樹脂及び同一分子内に酸とアミン官能基の両方を有する化合物を使用したゴルフボール材料が開示されているが、柔軟化と高反発化の両立という点について未だ改善の余地を残している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−28517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記課題を解決し、反発性及び柔軟性に優れたゴルフボール用樹脂組成物を提供することを目的とする。また、反発性及び打球感に優れたゴルフボールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、(A)(a−1)オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸との二元共重合体、(a−2)オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸との二元共重合体の金属イオン中和物、(a−3)オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体、及び、(a−4)オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体の金属イオン中和物からなる群より選択される少なくとも1種と、(B)分子中に、炭化水素鎖、カチオン性部位及びアニオン性部位を有する化合物とを含有するゴルフボール用樹脂組成物に関する。
【0009】
前記化合物は、両性界面活性剤であることが好ましい。
前記両性界面活性剤は、ベタイン型両性界面活性剤、アミドアミノ酸型両性界面活性剤、アルキルアミノ脂肪酸塩、アルキルアミンオキシド、β−アラニン型両性界面活性剤、グリシン型両性界面活性剤、スルホベタイン型両性界面活性剤及びホスホベタイン型両性界面活性剤からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0010】
前記ゴルフボール用樹脂組成物は、樹脂成分100質量部に対して、前記化合物を1〜200質量部含有することが好ましい。
前記ゴルフボール用樹脂組成物は、樹脂成分100質量部に対して、(C)塩基性無機金属化合物を100質量部以下含有することが好ましい。
【0011】
本発明は、前記ゴルフボール用樹脂組成物から形成された構成部材を有するゴルフボールに関する。
本発明は、少なくとも一層以上のコアと前記コアを被覆するカバーとを有するゴルフボールであって、前記コアの少なくとも一層が前記ゴルフボール用樹脂組成物から形成されているゴルフボールに関する。
本発明はまた、ゴルフボール本体が前記ゴルフボール用樹脂組成物から形成されているワンピースゴルフボールに関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、特定の樹脂に分子中に、炭化水素鎖、カチオン性部位及びアニオン性部位を有する化合物が配合されているので、反発性及び柔軟性に優れたゴルフボール用樹脂組成物を提供できる。従って、該樹脂組成物を使用することで、反発性及び打球感に優れたゴルフボールを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施例及び比較例の反発弾性とショアD硬度との関係を示すグラフ(三元共重合体+オレイルベタイン、オレイン酸)。
【図2】本発明の実施例及び比較例の反発弾性とショアD硬度との関係を示すグラフ(三元共重合体+ステアリルベタイン、ステアリン酸)。
【図3】本発明の実施例及び比較例の反発弾性とショアD硬度との関係を示すグラフ(三元共重合体+ラウリルベタイン)。
【図4】本発明の実施例及び比較例の反発弾性とショアD硬度との関係を示すグラフ(二元共重合体(ニュクレルN1560)+オレイルベタイン又はステアリルベタイン)。
【図5】本発明の実施例及び比較例の反発弾性とショアD硬度との関係を示すグラフ(二元共重合体(ニュクレルN2050H)+オレイルベタイン)。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のゴルフボール用樹脂組成物は、(A)(a−1)オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸との二元共重合体、(a−2)オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸との二元共重合体の金属イオン中和物、(a−3)オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体、及び、(a−4)オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体の金属イオン中和物からなる群より選択される少なくとも1種と、分子中に、炭化水素鎖、カチオン性部位及びアニオン性部位を有する化合物(B)とを含有する。
【0015】
前述のように、アイオノマー樹脂などの樹脂成分を用いてゴルフボール用材料の反発性と柔軟性を両立することは困難であるが、炭化水素鎖、カチオン性部位及びアニオン性部位を有する化合物を更に配合することで、柔軟化と高反発化を両立できるため、反発性及び打球感に優れたゴルフボールを提供できる。このような効果が発揮される理由は、以下のように推察される。
【0016】
アイオノマー樹脂に炭化水素鎖、カチオン性部位及びアニオン性部位を有する化合物を添加すると、該化合物分子がアイオノマー樹脂のイオン会合体に取り込まれることで、(I)イオン会合体を微分散化してエチレン鎖の結晶化を阻害し、(II)イオン会合体による主鎖の拘束を弱めるものと考えられる。そしてこれらの作用により、アイオノマー樹脂の分子鎖の運動性が高くなるため、柔軟性と反発性が共に向上すると推察される。
【0017】
また、前記化合物はカチオン性とアニオン性の両部位を有しているため、脂肪酸を添加した場合のように金属成分が消費されることがないことから、多量の金属成分を使用しなくても高中和による高反発の効果が充分に得られる。そのため、効率的に柔軟性と反発性を両立できる。
【0018】
先ず、本発明で(A)樹脂成分として使用される前記(a−1)〜(a−4)成分について説明する。
前記(a−1)成分は、オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸との二元共重合体であって、共重合体のカルボキシル基が中和されていない非イオン性のものである。前記(a−2)成分は、オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸との二元共重合体の金属イオン中和物であって、共重合体のカルボキシル基の少なくとも一部が金属イオンで中和されたアイオノマー樹脂を挙げることができる。
【0019】
前記(a−3)成分は、オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体であって、共重合体のカルボキシル基が中和されていない非イオン性のものである。前記(a−4)成分は、オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体の金属イオン中和物であって、共重合体のカルボキシル基の少なくとも一部が金属イオンで中和されたアイオノマー樹脂を挙げることができる。
【0020】
なお、本発明において、「(a−1)オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸との二元共重合体」を単に「二元共重合体」と称し、「(a−2)オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸との二元共重合体の金属イオン中和物からなるアイオノマー樹脂」を「二元系アイオノマー樹脂」と称し、「(a−3)オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体」を単に「三元共重合体」と称し、「(a−4)オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体の金属イオン中和物からなるアイオノマー樹脂」を「三元系アイオノマー樹脂」と称する場合がある。
【0021】
前記(a−1)〜(a−4)成分において、前記オレフィンとしては、炭素数が2〜8個のオレフィンが好ましく、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテンなどを挙げることができ、特にエチレンが好ましい。前記炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、クロトン酸などが挙げられ、特にアクリル酸又はメタクリル酸が好ましい。また、前記α,β−不飽和カルボン酸エステルとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸等のメチル、エチル、プロピル、n−ブチル、イソブチルエステルなどが用いられ、特にアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルが好ましい。
【0022】
前記(a−1)二元共重合体としては、エチレンと(メタ)アクリル酸との二元共重合体が好ましく、前記(a−2)二元系アイオノマー樹脂としては、エチレンと(メタ)アクリル酸との二元共重合体の金属イオン中和物が好ましい。前記(a−3)三元共重合体としては、エチレンと(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステルとの三元共重合体が好ましく、前記(a−4)三元系アイオノマー樹脂としては、エチレンと(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステルとの三元共重合体の金属イオン中和物が好ましい。ここで、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を意味する。
【0023】
前記(a−1)二元共重合体又は(a−3)三元共重合体中の炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸成分の含有率は、好ましくは4質量%以上、より好ましくは5質量%以上である。また、該含有率は、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下である。
【0024】
前記(a−1)二元共重合体、(a−3)三元共重合体のメルトフローレイト(190℃、2.16kg荷重)は、好ましくは5g/10min以上、より好ましくは10g/10min以上、更に好ましくは15g/10min以上である。該メルトフローレイトは、好ましくは1700g/10min以下、より好ましくは1500g/10min以下、更に好ましくは1300g/10min以下である。5g/10min以上であれば、ゴルフボール用樹脂組成物の流動性が良好となり、構成部材の成形が容易になる。また、1700g/10min以下であれば、得られるゴルフボールの耐久性がより良好となる。
【0025】
前記(a−1)二元共重合体の具体例を商品名で例示すると、例えば、三井デュポンポリケミカル社から商品名「ニュクレル(NUCREL)(登録商標)(例えば、「ニュクレルN1050H」、「ニュクレルN2050H」、「ニュクレルN1110H」、「ニュクレルN0200H」、「ニュクレルN1560」)」で市販されているエチレン−メタクリル酸共重合体、ダウケミカル社から商品名「プライマコア(PRIMACOR)(登録商標)5980I」で市販されているエチレン−アクリル酸共重合体などを挙げることができる。
【0026】
前記(a−3)三元共重合体の具体例を商品名で例示すると、三井デュポンポリケミカル社から市販されている商品名「ニュクレル(NUCREL)(登録商標)(例えば、「ニュクレルAN4318」「ニュクレルAN4319」)」、デュポン社から市販されている商品名「ニュクレル(NUCREL)(登録商標)(例えば、「ニュクレルAE」)」、ダウケミカル社から市販されている商品名「プライマコア(PRIMACOR)(登録商標)(例えば、「PRIMACOR AT310」、「PRIMACOR AT320」)」などを挙げることができる。前記(a−1)二元共重合体又は(a−3)三元共重合体は、単独又は二種以上を組み合わせて使用しても良い。
【0027】
前記(a−2)二元系アイオノマー樹脂中の炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸成分の含有率は、好ましくは8質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは12質量%以上である。該含有率は、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下である。8質量%以上であれば、得られる構成部材を所望の反発性能にしやすくなる。また、30質量%以下であれば、得られる構成部材の溶融粘度が高くなり過ぎず、成型性が良好になる。
【0028】
前記(a−2)二元系アイオノマー樹脂のカルボキシル基の中和度は、好ましくは15モル%以上、より好ましくは20モル%以上である。該中和度は、好ましくは90モル%以下、より好ましくは85モル%以下である。15モル%以上であれば、得られるゴルフボールの反発性及び耐久性が良好になる。一方、90モル%以下であれば、ゴルフボール用樹脂組成物の流動性が良好になる。
【0029】
なお、前記(a−2)二元系アイオノマー樹脂のカルボキシル基の中和度は、下記式で求めることができる。
二元系アイオノマー樹脂の中和度=100×二元系アイオノマー樹脂中の中和されているカルボキシル基のモル数/二元系アイオノマー樹脂中のカルボキシル基の総モル数
【0030】
前記(a−2)二元系アイオノマー樹脂のカルボキシル基の少なくとも一部を中和する金属イオンとしては、ナトリウム、カリウム、リチウムなどの1価の金属イオン;マグネシウム、カルシウム、亜鉛、バリウム、カドミウムなどの2価の金属イオン;アルミニウムなどの3価の金属イオン;錫、ジルコニウムなどのその他のイオンが挙げられる。
【0031】
前記(a−2)二元系アイオノマー樹脂の具体例を商品名で例示すると、三井・デュポンポリケミカル(株)から市販されている「ハイミラン(Himilan)(登録商標)(例えば、ハイミラン1555(Na)、ハイミラン1557(Zn)、ハイミラン1605(Na)、ハイミラン1706(Zn)、ハイミラン1707(Na)、ハイミランAM7311(Mg)、ハイミランAM7329(Zn)など)」が挙げられる。更にデュポン社から市販されている「サーリン(Surlyn)(登録商標)(例えば、サーリン8945(Na)、サーリン9945(Zn)、サーリン8140(Na)、サーリン8150(Na)、サーリン9120(Zn)、サーリン9150(Zn)、サーリン6910(Mg)、サーリン6120(Mg)、サーリン7930(Li)、サーリン7940(Li)、サーリンAD8546(Li))」などが挙げられる。またエクソンモービル化学(株)から市販されているアイオノマー樹脂としては、「アイオテック(Iotek)(登録商標)(例えば、アイオテック8000(Na)、アイオテック8030(Na)、アイオテック7010(Zn)、アイオテック7030(Zn))」などが挙げられる。なお、前記商品名の後の括弧内に記載したNa、Zn、Li、Mgなどは、これらの中和金属イオンの金属種を示している。前記(a−2)二元系アイオノマー樹脂は、例示のものをそれぞれ単独又は2種以上の混合物として用いてもよい。
【0032】
前記(a−2)二元系アイオノマー樹脂の曲げ剛性率は、好ましくは140MPa以上、より好ましくは150MPa以上、更に好ましくは160MPa以上である。該曲げ剛性率は、好ましくは550MPa以下、より好ましくは500MPa以下、更に好ましくは450MPa以下である。曲げ剛性率が低すぎると、ゴルフボールの反発が低下して飛距離が低下する傾向があり、曲げ剛性率が高すぎると、ゴルフボールの耐久性が低下する場合がある。
【0033】
前記(a−2)二元系アイオノマー樹脂のメルトフローレイト(190℃、2.16kg荷重)は、好ましくは0.1g/10min以上、より好ましくは0.5g/10min以上、更に好ましくは1.0g/10min以上である。該メルトフローレイトは、好ましくは30g/10min以下、より好ましくは20g/10min以下、更に好ましくは15g/10min以下である。0.1g/10min以上であれば、ゴルフボール用樹脂組成物の流動性が良好となり、例えば、薄い層の成形が可能となる。また、30g/10min以下であれば、得られるゴルフボールの耐久性がより良好となる。
【0034】
前記(a−2)二元系アイオノマー樹脂のスラブ硬度は、ショアD硬度で10以上が好ましく、より好ましくは15以上、更に好ましくは20以上である。また、該スラブ硬度(ショアD硬度)は、75以下が好ましく、より好ましくは73以下、更に好ましくは70以下である。10以上であれば、得られる構成部材の反発性が良好となる。また、75以下であれば、得られる構成部材が硬くなりすぎず、ゴルフボールの耐久性がより良好となる。
【0035】
前記(a−4)三元系アイオノマー樹脂中の炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸成分の含有率は、好ましくは2質量%以上、より好ましくは3質量%以上である。該含有率は、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下である。
【0036】
前記(a−4)三元系アイオノマー樹脂のカルボキシル基の中和度は、好ましくは20モル%以上、より好ましくは30モル%以上である。該中和度は、好ましくは90モル%以下、より好ましくは85モル%以下である。20モル%以上であれば、ゴルフボール用樹脂組成物を用いて得られるゴルフボールの反発性及び耐久性が良好になり、90モル%以下であれば、ゴルフボール用樹脂組成物の流動性が良好になる。
【0037】
なお、(a−4)三元系アイオノマー樹脂のカルボキシル基の中和度は、下記式で求めることができる。
三元系アイオノマー樹脂の中和度=100×三元系アイオノマー樹脂中の中和されているカルボキシル基のモル数/三元系アイオノマー樹脂中のカルボキシル基の総モル数
【0038】
前記(a−4)三元系アイオノマー樹脂のカルボキシル基の少なくとも一部を中和する金属イオンとしては、前記(a−2)二元系アイオノマー樹脂と同様のものが挙げられる。前記(a−4)三元系アイオノマー樹脂としては、マグネシウムイオンで中和されているものが好ましい。マグネシウムイオンで中和されることにより、反発弾性が高くなる。
【0039】
前記(a−4)三元系アイオノマー樹脂の具体例を商品名で例示すると、三井デュポンポリケミカル(株)から市販されている「ハイミラン(Himilan)(登録商標)(例えば、ハイミランAM7327(Zn)、ハイミラン1855(Zn)、ハイミラン1856(Na)、ハイミランAM7331(Na)など)」が挙げられる。更にデュポン社から市販されている三元系アイオノマー樹脂としては、「サーリン6320(Mg)、サーリン8120(Na)、サーリン8320(Na)、サーリン9320(Zn)、サーリン9320W(Zn)など」が挙げられる。またエクソンモービル化学(株)から市販されている三元系アイオノマー樹脂としては、「アイオテック7510(Zn)、アイオテック7520(Zn)など」が挙げられる。なお、商品名の後の括弧内に記載したNa、Zn、Mgなどは、中和金属イオンの種類を示している。前記(a−4)三元系アイオノマー樹脂は、単独又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0040】
前記(a−4)三元系アイオノマー樹脂の曲げ剛性率は、好ましくは10MPa以上、より好ましくは11MPa以上、更に好ましくは12MPa以上である。該曲げ剛性率は、好ましくは100MPa以下、より好ましくは97MPa以下、更に好ましくは95MPa以下である。曲げ剛性率が低すぎると、ゴルフボールの反発が低下して飛距離が低下する傾向があり、曲げ剛性率が高すぎると、ゴルフボールの耐久性が低下する場合がある。
【0041】
前記(a−4)三元系アイオノマー樹脂のメルトフローレイト(190℃、2.16kg荷重)は、好ましくは0.1g/10min以上、より好ましくは0.3g/10min以上、更に好ましくは0.5g/10min以上である。該メルトフローレイトは、好ましくは70g/10min以下、より好ましくは60g/10min以下、更に好ましくは55g/10min以下である。0.1g/10min以上であれば、ゴルフボール用樹脂組成物の流動性が良好となり、薄い層の成形が容易になる。また、70g/10min以下であれば、得られるゴルフボールの耐久性がより良好となる。
【0042】
前記(a−4)三元系アイオノマー樹脂のスラブ硬度は、ショアD硬度で1以上が好ましく、より好ましくは3以上、更に好ましくは5以上である。また、該スラブ硬度(ショアD硬度)は、70以下が好ましく、より好ましくは65以下、更に好ましくは60以下である。1以上であれば、得られる構成部材が柔らかく成り過ぎず、ゴルフボールの反発性が良好になる。また、70以下であれば、得られる構成部材が硬くなりすぎず、ゴルフボールの耐久性がより良好となる。
【0043】
本発明のゴルフボール用樹脂組成物は、(A)樹脂成分として、(a−3)三元共重合体、又は、(a−4)三元系アイオノマー樹脂を含有することが好ましい。これにより、得られる構成部材が硬くなり過ぎず、反発性が高くなる。
【0044】
本発明のゴルフボール用樹脂組成物は、樹脂成分として、上述した(a−1)〜(a−4)成分のみを含有することが好ましい態様であるが、本発明の効果を損なわない範囲で、他の熱可塑性エラストマーや熱可塑性樹脂を含有しても良い。他の熱可塑性エラストマーや熱可塑性樹脂を含有する場合、樹脂成分中、(a−1)〜(a−4)成分の合計含有率は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上である。
【0045】
次に、本発明で使用される(B)分子中に、炭化水素鎖、カチオン性部位及びアニオン性部位を有する化合物について説明する。このような化合物としては、水酸基などの置換基を有してもよい任意の炭化水素鎖とカチオン性部位とアニオン性部位とを有する化合物であれば特に限定されないが、なかでも、両性界面活性剤を好適に使用できる。
【0046】
両性界面活性剤とは、分子中にカチオン性部位とアニオン性部位とを有する界面活性剤であり、例えば、アルキルベタイン型、アミドベタイン型、イミダゾリウムベタイン型、アルキルスルホベタイン型、アミドスルホベタイン型などのベタイン型両性界面活性剤;アミドアミノ酸型両性界面活性剤;アルキルアミノ脂肪酸塩;アルキルアミンオキシド;β−アラニン型両性界面活性剤;グリシン型両性界面活性剤;スルホベタイン型両性界面活性剤;ホスホベタイン型両性界面活性剤などが挙げられる。
【0047】
アルキルベタイン型両性界面活性剤としては、下記式(1)で表される化合物などが挙げられる。
【化1】

(Rは、炭素数8〜30のアルキル基又はアルケニル基を表す。R及びRは、同一又は異なって、炭素数1〜20のアルキル基又はヒドロキシアルキル基を表す。)
【0048】
アミドベタイン型両性界面活性剤としては、下記式(2)で表される化合物、などが挙げられる。
【化2】

(Rは、炭素数8〜30のアルキル基又はアルケニル基を表す。R及びRは、同一又は異なって、炭素数1〜20のアルキル基又はヒドロキシアルキル基を表す。mは、1〜5の整数を表す。)
【0049】
イミダゾリウムベタイン型両性界面活性剤としては、下記式(3)で表される化合物などが挙げられる。
【化3】

(Rは、炭素数8〜30のアルキル基又はアルケニル基を表す。p及びqは、同一又は異なって、1〜5の整数を表す。)
【0050】
アルキルスルホベタイン型両性界面活性剤としては、下記式(4)で表される化合物などが挙げられる。
【化4】

(Rは、炭素数8〜30のアルキル基又はアルケニル基を表す。R及びRは、同一又は異なって、炭素数1〜20のアルキル基又はヒドロキシアルキル基を表す。nは、1〜5の整数を表す。)
【0051】
アミドアミノ酸型両性界面活性剤としては、下記式(5)で表される化合物などが挙げられる。
【化5】

(Rは、炭素数8〜30のアルキル基又はアルケニル基を表す。i及びjは、同一又は異なって、1〜5の整数を表す。)
【0052】
アルキルアミンオキシドとしては、下記式(6)で表される化合物などが挙げられる。
【化6】

(Rは、炭素数8〜30のアルキル基又はアルケニル基を表す。R及びRは、同一又は異なって、炭素数1〜20のアルキル基又はヒドロキシアルキル基を表す。)
【0053】
式(1)〜(6)において、R〜Rは直鎖状でも分岐状でもよい。R〜Rの少なくとも1つの炭素数は12〜18が好ましい。R及びRの炭素数は1〜5が好ましい。m、p、q、n、i及びjは、1〜3の整数が好ましい。
【0054】
としては、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、イソオクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基などのアルキル基;テトラデセニル基、ヘキサデセニル基、オクタデセニル基、イソオクタデセニル基、エイコセニル基などのアルケニル基;これらの混合物であるヤシ油アルキル基、パーム核油アルキル基、牛脂アルキル基などの混合アルキル基などが挙げられる。R2〜3としては、メチル基、エチル基、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基などが挙げられる。
【0055】
両性界面活性剤の具体例としては、ジメチルラウリルベタイン、ジメチルオレイルベタイン、ジメチルステアリルベタイン、ステアリルジヒドロキシメチルベタイン、ステアリルジヒドロキシエチルベタイン、ラウリルジヒドロキシメチルベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルベタイン、ミリスチルジヒドロキシメチルベタイン、ベヘニルジヒドロキシメチルベタイン、パルミチルジヒドロキシエチルベタイン、オレイルジヒドロキシメチルベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、ラウリン酸アミドアルキルベタイン、2−アルキル−N−カルボキシアルキルイミダゾリニウムベタイン、ラウリン酸アミドアルキルヒドロキシスルホベタイン、ヤシ脂肪酸アミドジアルキルヒドロキシアルキルスルホベタイン、N−アルキル−β−アミノプロピオン酸塩、N−アルキル−β−イミノジプロピオン酸塩、アルキルジアミノアルキルグリシン、アルキルポリアミノアルキルグリシン、アルキルアミノ脂肪酸ナトリウム、N,N−ジメチルオクチルアミンオキサイド、N,N−ジメチルラウリルアミンオキサイド、N,N−ジメチルステアリルアミンオキサイドなどを挙げることができる。
【0056】
前述の両性界面活性剤のなかでも、反発性及び柔軟性を両立できる点から、ベタイン型両性界面活性剤が好ましく、式(1)などで表されるアルキルベタイン型両性界面活性剤がより好ましい。
【0057】
(B)分子中に、炭化水素鎖、カチオン性部位及びアニオン性部位を有する化合物の含有量は、樹脂成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、更に好ましくは10質量部以上である。該含有量は、好ましくは200質量部以下、より好ましくは150質量部以下、更に好ましくは100質量部以下である。上記範囲内であると、反発性と柔軟性をバランス良く改善できる。
【0058】
本発明のゴルフボール用樹脂組成物は、更に(C)塩基性無機金属化合物を含有してもよい。(C)塩基性無機金属化合物は、(A)成分の未中和のカルボキシル基を中和するために必要に応じて添加される。(C)前記塩基性無機金属化合物としては、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどの金属単体、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化銅などの金属水酸化物;酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛、酸化銅などの金属酸化物;炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム、炭酸カリウムなどの金属炭酸化物が挙げられる。これらの(C)塩基性無機金属化合物は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、(C)塩基性無機金属化合物としては、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム、炭酸カリウム、酸化亜鉛、酸化銅が好適である。
【0059】
(C)前記塩基性無機金属化合物の含有量は、樹脂成分100質量部に対して、好ましくは0質量部超、より好ましくは1質量部以上である。該含有量は、好ましくは200質量部以下、より好ましくは100質量部以下、更に好ましくは70質量部以下である。含有量が少なすぎると、イオン会合体の量が少なく低反発となり、一方、含有量が多すぎると、耐久性が低下する場合がある。
【0060】
本発明のゴルフボール用樹脂組成物は、下記式で表わされる総中和度が53%以上が好ましく、60%以上がより好ましく、80%以上が更に好ましい。該中和度は、1000%以下が好ましく、700%以下がより好ましく、400%以下が更に好ましい。53%以上であれば、イオン会合体の量が多く高反発となり、1000%以下であれば、塩基性無機金属化合物が均一に分散して、耐久性が向上する。
【0061】
【数1】

式中のΣ(樹脂組成物が有する陽イオン成分のモル数×陽イオン成分の価数)は、(A)樹脂成分の陽イオン成分のモル数×陽イオン成分の価数+(B)分子中に、炭化水素鎖、カチオン性部位及びアニオン性部位を有する化合物の陽イオン形成基又は陽イオン成分のモル数×陽イオン形成基又は陽イオン成分の価数+(C)塩基性無機金属化合物の金属成分のモル数×金属成分の価数であり、Σ(樹脂組成物が有する陰イオン成分のモル数×陰イオン成分の価数)は、(A)樹脂成分のカルボキシル基のモル数+(B)分子中に、炭化水素鎖、カチオン性部位及びアニオン性部位を有する化合物の陰イオン形成基のモル数×陰イオン形成基の価数である。
なお、陽イオン成分、陽イオン形成基、金属成分、カルボキシル基及び陰イオン形成基には、イオン化していない前駆体のモル数を含めるものとする。陽イオン成分量、陽イオン形成基量、陰イオン形成基は、例えば、中和滴定により求めてもよい。
【0062】
本発明のゴルフボール用樹脂組成物は、更に、白色顔料(例えば、酸化チタン)、青色顔料などの顔料成分、重量調整剤、分散剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、蛍光材料、蛍光増白剤などを、ゴルフボールの性能を損なわない範囲で含有してもよい。また、本発明のゴルフボール用樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、脂肪酸及び/又はその金属塩などを併用しても良い。
【0063】
前記白色顔料(例えば、酸化チタン)の含有量は、樹脂成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上である。該含有量は、好ましくは10質量部以下、より好ましくは8質量部以下である。0.5質量部以上とすることによって、得られるゴルフボール構成部材に隠蔽性を付与できる。また、10質量部を超えると、得られるゴルフボールの耐久性が低下する場合がある。
【0064】
本発明のゴルフボール用樹脂組成物は、例えば、(A)成分と(B)成分と、必要に応じて(C)成分とをドライブレンドすることにより得られる。また、ドライブレンドした混合物を、押出してペレット化してもよい。ドライブレンドには、例えば、ペレット状の原料を配合できる混合機を用いるのが好ましく、より好ましくはタンブラー型混合機を用いる。押出は、一軸押出機、二軸押出機、二軸一軸押出機など公知の押出機を使用することができる。
【0065】
本発明のゴルフボール用樹脂組成物は、固体高分解能炭素核磁気共鳴法(NMR法)によって観測される13C核のスピン−格子緩和時間(T1)が、15秒以下が好ましく、12秒以下がより好ましく、10秒以下がより一層好ましく、8秒以下が更に好ましい。アイオノマー樹脂について、固体高分解能炭素核磁気共鳴法(NMR法)によって観測される13C核のスピン−格子緩和時間(T1)により磁化率の減衰を測定したとき、この緩和時間(T1)は、エチレン鎖のトランスコンホメーションに由来すると考えられている。本発明者らは、トランスコンホメーションをとる可能性がある部位には、エチレン結晶とイオン会合体周りのエチレン鎖拘束層とがあり、磁化率の減衰測定における緩和成分も短時間成分と長時間成分とに分離できると考え、エチレン鎖拘束層が反発性と相関があることを見出した。すなわち、緩和時間(T1)が短くなると、エチレン拘束層の運動性が高くなり、反発性が向上する。また、分子運動性を高めることで、柔軟性の増加効果も期待できる。そのため、本発明のゴルフボール用樹脂組成物は、固体高分解能炭素核磁気共鳴法(NMR法)によって観測される13C核のスピン−格子緩和時間(T1)が前述の短い時間を有することが好ましい。
【0066】
また、本発明のゴルフボール用樹脂組成物は、動的粘弾性装置を用いて、加振周波数10Hz、温度12℃、測定ひずみ0.05%の条件で、引張モードで測定したときに、貯蔵弾性率E’(Pa)と損失弾性率E”(Pa)とが、下記式を満足することが好ましい。
下記式を満足することにより、ゴルフボール用樹脂組成物が、高いレベルで軟質を維持しながらも反発性が高くなる。なお、下記式においてlogは常用対数である。
log(E’/E”)≧−6.55
【0067】
前記貯蔵弾性率E’(Pa)が大きくなるほど、また、損失弾性率E”(Pa)が小さくなるほど反発性は高くなると考えられる。また、貯蔵弾性率E’(Pa)が大きくなると、硬度も高くなる。上記式は、分子が貯蔵弾性率E’の1乗であるのに対し、分母が損失弾性率E”の2乗となっていることから、貯蔵弾性率E’を大きくして硬さを増すより、損失弾性率E”を小さくする方が、反発性に対する向上効果が大きいこと意味している。つまり、材料を硬くすることなく反発性を高めるにはE”を小さくし、変形時のエネルギーロスを小さくことが必要と考えられるが、本発明では、前述のように分子運動性が高まることで応力に対してスムーズに変形させることが可能となるため、エネルギーロスが小さく、反発性が向上すると考えられる。
【0068】
前記log(E’/E”)は、−6.23以上が好ましく、−6.02以上がより好ましく、−5.89以上が更に好ましい。また、前記log(E’/E”)の上限は特に限定されないが、−5.24以下が好ましく、−5.40以下がより好ましい。前記log(E’/E”)が−5.25になると、反発係数が最大値である1に近づくからである。動的粘弾性の測定条件として、加振周波数:10Hz、温度:12℃の測定条件を採用しているのは、以下の理由に基づく。40m/sでの反発係数測定におけるゴルフボールと衝突棒(金属製円筒物)との接触時間は、500μ秒であり、これを一周期の変形と考えると、数1000Hzの周波数の変形に対応する。一般的なアイオノマー樹脂の周波数・温度換算則から、温度:室温、加振周波数:数1000Hzの測定条件で測定する動的粘弾性は、温度:12℃、加振周波数:10Hzの測定条件で測定する動的粘弾性に相当する。
【0069】
本発明のゴルフボール用樹脂組成物のメルトフローレイト(190℃×2.16kg)は、好ましくは0.01g/10min以上、より好ましくは0.05g/10min以上、更に好ましくは0.1g/10min以上である。該メルトフローレイトは、好ましくは100g/10min以下、より好ましくは80g/10min以下、更に好ましくは50g/10min以下である。上記範囲内であれば、ゴルフボール構成部材への成形性が良好である。
【0070】
前記ゴルフボール用樹脂組成物の反発弾性は、好ましくは40%以上、より好ましくは43%以上、更に好ましくは46%以上である。40%以上のゴルフボール用樹脂組成物を用いることにより、反発性(飛距離)に優れるゴルフボールが得られる。反発弾性は、ゴルフボール用樹脂組成物をシート状に成形して測定した反発弾性であり、後述する測定方法により測定する。
【0071】
前記ゴルフボール用樹脂組成物のスラブ硬度は、ショアD硬度で5以上が好ましく、7以上がより好ましく、10以上が更に好ましい。該スラブ硬度(ショアD硬度)は、70以下が好ましく、65以下がより好ましく、60以下が更に好ましく、50以下が最も好ましい。5以上のゴルフボール用樹脂組成物を用いることにより、反発性(飛距離)に優れるゴルフボールが得られる。一方、70以下のゴルフボール用樹脂組成物を用いることにより、耐久性に優れるゴルフボールが得られる。ここで、ゴルフボール用樹脂組成物のスラブ硬度とは、ゴルフボール用樹脂組成物をシート状に成形して測定した硬度であり、後述する測定方法により測定する。
【0072】
本発明のゴルフボールは、前記ゴルフボール用樹脂組成物から形成された構成部材を有するものであれば、特に限定されない。例えば、ワンピースゴルフボール;単層コアと、前記単層コアを被覆するように配設されたカバーとを有するツーピースゴルフボール;センターと前記センターを被覆するように配設された単層の中間層とからなるコアと、前記コアを被覆するように配設されたカバーとを有するスリーピースゴルフボール;又は、センターと前記センターを被覆するように配設された一以上の中間層とからなるコアと、前記コアを被覆するように配設されたカバーを有するマルチピースゴルフボール(前記スリーピースゴルフボールを含む)を構成するいずれかの構成部材が本発明のゴルフボール用樹脂組成物から形成されているゴルフボールを挙げることができる。これらの中でも、少なくとも一層以上のコアと前記コアを被覆するカバーとを有するゴルフボールであって、前記コアの少なくとも一層が、前記ゴルフボール用樹脂組成物から形成されている態様、又は、ワンピースゴルフボールのゴルフボール本体が前記ゴルフボール用樹脂組成物から形成されている態様が好ましい。特に、単層コアと、前記単層コアを被覆するように配設されたカバーとを有するツーピースゴルフボールであって、前記単層コアが前記ゴルフボール用樹脂組成物から形成されている態様、又は、センターと前記センターを被覆するように配設された一以上の中間層とからなるコアと、前記コアを被覆するように配設されたカバーを有するマルチピースゴルフボールであって、前記センターが、前記ゴルフボール用樹脂組成物から形成されている態様が好ましい。
【0073】
以下、本発明のゴルフボールの一例を、コアと前記コアを被覆するように配設されたカバーとを有するツーピースゴルフボールであって、前記コアが、前述のゴルフボール用樹脂組成物から形成されている態様に基づいて詳述するが、本発明は斯かる態様に限定されない。
【0074】
前記コアは、例えば、前述のゴルフボール用樹脂組成物を射出成形することにより成形される。具体的には、1〜100MPaの圧力で型締めした金型内に、160〜260℃に加熱溶融したゴルフボール用樹脂組成物を1〜100秒で注入し、30〜300秒間冷却して型開きすることにより行うことが好ましい。
【0075】
前記コアの形状としては、球状であることが好ましい。コアの形状が球状でない場合には、カバーの厚みが不均一になり、その結果、部分的にカバー性能が低下する箇所が生じるおそれがある。
【0076】
前記コアの直径は、好ましくは39.00mm以上、より好ましくは39.25mm以上、更に好ましくは39.50mm以上である。該直径は、好ましくは42.37mm以下、より好ましくは42.22mm以下、更に好ましくは42.07mm以下である。39.00mm以上であれば、カバー層の厚みが厚くなり過ぎず、その結果、反発性が良好となる。一方、42.37mm以下であれば、カバー層が薄くなり過ぎず、カバーの保護機能が十分に発揮される。
【0077】
前記コアは、直径39.00〜42.37mmの場合、初期荷重98Nを負荷した状態から終荷重1275Nを負荷したときまでの圧縮変形量(圧縮方向にコアが縮む量)が、好ましくは1.00mm以上、より好ましくは1.10mm以上である。該圧縮変形量は、好ましくは5.00mm以下、より好ましくは4.90mm以下、更に好ましくは4.80mm以下である。1.00mm以上であれば、打球感が良好となり、5.00mm以下であれば、反発性が良好となる。
【0078】
前記コアの表面硬度は、ショアD硬度で20以上が好ましく、25以上がより好ましく、30以上が更に好ましい。該表面硬度(ショアD硬度)は、70以下が好ましく、69以下がより好ましい。20以上とすることにより、コアが軟らかくなり過ぎることがなく、良好な反発性が得られる。また、70以下とすることにより、コアが硬くなり過ぎず、良好な打球感が得られる。
【0079】
前記コアの中心硬度は、ショアD硬度で5以上であることが好ましく、7以上がより好ましく、10以上が更に好ましい。5未満であると、軟らかくなりすぎて反発性が低下する場合がある。また、コアの中心硬度は、ショアD硬度で50以下であることが好ましく、48以下がより好ましく、46以下が更に好ましい。50を超えると、硬くなり過ぎて、打球感が低下する傾向がある。本発明において、コアの中心硬度とは、コアを2等分に切断して、その切断面の中心点についてスプリング式硬度計ショアD型で測定した硬度を意味する。
【0080】
前記コアが、充填剤を含有することも好ましい。充填剤は、主として最終製品として得られるゴルフボールの密度を1.0〜1.5の範囲に調整するための重量調整剤として配合されるものであり、必要に応じて配合すれば良い。前記充填剤としては、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、タングステン粉末、モリブデン粉末などの無機充填剤を挙げることができる。前記充填剤の配合量は、樹脂成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1.0質量部以上である。該配合量は、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下である。0.5質量部未満では、重量調整が難しくなり、30質量部を超えると、樹脂成分の重量分率が小さくなり反発性が低下する傾向がある。
【0081】
本発明のゴルフボールのカバーは、樹脂成分を含有するカバー用組成物から形成されることが好ましい。前記樹脂成分としては、例えば、アイオノマー樹脂、ポリエステル樹脂、熱可塑性ウレタン樹脂若しくは2液硬化型ウレタン樹脂などのウレタン樹脂、ポリアミド樹脂などの各種樹脂、アルケマ(株)から商品名「ペバックス(登録商標)(例えば、「ペバックス2533」)」で市販されている熱可塑性ポリアミドエラストマー、東レ・デュポン(株)から商品名「ハイトレル(登録商標)(例えば、「ハイトレル3548」、「ハイトレル4047」)」で市販されている熱可塑性ポリエステルエラストマー、BASFジャパン(株)から商品名「エラストラン(登録商標)(例えば、「エラストランXNY97A」)」で市販されている熱可塑性ポリウレタンエラストマー、三菱化学(株)から商品名「ラバロン(登録商標)」で市販されている熱可塑性スチレンエラストマーなどを挙げることができる。前記樹脂成分は、単独であるいは2種以上を混合して使用してもよい。
【0082】
ゴルフボールのカバーに使用できるアイオノマー樹脂としては、(a−2)成分、又は、(a−4)成分として例示したものを使用することが好ましい。
【0083】
ゴルフボールのカバーを構成するカバー用組成物は、樹脂成分として、ポリウレタン樹脂(ポリウレタンエラストマーを含む)又はアイオノマー樹脂を含有することがより好ましい。カバー用組成物の樹脂成分中のポリウレタン樹脂又はアイオノマー樹脂の含有率は、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上が更に好ましい。
【0084】
カバー用組成物は、上述した樹脂成分のほか、白色顔料(例えば、酸化チタン)、青色顔料、赤色顔料などの顔料成分、酸化亜鉛、炭酸カルシウムや硫酸バリウムなどの重量調整剤、分散剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、蛍光材料又は蛍光増白剤などを、カバーの性能を損なわない範囲で含有してもよい。
【0085】
白色顔料(例えば、酸化チタン)の含有量は、カバーを構成する樹脂成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上である。該含有量は、好ましくは10質量部以下、より好ましくは8質量部以下である。0.5質量部以上とすることによって、カバーに隠蔽性を付与できる。また、10質量部超になると、得られるカバーの耐久性が低下する場合がある。
【0086】
本発明のゴルフボールのカバーを成形する方法としては、例えば、カバー用組成物から中空殻状のシェルを成形し、コアを複数のシェルで被覆して圧縮成形する圧縮成形法(好ましくは、カバー用組成物から中空殻状のハーフシェルを成形し、コアを2枚のハーフシェルで被覆して圧縮成形する方法)、あるいは、カバー用組成物をコア上に直接射出成形する射出成形法を挙げることができる。
【0087】
カバー用組成物を射出成形してカバーを成形する場合、あらかじめ押出して得られたペレット状のカバー用組成物を用いて射出成形しても良いし、あるいは、基材樹脂成分や顔料などのカバー用材料をドライブレンドして直接射出成形してもよい。カバー成形用上下金型としては、半球状キャビティを有し、ピンプル付きで、ピンプルの一部が進退可能なホールドピンを兼ねているものを使用することが好ましい。射出成形によるカバーの成形は、上記ホールドピンを突き出し、コアを投入してホールドさせた後、カバー用組成物を注入して、冷却することによりカバーを成形することができる。具体的には、9〜15MPaの圧力で型締めした金型内に、200〜250℃に加熱したカバー用組成物を0.5〜5秒で注入し、10〜60秒間冷却して型開きすることにより行うことが好ましい。
【0088】
カバーを成形する際には、通常、表面にディンプルと呼ばれるくぼみが形成される。カバーに形成されるディンプルの総数は、200〜500個が好ましい。200個未満では、ディンプルの効果が得られにくい。また、500個を超えると、個々のディンプルのサイズが小さくなり、ディンプルの効果が得られにくい。形成されるディンプルの形状(平面視形状)は、特に限定されるものではなく、円形;略三角形、略四角形、略五角形、略六角形などの多角形;その他不定形状;を単独で使用してもよいし、2種以上を組合せて使用してもよい。
【0089】
カバーの厚みは、2.0mm以下が好ましく、1.6mm以下がより好ましく、1.2mm以下が更に好ましく、1.0mm以下が特に好ましい。2.0mm以下であれば、得られるゴルフボールの反発性や打球感がより良好となる。前記カバーの厚みは、0.1mm以上が好ましく、0.2mm以上がより好ましく、0.3mm以上が更に好ましい。0.1mm未満では、カバーの成形が困難になるおそれがあり、また、カバーの耐久性や耐摩耗性が低下する場合もある。
【0090】
カバーが成形されたゴルフボール本体は、金型から取り出し、必要に応じて、バリ取り、洗浄、サンドブラストなどの表面処理を行うことが好ましい。また、所望により、塗膜やマークを形成することもできる。塗膜の膜厚は、特に限定されないが、5μm以上が好ましく、7μm以上がより好ましい。該膜厚は、25μm以下が好ましく、18μm以下がより好ましい。5μm未満になると継続的な使用により塗膜が摩耗消失しやすくなり、25μmを超えるとディンプルの効果が低下してゴルフボールの飛行性能が低下する傾向がある。
【0091】
本発明のゴルフボールは、初期荷重98Nを負荷した状態から終荷重1275Nを負荷したときの圧縮変形量(圧縮方向に縮む量)が、2.0mm以上であることが好ましく、2.2mm以上がより好ましい。該圧縮変形量は、4.0mm以下であることが好ましく、3.5mm以下がより好ましい。2.0mm以上のゴルフボールは、硬くなり過ぎず、打球感が良い。一方、4.0mm以下にすることにより、反発性が高くなる。
【0092】
以上、本発明のゴルフボール用樹脂組成物をコアに用いる態様について説明したが、本発明のゴルフボール用樹脂組成物は、センター、中間層、あるいは、カバーにも用いることもできる。センターが本発明のゴルフボール用樹脂組成物から形成される場合、中間層を形成する材料としては、例えば、カバー材料として例示した樹脂成分を用いることができる。
【実施例】
【0093】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0094】
[評価方法]
(1)スラブ硬度(ショアD硬度)
ゴルフボール用樹脂組成物を用いて、熱プレス成形により、厚み約2mmのシートを作製し、23℃で2週間保存した。このシートを、測定基板などの影響が出ないように、3枚以上重ねた状態で、ASTM−D2240に規定するスプリング式硬度計ショアD型を備えた高分子計器社製自動ゴム硬度計P1型を用いて測定した。
【0095】
(2)メルトフローレイト(MFR)(g/10min)
MFRは、フローテスター(島津製作所社製、島津フローテスターCFT−100C)を用いて、JIS K7210に準じて測定した。なお、測定は、測定温度190℃、荷重2.16kgの条件で行った。
【0096】
(3)反発弾性(%)
ゴルフボール用樹脂組成物を用いて、熱プレス成形にて厚み約2mmのシートを作製し、当該シートから直径28mmの円形状に打抜いたものを6枚重ねることにより、厚さ約12mm、直径28mmの円柱状試験片を作製した。この試験片についてリュプケ式反発弾性試験(試験温湿度23℃、50RH%)を行った。なお、試験片の作製及び試験方法は、JIS K6255に準じて行った。
【0097】
(4)圧縮変形量
球形体に初期荷重98Nを負荷した状態から終荷重1275Nを負荷したときまでの圧縮方向の変形量(圧縮方向に球形体が縮む量)を測定した。各球形体の圧縮変形は、表1及び2では球形体No.14の圧縮変形量との比、表3では球形体No.42の圧縮変形量との比、表4では球形体No.46の圧縮変形量との比として示した。
【0098】
(5)反発係数
各球形体に198.4gの金属製円筒物を40m/秒の速度で衝突させ、衝突前後の円筒物及びゴルフボールの速度を測定し、それぞれの速度及び重量から各ゴルフボールの反発係数を算出した。測定は、各球形体について12個ずつ行って、その平均値を各球形体の反発係数とした。
【0099】
(6)打球感
アマチュアゴルファー(上級者)10人により、ドライバーを用いた実打テストを行って、各人の打撃時のフィーリングを下記基準で評価させた。10人の評価のうち、最も多い評価をそのゴルフボールの打球感とした。
評価基準
優:衝撃が少なくてフィーリングが良い。
良:普通。
不良:衝撃が大きくてフィーリングが悪い。
【0100】
(7)固体高分解能炭素核磁気共鳴法(NMR法)によって観測される13C核のスピン−格子緩和時間(T1)の測定方法
装置:Bruker Avance 400
測定方法:Torchia法によるT1緩和時間測定
測定周波数:100.6256207MHz
測定温度:室温
基準物質:アダマンタン
マジック角回転の回転数:5000Hz
パルス幅:4.80μsec
コンタクトタイム:2000μsec
パルスの間隔:1μsec,100msec、500msec、1sec、2sec、3sec、4sec、6sec、8sec、10sec、12sec、15sec、20sec、40sec、80sec、120sec
磁場強度:9.4T
【0101】
(8)貯蔵弾性率E’(Pa)及び損失弾性率E”(Pa)の測定
ゴルフボール用樹脂組成物の貯蔵弾性率E’(Pa)及び損失弾性率E”(Pa)を以下の条件で測定した。
装置:ユービーエム社製動的粘弾性測定装置Rheogel−E4000
測定サンプル:ゴルフボール用樹脂組成物から、プレス成形により厚み2mmのシートを作製し、このシートから、幅4mm、クランプ間距離20mmになるように試料片を切り出した。
測定モード:引張
測定温度:12℃
加振周波数:10Hz
測定ひずみ:0.05%
【0102】
[球形体(コア)の作製]
表1〜4に示すように、配合材料をドライブレンドし、二軸混練型押出機によりミキシングして、ストランド状に冷水中に押し出した。押出されたストランドをペレタイザーにより切断してペレット状のゴルフボール用樹脂組成物を調製した。押出条件は、スクリュー径45mm、スクリュー回転数200rpm、スクリューL/D=35であり、配合物は、押出機のダイの位置で160〜230℃に加熱された。得られたペレット状のゴルフボール用樹脂組成物を220℃にて射出成形し、直径40mmの球形体(コア)を得た。
【0103】
【表1】

【0104】
【表2】

【0105】
【表3】

【0106】
【表4】

【0107】
表1〜4で使用した原料は以下の通りである。
ニュクレルAN4319:三井・デュポンポリケミカル社製、エチレン・メタクリル酸・アクリル酸ブチル共重合体(メルトフローレイト(190℃×2.16kg):55g/10min、曲げ剛性率:21MPa、メタクリル酸含量8質量%)
ニュクレルN1560:三井・デュポンポリケミカル社製、エチレン・メタクリル酸共重合体(メルトフローレイト(190℃×2.16kg):60g/10min、曲げ剛性率:83MPa、メタクリル酸含量15質量%)
ニュクレルN2050H:三井・デュポンポリケミカル社製、エチレン・メタクリル酸共重合体(メルトフローレイト(190℃×2.16kg):500g/10min、曲げ剛性率:82MPa、メタクリル酸含量20質量%)
水酸化マグネシウム:和光純薬工業社製
オレイルベタイン:ルーブリゾール社製「Chembetaine OL」の精製品(水分と塩分を除去)
ラウリルベタイン:日油社製「ニッサンアノン BL」の精製品(水分と塩分を除去)
ステアリルベタイン:花王社製「アンヒトール86B」の精製品(水分と塩分を除去)
オレイン酸:東京化成工業社製
ステアリン酸:日油社製「粉末ステアリン酸つばき」
【0108】
表1〜2の結果から、三元共重合体を用いた球形体No.14〜17及びこれにオレイン酸又はステアリン酸を添加した球形体No.18〜23に比べて、オレイルベタイン、ラウリルベタイン又はステアリルベタインを添加した球形体No.1〜13は、材料を柔軟化しつつ、反発性が高められた。従って、これらの両性界面活性剤を添加することで、打球感及び反発性の両性能に優れたゴルフボールを提供できることが明らかとなった。
【0109】
表3〜4の結果から、各種二元共重合体を用いた球形体No.42〜49に比べて、オレイルベタイン又はステアリルベタインを添加した球形体No.24〜41は、材料を柔軟化しつつ、反発性が高められた。従って、これらの両性界面活性剤を添加することで、打球感及び反発性の両性能に優れたゴルフボールを提供できることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明によれば、反発性及び柔軟性に優れたゴルフボール用樹脂組成物が得られ、該樹脂組成物を用いることで、反発性及び打球感に優れたゴルフボールを提供できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)(a−1)オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸との二元共重合体、(a−2)オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸との二元共重合体の金属イオン中和物、(a−3)オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体、及び、(a−4)オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体の金属イオン中和物からなる群より選択される少なくとも1種と、
(B)分子中に、炭化水素鎖、カチオン性部位及びアニオン性部位を有する化合物とを含有するゴルフボール用樹脂組成物。
【請求項2】
前記化合物が両性界面活性剤である請求項1記載のゴルフボール用樹脂組成物。
【請求項3】
前記両性界面活性剤は、ベタイン型両性界面活性剤、アミドアミノ酸型両性界面活性剤、アルキルアミノ脂肪酸塩、アルキルアミンオキシド、β−アラニン型両性界面活性剤、グリシン型両性界面活性剤、スルホベタイン型両性界面活性剤及びホスホベタイン型両性界面活性剤からなる群より選択される少なくとも1種である請求項2記載のゴルフボール用樹脂組成物。
【請求項4】
樹脂成分100質量部に対して、前記化合物を1〜200質量部含有する請求項1〜3のいずれかに記載のゴルフボール用樹脂組成物。
【請求項5】
樹脂成分100質量部に対して、(C)塩基性無機金属化合物を100質量部以下含有する請求項1〜4のいずれかに記載のゴルフボール用樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のゴルフボール用樹脂組成物から形成された構成部材を有するゴルフボール。
【請求項7】
少なくとも一層以上のコアと前記コアを被覆するカバーとを有するゴルフボールであって、前記コアの少なくとも一層が請求項1〜5のいずれかに記載のゴルフボール用樹脂組成物から形成されているゴルフボール。
【請求項8】
ゴルフボール本体が請求項1〜5のいずれかに記載のゴルフボール用樹脂組成物から形成されているワンピースゴルフボール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−78563(P2013−78563A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−197230(P2012−197230)
【出願日】平成24年9月7日(2012.9.7)
【出願人】(504017809)ダンロップスポーツ株式会社 (701)
【Fターム(参考)】