ゴルフボール
【課題】特にロングアイアン及びミドルアイアンで打撃されたときに大きな飛距離が得られるゴルフボール2の提供。
【解決手段】このゴルフボール2のコア4は、センター10と、このセンター10の外側に位置する包囲層12とを有している。ゴルフボール2の仮想球の体積に対するコア4の体積の比率は、78%以上である。コア4の表面のJIS−C硬度Heとコア4の中心のJIS−C硬度Hoとの差(He−Ho)は、15以上40以下である。上記センター10と上記包囲層12との境界よりも半径方向外側に位置しこの境界からの距離が1mmである点P1のJIS−C硬度H1と、上記コア4の中心のJIS−C硬度Hoとの差(H1−Ho)は、0以上2以下である。
【解決手段】このゴルフボール2のコア4は、センター10と、このセンター10の外側に位置する包囲層12とを有している。ゴルフボール2の仮想球の体積に対するコア4の体積の比率は、78%以上である。コア4の表面のJIS−C硬度Heとコア4の中心のJIS−C硬度Hoとの差(He−Ho)は、15以上40以下である。上記センター10と上記包囲層12との境界よりも半径方向外側に位置しこの境界からの距離が1mmである点P1のJIS−C硬度H1と、上記コア4の中心のJIS−C硬度Hoとの差(H1−Ho)は、0以上2以下である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフボールに関する。詳細には、本発明は、センター、包囲層、中間層及びカバーを備えたマルチピースゴルフボールに関する。
【背景技術】
【0002】
ゴルフボールに対するゴルファーの最大の要求は、飛行性能である。ゴルファーは、ドライバー、ロングアイアン及びミドルアイアンでのショットにおける飛行性能を重視する。飛行性能は、ゴルフボールの反発性能と相関する。反発性能に優れたゴルフボールが打撃されると、速い速度で飛行し、大きな飛距離が達成される。
【0003】
大きな飛距離が達成されるには、適度な弾道高さが必要である。弾道高さは、スピン速度及び打ち出し角度に依存する。大きなスピン速度によって高い弾道を達成するゴルフボールでは、飛距離が不十分である。大きな打ち出し角度によって高い弾道を達成するゴルフボールでは、大きな飛距離が得られる。外剛内柔構造のコアが採用されることにより、
小さなスピン速度と大きな打ち出し角度とが達成されうる。
【0004】
ゴルファーは、ゴルフボールのスピン性能も重視する。バックスピンの速度が大きいと、ランが小さい。ゴルファーにとって、バックスピンのかかりやすいゴルフボールは、目標地点に静止させやすい。サイドスピンの速度が大きいと、ゴルフボールは曲がりやすい。ゴルファーにとって、サイドスピンのかかりやすいゴルフボールは、意図的に曲げやすい。スピンがかかりやすいゴルフボールは、コントロール性能に優れている。上級ゴルファーは、特にショートアイアンでのショットにおけるコントロール性能を重視する。
【0005】
諸性能の達成の観点から、多層構造を有するゴルフボールが提案されている。特開平9−56848号公報(特許第2888197号)、特開平8−336618号公報(特許第2817668号)及び特開平10−328326号公報(特許第3985107号)には、内芯、包囲層、内側カバー及び外側カバーを備えたゴルフボールが開示されている。特開2004−130072公報(特許第4214003号)には、コアとカバーとを備えたゴルフボールが開示されている。このコアは、3層構造を有する。このカバーの主成分は、ポリウレタン系熱可塑性エラストマーである。特開2001−17575公報(特許第3525813号)には、コア、包囲層、中間層及びカバーを備えたゴルフボールが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−56848号公報
【特許文献2】特開平8−336618号公報
【特許文献3】特開平10−328326号公報
【特許文献4】特開2004−130072公報
【特許文献5】特開2001−17575公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そのコアがセンター及び包囲層からなるゴルフボールにおいて、大きくて硬いセンターが採用されることがある。このゴルフボールでは、スピンがかかりやすい。しかも、エネルギーのロスが大きいので、反発性能が低下してしまう。このため、このゴルフボールをロングアイアン及びミドルアイアンで打撃しても、十分な飛距離が得られない。
【0008】
本発明の目的は、ロングアイアン及びミドルアイアンで打撃されたときに大きな飛距離が得られるゴルフボールの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るゴルフボールは、コアと、このコアの外側に位置する中間層と、この中間層の外側に位置するカバーとを備えている。上記コアは、センターと、このセンターの外側に位置する包囲層とを有している。ゴルフボールの仮想球の体積に対するコアの体積の比率は、78%以上である。コアの表面のJIS−C硬度Heとコアの中心のJIS−C硬度Hoとの差(He−Ho)は、15以上40以下である。上記センターと上記包囲層との境界よりも半径方向外側に位置しこの境界からの距離が1mmである点P1のJIS−C硬度H1と、上記コアの中心のJIS−C硬度Hoとの差(H1−Ho)は、0以上2以下である。
【0010】
好ましくは、このゴルフボールでは、上記カバーのJIS−C硬度Hcは65未満である。
【0011】
好ましくは、このゴルフボールでは、上記カバーの厚みは0.8mm未満である。
【0012】
好ましくは、このゴルフボールでは、上記中間層のJIS−C硬度Hmは90以上である。
【0013】
好ましくは、このゴルフボールでは、上記中間層の厚みは1.5mm以下である。
【0014】
好ましくは、このゴルフボールでは、上記カバーのJIS−C硬度Hcは上記コアの中心のJIS−C硬度Hoよりも小さい。
【0015】
好ましくは、このゴルフボールでは、上記中間層のJIS−C硬度Hmは上記コアの表面のJIS−C硬度Heよりも大きい。
【0016】
好ましくは、このゴルフボールでは、上記カバーは樹脂組成物からなる。加振周波数が10Hzであり温度が0℃である条件下で測定された上記樹脂組成物の剪断損失弾性率G”は、1.95×107Pa以下である。加振周波数が10Hzであり温度が0℃である条件下で測定された上記樹脂組成物の引張損失弾性率E”の、上記剪断損失弾性率G”に対する比(E”/G”)は、1.76以上である。
【0017】
好ましくは、このゴルフボールでは、この樹脂組成物の基材の主成分は熱可塑性ポリウレタンである。この熱可塑性ポリウレタンのポリオール成分は、数平均分子量が1500以下であるポリテトラメチレンエーテルグリコールである。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るゴルフボールでは、コアの硬度分布が適正である。このコアは、反発性能の低下を抑制しうる。しかも、このゴルフボールをロングアイアン及びミドルアイアンで打撃したとき、このゴルフボールではスピンがかかりにくい。このゴルフボールでは、ロングアイアン及びミドルアイアンで打撃されたときの飛距離が大きい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係るゴルフボールが示された一部切り欠き断面図である。
【図2】図2は、図1のゴルフボールのコアの硬度分布が示されたグラフである。
【図3】図3は、本発明の実施例2に係るゴルフボールのコアの硬度分布が示されたグラフである。
【図4】図4は、本発明の実施例3に係るゴルフボールのコアの硬度分布が示されたグラフである。
【図5】図5は、本発明の実施例6に係るゴルフボールのコアの硬度分布が示されたグラフである。
【図6】図6は、本発明の実施例7に係るゴルフボールのコアの硬度分布が示されたグラフである。
【図7】図7は、比較例1に係るゴルフボールのコアの硬度分布が示されたグラフである。
【図8】図8は、比較例2に係るゴルフボールのコアの硬度分布が示されたグラフである。
【図9】図9は、比較例3に係るゴルフボールのコアの硬度分布が示されたグラフである。
【図10】図10は、比較例4に係るゴルフボールのコアの硬度分布が示されたグラフである。
【図11】図11は、比較例5に係るゴルフボールのコアの硬度分布が示されたグラフである。
【図12】図12は、比較例6に係るゴルフボールのコアの硬度分布が示されたグラフである。
【図13】図13は、比較例7に係るゴルフボールのコアの硬度分布が示されたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0021】
図1に示されたゴルフボール2は、球状のコア4と、このコア4の外側に位置する中間層6と、この中間層6の外側に位置するカバー8とを備えている。コア4は、球状のセンター10と、このセンター10の外側に位置する包囲層12とを備えている。カバー8の表面には、多数のディンプル14が形成されている。ゴルフボール2の表面のうちディンプル14以外の部分は、ランド16である。このゴルフボール2は、カバー8の外側にペイント層及びマーク層を備えているが、これらの層の図示は省略されている。
【0022】
このゴルフボール2の直径は、40mmから45mmである。米国ゴルフ協会(USGA)の規格が満たされるとの観点から、直径は42.67mm以上が好ましい。空気抵抗抑制の観点から、直径は44mm以下が好ましく、42.80mm以下がより好ましい。このゴルフボール2の質量は、40g以上50g以下である。大きな慣性が得られるとの観点から、質量は44g以上が好ましく、45.00g以上がより好ましい。USGAの規格が満たされるとの観点から、質量は45.93g以下が好ましい。
【0023】
センター10は、ゴム組成物が架橋されることで得られる。好ましい基材ゴムとして、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体及び天然ゴムが例示される。反発性能の観点から、ポリブタジエンが好ましい。ポリブタジエンと他のゴムとが併用される場合は、ポリブタジエンが主成分とされることが好ましい。具体的には、基材ゴム全量に対するポリブタジエンの量の比率は50質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましい。ポリブタジエンにおけるシス−1,4結合の比率は40%以上が好ましく、80%以上がより好ましい。
【0024】
センター10のゴム組成物は、炭素数が2から8であるα,β−不飽和カルボン酸及び金属酸化物を含む。このゴルフボール2では、両者はゴム組成物中で反応する。これにより、塩が得られる。この塩は、共架橋剤として機能する。好ましいα,β−不飽和カルボン酸としてはアクリル酸及びメタクリル酸が挙げられる。好ましい金属酸化物としては、酸化亜鉛及び酸化マグネシウムが挙げられる。加工性が良いとの観点から、メタクリル酸と酸化マグネシウムとの組み合わせがより好ましい。α,β−不飽和カルボン酸の量は、基材ゴム100質量部に対して15質量部以上45質量部以下が好ましい。センター10が適度に架橋し、反発性能に寄与しうるとの観点から、α,β−不飽和カルボン酸の量は20質量部以上が特に好ましい。センター10の柔軟性が適切に保持され、打球感に優れるゴルフボール2が得られるとの観点から、α,β−不飽和カルボン酸の量は40質量部以下が特に好ましい。金属酸化物の量は、基材ゴム100質量部に対して20質量部以上50質量部以下が好ましい。センター10が適度に架橋し、反発性能に寄与しうるとの観点から、金属酸化物の量は25質量部以上が特に好ましい。センター10の柔軟性が適切に保持され、打球感に優れるゴルフボール2が得られるとの観点から、金属酸化物の量は45質量部以下が特に好ましい。
【0025】
センター10のゴム組成物に、炭素数が2から8であるα,β−不飽和カルボン酸の、1価又は2価の金属塩が共架橋剤として配合されてもよい。この場合、この共架橋剤の量は、基材ゴム100質量部に対して5質量部以上30質量部以下が好ましい。センター10が適度に架橋し、反発性能に寄与しうるとの観点から、この量は10質量部以上がより好ましい。センター10の柔軟性が適切に保持され、打球感に優れるゴルフボール2が得られるとの観点から、この量は25質量部以下がより好ましく、20質量部以下が特に好ましい。なお、炭素数が2から8であるα,β−不飽和カルボン酸の、1価又は2価の金属塩の具体例としては、アクリル酸亜鉛、アクリル酸マグネシウム、メタクリル酸亜鉛及びメタクリル酸マグネシウムが挙げられる。加工性が良いとの観点から、メタクリル酸マグネシウム及びメタクリル酸亜鉛が好ましい。
【0026】
好ましくは、センター10のゴム組成物は、炭素数が2から8であるα,β−不飽和カルボン酸及び金属酸化物と共に有機過酸化物を含む。有機過酸化物は、架橋開始剤として機能する。有機過酸化物は、ゴルフボール2の反発性能に寄与する。好適な有機過酸化物としては、ジクミルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン及びジ−t−ブチルパーオキサイドが挙げられる。汎用性の観点から、ジクミルパーオキサイドが好ましい。
【0027】
ゴルフボール2の反発性能の観点から、有機過酸化物の量は、基材ゴム100質量部に対して0.1質量部以上が好ましく、0.2質量部以上がより好ましく、0.3質量部以上が特に好ましい。ソフトな打球感の観点から、有機過酸化物の量は、基材ゴム100質量部に対して1.5質量部以下が好ましく、1.0質量部以下がより好ましく、0.8質量部以下が特に好ましい。
【0028】
センター10に、比重調整等の目的で充填剤が配合されてもよい。好適な充填剤としては、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム及び炭酸マグネシウムが例示される。充填剤の量は、センター10の意図した比重が達成されるように適宜決定される。特に好ましい充填剤は、酸化亜鉛である。酸化亜鉛は、比重調整の役割のみならず、架橋助剤としても機能する。
【0029】
センター10のゴム組成物には、老化防止剤、着色剤、可塑剤、分散剤、硫黄、加硫促進剤等が、必要に応じて添加される。このゴム組成物に、架橋ゴム粉末又は合成樹脂粉末が分散してもよい。このセンター10が、後述する有機硫黄化合物を含んでもよい。
【0030】
センター10の成形では、センター10のゴム組成物を、共に半球状キャビティを備えた上型及び下型からなる金型に投入し、このゴム組成物が加圧及び加熱される。加熱によって架橋反応が起こり、センター10が完成する。架橋温度は、通常は140℃以上180℃以下である。センター10の架橋時間は、通常は10分以上60分以下である。
【0031】
耐久性の観点から、センター10の中心(換言すれば、コア4の中心)の硬度Hoは40以上が好ましく、45以上がより好ましく、50以上が特に好ましい。スピン抑制の観点から、中心硬度Hoは80以下が好ましく、75以下がより好ましく、70以下が特に好ましい。センター10が切断されて得られる半球の切断面中心点に、JIS−C型硬度計が押しつけられることにより、中心硬度Hoが測定される。測定には、この硬度計が装着された自動ゴム硬度測定機(高分子計器社の商品名「P1」)が用いられる。
【0032】
このゴルフボール2では、センター10の直径は10mm以上20mm以下が好ましい。直径が10mm以上であるセンター10により、優れた打球感が達成されうる。この観点から、直径は12mm以上がより好ましく、13mm以上が特に好ましい。直径が20mm以下であるセンター10により、厚みが十分に大きな包囲層12が形成されうる。この観点から、直径は18mm以下がより好ましく、17mm以下が特に好ましい。
【0033】
包囲層12は、ゴム組成物が架橋されることで得られる。好ましい基材ゴムとして、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体及び天然ゴムが例示される。反発性能の観点から、ポリブタジエンが好ましい。ポリブタジエンと他のゴムとが併用される場合は、ポリブタジエンが主成分とされることが好ましい。具体的には、基材ゴム全量に対するポリブタジエンの量の比率は50質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましい。ポリブタジエンにおけるシス−1,4結合の比率は40%以上が好ましく、80%以上がより好ましい。
【0034】
包囲層12の架橋には、好ましくは、共架橋剤が用いられる。反発性能の観点から好ましい共架橋剤は、炭素数が2から8であるα,β−不飽和カルボン酸の、1価又は2価の金属塩である。好ましい共架橋剤の具体例としては、アクリル酸亜鉛、アクリル酸マグネシウム、メタクリル酸亜鉛及びメタクリル酸マグネシウムが挙げられる。反発性能及び打球感の観点から、アクリル酸亜鉛及びメタクリル酸亜鉛が特に好ましい。なお、この包囲層12のゴム組成物に、この共架橋剤に代えて、前述の、炭素数が2から8であるα,β−不飽和カルボン酸及び金属酸化物が配合されてもよい。
【0035】
このゴルフボールでは、共架橋剤の量は、基材ゴム100質量部に対して20質量部以上50質量部以下が好ましい。包囲層12が適度に架橋し、反発性能に寄与しうるとの観点から、この量は25質量部以上がより好ましく、30質量部以下が特に好ましい。包囲層12の柔軟性が適切に保持され、打球感に優れるゴルフボール2が得られるとの観点から、この量は45質量部以下がより好ましく、40質量部以下が特に好ましい。
【0036】
好ましくは、包囲層12のゴム組成物は、共架橋剤と共に有機過酸化物を含む。有機過酸化物は、架橋開始剤として機能する。有機過酸化物は、ゴルフボール2の反発性能に寄与する。好適な有機過酸化物としては、ジクミルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン及びジ−t−ブチルパーオキサイドが挙げられる。汎用性の観点から、ジクミルパーオキサイドが好ましい。
【0037】
ゴルフボール2の反発性能の観点から、有機過酸化物の量は、基材ゴム100質量部に対して0.1質量部以上が好ましく、0.3質量部以上がより好ましく、0.5質量部以上が特に好ましい。ソフトな打球感の観点から、有機過酸化物の量は、基材ゴム100質量部に対して2.0質量部以下が好ましく、1.5質量部以下がより好ましく、1.0質量部以下が特に好ましい。
【0038】
包囲層12のゴム組成物が有機硫黄化合物を含んでもよい。好ましい有機硫黄化合物としては、ジフェニルジスルフィド、ビス(4−クロロフェニル)ジスルフィド、ビス(3−クロロフェニル)ジスルフィド、ビス(4−ブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(3−ブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(4−フルオロフェニル)ジスルフィド、ビス(4−ヨードフェニル)ジスルフィド及びビス(4−シアノフェニル)ジスルフィドのようなモノ置換体;ビス(2,5−ジクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(3,5−ジクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,6−ジクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,5−ジブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(3,5−ジブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(2−クロロ−5−ブロモフェニル)ジスルフィド及びビス(2−シアノ−5−ブロモフェニル)ジスルフィドのようなジ置換体;ビス(2,4,6−トリクロロフェニル)ジスルフィド及びビス(2−シアノ−4−クロロ−6−ブロモフェニル)ジスルフィドのようなトリ置換体;ビス(2,3,5,6−テトラクロロフェニル)ジスルフィドのようなテトラ置換体;並びにビス(2,3,4,5,6−ペンタクロロフェニル)ジスルフィド及びビス(2,3,4,5,6−ペンタブロモフェニル)ジスルフィドのようなペンタ置換体が例示される。有機硫黄化合物は、反発性能に寄与する。より好ましい有機硫黄化合物は、ジフェニルジスルフィド及びビス(ペンタブロモフェニル)ジスルフィドである。特に好ましい有機硫黄化合物は、ビス(ペンタブロモフェニル)ジスルフィドである。
【0039】
ゴルフボール2の反発性能の観点から、有機硫黄化合物の量は、基材ゴム100質量部に対して0.1質量部以上が好ましく、0.2質量部以上がより好ましい。ソフトな打球感の観点から、有機硫黄化合物の量は、基材ゴム100質量部に対して1.5質量部以下が好ましく、1.0質量部以下がより好ましく、0.8質量部以下が特に好ましい。
【0040】
包囲層12に、比重調整等の目的で充填剤が配合されてもよい。好適な充填剤としては、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム及び炭酸マグネシウムが例示される。充填剤として、高比重金属からなる粉末が配合されてもよい。高比重金属の具体例としては、タングステン及びモリブデンが挙げられる。充填剤の量は、包囲層12の意図した比重が達成されるように適宜決定される。特に好ましい充填剤は、酸化亜鉛である。酸化亜鉛は、比重調整の役割のみならず、架橋助剤としても機能する。包囲層12には、硫黄、老化防止剤、着色剤、可塑剤、分散剤等の各種添加剤が、必要に応じて適量配合される。包囲層12に、架橋ゴム粉末又は合成樹脂粉末が配合されてもよい。
【0041】
包囲層12の成形では、未架橋状態又は半架橋状態の2枚のハーフシェルでセンター10が覆われる。このハーフシェルが加圧及び加熱される。加熱によって架橋反応が起こり、包囲層12が完成する。架橋温度は、通常は140℃以上180℃以下である。包囲層12の架橋時間は、通常は10分以上60分以下である。
【0042】
この包囲層12では、最内部から表面に向けて硬度が徐々に大きくなる。反発性能の観点から、この包囲層12の表面(すなわちコア4の表面)の硬度Heは、75以上が好ましく、80以上がより好ましく、85以上が特に好ましい。打球感の観点から、硬度Heは95以下が好ましく、93以下がより好ましく、92以下が特に好ましい。コア4の表面にJIS−C型硬度計が押しつけられることにより、硬度Heが測定される。測定には、この硬度計が装着された自動ゴム硬度測定機(高分子計器社の商品名「P1」)が用いられる。
【0043】
このゴルフボール2では、包囲層12の厚みは、8mm以上18mm以下が好ましい。厚みが8mm以上である包囲層12は、スピンを抑制しうる。この観点から、厚みは9mm以上がより好ましく、10mm以上が特に好ましい。厚みが18mm以下である包囲層12により、直径の大きなセンター10が形成されうる。直径の大きなセンター10は、ソフトな打球感に寄与しうる。この観点から、厚みは16mm以下がより好ましく、15mm以下が特に好ましい。
【0044】
図2に示されているのは、コア4の硬度分布である。縦軸は、JIS−C硬度を表している。横軸は、コア4の中心点Poからの距離を表している。中心点Poにおける硬度が、前述の中心硬度Hoである。二点鎖線LBは、このコア4におけるセンター10と包囲層12との境界位置を表している。点P1は、センター10と包囲層12との境界LBよりも半径方向外側にあり、この境界LBからの半径方向距離が1mmであるコア4上の位置を表している。図中、このP1における硬度がH1として表されている。この硬度H1は、包囲層12の最内部の硬度に相当する。点Peは、コア4の表面位置を表している。この点Peにおける硬度が、前述の表面硬度Heである。この表面硬度He以外の硬度は、コア4が切断されて得られる半球の切断面にJIS−C型硬度計が押しつけられることにより測定される。この測定には、この硬度計が装着された自動ゴム硬度測定機(高分子計器社の商品名「P1」)が用いられる。
【0045】
図2において、中心点Poから境界LBまでの部分は、センター10の硬度分布を表している。境界LBから表面Peまでの部分は、包囲層12の硬度分布を表している。図示されているように、センター10の硬度は全体として包囲層12の硬度よりも小さい。このゴルフボール2では、センター10が軟質であり、包囲層12が硬質である。コア4は、外剛内柔構造を有している。このコア4は、打球感に寄与しうる。このコア4を有するゴルフボールでは、スピンがかかりにくい。このゴルフボール2では、ドライバーで打撃されたときの飛距離は大きい。このゴルフボールでは、ロングアイアン及びミドルアイアンで打撃されたときの飛距離も大きい。
【0046】
このゴルフボール2では、センター10の硬度は中心点Poから表面に向けて同程度の値で推移している。このセンター10の硬度の変動は小さい。このセンター10は、反発性能の低下を効果的に抑制しうる。このゴルフボール2では、ドライバーで打撃されたときの飛距離は大きい。このゴルフボールでは、ロングアイアン及びミドルアイアンで打撃されたときの飛距離も大きい。
【0047】
このゴルフボール2では、包囲層12の表面硬度Heはその最内部の硬度よりも大きい。この包囲層12は、スピン速度の低下に寄与しうる。このゴルフボール2では、ドライバーで打撃されたときの飛距離は大きい。このゴルフボールでは、ロングアイアン及びミドルアイアンで打撃されたときの飛距離も大きい。
【0048】
このゴルフボール2では、反発性能の低下が防止されうるという観点から、表面硬度Heと中心硬度Hoとの差(He−Ho)は40以下が好ましく、35以下がより好ましい。スピンの抑制の観点から、この差(He−Ho)は、15以上が好ましい。
【0049】
図示されているように、境界LBの部分においては、センター10の硬度と包囲層12の硬度とは同等とされている。このコア4の硬度は、境界LBにおいて特異でない。このコア4は、ゴルフボール2全体として連続性のある外剛内柔構造の達成に寄与しうる。このコア4は、適正な硬度分布を有している。このコア4は、スピン速度の低下に寄与しうる。このコア4は、反発性能の低下を抑制しうる。このゴルフボール2では、ドライバーで打撃されたときの飛距離は大きい。このゴルフボール2では、ロングアイアン及びミドルアイアンで打撃されたときの飛距離も大きい。
【0050】
このゴルフボール2では、点P1における硬度H1は、中心硬度Hoよりも僅かに大きいか、この中心硬度Hoと同等である。より詳細には、点P1における硬度H1と中心硬度Hoとの差(H1−Ho)は0以上2以下である。このゴルフボール2では、コア4のセンター10の部分が均質な硬度を有している。このコア4は、反発性能の低下を抑制しうる。しかも、境界LBにおいて、コア4の硬度は特異でない。このコア4は、ゴルフボール2全体として連続性のある外剛内柔構造の達成に寄与しうる。このコア4を有するゴルフボール2には、スピンがかかりにくい。このゴルフボール2では、ドライバーで打撃されたときの飛距離は大きい。このゴルフボールでは、ロングアイアン及びミドルアイアンで打撃されたときの飛距離も大きい。
【0051】
ゴルフボール2の仮想球の体積に対するコア4の体積の比率は、78%以上である。換言すれば、このコア4は大きい。このコア4により、ゴルフボール2の優れた反発性能が達成されうる。このコア4により、ゴルフボール2のスピンが抑制されうる。これらの観点から、この比率は79%以上がより好ましく、80%以上が特に好ましい。仮想球の表面は、ディンプル14が存在しないと仮定されたときのゴルフボール2の表面である。
【0052】
中間層6には、樹脂組成物が好適に用いられる。この樹脂組成物の基材ポリマーとしては、アイオノマー樹脂、スチレンブロック含有熱可塑性エラストマー、熱可塑性ポリエステルエラストマー、熱可塑性ポリアミドエラストマー及び熱可塑性ポリオレフィンエラストマーが例示される。
【0053】
特に好ましい基材ポリマーは、アイオノマー樹脂である。アイオノマー樹脂は、高弾性である。後述されるように、このゴルフボール2のカバー8は、薄くかつ軟質である。従って、このゴルフボール2がドライバーで打撃されると、中間層6が大きく変形する。アイオノマー樹脂を含む中間層6は、ドライバーショットにおける反発性能に寄与する。アイオノマー樹脂と他の樹脂とが、併用されてもよい。併用される場合、反発性能の観点から、基材ポリマーの全量に対するアイオノマー樹脂の量の比率は50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、85質量%以上が特に好ましい。
【0054】
好ましいアイオノマー樹脂としては、α−オレフィンと炭素数が3以上8以下のα,β−不飽和カルボン酸との二元共重合体が挙げられる。好ましい二元共重合体は、80質量%以上90質量%以下のα−オレフィンと、10質量%以上20質量%以下のα,β−不飽和カルボン酸とを含む。この二元共重合体は、反発性能に優れる。好ましい他のアイオノマー樹脂としては、α−オレフィンと炭素数が3以上8以下のα,β−不飽和カルボン酸と炭素数が2以上22以下のα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体が挙げられる。好ましい三元共重合体は、70質量%以上85質量%以下のα−オレフィンと、5質量%以上30質量%以下のα,β−不飽和カルボン酸と、1質量%以上25質量%以下のα,β−不飽和カルボン酸エステルとを含む。この三元共重合体は、反発性能に優れる。二元共重合体及び三元共重合体において、好ましいα−オレフィンはエチレン及びプロピレンであり、好ましいα,β−不飽和カルボン酸はアクリル酸及びメタクリル酸である。特に好ましいアイオノマー樹脂は、エチレンと、アクリル酸又はメタクリル酸との共重合体である。
【0055】
二元共重合体及び三元共重合体において、カルボキシル基の一部は金属イオンで中和されている。中和のための金属イオンとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン、亜鉛イオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン及びネオジムイオンが例示される。中和が、2種以上の金属イオンでなされてもよい。ゴルフボール2の反発性能及び耐久性の観点から特に好適な金属イオンは、ナトリウムイオン、亜鉛イオン、リチウムイオン及びマグネシウムイオンである。
【0056】
アイオノマー樹脂の具体例としては、三井デュポンポリケミカル社の商品名「ハイミラン1555」、「ハイミラン1557」、「ハイミラン1605」、「ハイミラン1706」、「ハイミラン1707」、「ハイミラン1856」、「ハイミラン1855」、「ハイミランAM7311」、「ハイミランAM7315」、「ハイミランAM7317」、「ハイミランAM7318」、「ハイミランAM7329」、「ハイミランMK7320」及び「ハイミランMK7329」;デュポン社の商品名「サーリン6120」、「サーリン6910」、「サーリン7930」、「サーリン7940」、「サーリン8140」、「サーリン8150」、「サーリン8940」、「サーリン8945」、「サーリン9120」、「サーリン9150」、「サーリン9910」、「サーリン9945」、「サーリンAD8546」、「HPF1000」及び「HPF2000」;並びにエクソンモービル化学社の商品名「IOTEK7010」、「IOTEK7030」、「IOTEK7510」、「IOTEK7520」、「IOTEK8000」及び「IOTEK8030」が挙げられる。
【0057】
中間層6に、2種以上のアイオノマー樹脂が併用されてもよい。1価の金属イオンで中和されたアイオノマー樹脂と2価の金属イオンで中和されたアイオノマー樹脂とが併用されてもよい。
【0058】
中間層6が、高弾性樹脂を含んでもよい。高弾性樹脂としては、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンエーテル、ポリエチレンテレフタレート、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアミノビスマレイミド、ポリビスアミドトリアゾール、ポリフェニレンオキサイド、ポリアセアール、ポリカーボネート、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体及びアクリロニトリル−スチレン共重合体が例示される。
【0059】
中間層6には、必要に応じ、二酸化チタンのような着色剤、硫酸バリウムのような充填剤、分散剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、蛍光剤、蛍光増白剤等が、適量配合される。中間層6の形成には、射出成形法、圧縮成形法等の既知の手法が採用されうる。
【0060】
中間層6の硬度Hmは、90以上が好ましい。硬度Hmが90以上である中間層6により、ゴルフボール2の優れた反発性能が達成される。硬度Hmが90以上である中間層6により、コア4及び中間層6からなる球の外剛内柔構造が達成されうる。外剛内柔構造を有する球は、ゴルフボール2のスピンを抑制する。これらの観点から、硬度Hmは92以上が特に好ましい。耐久性及び打球感の観点から、硬度Hmは98以下が好ましく、97以下が特に好ましい。ゴルフボール全体として連続性のある外剛内柔構造が達成され、スピンが抑制されうるという観点から、中間層6の硬度Hmがコア4の表面硬度Heより大きく、かつ、コア4の表面硬度Heがセンター10の表面硬度より大きいことが好ましい。
【0061】
硬度Hmは、自動ゴム硬度測定装置(高分子計器社の商品名「P1」)に取り付けられたJIS−C型のスプリング式硬度計によって測定される。測定には、熱プレスで成形された、厚みが約2mmであるスラブが用いられる。23℃の温度下に2週間保管されたスラブが、測定に用いられる。測定時には、3枚のスラブが重ね合わされる。中間層6の樹脂組成物と同一の樹脂組成物からなるスラブが、測定に用いられる。
【0062】
スピン抑制の観点から、中間層6の厚みは0.3mm以上が好ましく、0.5mm以上が特に好ましい。打球感の観点から、厚みは1.5mm以下が好ましく、1.2mm以下がより好ましく、1.0mm以下が特に好ましい。
【0063】
カバー8は、樹脂組成物からなる。この樹脂組成物の基材ポリマーとしては、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリスチレン及びアイオノマー樹脂が例示される。特に、ポリウレタンが好ましい。ポリウレタンは、軟質である。ポリウレタンが用いられたカバー8を備えたゴルフボール2がショートアイアンで打撃されたときのスピン速度は、大きい。ポリウレタンからなるカバー8は、ショートアイアンでのショットにおけるコントロール性能に寄与する。ポリウレタンは、カバー8の耐擦傷性能にも寄与する。
【0064】
このゴルフボール2がドライバー、ロングアイアン又はミドルアイアンで打撃されたとき、ヘッド速度が大きいので、コア4と中間層6とからなる球が大きく歪む。この球は外剛内柔構造を有するので、スピン速度が抑制される。スピン速度の抑制により、大きな飛距離が達成される。このゴルフボール2がショートアイアンで打撃されたとき、ヘッド速度が小さいので、この球の歪みは小さい。ショートアイアンで打撃されたときのゴルフボール2の挙動は、主としてカバー8に依存する。ポリウレタンを含むカバー8は軟質なので、大きなスピン速度が得られる。大きなスピン速度により、優れたコントロール性能が達成される。このゴルフボール2では、ドライバー、ロングアイアン及びミドルアイアンでのショットにおける飛行性能と、ショートアイアンでのショットにおけるコントロール性能とが両立される。
【0065】
このゴルフボール2が打撃されたとき、ポリウレタンを含むカバー8が衝撃を吸収する。この吸収により、ソフトな打球感が達成される。特に、ショートアイアン又はパターで打撃されたとき、カバー8によって優れた打球感が達成される。
【0066】
打撃時のカバー8には、ゴルフクラブのヘッドの進行により、圧縮応力がかかる。ゴルフクラブのフェースはロフト角を有するので、打撃時のカバー8には、せん断応力もかかる。ショートアイアンのヘッド速度は小さく、かつショートアイアンのロフト角は大きい。従って、ゴルフボール2がショートアイアンで打撃されたとき、せん断応力がカバー8の変形挙動に大きな影響を及ぼす。ドライバーのヘッド速度は大きく、かつドライバーのロフト角は小さい。従って、ゴルフボール2がドライバーで打撃されたとき、圧縮応力がカバー8の変形挙動に大きな影響を及ぼす。
【0067】
カバー8の剪断損失弾性率G”は、1.95×107Pa以下が好ましい。前述の通り、ショートアイアンで打撃されたときのカバー8の変形挙動は、せん断応力の影響を強く受ける。ショートアイアンで打撃されたときのスピン速度は、剪断損失弾性率G”と相関する。剪断損失弾性率G”が1.95×107Pa以下であるカバー8を備えたゴルフボール2がショートアイアンで打撃されたときのスピン速度は、大きい。このカバー8により、優れたコントロール性能が達成されうる。この観点から、剪断損失弾性率G”は1.83×107Pa以下が特に好ましい。カバー8の成形容易の観点から、剪断損失弾性率G”は1.00×106Pa以上が好ましく、1.10×106Pa以上が特に好ましい。
【0068】
カバー8の引張損失弾性率E”の、剪断損失弾性率G”に対する比(E”/G”)は、1.76以上が好ましい。前述の通り、ドライバーで打撃されたときのカバー8の変形挙動は、圧縮応力の影響を強く受ける。ドライバーで打撃されたときのスピン速度は、引張損失弾性率E”と相関する。比(E”/G”)が1.76以上であるカバー8を備えたゴルフボール2がドライバーで打撃されたときのスピン速度は小さく、かつ、このゴルフボール2がショートアイアンで打撃されたときのスピン速度は大きい。この観点から、比(E”/G”)は1.86以上がより好ましく、1.90以上が特に好ましい。カバー8の成形容易の観点から、比(E”/G”)は6.0以下が好ましく、5.5以下が特に好ましい。
【0069】
引張損失弾性率E”は、2.00×107Pa以上が好ましく、2.20×107Pa以上がより好ましく、2.40×107Pa以上が特に好ましい。引張損失弾性率E”は、1.00×108Pa以下が好ましい。
【0070】
剪断損失弾性率G”及び引張損失弾性率E”は、ポリオールの分子量、ポリイソシアネートの分子量、比(NCO/OH)等の調整により、コントロールされうる。
【0071】
剪断損失弾性率G”の測定のために、カバー8の樹脂組成物と同等の樹脂組成物から、プレス成形により、厚みが2mmであるシートが得られる。このシートから、幅が10mmでありクランプ間距離が10mmである試料片が打ち抜かれる。この試験片により、剪断損失弾性率G”が測定される。測定条件は、以下の通りである。
装置:TAインスツルメント社の「レオメータARES」
測定モード:捻り(剪断)
測定温度:0℃
加振周波数:10Hz
測定ひずみ:0.1%
【0072】
引張損失弾性率E”の測定のために、カバー8の樹脂組成物と同等の樹脂組成物から、プレス成形により、厚みが2mmであるシートが得られる。このシートから、幅が4mmでありクランプ間距離が20mmである試料片が打ち抜かれる。この試験片により、引張損失弾性率E”が測定される。測定条件は、以下の通りである。
装置:ユービーエム社の動的粘弾性測定装置「Rheogel−E4000」
測定モード:引張
測定温度:0℃
加振周波数:10Hz
測定ひずみ:0.1%
【0073】
ゴルフボールとクラブとの接触時間は、数百μ秒である。従って、打撃時のゴルフボール2の変形の周波数は、数千Hzである。平均的には、ゴルフボール2は、ほぼ常温(25℃)の温度下で打撃される。一般的なポリウレタンの時間換算則に基づけば、温度が25℃である環境下における周波数が数千Hzである変形は、温度が0℃である環境下における周波数が10Hzである変形に相当する。従って本発明では、加振周波数が10Hzであり温度が0℃である条件下で、剪断損失弾性率G”及び引張損失弾性率E”が測定される。
【0074】
カバー8に、ポリウレタンと他の樹脂とが併用されてもよい。併用される場合は、スピン性能及び打球感の観点から、ポリウレタンが基材ポリマーの主成分とされる。基材ポリマーの全量に対するポリウレタンの量の比率は50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、85質量%以上が特に好ましい。
【0075】
カバー8には、熱可塑性ポリウレタン及び熱硬化性ポリウレタンが用いられうる。生産性の観点から、熱可塑性ポリウレタンが好ましい。熱可塑性ポリウレタンは、ハードセグメントとしてのポリウレタン成分と、ソフトセグメントとしてのポリエステル成分又はポリエーテル成分とを含む。
【0076】
ポリウレタンは、ポリオール成分を含む。ポリオールとしては、重合体ポリオールが好ましい。重合体ポリオールの具体例としては、ポリオキシエチレングリコール(PEG)、ポリオキシプロピレングリコール(PPG)及びポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)のようなポリエーテルポリオール;ポリエチレンアジぺート(PEA)、ポリブチレンアジペート(PBA)及びポリヘキサメチレンアジペート(PHMA)のような縮合系ポリエステルポリオール;ポリ−ε−カプロラクトン(PCL)のようなラクトン系ポリエステルポリオール;ポリヘキサメチレンカーボネートのようなポリカーボネートポリオール;並びにアクリルポリオールが挙げられる。2種以上のポリオールが併用されてもよい。
【0077】
特に、ポリテトラメチレンエーテルグリコールが好ましい。ゴルフボール2がショートアイアンで打撃されたときのスピン速度は、ポリテトラメチレンエーテルグリコールの含有率との相関が大きい。一方、ゴルフボール2がドライバーで打撃されたときのスピン速度は、ポリテトラメチレンエーテルグリコールの含有率との相関が小さい。ポリウレタンが適切な量のポリテトラメチレンエーテルグリコールを含むゴルフボール2は、ドライバーで打撃されたときの飛行性能と、ショートアイアンで打撃されたときのコントロール性能との両方に優れる。
【0078】
コントロール性能の観点から、ポリオールの数平均分子量は200以上が好ましく、400以上がより好ましく、650以上が特に好ましい。スピンの抑制の観点から、この分子量は1700以下が好ましく、1500以下がより好ましい。
【0079】
数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィによって測定される。測定条件は、以下の通りである。
装置:HLC−8120GPC(東ソー社)
溶離液:テトラヒドロフラン
濃度:0.2質量%
温度:40℃
カラム:TSKgel SuperHM−M(東ソー社)
サンプル量:5マイクロリットル
流速:0.5ミリリットル/min
標準物質:ポリスチレン(東ソー社の「PStQuick Kit−H」)
【0080】
重合体ポリオール成分の水酸基価は、94mgKOH/g以上が好ましく、112mgKOH/g以上が特に好ましい。この水酸基価は561mgKOH/g以下が好ましく、173mgKOH/g以下が特に好ましい。
【0081】
ポリウレタン中のイソシアネート成分としては、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネートと2,6−トルエンジイソシアネートの混合物(TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5−ナフチレンジイソシアネート(NDI)、3,3’−ビトリレン−4,4’−ジイソシアネート(TODI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)及びパラフェニレンジイソシアネート(PPDI)のような芳香族ポリイソシアネート;4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)、水素添加キシリレンジイソシアネート(H6XDI)及びイソホロンジイソシアネート(IPDI)のような脂環式ポリイソシアネート;並びにヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)のような脂肪族ポリイソシアネートが挙げられる。2以上のポリイソシアネートが併用されてもよい。耐候性の観点から、TMXDI、XDI、HDI、H6XDI、IPDI及びH12MDIが好ましく、H12MDIが特に好ましい。
【0082】
ポリウレタンが、その成分として鎖延長剤を含んでもよい。鎖延長剤としては、低分子量ポリオール及び低分子量ポリアミンが例示される。
【0083】
低分子量ポリオールとしては、ジオール、トリオール、テトラオール及びヘキサオールが挙げられる。ジオールの具体例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロパンジオール、ジプロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール及びオクタンジオールが挙げられる。トリオールの具体例としては、グリセリン、トリメチロールプロパン及びヘキサントリオールが挙げられる。テトラオールの具体例としては、ペンタエリスリトール及びソルビトールが挙げられる。1,4−ブタンジオールが好ましい。
【0084】
低分子量ポリアミンとしては、脂肪族ポリアミン、単環式芳香族ポリアミン及び多環式芳香族ポリアミンが挙げられる。脂肪族ポリアミンの具体例としては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン及びヘキサメチレンジアミンが挙げられる。単環式芳香族ポリアミンの具体例としては、フェニレンジアミン、トルエンジアミン、ジメチルトルエンジアミン、ジメチルチオトルエンジアミン及びキシリレンジアミンが挙げられる。
【0085】
鎖延長剤の数平均分子量は30以上が好ましく、40以上がより好ましく、45以上が特に好ましい。この分子量は、400以下が好ましく、350以下がより好ましく、200以下が特に好ましい。鎖延長剤として使用する低分子量ポリオール及び低分子量ポリアミンは、分子量分布をほとんど有さない低分子化合物である。従って、この低分子量ポリオール及び低分子量ポリアミンは、上記重合体ポリオールとは区別され得る。
【0086】
熱可塑性ポリウレタンの具体例としては、BASFジャパン社の商品名「エラストランNY80A」、「エラストランNY83A」、「エラストランNY84A」、「エラストランNY85A」、「エラストランNY88A」、「エラストランNY90A」、「エラストランNY97A」、「エラストランNY585」及び「エラストランXKP016N」;並びに大日精化工業社の商品名「レザミンP4585LS」及び「レザミンPS62490」が挙げられる。
【0087】
熱可塑性ポリウレタンとイソシアネート化合物とを含む組成物から、カバー8が成形されてもよい。カバー8の成形時又は成形後に、このイソシアネート化合物によってポリウレタンが架橋される。
【0088】
カバー8には、必要に応じ、二酸化チタンのような着色剤、硫酸バリウムのような充填剤、分散剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、蛍光剤、蛍光増白剤等が、適量配合される。
【0089】
カバー8のJIS−C硬度Hcは、65未満である。軟質なカバー8が採用されることにより、ショートアイアンでのショットにおける良好なコントロール性能が達成されうる。コントロール性能の観点から、硬度Hcは60以下がより好ましく、55以下がさらに好ましく、50以下が特に好ましい。硬度が過小であるとドライバーでのショットにおける飛行性能が不十分となる。この観点から、硬度は20以上が好ましく、25以上がより好ましく、35以上が特に好ましい。硬度Hcの測定には、カバー8の樹脂組成物と同一の樹脂組成物からなるスラブが用いられる。測定方法は、中間層6の硬度Hmの測定方法と同様である。
【0090】
カバー8の硬度Hcは、コア4の中心硬度Hoよりも小さい。このゴルフボール2は、ショートアイアンでのコントロール性能に優れる。コントロール性能の観点から、差(Ho−Hc)は3以上が好ましく、5以上がより好ましく、8以上が特に好ましい。差(Ho−Hc)は40以下が好ましく、35以下がより好ましく、30以下が特に好ましい。
【0091】
薄いカバー8を備えたゴルフボール2がドライバーで打撃されたときのスピン速度は、小さい。このゴルフボール2がロングアイアン及びミドルアイアンで打撃されたときのスピン速度も小さい。このゴルフボール2は、飛行性能に優れる。この観点から、カバー8の厚みは、0.8mm未満が好ましい。この厚みは、0.6mm以下がより好ましく、0.5mm以下がさらに好ましく、0.4mm以下が特に好ましい。ショートアイアンでのショットにおけるコントロール性能の観点から、厚みは0.10mm以上が好ましく、0.15mm以上が特に好ましい。
【0092】
カバー8の形成には、射出成形法、圧縮成形法等の既知の手法が採用されうる。カバー8の成形時に、成形型のキャビティ面に形成されたピンプルにより、ディンプル14が形成される。
【0093】
打球感の観点から、ゴルフボール2の圧縮変形量は2.3mm以上が好ましく、2.4mm以上がより好ましく、2.5mm以上が特に好ましい。反発性能の観点から、圧縮変形量は3.5mm以下が好ましく、3.2mm以下がより好ましく、3.0mm以下が特に好ましい。
【0094】
圧縮変形量の測定では、ゴルフボール2が金属製の剛板の上に置かれる。このゴルフボール2に向かって金属製の円柱が徐々に降下する。この円柱の底面と剛板との間に挟まれたゴルフボール2は、変形する。ゴルフボール2に98Nの初荷重がかかった状態から1274Nの終荷重がかかった状態までの円柱の移動距離が、圧縮変形量として測定される。
【0095】
カバー8が中間層6の上に直接に積層されると、カバー8の材質が中間層6の材質と異なっていることに起因して、カバー8が中間層6と堅固には密着しない。ゴルフボール2が、中間層6とカバー8との間に接着層を有することが好ましい。この接着層は、中間層6と堅固に密着し、カバー8とも堅固に密着する。この接着層により、カバー8の中間層6からの剥離が抑制される。前述のように、このゴルフボール2のカバー8は薄い。このゴルフボール2がクラブフェースのエッジで打撃されると、シワが生じやすい。接着層により、シワが抑制される。さらにこのゴルフボール2は、繰り返し打撃されても破損しにくい。このゴルフボール2では、ゴルフクラブで打撃されたときのエネルギー伝達のロスが小さい。従って、このゴルフボール2は反発性能に優れる。
【0096】
接着層は、中間層6の表面に接着剤が塗布され、この接着剤が乾燥することで形成されている。この接着剤の基材ポリマーは、二液硬化型エポキシ樹脂である。好ましい二液硬化型エポキシ樹脂は、ポリアミン化合物を含有する硬化剤によってビスフェノールA型エポキシ樹脂が硬化されて得られる。この二液硬化型エポキシ樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂が用いられているので、柔軟性、耐薬品性、耐熱性及び強靭性に優れる。
【0097】
接着剤は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂及び溶媒を含む主剤と、ポリアミン化合物及び溶媒を含む硬化剤とが混合されることで得られる。主剤及び硬化剤における溶媒として、キシレン及びトルエンのような有機溶媒並びに水があげられる。
【0098】
ポリアミン化合物の具体例としては、ポリアミドアミン及びその変性物が挙げられる。ポリアミドアミンは、複数のアミノ基と、1個以上のアミド基とを有する。このアミノ基が、エポキシ基と反応し得る。ポリアミドアミンは、重合脂肪酸とポリアミンとの縮合反応によって得られる。典型的な重合脂肪酸は、リノール酸、リノレイン酸等の不飽和脂肪酸を多く含む天然脂肪酸類が触媒存在下で加熱されて合成されることで得られる。不飽和脂肪酸の具体例としては、トール油、大豆油、亜麻仁油及び魚油が挙げられる。ダイマー分が90質量%以上であり、トリマー分が10質量%以下であり、且つ水素添加された重合脂肪酸が好ましい。好ましいポリアミンとしては、ポリエチレンジアミン及びポリオキシアルキレンジアミン並びにこれらの誘導体が例示される。
【0099】
この接着剤のゲル分率は、40%以上である。ゲル分率が40%以上である接着剤から形成される接着層は、揮発分が残存しにくいので、ほとんど気泡を含まない。この接着層は、中間層6と堅固に密着し、カバー8とも堅固に密着する。この観点から、ゲル分率は45%以上がより好ましく、50%以上が特に好ましい。
【0100】
この接着剤のゲル分率は、80%以下である。ゲル分率が80%以下である接着剤は、中間層6の基材ポリマーと十分に反応し、かつカバー8の基材ポリマーとも十分に反応する。この接着層は、中間層6と堅固に密着し、カバー8とも堅固に密着する。この観点から、ゲル分率は76%以下がより好ましく、70%以上が特に好ましい。
【0101】
ゲル分率が40%以上80%以下である接着剤から形成された接着層は、カバー8が薄いゴルフボール2において、特に効果を発揮する。ゲル分率が40%以上80%以下である接着剤から形成された接着層は、カバー8が軟質であるゴルフボール2において、特に効果を発揮する。
【0102】
ゲル分率の測定では、主剤と硬化剤とが混合された直後に、接着剤がPB−137Tリン酸亜鉛処理鋼板に塗布される。この鋼板のサイズは、「150mm×70mm」である。この鋼板の厚みは、0.8mmである。この鋼板を、40℃の環境下に24時間保持し、接着剤からなる塗膜を形成する。鋼板と塗膜とから、試験片が得られる。この試験片の質量を測定し、この測定値から鋼板の質量を減じることで、塗膜の質量M1を算出する。この試験片をアセトンに浸漬し、24時間静置する。この試験片を105℃の環境下に1時間保持する。この試験片を23℃まで冷却する。この試験片の質量を測定し、この測定値から鋼板の質量を減じることで、塗膜の質量M2を算出する。ゲル分率Gは、下記の数式によって算出される。
G = (M2 / M1) ・ 100
【0103】
この接着剤におけるビスフェノールA型エポキシ樹脂のエポキシ当量と硬化剤のアミン活性水素当量との比は、2.0/1.0以上13.0/1.0以下が好ましい。この比が2.0/1.0以上である接着剤では、ゲル分率が小さすぎない。従って、接着層が中間層6及びカバー8と堅固に密着する。この観点から、この比は2.6/1.0以上がより好ましく、4.0/1.0以上が特に好ましい。この比が13.0/1.0以下である接着剤では、ゲル分率が大きすぎない。従って、接着層が中間層6及びカバー8と堅固に密着する。この観点から、この比は12.2/1.0以下がより好ましく、10.0/1.0以下が特に好ましい。
【0104】
硬化剤のアミン活性水素当量は、100g/eq以上800g/eq以下が好ましい。この当量が100g/eq以上である接着剤では、ゲル分率が大きすぎない。従って、接着層が中間層6及びカバー8と堅固に密着する。この観点から、この当量は200g/eq以上がより好ましく、300g/eq以上が特に好ましい。この当量が800g/eq以下である接着剤では、ゲル分率が小さすぎない。従って、接着層が中間層6及びカバー8と堅固に密着する。この観点から、この当量は600g/eq以下がより好ましく、500g/eq以下が特に好ましい。
【0105】
接着剤は、揮発分として水を含んでいる。揮発分との用語は、水及び有機溶媒の両方を意味する。揮発分の全量に対する水の量の比率Pwは、90質量%以上が好ましい。この比率Pwが90%以上である接着剤では、ゲル分率の制御が容易である。この観点から、この比率Pwは95%以上がより好ましく、99%以上が特に好ましい。この比率Pwが100%であってもよい。環境の観点から、揮発分の全量に対する有機溶媒の量の比率Poは10%以下が好ましく、5%以下がより好ましく、1%以下が特に好ましい。
【0106】
接着層が、着色剤(典型的には二酸化チタン)、酸化防止剤、光安定剤、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、ブロッキング防止剤等の添加剤を含んでもよい。添加剤は、主剤に添加されてもよく、硬化剤に添加されてもよい。
【0107】
前述の通り、接着層は、接着剤が中間層6の表面に塗布されることで得られる。スプレーガン方式、静電塗装方式及びディッピング方式により、塗布がなされうる。作業性の観点から、スプレーガン方式による塗布が好ましい。塗布後に溶媒が揮発し、ビスフェノールA型エポキシ樹脂とポリアミン化合物とが反応して、接着層が形成される。
【0108】
ゴルフボール2の耐久性の観点から、接着層の厚みは0.001mm以上が好ましく、0.002mm以上が特に好ましい。厚みは、0.1mm以下が好ましい。厚みは、ゴルフボール2の断面がマイクロスコープで観察されることで測定される。粗面処理により中間層6の表面が凹凸を備える場合は、凸部の直上で厚みが測定される。測定は、ディンプル14の直下を避けて行われる。
【0109】
中間層6(第一層)とカバー8(第二層)との接着強度は、20N以上が好ましい。接着強度が20N以上であるゴルフボール2は、耐久性に優れる。この観点から、接着強度は22.0N以上がより好ましく、22.3N以上が特に好ましい。
【0110】
接着強度の測定では、ゴルフボール2から第一層、接着層及び第二層からなる試験片が切り出される。この試験片のサイズは、「10mm×50mm」である。この試験片の先端近傍にて、第二層を第一層から剥離させる。第一層を第一チャックに固定し、第二層を第二チャックに固定する。第一チャックに対して第二チャックを相対的に移動させ、第二層から第一層を剥離させる。この剥離のときの力を、測定する。測定には、島津製作所の「オートグラフAG−IS」が用いられる。引張り速度は、50mm/minである。
【0111】
センターと、樹脂組成物からなりセンターを覆う包囲層と、樹脂組成物からなり包囲層を覆う中間層と、樹脂組成物からなり中間層を覆うカバーとを有するゴルフボールにおいても、接着層は有効である。このゴルフボールでは、包囲層と中間層との間に接着層が存在してもよく、中間層とカバーとの間に接着層が存在してもよい。包囲層と中間層との間に接着層が存在する場合、包囲層が第一層であり、中間層が第二層である。中間層とカバーとの間に接着層が存在る場合、中間層が第一層であり、カバーが第二層である。
【実施例】
【0112】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
【0113】
[実施例1]
100質量部のハイシスポリブタジエン(JSR社の商品名「BR−730」)、28質量部のメタクリル酸、34.8質量部の酸化マグネシウム、適量の硫酸バリウム及び1.35質量部のジクミルパーオキサイドを混練し、ゴム組成物(4)を得た。このゴム組成物(4)を共に半球状キャビティを備えた上型及び下型からなる金型に投入し、170℃の温度下で20分間加熱して、直径が15mmであるセンターを得た。
【0114】
100質量部のハイシスポリブタジエン(前述の「BR−730」)、33質量部のアクリル酸亜鉛、5質量部の酸化亜鉛、適量の硫酸バリウム、0.33質量部のビス(ペンタブロモフェニル)ジスルフィド及び0.90質量部のジクミルパーオキサイドを混練し、ゴム組成物(9)を得た。このゴム組成物(9)から、ハーフシェルを成形した。上記センターを2枚のハーフシェルで被覆した。このセンター及びハーフシェルを、共に半球状キャビティを備えた上型及び下型からなる金型に投入し、150℃の温度下で20分間加熱して、直径が40.1mmであるコアを得た。ゴム組成物(9)からは、包囲層が成形された。包囲層の比重がセンターの比重と一致し、かつボール質量が45.4gとなるように、硫酸バリウムの量を調整した。
【0115】
50質量部のアイオノマー樹脂(前述の「サーリン8945」)及び50質量部の他のアイオノマー樹脂(前述の「ハイミランAM7329」)を二軸混練押出機で混練し、樹脂組成物(a)を得た。共に半球状キャビティを備えた上型及び下型からなる金型にコアを投入した。樹脂組成物(a)を射出成形法にてコアの周りに射出し、中間層を成形した。この中間層の厚みは、1.0mmであった。
【0116】
主剤及び硬化剤を含む接着剤を調製した。この主剤は、神東塗料社の水系エポキシ組成物である。この主剤は、36質量部のビスフェノールA型エポキシ樹脂と、64質量部の水とを含んでいる。この主剤のエポキシ当量は、1405g/eqである。硬化剤は、神東塗料社の水系アミン組成物である。この硬化剤は、44質量部の変性ポリアミドアミン、50質量部の水、1質量部のプロピレングリコール及び5質量部の二酸化チタンを含んでいる。この硬化剤の活性水素当量は、348g/eqである。この接着剤を中間層の表面にスプレーガンで塗布し、23℃雰囲気下で12時間保持して、接着層を得た。この接着層の厚みは、0.003mmであった。
【0117】
100質量部の熱可塑性ポリウレタンエラストマー(BASFジャパン社の商品名「エラストランNY84A」)及び4質量部の二酸化チタンを二軸混練押出機で混練し、樹脂組成物(c)を得た。この樹脂組成物(c)から、圧縮成形法にて、ハーフシェルを得た。このハーフシェル2枚で、コア、中間層及び補強層からなる球を被覆した。共に半球状キャビティを備えた上型及び下型からなり、キャビティ面に多数のピンプルを備えたファイナル金型に、上記球及びハーフシェルを投入した。圧縮成形法にて、カバーを得た。このカバーの厚みは、0.3mmであった。カバーには、ピンプルの形状が反転した形状を有するディンプルが形成された。このカバーの周りに二液硬化型ポリウレタンを基材とするクリアー塗料を塗装し、直径が42.7mmである実施例1のゴルフボールを得た。この実施例1のコアの硬度分布が、下記の表4に示されている。
【0118】
[実施例2から8及び比較例1から7]
センター、包囲層、中間層及びカバーの仕様を下記の表7から10に示される通りとした他は実施例1と同様にして、実施例2から8及び比較例1から7のゴルフボールを得た。コアのゴム組成物の詳細が、下記の表1及び表2に示されている。中間層及びカバーの樹脂組成物の詳細が、下記の表3に示されている。コアの硬度分布が、下記の表4から6に示されている。比較例4では、150℃で30分間加熱した後、170℃で5分間加熱して、センターを得た、比較例7に係るゴルフボールは、包囲層を有さない。
【0119】
[ドライバー(W#1)でのショット]
ゴルフラボラトリー社のスイングマシンに、チタンヘッドを備えたドライバー(SRIスポーツ社の商品名「SRIXON Z−TX SV−3020J T−65」、シャフト硬度:X、ロフト角:8.5°)を装着した。ヘッド速度が50m/secである条件で、ゴルフボールを打撃した。打撃直後のボール速度及びスピン速度、並びに発射地点から静止地点までの距離を測定した。12回測定されて得られたデータの平均値が、下記の表7から10に示されている。
【0120】
[ミドルアイアン(I#5)でのショット]
上記スイングマシンに、5番アイアン(SRIスポーツ社の商品名「SRIXON Z−TX」)を装着した。ヘッド速度が41m/secである条件で、ゴルフボールを打撃した。打撃直後のボール速度及びスピン速度、並びに発射地点から静止地点までの距離を測定した。12回測定されて得られたデータの平均値が、下記の表7から10に示されている。
【0121】
[ショートアイアン(SW)でのショット]
上記スイングマシンに、サンドウェッジ(SRIスポーツ社の商品名「CG15 Tour ZIP、ロフト角:58°」)を装着した。ヘッド速度が21m/secである条件でゴルフボールを打撃して、打撃直後のスピン速度を測定した。12回測定されて得られたデータの平均値が、下記の表8から11に示されている。さらに、クラブフェイスとボールとに水を付着させてゴルフボールを打撃し、打撃直後のスピン速度を測定した。12回測定されて得られたデータの平均値が、下記の表7から10に示されている。
【0122】
[耐久性テスト]
ゴルフラボラトリー社のスイングマシンに、チタンヘッドを備えたドライバー(SRIスポーツ社の商品名「XXIO」、シャフト硬度:S、ロフト角:11.0°)を装着した。ヘッド速度が45m/secである条件で、ゴルフボールを繰り返し打撃した。ゴルフボールが破損するまでの打撃回数をカウントした。カバーが破損せず、コア又は中間層が破損している場合、ゴルフボールの変形又は打球時の異音により、破損を把握した。12回測定されて得られたデータの平均値の指数に基づき、下記の格付けを行った。
A:150以上
B:100以上150未満
C:100未満
この結果が、下記の表7から10に示されている。C、B、Aの順に良好である。
【0123】
[打球感]
10名のゴルファーにサンドウェッジにてゴルフボールを打撃させ、打球感を聞き取った。「打球感が良好」と答えたゴルファーの数に基づき、下記の格付けを行った。
A:8人以上
B:6−7人
C:4−5人
D:3人以下
この結果が、下記の表7から10に示されている。
【0124】
【表1】
【0125】
【表2】
【0126】
【表3】
【0127】
表3におけるポリウレタンの詳細は、以下の通りである。
ポリウレタン*1
熱可塑性ポリウレタンエラストマー
ポリオール成分:ポリテトラメチレンエーテルグリコール
ポリオール成分の数平均分子量:1500
ポリウレタン*2
熱可塑性ポリウレタンエラストマー
ポリオール成分:ポリテトラメチレンエーテルグリコール
ポリオール成分の数平均分子量:1500
ポリウレタン*3
BASFジャパン社の商品名「エラストランNY85A」
ポリオール成分:ポリテトラメチレンエーテルグリコール
ポリオール成分の数平均分子量:1800
【0128】
【表4】
【0129】
【表5】
【0130】
【表6】
【0131】
【表7】
【0132】
【表8】
【0133】
【表9】
【0134】
【表10】
【0135】
表7から10に示されるように、実施例に係るゴルフボールは、諸性能に優れている。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0136】
本発明に係るゴルフボールは、ゴルフ場でのプレーや、ドライビングレンジにおけるプラクティスに用いられうる。
【符号の説明】
【0137】
2・・・ゴルフボール
4・・・コア
6・・・中間層
8・・・カバー
10・・・センター
12・・・包囲層
14・・・ディンプル
16・・・ランド
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフボールに関する。詳細には、本発明は、センター、包囲層、中間層及びカバーを備えたマルチピースゴルフボールに関する。
【背景技術】
【0002】
ゴルフボールに対するゴルファーの最大の要求は、飛行性能である。ゴルファーは、ドライバー、ロングアイアン及びミドルアイアンでのショットにおける飛行性能を重視する。飛行性能は、ゴルフボールの反発性能と相関する。反発性能に優れたゴルフボールが打撃されると、速い速度で飛行し、大きな飛距離が達成される。
【0003】
大きな飛距離が達成されるには、適度な弾道高さが必要である。弾道高さは、スピン速度及び打ち出し角度に依存する。大きなスピン速度によって高い弾道を達成するゴルフボールでは、飛距離が不十分である。大きな打ち出し角度によって高い弾道を達成するゴルフボールでは、大きな飛距離が得られる。外剛内柔構造のコアが採用されることにより、
小さなスピン速度と大きな打ち出し角度とが達成されうる。
【0004】
ゴルファーは、ゴルフボールのスピン性能も重視する。バックスピンの速度が大きいと、ランが小さい。ゴルファーにとって、バックスピンのかかりやすいゴルフボールは、目標地点に静止させやすい。サイドスピンの速度が大きいと、ゴルフボールは曲がりやすい。ゴルファーにとって、サイドスピンのかかりやすいゴルフボールは、意図的に曲げやすい。スピンがかかりやすいゴルフボールは、コントロール性能に優れている。上級ゴルファーは、特にショートアイアンでのショットにおけるコントロール性能を重視する。
【0005】
諸性能の達成の観点から、多層構造を有するゴルフボールが提案されている。特開平9−56848号公報(特許第2888197号)、特開平8−336618号公報(特許第2817668号)及び特開平10−328326号公報(特許第3985107号)には、内芯、包囲層、内側カバー及び外側カバーを備えたゴルフボールが開示されている。特開2004−130072公報(特許第4214003号)には、コアとカバーとを備えたゴルフボールが開示されている。このコアは、3層構造を有する。このカバーの主成分は、ポリウレタン系熱可塑性エラストマーである。特開2001−17575公報(特許第3525813号)には、コア、包囲層、中間層及びカバーを備えたゴルフボールが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−56848号公報
【特許文献2】特開平8−336618号公報
【特許文献3】特開平10−328326号公報
【特許文献4】特開2004−130072公報
【特許文献5】特開2001−17575公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そのコアがセンター及び包囲層からなるゴルフボールにおいて、大きくて硬いセンターが採用されることがある。このゴルフボールでは、スピンがかかりやすい。しかも、エネルギーのロスが大きいので、反発性能が低下してしまう。このため、このゴルフボールをロングアイアン及びミドルアイアンで打撃しても、十分な飛距離が得られない。
【0008】
本発明の目的は、ロングアイアン及びミドルアイアンで打撃されたときに大きな飛距離が得られるゴルフボールの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るゴルフボールは、コアと、このコアの外側に位置する中間層と、この中間層の外側に位置するカバーとを備えている。上記コアは、センターと、このセンターの外側に位置する包囲層とを有している。ゴルフボールの仮想球の体積に対するコアの体積の比率は、78%以上である。コアの表面のJIS−C硬度Heとコアの中心のJIS−C硬度Hoとの差(He−Ho)は、15以上40以下である。上記センターと上記包囲層との境界よりも半径方向外側に位置しこの境界からの距離が1mmである点P1のJIS−C硬度H1と、上記コアの中心のJIS−C硬度Hoとの差(H1−Ho)は、0以上2以下である。
【0010】
好ましくは、このゴルフボールでは、上記カバーのJIS−C硬度Hcは65未満である。
【0011】
好ましくは、このゴルフボールでは、上記カバーの厚みは0.8mm未満である。
【0012】
好ましくは、このゴルフボールでは、上記中間層のJIS−C硬度Hmは90以上である。
【0013】
好ましくは、このゴルフボールでは、上記中間層の厚みは1.5mm以下である。
【0014】
好ましくは、このゴルフボールでは、上記カバーのJIS−C硬度Hcは上記コアの中心のJIS−C硬度Hoよりも小さい。
【0015】
好ましくは、このゴルフボールでは、上記中間層のJIS−C硬度Hmは上記コアの表面のJIS−C硬度Heよりも大きい。
【0016】
好ましくは、このゴルフボールでは、上記カバーは樹脂組成物からなる。加振周波数が10Hzであり温度が0℃である条件下で測定された上記樹脂組成物の剪断損失弾性率G”は、1.95×107Pa以下である。加振周波数が10Hzであり温度が0℃である条件下で測定された上記樹脂組成物の引張損失弾性率E”の、上記剪断損失弾性率G”に対する比(E”/G”)は、1.76以上である。
【0017】
好ましくは、このゴルフボールでは、この樹脂組成物の基材の主成分は熱可塑性ポリウレタンである。この熱可塑性ポリウレタンのポリオール成分は、数平均分子量が1500以下であるポリテトラメチレンエーテルグリコールである。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るゴルフボールでは、コアの硬度分布が適正である。このコアは、反発性能の低下を抑制しうる。しかも、このゴルフボールをロングアイアン及びミドルアイアンで打撃したとき、このゴルフボールではスピンがかかりにくい。このゴルフボールでは、ロングアイアン及びミドルアイアンで打撃されたときの飛距離が大きい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係るゴルフボールが示された一部切り欠き断面図である。
【図2】図2は、図1のゴルフボールのコアの硬度分布が示されたグラフである。
【図3】図3は、本発明の実施例2に係るゴルフボールのコアの硬度分布が示されたグラフである。
【図4】図4は、本発明の実施例3に係るゴルフボールのコアの硬度分布が示されたグラフである。
【図5】図5は、本発明の実施例6に係るゴルフボールのコアの硬度分布が示されたグラフである。
【図6】図6は、本発明の実施例7に係るゴルフボールのコアの硬度分布が示されたグラフである。
【図7】図7は、比較例1に係るゴルフボールのコアの硬度分布が示されたグラフである。
【図8】図8は、比較例2に係るゴルフボールのコアの硬度分布が示されたグラフである。
【図9】図9は、比較例3に係るゴルフボールのコアの硬度分布が示されたグラフである。
【図10】図10は、比較例4に係るゴルフボールのコアの硬度分布が示されたグラフである。
【図11】図11は、比較例5に係るゴルフボールのコアの硬度分布が示されたグラフである。
【図12】図12は、比較例6に係るゴルフボールのコアの硬度分布が示されたグラフである。
【図13】図13は、比較例7に係るゴルフボールのコアの硬度分布が示されたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0021】
図1に示されたゴルフボール2は、球状のコア4と、このコア4の外側に位置する中間層6と、この中間層6の外側に位置するカバー8とを備えている。コア4は、球状のセンター10と、このセンター10の外側に位置する包囲層12とを備えている。カバー8の表面には、多数のディンプル14が形成されている。ゴルフボール2の表面のうちディンプル14以外の部分は、ランド16である。このゴルフボール2は、カバー8の外側にペイント層及びマーク層を備えているが、これらの層の図示は省略されている。
【0022】
このゴルフボール2の直径は、40mmから45mmである。米国ゴルフ協会(USGA)の規格が満たされるとの観点から、直径は42.67mm以上が好ましい。空気抵抗抑制の観点から、直径は44mm以下が好ましく、42.80mm以下がより好ましい。このゴルフボール2の質量は、40g以上50g以下である。大きな慣性が得られるとの観点から、質量は44g以上が好ましく、45.00g以上がより好ましい。USGAの規格が満たされるとの観点から、質量は45.93g以下が好ましい。
【0023】
センター10は、ゴム組成物が架橋されることで得られる。好ましい基材ゴムとして、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体及び天然ゴムが例示される。反発性能の観点から、ポリブタジエンが好ましい。ポリブタジエンと他のゴムとが併用される場合は、ポリブタジエンが主成分とされることが好ましい。具体的には、基材ゴム全量に対するポリブタジエンの量の比率は50質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましい。ポリブタジエンにおけるシス−1,4結合の比率は40%以上が好ましく、80%以上がより好ましい。
【0024】
センター10のゴム組成物は、炭素数が2から8であるα,β−不飽和カルボン酸及び金属酸化物を含む。このゴルフボール2では、両者はゴム組成物中で反応する。これにより、塩が得られる。この塩は、共架橋剤として機能する。好ましいα,β−不飽和カルボン酸としてはアクリル酸及びメタクリル酸が挙げられる。好ましい金属酸化物としては、酸化亜鉛及び酸化マグネシウムが挙げられる。加工性が良いとの観点から、メタクリル酸と酸化マグネシウムとの組み合わせがより好ましい。α,β−不飽和カルボン酸の量は、基材ゴム100質量部に対して15質量部以上45質量部以下が好ましい。センター10が適度に架橋し、反発性能に寄与しうるとの観点から、α,β−不飽和カルボン酸の量は20質量部以上が特に好ましい。センター10の柔軟性が適切に保持され、打球感に優れるゴルフボール2が得られるとの観点から、α,β−不飽和カルボン酸の量は40質量部以下が特に好ましい。金属酸化物の量は、基材ゴム100質量部に対して20質量部以上50質量部以下が好ましい。センター10が適度に架橋し、反発性能に寄与しうるとの観点から、金属酸化物の量は25質量部以上が特に好ましい。センター10の柔軟性が適切に保持され、打球感に優れるゴルフボール2が得られるとの観点から、金属酸化物の量は45質量部以下が特に好ましい。
【0025】
センター10のゴム組成物に、炭素数が2から8であるα,β−不飽和カルボン酸の、1価又は2価の金属塩が共架橋剤として配合されてもよい。この場合、この共架橋剤の量は、基材ゴム100質量部に対して5質量部以上30質量部以下が好ましい。センター10が適度に架橋し、反発性能に寄与しうるとの観点から、この量は10質量部以上がより好ましい。センター10の柔軟性が適切に保持され、打球感に優れるゴルフボール2が得られるとの観点から、この量は25質量部以下がより好ましく、20質量部以下が特に好ましい。なお、炭素数が2から8であるα,β−不飽和カルボン酸の、1価又は2価の金属塩の具体例としては、アクリル酸亜鉛、アクリル酸マグネシウム、メタクリル酸亜鉛及びメタクリル酸マグネシウムが挙げられる。加工性が良いとの観点から、メタクリル酸マグネシウム及びメタクリル酸亜鉛が好ましい。
【0026】
好ましくは、センター10のゴム組成物は、炭素数が2から8であるα,β−不飽和カルボン酸及び金属酸化物と共に有機過酸化物を含む。有機過酸化物は、架橋開始剤として機能する。有機過酸化物は、ゴルフボール2の反発性能に寄与する。好適な有機過酸化物としては、ジクミルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン及びジ−t−ブチルパーオキサイドが挙げられる。汎用性の観点から、ジクミルパーオキサイドが好ましい。
【0027】
ゴルフボール2の反発性能の観点から、有機過酸化物の量は、基材ゴム100質量部に対して0.1質量部以上が好ましく、0.2質量部以上がより好ましく、0.3質量部以上が特に好ましい。ソフトな打球感の観点から、有機過酸化物の量は、基材ゴム100質量部に対して1.5質量部以下が好ましく、1.0質量部以下がより好ましく、0.8質量部以下が特に好ましい。
【0028】
センター10に、比重調整等の目的で充填剤が配合されてもよい。好適な充填剤としては、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム及び炭酸マグネシウムが例示される。充填剤の量は、センター10の意図した比重が達成されるように適宜決定される。特に好ましい充填剤は、酸化亜鉛である。酸化亜鉛は、比重調整の役割のみならず、架橋助剤としても機能する。
【0029】
センター10のゴム組成物には、老化防止剤、着色剤、可塑剤、分散剤、硫黄、加硫促進剤等が、必要に応じて添加される。このゴム組成物に、架橋ゴム粉末又は合成樹脂粉末が分散してもよい。このセンター10が、後述する有機硫黄化合物を含んでもよい。
【0030】
センター10の成形では、センター10のゴム組成物を、共に半球状キャビティを備えた上型及び下型からなる金型に投入し、このゴム組成物が加圧及び加熱される。加熱によって架橋反応が起こり、センター10が完成する。架橋温度は、通常は140℃以上180℃以下である。センター10の架橋時間は、通常は10分以上60分以下である。
【0031】
耐久性の観点から、センター10の中心(換言すれば、コア4の中心)の硬度Hoは40以上が好ましく、45以上がより好ましく、50以上が特に好ましい。スピン抑制の観点から、中心硬度Hoは80以下が好ましく、75以下がより好ましく、70以下が特に好ましい。センター10が切断されて得られる半球の切断面中心点に、JIS−C型硬度計が押しつけられることにより、中心硬度Hoが測定される。測定には、この硬度計が装着された自動ゴム硬度測定機(高分子計器社の商品名「P1」)が用いられる。
【0032】
このゴルフボール2では、センター10の直径は10mm以上20mm以下が好ましい。直径が10mm以上であるセンター10により、優れた打球感が達成されうる。この観点から、直径は12mm以上がより好ましく、13mm以上が特に好ましい。直径が20mm以下であるセンター10により、厚みが十分に大きな包囲層12が形成されうる。この観点から、直径は18mm以下がより好ましく、17mm以下が特に好ましい。
【0033】
包囲層12は、ゴム組成物が架橋されることで得られる。好ましい基材ゴムとして、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体及び天然ゴムが例示される。反発性能の観点から、ポリブタジエンが好ましい。ポリブタジエンと他のゴムとが併用される場合は、ポリブタジエンが主成分とされることが好ましい。具体的には、基材ゴム全量に対するポリブタジエンの量の比率は50質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましい。ポリブタジエンにおけるシス−1,4結合の比率は40%以上が好ましく、80%以上がより好ましい。
【0034】
包囲層12の架橋には、好ましくは、共架橋剤が用いられる。反発性能の観点から好ましい共架橋剤は、炭素数が2から8であるα,β−不飽和カルボン酸の、1価又は2価の金属塩である。好ましい共架橋剤の具体例としては、アクリル酸亜鉛、アクリル酸マグネシウム、メタクリル酸亜鉛及びメタクリル酸マグネシウムが挙げられる。反発性能及び打球感の観点から、アクリル酸亜鉛及びメタクリル酸亜鉛が特に好ましい。なお、この包囲層12のゴム組成物に、この共架橋剤に代えて、前述の、炭素数が2から8であるα,β−不飽和カルボン酸及び金属酸化物が配合されてもよい。
【0035】
このゴルフボールでは、共架橋剤の量は、基材ゴム100質量部に対して20質量部以上50質量部以下が好ましい。包囲層12が適度に架橋し、反発性能に寄与しうるとの観点から、この量は25質量部以上がより好ましく、30質量部以下が特に好ましい。包囲層12の柔軟性が適切に保持され、打球感に優れるゴルフボール2が得られるとの観点から、この量は45質量部以下がより好ましく、40質量部以下が特に好ましい。
【0036】
好ましくは、包囲層12のゴム組成物は、共架橋剤と共に有機過酸化物を含む。有機過酸化物は、架橋開始剤として機能する。有機過酸化物は、ゴルフボール2の反発性能に寄与する。好適な有機過酸化物としては、ジクミルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン及びジ−t−ブチルパーオキサイドが挙げられる。汎用性の観点から、ジクミルパーオキサイドが好ましい。
【0037】
ゴルフボール2の反発性能の観点から、有機過酸化物の量は、基材ゴム100質量部に対して0.1質量部以上が好ましく、0.3質量部以上がより好ましく、0.5質量部以上が特に好ましい。ソフトな打球感の観点から、有機過酸化物の量は、基材ゴム100質量部に対して2.0質量部以下が好ましく、1.5質量部以下がより好ましく、1.0質量部以下が特に好ましい。
【0038】
包囲層12のゴム組成物が有機硫黄化合物を含んでもよい。好ましい有機硫黄化合物としては、ジフェニルジスルフィド、ビス(4−クロロフェニル)ジスルフィド、ビス(3−クロロフェニル)ジスルフィド、ビス(4−ブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(3−ブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(4−フルオロフェニル)ジスルフィド、ビス(4−ヨードフェニル)ジスルフィド及びビス(4−シアノフェニル)ジスルフィドのようなモノ置換体;ビス(2,5−ジクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(3,5−ジクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,6−ジクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,5−ジブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(3,5−ジブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(2−クロロ−5−ブロモフェニル)ジスルフィド及びビス(2−シアノ−5−ブロモフェニル)ジスルフィドのようなジ置換体;ビス(2,4,6−トリクロロフェニル)ジスルフィド及びビス(2−シアノ−4−クロロ−6−ブロモフェニル)ジスルフィドのようなトリ置換体;ビス(2,3,5,6−テトラクロロフェニル)ジスルフィドのようなテトラ置換体;並びにビス(2,3,4,5,6−ペンタクロロフェニル)ジスルフィド及びビス(2,3,4,5,6−ペンタブロモフェニル)ジスルフィドのようなペンタ置換体が例示される。有機硫黄化合物は、反発性能に寄与する。より好ましい有機硫黄化合物は、ジフェニルジスルフィド及びビス(ペンタブロモフェニル)ジスルフィドである。特に好ましい有機硫黄化合物は、ビス(ペンタブロモフェニル)ジスルフィドである。
【0039】
ゴルフボール2の反発性能の観点から、有機硫黄化合物の量は、基材ゴム100質量部に対して0.1質量部以上が好ましく、0.2質量部以上がより好ましい。ソフトな打球感の観点から、有機硫黄化合物の量は、基材ゴム100質量部に対して1.5質量部以下が好ましく、1.0質量部以下がより好ましく、0.8質量部以下が特に好ましい。
【0040】
包囲層12に、比重調整等の目的で充填剤が配合されてもよい。好適な充填剤としては、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム及び炭酸マグネシウムが例示される。充填剤として、高比重金属からなる粉末が配合されてもよい。高比重金属の具体例としては、タングステン及びモリブデンが挙げられる。充填剤の量は、包囲層12の意図した比重が達成されるように適宜決定される。特に好ましい充填剤は、酸化亜鉛である。酸化亜鉛は、比重調整の役割のみならず、架橋助剤としても機能する。包囲層12には、硫黄、老化防止剤、着色剤、可塑剤、分散剤等の各種添加剤が、必要に応じて適量配合される。包囲層12に、架橋ゴム粉末又は合成樹脂粉末が配合されてもよい。
【0041】
包囲層12の成形では、未架橋状態又は半架橋状態の2枚のハーフシェルでセンター10が覆われる。このハーフシェルが加圧及び加熱される。加熱によって架橋反応が起こり、包囲層12が完成する。架橋温度は、通常は140℃以上180℃以下である。包囲層12の架橋時間は、通常は10分以上60分以下である。
【0042】
この包囲層12では、最内部から表面に向けて硬度が徐々に大きくなる。反発性能の観点から、この包囲層12の表面(すなわちコア4の表面)の硬度Heは、75以上が好ましく、80以上がより好ましく、85以上が特に好ましい。打球感の観点から、硬度Heは95以下が好ましく、93以下がより好ましく、92以下が特に好ましい。コア4の表面にJIS−C型硬度計が押しつけられることにより、硬度Heが測定される。測定には、この硬度計が装着された自動ゴム硬度測定機(高分子計器社の商品名「P1」)が用いられる。
【0043】
このゴルフボール2では、包囲層12の厚みは、8mm以上18mm以下が好ましい。厚みが8mm以上である包囲層12は、スピンを抑制しうる。この観点から、厚みは9mm以上がより好ましく、10mm以上が特に好ましい。厚みが18mm以下である包囲層12により、直径の大きなセンター10が形成されうる。直径の大きなセンター10は、ソフトな打球感に寄与しうる。この観点から、厚みは16mm以下がより好ましく、15mm以下が特に好ましい。
【0044】
図2に示されているのは、コア4の硬度分布である。縦軸は、JIS−C硬度を表している。横軸は、コア4の中心点Poからの距離を表している。中心点Poにおける硬度が、前述の中心硬度Hoである。二点鎖線LBは、このコア4におけるセンター10と包囲層12との境界位置を表している。点P1は、センター10と包囲層12との境界LBよりも半径方向外側にあり、この境界LBからの半径方向距離が1mmであるコア4上の位置を表している。図中、このP1における硬度がH1として表されている。この硬度H1は、包囲層12の最内部の硬度に相当する。点Peは、コア4の表面位置を表している。この点Peにおける硬度が、前述の表面硬度Heである。この表面硬度He以外の硬度は、コア4が切断されて得られる半球の切断面にJIS−C型硬度計が押しつけられることにより測定される。この測定には、この硬度計が装着された自動ゴム硬度測定機(高分子計器社の商品名「P1」)が用いられる。
【0045】
図2において、中心点Poから境界LBまでの部分は、センター10の硬度分布を表している。境界LBから表面Peまでの部分は、包囲層12の硬度分布を表している。図示されているように、センター10の硬度は全体として包囲層12の硬度よりも小さい。このゴルフボール2では、センター10が軟質であり、包囲層12が硬質である。コア4は、外剛内柔構造を有している。このコア4は、打球感に寄与しうる。このコア4を有するゴルフボールでは、スピンがかかりにくい。このゴルフボール2では、ドライバーで打撃されたときの飛距離は大きい。このゴルフボールでは、ロングアイアン及びミドルアイアンで打撃されたときの飛距離も大きい。
【0046】
このゴルフボール2では、センター10の硬度は中心点Poから表面に向けて同程度の値で推移している。このセンター10の硬度の変動は小さい。このセンター10は、反発性能の低下を効果的に抑制しうる。このゴルフボール2では、ドライバーで打撃されたときの飛距離は大きい。このゴルフボールでは、ロングアイアン及びミドルアイアンで打撃されたときの飛距離も大きい。
【0047】
このゴルフボール2では、包囲層12の表面硬度Heはその最内部の硬度よりも大きい。この包囲層12は、スピン速度の低下に寄与しうる。このゴルフボール2では、ドライバーで打撃されたときの飛距離は大きい。このゴルフボールでは、ロングアイアン及びミドルアイアンで打撃されたときの飛距離も大きい。
【0048】
このゴルフボール2では、反発性能の低下が防止されうるという観点から、表面硬度Heと中心硬度Hoとの差(He−Ho)は40以下が好ましく、35以下がより好ましい。スピンの抑制の観点から、この差(He−Ho)は、15以上が好ましい。
【0049】
図示されているように、境界LBの部分においては、センター10の硬度と包囲層12の硬度とは同等とされている。このコア4の硬度は、境界LBにおいて特異でない。このコア4は、ゴルフボール2全体として連続性のある外剛内柔構造の達成に寄与しうる。このコア4は、適正な硬度分布を有している。このコア4は、スピン速度の低下に寄与しうる。このコア4は、反発性能の低下を抑制しうる。このゴルフボール2では、ドライバーで打撃されたときの飛距離は大きい。このゴルフボール2では、ロングアイアン及びミドルアイアンで打撃されたときの飛距離も大きい。
【0050】
このゴルフボール2では、点P1における硬度H1は、中心硬度Hoよりも僅かに大きいか、この中心硬度Hoと同等である。より詳細には、点P1における硬度H1と中心硬度Hoとの差(H1−Ho)は0以上2以下である。このゴルフボール2では、コア4のセンター10の部分が均質な硬度を有している。このコア4は、反発性能の低下を抑制しうる。しかも、境界LBにおいて、コア4の硬度は特異でない。このコア4は、ゴルフボール2全体として連続性のある外剛内柔構造の達成に寄与しうる。このコア4を有するゴルフボール2には、スピンがかかりにくい。このゴルフボール2では、ドライバーで打撃されたときの飛距離は大きい。このゴルフボールでは、ロングアイアン及びミドルアイアンで打撃されたときの飛距離も大きい。
【0051】
ゴルフボール2の仮想球の体積に対するコア4の体積の比率は、78%以上である。換言すれば、このコア4は大きい。このコア4により、ゴルフボール2の優れた反発性能が達成されうる。このコア4により、ゴルフボール2のスピンが抑制されうる。これらの観点から、この比率は79%以上がより好ましく、80%以上が特に好ましい。仮想球の表面は、ディンプル14が存在しないと仮定されたときのゴルフボール2の表面である。
【0052】
中間層6には、樹脂組成物が好適に用いられる。この樹脂組成物の基材ポリマーとしては、アイオノマー樹脂、スチレンブロック含有熱可塑性エラストマー、熱可塑性ポリエステルエラストマー、熱可塑性ポリアミドエラストマー及び熱可塑性ポリオレフィンエラストマーが例示される。
【0053】
特に好ましい基材ポリマーは、アイオノマー樹脂である。アイオノマー樹脂は、高弾性である。後述されるように、このゴルフボール2のカバー8は、薄くかつ軟質である。従って、このゴルフボール2がドライバーで打撃されると、中間層6が大きく変形する。アイオノマー樹脂を含む中間層6は、ドライバーショットにおける反発性能に寄与する。アイオノマー樹脂と他の樹脂とが、併用されてもよい。併用される場合、反発性能の観点から、基材ポリマーの全量に対するアイオノマー樹脂の量の比率は50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、85質量%以上が特に好ましい。
【0054】
好ましいアイオノマー樹脂としては、α−オレフィンと炭素数が3以上8以下のα,β−不飽和カルボン酸との二元共重合体が挙げられる。好ましい二元共重合体は、80質量%以上90質量%以下のα−オレフィンと、10質量%以上20質量%以下のα,β−不飽和カルボン酸とを含む。この二元共重合体は、反発性能に優れる。好ましい他のアイオノマー樹脂としては、α−オレフィンと炭素数が3以上8以下のα,β−不飽和カルボン酸と炭素数が2以上22以下のα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体が挙げられる。好ましい三元共重合体は、70質量%以上85質量%以下のα−オレフィンと、5質量%以上30質量%以下のα,β−不飽和カルボン酸と、1質量%以上25質量%以下のα,β−不飽和カルボン酸エステルとを含む。この三元共重合体は、反発性能に優れる。二元共重合体及び三元共重合体において、好ましいα−オレフィンはエチレン及びプロピレンであり、好ましいα,β−不飽和カルボン酸はアクリル酸及びメタクリル酸である。特に好ましいアイオノマー樹脂は、エチレンと、アクリル酸又はメタクリル酸との共重合体である。
【0055】
二元共重合体及び三元共重合体において、カルボキシル基の一部は金属イオンで中和されている。中和のための金属イオンとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン、亜鉛イオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン及びネオジムイオンが例示される。中和が、2種以上の金属イオンでなされてもよい。ゴルフボール2の反発性能及び耐久性の観点から特に好適な金属イオンは、ナトリウムイオン、亜鉛イオン、リチウムイオン及びマグネシウムイオンである。
【0056】
アイオノマー樹脂の具体例としては、三井デュポンポリケミカル社の商品名「ハイミラン1555」、「ハイミラン1557」、「ハイミラン1605」、「ハイミラン1706」、「ハイミラン1707」、「ハイミラン1856」、「ハイミラン1855」、「ハイミランAM7311」、「ハイミランAM7315」、「ハイミランAM7317」、「ハイミランAM7318」、「ハイミランAM7329」、「ハイミランMK7320」及び「ハイミランMK7329」;デュポン社の商品名「サーリン6120」、「サーリン6910」、「サーリン7930」、「サーリン7940」、「サーリン8140」、「サーリン8150」、「サーリン8940」、「サーリン8945」、「サーリン9120」、「サーリン9150」、「サーリン9910」、「サーリン9945」、「サーリンAD8546」、「HPF1000」及び「HPF2000」;並びにエクソンモービル化学社の商品名「IOTEK7010」、「IOTEK7030」、「IOTEK7510」、「IOTEK7520」、「IOTEK8000」及び「IOTEK8030」が挙げられる。
【0057】
中間層6に、2種以上のアイオノマー樹脂が併用されてもよい。1価の金属イオンで中和されたアイオノマー樹脂と2価の金属イオンで中和されたアイオノマー樹脂とが併用されてもよい。
【0058】
中間層6が、高弾性樹脂を含んでもよい。高弾性樹脂としては、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンエーテル、ポリエチレンテレフタレート、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアミノビスマレイミド、ポリビスアミドトリアゾール、ポリフェニレンオキサイド、ポリアセアール、ポリカーボネート、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体及びアクリロニトリル−スチレン共重合体が例示される。
【0059】
中間層6には、必要に応じ、二酸化チタンのような着色剤、硫酸バリウムのような充填剤、分散剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、蛍光剤、蛍光増白剤等が、適量配合される。中間層6の形成には、射出成形法、圧縮成形法等の既知の手法が採用されうる。
【0060】
中間層6の硬度Hmは、90以上が好ましい。硬度Hmが90以上である中間層6により、ゴルフボール2の優れた反発性能が達成される。硬度Hmが90以上である中間層6により、コア4及び中間層6からなる球の外剛内柔構造が達成されうる。外剛内柔構造を有する球は、ゴルフボール2のスピンを抑制する。これらの観点から、硬度Hmは92以上が特に好ましい。耐久性及び打球感の観点から、硬度Hmは98以下が好ましく、97以下が特に好ましい。ゴルフボール全体として連続性のある外剛内柔構造が達成され、スピンが抑制されうるという観点から、中間層6の硬度Hmがコア4の表面硬度Heより大きく、かつ、コア4の表面硬度Heがセンター10の表面硬度より大きいことが好ましい。
【0061】
硬度Hmは、自動ゴム硬度測定装置(高分子計器社の商品名「P1」)に取り付けられたJIS−C型のスプリング式硬度計によって測定される。測定には、熱プレスで成形された、厚みが約2mmであるスラブが用いられる。23℃の温度下に2週間保管されたスラブが、測定に用いられる。測定時には、3枚のスラブが重ね合わされる。中間層6の樹脂組成物と同一の樹脂組成物からなるスラブが、測定に用いられる。
【0062】
スピン抑制の観点から、中間層6の厚みは0.3mm以上が好ましく、0.5mm以上が特に好ましい。打球感の観点から、厚みは1.5mm以下が好ましく、1.2mm以下がより好ましく、1.0mm以下が特に好ましい。
【0063】
カバー8は、樹脂組成物からなる。この樹脂組成物の基材ポリマーとしては、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリスチレン及びアイオノマー樹脂が例示される。特に、ポリウレタンが好ましい。ポリウレタンは、軟質である。ポリウレタンが用いられたカバー8を備えたゴルフボール2がショートアイアンで打撃されたときのスピン速度は、大きい。ポリウレタンからなるカバー8は、ショートアイアンでのショットにおけるコントロール性能に寄与する。ポリウレタンは、カバー8の耐擦傷性能にも寄与する。
【0064】
このゴルフボール2がドライバー、ロングアイアン又はミドルアイアンで打撃されたとき、ヘッド速度が大きいので、コア4と中間層6とからなる球が大きく歪む。この球は外剛内柔構造を有するので、スピン速度が抑制される。スピン速度の抑制により、大きな飛距離が達成される。このゴルフボール2がショートアイアンで打撃されたとき、ヘッド速度が小さいので、この球の歪みは小さい。ショートアイアンで打撃されたときのゴルフボール2の挙動は、主としてカバー8に依存する。ポリウレタンを含むカバー8は軟質なので、大きなスピン速度が得られる。大きなスピン速度により、優れたコントロール性能が達成される。このゴルフボール2では、ドライバー、ロングアイアン及びミドルアイアンでのショットにおける飛行性能と、ショートアイアンでのショットにおけるコントロール性能とが両立される。
【0065】
このゴルフボール2が打撃されたとき、ポリウレタンを含むカバー8が衝撃を吸収する。この吸収により、ソフトな打球感が達成される。特に、ショートアイアン又はパターで打撃されたとき、カバー8によって優れた打球感が達成される。
【0066】
打撃時のカバー8には、ゴルフクラブのヘッドの進行により、圧縮応力がかかる。ゴルフクラブのフェースはロフト角を有するので、打撃時のカバー8には、せん断応力もかかる。ショートアイアンのヘッド速度は小さく、かつショートアイアンのロフト角は大きい。従って、ゴルフボール2がショートアイアンで打撃されたとき、せん断応力がカバー8の変形挙動に大きな影響を及ぼす。ドライバーのヘッド速度は大きく、かつドライバーのロフト角は小さい。従って、ゴルフボール2がドライバーで打撃されたとき、圧縮応力がカバー8の変形挙動に大きな影響を及ぼす。
【0067】
カバー8の剪断損失弾性率G”は、1.95×107Pa以下が好ましい。前述の通り、ショートアイアンで打撃されたときのカバー8の変形挙動は、せん断応力の影響を強く受ける。ショートアイアンで打撃されたときのスピン速度は、剪断損失弾性率G”と相関する。剪断損失弾性率G”が1.95×107Pa以下であるカバー8を備えたゴルフボール2がショートアイアンで打撃されたときのスピン速度は、大きい。このカバー8により、優れたコントロール性能が達成されうる。この観点から、剪断損失弾性率G”は1.83×107Pa以下が特に好ましい。カバー8の成形容易の観点から、剪断損失弾性率G”は1.00×106Pa以上が好ましく、1.10×106Pa以上が特に好ましい。
【0068】
カバー8の引張損失弾性率E”の、剪断損失弾性率G”に対する比(E”/G”)は、1.76以上が好ましい。前述の通り、ドライバーで打撃されたときのカバー8の変形挙動は、圧縮応力の影響を強く受ける。ドライバーで打撃されたときのスピン速度は、引張損失弾性率E”と相関する。比(E”/G”)が1.76以上であるカバー8を備えたゴルフボール2がドライバーで打撃されたときのスピン速度は小さく、かつ、このゴルフボール2がショートアイアンで打撃されたときのスピン速度は大きい。この観点から、比(E”/G”)は1.86以上がより好ましく、1.90以上が特に好ましい。カバー8の成形容易の観点から、比(E”/G”)は6.0以下が好ましく、5.5以下が特に好ましい。
【0069】
引張損失弾性率E”は、2.00×107Pa以上が好ましく、2.20×107Pa以上がより好ましく、2.40×107Pa以上が特に好ましい。引張損失弾性率E”は、1.00×108Pa以下が好ましい。
【0070】
剪断損失弾性率G”及び引張損失弾性率E”は、ポリオールの分子量、ポリイソシアネートの分子量、比(NCO/OH)等の調整により、コントロールされうる。
【0071】
剪断損失弾性率G”の測定のために、カバー8の樹脂組成物と同等の樹脂組成物から、プレス成形により、厚みが2mmであるシートが得られる。このシートから、幅が10mmでありクランプ間距離が10mmである試料片が打ち抜かれる。この試験片により、剪断損失弾性率G”が測定される。測定条件は、以下の通りである。
装置:TAインスツルメント社の「レオメータARES」
測定モード:捻り(剪断)
測定温度:0℃
加振周波数:10Hz
測定ひずみ:0.1%
【0072】
引張損失弾性率E”の測定のために、カバー8の樹脂組成物と同等の樹脂組成物から、プレス成形により、厚みが2mmであるシートが得られる。このシートから、幅が4mmでありクランプ間距離が20mmである試料片が打ち抜かれる。この試験片により、引張損失弾性率E”が測定される。測定条件は、以下の通りである。
装置:ユービーエム社の動的粘弾性測定装置「Rheogel−E4000」
測定モード:引張
測定温度:0℃
加振周波数:10Hz
測定ひずみ:0.1%
【0073】
ゴルフボールとクラブとの接触時間は、数百μ秒である。従って、打撃時のゴルフボール2の変形の周波数は、数千Hzである。平均的には、ゴルフボール2は、ほぼ常温(25℃)の温度下で打撃される。一般的なポリウレタンの時間換算則に基づけば、温度が25℃である環境下における周波数が数千Hzである変形は、温度が0℃である環境下における周波数が10Hzである変形に相当する。従って本発明では、加振周波数が10Hzであり温度が0℃である条件下で、剪断損失弾性率G”及び引張損失弾性率E”が測定される。
【0074】
カバー8に、ポリウレタンと他の樹脂とが併用されてもよい。併用される場合は、スピン性能及び打球感の観点から、ポリウレタンが基材ポリマーの主成分とされる。基材ポリマーの全量に対するポリウレタンの量の比率は50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、85質量%以上が特に好ましい。
【0075】
カバー8には、熱可塑性ポリウレタン及び熱硬化性ポリウレタンが用いられうる。生産性の観点から、熱可塑性ポリウレタンが好ましい。熱可塑性ポリウレタンは、ハードセグメントとしてのポリウレタン成分と、ソフトセグメントとしてのポリエステル成分又はポリエーテル成分とを含む。
【0076】
ポリウレタンは、ポリオール成分を含む。ポリオールとしては、重合体ポリオールが好ましい。重合体ポリオールの具体例としては、ポリオキシエチレングリコール(PEG)、ポリオキシプロピレングリコール(PPG)及びポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)のようなポリエーテルポリオール;ポリエチレンアジぺート(PEA)、ポリブチレンアジペート(PBA)及びポリヘキサメチレンアジペート(PHMA)のような縮合系ポリエステルポリオール;ポリ−ε−カプロラクトン(PCL)のようなラクトン系ポリエステルポリオール;ポリヘキサメチレンカーボネートのようなポリカーボネートポリオール;並びにアクリルポリオールが挙げられる。2種以上のポリオールが併用されてもよい。
【0077】
特に、ポリテトラメチレンエーテルグリコールが好ましい。ゴルフボール2がショートアイアンで打撃されたときのスピン速度は、ポリテトラメチレンエーテルグリコールの含有率との相関が大きい。一方、ゴルフボール2がドライバーで打撃されたときのスピン速度は、ポリテトラメチレンエーテルグリコールの含有率との相関が小さい。ポリウレタンが適切な量のポリテトラメチレンエーテルグリコールを含むゴルフボール2は、ドライバーで打撃されたときの飛行性能と、ショートアイアンで打撃されたときのコントロール性能との両方に優れる。
【0078】
コントロール性能の観点から、ポリオールの数平均分子量は200以上が好ましく、400以上がより好ましく、650以上が特に好ましい。スピンの抑制の観点から、この分子量は1700以下が好ましく、1500以下がより好ましい。
【0079】
数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィによって測定される。測定条件は、以下の通りである。
装置:HLC−8120GPC(東ソー社)
溶離液:テトラヒドロフラン
濃度:0.2質量%
温度:40℃
カラム:TSKgel SuperHM−M(東ソー社)
サンプル量:5マイクロリットル
流速:0.5ミリリットル/min
標準物質:ポリスチレン(東ソー社の「PStQuick Kit−H」)
【0080】
重合体ポリオール成分の水酸基価は、94mgKOH/g以上が好ましく、112mgKOH/g以上が特に好ましい。この水酸基価は561mgKOH/g以下が好ましく、173mgKOH/g以下が特に好ましい。
【0081】
ポリウレタン中のイソシアネート成分としては、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネートと2,6−トルエンジイソシアネートの混合物(TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5−ナフチレンジイソシアネート(NDI)、3,3’−ビトリレン−4,4’−ジイソシアネート(TODI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)及びパラフェニレンジイソシアネート(PPDI)のような芳香族ポリイソシアネート;4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)、水素添加キシリレンジイソシアネート(H6XDI)及びイソホロンジイソシアネート(IPDI)のような脂環式ポリイソシアネート;並びにヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)のような脂肪族ポリイソシアネートが挙げられる。2以上のポリイソシアネートが併用されてもよい。耐候性の観点から、TMXDI、XDI、HDI、H6XDI、IPDI及びH12MDIが好ましく、H12MDIが特に好ましい。
【0082】
ポリウレタンが、その成分として鎖延長剤を含んでもよい。鎖延長剤としては、低分子量ポリオール及び低分子量ポリアミンが例示される。
【0083】
低分子量ポリオールとしては、ジオール、トリオール、テトラオール及びヘキサオールが挙げられる。ジオールの具体例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロパンジオール、ジプロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール及びオクタンジオールが挙げられる。トリオールの具体例としては、グリセリン、トリメチロールプロパン及びヘキサントリオールが挙げられる。テトラオールの具体例としては、ペンタエリスリトール及びソルビトールが挙げられる。1,4−ブタンジオールが好ましい。
【0084】
低分子量ポリアミンとしては、脂肪族ポリアミン、単環式芳香族ポリアミン及び多環式芳香族ポリアミンが挙げられる。脂肪族ポリアミンの具体例としては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン及びヘキサメチレンジアミンが挙げられる。単環式芳香族ポリアミンの具体例としては、フェニレンジアミン、トルエンジアミン、ジメチルトルエンジアミン、ジメチルチオトルエンジアミン及びキシリレンジアミンが挙げられる。
【0085】
鎖延長剤の数平均分子量は30以上が好ましく、40以上がより好ましく、45以上が特に好ましい。この分子量は、400以下が好ましく、350以下がより好ましく、200以下が特に好ましい。鎖延長剤として使用する低分子量ポリオール及び低分子量ポリアミンは、分子量分布をほとんど有さない低分子化合物である。従って、この低分子量ポリオール及び低分子量ポリアミンは、上記重合体ポリオールとは区別され得る。
【0086】
熱可塑性ポリウレタンの具体例としては、BASFジャパン社の商品名「エラストランNY80A」、「エラストランNY83A」、「エラストランNY84A」、「エラストランNY85A」、「エラストランNY88A」、「エラストランNY90A」、「エラストランNY97A」、「エラストランNY585」及び「エラストランXKP016N」;並びに大日精化工業社の商品名「レザミンP4585LS」及び「レザミンPS62490」が挙げられる。
【0087】
熱可塑性ポリウレタンとイソシアネート化合物とを含む組成物から、カバー8が成形されてもよい。カバー8の成形時又は成形後に、このイソシアネート化合物によってポリウレタンが架橋される。
【0088】
カバー8には、必要に応じ、二酸化チタンのような着色剤、硫酸バリウムのような充填剤、分散剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、蛍光剤、蛍光増白剤等が、適量配合される。
【0089】
カバー8のJIS−C硬度Hcは、65未満である。軟質なカバー8が採用されることにより、ショートアイアンでのショットにおける良好なコントロール性能が達成されうる。コントロール性能の観点から、硬度Hcは60以下がより好ましく、55以下がさらに好ましく、50以下が特に好ましい。硬度が過小であるとドライバーでのショットにおける飛行性能が不十分となる。この観点から、硬度は20以上が好ましく、25以上がより好ましく、35以上が特に好ましい。硬度Hcの測定には、カバー8の樹脂組成物と同一の樹脂組成物からなるスラブが用いられる。測定方法は、中間層6の硬度Hmの測定方法と同様である。
【0090】
カバー8の硬度Hcは、コア4の中心硬度Hoよりも小さい。このゴルフボール2は、ショートアイアンでのコントロール性能に優れる。コントロール性能の観点から、差(Ho−Hc)は3以上が好ましく、5以上がより好ましく、8以上が特に好ましい。差(Ho−Hc)は40以下が好ましく、35以下がより好ましく、30以下が特に好ましい。
【0091】
薄いカバー8を備えたゴルフボール2がドライバーで打撃されたときのスピン速度は、小さい。このゴルフボール2がロングアイアン及びミドルアイアンで打撃されたときのスピン速度も小さい。このゴルフボール2は、飛行性能に優れる。この観点から、カバー8の厚みは、0.8mm未満が好ましい。この厚みは、0.6mm以下がより好ましく、0.5mm以下がさらに好ましく、0.4mm以下が特に好ましい。ショートアイアンでのショットにおけるコントロール性能の観点から、厚みは0.10mm以上が好ましく、0.15mm以上が特に好ましい。
【0092】
カバー8の形成には、射出成形法、圧縮成形法等の既知の手法が採用されうる。カバー8の成形時に、成形型のキャビティ面に形成されたピンプルにより、ディンプル14が形成される。
【0093】
打球感の観点から、ゴルフボール2の圧縮変形量は2.3mm以上が好ましく、2.4mm以上がより好ましく、2.5mm以上が特に好ましい。反発性能の観点から、圧縮変形量は3.5mm以下が好ましく、3.2mm以下がより好ましく、3.0mm以下が特に好ましい。
【0094】
圧縮変形量の測定では、ゴルフボール2が金属製の剛板の上に置かれる。このゴルフボール2に向かって金属製の円柱が徐々に降下する。この円柱の底面と剛板との間に挟まれたゴルフボール2は、変形する。ゴルフボール2に98Nの初荷重がかかった状態から1274Nの終荷重がかかった状態までの円柱の移動距離が、圧縮変形量として測定される。
【0095】
カバー8が中間層6の上に直接に積層されると、カバー8の材質が中間層6の材質と異なっていることに起因して、カバー8が中間層6と堅固には密着しない。ゴルフボール2が、中間層6とカバー8との間に接着層を有することが好ましい。この接着層は、中間層6と堅固に密着し、カバー8とも堅固に密着する。この接着層により、カバー8の中間層6からの剥離が抑制される。前述のように、このゴルフボール2のカバー8は薄い。このゴルフボール2がクラブフェースのエッジで打撃されると、シワが生じやすい。接着層により、シワが抑制される。さらにこのゴルフボール2は、繰り返し打撃されても破損しにくい。このゴルフボール2では、ゴルフクラブで打撃されたときのエネルギー伝達のロスが小さい。従って、このゴルフボール2は反発性能に優れる。
【0096】
接着層は、中間層6の表面に接着剤が塗布され、この接着剤が乾燥することで形成されている。この接着剤の基材ポリマーは、二液硬化型エポキシ樹脂である。好ましい二液硬化型エポキシ樹脂は、ポリアミン化合物を含有する硬化剤によってビスフェノールA型エポキシ樹脂が硬化されて得られる。この二液硬化型エポキシ樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂が用いられているので、柔軟性、耐薬品性、耐熱性及び強靭性に優れる。
【0097】
接着剤は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂及び溶媒を含む主剤と、ポリアミン化合物及び溶媒を含む硬化剤とが混合されることで得られる。主剤及び硬化剤における溶媒として、キシレン及びトルエンのような有機溶媒並びに水があげられる。
【0098】
ポリアミン化合物の具体例としては、ポリアミドアミン及びその変性物が挙げられる。ポリアミドアミンは、複数のアミノ基と、1個以上のアミド基とを有する。このアミノ基が、エポキシ基と反応し得る。ポリアミドアミンは、重合脂肪酸とポリアミンとの縮合反応によって得られる。典型的な重合脂肪酸は、リノール酸、リノレイン酸等の不飽和脂肪酸を多く含む天然脂肪酸類が触媒存在下で加熱されて合成されることで得られる。不飽和脂肪酸の具体例としては、トール油、大豆油、亜麻仁油及び魚油が挙げられる。ダイマー分が90質量%以上であり、トリマー分が10質量%以下であり、且つ水素添加された重合脂肪酸が好ましい。好ましいポリアミンとしては、ポリエチレンジアミン及びポリオキシアルキレンジアミン並びにこれらの誘導体が例示される。
【0099】
この接着剤のゲル分率は、40%以上である。ゲル分率が40%以上である接着剤から形成される接着層は、揮発分が残存しにくいので、ほとんど気泡を含まない。この接着層は、中間層6と堅固に密着し、カバー8とも堅固に密着する。この観点から、ゲル分率は45%以上がより好ましく、50%以上が特に好ましい。
【0100】
この接着剤のゲル分率は、80%以下である。ゲル分率が80%以下である接着剤は、中間層6の基材ポリマーと十分に反応し、かつカバー8の基材ポリマーとも十分に反応する。この接着層は、中間層6と堅固に密着し、カバー8とも堅固に密着する。この観点から、ゲル分率は76%以下がより好ましく、70%以上が特に好ましい。
【0101】
ゲル分率が40%以上80%以下である接着剤から形成された接着層は、カバー8が薄いゴルフボール2において、特に効果を発揮する。ゲル分率が40%以上80%以下である接着剤から形成された接着層は、カバー8が軟質であるゴルフボール2において、特に効果を発揮する。
【0102】
ゲル分率の測定では、主剤と硬化剤とが混合された直後に、接着剤がPB−137Tリン酸亜鉛処理鋼板に塗布される。この鋼板のサイズは、「150mm×70mm」である。この鋼板の厚みは、0.8mmである。この鋼板を、40℃の環境下に24時間保持し、接着剤からなる塗膜を形成する。鋼板と塗膜とから、試験片が得られる。この試験片の質量を測定し、この測定値から鋼板の質量を減じることで、塗膜の質量M1を算出する。この試験片をアセトンに浸漬し、24時間静置する。この試験片を105℃の環境下に1時間保持する。この試験片を23℃まで冷却する。この試験片の質量を測定し、この測定値から鋼板の質量を減じることで、塗膜の質量M2を算出する。ゲル分率Gは、下記の数式によって算出される。
G = (M2 / M1) ・ 100
【0103】
この接着剤におけるビスフェノールA型エポキシ樹脂のエポキシ当量と硬化剤のアミン活性水素当量との比は、2.0/1.0以上13.0/1.0以下が好ましい。この比が2.0/1.0以上である接着剤では、ゲル分率が小さすぎない。従って、接着層が中間層6及びカバー8と堅固に密着する。この観点から、この比は2.6/1.0以上がより好ましく、4.0/1.0以上が特に好ましい。この比が13.0/1.0以下である接着剤では、ゲル分率が大きすぎない。従って、接着層が中間層6及びカバー8と堅固に密着する。この観点から、この比は12.2/1.0以下がより好ましく、10.0/1.0以下が特に好ましい。
【0104】
硬化剤のアミン活性水素当量は、100g/eq以上800g/eq以下が好ましい。この当量が100g/eq以上である接着剤では、ゲル分率が大きすぎない。従って、接着層が中間層6及びカバー8と堅固に密着する。この観点から、この当量は200g/eq以上がより好ましく、300g/eq以上が特に好ましい。この当量が800g/eq以下である接着剤では、ゲル分率が小さすぎない。従って、接着層が中間層6及びカバー8と堅固に密着する。この観点から、この当量は600g/eq以下がより好ましく、500g/eq以下が特に好ましい。
【0105】
接着剤は、揮発分として水を含んでいる。揮発分との用語は、水及び有機溶媒の両方を意味する。揮発分の全量に対する水の量の比率Pwは、90質量%以上が好ましい。この比率Pwが90%以上である接着剤では、ゲル分率の制御が容易である。この観点から、この比率Pwは95%以上がより好ましく、99%以上が特に好ましい。この比率Pwが100%であってもよい。環境の観点から、揮発分の全量に対する有機溶媒の量の比率Poは10%以下が好ましく、5%以下がより好ましく、1%以下が特に好ましい。
【0106】
接着層が、着色剤(典型的には二酸化チタン)、酸化防止剤、光安定剤、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、ブロッキング防止剤等の添加剤を含んでもよい。添加剤は、主剤に添加されてもよく、硬化剤に添加されてもよい。
【0107】
前述の通り、接着層は、接着剤が中間層6の表面に塗布されることで得られる。スプレーガン方式、静電塗装方式及びディッピング方式により、塗布がなされうる。作業性の観点から、スプレーガン方式による塗布が好ましい。塗布後に溶媒が揮発し、ビスフェノールA型エポキシ樹脂とポリアミン化合物とが反応して、接着層が形成される。
【0108】
ゴルフボール2の耐久性の観点から、接着層の厚みは0.001mm以上が好ましく、0.002mm以上が特に好ましい。厚みは、0.1mm以下が好ましい。厚みは、ゴルフボール2の断面がマイクロスコープで観察されることで測定される。粗面処理により中間層6の表面が凹凸を備える場合は、凸部の直上で厚みが測定される。測定は、ディンプル14の直下を避けて行われる。
【0109】
中間層6(第一層)とカバー8(第二層)との接着強度は、20N以上が好ましい。接着強度が20N以上であるゴルフボール2は、耐久性に優れる。この観点から、接着強度は22.0N以上がより好ましく、22.3N以上が特に好ましい。
【0110】
接着強度の測定では、ゴルフボール2から第一層、接着層及び第二層からなる試験片が切り出される。この試験片のサイズは、「10mm×50mm」である。この試験片の先端近傍にて、第二層を第一層から剥離させる。第一層を第一チャックに固定し、第二層を第二チャックに固定する。第一チャックに対して第二チャックを相対的に移動させ、第二層から第一層を剥離させる。この剥離のときの力を、測定する。測定には、島津製作所の「オートグラフAG−IS」が用いられる。引張り速度は、50mm/minである。
【0111】
センターと、樹脂組成物からなりセンターを覆う包囲層と、樹脂組成物からなり包囲層を覆う中間層と、樹脂組成物からなり中間層を覆うカバーとを有するゴルフボールにおいても、接着層は有効である。このゴルフボールでは、包囲層と中間層との間に接着層が存在してもよく、中間層とカバーとの間に接着層が存在してもよい。包囲層と中間層との間に接着層が存在する場合、包囲層が第一層であり、中間層が第二層である。中間層とカバーとの間に接着層が存在る場合、中間層が第一層であり、カバーが第二層である。
【実施例】
【0112】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
【0113】
[実施例1]
100質量部のハイシスポリブタジエン(JSR社の商品名「BR−730」)、28質量部のメタクリル酸、34.8質量部の酸化マグネシウム、適量の硫酸バリウム及び1.35質量部のジクミルパーオキサイドを混練し、ゴム組成物(4)を得た。このゴム組成物(4)を共に半球状キャビティを備えた上型及び下型からなる金型に投入し、170℃の温度下で20分間加熱して、直径が15mmであるセンターを得た。
【0114】
100質量部のハイシスポリブタジエン(前述の「BR−730」)、33質量部のアクリル酸亜鉛、5質量部の酸化亜鉛、適量の硫酸バリウム、0.33質量部のビス(ペンタブロモフェニル)ジスルフィド及び0.90質量部のジクミルパーオキサイドを混練し、ゴム組成物(9)を得た。このゴム組成物(9)から、ハーフシェルを成形した。上記センターを2枚のハーフシェルで被覆した。このセンター及びハーフシェルを、共に半球状キャビティを備えた上型及び下型からなる金型に投入し、150℃の温度下で20分間加熱して、直径が40.1mmであるコアを得た。ゴム組成物(9)からは、包囲層が成形された。包囲層の比重がセンターの比重と一致し、かつボール質量が45.4gとなるように、硫酸バリウムの量を調整した。
【0115】
50質量部のアイオノマー樹脂(前述の「サーリン8945」)及び50質量部の他のアイオノマー樹脂(前述の「ハイミランAM7329」)を二軸混練押出機で混練し、樹脂組成物(a)を得た。共に半球状キャビティを備えた上型及び下型からなる金型にコアを投入した。樹脂組成物(a)を射出成形法にてコアの周りに射出し、中間層を成形した。この中間層の厚みは、1.0mmであった。
【0116】
主剤及び硬化剤を含む接着剤を調製した。この主剤は、神東塗料社の水系エポキシ組成物である。この主剤は、36質量部のビスフェノールA型エポキシ樹脂と、64質量部の水とを含んでいる。この主剤のエポキシ当量は、1405g/eqである。硬化剤は、神東塗料社の水系アミン組成物である。この硬化剤は、44質量部の変性ポリアミドアミン、50質量部の水、1質量部のプロピレングリコール及び5質量部の二酸化チタンを含んでいる。この硬化剤の活性水素当量は、348g/eqである。この接着剤を中間層の表面にスプレーガンで塗布し、23℃雰囲気下で12時間保持して、接着層を得た。この接着層の厚みは、0.003mmであった。
【0117】
100質量部の熱可塑性ポリウレタンエラストマー(BASFジャパン社の商品名「エラストランNY84A」)及び4質量部の二酸化チタンを二軸混練押出機で混練し、樹脂組成物(c)を得た。この樹脂組成物(c)から、圧縮成形法にて、ハーフシェルを得た。このハーフシェル2枚で、コア、中間層及び補強層からなる球を被覆した。共に半球状キャビティを備えた上型及び下型からなり、キャビティ面に多数のピンプルを備えたファイナル金型に、上記球及びハーフシェルを投入した。圧縮成形法にて、カバーを得た。このカバーの厚みは、0.3mmであった。カバーには、ピンプルの形状が反転した形状を有するディンプルが形成された。このカバーの周りに二液硬化型ポリウレタンを基材とするクリアー塗料を塗装し、直径が42.7mmである実施例1のゴルフボールを得た。この実施例1のコアの硬度分布が、下記の表4に示されている。
【0118】
[実施例2から8及び比較例1から7]
センター、包囲層、中間層及びカバーの仕様を下記の表7から10に示される通りとした他は実施例1と同様にして、実施例2から8及び比較例1から7のゴルフボールを得た。コアのゴム組成物の詳細が、下記の表1及び表2に示されている。中間層及びカバーの樹脂組成物の詳細が、下記の表3に示されている。コアの硬度分布が、下記の表4から6に示されている。比較例4では、150℃で30分間加熱した後、170℃で5分間加熱して、センターを得た、比較例7に係るゴルフボールは、包囲層を有さない。
【0119】
[ドライバー(W#1)でのショット]
ゴルフラボラトリー社のスイングマシンに、チタンヘッドを備えたドライバー(SRIスポーツ社の商品名「SRIXON Z−TX SV−3020J T−65」、シャフト硬度:X、ロフト角:8.5°)を装着した。ヘッド速度が50m/secである条件で、ゴルフボールを打撃した。打撃直後のボール速度及びスピン速度、並びに発射地点から静止地点までの距離を測定した。12回測定されて得られたデータの平均値が、下記の表7から10に示されている。
【0120】
[ミドルアイアン(I#5)でのショット]
上記スイングマシンに、5番アイアン(SRIスポーツ社の商品名「SRIXON Z−TX」)を装着した。ヘッド速度が41m/secである条件で、ゴルフボールを打撃した。打撃直後のボール速度及びスピン速度、並びに発射地点から静止地点までの距離を測定した。12回測定されて得られたデータの平均値が、下記の表7から10に示されている。
【0121】
[ショートアイアン(SW)でのショット]
上記スイングマシンに、サンドウェッジ(SRIスポーツ社の商品名「CG15 Tour ZIP、ロフト角:58°」)を装着した。ヘッド速度が21m/secである条件でゴルフボールを打撃して、打撃直後のスピン速度を測定した。12回測定されて得られたデータの平均値が、下記の表8から11に示されている。さらに、クラブフェイスとボールとに水を付着させてゴルフボールを打撃し、打撃直後のスピン速度を測定した。12回測定されて得られたデータの平均値が、下記の表7から10に示されている。
【0122】
[耐久性テスト]
ゴルフラボラトリー社のスイングマシンに、チタンヘッドを備えたドライバー(SRIスポーツ社の商品名「XXIO」、シャフト硬度:S、ロフト角:11.0°)を装着した。ヘッド速度が45m/secである条件で、ゴルフボールを繰り返し打撃した。ゴルフボールが破損するまでの打撃回数をカウントした。カバーが破損せず、コア又は中間層が破損している場合、ゴルフボールの変形又は打球時の異音により、破損を把握した。12回測定されて得られたデータの平均値の指数に基づき、下記の格付けを行った。
A:150以上
B:100以上150未満
C:100未満
この結果が、下記の表7から10に示されている。C、B、Aの順に良好である。
【0123】
[打球感]
10名のゴルファーにサンドウェッジにてゴルフボールを打撃させ、打球感を聞き取った。「打球感が良好」と答えたゴルファーの数に基づき、下記の格付けを行った。
A:8人以上
B:6−7人
C:4−5人
D:3人以下
この結果が、下記の表7から10に示されている。
【0124】
【表1】
【0125】
【表2】
【0126】
【表3】
【0127】
表3におけるポリウレタンの詳細は、以下の通りである。
ポリウレタン*1
熱可塑性ポリウレタンエラストマー
ポリオール成分:ポリテトラメチレンエーテルグリコール
ポリオール成分の数平均分子量:1500
ポリウレタン*2
熱可塑性ポリウレタンエラストマー
ポリオール成分:ポリテトラメチレンエーテルグリコール
ポリオール成分の数平均分子量:1500
ポリウレタン*3
BASFジャパン社の商品名「エラストランNY85A」
ポリオール成分:ポリテトラメチレンエーテルグリコール
ポリオール成分の数平均分子量:1800
【0128】
【表4】
【0129】
【表5】
【0130】
【表6】
【0131】
【表7】
【0132】
【表8】
【0133】
【表9】
【0134】
【表10】
【0135】
表7から10に示されるように、実施例に係るゴルフボールは、諸性能に優れている。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0136】
本発明に係るゴルフボールは、ゴルフ場でのプレーや、ドライビングレンジにおけるプラクティスに用いられうる。
【符号の説明】
【0137】
2・・・ゴルフボール
4・・・コア
6・・・中間層
8・・・カバー
10・・・センター
12・・・包囲層
14・・・ディンプル
16・・・ランド
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアと、このコアの外側に位置する中間層と、この中間層の外側に位置するカバーとを備えており、
上記コアが、センターと、このセンターの外側に位置する包囲層とを有しており、
ゴルフボールの仮想球の体積に対するコアの体積の比率が78%以上であり、
コアの表面のJIS−C硬度Heとコアの中心のJIS−C硬度Hoとの差(He−Ho)が15以上40以下であり、
上記センターと上記包囲層との境界よりも半径方向外側に位置しこの境界からの距離が1mmである点P1のJIS−C硬度H1と、上記コアの中心のJIS−C硬度Hoとの差(H1−Ho)が0以上2以下であるゴルフボール。
【請求項2】
上記カバーのJIS−C硬度Hcが65未満である請求項1に記載のゴルフボール。
【請求項3】
上記カバーの厚みが0.8mm未満である請求項1又は2に記載のゴルフボール。
【請求項4】
上記中間層のJIS−C硬度Hmが90以上である請求項1から3のいずれかに記載のゴルフボール。
【請求項5】
上記中間層の厚みが1.5mm以下である請求項1から4のいずれかに記載のゴルフボール。
【請求項6】
上記カバーのJIS−C硬度Hcが上記コアの中心のJIS−C硬度Hoよりも小さい請求項1から5のいずれかに記載のゴルフボール。
【請求項7】
上記中間層のJIS−C硬度Hmが上記コアの表面のJIS−C硬度Heよりも大きい請求項1から6のいずれかに記載のゴルフボール。
【請求項8】
上記カバーが樹脂組成物からなり、
加振周波数が10Hzであり温度が0℃である条件下で測定された上記樹脂組成物の剪断損失弾性率G”が、1.95×107Pa以下であり、
加振周波数が10Hzであり温度が0℃である条件下で測定された上記樹脂組成物の引張損失弾性率E”の、上記剪断損失弾性率G”に対する比(E”/G”)が、1.76以上である請求項1から7のいずれかに記載のゴルフボール。
【請求項9】
この樹脂組成物の基材の主成分が、熱可塑性ポリウレタンであり、
この熱可塑性ポリウレタンのポリオール成分が、数平均分子量が1500以下であるポリテトラメチレンエーテルグリコールである請求項1から8のいずれかに記載のゴルフボール。
【請求項1】
コアと、このコアの外側に位置する中間層と、この中間層の外側に位置するカバーとを備えており、
上記コアが、センターと、このセンターの外側に位置する包囲層とを有しており、
ゴルフボールの仮想球の体積に対するコアの体積の比率が78%以上であり、
コアの表面のJIS−C硬度Heとコアの中心のJIS−C硬度Hoとの差(He−Ho)が15以上40以下であり、
上記センターと上記包囲層との境界よりも半径方向外側に位置しこの境界からの距離が1mmである点P1のJIS−C硬度H1と、上記コアの中心のJIS−C硬度Hoとの差(H1−Ho)が0以上2以下であるゴルフボール。
【請求項2】
上記カバーのJIS−C硬度Hcが65未満である請求項1に記載のゴルフボール。
【請求項3】
上記カバーの厚みが0.8mm未満である請求項1又は2に記載のゴルフボール。
【請求項4】
上記中間層のJIS−C硬度Hmが90以上である請求項1から3のいずれかに記載のゴルフボール。
【請求項5】
上記中間層の厚みが1.5mm以下である請求項1から4のいずれかに記載のゴルフボール。
【請求項6】
上記カバーのJIS−C硬度Hcが上記コアの中心のJIS−C硬度Hoよりも小さい請求項1から5のいずれかに記載のゴルフボール。
【請求項7】
上記中間層のJIS−C硬度Hmが上記コアの表面のJIS−C硬度Heよりも大きい請求項1から6のいずれかに記載のゴルフボール。
【請求項8】
上記カバーが樹脂組成物からなり、
加振周波数が10Hzであり温度が0℃である条件下で測定された上記樹脂組成物の剪断損失弾性率G”が、1.95×107Pa以下であり、
加振周波数が10Hzであり温度が0℃である条件下で測定された上記樹脂組成物の引張損失弾性率E”の、上記剪断損失弾性率G”に対する比(E”/G”)が、1.76以上である請求項1から7のいずれかに記載のゴルフボール。
【請求項9】
この樹脂組成物の基材の主成分が、熱可塑性ポリウレタンであり、
この熱可塑性ポリウレタンのポリオール成分が、数平均分子量が1500以下であるポリテトラメチレンエーテルグリコールである請求項1から8のいずれかに記載のゴルフボール。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−223286(P2012−223286A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−92211(P2011−92211)
【出願日】平成23年4月18日(2011.4.18)
【出願人】(504017809)ダンロップスポーツ株式会社 (701)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月18日(2011.4.18)
【出願人】(504017809)ダンロップスポーツ株式会社 (701)
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