説明

ゴルフボール

【課題】ドライバーショットの飛距離を維持しつつ、コントロール性と打球感が改善されたゴルフボールを提供する。
【解決手段】コア7と、コア7の周りに配置された中間層8と、中間層8のまわりに配置されたカバー12とを有するゴルフボール2であって、コア7は、センター4とセンター4の周りに配置された包囲層6とを有しており、かつ、特定の硬度分布を有し、中間層8は、樹脂成分として、(A)変性ポリエステルエラストマーと(B)二元系アイオノマー樹脂とを含有し、曲げ弾性率が150MPa〜450MPa、−20℃〜0℃での損失係数(tanδ)の最大値が0.08以下、反発弾性率が55%以上、および、スラブ硬度がJIS−C硬度で60〜90である中間層用組成物から形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフボールに関するものであり、より詳細には、センターと包囲層と中間層とカバーとを有するマルチピースゴルフボールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
センターとカバーと、前記センターとカバーとの間に位置する少なくとも一層の中間層を有するゴルフボールが知られている。中間層は、ゴルフボールの構成に応じて、内層カバー層、外層コアなどと呼ばれている。ゴルフボールの特性を改善するために、ゴルフボールの構造、あるいは、中間層を構成する材料などについて検討がなされている。
【0003】
例えば、特許文献1には、(イ)球芯と、(ロ)17〜25重量%のα,β−不飽和カルボン酸の共重合体を含む高酸アイオノマー樹脂を含んでなり、そして15,000〜70,000psiのモジュラスを持つ、前記球芯上に成形された内層カバー層と、(ハ)アイオノマー樹脂と非アイオノマーの熱可塑性エラストマーとから成る群から選んだポリマー材料を含んでなり、そして1,000〜10,000psiのモジュラスを持つ、前記内側カバー層上に成形された外側カバー層とを含んでなるゴルフボールが開示されている。
【0004】
特許文献2には、コアと、内側カバー層と、ディンプル付き表面を持つ外側カバー層とを備え、比較的大きい慣性モーメントを持つ多層ゴルフボールにおいて、前記コアは1.28ないし1.57inの直径と、18ないし38.7gの重量とを持ち、前記内側カバー層は0.01ないし0.200inの厚さと、前記コアを含めて32.2ないし44.5gの重量とを持ち、前記外側カバー層は0.01ないし0.110inの厚さと、前記コア及び内側カバー層を含めて45.0ないし45.93gの重量とを持つようにした多層ゴルフボールが開示されている。
【0005】
特許文献3には、センターコアと、中間層と、カバーとからなるスリーピースソリッドゴルフボールにおいて、センターコアがポリブタジエンを主材とするゴム組成物からなり、直径26mm以上、密度1.4未満、JIS−C硬度80以下であり、中間層がポリエステル系熱可塑性エラストマーを主材として形成され、厚さ1mm以上、比重1.2未満、JIS−C硬度80未満であり、カバーが厚さ1〜3mm、JIS−C硬度85以上であることを特徴とするスリーピースソリッドゴルフボールが開示されている。
【0006】
特許文献4には、コアと、コアを被覆する中間層と、この中間層を被覆するカバーとを具備してなるゴルフボールにおいて、上記中間層が下記の成分(A)及び(B)の加熱混合物を主材としてなることを特徴とするゴルフボールが開示されている。
(A)ショアD硬度が25〜50であり、粘弾性測定における−10℃〜20℃のtanδが0.1以下であり、かつガラス転移温度(Tg)が−20℃以下であるポリエーテルエステル型熱可塑性エラストマー。
(B)JIS−A硬度が80以下であるオレフィン系エラストマー若しくはその変性物又はスチレン系共役ジエンブロック共重合体若しくはその水素添加物。
【0007】
特許文献5には、内層コアに1層又は2層以上の外層コアが被覆されてなる複数層構成のソリッドコアをカバーで被覆したマルチピースソリッドゴルフボールにおいて、上記外層コアが、ショアーD硬度30〜50で、示差熱分析(DSC)によるガラス転移温度が−25℃以下のポリエーテルエステル型熱可塑性エラストマー100〜50%と、曲げ弾性率が200〜400MPaのエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体のアイオノマー0〜50%からなる混合物を主体とする材料で形成され、カバーが曲げ弾性率が200〜450MPaでショアーD硬度が55〜68のエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体のアイオノマーで形成されたことを特徴とするマルチピースソリッドゴルフボールが開示されている。
【0008】
特許文献6には、コアと、該コアの表面を覆って形成された中間層と、該中間層の表面を被覆するカバーとからなるゴルフボールにおいて、上記中間層を形成する樹脂成分が結晶性ポリエチレンブロックを有する熱可塑性エラストマー10〜60重量部と190℃におけるメルトインデックスが3g/10min以上のアイオノマー樹脂90〜40重量部との混合物を主成分としてなることを特徴とするゴルフボールが開示されている。
【0009】
特許文献7には、コアと、中間層と、カバーとを具備してなる少なくとも3層の多層構造ゴルフボールにおいて、上記中間層が、ポリエステル系熱可塑性エラストマーと金属化合物としてマグネシウムの酸化物又は水酸化物とを、上記ポリエステル系熱可塑性エラストマー100質量部に対して上記金属化合物0.1〜10質量部を使用して、加熱混合して得られる生成物を配合してなる材料にて形成されたことを特徴とするゴルフボールが開示されている。
【0010】
特許文献8には、コアと、コアを被覆する1層又は複数層のカバーとを備えたゴルフボールにおいて、該カバーを構成する少なくとも1層が、(A)アイオノマー樹脂組成物と、(B)熱可塑性ポリエステルエラストマー、熱可塑性ブロック共重合体、又は熱可塑性ポリウレタンのいずれかである熱可塑性エラストマーと、(C)末端にアイオノマー樹脂と反応することが可能な官能基を有する熱可塑性ブロック共重合体とを、(A)/[(B)+(C)]=50/50〜98/2(質量比)、かつ(B)/(C)=9/1〜1/1(質量比)の割合で含む混合物を主成分として形成されることを特徴とするゴルフボールが開示されている。
【0011】
特許文献9には、コアが内芯球と該内芯球を被覆する包囲層からなり、このコアを被覆するカバーが外層と内層からなるマルチピースソリッドゴルフボールにおいて、上記カバーの外層硬度がショアDで40〜60であり、上記カバーの内層硬度がショアDで55〜70、上記包囲層の表面硬度がショアDで内芯球の表面硬度より高く、上記内芯球の硬度が100kg荷重負荷時の変形量で3.0〜8.0mmであり、この内芯球硬度Aとボール硬度Bとの比が100kg荷重負荷時の変形量で1.1≦A/B≦3.5であることを特徴とするマルチピースソリッドゴルフボールが開示されている。
【0012】
特許文献10には、コアと、該コアを被覆する包囲層と、該包囲層を被覆する中間層と、該中間層を被覆するカバーとを具備してなる4層以上の多層構造に形成されたソリッドゴルフボールにおいて、上記コアが熱可塑性樹脂又は熱可塑性エラストマーを主材としてなると共に、直径3〜18mm、ショアD硬度15〜50であり、上記包囲層が熱可塑性樹脂又は熱可塑性エラストマーを主材としてなり、上記包囲層と中間層との境界面におけるショアD硬度がほぼ等しいことを特徴とするソリッドゴルフボールが開示されている。
【0013】
特許文献11には、コアとその周りに設けられたカバーとを含み、該コアが中心と、少なくとも1層の、該中心に隣接する外部コア層とを含み、かつ該カバーが、少なくとも1層の内部カバー層および外部カバー層を含み、(a) 該中心が、約0.953 cm〜約3.56 cm (約0.375 in〜約1.4 in)なる範囲の外径および100 Kgの負荷の下で約4.5 mmを越える撓みを有し、(b) 該外部コア層が、約3.56 cm〜約4.11 cm (約1.4 in〜約1.62 in)なる範囲の外径を有し、(c) 該内部カバー層が、約4.01 cm (約1.58 in)を越える外径および約72ショアD未満の材料硬さを有し、および(d) 該外部カバー層が、約50ショアDを越える硬さを持つ、ことを特徴とするゴルフボールが開示されている。
【0014】
特許文献12には、センター(1)と該センター(1)上に形成した中間層(2)とから成るコア(4)、および該コア(4)を被覆するカバー(3)から成るマルチピースソリッドゴルフボールにおいて、該センター(1)が、直径10〜20mmおよびJIS‐A硬度による中心硬度30〜90を有し、該中間層(2)がショアD硬度による表面硬度50〜70を有し、該カバー(3)が、ポリウレタン系熱可塑性エラストマーを主成分とし、ショアD硬度40〜60および厚さ0.3〜1.5mmを有することを特徴とするマルチピースソリッドゴルフボールが開示されている。
【0015】
特許文献13には、センター(1)、該センター(1)上に形成した中間層(2)および該中間層(2)上に形成した外層(3)から成るコア(5)と、該コア(5)を被覆するカバー(4)とから成るマルチピースソリッドゴルフボールにおいて、該センター(1)が、直径10〜20mmおよびJIS‐A硬度による中心硬度30〜85を有し、該中間層(2)がショアD硬度による表面硬度30〜55を有し、該外層(3)がショアD硬度による硬度65〜85を有し、かつ熱可塑性樹脂を主成分として含有し、該カバー(4)が、ショアD硬度35〜55および厚さ0.3〜1.5mmを有することを特徴とするマルチピースソリッドゴルフボールが開示されている。
【0016】
特許文献14には、ラジカル発生剤の存在下、ポリエステル系エラストマーに不飽和カルボン酸又はその誘導体を反応させて得られる変性ポリエステル系エラストマーと、アイオノマー樹脂とからなることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物が開示されている。かかる熱可塑性樹脂組成物の用途として、ゴルフボールが例示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開平6−343718号公報
【特許文献2】特開平10−201880号公報
【特許文献3】特開平7−24084号公報
【特許文献4】特開2000−84117号公報
【特許文献5】特開平6−142228号公報
【特許文献6】特開平10−80505号公報
【特許文献7】特開2000−176050号公報
【特許文献8】特開2005−13487号公報
【特許文献9】特開平10−328326号子法
【特許文献10】特開2001−17575号公報
【特許文献11】特開2002−272880号公報
【特許文献12】特開2003−205952号公報
【特許文献13】特開2004−130072号公報
【特許文献14】特開2003−183484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
2010年から、プロゴルフの世界で、アイアン、ウエッジなどのロフト角が25°以上のクラブの溝について規制が始まった。この溝規制は、アマチュアにも徐々に適用される。溝規制により、ウエッジやショートアイアンなどでのアプローチショットのスピン量が減るため、グリーン上でゴルフボールが止まりにくくなる。このような背景の下、ゴルフボールのスピン量を一層高めて、グリーン上で止まりやすいゴルフボールが要望されている。すなわち、アプローチショットでは、スピン量が高くコントロール性の高いゴルフボールが要望されている。アプローチショットのスピン量を高める方法としては、カバー材料として軟質の材料を採用することが知られている。しかしながら、カバー材料として軟質の材料を採用する方法では、ドライバーショットのスピン量も増加して、ドライバーショットの飛距離が低下するという問題がある。そのため、アプローチショットのコントロール性とドライバーショットの飛距離とを両立することは困難とされている。
【0019】
アプローチショットのコントロール性とドライバーショットの飛距離とを両立する一つの方法として、軟質のカバー材料を採用しつつ、外剛内柔構造のコアを用いる方法がある。外剛内柔構造のコアを用いると、ドライバーショットのスピン量が低下し、ドライバーショットの飛距離が大きくなる。しかし、外剛内柔構造であり、かつ、硬度分布が過大であるコアを有するゴルフボールがドライバーで打撃されると、このコアにおいてエネルギーのロスが大きい。エネルギーのロスは、反発性能を損なう。低反発性のゴルフボールは、ドライバーショットの飛距離が短くなる。外剛内柔構造であり、かつ、硬度分布が過小であるコアがショートアイアンで打撃されると、スピン量が低い。スピン量が低いゴルフボールは、コントロール性が低くなる。
【0020】
コントロール性とドライバーショットの飛距離を両立する別の方法として、軟質のカバー材料を採用しつつ、高反発性の中間層を採用することが検討されている。従来のポリスチレン系エラストマー/アイオノマー樹脂ブレンドを用いた中間層用組成物よりもさらに高反発の中間層用組成物が求められている。高中和度アイオノマー樹脂を含有する中間層用組成物は、反発性は高いが、成形性が低いという問題点がある。また、高反発性の材料は、硬度が高くなる傾向がある。中間層の硬度が高くなると、打球感が低下するという問題点がある。打球感を良好にするためには、中間層の硬度をある程度低くする必要がある。
【0021】
反発性と打球感とを両立するために、中間層にポリエステルエラストマーを採用することが検討されている。しかし、ポリエステルエラストマーを単独で使用する中間層用組成物は、ショアD硬度が40〜60の範囲で高反発化ができない。高反発にするためにアイオノマー樹脂をブレンドすると、耐久性が低下するという問題がある。
【0022】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、ドライバーショットの飛距離を維持しつつ、コントロール性と打球感が改善されたゴルフボールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
前記課題を解決することのできた本発明のゴルフボールは、コアと、前記コアの周りに配置された中間層と、前記中間層の周りに配置されたカバーとを有するゴルフボールであって、
前記コアは、センターと前記センターの周りに配置された包囲層とを有しており、
前記コアの表面のJIS−C硬度Heとコアの中心のJIS−C硬度Hoとの差(He−Ho)が15以上30以下であり、
カバーのJIS−C硬度Hcが前記コアの中心のJIS−C硬度Hoよりも小さく、
前記コアの中心からの距離が1mm以上15mm以下であるゾーンに含まれる全ての点Pにおいて、下記数式が成立し、
−5.0≦H2−H1≦5.0
(上記数式において、H1は点Pよりも半径方向内側に存在しかつ点Pからの距離が1mmである点P1のJIS−C硬度を表わし、H2は点Pよりも半径方向外側に存在しかつ点Pからの距離が1mmである点P2のJIS−C硬度を表わす)、
前記中間層は、樹脂成分として、
(A)ショアA硬度が95以下の変性ポリエステルエラストマーを30質量%〜70質量%;
(B)ショアD硬度が65以上、曲げ弾性率が300MPa以上、メルトフローレイト(190℃、2.16kg)が1.0g/10min以上の二元系アイオノマー樹脂を70質量%〜30質量%;及び、
(C)(A)成分及び(B)成分以外の熱可塑性樹脂を0質量%〜50質量%含有し(ただし、(A)成分、(B)成分、および、(C)成分の合計含有率が100質量%になるようにする)、曲げ弾性率が150MPa〜450MPa、−20℃〜0℃での損失係数(tanδ)の最大値が0.08以下、反発弾性率が55%以上、および、スラブ硬度がJIS−C硬度で60〜90である中間層用組成物から形成されていることを特徴とする。
【0024】
本発明のゴルフボールに用いられるコアは、硬度分布が適正である。硬度分布が適正なコアは、ゴルフボールがドライバーで打撃されたときに、エネルギーロスが少ない。本発明のゴルフボールは、ドライバーで打撃されたときに大きな飛距離が得られる。硬度分布が適正なコアは、ゴルフボールがショートアイアンで打撃されたときに、スピン量が高くなる。本発明のゴルフボールは、ショートアイアンで打撃されたときのコントロール性に優れる。
【0025】
本発明のゴルフボールの中間層は、(A)変性ポリエステルエラストマーと(B)二元系アイオノマー樹脂とを含有する中間層用組成物により形成されている。前記(A)変性ポリエステルエラストマーは、(B)二元系アイオノマー樹脂との相溶性が高く、得られる中間層用組成物を軟質化する作用を有する。この中間層用組成物は、反発性が高く、ソフトな打球感と反発性とを両立することができる。
【0026】
前記(A)変性ポリエステルエラストマーは、(a−1)ラジカル発生剤存在下、(a−2)ポリエステルエラストマー100質量%に対して、0.01質量%〜30質量%の(a−3)不飽和カルボン酸又はその誘導体を反応させて得られるものであり、前記(a−2)ポリエステルエラストマー中のポリアルキレングリコール成分の含有率は、5質量%〜90質量%であることが好ましい。
【0027】
前記(B)二元系アイオノマー樹脂は、得られる中間層の反発性の向上に寄与する。前記(B)二元系アイオノマー樹脂の酸含有率は、15質量%以上であることが好ましい。
【0028】
前記(C)成分は、得られる中間層を軟質化する作用を有する。前記(C)成分としては、ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアセタール、変性ポリフェニレンエーテル、ポリイミド、ポリサルホン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアミノビスマレイミド、ポリビスアミドトリアゾール、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−EPDM−スチレン共重合体よりなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましい。
【0029】
本発明のゴルフボールのカバーのJIS−C硬度Hcは、65以下が好ましい。前記カバーの厚みTcは、0.8mm以下が好ましい。前記カバーは、樹脂成分として、例えば、熱可塑性ポリウレタンを含有する。
【0030】
前記中間層の厚みは、2.0mm以下が好ましい。また、前記センターの直径は、10mm以上20mm以下が好ましく、前記包囲層の厚みは、8mm以上18mm以下が好ましく、前記カバーの厚みが、0.5mm以下が好ましい。
【0031】
前記カバーのJIS−C硬度Hcとコアの中心のJIS−C硬度Hoとの硬度差が、15以上40以下が好ましい。
【0032】
前記センターは、有機硫黄化合物を含有しないゴム組成物から形成されることが好ましく、前記包囲層は、有機硫黄化合物を含有するゴム組成物から形成されることが好ましい。
【0033】
本発明のゴルフボールは、中間層とカバーとの間に位置する接着層をさらに有することが好ましい。前記接着層は、例えば、主剤としてビスフェノールA型エポキシ樹脂を、硬化剤としてポリアミン化合物を含有する接着層用組成物を硬化させてなる。前記接着層用組成物のアセトンに対するゲル分率は、40質量%以上80質量%以下が好ましい。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、ドライバーショットの飛距離を維持しつつ、打球感とコントロール性とが改善されたゴルフボールが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の一実施形態に係るゴルフボールが示された模式的断面図である。
【図2】コアの硬度分布を示すグラフである。
【図3】コアの硬度分布を示すグラフである。
【図4】コアの硬度分布を示すグラフである。
【図5】コアの硬度分布を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明のゴルフボールは、コアと、前記コアの周りに配置された中間層と、前記中間層の周りに配置されたカバーとを有するゴルフボールであって、
前記コアは、センターと前記センターの周りに配置された包囲層とを有しており、
前記コアの表面のJIS−C硬度Heとコアの中心のJIS−C硬度Hoとの差(He−Ho)が15以上30以下であり、
カバーのJIS−C硬度Hcがコアの中心のJIS−C硬度Hoよりも小さく、
前記コアの中心からの距離が1mm以上15mm以下であるゾーンに含まれる全ての点Pにおいて、下記数式が成立し、
−5.0≦H2−H1≦5.0
(上記数式において、H1は点Pよりも半径方向内側に存在しかつ点Pからの距離が1mmである点P1のJIS−C硬度を表わし、H2は点Pよりも半径方向外側に存在しかつ点Pからの距離が1mmである点P2のJIS−C硬度を表わす)、
前記中間層は、樹脂成分として、
(A)ショアA硬度が95以下の変性ポリエステルエラストマーを30質量%〜70質量%;
(B)ショアD硬度が65以上、曲げ弾性率が300MPa以上、メルトフローレイト(190℃、2.16kg)が1.0g/10min以上の二元系アイオノマー樹脂を70質量%〜30質量%;及び、
(C)(A)成分及び(B)成分以外の熱可塑性樹脂を0質量%〜50質量%含有し(ただし、(A)成分、(B)成分、および、(C)成分の合計含有率が100質量%になるようにする)、曲げ弾性率が150MPa〜450MPa、−20℃〜0℃での損失係数(tanδ)の最大値が0.08以下、反発弾性率が55%以上、および、スラブ硬度がJIS−C硬度で60〜90である中間層用組成物から形成されていることを特徴とする。
【0037】
(1)ゴルフボールの構造
本発明のゴルフボールは、コアと、前記コアの周りに配置された中間層と、前記中間層の周りに配置されたカバーとを有するゴルフボールであって、
前記コアは、センターと前記センターの周りに配置された包囲層とを有しており、
コアの表面のJIS−C硬度Heとコアの中心のJIS−C硬度Hoとの差(He−Ho)が15以上30以下であり、
カバーのJIS−C硬度Hcがコアの中心のJIS−C硬度Hoよりも小さく、
コア中心からの距離が1mm以上15mm以下であるゾーンに含まれる全ての点Pにおいて、下記数式が成立する。
−5.0≦H2−H1≦5.0
(上記数式において、H1は点Pよりも半径方向内側に存在しかつ点Pからの距離が1mmである点P1のJIS−C硬度を表わし、H2は点Pよりも半径方向外側に存在しかつ点Pからの距離が1mmである点P2のJIS−C硬度を表わす)
【0038】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0039】
図1は、本発明の一実施形態に係るゴルフボール2が示された一部切り欠き断面図である。本発明のゴルフボール2は、コア7と、前記コア7の周りに配置された中間層8と、前記中間層の周りに配置されたカバー12とを有する。前記コア7は、センター4と前記センターの周りに配置された包囲層6とを有している。中間層8とカバー12との間には、中間層8とカバー12との密着性を向上させるための接着層10が設けられていても良い。カバー12の表面には、多数のディンプル14が形成されている。ゴルフボール2の表面のうちディンプル14以外の部分は、ランド16である。このゴルフボール2は、カバーの外側にペイント層及びマーク層を備えているが、これらの層の図示は省略されている。
【0040】
センター(またはコア)の中心硬度Hoは、JIS−C硬度で、40以上が好ましく、45以上がより好ましく、50以上がさらに好ましい。中心硬度Hoが、JIS−C硬度で40以上であれば、反発性が向上する。また、ドライバーショットのスピン抑制の観点から、中心硬度Hoは80以下が好ましく、75以下がより好ましく、70以下がさらに好ましい。センターが切断されて得られる半球の切断面中心点に、JIS−C型硬度計が押しつけられることにより、中心硬度Hoが測定される。測定には、JIS−C硬度計が装着された自動ゴム硬度測定機(高分子計器社の商品名「P1」)が用いられる。
【0041】
前記センターの硬度は、中心点から表面に向けて徐々に大きくなる。センターの表面硬度は、中心硬度Hoよりも大きい。
【0042】
前記センターの直径は10mm以上が好ましく、12mm以上がより好ましく、13mm以上がさらに好ましい。直径が10mm以上のセンターを使用することにより、打球感が良くなる。また、十分な厚みを有する包囲層が形成され得るという観点から、センターの直径は、20mm以下が好ましく、18mm以下がより好ましく、17mm以下がさらに好ましい。
【0043】
本発明のゴルフボールの包囲層は、最内部から表面まで、硬度が徐々に大きくなることが好ましい。包囲層の表面(すなわちコアの表面)の硬度Heは、JIS−C硬度で、70以上が好ましく、75以上がより好ましい。包囲層の表面の硬度Heが70以上であれば、反発性が向上する。また、打球感の観点から、包囲層の表面硬度Heは、JIS−C硬度で、90以下が好ましく、88以下がより好ましく、87以下がさらに好ましい。コアの表面にJIS−C型硬度計が押し付けられることにより、硬度Heが測定される。測定には、JIS−C型硬度計が装着された自動ゴム硬度測定装置(高分子計器社の商品名「P1」)が用いられる。
【0044】
スピン抑制の観点から、包囲層の表面硬度Heと包囲層の最内部の硬度Hiとの差(He−Hi)は、10以上が好ましく、12以上がより好ましく、15以上がさらに好ましい。製造容易の観点および耐久性の観点から、硬度差(He−Hi)は、25以下が好ましい。
【0045】
前記硬度Hiは、コアが切断されて得られる半球において測定される。この半球の切断面にJIS−C型硬度計が押し付けられることにより、硬度Hiが測定される。硬度計は、第一の円と第二の円とに囲まれた領域に押し付けられる。第一の円は、センターと包囲層との境界である。第二の円は、第一の円と同心であってかつ第一の円の半径よりも1mm大きな半径を有する。測定には、JIS−C型硬度計が装着された自動ゴム硬度測定機(高分子計器社の商品名「P1」)が用いられる。
【0046】
前記包囲層の厚みは、8mm以上が好ましく、9mm以上がより好ましく、10mm以上がさらに好ましい。包囲層の厚みが8mm以上であれば、スピン抑制効果が大きくなる。
包囲層の厚みは、18mm以下が好ましく、16mm以下がより好ましく、15mm以下がさらに好ましい。包囲層の厚みが18mm以下であれば、直径の大きなセンターが形成される。直径の大きなセンターを用いることにより、スピン抑制効果が大きくなる。
【0047】
コアの表面硬度Heとコア(センター)の中心硬度Hoとの硬度差(He−Ho)は、15以上が好ましく、18以上がより好ましい。硬度差(He−Ho)が15以上であれば、スピン抑制効果が大きくなる。製造容易の観点およびコアの反発性の観点から、硬度差(He−Ho)は30以下が好ましく、25以下がより好ましい。コアの表面にJIS−C型硬度計が押しつけられることにより、コア表面硬度Heが測定される。測定には、JIS−C型硬度計が装着された自動ゴム硬度測定機(高分子計器社の商品名「P1」)が用いられる。
【0048】
本発明のゴルフボールは、コア中心からの距離が1mm以上15mm以下であるゾーンに含まれる全ての点Pにおいて、下記数式が成立する。
−5.0≦H2−H1≦5.0
上記数式において、H1は点P1のJIS−C硬度を表わす。点P1は、点Pよりも半径方向内側に存在する。点P1の点Pからの距離は、1mmである。H2は点P2のJIS−C硬度を表わす。点P2は、点Pよりも半径方向外側に存在する。点P2の点Pからの距離は、1mmである。コアが切断されて得られる半球の切断面に、JIS−C型硬度計が押しつけられることにより、硬度H1,H2が測定される。測定には、JIS−C硬度計が装着された自動ゴム硬度測定機(高分子計器社の商品名「P1」)が用いられる。好ましくは、コアの中心からの距離が1mm以上15mm以下であるゾーンに含まれる全ての点Pにおいて、下記数式が成立する。
0.0<H2−H1≦3.0
【0049】
中間層のJIS−C硬度Hmは、反発性能の観点から、60以上が好ましく、65以上がより好ましく、70以上がさらに好ましい。打球感の観点から、中間層のJIS−C硬度Hmは、90以下が好ましく、88以下がより好ましい。中間層のJIS−C硬度Hmは、自動ゴム硬度測定装置(高分子計器社の商品名「P1」)に取り付けられたJIS−C型のスプリング式硬度計によって測定される。測定には、熱プレスで成形された、厚みが約2mmであるスラブが用いられる。23℃の温度下に2週間保管されたスラブが、測定に用いられる。測定時には、3枚のスラブが重ね合わされる。中間層用組成物から形成されたスラブが、測定に用いられる。
【0050】
中間層の厚みは、0.5mm以上が好ましく、0.7mm以上がより好ましく、0.8mm以上がさらに好ましい。中間層の厚みが0.5mm以上であれば、打球感が良くなるからである。中間層の厚みは、2.0mm以下が好ましく、1.5mm以下がより好ましく、1.3mm以下がさらに好ましい。中間層の厚みが2.0mm以下であれば、反発性が良好になるからである。
【0051】
本発明のゴルフボールのカバーのJIS−C硬度Hcは、65以下が好ましい。軟質なカバーが採用されることにより、ショートアイアンでのショットにおける良好なコントロール性が達成され得る。コントロール性の観点から、JIS−C硬度Hcは、60以下がより好ましく、55以下がさらに好ましい。JIS−C硬度Hcが過小であると、ドライバーショットにおける飛行性能が不十分である。この観点から、硬度Hcは、20以上が好ましく、25以上がより好ましく、35以上がさらに好ましい。カバーの硬度Hcは、中間層の硬度と同様の方法で測定される。
【0052】
本発明のゴルフボールのカバーのJIS−C硬度Hcは、コアの中心のJIS−C硬度Hoよりも小さい。本発明のゴルフボールは、ショートアイアンでのコントロール性能に優れる。コントロール性能の観点から、コアの中心のJIS−C硬度HoとカバーのJIS−C硬度Hcとの差(Ho−Hc)は、10以上が好ましく、11以上がより好ましく、12以上がさらに好ましい。前記硬度差(Ho−Hc)は,40以下が好ましく、35以下がより好ましく、30以下がさらに好ましい。
【0053】
カバーの厚みTcは、0.8mm以下が好ましく、0.6mm以下がより好ましく、0.5mm以下がさらに好ましい。カバーの厚みTcが0.8mm以下であれば、ドライバーショットにおける飛行性能が良好になる。カバーの厚みTcは、0.10mm以上が好ましく、0.15mm以上がより好ましい。カバーの厚みTcが0.10mm以上であれば、ショートアイアンでのショットにおけるコントロール性が良好になる。
【0054】
本発明のゴルフボールは、中間層とカバーとの間に接着層を備えてもよい。接着層は、中間層とカバーと堅固に密着させる。接着層により、中間層からのカバーの剥離が抑制される。後述されるように、本発明のゴルフボールは、薄いカバーを有することが好ましい。薄いカバーを有するゴルフボールが、クラブフェースのエッジで打撃されると、シワが生じやすい。接着層により、シワが抑制される。
【0055】
接着層の厚みは、0.001mm以上が好ましく、0.002mm以上がより好ましい。接着層の厚みが0.001mm以上であれば、ゴルフボールの耐久性が向上する。接着層の厚みは、0.1mm以下が好ましく、0.05mm以下がより好ましい。接着層の厚みは、ゴルフボールの断面がマイクロスコープで観察されることで測定される。粗面処理により中間層の表面が凹凸を備える場合は、凸部の直上で厚みが測定される。測定は、ディンプルの真下を避けて行われる。
【0056】
中間層とカバーとの接着強度は、20N以上が好ましい。接着強度が20N以上であるゴルフボールは、耐久性に優れる。この観点から接着強度は22.0N以上がより好ましく、22.3N以上がさらに好ましい。
【0057】
接着強度の測定では、ゴルフボールから第一層、接着層および第二層からなる試験片が切り出される。この試験片のサイズは、「10mm×50mm」である。この試験片の先端近傍にて、第二層を第一層から剥離させる。第一層を第一チャックに固定し、第二層を第二チャックに固定する。第一チャックに対して第二チャックを相対的に移動させ、第二層を第二チャックに固定する。第一チャックに対して第二チャックを相対的に移動させ、第二層から第一層を剥離させる。この剥離のときの力を測定する。測定には、島津製作所の「オートグラフAG−IS」が用いられる。引張速度は、50mm/minである。
【0058】
本発明のゴルフボールの直径は、40mmから45mmである。米国ゴルフ協会(USGA)の規格が満たされるとの観点から、直径は42.67mm以上が好ましい。空気抵抗抑制の観点から、直径は44mm以下が好ましく、42.80mm以下がより好ましい。
【0059】
本発明のゴルフボールの圧縮変形量は、直径が40mm〜45mmの場合、2.3mm以上が好ましく、2.4mm以上がより好ましく、2.5mm以上がさらに好ましい。圧縮変形量が2.3mm以上であると、打球感の良いゴルフボールが得られる。また、圧縮変形量は3.5mm以下が好ましく、3.2mm以下がより好ましく、3.0mm以下がさらに好ましい。圧縮変形量が3.5mm以下であれば、反発性が向上する。
【0060】
圧縮変形量の測定では、球体(センター、コア又はゴルフボール)が金属製の剛板の上に置かれる。この球体に向かって金属製の円柱が徐々に降下する。この円柱の底面と剛板との間に挟まれた球体は、変形する。球体に98Nの初荷重がかかった状態から1275Nの終荷重がかかった状態までの円柱の移動距離が、圧縮変形量である。
【0061】
本発明のゴルフボールの表面に形成されるディンプルの総数は、200個以上500個以下が好ましい。ディンプルの総数が200個未満では、ディンプルの効果が得られにくい。また、ディンプルの総数が500個を超えると、個々のディンプルのサイズが小さくなり、ディンプルの効果が得られにくい。形成されるディンプルの形状(平面視形状)は、特に限定されるものではなく、円形;略三角形、略四角形、略五角形、略六角形などの多角形;その他不定形状;を単独で使用してもよいし、2種以上を組合せて使用してもよい。
【0062】
(2)中間層用組成物
本発明のゴルフボールの中間層は、(A)ショアA硬度が95以下の変性ポリエステルエラストマー;(B)ショアD硬度が65以上、曲げ弾性率が300MPa以上、メルトフローレイト(190℃、2.16kg)が1.0g/10min以上の二元系アイオノマー樹脂;および、必要に応じて、さらに(C)(A)成分及び(B)成分以外の熱可塑性樹脂を含有する中間層用組成物から形成される。
【0063】
まず、(A)ショアA硬度が95以下の変性ポリエステルエラストマーについて説明する。本発明で使用する(A)変性ポリエステルエラストマーは、(a−1)ラジカル発生剤の存在下、(a−2)ポリエステルエラストマーと(a−3)不飽和カルボン酸またはその誘導体とを反応させることにより得ることができる。この反応に際しては、ポリエステルエラストマーに不飽和カルボン酸やその誘導体が付加するグラフト反応が主として起こるものと考えられるが、他にもポリエステルエラストマーの末端に不飽和カルボン酸やその誘導体が付加する反応やエステル交換反応、分解反応等も起こるものと考えられる。また、(A)変性ポリエステルエラストマーは、グラフト結合している不飽和カルボン酸又はその誘導体の量が、0.03質量%〜20質量%であるのが好ましい。このグラフト量が0.06質量%〜4質量%、特に0.08質量%〜1.5質量%であれば更に好ましい。グラフト量が上記範囲であれば、(B)二元系アイオノマー樹脂への分散性が向上して、得られるゴルフボールの耐久性がより良好になる。
【0064】
(a−2)ポリエステルエラストマーとしては多くのものが知られているが、その典型的なものは、芳香族ポリエステル成分をハードセグメントとし、ポリアルキレングリコールや脂肪族ポリエステル成分をソフトセグメントとするものである。本発明では、芳香族ポリエステル成分をハードセグメントとし、ポリアルキレングリコール成分をソフトセグメントとするポリエステルポリエーテルブロック共重合体を用いるのが好ましい。ポリアルキレングリコール成分の含有率は、ブロック共重合体に対し、5質量%〜90質量%であるが、30質量%〜80質量%、特に55質量%〜80質量%であるのが好ましい。一般にポリアルキレングリコール成分の含有率が高いポリマーは、縮重合による製造が困難となる傾向にある。また、これを原料とする変性ポリエステルエラストマーとアイオノマー樹脂とからなる熱可塑性樹脂に、適度な硬度と高い反発弾性力を発現させるのが困難となる。逆にポリアルキレングリコール成分の含有率が少ないとエラストマー性が低下し、これを原料とする変性ポリエステルエラストマーと二元系アイオノマー樹脂とを含有する中間層用組成物に、適度な柔軟性や高反発弾性力を発現させるのが困難となる。また、(B)二元系アイオノマー樹脂への分散性が低下する。
【0065】
ポリエステルポリエーテルブロック共重合体は、通常、ハードセグメントを与える成分として炭素原子数2〜12の脂肪族又は脂環族ジオールと、芳香族もしくは脂肪族ジカルボン酸またはそのアルキルエステルを用い、ソフトセグメントを与える成分として重量平均分子量が400〜6,000のポリアルキレングリコールを用いて、常法により、エステル化又はエステル交換反応によりオリゴマーとし、次いでこれを重縮合させて製造することができる。炭素原子数2〜12の脂肪族又は脂環族ジオールとしては、ポリエステルエラストマーの原料として一般に用いられるものを用いればよい。例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等を用いることができる。中でも1,4−ブタンジオール、エチレングリコールが好ましく、特に1,4−ブタンジオールが好ましい。また、これらのジオールは所望ならば、2種以上を併用することもできる。
【0066】
芳香族ジカルボン酸としては、ポリエステルエラストマーの原料として一般的に用いられているものが使用でき、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等が挙げられ、中でもテレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸が好ましく、特にテレフタル酸が好ましい。また、これらの芳香族ジカルボン酸は2種以上を併用していても良い。芳香族ジカルボン酸のアルキルエステルとしては、これらの芳香族ジカルボン酸のジメチルエステルやジエチルエステル等が用いられ、好ましいものは、ジメチルテレフタレート及び2,6−ジメチルナフタレートである。脂肪族ジカルボン酸としては、通常はシクロヘキサンジカルボン酸が用いられ、そのアルキルエステルとしては、ジメチルエステルやジエチルエステル等が用いられる。また、所望ならば上記の成分以外に3官能のアルコールやトリカルボン酸又はそのエステルを少量共重合させることもできる。更に、アジピン酸等の脂肪族ジカルボン酸又はそのジアルキルエステルを共重合成分として用いることもできる。
【0067】
ポリアルキレングリコールとしては、通常は重量平均分子量が400〜6,000のものが使用されるが、500〜4,000、特に600〜3,000のものを用いるのが好ましい。一般的に重量平均分子量が小さいポリアルキレングリコールを用いると、生成するポリエステルエラストマーに、エラストマーとしての物性を発現させるのが困難となる。逆に、重量平均分子量が大きすぎるポリアルキレングリコールは、反応系内での相分離が起きやすく、生成するポリエステルエラストマーの物性が低下する傾向がある。ポリアルキレングリコールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリ(1,2及び1,3プロピレン)グリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコールなどが挙げられる。このようなポリエステルエラストマーの市販品としては、三菱化学株式会社製「プリマロイ」、東洋紡績株式会社製「ペルプレン」、東レ・デュポン株式会社製「ハイトレル」等がある。
【0068】
本発明で使用する(a−2)ポリエステルエラストマーとしては、ハードセグメントとしてポリブチレンテレフタレートを有し、ソフトセグメントとして、ポリテトラメチレングリコールを含有するものが好ましい。
【0069】
ポリエステルエラストマーの変性に使用する(a−3)不飽和カルボン酸としては、例えば、置換基としてアルキル基やハロゲン原子などを有していてもよいアクリル酸、マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸等の不飽和カルボン酸が挙げられ、その誘導体としては酸無水物やエステル等が挙げられる。また側鎖に不飽和結合を有する酸無水物も用いることができる。例えば、2−オクテン−1−イルコハク酸無水物、2−ドデセン−1−イルコハク酸無水物、2−オクタデセン−1−イルコハク酸無水物、マレイン酸無水物、2,3−ジメチルマレイン酸無水物、ブロモマレイン酸無水物、ジクロロマレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、1−ブテン−3,4−ジカルボン酸無水物、1−シクロペンテン−1,2−ジカルボン酸無水物、1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸無水物、3,4,5,6−テトラヒドロフタル酸無水物、exo−3,6−エポキシ−1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸無水物、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチル−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、endo−ビシクロ[2.2.2]オクト−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸無水物等の不飽和カルボン酸無水物、及び(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルへキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、グリシジルメタクリレート、マレイン酸ジメチル、マレイン酸(2−エチルへキシル)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート等の不飽和カルボン酸エステル等が挙げられ、中でも不飽和カルボン酸無水物、特にマレイン酸無水物が好適である。これらの不飽和結合を有する化合物は、変性すべきポリエステルエラストマーや、変性条件に応じて適宜選択すれば良く、所望ならば、二種以上を併用することもできる。
【0070】
(a−1)ラジカル発生剤としては、常用の種々のものを用いることができる。例えばt−ブチルヒドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、2,5−ジメチルへキサン−2,5−ジヒドロパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ターシャリーブチルオキシ)ヘキサン、3,5,5−トリメチルへキサノイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ジブチルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、過酸化カリウム、過酸化水素等の有機及び無機過酸化物、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス(イソブチルアミド)ジハライド、2,2′−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、アゾジ−t−ブタン等のアゾ化合物、及びジクミル等の炭素ラジカル発生剤等が挙げられる。これらのラジカル発生剤は、反応に用いるポリエステルエラストマーや、不飽和カルボン酸又はその誘導体の種類や、変性条件に応じて適宜選択すればよく、所望ならば二種以上を併用することもできる。
【0071】
変性反応に際しての各成分の配合比は、(a−2)成分100質量%に対して(a−3)成分は、通常0.01質量%〜30質量%であるが、0.05質量%〜5質量%が好ましい。最も好ましいのは、0.1質量%〜2質量%、特に0.1質量%〜1質量%である。また(a−1)成分は(a−2)成分100質量%に対して0.001質量%〜3質量%であるが、0.005質量%〜0.5質量%が好ましい。最も好ましいのは0.01質量%〜0.2質量%、特に0.01質量%〜0.1質量%である。変性反応に際しての最も好ましい配合比は、(a−2)成分100質量%に対して(a−3)成分が0.1質量%〜1質量%、(a−1)成分が0.01質量%〜0.1質量%である。
【0072】
一般に、(a−3)成分の配合量が少ないと、変性の程度が小さいので、得られた変性ポリエステルエラストマーをアイオノマー樹脂と配合して得られる中間層用組成物が、十分な耐摩耗性を発現しない傾向がある。逆に配合量が多すぎると、生成する変性ポリエステルエラストマーの溶融時の粘度が低下してしまい、これをアイオノマー樹脂と配合して得られる中間層用組成物は成形が困難となる。また、(a−1)成分の配合量が少なすぎると、変性が十分に起こらず、十分な耐摩耗性を発現しにくい傾向となる。逆に多すぎると、生成する変性ポリエステルエラストマーの溶融時の粘度が低下してしまい、成形性が悪化する。
【0073】
(a−2)成分、(a−3)成分、及び(a−1)成分を用いて、変性ポリエステルエラストマーを得るための変性方法としては、溶融混練反応法、溶液反応法、懸濁分散反応法など公知の種々の反応方法を用いることができるが、通常は溶融混練反応法が好ましい。この方法によるときは、(a−2)成分、(a−3)成分、及び(a−1)成分を、所定の配合比にて、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、V型ブレンダー等を用いて均一に混合した後、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール、一軸又は二軸等の多軸混練押出機等の通常の混練機を用いて溶融混練すればよい。なお、(a−3)成分及び(a−2)成分は、所望ならば有機溶剤に溶解して反応に供してもよい。溶融混練は、樹脂が熱劣化しないように、通常100℃〜300℃で行うが、120℃〜280℃、特に150℃〜250℃の範囲で行うのが好ましい。
【0074】
本発明で使用する(A)変性ポリエステルエラストマーのスラブ硬度は、ショアA硬度で、95以下が好ましく、より好ましくは93以下、さらに好ましくは91以下であり、70以上が好ましく、より好ましくは75以上、さらに好ましくは80以上である。前記変性ポリエステルエラストマーのスラブ硬度が、上記範囲内であれば、中間層用組成物の硬度が所望の範囲になりやすく、反発性とのバランスが良好になる。ここで、前記変性ポリエステルエラストマーのスラブ硬度とは、変性ポリエステルエラストマーをシート状に成形して測定した硬度であり、後述する測定方法により測定する。
【0075】
次に、(B)二元系アイオノマー樹脂について説明する。前記二元系アイオノマー樹脂としては、例えば、オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸との二元共重合体中のカルボキシル基の少なくとも一部を金属イオンで中和したものを挙げることができる。前記オレフィンとしては、炭素数が2〜8個のオレフィンが好ましく、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン等を挙げることができ、特にエチレンであることが好ましい。前記α,β−不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、クロトン酸等が挙げられ、特にアクリル酸またはメタクリル酸が好ましい。これらのなかでも、前記アイオノマー樹脂としては、エチレン−(メタ)アクリル酸二元共重合体の金属イオン中和物が好ましい。
【0076】
(B)前記二元系アイオノマー樹脂中の炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸成分の含有率は、15質量%以上が好ましく、より好ましくは16質量%以上、さらに好ましくは17質量%以上であり、30質量%以下が好ましく、より好ましくは25質量%以下である。酸成分の含有率が15質量%以上であれば、反発性、硬度が良好となり、30質量%以下であれば、反発性、成形性、硬度などのバランスが良好となるからである。
【0077】
前記二元共重合体の中和に用いられる金属(イオン)としては、ナトリウム、カリウム、リチウムなどの1価の金属(イオン);マグネシウム、カルシウム、亜鉛、バリウム、カドミウムなどの2価の金属(イオン);アルミニウムなどの3価の金属(イオン);錫、ジルコニウムなどのその他の金属(イオン)が挙げられる。これらの中でも、特にナトリウム、亜鉛、マグネシウム(イオン)が反発性、耐久性などから好ましく用いられる。
【0078】
(B)前記二元系アイオノマー樹脂のカルボキシル基の中和度は、20モル%以上が好ましく、より好ましくは30モル%以上であり、90モル%以下が好ましく、より好ましくは85モル%以下である。中和度が20モル%以上であれば、中間層の反発性および耐久性が良好になり、90モル%以下であれば、中間層用組成物の流動性が良好になる(成形性が良い)。なお、アイオノマー樹脂のカルボキシル基の中和度は、下記式で求めることができる。
アイオノマー樹脂の中和度=100×アイオノマー樹脂中の中和されているカルボキシル基のモル数/アイオノマー樹脂中のカルボキシル基の総モル数
【0079】
前記二元系アイオノマー樹脂の具体例を商品名で例示すると、三井・デュポンポリケミカル(株)から市販されている「ハイミラン(Himilan)(登録商標)(例えば、ハイミラン1605(Na)、ハイミラン1706(Zn)、ハイミラン1707(Na)、ハイミランAM7311(Mg)、ハイミランAM7329(Zn)など」が挙げられる。
【0080】
さらにデュポン社から市販されている「サーリン(Surlyn)(登録商標)(例えば、サーリン8945(Na)、サーリン9945(Zn)、サーリン8140(Na)、サーリン8150(Na)、サーリン9120(Zn)、サーリン9150(Zn)、サーリン6120(Mg)、サーリン7930(Li)、サーリン7940(Li)、サーリンAD8546(Li))」などが挙げられる。
【0081】
またエクソンモービル化学(株)から市販されているアイオノマー樹脂としては、「アイオテック(Iotek)(登録商標)(例えば、アイオテック8000(Na)、アイオテック8030(Na)、アイオテック7010(Zn)、アイオテック7030(Zn))」などが挙げられる。
【0082】
前記二元系アイオノマー樹脂は、例示のものをそれぞれ単独または2種以上の混合物として用いてもよい。前記商品名の後の括弧内に記載したNa、Zn、Li、Mgなどは、これらの中和金属イオンの金属種を示している。
【0083】
前記(B)二元系アイオノマー樹脂の曲げ弾性率は、300MPa以上が好ましく、より好ましくは310MPa以上、さらに好ましくは330MPa以上であり、600MPa以下が好ましく、より好ましくは550MPa以下、さらに好ましくは500MPa以下である。前記(B)二元系アイオノマー樹脂の曲げ弾性率が低すぎると、中間層の弾性率が低くなり、高打出角化および低スピン化の効果が小さくなり、曲げ弾性率が高すぎると、中間層の弾性率が高くなりすぎ、ゴルフボールの耐久性や打球感が低下する傾向がある。
【0084】
前記(B)二元系アイオノマー樹脂のメルトフローレイト(190℃×2.16kg荷重)は、1.0g/10min以上、好ましくは1.5g/10min以上、より好ましくは2.0g/10min以上であり、30g/10min以下が好ましく、より好ましくは25g/10min以下、さらに好ましくは20g/10min以下である。前記(B)二元系アイオノマー樹脂のメルトフローレイト(190℃×2.16kg荷重)が1.0g/10min以上であれば、中間層用組成物の流動性が良好となり、中間層の薄肉化が可能となるため、ドライバーなどのショットに対して低スピン化が図られ飛距離が向上する。また、前記(B)二元系アイオノマー樹脂のメルトフローレイト(190℃×2.16kg荷重)が30g/10min以下であれば、得られるゴルフボールの耐久性がより良好となる。
【0085】
前記二元系アイオノマー樹脂のスラブ硬度は、ショアD硬度で65以上が好ましく、より好ましくは66以上、さらに好ましくは67以上であり、80以下が好ましく、より好ましくは75以下、さらに好ましくは70以下である。前記スラブ硬度が、ショアD硬度で65以上であれば、中間層の硬度が適正となり、高打出角化および低スピン化の効果がより大きくなる。また、前記スラブ硬度が、ショアD硬度で80以下であれば、中間層が硬くなりすぎず、ゴルフボールの耐久性がより良好となる。
【0086】
(C)(A)成分および(B)成分以外の熱可塑性樹脂
本発明の中間層用組成物は、前記(A)成分および(B)成分に加えて、さらに(A)成分および(B)成分以外の(C)熱可塑性樹脂を含有することができる。
前記(C)成分としては、ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアセタール、変性ポリフェニレンエーテル、ポリイミド、ポリサルホン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアミノビスマレイミド、ポリビスアミドトリアゾール、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−EPDM−スチレン共重合体などを挙げることができる。
【0087】
前記(C)成分の具体例としては、例えば、アルケマ(株)から商品名「ペバックス(例えば、「ペバックス2533」)」で市販されている熱可塑性ポリアミドエラストマー、BASFジャパン(株)から商品名「エラストラン(例えば、「エラストランXNY85A」)」で市販されている熱可塑性ポリウレタンエラストマー、東レ・デュポン(株)から商品名「ハイトレル(例えば、「ハイトレル3548」、「ハイトレル4047」)」で市販されている熱可塑性ポリエステルエラストマー、三菱化学(株)から商品名「ラバロン(例えば、「ラバロンT3221C」)」で市販されている熱可塑性ポリスチレンエラストマー等が挙げられる。
【0088】
本発明において、中間層用組成物は、樹脂成分として、(A)変性ポリエステルエラストマーを30質量%〜70質量%、(B)二元系アイオノマー樹脂を70質量%〜30質量%、及び(C)成分を0質量%〜50質量%含有する。ただし、(A)成分、(B)成分、および、(C)成分の合計含有率が、100質量%になるようにする。前記(A)成分および(B)成分の含有率は、35質量%〜65質量%が好ましく、40質量%〜60質量%がより好ましい。(A)成分と(B)成分との含有率を上記範囲内とすることにより中間層が適正な剛性を有し、高打出角化および低スピン化が図られてゴルフボールの飛距離が向上し、打球感も向上する。
【0089】
前記中間層用組成物中の(C)成分の含有率は、0.1質量%以上が好ましく、より好ましくは0.15質量%以上、さらに好ましくは0.2質量%以上であり、50質量%以下が好ましく、より好ましくは45質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下である。前記(C)成分の含有量が、上記範囲内であれば、機械的物性を低下させることなく、中間層用組成物の硬度が所望の硬度となる。
【0090】
前記中間層用組成物は、さらに、白色顔料(例えば、酸化チタン)、青色顔料などの顔料成分、質量調整剤、分散剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、蛍光材料または蛍光増白剤などを、ゴルフボールの性能を損なわない範囲で含有してもよい。
【0091】
前記質量調整剤としては、例えば、金、タングステン、モリブデン、鉛、銅、鉄、鋳鉄、銑鉄、亜鉛、チタン、アルミニウム、ジルコニウムなどの金属、酸化アルミニウム、酸化ビスマス、酸化セリウム、酸化銅、酸化スズ、酸化チタン、酸化イットリウム、酸化亜鉛、シリカなどの金属酸化物、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、タルク、モンモリロナイト、マイカなどのその他の化合物を挙げることができる。前記質量調整剤は、単独であるいは2種以上を混合して使用してもよい。
【0092】
前記質量調整剤の配合量は、中間層用組成物の樹脂成分100質量部に対して、1質量部以上が好ましく、より好ましくは2質量部以上、さらに好ましくは3質量部以上であり、50質量部以下が好ましく、より好ましくは47質量部以下、さらに好ましくは44質量部以下である。質量調整剤の配合量が1質量部以上であれば、中間層用組成物の密度をより容易に調整することができ、50質量部以下であれば、樹脂成分に対する分散性が良好となる。
【0093】
中間層用組成物は、例えば、(A)変性ポリエステルエラストマーと(B)二元系アイオノマー樹脂とを、ドライブレンドし、押出し、ペレット化することにより得ることができる。ドライブレンドには、例えば、ペレット状の原料を配合できる混合機を用いるのが好ましく、より好ましくはタンブラー型混合機を用いる。ドライブレンド以外に、それぞれの材料を別々の投入装置から投入しても良い。押出は、一軸押出機、二軸押出機、二軸一軸押出機など公知の押出機を使用することができる。押出条件としては、二軸押出機を使用する場合、例えば、スクリュー径45mm、スクリュー回転数50rpm〜400rpm、スクリューL/D=35以下、ダイ温度140℃以上、250℃以下の条件を挙げることができる。なお、所望ならば、(A)ポリエステル系エラストマーの変性に際して、ポリエステル系エラストマーにラジカル発生剤、不飽和カルボン酸などと共に二元系アイオノマー樹脂を配合して、ポリエステル系エラストマーの変性と、生成した変性ポリエステル系エラストマーと二元系アイオノマー樹脂との配合とを同時に行うこともできる。
【0094】
中間層用組成物のメルトフローレイト(230℃×2.16kg荷重)は、3g/10min以上が好ましく、5g/10min以上がより好ましく、7g/10min以上がさらに好ましく、30g/10min以下が好ましく、27g/10min以下がより好ましく、25g/10min以下がさらに好ましい。前記中間層用組成物のメルトフローレイトが3g/10min以上であれば、成形性が高くなり、中間層の薄肉化がより容易に行うことができる。
【0095】
前記中間層用組成物の曲げ弾性率は、150MPa以上が好ましく、より好ましくは155MPa以上、さらに好ましくは160MPa以上であり、450MPa以下が好ましく、より好ましくは430MPa以下、さらに好ましくは400MPa以下である。前記中間層用組成物の曲げ弾性率が150MPa以上であれば、得られるゴルフボールを外剛内柔構造とすることができ、飛距離が向上する。また、前記中間層用組成物の曲げ弾性率が450MPa以下であれば、得られるゴルフボールが適度に柔らかくなって、打球感が良好となる。
【0096】
前記中間層用組成物の反発弾性率は、55%以上が好ましく、より好ましくは56%以上、さらに好ましくは57%以上である。前記中間層用組成物の反発弾性率を、55%以上とすることにより、得られるゴルフボールの飛距離が大きくなる。ここで、中間層用組成物の曲げ弾性率および反発弾性率とは、中間層用組成物をシート状に成形して測定した曲げ弾性率および反発弾性率であり、後述する測定方法により測定する。
【0097】
前記中間層用組成物の−20℃〜0℃での損失係数(tanδ)の最大値は、好ましくは0.08以下、より好ましくは0.07以下、さらに好ましくは0.06以下であり、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.02以上、さらに好ましくは0.03以上である。−20℃〜0℃での損失係数の最大値が、上記範囲内であれば、所望の反発性が得られる。
【0098】
前記中間層用組成物のスラブ硬度は、JIS−C硬度で60以上が好ましく、より好ましくは65以上、さらに好ましくは70以上であり、90以下が好ましく、より好ましくは88以下、さらに好ましくは86以下である。前記中間層用組成物のスラブ硬度がJIS−C硬度で60以上であれば、得られる中間層の剛性が高まり、反発性(飛距離)により優れるゴルフボールが得られる。一方、前記中間層用組成物のスラブ硬度がJIS−C硬度で90以下であれば、得られるゴルフボールの耐久性が一層向上する。ここで、前記中間層用組成物のスラブ硬度とは、前記中間層用組成物をシート状に成形して測定した硬度であり、後述する測定方法により測定する。
【0099】
なお、前記中間層用組成物のメルトフローレイト、曲げ弾性率、反発弾性率およびスラブ硬度は、前記(A)成分、(B)成分、および、(C)成分の種類、添加量などを適宜選択することによって、調整することができる。
【0100】
(3)センター用組成物および包囲層用組成物
本発明のゴルフボールのセンターおよび包囲層には、公知のゴム組成物(以下、単に「センター用ゴム組成物」という場合がある)を採用することができ、例えば、基材ゴム、架橋開始剤、共架橋剤および充填剤を含むゴム組成物を用いることができる。
【0101】
前記基材ゴムとしては、天然ゴムおよび/または合成ゴムを使用することができ、例えば、ポリブタジエンゴム、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、スチレンポリブタジエンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)などを使用できる。これらの中でも、特に、反発に有利なシス結合が40質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上のハイシスポリブタジエンを用いることが好ましい。
【0102】
本発明のゴルフボールのセンターは、ポリブタジエンゴムを含有するゴム組成物を架橋してなるものであることが好ましい。
【0103】
前記架橋開始剤は、基材ゴム成分を架橋するために配合されるものである。前記架橋開始剤としては、有機過酸化物が好適である。具体的には、ジクミルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t―ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキサイドなどの有機過酸化物が挙げられ、これらのうちジクミルパーオキサイドが好ましく用いられる。架橋開始剤の配合量は、基材ゴム100質量部に対して、0.3質量部以上が好ましく、より好ましくは0.4質量部以上であって、5質量部以下が好ましく、より好ましくは3質量部以下である。0.3質量部未満では、センターが柔らかくなりすぎて、反発性が低下する傾向があり、5質量部を超えると、適切な硬さにするために、共架橋剤の使用量を減少する必要があり、反発性が不足気味になる。
【0104】
前記共架橋剤としては、基材ゴム分子鎖にグラフト重合することによって、ゴム分子を架橋する作用を有するものであれば特に限定されず、例えば、炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸またはその金属塩を使用することができ、好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸またはこれらの金属塩を挙げることができる。前記金属塩を構成する金属としては、例えば、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、ナトリウムなどを挙げることができ、反発性が高くなるということから、亜鉛を使用することが好ましい。
【0105】
前記共架橋剤の使用量は、基材ゴム100質量部に対して、10質量部以上が好ましく、より好ましくは15質量部以上、さらに好ましくは20質量部以上であり、55質量部以下が好ましく、より好ましくは50質量部以下、さらに好ましくは48質量部以下である。共架橋剤の使用量が10質量部未満では、適当な硬さとするために架橋開始剤の量を増加しなければならず、反発性が低下する傾向がある。一方、共架橋剤の使用量が55質量部を超えると、センターが硬くなりすぎて、打球感が低下するおそれがある。
【0106】
センター用組成物または包囲層用組成物に含有される充填剤としては、主として最終製品として得られるゴルフボールの比重を1.0〜1.5の範囲に調整するための比重調整剤として配合されるものであり、必要に応じて配合すれば良い。前記充填剤としては、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、タングステン粉末、モリブデン粉末などの無機充填剤を挙げることができる。前記充填剤の配合量は、基材ゴム100質量部に対して、0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上であって、30質量部以下、より好ましくは20質量部以下であることが望ましい。充填剤の配合量が0.5質量部未満では、重量調整が難しくなり、30質量部を超えるとゴム成分の重量分率が小さくなり反発性が低下する傾向があるからである。
【0107】
前記センター用組成物または包囲層用組成物には、基材ゴム、架橋開始剤、共架橋剤および充填剤に加えて、さらに、有機硫黄化合物、老化防止剤、しゃく解剤などを適宜配合することができる。
【0108】
前記有機硫黄化合物としては、ジフェニルジスルフィド類を好適に使用することができる。前記ジフェニルジスルフィド類としては、例えば、ジフェニルジスルフィド;ビス(4−クロロフェニル)ジスルフィド、ビス(3−クロロフェニル)ジスルフィド、ビス(4−ブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(3−ブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(4−フルオロフェニル)ジスルフィド、ビス(4−ヨードフェニル)ジスルフィド,ビス(4−シアノフェニル)ジスルフィドなどのモノ置換体;ビス(2,5−ジクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(3,5−ジクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,6−ジクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,5−ジブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(3,5−ジブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(2−クロロ−5−ブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(2−シアノ−5−ブロモフェニル)ジスルフィドなどのジ置換体;ビス(2,4,6−トリクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2−シアノ−4−クロロ−6−ブロモフェニル)ジスルフィドなどのトリ置換体;ビス(2,3,5,6−テトラクロロフェニル)ジスルフィドなどのテトラ置換体;ビス(2,3,4,5,6−ペンタクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,3,4,5,6−ペンタブロモフェニル)ジスルフィドなどのペンタ置換体などが挙げられる。これらのジフェニルジスルフィド類はゴム加硫体の加硫状態に何らかの影響を与えて、反発性を高めることができる。これらの中でも、特に高反発性のゴルフボールが得られるという点から、ジフェニルジスルフィド、ビス(ペンタブロモフェニル)ジスルフィドを用いることが好ましい。前記有機硫黄化合物の配合量は、基材ゴム100質量部に対して、0.1質量部以上が好ましく、より好ましくは0.3質量部以上であって、5.0質量部以下が好ましく、より好ましくは3.0質量部以下である。
【0109】
前記老化防止剤の配合量は、基材ゴム100質量部に対して、0.1質量部以上、1質量部以下であることが好ましい。また、しゃく解剤の配合量は、基材ゴム100質量部に対して、0.1質量部以上、5質量部以下であることが好ましい。
【0110】
本発明のゴルフボールのコアは、センターが有機硫黄化合物を含有しないゴム組成物から形成され、包囲層が有機硫黄化合物を含有するゴム組成物から形成されていることが好ましい。得られるコアの硬度分布が適正となるからである。
【0111】
(4)接着層用組成物
接着層は、樹脂成分を含有する接着層用組成物から形成される。前記樹脂成分としては、二液硬化型熱硬化性樹脂が好適に用いられる。二液硬化型熱硬化性樹脂の具体例としては、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル系樹脂及びセルロース系樹脂が挙げられる。これらの中でも、樹脂成分としては、二液硬化型エポキシ樹脂が好ましい。特に、接着層が、主剤としてビスフェノールA型エポキシ樹脂を、硬化剤としてポリアミン化合物を含有する二液硬化型接着層用組成物から形成されることが好ましい。
【0112】
接着層用組成物は、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂および溶媒を含む主剤と、ポリアミン化合物および溶媒を含む硬化剤とが混合されることで得られる。主剤および硬化剤における溶媒としては、キシレンおよびトルエンのような有機溶媒ならびに水が挙げられる。
【0113】
ポリアミン化合物の具体例としては、ポリアミドアミンまたはその変性物が挙げられる。ポリアミドアミンは、複数のアミノ基と、1個以上のアミド基とを有する。このアミノ基が、エポキシ基と反応し得る。ポリアミドアミンは、重合脂肪酸とポリアミンの縮合反応によって得られる。典型的な重合脂肪酸は、リノール酸、リノレイン酸等の不飽和脂肪酸を多く含む天然脂肪酸類が触媒存在下で加熱されて合成されることで得られる。不飽和脂肪酸の具体例としては、トール油、大豆油、亜麻仁油、及び、魚油などが挙げられる。ダイマー成分が90質量%以上であり、トリマー成分が10質量%以下であり、かつ水素添加された重合脂肪酸が好ましい。好ましいポリアミンとしては、ポリエチレンジアミン及びポリオキシアルキレンジアミン並びにこれらの誘導体が例示される。
【0114】
前記接着層用組成物のゲル分率は、40質量%以上が好ましい。ゲル分率が40質量%以上である接着層用組成物から形成される接着層は、揮発分が残存しにくいので、ほとんど気泡を含まない。前記接着層用組成物は、中間層と堅固に密着し、カバーとも堅固に密着する。この観点から、ゲル分率は45質量%以上がより好ましく、50質量%以上がさらに好ましい。
【0115】
前記接着層用組成物のゲル分率は、80質量%以下が好ましい。ゲル分率が80質量%以下である接着層用組成物は、中間層の基材ポリマーと十分に反応し、かつ、カバーの基材ポリマーとも十分に反応する。この接着層用組成物は、中間層と堅固に密着し、カバーとも堅固に密着する。この観点から、ゲル分率は、76質量%以下がより好ましく、70質量%以下がさらに好ましい。
【0116】
前記ゲル分率が40質量%以上80質量%以下の接着層用組成物から形成された接着層は、カバーが薄いゴルフボールにおいて特に効果を発揮する。ゲル分率が40質量%以上80質量%以下である接着層用組成物から形成された接着層は、カバーが軟質であるゴルフボールにおいて特に効果を発揮する。
【0117】
ゲル分率の測定では、主剤と硬化剤とが混合された直後に、接着層用組成物がPB−137Tリン酸亜鉛処理鋼板に塗布される。この鋼板のサイズは、「150mm×70mm」である。この鋼板の厚みは、0.8mmである。この鋼板を40℃の環境下に24時間保持し、接着層用組成物からなる塗膜を形成する。鋼板と塗膜とから試験片が得られる。この試験片の質量を測定し、この測定値から鋼板の質量を減じることで、塗膜の質量M1を算出する。この試験片をアセトンに浸漬し、24時間静置する。この試験片を105℃の環境下に1時間保持する。この試験片を23℃まで冷却する。この試験片の質量を測定し、この測定値から鋼板の質量を減じることで、塗膜の質量M2を算出する。ゲル分率Gは、下記の数式によって算出される。
G=(M2/M1)×100
【0118】
この接着層用組成物におけるビスフェノールA型エポキシ樹脂のエポキシ当量と硬化剤のアミン活性水素当量との比は、2.0/1.0以上13.0/1.0以下が好ましい。この比が2.0/1.0以上である接着層用組成物では、ゲル分率が小さすぎない。従って、接着層が中間層およびカバーに堅固に密着する。この観点から、この比は2.6/1.0以上がより好ましく、4.0/1.0以上がさらに好ましい。この比が、13.0/1.0以下である接着層用組成物では、ゲル分率が大きすぎない。従って、接着層が中間層およびカバーに堅固に密着する。この観点から、この比は、12.2/1.0以下がより好ましく、10.0/1.0以下がさらに好ましい。
【0119】
硬化剤のアミン活性水素当量は、100g/eq以上800g/eq以下が好ましい。この当量が100g/eq以上である接着層用組成物では、ゲル分率が大きすぎない。従って、接着層が中間層およびカバーと堅固に密着する。この観点から、この当量は200g/eq以上がより好ましく、300g/eq以上がさらに好ましい。この当量が800g/eq以下である接着層用組成物では、ゲル分率が小さすぎない。従って、接着層が中間層およびカバーと堅固に密着する。この観点から、この当量は600g/eq以下がより好ましく、500g/eq以下がさらに好ましい。
【0120】
接着層用組成物は、揮発分として水を含んでいる。揮発分との用語は、水及び有機溶媒の両方を意味する。揮発分の全量に対する水の量の比率Pwは、90質量%以上が好ましい。この比率Pwが90質量%以上である接着層用組成物では、ゲル分率の制御が容易である。この観点から、この比率Pwは95質量%以上がより好ましく、99質量%以上がさらに好ましい。この比率Pwが100%であってもよい。環境の観点から、揮発分の全量に対する有機溶媒の量の比率Poは10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、1質量%以下がさらに好ましい。
【0121】
接着層用組成物が、着色剤(典型的には、二酸化チタン)、酸化防止剤、光安定剤、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、ブロッキング防止剤等の添加剤を含んでいてもよい。添加剤は、主剤に添加されてもよく、硬化剤に添加されてもよい。
【0122】
(5)カバー用組成物
本発明のゴルフボールのカバーは、樹脂成分を含有するカバー用組成物から形成される。前記樹脂成分としては、例えば、アイオノマー樹脂、アルケマ(株)から商品名「ペバックス(登録商標)(例えば、「ペバックス2533」)」で市販されている熱可塑性ポリアミドエラストマー、東レ・デュポン(株)から商品名「ハイトレル(登録商標)(例えば、「ハイトレル3548」、「ハイトレル4047」)」で市販されている熱可塑性ポリエステルエラストマー、BASFジャパンから商品名「エラストラン(登録商標)」で市販されている熱可塑性ポリウレタンエラストマー;三菱化学(株)から商品名「ラバロン(登録商標)」で市販されている熱可塑性ポリスチレンエラストマーなどが挙げられる。これらの樹脂成分は単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0123】
本発明のゴルフボールのカバーを構成するカバー用組成物は、樹脂成分として、熱可塑性ポリウレタンを含有することが好ましい。カバー用組成物の樹脂成分中の熱可塑性ポリウレタンの含有率は、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上がさらに好ましい。
【0124】
前記カバー用組成物は、上述した樹脂成分のほか、白色顔料(例えば、酸化チタン)、青色顔料、赤色顔料などの顔料成分、酸化亜鉛、炭酸カルシウムや硫酸バリウムなどの比重調整剤、分散剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、蛍光材料または蛍光増白剤などを、カバーの性能を損なわない範囲で含有してもよい。
【0125】
前記白色顔料(例えば、酸化チタン)の含有量は、カバーを構成する樹脂成分100質量部に対して、0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上であって、10質量部以下、より好ましくは8質量部以下であることが望ましい。白色顔料の含有量を0.5質量部以上とすることによって、カバーに隠蔽性を付与することができる。また、白色顔料の含有量が10質量部超になると、得られるカバーの耐久性が低下する場合があるからである。
【0126】
(6)ゴルフボールの製造方法
本発明で使用するセンターは、前述のセンター用ゴム組成物を混合、混練し、金型内で成形することにより得ることができる。この際の条件は、特に限定されないが、通常は130℃〜200℃、圧力2.9MPa〜11.8MPaで10分間〜60分間で行われる。例えば、前記ゴム組成物を130℃〜200℃で10分間〜60分間加熱するか、あるいは、130℃〜150℃で20分間〜40分間加熱した後、160℃〜180℃で5分間〜15分間の2段階で加熱することが好ましい。
【0127】
包囲層および中間層の成形には、射出成形法、圧縮成型法等の公知の手法が採用され得る。生産性の観点から射出成形法が好ましい。
【0128】
中間層を射出成形する場合、成形用上下金型としては、半球状キャビティを有し、ピンプル付きで、ピンプルの一部が進退可能なホールドピンを兼ねているものを使用することが好ましい。射出成形による中間層の成形は、ホールドピンを突き出し、センターを投入してホールドさせた後、加熱溶融された樹脂組成物を注入して、冷却することにより成形することができる。例えば、980kPa〜1,500kPaの圧力で型締めした金型内に、150℃〜230℃に加熱溶融した樹脂組成物を0.1秒〜1秒で注入し、15秒〜60秒間冷却して型開きすることにより行う。
【0129】
なお、成形温度とは、型締めから型開きの間に、下型の凹部の表面が到達する最高温度を意味する。また中間層用組成物の流動開始温度は、島津製作所の「フローテスター CFT−500」を用いて、ペレット状の中間層用組成物を、プランジャー面積:1cm、DIE LENGTH:1mm、DIE DIA:1mm、荷重:588.399N、開始温度:30℃、昇温速度:3℃/分の条件で測定することができる。
【0130】
接着層は、主剤及び硬化剤が溶剤に溶解又は分散した液が、中間層の表面に塗布されることで得られる。作業性の観点から、スプレーガンによる塗布が好ましい。塗布後に溶剤が揮発し、主剤と硬化剤とが反応して、接着層が形成される。
【0131】
本発明のゴルフボールのカバーを成形する方法としては、例えば、カバー用組成物から中空殻状のシェルを成形し、コアを複数のシェルで被覆して圧縮成形する方法(好ましくは、カバー用組成物から中空殻状のハーフシェルを成形し、コアを2枚のハーフシェルで被覆して圧縮成形する方法)、あるいは、カバー用組成物をコア上に直接射出成形する方法を挙げることができる。
【0132】
圧縮成形法によりカバーを成形する場合、ハーフシェルの成形は、圧縮成形法または射出成形法のいずれの方法によっても行うことができるが、圧縮成形法が好適である。カバー用組成物を圧縮成形してハーフシェルに成形する条件としては、例えば、1MPa以上、20MPa以下の圧力で、カバー用組成物の流動開始温度に対して、−20℃以上、70℃以下の成形温度を挙げることができる。前記成形条件とすることによって、均一な厚みをもつハーフシェルを成形できる。ハーフシェルを用いてカバーを成形する方法としては、例えば、コアを2枚のハーフシェルで被覆して圧縮成形する方法を挙げることができる。ハーフシェルを圧縮成形してカバーに成形する条件としては、例えば、0.5MPa以上、25MPa以下の成形圧力で、カバー用組成物の流動開始温度に対して、−20℃以上、70℃以下の成形温度を挙げることができる。前記成形条件とすることによって、均一な厚みを有するゴルフボールカバーを成形できる。
【0133】
カバー用組成物を射出成形してカバーを成形する場合、押出して得られたペレット状のカバー用組成物を用いて射出成形しても良いし、あるいは、基材樹脂成分や顔料などのカバー用材料をドライブレンドして直接射出成形してもよい。カバー成形用上下金型としては、半球状キャビティを有し、ピンプル付きで、ピンプルの一部が進退可能なホールドピンを兼ねているものを使用することが好ましい。射出成形によるカバーの成形は、ホールドピンを突き出し、コアを投入してホールドさせた後、カバー用組成物を注入して、冷却することによりカバーを成形することができ、例えば、9MPa〜15MPaの圧力で型締めした金型内に、200℃〜250℃に加熱したカバー用組成物を0.5秒〜5秒で注入し、10秒〜60秒間冷却して型開きすることにより行う。カバーを成形する際には、通常、表面にディンプルと呼ばれるくぼみが形成される。
【0134】
カバーが成形されたゴルフボール本体は、金型から取り出し、必要に応じて、バリ取り、洗浄、サンドブラストなどの表面処理を行うことが好ましい。また、所望により、塗膜やマークを形成することもできる。前記塗膜の膜厚は、特に限定されないが5μm以上が好ましく、7μm以上がより好ましく、50μm以下が好ましく、40μm以下がより好ましく、30μm以下がさらに好ましい。膜厚が5μm未満になると継続的な使用により塗膜が摩耗消失しやすくなり、膜厚が50μmを超えるとディンプルの効果が低下してゴルフボールの飛行性能が低下するからである。
【実施例】
【0135】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲の変更、実施の態様は、いずれも本発明の範囲内に含まれる。
【0136】
[評価方法]
(1)コア硬度(JIS−C硬度)
スプリング式硬度計JIS−C型を備えた高分子計器社製自動ゴム硬度計P1型を用いて、コアの表面部において測定したJIS−C硬度をコア表面硬度Heとした。コアを半球状に切断し、切断面の中心において測定したJIS−C硬度をコア中心硬度Hoとした。
また、切断面のコア中心から所望の距離の点におけるJIS−C硬度を測定した。
【0137】
(2)スラブ硬度(ショアD硬度)
包囲層用組成物、中間層用組成物、または、カバー用組成物を用いて、射出成形により、厚み約2mmのシートを作製し、23℃で2週間保存した。このシートを、測定基板などの影響が出ないように、3枚以上重ねた状態で、ASTM−D2240に規定するスプリング式硬度計ショアD型を備えた高分子計器社製自動ゴム硬度計LA1型を用いて測定した。
【0138】
(3)圧縮変形量(mm)
センター、コアまたはゴルフボールに初期荷重98Nを負荷した状態から終荷重1275Nを負荷したときまでの圧縮方向の変形量(圧縮方向にセンター、コアまたはゴルフボールが縮む量)を測定した。
【0139】
(4)メルトフローレイト(MFR)(g/10min)
MFRは、フローテスター(島津製作所社製、島津フローテスターCFT−100C)を用いて、JIS K7210に準じて測定した。なお、測定は、測定温度190℃または230℃で、荷重2.16kgの条件で行った。
【0140】
(5)曲げ弾性率(三点曲げ弾性率)(MPa)
アイオノマー樹脂、中間層用組成物を用いて、熱プレス成形にて厚み約2mmのシートを作製し、23℃で2週間保存した。曲げ弾性率を、JIS K7171に準じて測定した。測定は、温度23℃、湿度50%RHで行った。
【0141】
(6)反発弾性率(%)
中間層用組成物を用いて、熱プレス成形にて厚み約2mmのシートを作製し、当該シートから直径28mmの円形状に打抜いたものを6枚重ねることにより、厚さ約12mm、直径28mmの円柱状試験片を作製した。この試験片についてリュプケ式反発弾性試験(試験温湿度23℃、50RH%)を行った。なお、試験片の作製および試験方法は、JIS K6255に準じて行った。
【0142】
(7)損失係数(tanδ)の測定
中間層用組成物を用いて、厚みが0.5mmのシートを作製し、長さ30mm、幅4mm、厚み0.5mmの板状の試験片を切り出した。試験片の変位部分の長さが20mmとなるように試験片の両端部をチャックでつかみ、粘弾性スペクトロメーター(ユービーエム社の商品名「Rheogel−E4000型」)を用いて測定した。測定結果から−20℃〜0℃の範囲における損失係数の最大値を求めた。測定条件は、下記の通りである。
初期荷重 :自動静荷重200%
振幅 :0.025%
周波数 :10Hz
開始温度 :−100℃
終了温度 :100℃
昇温速度 :4℃/min
変形モード:引張
【0143】
(8)アプローチショットのスピン量
ゴルフラボラトリー社製スイングロボットに、アプローチウェッジ(SRIスポーツ社製、SRIXON I−302、シャフトS)を取り付け、ヘッドスピード21m/秒でゴルフボールを打撃し、打撃されたゴルフボールを連続写真撮影することによってスピン量(rpm)を測定した。測定は、各ゴルフボールについて10回ずつ行い、その平均値をスピン量とした。
【0144】
(9)ドライバーショットのスピン量
ゴルフラボラトリー社製スイングロボットに、ドライバー(SRIスポーツ社製、XXIO シャフトS ロフト11°)を取り付け、ヘッドスピード50m/秒でゴルフボールを打撃し、打撃されたゴルフボールを連続写真撮影することによってスピン量(rpm)を測定した。測定は、各ゴルフボールについて10回ずつ行い、その平均値をスピン量とした。
【0145】
(10)打球感
10名のゴルファーにドライバーにてゴルフボールを打撃させ、打球感を聞き取った。「衝撃が小さく、打球感が良好」と答えたゴルファーの数に基づき、下記の格付けを行った。
A:8人以上
B:6〜7人
C:4〜5人
D:3人以下
【0146】
[変性ポリエステルエラストマーの合成]
(1)変性ポリエステルエラストマー1
ポリテトラメチレングリコール65質量%、ポリブチレンテレフタレート35質量%のポリエステル−エーテルエラストマー100質量部に対し、無水マレイン酸(粉砕品)0.5質量部および過酸化ベンゾイル(50%含水品、商品名ナイパーBWK)0.13質量部をミキサーにてブレンドし、二軸混練機(日本製鋼社製TEX54α)にて、200℃、250回転、250kg/hrの条件にて押出、無水マレイン酸をグラフトさせて、変性ポリエステルエラストマー1を得た。得られた変性ポリエラストマー1中の無水マレイン酸含有率は、0.4質量%、ショアA硬度は84、メルトフローレイト(230℃、21N)は、24g/10minであった。
(2)変性ポリエステルエラストマー2
ポリエステル−エーテルエラストマーとして、ポリテトラメチレングリコール77質量%、ポリブチレンテレフタレート23質量%のポリエステル−エーテルエラストマーを用いた以外は、変性ポリエステルエラストマー1と同様にして、変性ポリエステルエラストマー2を得た。得られた変性ポリエラストマー2中の無水マレイン酸含有率は、0.5質量%、ショアA硬度は80、メルトフローレイト(230℃、21N)は、30g/10minであった。
【0147】
[ゴルフボールの作製]
(1)コアの作製
表1に示す配合材料を混練して、ゴム組成物No.1〜No.5を調製した。このゴム組成物から、表2〜4に示したように球状センターと包囲層とを有するコアを作製した。球状センターは、このゴム組成物を半球状キャビティを有する上下金型内で170℃、15分間加熱することにより作製した。次に、ゴム組成物からハーフシェルを成形し、上述のようにして得られた球状センターを2枚のハーフシェルで被覆した。このセンターおよびハーフシェルを共に半球状キャビティを有する上下金型に投入し、150℃、20分間加熱して、球状コアを作製した。ゴム組成物中の硫酸バリウムの量は、センターと包囲層との密度が一致し、かつ、得られるゴルフボールの質量が、45.3gになるように適宜調整した。
【0148】
【表1】

BR−730:JSR社製、「BR730(ハイシスポリブタジエン)」
アクリル酸亜鉛:日本蒸溜工業社製、「ZNDA−90S」
酸化亜鉛:東邦亜鉛社製、「銀嶺(登録商標)R」
硫酸バリウム:堺化学社製、「硫酸バリウムBD」
ジクミルパーオキサイド:日油社製、「パークミル(登録商標)D」
ジフェニルジスルフィド:住友精化社製
【0149】
(2)中間層用組成物、および、カバー用組成物の調製
表2〜4、表5に示した配合材料を用いて、二軸混練型押出機によりミキシングして、ペレット状の中間層用組成物、カバー用組成物をそれぞれ調製した。押出条件は、スクリュー径45mm、スクリュー回転数200rpm、スクリューL/D=35であり、配合物は、押出機のダイの位置で160〜230℃に加熱された。
【0150】
【表2】

【0151】
【表3】

【0152】
【表4】

【0153】
表2〜4で使用した原料は、以下の通りである。
サーリン8150:デュポン社製のナトリウムイオン中和エチレン−メタクリル酸二元共重合体アイオノマー樹脂(酸成分含有率17質量%以上、曲げ弾性率364MPa、メルトフローレイト(190℃×2.16kg):4.5、ショアD硬度68)
サーリン8945:デュポン社製のナトリウムイオン中和エチレン−メタクリル酸共重合体アイオノマー樹脂(酸成分含有率15質量%以下、曲げ弾性率254MPa、メルトフローレイト(190℃×2.16kg):5、ショアD硬度61)
サーリン9150:デュポン社製の亜鉛イオン中和エチレン−メタクリル酸共重合体アイオノマー樹脂(酸成分含有率17%以上、曲げ弾性率252MPa、メルトフローレイト(190℃×2.16kg):4.5、ショアD硬度64)
ハイミランAM7329:三井デュポンポリケミカル社製、亜鉛イオン中和エチレン−メタクリル酸共重合体アイオノマー樹脂(酸成分含有率15質量%以下、曲げ弾性率240MPa、メルトフローレイト(190℃×2.16kg):5、ショアD硬度59)
TPEE:熱可塑性ポリエステルエラストマー(ポリテトラメチレングリコール65質量%、ポリブチレンテレフタレート35質量%のポリエステル−エーテルエラストマー)
【0154】
【表5】

【0155】
エラストランXNY85A:BASFジャパン社製H12MDI−ポリエーテル系熱可塑性ポリウレタンエラストマー
【0156】
(3)中間層の作製
前記で得た中間層用組成物を、前述のようにして得たコア上に射出成形することにより、前記センターを被覆する中間層を成形した。中間層を成形するための成形用上下金型は、半球状キャビティを有し、ピンプル付きで、ピンプルの一部が進退可能なホールドピンを兼ねている。
【0157】
中間層成形時には、ホールドピンを突き出し、コアを投入後、ホールドさせ、80トンの圧力で型締めした金型に260℃に加熱した中間層用組成物を0.3秒で注入し、30秒間冷却して型開きして中間層を成形した。
【0158】
中間層に二液硬化型熱硬化性樹脂を塗布して、接着層を形成した。二液硬化型熱可塑性樹脂の主剤は、神東塗料社製の水系エポキシ組成物である。この主剤は、36質量部のビスフェノールA型エポキシ樹脂と、64質量部の水とを含んでる。この主剤のエポキシ当量は、1405g/eqである。硬化剤は、神東塗料社製の水系アミン組成物である。この硬化剤は、44質量部の変性ポリアミドアミン、50質量部の水、1質量部のプロピレングリコール及び5質量部の二酸化チタンを含んでいる。この硬化剤の活性水素当量は、348g/eqである。この接着用組成物を中間層の表面にスプレーガンで塗布し、23℃雰囲気下で12時間保持して接着層を得た。この接着層の厚みは0.003mmであった。前記二液硬化型熱硬化性樹脂のゲル分率は、64質量%であった。
【0159】
(4)ハーフシェルの成形
ハーフシェルの圧縮成形は、得られたペレット状のカバー用組成物をハーフシェル成形用金型の下型の凹部ごとに1つずつ投入し、加圧してハーフシェルを成形した。圧縮成形は、成形温度170℃、成形時間5分、成形圧力2.94MPaの条件で行った。
【0160】
(5)カバーの成形
(3)で得られたコアを(4)で得られた2枚のハーフシェルで同心円状に被覆して、圧縮成形によりカバーを成形した。圧縮成形は、成形温度145℃、成形時間2分、成形圧力9.8MPaの条件で行った。
【0161】
得られたゴルフボール本体の表面をサンドブラスト処理して、マーキングを施した後、クリアーペイントを塗布し、40℃のオーブンで塗料を乾燥させ、直径42.7mm、質量45.3gのゴルフボールを得た。得られたゴルフボールついて評価した結果を表2〜4に示した。また、得られたゴルフボールのコアの硬度分布を表6及び図2〜5に示した。
【表6】

【0162】
図2から、H2−H1の最大値は、4.8であり、最小値は、0.8であることが読み取れる。図3から、H2−H1の最大値は、4.0であり、最小値は0.8であることが読み取れる。図4から、H2−H1の最大値は、3.0であり、最小値は、0.8であることが読み取れる。図5から、H2−H1の最大値は、5.9であり、最小値は0.8であることが読み取れる。表2〜表4の結果から、本発明のゴルフボールは、ドライバーショットの飛距離を維持しつつ、コントロール性と打球感が改善されていることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0163】
本発明は、ゴルフボールに関するものであり、ドライバーショットの飛距離を維持しつつ、コントロール性と打球感が改善されたゴルフボールが得られる。
【符号の説明】
【0164】
2:ゴルフボール、4:センター、6:包囲層、7:コア、8:中間層、10:補強層、12:カバー、14:ディンプル、16:ランド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアと、前記コアの周りに配置された中間層と、前記中間層の周りに配置されたカバーとを有するゴルフボールであって、
前記コアは、センターと前記センターの周りに配置された包囲層とを有しており、
前記コアの表面のJIS−C硬度Heとコアの中心のJIS−C硬度Hoとの差(He−Ho)が15以上30以下であり、
カバーのJIS−C硬度Hcが前記コアの中心のJIS−C硬度Hoよりも小さく、
前記コアの中心からの距離が1mm以上15mm以下であるゾーンに含まれる全ての点Pにおいて、下記数式が成立し、
−5.0≦H2−H1≦5.0
(上記数式において、H1は点Pよりも半径方向内側に存在しかつ点Pからの距離が1mmである点P1のJIS−C硬度を表わし、H2は点Pよりも半径方向外側に存在しかつ点Pからの距離が1mmである点P2のJIS−C硬度を表わす)、
前記中間層は、樹脂成分として、
(A)ショアA硬度が95以下の変性ポリエステルエラストマーを30質量%〜70質量%;
(B)ショアD硬度が65以上、曲げ弾性率が300MPa以上、メルトフローレイト(190℃、2.16kg)が1.0g/10min以上の二元系アイオノマー樹脂を70質量%〜30質量%;及び、
(C)(A)成分及び(B)成分以外の熱可塑性樹脂を0質量%〜50質量%含有し(ただし、(A)成分、(B)成分、および、(C)成分の合計含有率が100質量%になるようにする)、曲げ弾性率が150MPa〜450MPa、−20℃〜0℃での損失係数(tanδ)の最大値が0.08以下、反発弾性率が55%以上、および、スラブ硬度がJIS−C硬度で60〜90である中間層用組成物から形成されていることを特徴とするゴルフボール。
【請求項2】
前記(A)変性ポリエステルエラストマーは、(a−1)ラジカル発生剤存在下、(a−2)ポリエステルエラストマー100質量%に対して、0.01質量%〜30質量%の(a−3)不飽和カルボン酸又はその誘導体を反応させて得られるものであり、前記(a−2)ポリエステルエラストマー中のポリアルキレングリコール成分の含有率が5質量%〜90質量%である請求項1に記載のゴルフボール。
【請求項3】
前記(B)二元系アイオノマー樹脂の酸成分の含有率は、15質量%以上である請求項1または2に記載のゴルフボール。
【請求項4】
前記(C)成分は、ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアセタール、変性ポリフェニレンエーテル、ポリイミド、ポリサルホン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアミノビスマレイミド、ポリビスアミドトリアゾール、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−EPDM−スチレン共重合体よりなる群から選択される少なくとも一種である請求項1〜3のいずれか一項に記載のゴルフボール。
【請求項5】
前記カバーのJIS−C硬度Hcは、65以下である請求項1〜4のいずれか一項に記載のゴルフボール。
【請求項6】
前記カバーの厚みTcは、0.8mm以下である請求項1〜5のいずれか一項に記載のゴルフボール。
【請求項7】
前記中間層の厚みが、2.0mm以下である請求項1〜6のいずれか一項に記載のゴルフボール。
【請求項8】
前記カバーは、樹脂成分として、熱可塑性ポリウレタンを含有する請求項1〜7のいずれか一項に記載のゴルフボール。
【請求項9】
前記センターの直径が、10mm以上20mm以下であり、
前記包囲層の厚みが、8mm以上18mm以下であり、
前記中間層の厚みが、2.0mm以下であり、
前記カバーの厚みが、0.5mm以下である請求項1〜8のいずれか一項に記載のゴルフボール。
【請求項10】
前記カバーのJIS−C硬度Hcとコアの中心のJIS−C硬度Hoとの硬度差が、10以上40以下である請求項1〜9のいずれか一項に記載のゴルフボール。
【請求項11】
前記センターは、有機硫黄化合物を含有しないゴム組成物から形成されたものであり、
前記包囲層は、有機硫黄化合物を含有するゴム組成物から形成されたものである請求項1〜10のいずれか一項に記載のゴルフボール。
【請求項12】
中間層とカバーとの間に位置する接着層をさらに有し、前記接着層は、主剤としてビスフェノールA型エポキシ樹脂を、硬化剤としてポリアミン化合物を含有する接着層用組成物を硬化させてなるものであり、前記接着層用組成物のアセトンに対するゲル分率が、40質量%以上80質量%以下である請求項1〜11のいずれか一項に記載のゴルフボール。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−200551(P2012−200551A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−70626(P2011−70626)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(504017809)ダンロップスポーツ株式会社 (701)